説明

ガラス基板の製造方法及びその装置

【課題】高品質な化学研磨処理を安全に実現できるガラス基板の化学研磨装置を提供する。
【解決手段】ガラス基板GLを水平方向に搬送する搬送路と、搬送路を移動中のガラス基板に対して、化学研磨液を噴射してガラス基板を薄型化する研磨処理部16,22と、研磨処理部22を通過して薄型化されたガラス基板に洗浄液を噴射して洗浄する洗浄処理部24と、を有して構成され、研磨処理部16へのガラス基板の導入部には、ガラス基板の表面を軽く保持して回転する回転ローラ43と、研磨処理部16の外側から回転ローラ43に向けて水を噴射する噴射部NZ1,NZ2とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型のガラス基板を均一に薄型化することができるガラス基板の製造方法及びその化学研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス基板を搬送しつつエッチング液を噴射する製造加工装置として、例えば、引用文献1に記載のウェットエッチング装置が知られている。そして、この装置では、ガラス基板に形成したクロムまたはクロム合金膜を、エッチング液によって除去している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−144454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の発明は、ガラス基板上に形成された薄膜を除去する構成や方法を教示するに過ぎず、ガラス基板そのものを薄型化する構成や方法を教示するものではない。
【0005】
ここで、ガラス基板そのものをエッチング(化学研磨)して薄型化するには、フッ酸を含有する化学研磨液を使用せざるを得ないが、この場合には、作業員の安全を確保すると共に、高品質の化学研磨処理を実現することが強く望まれる。特に、昨今の電子機器の小型軽量化の要請から、ガラス基板の更なる薄型化(板厚0.5mm程度又はそれ以下)が要求されており、もし、化学研磨によって研磨ムラや白濁が生じると、そのガラス基板の使用価値が消失する。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、高品質な化学研磨処理を安全に実現できるガラス基板の製造方法及びその化学研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明に係る化学研磨装置は、ガラス基板を水平方向に搬送する搬送路と、搬送路を移動中のガラス基板に対して、化学研磨液を噴射してガラス基板を薄型化する研磨処理部と、研磨処理部を通過して薄型化されたガラス基板に洗浄液を噴射して洗浄する洗浄処理部と、を有して構成され、前記研磨処理部へのガラス基板の導入部には、ガラス基板の表面を軽く保持して回転する回転ローラと、研磨処理部の外側から前記回転ローラに向けて水を噴射する噴射部とが設けられている。
【0008】
前記研磨処理部には、好ましくは、ガラス基板の搬送方向に延びる一群の噴射パイプが配置され、各噴射パイプに形成された噴出口からガラス基板に向けて化学研磨液が噴出されている。ここで、一群の噴射パイプは、ガラス基板の上部と下部に配置されているのが好ましい。また、一群の噴射パイプは、その軸方向長さが2.5m以下に設定されていると更に好ましい。
【0009】
好適には、前記一群の噴射パイプは、前記搬送方向に直交するガラス基板の幅方向に配置され、中央位置の噴射パイプには、周辺位置の噴射パイプより高圧の化学研磨液が供給されるよう構成されている。また、一群の噴射パイプは回転可能に保持されて、噴射パイプの円周方向に揺動するよう構成されているのが好ましい。
【0010】
前記研磨処理部は、ほぼ同一構成の複数の処理チャンバに区分されて構成され、同一組成の研磨液によってガラス基板が複数回研磨されるよう構成されるのが好ましい。ここで、前記複数の処理チャンバは、中継チャンバを経由して接続されるのが好適であり、前記中継チャンバでは、処理チャンバと同一組成の化学研磨液がガラス基板に噴出されていると更に好ましい。
【0011】
また、本発明は、ガラス基板を水平方向に搬送する搬送路と、搬送路を移動中のガラス基板に対して、化学研磨液を噴射してガラス基板を薄型化する研磨処理部と、研磨処理部を通過して薄型化されたガラス基板に洗浄液を噴射して洗浄する洗浄処理部と、を有し、前記研磨処理部へのガラス基板の導入部には、ガラス基板の表面を軽く保持して回転する回転ローラと、研磨処理部の外側から前記回転ローラに向けて水を噴射する噴射部とが設けられた化学研磨装置を使用して、板厚を薄型化するガラス基板の製造方法でもある。
【発明の効果】
【0012】
上記した本発明によれば、高品質な化学研磨処理を安全に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例に係る化学研磨装置を示す概略正面図である。
【図2】図1の化学研磨装置の排気ラインを説明する図面である。
【図3】一群の噴出パイプとクランク機構を説明する図面である。
【図4】クランク機構の動作を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1及び図2は、実施例に係る化学研磨装置10を示す概略正面図である。なお、同一の化学研磨装置10について、図1では、化学研磨液の給液ラインLN1と洗浄水の給水ラインLN2と回収ラインLN3を示し、図2では、排気ラインLN4を示している。
【0015】
図示の通り、この化学研磨装置10は、作業員によってガラス基板GLが1枚ずつ搬入される搬入部12と、搬入部12から搬送されるガラス基板GLを受け入れる前処理チャンバ14と、ガラス基板GLの上下面に化学研磨液を噴射してガラス基板を薄型化する第1処理チャンバ16と、第1処理チャンバ16と同一組成の化学研磨液をガラス基板の上下面に噴射してガラス基板を更に薄型化する第2処理チャンバ22と、第1と第2の処理チャンバ16,22を連結する中継チャンバ18と、第2処理チャンバ22を経由したガラス基板GLを水洗する水洗チャンバ24と、作業員によって1枚ずつガラス基板GLが搬出される搬出部26と、を中心に構成されている。なお、中継チャンバ18は、上下方向に小型化された第1中継チャンバ18aと、第2処理チャンバ22の前面にほぼ同一形状で対面する第2中継チャンバ18bとに区分されている。
【0016】
そして、前処理チャンバ14への導入口INと、水洗チャンバ24からの導出口OUTと、クランク機構CRの一部の作業空間とを除いて、各チャンバ14,16,18,22,24は、全体として密閉されている。なお、導入口IN及び導出口OUTは、ガラス基板GLの板厚よりやや高く、ガラス基板GLの横幅よりやや広い矩形開口である。また、各部を貫通して、同一平面上に多数の搬送ローラ42・・・42が配置されて、ガラス基板GLを図示右向きに搬送する搬送路が形成されている。
【0017】
ここで、搬送速度は、200〜800mm/分に設定されるのが好ましく、より好ましくは、300〜550mm/分に設定すべきである。そして、第1処理チャンバ16と第2処理チャンバ22での処理時間は、この実施例では合計10分程度に設定されている。上記の範囲を超えて搬送速度が遅すぎると、生産効率が悪いだけでなく、化学研磨液がガラス基板上に滞留しやすく、均一な化学研磨が阻害される。一方、同一の装置規模において、搬送速度を高めるには、これを実現する液組成の最適化が難しく、結局、均質な化学研磨が実現できない。
【0018】
化学研磨装置10で薄型化処理されるガラス基板GLは、特に限定されないが、1000×1200mm又は1100×1300mm以上の大型ガラス基板についても、その上下両面を均質に研磨できるよう構成されている。なお、ガラス基板の板厚は、本装置10への導入時が、仮に1mm以下であれば、化学研磨後は、0.5mm程度まで薄型化することができる。
【0019】
図1に示す通り、第1処理チャンバ16、第2処理チャンバ22、及び、中継チャンバ18は、給液ラインLN1を経由して、温度管理された処理液供給部30に連通しており、処理液供給部30の化学研磨液が、40〜42℃程度で各チャンバに供給されるようになっている。ここで、化学研磨液は、特に限定されないが、10分程度の化学研磨処理で、板厚を全体で100μm程度薄肉化するには、フッ酸5〜12重量%、塩酸0〜6重量%、残り水の液組成とするのが好ましい。
【0020】
また、前処理チャンバ14、及び、水洗チャンバ24は、給水ラインLN2を経由して水供給部28に連通しており、洗浄水が各チャンバに供給されるようになっている。なお、前処理チャンバ14と水洗チャンバ24から排出される洗浄排水は、そのまま排出される。
【0021】
一方、第1処理チャンバ16、中継チャンバ18a,18b、及び、第2処理チャンバ22の底部は、回収ラインLN3を経由して処理液収容部32に連通しており、研磨処理水が回収されるようになっている。なお、回収された研磨処理水は、反応生成物の沈殿その他の処理を経た上で、処理液供給部30に送られ、送液モータ(不図示)によって各処理チャンバに供給されて再利用される。
【0022】
図2に示す通り、前処理チャンバ14と中継チャンバ18bと水洗チャンバ24は、排気ラインLN4を経由して、排気部40に連通しており、各チャンバの内部ガスが排気部40に吸引されるようになっている。ここで、排気ラインLN4は定常的に機能しているので、前処理チャンバ14への導入口IN、水洗チャンバ24からの導出口OUT、クランク機構CRの一部に形成される開口が、負圧状態に維持されることになり、これらの開口を通して処理ガスが漏出することはない。
【0023】
第1処理チャンバ16と、中継チャンバ18と、第2処理チャンバ22と、水洗チャンバ24には、ガラス基板の搬送方向に延びる一群(6本)の噴射パイプが、搬送ローラ42・・・42の上下位置に配置されている。各噴射パイプPri,Pfi,Pwiは、塩化ビニルやテフロン(登録商標)による中空の樹脂パイプであり、一本の噴射パイプに、複数個の噴射口が一列に形成されている。そして、第1処理チャンバ16、中継チャンバ18、及び第2処理チャンバ22に配置された上下の噴射パイプPri,Pfi,Priからは、ガラス基板の上面及び下面に向けて化学研磨液が噴射される。一方、水洗チャンバ24に配置された噴射パイプPwiからは、ガラス基板の上面及び下面に向けて洗浄水が噴射される。
【0024】
中継チャンバ18と水洗チャンバ24に配置された噴射パイプPfi,Pwiは固定状態に保持されている。一方、第1処理チャンバ16と第2処理チャンバ22には、クランク機構CRによって揺動する複数本の噴射パイプPriが配置されている。
【0025】
先に説明した通り、本実施例では、第1処理チャンバ16と第2処理チャンバ22には、ガラス基板の上下に各々6本の噴射パイプPri(Pr1〜Pr6)が配置されている。図3(A)は、ガラス基板の下方に配置される噴射パイプPr1〜Pr6を上方から描いた平面図であり、各噴射パイプPriには、例えば8個の噴出口HOが形成されている。
【0026】
各噴射パイプPriは、第1処理チャンバ16と第2処理チャンバ22の何れに配置される場合にも、その先端側(図示左側)が閉塞される一方、その基端側には、圧力制御部44が設けられている。圧力制御部44は、噴射パイプPriと同数(6個)の開閉バルブVALで構成され、各開閉バルブVALの開度を調整することで各噴射パイプPriに供給される化学研磨液の液圧が任意に設定できるようになっている。
【0027】
この実施例では、周辺位置の噴射パイプPr1,Pr6に比べて、中央位置の噴射パイプPr3,Pr4の液圧がやや大きく設定されており、ガラス基板GLの中央位置への接触圧や噴射量は、ガラス基板GLの周辺位置への接触圧や噴射量よりやや高く設定されている。そのため、ガラス基板GLの中央位置に噴射された化学研磨液は、ガラス基板の周辺位置に円滑に移動することになり、ガラス基板GL全面にほぼ等量の化学研磨液が作用することになり、結果として、ガラス基板GL全面が均一に研磨される。
【0028】
また、各噴射パイプPriは、その両端が軸受などによって回転可能に軸支されることで、クランク機構CRによって約±30°揺動(oscillation)されるよう構成されている(図3(C)参照)。なお、図3(C)は、揺動角度を示したものであって、化学研磨液の噴射範囲を示すものではない。すなわち、噴射パイプPriの噴出口HOからは、化学研磨液がラッパ状に噴出されるので、その噴射範囲は、揺動角度より広い。
【0029】
クランク機構CRは、図3(B)の概略正面図に示す通り、駆動モータMOと、クランク軸C1〜C3と、揺動棒C4と、上下2本の保持棒C5,C5とを中心に構成されている。2本の保持棒C5,C5は、搬送中のガラス基板GLを挟んだ上下位置に配置され、各々、処理チャンバ16,22の前後方向(図1の紙面に直交する方向)に水平移動可能に保持されている。
【0030】
なお、特に限定されるものではないが、クランク軸C1〜C3と、揺動棒C4は、第1と第2の処理チャンバ16,22の左側面板LSの外側に配置され、噴射パイプPriの先端側が、左側面板LSを貫通して伝達棒Tr1〜Tr6に接続されている。なお、左側面板LSの貫通孔は、適切に封止されている。
【0031】
クランク軸C2と、揺動棒C4は、各々、固定軸O1,O2によって回転可能に軸支されている。ここで、固定軸O1は、例えば、前処理チャンバ14や中継チャンバ18の天板によって保持され、固定軸O2は、各チャンバ14,18の前板によって保持されている。
【0032】
そのため、クランク軸C2は、固定軸O1を回転中心として、処理チャンバ16,22の前後方向に揺動する。また、揺動棒C4についても、固定軸O2を回転中心として、処理チャンバ16,22の前後方向に揺動する。なお、揺動棒C4には、保持棒C5,C5との連結部に長孔が形成されることで、その揺動動作を可能にしている。
【0033】
上下各6本の噴射パイプPr1〜Pr6の閉塞先端側は、伝達棒Tr1〜Tr6を通して保持棒C5,C5に接続されている。先に説明した通り、各噴射パイプPr1〜Pr6は、軸受などによって回転可能に保持され、伝達棒Tr1〜Tr6は、保持棒C5の突出軸O3によって軸支されている。したがって、保持棒C5,C5の前後方向の水平移動に対応して、噴射パイプPr1〜Pr6が、その円周方向に揺動することになる。
【0034】
図4は、上側の噴射パイプPr1〜Pr6と、下側の噴射パイプPr1〜Pr6の揺動動作を示す図面であり、固定軸O1を回転中心として、クランク軸C1が揺動する一方、固定軸O2を回転中心として、揺動棒C4が揺動する状態が示されている。そして、揺動棒C4の揺動に対応して、保持棒C5,C5が水平方向に往復移動し、これに対応して、回転可能に軸支された上下の噴射パイプPr1〜Pr6が約±30°回転している。なお、駆動モータMOの回転数は、噴射パイプPriの揺動回数を規定するが、駆動モータの回転数は、10〜30rpm程度が好適である。
【0035】
上側の噴射パイプPr1〜Pr6には、その下面に噴射口が形成され、下側の噴射パイプPr1〜Pr6には、その上面に噴射口が形成されているので、各噴射口は、約±30°回転しつつ、化学研磨液をガラス基板の上下面に噴射することになる(図3(C)参照)。
【0036】
ところで、本実施例では、同一の液組成によって同様の化学研磨を実行する処理チャンバ16,22を敢えて二分している。それは、噴射パイプPr1〜Pr6の長さを抑制することで、噴射パイプの撓みを防止し、且つ、噴射パイプを円滑に揺動させてガラス基板との距離を均一に維持するためである。噴射パイプPriの長さは、パイプ径(送液量)にも関係するが、一般的には、2.5m以下、好ましくは2m以下に抑制するのが好ましい。
【0037】
高速でガラス基板を化学研磨するためには、加温状態の化学研磨液の送液量を増加させる必要があるところ、噴射パイプPrの長さを適切な長さに抑制することで、駆動モータMOをそれほど大型化することなく、且つ、簡単な機構で、複数の噴射パイプPr1〜Pr6を円滑に揺動させることができる。
【0038】
なお、本実施例の構成とは異なり、第1処理チャンバ16と第2処理チャンバ22とをまとめた単一チャンバを設けることも考えられるが、例え、適正長さ(2.5m以下)の噴射パイプを使用したとしても本実施例と同等の円滑な動作は望めない。すなわち、単一チャンバを使用する場合には、その左側面板と右側面板に近接して各々クランク機構を設け、各クランク機構を別々の駆動モータMOで駆動するしかないが、各噴射パイプの基端部は、単一チャンバの中央部に位置するので、この基端部の回転可能に保持するのは容易でない。また、噴射パイプの基端部に圧力制御部44を設けることも困難である。
【0039】
続いて、前処理チャンバ14の構成について説明する。前処理チャンバ14には、第1処理チャンバに近接して、噴射パイプPriを揺動させるクランク機構CRが配置されることは前記した通りである。上記の構成に加えて、前処理チャンバ14には、第1処理チャンバ16へのガラス基板GLの導入口に、ガラス基板GLを受入れる回転ローラ43と、ガラス基板GLの上下面に水を噴射する水洗ノズルNZ1,NZ2とが配置されている。ここで、ガラス基板GLは、回転ローラ43と搬送ローラ42に、柔らかく保持されて第1処理チャンバ16に導入されるよう接触圧が設定されている。
【0040】
また、水洗ノズルNZ1,NZ2は、ガラス基板GLの第1処理チャンバ16への導入口に向けて、水を噴射するよう設定されている。そのため、第1処理チャンバ16に導入されたガラス基板は、十分に濡れた状態であり、不均質な初期エッチングが防止される。すなわち、第1処理チャンバ16は、フッ酸ガス雰囲気であるので、もし、ガラス基板の表面がドライ状態であると、フッ酸ガスによって不均質に侵蝕される危険があるが、本実施例では、ガラス基板の表面が水で保護されているので、その後、第1処理チャンバ16において均質なエッチングが開始される。
【0041】
また、本実施例では、水洗ノズルNZ1,NZ2から、回転ローラ43や搬送ローラ42に向けて勢い良く水が噴射されているので、第1処理チャンバ16のガラス基板導入口が水封止されることになり、化学研磨液の前処理チャンバ14への漏出が防止される。なお、本実施例のような構成を採らない場合には、前処理チャンバ14に漏出する化学研磨液によって、ドライ状態のガラス基板が修復不能にエッチングされてしまう。なお、化学研磨液の前処理チャンバ14への漏出を防止するべく、回転ローラ43や搬送ローラ42のガラス基板への接触圧を高めると、ガラス基板が傷つき白濁するなどの弊害が生じる。
【0042】
続いて、中継チャンバ18について説明する。先に説明した通り、中継チャンバ18には、固定状態の噴射パイプPfiが搬送路の上下位置に配置されている。そして、一群(6本)の噴射パイプPfiからガラス基板の上下面に化学研磨液が噴射される。本実施例では、特に中継チャンバを設けているが、その理由は、(1)第1処理チャンバ16の噴射パイプPriの基端側を適切に軸支するため、(2)圧力制御部44の配置スペースを確保するため、(3)第2処理チャンバ22のクランク機構CRの配置スペースを確保するためなどである。
【0043】
ここで、中継チャンバ18を、ガラス研磨処理における空スペースとすることも考えられるが、本実施例では敢えて、この中継チャンバ18でも、同一組成の化学研磨液をガラス基板に噴射している。そのため、中継チャンバ18の通過時において化学研磨液がガラス基板上に滞留するおそれがなく、高品質のガラス研磨が実現される。なお、中継チャンバの噴射パイプPfiは、固定状態であるが、これを揺動させる構成を採っても良いのは勿論である。
【0044】
中継チャンバ18を通過したガラス基板は第2処理チャンバ22に移動して更に化学研磨される。そして、二段階の化学研磨を終えたガラス基板は、第2処理チャンバの出口に配置されたエアナイフKN1によって液切り処理が行われた後、水洗チャンバ24に配置された一群(6本)の噴射パイプPwiから受ける洗浄水によって洗浄される。洗浄用の噴射パイプPwiは、固定状態であるが、これを揺動させる構成を採っても良い。
【0045】
いずれにしても、洗浄処理の最終段には、エアナイフKN2,KN3が配置されており、そこから噴射されるエアーによってガラス基板の上下面が迅速に乾燥される。そして、水洗チャンバ24の導出口OUTから排出されたガラス基板は、搬出部26に待機する作業員によって取り出され、一連の加工処理が完了する。
【0046】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、具体的な記載内容は特に本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0047】
GL ガラス基板
16,22 研磨処理部
24 洗浄処理部
10 化学研磨装置
43 回転ローラ
NZ1,NZ2 噴射部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を水平方向に搬送する搬送路と、
搬送路を移動中のガラス基板に対して、化学研磨液を噴射してガラス基板を薄型化する研磨処理部と、
研磨処理部を通過して薄型化されたガラス基板に洗浄液を噴射して洗浄する洗浄処理部と、を有して構成され、
前記研磨処理部へのガラス基板の導入部には、ガラス基板の表面を軽く保持して回転する回転ローラと、研磨処理部の外側から前記回転ローラに向けて水を噴射する噴射部とが設けられていることを特徴とするガラス基板の化学研磨装置。
【請求項2】
前記研磨処理部には、ガラス基板の搬送方向に延びる一群の噴射パイプが配置され、各噴射パイプに形成された噴出口からガラス基板に向けて化学研磨液が噴出されている請求項1に記載の化学研磨装置。
【請求項3】
前記一群の噴射パイプは、ガラス基板の上部と下部に配置されている請求項2に記載の化学研磨装置。
【請求項4】
前記一群の噴射パイプは、その軸方向長さが2.5m以下に設定されている請求項3に記載の化学研磨装置。
【請求項5】
前記一群の噴射パイプは、前記搬送方向に直交するガラス基板の幅方向に配置され、中央位置の噴射パイプには、周辺位置の噴射パイプより高圧の化学研磨液が供給されるよう構成されている請求項3又は4に記載の化学研磨装置。
【請求項6】
前記一群の噴射パイプは回転可能に保持されて、噴射パイプの円周方向に揺動するよう構成されている請求項2〜5の何れかに記載の化学研磨装置。
【請求項7】
前記研磨処理部は、ほぼ同一構成の複数の処理チャンバに区分されて構成され、同一組成の研磨液によってガラス基板が複数回研磨されるよう構成された請求項1〜6の何れかに記載の化学研磨装置。
【請求項8】
前記複数の処理チャンバは、中継チャンバを経由して接続されている請求項7に記載の化学研磨装置。
【請求項9】
前記中継チャンバでは、処理チャンバと同一組成の化学研磨液がガラス基板に噴出されている請求項1〜8の何れかに記載の化学研磨装置。
【請求項10】
ガラス基板を水平方向に搬送する搬送路と、搬送路を移動中のガラス基板に対して、化学研磨液を噴射してガラス基板を薄型化する研磨処理部と、研磨処理部を通過して薄型化されたガラス基板に洗浄液を噴射して洗浄する洗浄処理部と、を有し、前記研磨処理部へのガラス基板の導入部には、ガラス基板の表面を軽く保持して回転する回転ローラと、研磨処理部の外側から前記回転ローラに向けて水を噴射する噴射部とが設けられた化学研磨装置を使用して、板厚を薄型化するガラス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−166971(P2012−166971A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27683(P2011−27683)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【特許番号】特許第4975169号(P4975169)
【特許公報発行日】平成24年7月11日(2012.7.11)
【出願人】(509154420)株式会社NSC (10)
【Fターム(参考)】