説明

ガンダイオード発振器

【課題】 組立が原因となる発振周波数のバラツキの少ないガンダイオード発振器を提供する。
【解決手段】 半絶縁性又は絶縁性の平板基板表面に、フリップチップ型のガンダイオードを接続搭載するガンダイオード発振器において、ガンダイオードは、中央にアノード電極を配置し、その両側にカソード電極を配置する。アノード電極が表面接地電極に接続し、カソード電極の一方の電極が信号電極に接続し、他方のカソード電極がオープンスタブに接続する構造とすることで、表面接地電極がオープンスタブとして機能せず、発振周波数のバラツキが少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ波やミリ波用のガンダイオードを用いた発振器に係り、特に発振出力の向上、さらに温度特性の改善が容易となった表面実装型のガンダイオード発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4にマイクロ波やミリ波発振器用に用いられるフリップチップ型のガンダイオード20を示す。図4(a)は平面図、図4(b)は図4(a)のA−A線の断面図を示している。高濃度n型GaAsからなる半導体基板21上に、MBE法又はMOCVD法により、高濃度n型GaAsからなる第1の半導体層22、低濃度n型GaAsからなる活性層23、高濃度n型GaAsからなるコンタクト層24が順次積層され、電子の走行空間の面積を小さくするため、メサ型構造となっている。25は絶縁領域、26はカソード電極、27はアノード電極、28は導電性突起によるカソードバンプ、29は導電性突起によるアノードバンプである。絶縁領域25は、コンタクト層24表面から活性層23と第1の半導体層22の境までボロンイオンを注入することにより筒形状に形成され、カソード電極26をアノード電極27から分離し、絶縁領域25により囲まれた内側の第1の半導体層22、活性層23及びコンタクト層24によりガンダイオードの機能部が形成されている。図4では絶縁領域25による筒状の部分が6個形成され、6個のカソード電極26の下層に各々ガンダイオード機能部が形成されている。また、カソードバンプ28は6個のカソード電極26の上面に各々形成されているが、アノードバンプ29は、アノード電極27上面の一部に、カソードバンプ28の一群を両側から挟むように片側に3個ずつ合計6個形成されている。
【0003】
図5は、図4のガンダイオード20をマイクロストリップ線路で構成された発振回路30に搭載して構成したガンダイオード発振器のガンダイオードの接続部を拡大した断面図である。図6はガンダイオード発振器10の説明図で、図6(a)はガンダイオード発振器10の全体斜視図、図6(b)はその陰線を表示した斜視図である。図5及び図6に示すように、発振回路30は、半絶縁性の平板基板31の表面には信号電極32とその信号電極32を両側から挟むように2個の表面接地電極33が形成されており、裏面には裏面接地電極34が形成されている。表面接地電極33と裏面接地電極34は、柱状のヴィアホール35により導通している。信号電極32には、ガンダイオード20に電源を供給するためのバイアス電極32A、共振器を構成するオープンスタブ32B、発振出力取出用の出力部32Cが形成されている。ガンダイオード20は、中央のカソードバンプ28が信号電極32に、両側のアノードバンプ29が両側の表面接地電極33に接着するように実装される。ガンダイオード20の機能部の熱は、放熱基台36を通して放熱される。なお、図6(a)、図6(b)では、放熱基台36を図示していない。この種のガンダイオード発振器は、特許文献1に開示されている。
【特許文献1】特開2003−152246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように発振回路にフリップチップ型のガンダイオードを搭載し、ガンダイオード発振器を構成する場合、各表面接地電極33と裏面接地電極34をヴィアホール35により導通させているため、表面接地電極33の一部がショートスタブとして機能してしまう。つまり、2つのヴィアホール35の間隔が発振周波数決定に寄与してしまい、ヴィアホール間隔のバラツキが、発振周波数のバラツキの原因になるという問題があった。またバラクタダイオードを用いて、発振周波数を制御する電圧制御型のガンダイオード発振器の場合においても、同様の問題があった。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解消し、組立が原因となる発振周波数のバラツキの少ないガンダイオード発振器を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、半絶縁性又は絶縁性の平板基板表面に、フリップチップ型のガンダイオードを接続搭載するガンダイオード発振器において、前記ガンダイオードは、中央にアノード又はカソード電極のいずれか一方の第1電極を配置し、該第1電極の両側にカソード又はアノード電極のいずれか一方の第2電極を配置し、前記平板基板は、表面に信号電極と、該信号電極に接続したガンダイオード用バイアス電極と、表面接地電極と、第1オープンスタブとを備え、裏面に裏面接地電極を備え、表面から裏面に貫通するヴィアホールを通して前記表面接地電極と前記裏面接地電極を接続しており、前記第1電極が前記表面接地電極に接続し、前記第2電極の一方の電極が前記信号電極に接続し、前記第2電極の他方の電極が前記第1オープンスタブに接続していることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項2に係る発明は、請求項1に記載のガンダイオード発振器において、前記平板基板は、さらに第2オーブンスタブと該第2オープンスタブに接続したバラクタダイオード用バイアス電極とを備え、前記ガンダイオードの前記第2電極の他方の電極が接続している前記第1オープンスタブにバラクタダイオードの一方の電極を接続し、前記第2オープンスタブに前記バラクタダイオードの他方の電極を接続したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヴィアホールの直上に設けた表面接地電極にガンダイオードの第1電極を接続する構造となっているので、表面接地電極がショートスタブとして機能することがなく、発振周波数のバラツキの少ないガンダイオード発振器、あるいは電圧制御型ガンダイオード発振器を得ることができる。
【0009】
またヴィアホールの直上にガンダイオードの発熱部である機能部が配置する構造となるため、機能部で発生した熱は、ヴィアホールを経由して放熱基台へ放射され、高い放熱効果が得られる。それに伴い、ガンダイオード発振器の発振効率も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明について、実施例に従い、詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
まず第1の実施例について説明する。本実施例に用いられるフリップチップ型のガンダイオード20Aは、図4で説明したガンダイオード20同様、高濃度n型GaAsからなる半導体基板21上に、MBE法又はMOCVD法により、高濃度n型GaAsからなる第1の半導体層22、低濃度n型GaAsからなる活性層23、高濃度n型GaAsからなるコンタクト層24が順次積層され、電子の走行空間の面積を小さくするため、コンタクト層24表面から活性層23と第1の半導体層22の境までボロンイオンを注入することにより筒形状に形成された絶縁領域25によって分離された構造となっている。
【0012】
ここで、本実施例のガンダイオード20Aは、図4に示すガンダイオード20と比較して、カソード電極26およびカソードバンプ28を、アノード電極27およびアノードバンプ29と置き換えた構造となっている。すなわち、アノードバンプ29は6個のアノード電極27の上面に各々形成されており、カソードバンプ28は、カソード電極26上面の一部に、アノードバンプ29の一群を両側から挟むように片側に3個ずつ合計で6個形成されている。
【0013】
図1は、ガンダイオード20Aをマイクロストリップ線路で構成された発振回路30Aに搭載して構成した本発明のガンダイオード発振器10Aのガンダイオード20Aの接続部を拡大した断面図である。また図2はガンダイオード発振器の説明図で、図2(a)はガンダイオード発振器10Aの全体斜視図、図2(b)はその陰線を表示した斜視図である。図4におけるものと同一のものには同一符号を付している。
【0014】
発振回路30Aは、窒化アルミニウム(AlN)、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)、ダイアモンド等のように比抵抗が106Ω・cm以上、熱電導率が140W/mK以上で良好な半絶縁性又は絶縁性基板を平板基板31とし、その平板基板31の表面には、信号電極32、信号電極32に接続したガンダイオード20Aに電源を供給するためのバイアス電極32A、発振出力取出用の出力部32C、信号電極32とは独立したオープンスタブ32D(第1のオープンスタブに相当)、表面接地電極33Aが形成されている。また裏面には、裏面接地電極34が形成されている。表面接地電極33Aと裏面接地電極34は、柱状のヴィアホール35Aにより導通している。図1及び図2に示すように、本実施例では、信号線路32、オープンスタブ32D、表面接地電極33Aの構造が、図4に示した従来例の構造と異なっている。なお、図2(a)、(b)では、放熱基台36を図示していない。
【0015】
ガンダイオード20Aは、その中央に配置しているアノードバンプ29(第1電極に相当)を表面接地電極33Aに接続し、カソードバンプ28(第2電極に相当)の一方を信号電極32に接続し、カソードバンプ28の他方をオープンスタブ32Dに接続している。
【0016】
このような構造とすることで、裏面接地電極34を固定電位とし、バイアス電極32Aに直流電圧を印加すると、ガンダイオード20Aによる発振がおこなわれる。
【0017】
本実施例のガンダイオード発振器10Aは、ガンダイオード20Aのアノードバンプ29を表面接地電極33Aに接続することで、表面接地電極33Aがショートスタブとして機能することがないので、そのバラツキが原因となる発振周波数のバラツキが無くなり、良好な特性が得られる。
【0018】
また、ガンダイオード20A内の熱の発生部である絶縁領域25で区画された機能部がヴィアホール35Aの直上に配置するため、発生した熱がアノードバンプ29及びヴィアホール35Aを通して、裏面接地電極34が接着するヒートシンクとして機能する放熱基台36に効果的に放射される。このように放熱効果が高くなることで、ガンダイオード発振器の発振効率も向上することになる。
【実施例2】
【0019】
図3は、第2の実施例の電圧制御型ガンダイオード発振器の説明図であり、図3(a)はマイクロストリップ線路で構成された発振回路11の全体斜視図、図3(b)はその陰線を表示した斜視図である。図2及び図4におけるものと同一のものには同一符号を付している。
【0020】
本実施例は、オープンスタブ32D(第1オープンスタブ)の延長線上の離れた位置にオープンスタブ32E(第2オープンスタブ)を設け、オープンスタブ32Dとオープンスタブ32Eに、バラクタダイオード40の電極をそれぞれ接続して搭載している。
【0021】
本実施例では、バイアス電極32Aを介してガンダイオード20Aに電源電圧(直流電圧)を印加し、オープンスタブ32Eに接続したバイアス電極32F(バラクタダイオード用バイアス電極に相当)を介して、バラクタダイオード40にバイアスを印加することにより、出力部32Cから出力されるガンダイオード発振器11の発振周波数を変調することができ、電圧制御発振器として利用できる。
【0022】
このように電圧制御ガンダイオード発振器であっても、図2に示した第1の実施例のガンダイオード発振器と同様に、発振周波数のバラツキが少なく、放熱効率、発振効率の優れたガンダイオード発振器を得ることができる。
【0023】
なお上記説明において、カソード電極26とカソードバンプ28、アノード電極27とアノードバンプ29は、印加するバイアス電圧の極性によって逆になる場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のガンダイオード発振器の一部拡大図である。
【図2】本発明のガンダイオード発振器の説明図である。
【図3】本発明の電圧制御ガンダイオード発振器の一部拡大図である。
【図4】ガンダイオードの説明図である。
【図5】ガンダイオード発振器の一部拡大図である。
【図6】ガンダイオード発振器の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
10、10A:ガンダイオード発振器、11:電圧制御ガンダイオード発振器、20:ガンダイオード、21:半導体基板、22:第1の半導体層、23:活性層、24:コンタクト層、25:絶縁領域、26:カソード電極、27:アノード電極、28:カソードバンプ、29:アノードバンプ、30:発振回路、31:平板基板、32:信号電極、32A:バイアス電極、32B:オープンスタブ、32C:出力部、32D:オープンスタブ、32E:オープンスタブ、32F:バイアス電極、33:表面接地電極、34:裏面接地電極、35:ヴィアホール、36:放熱基台、40:バラクタダイオード、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半絶縁性又は絶縁性の平板基板表面に、フリップチップ型のガンダイオードを接続搭載するガンダイオード発振器において、
前記ガンダイオードは、中央にアノード又はカソード電極のいずれか一方の第1電極を配置し、該第1電極の両側にカソード又はアノード電極のいずれか一方の第2電極を配置し、
前記平板基板は、表面に信号電極と、該信号電極に接続したガンダイオード用バイアス電極と、表面接地電極と、第1オープンスタブとを備え、裏面に裏面接地電極を備え、表面から裏面に貫通するヴィアホールを通して前記表面接地電極と前記裏面接地電極を接続しており、
前記第1電極が前記表面接地電極に接続し、前記第2電極の一方の電極が前記信号電極に接続し、前記第2電極の他方の電極が前記第1オープンスタブに接続していることを特徴とするガンダイオード発振器。
【請求項2】
請求項1に記載のガンダイオード発振器において、
前記平板基板は、さらに第2オーブンスタブと該第2オープンスタブに接続したバラクタダイオード用バイアス電極とを備え、
前記ガンダイオードの前記第2電極の他方の電極が接続している前記第1オープンスタブにバラクタダイオードの一方の電極を接続し、前記第2オープンスタブに前記バラクタダイオードの他方の電極を接続したことを特徴とするガンダイオード発振器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−173299(P2007−173299A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−364841(P2005−364841)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【出願人】(000191238)新日本無線株式会社 (569)