説明

キッチン吊り戸の底板用化粧板の製造方法

【課題】 耐擦傷性に優れ、汚れが付着しても容易に拭き取ることができ、揮発性有機化合物による室内空気汚染等の問題を軽減することができるシステムキッチンの吊り戸の底板用化粧板を提供することである。
【解決手段】 基材の両面に、分子内に不飽和基を有するポリエステルにアクリレート単量体からなる架橋剤を添加した100%樹脂分の不飽和ポリエステル樹脂からなる接着剤層を介して表層に硬化型樹脂からなる表面保護層を有する化粧紙を前記表面保護層が表出するように積層し、熱と圧力により前記化粧紙の紙層内に不飽和ポリエステル樹脂を含浸させると共に硬化させて前記基材と一体化させたことを特徴とするキッチン吊り戸の底板用化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、システムキッチンの焜炉上等の壁面に設置されるキッチン吊り戸に関し、さらに詳しくは、キッチン吊り戸に好適に用いられるキッチン吊り戸の底板用化粧板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、住宅等の台所において使い勝手がよく、纏まりがあって見栄えがよいなどの理由からシステムキッチンが多用されている。システムキッチンは、キャビネットに水回り設備や加熱調理器等を一体に組み込んだものである。たとえば、図2に示すように、シンク20を有する流し台キャビネット2と、上面に焜炉30を備えた加熱調理キャビネット3とが併設され、加熱調理キャビネット3の上方の壁面に換気のためのフード4が設置されると共にこのフード4に隣接して台所用品等を収納するための吊り戸5、6が設けられている。
【0003】
前記吊り戸5、6は埃等の発生を防止して台所用品等を衛生的に収納・保管する意味から、また、見栄えの点から、その底板は基材の両面に化粧紙を貼着した化粧板が用いられている。底板に用いられる前記化粧板は、少なくとも前記吊り戸5、6の内面側となる面が台所用品等の出し入れ時に擦れ傷が付き難いように耐擦傷性に有する面に構成されると共に、少なくとも前記吊り戸5、6の外面側となる面(底面)が加熱調理キャビネット3の焜炉30を使って調理された際に飛散した、たとえば、油分や調味料等で汚染されたとしても容易に拭き取ることができるように耐汚染性を有する面に構成される。
【0004】
また、前記吊り戸5、6の中で、フード4側に位置する前記吊り戸5は、たとえば、焜炉30の真上から所定の範囲内に設置される吊り戸は不燃構造とするという条例が定められている都道府県もあり、通常は前記吊り戸5の底板およびフード4側に位置する側面板は、化粧板の基材として不燃板が用いられるものである。
【0005】
上記したような諸々の性能が要求されるシステムキッチンの吊り戸の底板用化粧板は、従来、印刷が施された化粧紙に、一般的には不飽和ポリエステル樹脂および/ないしジアリルフタレート樹脂からなる熱硬化型樹脂を含浸させ、プレキュアー状態に乾燥させて得られる熱硬化型樹脂含浸紙を、基材の表面に積層し、加熱加圧して上記含浸紙中の熱硬化型樹脂をキュアーさせると共にこの含浸紙と基材とを一体に接着して形成していた。このようにして形成されたシステムキッチンの吊り戸の底板用化粧板は、(1)比較的汚れが付き易く落ち難いという問題、(2)鉛筆硬度としての耐擦傷性が十分に満足できるレベルではないという問題、あるいは、(3)熱硬化型樹脂を溶液化する際の有機溶剤が残留し、これが室内に揮散するという環境安全性の問題〔揮発性有機化合物(VOC)による室内空気汚染の問題〕がある。
【0006】
上記の(1)の問題を解決するものとして、基材表面に、樹脂含浸用紙に熱硬化型樹脂を含浸して乾燥した熱硬化型樹脂含浸紙と、薄紙に撥水性樹脂からなる防汚性樹脂塗材塗布層を表面に有する表面コーティング紙とを順次積層し、この積層体を加熱加圧して熱硬化型樹脂を含浸紙中の熱硬化型樹脂により、基材と熱硬化型樹脂含浸紙と表面コーティング紙とを一体化すると共に、表面コーティング紙裏面側を上記熱硬化型樹脂により補強した化粧板が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。この特許文献1に開示された発明は、上記の(1)の問題を解決するものであるが、(2)や(3)の問題の解決には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−38703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、耐擦傷性に優れ、汚れが付着しても容易に拭き取ることができ、揮発性有機化合物による室内空気汚染等の問題を軽減することができるシステムキッチンの吊り戸の底板用化粧板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するために、請求項1記載の本発明のキッチン吊り戸の底板用化粧板は、基材の両面に、分子内に不飽和基を有するポリエステルにアクリレート単量体からなる架橋剤を添加した100%樹脂分の不飽和ポリエステル樹脂からなる接着剤層を介して表層に硬化型樹脂からなる表面保護層を有する化粧紙を前記表面保護層が表出するように積層し、熱と圧力により前記化粧紙の紙層内に不飽和ポリエステル樹脂を含浸させると共に硬化させて前記基材と一体化させたことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2記載の本発明は、請求項1記載のキッチン吊り戸の底板用化粧板において、前記化粧紙の表面保護層が電離放射線硬化型樹脂で形成されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、請求項3記載の本発明は、請求項1、2のいずれかに記載のキッチン吊り戸の底板用化粧板において、前記表面保護層の鉛筆硬度が3H以上であることを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項4記載の本発明は、請求項1記載のキッチン吊り戸の底板用化粧板において、前記基材が無機質系基材であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明のキッチン吊り戸の底板用化粧板は、接着剤層が有機溶剤を含まない100%樹脂分の不飽和ポリエステル樹脂からなる組成物により形成されているので、揮発性有機化合物による室内空気汚染の問題を軽減することができる。
【0014】
また、本発明のキッチン吊り戸の底板用化粧板は、化粧紙の表面保護層を電離放射線硬化型樹脂で形成することにより、汚れが付着しても容易に拭き取ることができる。
【0015】
また、本発明のキッチン吊り戸の底板用化粧板は、前記表面保護層の鉛筆硬度を3H以上とすることにより、台所用品等の出し入れ時に擦れ傷が極めて付き難いものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるキッチン吊り戸の底板用化粧板の一実施例を図解的に示す。
【図2】システムキッチンの構成の一例を示す斜視図である。層構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上記の本発明について、図面等を用いて以下に詳しく説明する。
図1は本発明にかかるキッチン吊り戸の底板用化粧板の一実施例を図解的に示す層構成図であって、キッチン吊り戸の底板用化粧板1は基材10の両面に、分子内に不飽和基を有するポリエステルにアクリレート単量体からなる架橋剤を添加した100%樹脂分の不飽和ポリエステル樹脂からなる接着剤層11を設け、一方の面にベタ柄印刷層121と絵柄印刷層122とを順に印刷形成すると共に前記絵柄印刷層122側の面全面に電離放射線硬化型樹脂により表面保護層123を形成した紙基材120からなる化粧紙12を表面保護層123が表出するように積層し、熱と圧力により前記化粧紙12の紙層内の略全域に不飽和ポリエステル樹脂を含浸させると共に硬化させて前記基材10と前記化粧紙12とを前記接着剤層11を介して一体化させたものである。
【0018】
前記基材10としては、特に制限はなく、たとえば、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)等の木質系基材、石膏ボード、石膏スラグボード、石綿スレート板、石綿セメント板、珪酸カルシウム板、セメントスレート板、軽量発泡コンクリート板、中空押出セメント板、無機質複層板〔大建工業(株)製:ダイライト(商品名)〕等の無機質系基材などを挙げることができ、その厚さとしては9〜20mm程度が適当であるが、不燃構造を考慮すると、無機質系基材が好ましいものである。
【0019】
前記接着剤層11としては、分子内に不飽和基を有するポリエステルと単官能および/ないし多官能アクリレート単量体を添加した100%樹脂分の不飽和ポリエステル樹脂で形成される。分子内に不飽和基を有するポリエステルは不飽和多塩基酸と多価アルコール、あるいは、不飽和多塩基酸と飽和多塩基酸を併用して多価アルコールと反応して得られるものである。
【0020】
前記不飽和多塩基酸の好ましいものを例示するならば、たとえば、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸などのα,β−不飽和二塩基酸やジヒドロムコン酸等のβ,γ−不飽和二塩基酸を挙げることができる。これらの化合物は一種ないし二種以上を用いることができる。
【0021】
また、前記飽和多塩基酸の好ましいものを例示するならば、たとえば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、コハク酸、マロン酸、または、これらのジアルキルエステル等を挙げることができる。これらの化合物は一種ないし二種以上用いることができる。
【0022】
また、多価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイドないしプロピレンオキサイドないしブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加物等を挙げることができる。これらは一種ないし二種以上用いることができる。
【0023】
本発明で使用される分子内に不飽和基を有するポリエステルは、上記した酸成分と上記した多価アルコール成分とを周知の方法で縮合反応させて得られるものであり、酸成分と多価アルコール成分とのモル比は、酸成分/多価アルコール成分=0.9〜1.3が好ましい。また、前記ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、1200〜5000の範囲にあるものが好ましい。数平均分子量(Mn)が1200未満の場合は、樹脂硬化塗膜の機械的強度が低く、5000超の場合は、不飽和ポリエステル樹脂組成物の粘度が高くなるために好ましくない。
【0024】
次に、本発明で使用される架橋剤について説明する。前記架橋剤としては、アクリレート単量体が好適であり、これを例示するならば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の単官能単量体、あるいは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能単量体を挙げることができる。これらの単量体は、一種ないし二種以上用いることができる。本発明に用いるアクリレート単量体の配合量は不飽和ポリエステルの樹脂分に対して60重量%以下であり、アクリレート単量体としては多官能アクリレートを50重量%以上含有し、かつ、二重結合当量、すなわち、重合性の二重結合1個当たりの分子量が50〜180の範囲、好ましくは80〜150の範囲の短鎖単量体が適当である。多官能アクリレートの含有量が50重量%未満では、硬化した際の硬さが十分ではない虞があり、また、重合性の二重結合1個当たりの分子量が180超では重合体とした際の密度が粗になる虞があり、いずれの場合も表面の耐擦傷性が劣る虞がある。また、塗布適性や紙基材120への含浸適性、硬化速度等を勘案して単官能アクリレートを適宜用いてもよいものである。
【0025】
また、不飽和ポリエステル樹脂には、硬化速度を調整するために重合開始剤、重合促進剤、重合禁止剤等を使用することができる。
【0026】
また、不飽和ポリエステル樹脂に添加される重合開始剤としては、たとえば、メチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)、ベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルのようなラジカル開始剤等の周知のものから適宜選択して用いられる。また、重合促進剤としては、たとえば、ナフテン酸コバルト等のコバルト化合物、バナジウム化合物、マンガン化合物等の金属化合物、ジメチルニトリル等のアミン系化合物などを用いることができる。また、重合禁止剤としては、たとえば、ハイドロキノン、トリハイドロキノン、ベンゾキノン、トリハイドロベンゼン等を用いることができる。なお、上記したそれぞれの硬化速度調整剤は、併用してもよいものである。不飽和ポリエステル樹脂の塗布量としては、用いる紙基材120の坪量により適宜選択する必要があるが、概ね100〜250g/m2、好ましくは150〜200g/m2である。塗布量が100g/m2未満では、紙基材120の紙層内の略全域に含浸させることができないために紙層間の強度が低下し、また、塗布量が250g/m2超では垂れが発生する虞があり、加工上に支障をきたす。このような多量の固形分としての塗布量を確保することにより、紙基材120の紙層内の略全域に不飽和ポリエステル樹脂を満遍なく含浸させることができる。そして、このような多量の塗布量を確保する上で、樹脂分が100%のノンソルベントタイプが必須となる(ソルベントタイプでは固形分としての上記した塗布量の確保が難しい)。
【0027】
また、不飽和ポリエステル樹脂には、キッチン吊り戸の底板用化粧板1の硬度を高める意味から、微粒子を混合してもよく、前記微粒子としては、小麦粉や木粉、あるいは、無機充填剤であり、無機充填剤としては、たとえば、炭酸カルシウム、沈降性バリウム、タルク、粉末状の酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素(シリカ)、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイヤモンド、金剛砂等を例示することができる。混合量としては、不飽和ポリエステル樹脂の樹脂分に対して50〜250重量%、好ましくは150〜200重量%である。配合量が50重量%未満では満足する硬度が得られず、250重量%超では基材10との接着が弱くなる虞がある。
【0028】
また、前記化粧紙12の紙基材120としては、前記接着剤層11を形成する不飽和ポリエステル樹脂が含浸するものであれば特に制限はなく、たとえば、坪量が30〜100g/m2の建材用プリント用紙(建材用薄葉紙)、純白紙、あるいは、合成樹脂を混抄させて層間強度を強化した薄葉紙、酸化チタン等の不透明顔料を混抄したチタン紙等の紙質系素材、不織布、織布等を用いることができるが、建材用プリント用紙(建材用薄葉紙)、純白紙、不織布等を用いても紙間強度を強くすることができるために、紙層間から剥離することがないキッチン吊り戸の底板用化粧板1とすることができる。
【0029】
また、前記ベタ柄印刷層121および前記絵柄印刷層122としては、グラビア印刷法、オフセット印刷法、シルクスクリーン印刷法等の周知の印刷法でインキを用いて形成することができる。前記絵柄印刷層122としては、たとえば、木目模様、石目模様、布目模様、皮紋模様、幾何学模様、文字、記号、線画、各種抽象模様柄であり、前記ベタ柄印刷層121としては隠蔽性を有する着色インキでベタ印刷したものである。なお、図1においては、前記ベタ柄印刷層121および前記絵柄印刷層122の両印刷層を設けた構成を示したが、いずれか一方の構成であってもよいものである。
【0030】
また、前記ベタ柄印刷層121および前記絵柄印刷層122を形成するインキとしては、ビヒクルとして塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、イソシアネートとポリオールとからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂、ポリアミド樹脂等を1種ないし2種以上混合して用い、これに顔料、溶剤、各種補助剤等を加えてインキ化したものを用いることができ、環境問題を考慮すると、ポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリ酢酸ビニル、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合した非塩素系のビヒクルが適当であり、より好ましくはポリエステル、イソシアネートとポリオールからなるポリウレタン、ポリアクリル、ポリアミド系樹脂等の1種ないし2種以上混合したものである。
【0031】
次に、前記化粧紙12の表層に設ける表面保護層123について説明する。前記表面保護層123はキッチン吊り戸の底板用化粧板1に要求される耐擦傷性、耐摩耗性、耐水性、耐汚染性等の表面物性を付与するために設けられるものであり、この表面保護層123を形成する樹脂としては、熱硬化型樹脂ないし電離放射線硬化型樹脂等の硬化型樹脂を用いて形成するのが適当であるが、より好ましくは表面硬度が硬く、生産性に優れるなどの理由から電離放射線硬化型樹脂である。
【0032】
熱硬化型樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂には必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、または、重合促進剤を添加して用いる。たとえば、硬化剤としては、イソシアネートまたは有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤が不飽和ポリエステル樹脂には添加される。上記熱硬化型樹脂で表面保護層を形成する方法としては、たとえば、上記した熱硬化型樹脂を溶液化し、ロールコート法、グラビアコート法等の周知の塗布法で塗布し、乾燥すると共に硬化させることにより形成することができる。塗布量としては、固形分で概ね3〜30g/m2が適当である。
【0033】
電離放射線硬化型樹脂としては、電離放射線を照射することにより架橋重合反応を起こして3次元の高分子構造に変化する樹脂である。電離放射線は、電磁波または荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、可視光線、紫外線(近紫外線、真空紫外線等)、X線、電子線、イオン線等がある。通常は紫外線や電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト蛍光灯、メタルハライドランプ灯の光源が使用できる。紫外線の波長としては、190〜380nmの波長域を使用することができる。また、電子線源としては、コッククロフトワルト型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。用いる電子線としては、100〜1000keV、好ましくは100〜300keVのものが使用される。電子線の照射量は、通常2〜15Mrad程度である。
【0034】
そして、電離放射線硬化型樹脂は、分子中に、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、又はエポキシ基等のカチオン重合性官能基を有する単量体、プレポリマー又はポリマー(以下、これらを総称して化合物と呼称する)からなる。これら単量体、プレポリマー、及びポリマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。尚、本明細書で(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートの意味で用いる。
【0035】
ラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーとしては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。このプレポリマーは、通常、分子量が10000程度以下のものが用いられる。分子量が10000を超えると硬化した樹脂層の耐擦傷性、耐摩耗性、耐薬品性、耐熱性等の表面物性が不足する。上記のアクリレートとメタアクリレートは共用し得るが、電離放射線での架橋硬化速度という点ではアクリレートの方が速い為、高速度、短時間で能率よく硬化させるという目的ではアクリレートの方が有利である。
【0036】
カチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等のエポキシ系樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル化合物、スピロ化合物等のプレポリマーが挙げられる。
【0037】
ラジカル重合性不飽和基を有する単量体の例としては、(メタ)アクリレート化合物の単官能単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2エチルヘキシル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンテレフタレート等が挙げられる。
【0038】
また、ラジカル重合性不飽和基を有する多官能単量体として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノール−A−ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセリンポリエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェ−ト等が挙げられる。カチオン重合性官能基を有する単量体は、上記カチオン重合性官能基を有するプレポリマーの単量体を用いることができる。
【0039】
上記の電離放射線硬化型樹脂は電子線を照射すれば十分に硬化するが、紫外線を照射して硬化させる場合には、増感剤として光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合の光重合開始剤は、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、ミヒラーケトン、ジフェニルサルファイド、ジベンジルジサルファイド、ジエチルオキサイト、トリフェニルビイミダゾール、イソプロピル−N,N−ジメチルアミノベンゾエート等を単独又は混合して用いることができる。又、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、フリールオキシスルホキソニウムジアリルヨードシル塩等を単独又は混合物として用いることができる。尚、これら光重合開始剤の添加量は一般に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部程度である。また、この電離放射線硬化型樹脂で表面保護層123を形成する方法としては、たとえば、この電離放射線硬化型樹脂を塗布可能な粘度に調節し、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより形成することができる。塗布量としては、固形分として概ね3〜15g/m2が適当である。
【0040】
また、前記表面保護層123に、一層の耐擦傷性や耐摩耗性を付与する場合には、酸化アルミニウム、炭化珪素、二酸化珪素(シリカ)、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、マグネシウムパイロボレート、酸化亜鉛、窒化珪素、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化鉄、窒化硼素、ダイヤモンド、金剛砂、黒鉛等の無機粒子、あるいは、架橋アクリル等の合成樹脂からなるビーズなどの有機粒子等の微粒子(充填剤)を加えることにより達成することができる。前記微粒子の形状としては、要求される性能により、突起や角のあるもの、あるいは、突起や角のない真球状、楕円上、あるいは、これらに近い形状を選択すればよいものである。前記微粒子の平均粒子径としては、前記表面保護層123の塗膜厚さにより選択して用いる必要があるが、基本的には前記微粒子が前記表面保護層123から一部表出するように選択すべきであり、通常、平均粒径としては5〜100μm程度のものである。また、前記微粒子の電離放射線硬化型樹脂100重量部に対する割合は1〜50重量部、好ましくは5〜20重量部である。
【0041】
また、図示はしないが、前記表面保護層123が電離放射線硬化型樹脂からなる場合に特に好ましく、前記表面保護層123と前記紙基材120との間の層間接着強度を向上させる目的で、前記表面保護層123と前記ベタ柄印刷層121および前記絵柄印刷層122との間、および/ないし、前記ベタ柄印刷層121および前記絵柄印刷層122と前記紙基材120との間にプライマー層を設けてもよいものである。前記プライマー層としては、(i)アクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体と、(ii)イソシアネートとからなる樹脂で形成されたものである。すなわち、(i)のアクリル樹脂とウレタン樹脂との共重合体は、末端に水酸基を有するアクリル重合体成分(成分A)、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール成分(成分B)、ジイソシアネート成分(成分C)を配合して反応させてプレポリマーとなし、該プレポリマーにさらにジアミンなどの鎖延長剤(成分D)を添加して鎖延長することで得られるものである。この反応によりポリエステルウレタンが形成されると共にアクリル重合体成分が分子中に導入され、末端に水酸基を有するアクリル−ポリエステルウレタン共重合体が形成される。このアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の末端の水酸基を(ii)のイソシアネートと反応させて硬化させたものが前記プライマー層である。
【0042】
前記成分Aは、末端に水酸基を有する直鎖状のアクリル酸エステル重合体が用いられる。具体的には、末端に水酸基を有する直鎖状のポリメチルメタクリレート(PMMA)が耐候性(特に光劣化に対する特性)に優れ、ウレタンと共重合させて相溶化するのが容易である点から好ましい。前記成分Aは、共重合体においてアクリル樹脂成分となるものであり、分子量5000〜7000(重量平均分子量)のものが耐候性、接着性が特に良好であるために好ましく用いられる。また、前記成分Aは、両末端に水酸基を有するもののみを用いてもよいが、片末端に共役二重結合が残っているものを上記の両末端に水酸基を有するものと混合して用いてもよいものである。共役二重結合が残っているアクリル重合体を混合することにより、前記プライマー層と接する層、たとえば、前記表面保護層123の電離放射線硬化型樹脂とアクリル重合体の共役二重結合が反応するために電離放射線硬化型樹脂との間の接着強度を向上させることができる。
【0043】
前記成分Bは、ジイソシアネートと反応してポリエステルウレタンを形成し、共重合体においてウレタン樹脂成分を構成するものである。前記成分Bは、両末端に水酸基を有するポリエステルジオールが用いられる。このポリエステルジオールとしては、芳香族ないしスピロ環骨格を有するジオール化合物とラクトン化合物ないしその誘導体、またはエポキシ化合物との付加反応生成物、二塩基酸とジオールとの縮合生成物、および、環状エステル化合物から誘導されるポリエステル化合物等を挙げることができる。上記ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、メチルペンテンジオール等の短鎖ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環族短鎖ジオール等を挙げることができる。また、上記二塩基酸としては、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等を挙げることができる。ポリエステルポリオールとして好ましいのは、酸成分としてアジピン酸ないしアジピン酸とテレフタル酸の混合物、特にアジピン酸が好ましく、ジオール成分として3−メチルペンタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールを用いたアジペート系ポリエステルである。
【0044】
前記プライマー層において、前記成分Bと前記成分Cとが反応して形成されるウレタン樹脂成分は、前記プライマー層に柔軟性を与え、アクリル重合体からなるアクリル樹脂成分は、前記プライマー層において耐候性および耐ブロッキング性に寄与する。ウレタン樹脂において、前記成分Bの分子量は前記プライマー層に柔軟性を十分に発揮可能なウレタン樹脂が得られる範囲であればよく、アジピン酸ないしアジピン酸とテレフタル酸の混合物と、3−メチルペンタンジオールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールからなるポリエステルジオールの場合、500〜5000(重量平均分子量)が好ましい。
【0045】
前記成分Cは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する脂肪族ないし脂環族のジイソシアネート化合物が用いられる。このジイソシアネートとしては、たとえば、テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4(2,4,4)−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4’−シクロヘキシルジイソシアネート等を挙げることができる。ジイソシアネート成分としては、イソホロンジイソシアネートが物性およびコストが優れる点で好ましい。上記の成分A〜Cを反応させる場合のアクリル重合体、ポリエステルポリオールおよび後述する鎖延長剤の合計の水酸基(アミノ基の場合もある)と、イソシアネート基の当量比はイソシアネート基が過剰となるようにする。
【0046】
上記の三成分A、B、Cを60〜120℃で2〜10時間程度反応させると、ジイソシアネートのイソシアネート基がポリエステルポリオール末端の水酸基と反応してポリエステルウレタン樹脂成分が形成されると共にアクリル重合体末端の水酸基にジイソシアネートが付加した化合物も混在し、過剰のイソシアネート基および水酸基が残存した状態のプレポリマーが形成される。このプレポリマーに鎖延長剤として、たとえば、イソホロンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のジアミンを加えてイソシアネート基を前記鎖延長剤と反応させ、鎖延長することでアクリル重合体成分がポリエステルウレタンの分子中に導入され、末端に水酸基を有する(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体を得ることができる。
【0047】
(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体に、(ii)のイソシアネートを加えると共に、塗布法、乾燥後の塗布量を考慮して必要な粘度に調節した塗布液となし、グラビアコート法、ロールコート法等の周知の塗布法で塗布することにより前記プライマー層を形成することができる。プライマー層の乾燥後の塗布量としては、1〜20g/m2であり、好ましくは1〜5g/m2である。また、このプライマー層は、必要に応じて二酸化珪素粉末などの上記した微粒子(充填剤)、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加した層としてもよいものである。また、(ii)のイソシアネートとしては、(i)のアクリル−ポリエステルウレタン共重合体の水酸基と反応して架橋硬化させることが可能なものであればよく、たとえば、2価以上の脂肪族ないし芳香族イソシアネートが使用でき、特に熱変色防止、耐候性の点から脂肪族イソシアネートが望ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートの単量体、または、これらの2量体、3量体などの多量体、あるいは、これらのイソシアネートをポリオールに付加した誘導体(アダクト体)のようなポリイソシアネートなどを挙げることができる。
【0048】
また、本発明のキッチン吊り戸の底板用化粧板1の製造方法としては、基材10の一方の面に、架橋剤を添加した不飽和ポリエステル樹脂をロールコート法等の周知の塗布方法で塗布して接着剤層11を形成し、該塗布面に表層に電離放射線硬化型樹脂を形成した化粧紙12を積層すると共に、前記基材10の他方の面に、架橋剤を添加した不飽和ポリエステル樹脂をロールコート法等の周知の塗布方法で塗布して接着剤層11を形成し、該塗布面に表層に電離放射線硬化型樹脂を形成した化粧紙12を積層し、ホットプレス機にて所定の成形条件、たとえば、温度100〜140℃、圧力4〜8kg/cm2、時間50〜120秒で加熱加圧(熱圧成形)することにより、前記化粧紙12を構成する紙基材120の紙層内の略全域に不飽和ポリエステル樹脂を含浸させると共に硬化させて前記基材10と前記化粧紙12とを前記接着剤層11を介して一体化させたキッチン吊り戸の底板用化粧板1を得ることができる。前記接着剤層11を形成する架橋剤を添加した不飽和ポリエステル樹脂の塗布量としては、不飽和ポリエステル樹脂を前記化粧紙12の前記紙基材120の紙層内の略全域に十分に含浸させる必要があり、用いる前記紙基材120の坪量により選択する必要があるが、たとえば、前記紙基材120の坪量が30g/m2の建材用プリント用紙(建材用薄葉紙)の場合は、樹脂分として少なくとも100g/m2以上塗布する必要がある。なお、前記基材10の両面に一体形成する化粧紙12は上記したように同時に一体形成してもよいし、片方の面ごとに一体形成してもよいものである。
【0049】
次に、本発明について、以下に実施例を挙げてさらに詳しく説明する。
【0050】
[化粧紙の作製]
60g/m2の建材用薄葉紙(一般紙グレード)の一方の面にアクリル系インキで木目柄をグラビア印刷し、該印刷面にアクリル−ウレタン樹脂(アクリルポリオール100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加した樹脂)溶液をグラビア印刷法で固形分が5g/m2となるように塗布してプライマー層を形成し、その後に、前記プライマー層上に、電離放射線硬化型樹脂〔エポキシアクリレートポリマー/トリメチロールプロパントリアクリレート/シリコンアクリレート/結晶質の球状シリカ(平均一次粒子径:12μm)=10重量部/10重量部/0.4重量部/20重量部〕をロールコート法で塗布・乾燥して後に電子線(175KeV、5Mrad)を照射して固形分が10g/m2の表面保護層を形成した化粧紙を作製した。
【実施例1】
【0051】
15mm厚さのダイライト〔大建工業(株)製:商品名〕の一方の面に、表1の配合の不飽和ポリエステル樹脂組成物をナチュラルリバースコート法で200g/m2塗布し、該塗布面に上記で作製した化粧紙を表面保護層が表出するように載置し、ホットプレス機(プレス温度125℃、プレス圧7kg/cm2、プレス時間60秒)にてプレス成形して本発明のキッチン吊り戸の底板用化粧板を作製した。
【0052】
【表1】

【0053】
[比較例1]
予め、一方の面にアクリル系インキで木目柄をグラビア印刷した60g/m2の建材用薄葉紙(一般紙グレード)にDAP樹脂(120g/m2)を含浸させ、プレキュアー状態に乾燥させて得られる熱硬化型樹脂含浸紙を、15mm厚さのダイライト〔大建工業(株)製:商品名〕の両方の面にグラビア印刷した木目柄が表面側に位置するように載置して、ホットプレス機(温度130℃、プレス圧7kg/cm2、加圧時間10分)にてプレス成形して比較例とするキッチン吊り戸の底板用化粧板を作製した。
【0054】
上記で作製した実施例1、および、比較例1のキッチン吊り戸の底板用化粧板について、鉛筆硬度、耐汚染性を下記する評価方法で評価すると共に、プレス成形前の実施例1においては化粧紙と比較例1においてはプレキュアー状態に乾燥させた熱硬化型樹脂含浸紙の揮発性有機化合物(VOC)を下記する測定方法で測定し、その結果を表2に纏めて示した。なお、化粧紙と熱硬化型樹脂含浸紙の揮発性有機化合物を測定したのは、これ以外に実施例1および比較例1のキッチン吊り戸の底板用化粧板には揮発性有機化合物を使用していないからである。
【0055】
【表2】

【0056】
〔評価方法〕
※1)鉛筆硬度:JISK5400に準拠して測定した。サンプル数は5である。
※2)耐汚染性:JAS特殊合板汚染B試験に準じる。汚染物質として黒色速乾性インキ
を用いた。
※3)VOCの残留総量:実施例1の化粧紙、および、比較例1のプレキュアー状態に乾
燥させた熱硬化型樹脂含浸紙を10cm×10cm角に裁断す
ると共にこのものを1cm間隔で切断したものを一定容量の容
器に密封し、この容器を100℃で10分間加熱して後に容器
内の一定量のガスをガスクロマトグラフ〔(株)島津製作所製
:GC−14B(商品名)〕で測定し、揮発性有機化合物の残
留総量を測定した。単位はmg/m2である。なお、表3に揮
発性有機化合物の残留総量の内訳を示した。
【0057】
【表3】

【0058】
表2からも明らかなように、実施例1のキッチン吊り戸の底板用化粧板は鉛筆硬度に優れると共に、耐汚染性においても優れるものとすることができた。また、実施例1のキッチン吊り戸の底板用化粧板は比較例1に比べて揮発性有機化合物の残留総量を少ないものとすることができ、室内空気汚染の問題についても軽減することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 キッチン吊り戸の底板用化粧板
2 流し台キャビネット
3 加熱調理キャビネット
4 フード
5,6 吊り戸
10 基材
11 接着剤層
12 化粧紙
20 シンク
30 焜炉
120 紙基材
121 ベタ柄印刷層
122 絵柄印刷層
123 表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の両面に、分子内に不飽和基を有するポリエステルにアクリレート単量体からなる架橋剤を添加した100%樹脂分の不飽和ポリエステル樹脂からなる接着剤層を介して表層に硬化型樹脂からなる表面保護層を有する化粧紙を前記表面保護層が表出するように積層し、熱と圧力により前記化粧紙の紙層内に不飽和ポリエステル樹脂を含浸させると共に硬化させて前記基材と一体化させたことを特徴とするキッチン吊り戸の底板用化粧板。
【請求項2】
前記化粧紙の表面保護層が電離放射線硬化型樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1記載のキッチン吊り戸の底板用化粧板。
【請求項3】
前記表面保護層の鉛筆硬度が3H以上であることを特徴とする請求項2記載のキッチン吊り戸の底板用化粧板。
【請求項4】
前記基材が無機質系基材であることを特徴とする請求項1記載のキッチン吊り戸の底板用化粧板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−99954(P2013−99954A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−4188(P2013−4188)
【出願日】平成25年1月15日(2013.1.15)
【分割の表示】特願2005−85400(P2005−85400)の分割
【原出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】