キナクリドン顔料の水性ミリング方法
【課題】顔料の結晶構造を破壊せず、キナクリドンの2つの同形結晶相(β結晶相およびγ結晶相)での粒度絞りに使用でき、ミリングまたは再結晶化において多量の廃棄物を生成しない環境にやさしい方法の提供。
【解決手段】β−キナクリドンまたはγ−キナクリドン粗製顔料に、結晶相抑制剤としての2,9−ジクロロキナクリドンを添加し、さらにスチレンコポリマー分散剤、消泡剤、添加剤、および約10重量%を超える水の存在下で、粗製顔料をミリング後、有機顔料を分離する。
【解決手段】β−キナクリドンまたはγ−キナクリドン粗製顔料に、結晶相抑制剤としての2,9−ジクロロキナクリドンを添加し、さらにスチレンコポリマー分散剤、消泡剤、添加剤、および約10重量%を超える水の存在下で、粗製顔料をミリング後、有機顔料を分離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレンコポリマー分散剤の存在下で粗製顔料をミリング(milling)することによって有機顔料の粒度絞りする水性方法に関する。
【0002】
有機顔料、例えばキナクリドンは、未処理では、一般に、顔料としての使用には不適であり、必要とされる顔料の特性、例えば粒度、粒子形状、多形相および着色力を得るために、さらに処理しなければならないことが、当分野でよく知られている。
【0003】
特定の用途のために必要な色特性を得るためには、粗製顔料を、特定の用途のための適正な着色力、透明度または不透明度を有する顔料グレードに変えなくてはならない。任意の種類の顔料の色を付与する作用は、分散液中の顔料の粒度に依存する。したがって、着色力、透明度および不透明度といった特性は全て、粒度に大きく依存する。よって、粗製有機顔料に施す1つ以上の仕上げ工程またはコンディショニング工程は、粒度絞り(粒度を小さくすること)を必要とする。例えば、R. B. McKay、「Control of the Application Performance of Classical Organic Pigments」in JOCCA, 89-93を参照されたい。
【0004】
例えば、米国特許第5,840,901号明細書に記載のように、キナクリドンを過酸化物方法から合成することができる。得られた顔料は、様々な用途のために必要な色特性を有していないので、粗製顔料と呼ばれる。さらなる粒度絞りが必要となる。乾式ミリング方法を含む、適正な顔料の粒度絞りを達成する様々な従来の手段があり、それらは、例えば、米国特許第2,402,167号明細書、第3,030,370号明細書および第5,084,100号明細書に記載されている。これらの文献は、無機塩の存在下でかつ金属製のツメ(nails)および/またはボールを使用して乾燥顔料粉末をミリングすることによる顔料の粒度絞りを開示している。この方法では、粗製顔料を、まず、ほぼ無定形相にまでミリングし、続いて再成長方法を行って、適正な結晶の寸法を得る。このように粗製顔料をミリングし、続いて再結晶することにより、この仕上げ方法は複雑に、そして高価になる。別の従来の顔料仕上げ方法は、例えば、米国特許第3,326,918号明細書、第3,607,336号明細書および第4,455,173号明細書に記載されているような酸排出(acid drowning)である。この方法では、粗製有機顔料を、大抵は極性有機溶媒の存在下で、硫酸のような強酸に溶解させる。次に、顔料を、排出して(drown out)、特定の用途のために設計された適切な粒度に再結晶させる。いずれの方法でも、最初に合成された顔料結晶は、多かれ少なかれ破壊されて、再構築され、このことにより、最終生成物のコストは著しく高くなる。さらに、乾式ミリング方法は、無機塩の存在を必要とし、また、強酸中での再結晶を必要とするので、多量の環境廃棄物を生成する。溶解方法も同様に、多量の酸廃棄物を生成する。
【0005】
ミリング法は、様々な有機顔料の特性を改善するものとして知られている。そのいくつかの例は、米国特許第6,210,474号明細書、米国特許第4,597,794号明細書、米国特許第5,231,131号明細書および米国特許第5,530,043号明細書に記載されている。しかし、これらの文献に記載のミリングされた顔料は、粗製有機顔料ではなく、仕上げ製造された顔料である。さらに、分散ミリング剤は、スチレンコポリマーではない。
【0006】
米国特許第6,410,619号明細書には、純粋なアクリルコポリマー分散剤を使用して粗製有機顔料を分散させる方法が記載されている。欧州特許第496149号明細書には、グラフィックで利用される水性エマルジョンの形成に利用されるスチレンコポリマーが開示されている。特開昭55−89366号公報および米国特許第4,293,475号明細書は、顔料分散液を製造するために使用するスチレンコポリマーを開示している。国際公開第9905575号パンフレット、欧州特許第636,942号明細書および米国特許第5,432,036号明細書は、乾式の電子写真画像形成のためのトナー組成物を製造するためのスチレンコポリマーベースの樹脂を開示している。米国特許第2,816,115号明細書は、フタロシアニン顔料を分散させるための加水分解されたスチレン−無水マレイン酸コポリマーの使用を開示している。米国特許第6,056,814号明細書は、粗製有機顔料の乾式ミリングのためのスチレンコポリマーの使用を開示している。
【0007】
粒度絞りの際に、顔料の結晶構造を破壊せず、キナクリドンの2つの同形結晶相、好ましくはβ結晶相およびγ結晶相での粒度絞りにも使用できる方法が必要とされている。また、ミリングまたは再結晶化において多量の廃棄物を生成しない環境にやさしい方法も必要とされている。これに加えて、高い顔料濃度での粒度絞りを可能にし、これにより、製造処理量を増大させる方法も必要とされている。さらに、粒度絞りの前に粗製顔料を乾燥させなくともよい、エネルギーコストを節約する方法が必要とされている。
【0008】
上記の文献はいずれも、スチレンコポリマー分散剤を、粗製有機顔料の光学的特性を改善するためにナノメートルの範囲にまで粒度を小さくする方法のための水性ミリング剤として使用することを開示していない。
【0009】
本発明は、高分子量までのスチレンコポリマーの媒体を分散剤として使用する、キナクリドン顔料の水性粒度絞り方法に関する。得られた生成物は、場合により、塩基性または酸性の条件下で熟成させ、スチレンコポリマー分散剤の存在下で結晶を再成長させる。よって、本発明の方法は、強酸の使用および/または無機塩を利用するミリングを必要とする仕上げ方法およびミリング方法の必要性を回避する。
【0010】
本発明で開示する水性有機顔料粒子の粒度絞り方法は、公知の方法と比較して経済的な方法である。この方法では、第一には、粗製有機顔料のナノメートルの範囲までの水性粒度絞りのためにスチレンコポリマー分散剤を使用する。得られた生成物は、熟成してもしなくても、コーティング物、フィルム、プラスチックおよびインク中で優れた適用特性を有している。得られた生成物は、極めて良好な分散性および耐光性も有している。この簡単なミリング方法は、ミリング、ならびに高性能の不透明顔料の製造に適した粒度再成長方法(粒度を増大させる方法)と組み合わせて、透明または半透明の顔料生成物を製造するために使用することができる。
【0011】
好ましくは、この分離されミリングされた有機顔料または顔料混合物を、塩基性条件下で再成長させ、不透明な顔料を形成する。
【0012】
本発明の顔料は、分離し、純粋な形態で乾燥することができ、その場合、顔料は、その後、例えばボールミルまたはビーズミルを使用して、プラスチック、塗料および印刷用インク中で簡単に分散させることができる。また、本発明の顔料を、湿った圧縮ケークとしても、インク、コーティング物および化粧品のための顔料分散液を直接的に調製するために使用することができる。
【0013】
本発明の方法によって製造された顔料(場合によりさらなる添加剤が添加されていてもよい)は、マスターバッチ(「濃縮物」)の形態でポリマーに添加することができ、このマスターバッチは、ポリマー中に組み込まれて、例えば、約1重量%〜約40重量%、好ましくは2重量%から約20重量%の濃度でその成分を含む。
【0014】
本発明の顔料は、優れた適用特性、特に、高い着色力を備えた良好な色特性を示す印刷用インクを調製するための濃縮物としても理想的である。
【0015】
本明細書に記載の本発明の方法によって製造された、分離された顔料を含む材料は、成型物、ロトモールディングによる成型物(回転成型物)、射出成型物、ブロー成型物、フィルム、テープ、単一フィラメント、繊維、不織布、所定の輪郭を有する成形物(profiles)、粘着物またはパテ、表面コーティング物およびこれらに類するものの製造のために使用することができる。
【0016】
特に記載がなければ、全ての重量は、組成物または混合物の全重量に対する値である。ただし、水溶性スチレンコポリマー分散剤(ii)および任意の添加物(iv)の重量パーセントは、粗製有機顔料の乾燥重量に対する値である。
【0017】
有機顔料の粒度絞りの方法であって、この顔料の光学的特性を改善するための本発明の方法は、
(a)
i)1種以上の粗製有機顔料約10〜60重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)混合物をミリングすることと、
(b)ミリングされた有機顔料を分離することとを含む。
【0018】
好ましくは、上記混合物は、
i)1種以上の粗製有機顔料約10〜45重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜20重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)。
【0019】
より好ましくは、上記混合物は、
i)1種以上の粗製有機顔料約15〜35重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約5〜10重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.5〜5.0重量%、および
v)水約30重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)。
【0020】
この方法では、顔料懸濁液を、ダイノーミル(Dyno-mill)またはネッチミル(Netzsch-mill)のようなミル中のミリング媒体、例えば酸化ジルコニウムビーズを介して連続的に循環させる。顔料の一次粒子の粒度分布は、ミリング時間およびミリング媒体の寸法によって、約30〜300nmにまで小さくなる。好ましくは、顔料の一次粒子の粒度分布は、約40〜200nmにまで小さくなる。場合により、特定の用途のために必要な不透明性を得るために、続いて再成長方法を行うことができる。本発明によって得られた生成物は、透明、半透明または不透明であってよく、塗料、プラスチックまたはインク塗布物中で、着色力、レオロジー、耐熱性および耐光性といった優れた特性を示す。
【0021】
本発明で使用される粗製顔料は、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン、トリフェンジオキサジン、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンサンスロン、フラバンスロン、インダンスロン、ペリノン、ピランスロン、チオインディゴ、4,4’−ジアミノ−1,1−ジアントラキノニルおよびアゾ化合物、ならびにこれらの置換誘導体を含む。固溶体を含む混合物も使用することができる。好ましい有機顔料は、高性能顔料、例えば、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、1,4−ジケトピロロピロールおよびジオキサジン顔料である。特に好ましい顔料は、キナクリドン、ペリレンおよび1,4−ジケトピロロピロールである。
【0022】
粗製顔料
粗製顔料または顔料混合物は、一般に、発色が良好でないことおよび粒径範囲が約0.2〜40μm、好ましくは0.3〜4ミクロン、より好ましくは約1.0〜3.0μmであることから、着色剤として必要な特性を欠いている。これに替えて、本発明では、粒径範囲が約0.3〜0.5ミクロンである顔料粒子からなる市販の顔料を、ミリングすべき原材料として使用することができる。
【0023】
特に、β結晶相およびγ結晶相中の式(A)の置換されたまたは置換されていないキナクリドンが特に好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
式(A)中、XおよびYは、互いに独立して、水素、ハロゲン、−OH、−NO2、−CF3、C1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基、置換されたC1〜C4アルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、フェノキシ基、−COOH、−COO−C1〜C4アルキル基、−SO3H、フェニルアミノ基、ベンズアミノ基、−N(CH3)2、−SO2NH2、−SO2N(CH3)2、ピリジノ基、−CONH2または−CON(CH3)2、特にH、F、Cl、Br、I、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシであり、
nは、0、1または2、特に0または1であり、
C1〜C4アルコキシ基は、4個までの炭素原子を有するように規定されており、分枝しているまたは分枝していないラジカルであり、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシおよびn−ブトキシである。
【0026】
C1〜C4アルキル基は、4個までの炭素原子を有するように規定されており、分枝しているまたは分枝していないラジカルであり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびn−ブチルである。
【0027】
さらに好ましいキナクリドンは、例えば、キナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、3,10−ジクロロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、2,3,9,10−テトラクロロキナクリドン、2,4,9,11−テトラクロロキナクリドン、2,9−ジフルオロキナクリドン、2,9−ジブロモキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、3,10−ジメチルキナクリドン、4,11−ジメチルキナクリドン、2,4,9,11−テトラメチルキナクリドン、2,9−ジ(t−ブチル)キナクリドン、2,9−ジヒドロキシルキナクリドン、2,9−ジ(トリフルオロメチル)キナクリドン、2,9−ジメトキシキナクリドン、2,9−ジエトキシキナクリドン、2,4,9,11−テトラメトキシキナクリドン、2,9−ジカルボキシルキナクリドン、2,9−ジクロロヘキシルキナクリドン、2,9−ジフェニルキナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノ)キナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノスルホ)キナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノカルボニル)キナクリドン、3,10−ジニトロキナクリドン、2,9−ジメチル−4,11−ジクロロキナクリドン、2,9−ジメチル−4,11−ジカルボキシキナクリドンおよび2,9−ジピリジノキナクリドンである。キナクリドンは、複数の多形相(例えば、α相、β相およびγ相)で存在することができ、全てが包含されている。
【0028】
式(A)の最も好ましいキナクリドンは、β−またはγ−未置換キナクリドンまたは2,9−ジクロロキナクリドンである。
【0029】
コポリマー分散剤
粗製顔料の水性ミリングのためのコポリマー分散剤としては、親水性官能基および疎水性官能基を含むコポリマーを使用するのが好ましい。前者の部分は、イオン化可能であって、アンモニウム塩またはアルカリ金属塩を形成することができる。典型的なスチレンコポリマー分散剤の化学的構造を、次の式(B)に示す。
【0030】
【化2】
【0031】
式中、R1は、H、C1〜C4アルキル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ニトロ基またはアミノ基、C1〜C18アルキレン基またはC1〜C4アルコキシ基である。R2は、HおよびC1〜C4アルキル基であり、R3は、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基であり、R4およびR5は、互いに独立して、HまたはC1〜C4アルキル基である。100>n>1であり、100>m>1である。コポリマー中のスチレンモノマー単位の割合は、約10〜90モル%の範囲にあってよいが、スチレンまたはスチレン誘導体モノマーが、式(B)のコポリマーの疎水性モノマー単位の約50モル%より多くを占めていることが望ましい。
【0032】
(単数または複数の)モノマー単位は、最終的なスチレンコポリマーの形成において使用される(単数または複数の)モノマーとして定義される。
【0033】
本発明の好ましいスチレンコポリマー分散剤では、スチレン対(メタ)アクリルモノマー単位の比が、約2:1以上である。
【0034】
コポリマーは、好ましくはランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーである。
【0035】
コポリマーの親水性部分は、アクリル酸、メタクリル酸、またはアクリル酸またはメタクリル酸の加水分解エステルを含む、適切な不飽和酸モノマー単位からなっている。適切な不飽和酸モノマー単位の例は、(メタ)アクリル酸およびその低級アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、クロトン酸およびこれらに類するもの、ならびにこれらの組合せを含む。不飽和酸モノマー単位は、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムを含む適切なカチオンを有するカルボキシレート塩の形態とすることができる。
【0036】
(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸誘導体を指す。
【0037】
スチレンコポリマー分散剤が、不飽和酸モノマー単位を最大で約49モル%含むことが望ましい。特に、不飽和酸モノマー単位は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の誘導体、またはそれらのカルボキシレート塩であることが好ましい。
【0038】
コポリマーの疎水部分を形成するモノマーは、スチレンおよびスチレン誘導体、例えば、C1〜C4アルキルまたは置換スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、o−、p−およびm−クロロメチルスチレン、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ニトロ基またはアミノ基で置換されたスチレン、ブタジエンまたはオクタジエンから選択することができる。
【0039】
本発明で使用されるスチレンコポリマーは、平均分子量が約5,000〜20,000の高分子量までのコポリマーの媒体である。好ましくは、コポリマーの平均分子量は、約9,000〜17,000の範囲にある。
【0040】
本発明で使用される好ましいスチレンコポリマーは、SC Johnson Polymer(1525 Howe St.; Racine, Wis. 53403; USA)のような多くの専門の化学製造者より市販のスチレンアクリルコポリマーである。製品の例としては、Joncryl種(シリーズ)の全てのスチレンコポリマーを挙げることができ、固体状態の製品およびその溶液、例えばアンモニウム塩およびナトリウム塩を含む。これらのスチレンコポリマーの分子量は、約8,500〜16,500の範囲にある。スチレン対アクリル酸モノマー単位の比は、約2:1以上である。
【0041】
スチレンコポリマーは、湿式ミリング混合物中で、乾燥顔料を約0.1〜20重量%、好ましくは約1.0〜20重量%、より好ましくは顔料の約5〜10重量%を占めている。
【0042】
湿式ミリング混合物は、湿式ミリング混合物の全量中で、有機顔料を約10〜60重量%、好ましくは約15〜35重量%含む。
【0043】
スチレンコポリマーは、粗製顔料ミリング混合物の粘度を調整するために、ミリング前およびミリング中に添加することができる。
【0044】
スチレンコポリマーは、好ましくは、水性ミリング媒体中に可溶である。
【0045】
ミリング
水性ミリングを、公知の湿式ミリング法を用いて行う。特定のミリング装置は、一般に、使用が難しいわけではないが、適切なミルは、水平ミル、例えばダイノーミル、アイガーミル(Eiger-mill)、ネッチミルおよびスーパーミル(Super mill)を含む。また、様々な粉砕媒体を含む、追加的な垂直ミル、ボールミル、磨砕機、振動ミルおよびこれらに類するものが適切である。適切な粉砕媒体は、塩、砂、ガラスビーズ、セラミックスビーズおよびアルミナ、または金属ビーズを含む。
【0046】
用いられるミルの種類に関わらず、粗製顔料、スチレンコポリマーおよび別の任意の成分を、所望の粒度に達するまでミリングする。ミリング温度は、ミルの寸法およびミリングされる粗製顔料の量に依存するが、一般に、0℃〜約60℃の温度である。好ましくは、方法ミリング温度は、15℃〜約60℃である。場合により、水で冷却して温度を制御することもできる。
【0047】
本発明では、水性ミリングによって得られる顔料の平均粒径は、約30〜300nm、好ましくは40〜200nmである。
【0048】
粉砕時間
粒度絞りの時間は、特定の用途のために必要とされる粒度および湿式ミリングされる特定の粗製顔料に依存して、30分から12時間とすることができる。β−キナクリドン粗製顔料の場合には、ミリングされた生成物は、12時間の水性ミリング後もβ結晶相を維持していた。γ−キナクリドンの場合には、粗製顔料を5時間ミリングした後、γ−II結晶相が完全にγ−I相に変化していた。最も高い着色力は、5時間のミリング時間内に得られた。ミリング時間を延長することによって、顔料の透明度は向上したが、着色力は一定のままであるかまたはわずかに変化しただけであった。
【0049】
破砕媒体
破砕媒体は、通常、チャンバ空間の約75%〜85%に装填される。ミリング媒体は、例えば酸化ジルコニウム、ガラス、ボロシリケート、金属、アルミナおよびポリマービーズのような材料からなるビーズを含んでおり、これらは、例えば、米国特許第5,902,711号明細書および米国特許第5,478,705号明細書に記載されている。
【0050】
ミリング液体
適切なミリング液体は水であり、極性有機溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メタノールのような低級脂肪族アルコール、テトラヒドロフランおよびジオキサンを含むエーテル、ならびエチレングリコールやグリセロールのようなアルキレングリコールおよびトリオールを5重量%未満含むことができる。
【0051】
ミリング液体は、約10重量%を超える、好ましくは約20重量%を超える、最も好ましくは30重量%を超える水からなっている。
【0052】
ミリング添加剤
有機顔料誘導体のような顔料添加剤、またはポリマーのような非顔料添加剤を、ミリング方法においてミリング混合物に場合により添加することができる。
【0053】
粗製顔料は、場合により、別の添加剤、例えば表面改質剤、レオロジー改良剤および質感改良剤(texture improving agents)、消泡剤、湿潤剤、粒子成長抑制剤、結晶相調整剤(crystal phase directors)および凝集防止剤と共に湿式ミリングすることができる。
【0054】
表面改質試薬、レオロジー改良剤および質感改良剤は、キナクリドンモノスルホン酸またはキナクリドンモノスルホン酸アルミニウム塩または3,5−ジメチルピラゾール−1−メチルキナクリドンを含むことができる。別の適切な質感改良剤は、特に、18個より少ない炭素原子の脂肪酸、例えばステアリン酸またはベヘン酸またはそれらのアミドまたは金属塩、好ましくはナトリウムまたはアンモニウム塩、ならびに可塑剤、ワックス、樹脂酸、例えば、アビエチン酸またはその金属塩、コロフォニー、アルキルフェノール、または脂肪族アルコール、例えばステアリルアルコール、またはビシナルジオール、例えばドデカン−1,2ジオールである。添加剤は、ミリングスラリーに直接的に添加することもできるし、粗製顔料と同時に添加することもできる。1種または複数種の添加剤は、場合により、約0.5〜20重量%で添加することができる。好ましくは、1種または複数種の添加剤は、場合により、約1.0〜5.0重量%で添加することができる。
【0055】
消泡剤
消泡剤を、本発明の湿式ミリング方法で場合により使用することができる。アセチレンベースの消泡剤が好ましい。消泡剤は、泡の制御のために、ミリング前および/またはミリング中に添加することができる。
【0056】
湿式ミリングされた粗製顔料の分離
ミリング後、顔料を、当分野で公知の1つ以上の分離方法によって、ミリング混合物から分離することができる。塩の残渣を除去するための濾過、および続いて洗浄が、好ましい分離方法である。当分野で公知の別の回収方法、例えばトレー乾燥、噴霧乾燥、スピンフラッシュ乾燥(spin flash drying)、凍結乾燥、遠心分離または簡単なデカンテーションも、適切な分離方法である。このような方法を、個々でまたは組み合わせて用いることができる。
【0057】
別の態様では、本発明は、β−キナクリドンまたはγ−キナクリドン粗製顔料の粒度絞り方法中の結晶相抑制剤としての2,9−ジクロロキナクリドンの方法または使用にも関する。
【0058】
キナクリドン(QA)は、3種の結晶相中で存在することが知られている。米国特許第2,844,484号明細書に記載のα相、米国特許第2,844,581号明細書および第2,969,366号明細書に記載のγ相は、青みがかった赤色をしている。米国特許第2,844,485号明細書および第4,857,646号明細書に記載のβ形態は、バイオレットである。αキナクリドン結晶形態は、熱に対して不安定であるので市販されていない。W. Herbst and K. Hunger, "Industrial Organic Pigments", VCH Publishers, Inc., 1997, 464頁を参照されたい。
【0059】
キナクリドンのような有機顔料は未処理では、一般に顔料としての使用には不適であって、必要な原料特性、例えば粒度、粒子形状、多形相および着色力を向上させるようにさらなる処理が行われなければならないことは、当分野で知られている。
【0060】
特定の用途に必要な色特性を得るためには、粗製顔料を、特定の用途のための適正な着色力、透明度または不透明度を有する顔料グレードに変化させなければならない。任意の種類の顔料の色を付与する作用は、分散液中の顔料の粒度に依存する。したがって、着色力、透明度および不透明度といった特性は全て、粒度に大きく依存する。よって、粗製有機顔料に施す1つ以上の仕上げ工程またはコンディショニング工程は、粒度絞りを必要とする。例えば、R. B. McKay、「Control of the Application Performance of Classical Organic Pigments」in JOCCA, 89-93を参照されたい。
【0061】
したがって、粗製β−キナクリドンまたはγ−キナクリドンに、通常、粒度絞りの方法を施す。このβ−またはγ−キナクリドンの粒度絞り中、β相またはγ相は、結晶相抑制剤がないと、ミリング条件によってα結晶態に変化する傾向がある。α−キナクリドンが、β−またはγ−キナクリドンのいずれかと混ざると、生成物の色合いは変化し、最終的に完成した顔料の熱安定性は低下するので、ミリング中のこのような変化の抑制を回避しなくてはならない。
【0062】
欧州特許第517662号明細書および米国特許第5281269号明細書には、塩基および相転位触媒によってβ−キナクリドン(QA)を変化させる水性ミリング方法が開示されている。
【0063】
欧州特許第1020497号明細書には、2,9−ジクロロキナクリドンを含む混合結晶相顔料の色特性について記載されている。
【0064】
欧州特許第799863号明細書には、α相キナクリドンの変化によってβ相キナクリドンを調製することが記載されている。
【0065】
欧州特許第517663号明細書および第517662号明細書には、β−キナクリドン粗製顔料を乾式ミリングするかまたは水およびアルコールの存在下でβ−キナクリドンをミリングすることによって、マゼンタ色のβ−1型キナクリドン顔料を調製する方法が記載されている。
【0066】
欧州特許第305328号明細書には、0.1ミクロンを超える平均粒度を有する新規のマゼンタ色のβ−キナクリドンが開示されている。
【0067】
しかし、上記の文献にはいずれも、β−キナクリドンの粒度絞り方法において、2,9−ジクロロキナクリドンを、α−キナクリドン結晶相抑制剤として使用することは開示していない。
【0068】
驚くべきことに、仕上げ方法において2,9−ジクロロキナクリドンを加えることによって、粒度絞り中にβ−キナクリドン結晶相が維持されうることが分かった。この方法から得られたβ−キナクリドン生成物は、青みがかったバイオレットをしており、この色は、α−キナクリドンが生成物中に存在している場合には得ることのできないものである。
【0069】
さらに、この同じ結晶相抑制剤、2,9−ジクロロキナクリドンを、粒度絞り中のγ−キナクリドンに対しても、α−キナクリドンの形成を防ぐために使用することができる。γ−キナクリドンは、黄色味または青色味にシフトしうる赤色を有している。α−キナクリドンが存在してもしなくても、粒度絞りによって、色は、より青色味へとシフトする。β−キナクリドンは、粒度が小さくなるとバイオレット色が強くなる。α−キナクリドンがない場合には、β−キナクリドンは、より青味がかったバイオレットへとシフトする。したがって、βについては飽和バイオレット色の生成物が、γについては赤色の生成物が、コーティング、プラスチックおよびインク用途のためのより良好な顔料特性を有するものであるが、そのような生成物は、結晶相抑制剤としての2,9−ジクロロキナクリドンの存在下でミリングを行うことによって、β−キナクリドンおよびγ−キナクリドンの両方に対して得られる。
【0070】
本発明のこのような態様の方法は、
粗製のβ−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、βまたはγ結晶相を維持する粒度絞り方法であって、
2,9−ジクロロキナクリドンを、粗製β−またはγ−キナクリドンと混ぜ合わせる工程であって、粗製顔料に添加される2,9−ジクロロキナクリドンが、粗製顔料の乾燥重量に対して約0.5重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.1重量%〜約2.0重量%である工程と、
β−またはγ−キナクリドンが所望の顔料粒度に達するまでミリングを行う工程とを含む方法である。
【0071】
本発明の別の態様は、β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、βまたはγ結晶相がα結晶相に変化することを防ぐ粒度絞り方法であって、
2,9−ジクロロキナクリドンを、粗製β−またはγ−キナクリドンと混ぜ合わせる工程であって、2,9−ジクロロキナクリドンを、粗製顔料の乾燥重量に対して約0.5重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.1重量%〜約2.0重量%粗製顔料に添加する工程と、
β−またはγ−キナクリドンが、所望の顔料粒度に達するまでミリングを行う工程とを含む方法を包含する。
【0072】
本発明の目的のための所望の顔料粒度は、最終用途によって異なる。顔料の一次粒子の粒度分布は、一般に、ミリング時間およびミリング媒体の寸法によって、約30〜300nmにまで減少する。好ましくは、顔料の一次粒子の粒度分布は、約40〜200nmまで減少する。場合により、特定の用途のために必要な不透明度を得るために、再成長方法を続いて行うことができる。本発明の方法から得られた生成物は、透明、半透明または不透明であってよい。
【0073】
2,9−ジクロロキナクリドンは、粗製顔料または完成した顔料とすることができる。
【0074】
本発明で使用した2,9−ジクロロキナクリドンの構造を、式(A)に示す。
【0075】
【化3】
【0076】
本発明で使用するβ−キナクリドンまたはγ−キナクリドン粗製顔料は、式(B)に示す、β結晶相またはγ結晶相中の不飽和キナクリドン顔料である。
【0077】
【化4】
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、純粋なα−キナクリドンのX線図である。
【図2】図2は、純粋なβ−キナクリドンのX線図である。
【図3】図3は、2,9−ジクロロキナクリドンのなしで水性湿式ミリングされたβ−キナクリドンを示す実施例B−1のX線図である。
【図4】図4は、2,9−ジクロロキナクリドンの存在下で水性湿式ミリングされたβ−キナクリドンを示す実施例B−2のX線図である。
【図5】図5は、2,9−ジクロロキナクリドンの存在下で水性湿式ミリングされたβ−キナクリドンを示す実施例B−3のX線図である。
【図6】図6は、2,9−ジクロロキナクリドンの存在下で水性湿式ミリングされたβ−キナクリドン示す実施例B−4のX線図である。
【図7】図7は、2,9−ジクロロキナクリドンの存在下で水性湿式ミリングされたβ−キナクリドン示す実施例B−5のX線図である。
【図8】図8は、比較例B−1のX線図である。
【図9】図9は、比較例B−2のX線図である。
【図10】図10は、比較例B−3のX線図である。
【図11】図11は、ミリングされていないγ−キナクリドンのX線図である。
【図12】図12は、12分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図13】図13は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例18の、30分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図14】図14は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例13の、60分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図15】図15は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例14の、90分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図16】図16は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例16の、120分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図17】図17は、2,9−ジクロロキナクリドン1.0%を含む実施例15の、120分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図18】図18は、2,9−ジクロロキナクリドン2.0%を含む実施例11の、120分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図19】図19は、2,9−ジクロロキナクリドン3.0%を含む実施例17の、120分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図20】図20は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例6の、60分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【図21】図21は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例7の、120分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【図22】図22は、2,9−ジクロロキナクリドン1.0%を含む実施例8の、60分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【図23】図23は、2,9−ジクロロキナクリドン1.0%を含む実施例9の、120分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【図24】図24は、2,9−ジクロロキナクリドン2.0%を含む実施例10の、60分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【0079】
粗製β−またはγ−顔料は、一般に、発色が良好でないことおよび粒径範囲が約0.2〜40μm、好ましくは0.3〜4ミクロン、より好ましくは約1.0〜3.0μmであることから、着色剤として必要な特性を欠いている。これに替えて、本発明では、粒径範囲が約0.3〜0.5ミクロンである顔料粒子からなる市販の顔料を、ミリングすべき原材料として使用することができる。
【0080】
特に、β結晶相およびγ結晶相中の式(B)の未置換のキナクリドンが特に好ましい。
【0081】
水性ミリングを、公知の湿式ミリング法を用いて行うことができる。特定のミリング装置は、一般に、使用が難しいわけではないが、適切なミルは、水平ミル、例えばダイノーミル、アイガーミル、ネッチミルおよびスーパーミルを含む。また、様々な粉砕媒体を含む、追加的な垂直ミル、ボールミル、磨砕機、振動ミルおよびこれらに類するものが適切である。適切な粉砕媒体は、塩、砂、ガラスビーズ、セラミックスビーズおよびアルミナ、ジルコニウムまたは金属ビーズを含む。
【0082】
ミリングは、分散液ミリングによっても行うことができる。一般の、キナクリドン顔料のための、粒度絞りがなされる分散液ミリング方法は、米国特許第3,030,370号明細書に記載されている。この方法は、無水硫酸アルミニウムの存在下でかつ結晶化溶媒の存在下で行うミリングである。結晶化溶媒は、揮発することなく磨砕の熱に耐性である十分に高いかつ水蒸気蒸留による除去を可能にする十分に低い沸点範囲を有する無水有機溶媒として、広く定義される。適切な溶剤は、テトラクロロエチレン、他の炭化水素および塩素化された炭化水素を含み、C2〜C10の二塩基カルボン酸の低級アルキルエステルも、このような分散液ミリング方法において結晶化溶媒として簡単に使用することができる。
【0083】
溶媒を存在させないで行う磨砕は、最も安定性の低い相(α相)へと生成物を変化させる傾向がある。溶媒を導入することによって平衡が移動するが、その度合いは、溶媒の性質および量、顔料の性質および磨砕の量により影響される。溶媒は、より安定な相の形成を促進する傾向があり、その結果、より安定な相が、それが出発材料であっても維持される。
【0084】
用いられるミリング法の種類(湿式ミリングまたは分散液ミリング)に関わらず、本発明の方法によれば、驚くべきことに、粗製β−またはγ−キナクリドン顔料を2,9−ジクロロキナクリドンと共にミリングすることによって、β相またはγ相が維持されかつ/またはβ相またはγ相のより不安定なα相への変化が防止されることが分かった。
【0085】
ミリング温度は、ミルの寸法およびミリングされる粗製顔料の量に依存するが、一般に、20℃〜約95℃の温度である。好ましくは、方法ミリング温度は、30℃〜約90℃である。場合により、水で冷却して温度を制御することもできる。
【0086】
本発明の態様では、ミリングによって得られる顔料の平均粒径は、約30〜300nm、好ましくは40〜200nmである。
【0087】
結晶相抑制剤である2,9−ジクロロキナクリドンの存在下でのβ−キナクリドンまたはγ−キナクリドンのいずれかの粒度絞りの時間は、特定の用途のために必要とされる粒度および湿式ミリングまたは分散液ミリングが行われる特定の粗製顔料に依存して、30分から48時間とすることができる。
【0088】
湿式ミリングのための破砕媒体は、通常、チャンバ空間の約75%〜85%に装填される。ミリング媒体は、例えば酸化ジルコニウム、ガラス、ボロシリケート、金属、アルミナおよびポリマービーズのような材料からなるビーズを含んでおり、これらは例えば、米国特許第5,902,711号明細書および米国特許第5,478,705号明細書に記載されている。
【0089】
分散液ミリングのための破砕媒体は、一般に、スチールショット、鉄製ツメおよびスパイク、またはセラミックスビーズである。分散液ミリングの循環は、一般に、約2〜約48時間である。溶媒の量は、所望の結晶相が維持され、かつ合理的なミリング時間で所望の粒度を得ることができるように選択される。キナクリドンは、一般に、2〜15重量%、好ましくは4〜13%の量で使用される。
【0090】
湿式ミリングに適したミリング液体は水であり、極性有機溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メタノールのような低級脂肪族アルコール、テトラヒドロフランおよびジオキサンを含むエーテル、ならびエチレングリコールやグリセロールのようなアルキレングリコールおよびトリオールを5重量%未満含むことができる。
【0091】
湿式ミリング液体は、約10重量%を超える、好ましくは約20重量%を超える、最も好ましくは30重量%を超える水からなっている。
【0092】
ミリングは、約4.0〜約12.0のpHで行うことができる。このpHは、好ましくは、約6〜約9である。
【0093】
分散液ミリングは、適切な結晶化溶媒中で行うことができる。この結晶化溶媒は、揮発することなく磨砕の熱に耐性である十分に高いかつ水蒸気蒸留による除去を可能にする十分に低い沸点範囲を有する無水有機溶媒として、広く定義される。適切な溶剤は、テトラクロロエチレン、他の炭化水素および塩素化された炭化水素を含み、C2〜C10の二塩基カルボン酸の低級アルキルエステルも、このような分散液ミリング方法において結晶化溶媒として簡単に使用することができる。
【0094】
有機顔料誘導体のような色の付いた添加剤、またはポリマーのような色の付いていない添加剤を、ミリング方法においてミリング混合物に場合により添加することができる。
【0095】
粗製顔料は、場合により、別の添加剤、例えば表面改質剤、レオロジー改良剤および質感改良剤、消泡剤、湿潤剤、粒子成長抑制剤、他の結晶相調整剤、凝集防止剤、ポリマー湿式ミリング助剤および分散剤と共に湿式ミリングまたは分散液ミリングすることができる。
【0096】
表面改質試薬、レオロジー改良剤および質感改良剤は、キナクリドンモノスルホン酸またはキナクリドンモノスルホン酸アルミニウム塩、3,5−ジメチルピラゾール−1−メチルキナクリドンまたはフタルイミドメチルキナクリドンを含むことができる。別の適切な質感改良剤は、特に、18個より少ない炭素原子の脂肪酸、例えばステアリン酸またはベヘン酸またはそれらのアミドまたは金属塩、好ましくはナトリウムまたはアンモニウム塩、ならびに可塑剤、ワックス、樹脂酸、例えば、アビエチン酸またはその金属塩、コロフォニー、アルキルフェノール、または脂肪族アルコール、例えばステアリルアルコール、またはビシナルジオール、例えばドデカン−1,2ジオールである。添加剤は、ミリングスラリーに直接的に添加することもできるし、粗製顔料と同時に添加することもできる。1種または複数種の添加剤は、場合により、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.5〜20.0重量%で添加することができる。好ましくは、1種または複数種の添加剤は、場合により、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約1.0〜5.0重量%で添加することができる。
【0097】
本発明のこの態様の湿式ミリング方法では、消泡剤を場合により使用することができる。消泡剤は、泡の制御のために、ミリング前および/またはミリング中に添加することができる。
【0098】
湿式ミリングのための分散剤またはポリマー磨砕助剤は、スチレン樹脂、例えば同時係属中の米国特許出願第60/519,842号明細書に記載のものまたはアクリル樹脂、例えば米国特許第6,410,619号明細書に記載のものであってよい。
【0099】
ミリング後、顔料を、当分野で公知の1つ以上の分離方法によって、ミリング混合物から分離することができる。塩の残渣を除去するための濾過、および続いて洗浄が、好ましい分離方法である。当分野で公知の別の回収方法、例えばトレー乾燥、噴霧乾燥、スピンフラッシュ乾燥(spin flash drying)、凍結乾燥、遠心分離または簡単なデカンテーションも適切な分離方法である。このような方法を、個々でまたは組み合わせて用いることができる。
【0100】
本発明による、粒度絞りされたγ−および/またはβ−キナクリドン顔料は、無機または有機の基材に対する着色物質として適している。この顔料は、高分子の材料であって、加工して注型物および成型物にすることができるもの、またはインク中、および溶媒または水ベースのコーティング物のようなコーティング組成物中、例えば自動車用コーティング剤中で使用されるものを着色するのに極めてよく適している。好ましい高分子材料は、実質的にカレンダー加工され、注型されまたは繊維へと加工されたプラスチック、および工業用塗料または自動車用塗料またはインクコーティング物である。
【0101】
本発明の目的のためには、高分子材料は、103〜108g/molの分子量を有する材料として定義される。
【0102】
適切な高分子有機材料は、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチックまたはエラストマーを含み、例えば、エチルセルロースのようなセルロースエステル、直鎖のまたは架橋されたポリウレタン、直鎖の、架橋したまたは不飽和のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンまたはポリ−4−メチルペンタ−1−エンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリシクロアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリフェニレンオキサイドのようなポリエーテルケトン、さらには、ポリ−p−キシレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンのようなポリビニルハロゲン化物、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリアクリロニトリルのようなアクリルポリマーおよびメタクリルポリマー、ゴム、シリコンポリマー、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、ジエンゴムまたはそのコポリマー、例えばスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムまたはクロロプレンゴムを、単独でまたは混合して含む。
【0103】
一般に、本発明による、粒度絞りされたγ−および/またはβ−キナクリドン顔料は、効果的に着色する量、例えば、着色すべき高分子有機材料の重量に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%で使用される。したがって、本発明は、着色されたプラスチック組成物であって、プラスチック材料と、本発明の方法によって調製された、効果的に着色する量の顔料または顔料固溶体とを含むものにも関し、また、このような着色されたプラスチック組成物を形成する方法にも関する。
【0104】
本発明による、粒度絞りされたγ−および/またはβ−キナクリドン顔料は、容易に分散可能であり、有機マトリックス中に簡単に組み込むことができ、これにより、高い飽和度で処理される均一な着色が得られる。
【0105】
高分子有機材料は、本発明による粒度絞りされたγ−および/またはβ−キナクリドン顔料により、ロールミルまたはミキシングまたは磨砕装置を含む高剪断技術を利用して、所望であればマスターバッチの形態でこの顔料を基材に混ぜることによって、着色される。次に、着色された材料は、公知の方法、例えばカレンダー加工、圧縮、押出し、ブラッシング(brushing)、注型または射出成型によって、所望の最終形状にされる。
【0106】
さらに別の態様では、本発明は、β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、β結晶相またはγ結晶相を維持してこれらの顔料の光学的特性を改善する粒度絞り方法であって、
(a)
i)β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物(2,9−ジクロロキナクリドンの重量%は、β−またはγ−顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%である)約10〜60重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)混合物をミリングすることと、
(b)β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を分離することとを含む。
【0107】
好ましくは、上記混合物は、
i)β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物(2,9−ジクロロキナクリドンの重量%は、β−またはγ−顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%である)約10〜45重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約1.0〜20重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)。
【0108】
より好ましくは、上記混合物は、
i)β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物(2,9−ジクロロキナクリドンの重量%は、β−またはγ−顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%である)約15〜35重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約5〜10重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.5〜5.0重量%、および
v)水約30重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)。
【0109】
実施例A
水性粒度絞りプロセスを、ダイノーミルおよびネッチミルで、直径約0.2〜1.2mmの循環するミリング媒体、例えば酸化ジルコニウムビーズをミリングチャンバ空間の75〜85%で装填して使用して行う。水の他に、ミリングスラリーは、有機顔料または顔料混合物を組成物の全重量に対して約10〜60重量%、スチレンコポリマー分散剤を顔料の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、および消泡剤を組成物の全重量に対して0.1〜1重量%含む組成物を有する。場合により、ミリング媒体は、非顔料ミリング添加剤、顔料添加剤または添加物の混合物を顔料の乾燥重量に対して約0.1〜5重量%含んでいてもよい。粒度絞り時間は、使用に必要な粒度を得るために、約30分〜約12時間とすることができる。粒度絞りプロセス後、ミリングされた生成物を分離することができ、または塩基、極性有機溶媒および/またはアミン塩を添加して水性スラリーを70〜95℃にまで加熱することによって結晶の寸法を再成長させることができる。
【0110】
色についてのデータは、Minolta Corporation USA. Williams Drive Ramsey, NJにより製造されているCM−3600d分光光度計を使用して得る。
【0111】
実施例A−2および実施例A−5では、熱安定性のデータを得た。この場合、着色したプラスチックチップを5分間200〜300℃へと20℃毎に加熱し、CM−3600d分光光度計によってプラスチックチップの色の変化を測定した。温度を上昇させていき、色差(マストーンおよびティントの両方でdEとして測定)がより小さいことは、プラスチックの着色に使用された顔料のより良好な熱安定性を示す。
【0112】
定義
1(登録商標)Joncryl HPD-96 スチレンアクリルコポリマー。分子量8,500〜16,500、酸価215〜240。SC Johnson Polymers, 8310 16th Street, P. O. Box 902, Sturtevant, Wlより製造。
2(登録商標)Surfynol DF-37 アセチレン系消泡剤。Air Products, 7207 Hamilton Boulevard, Allentown, PAにより製造。
3(登録商標)Sunfast 228-6725−2,9−ジクロロキナクリドン、Sun Chemicalsにより製造。
4Ciba(登録商標)Cinquasia Magenta RT-265-D−Cibaの市販製品、2,9−ジクロロキナクリドン顔料。
5Quindo Red R-6700−市販製品、Bayer Corporationにより製造。
6Ciba(登録商標)Cinquasia Red RT-790-D−Cibaの市販製品、γ−キナクリドン顔料
7Ciba(登録商標)Cinquasia Red NRT-742-D−Cibaの市販製品、γ−キナクリドン顔料。
8Ciba(登録商標)Cinquasia Red B NRT-796-D−Cibaの市販製品、γ−キナクリドン顔料。
9Ciba(登録商標)Cinquasia Violet R NRT-201-D−Cibaの市販製品、β−キナクリドン顔料。
10Ciba(登録商標)Cinquasia Violet R RT-791-D−Cibaの市販製品、β−キナクリドン顔料。
11Ciba(登録商標)Cinquasia Red Y RT-759-D−Cibaの市販製品、γ−キナクリドン顔料。
12ZrO2/SiO2ビーズは、Glen Mills Inc., 395 Allwood Road, Clifton, New Jersey, 07012により製造されたもの。
【0113】
実施例A−1 粗製2,9−ジクロロキナクリドンの水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、2,9−ジクロロキナクリドン圧縮ケーク858.4g(46.6重量%固体)、水391.6g、Joncryl HPD-961(34重量%固体)37.5gおよびSurfynol DF-372消泡剤3.9gを加えた。これらの原料を、高剪断撹拌機(例えばロスミキサ(Ross Mixer))で、適切な設定で5分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムにより8.5〜9.0重量%に調節する。得られたスラリーを、ダイノーミル中でミリングする。
【0114】
ダイノーミルを、1.0〜1.25mm ZrO2/SiO2ビーズ1220g(500ml)で充填する(ミルギャップ(mill gap)設定0.10、周速度(tip speed)30m/分)。調製した顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移す。ミリングを、80〜100ml/分の流速で開始する。流体粘度を維持するためにミリングを続けながらJoncryl HPD-96およびDF-37の添加を行い、全量でJoncryl HPD-96 45.5gおよびSurfynol DF-37 5.1gを使用した。1時間毎にサンプリングを行い、ミリングプロセスをモニタする。全ミリング時間は、4.8時間であり、42回の循環を行い、30.2重量%固体のスラリー生成物1200mlが得られ、これを実施例A−2の熟成実験で使用する。ミリングされた製品は、プレミリングされた粗製顔料と比較して、ティントおよびマストーンの両方においてより高い色度を示し、着色力は87%増加した。
【0115】
実施例A−2 水性ミリング後の、高性能の不透明顔料の製造のための粒度再成長プロセス
1000mlフラスコに、水120ml、NaOH(50%溶液)24.0g、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライドの50%ヘキシレングリコール/水溶液3.6gおよびペンタノール7.2gを加え、室温で10分間撹拌する。ミリングされたキナクリドンの実施例A−1のスラリー試料60gを、上記の混合物に加え、室温で30分間撹拌し、還流(97℃)で4時間加熱する。
【0116】
反応混合物を、60℃にまで冷却し、濾過漏斗へ移し、濾過して、0.1%硫酸水溶液で洗浄し、続いてpH7.0、75.2重量%の固体圧縮ケーク試料が得られるまで熱水で洗浄する。この試料を、オーブン内で一夜、80℃で乾燥し、混合して粉末の形態とし、塗料およびプラスチックの篩い分けを行う。
【0117】
実施例A−2を、Sunfast Magenta 228-67253市販製品を標準として使用して、ベースコート/クリアコート塗料で試験する。実施例A−2は、同様の不透明度、マストーンおよびティントの両方において同様の色度、マストーンで青みがかった色相、ティントでdE=0.5を示す。
【0118】
プラスチックPVC試験によれば、ティントでdE=0.7という同様の傾向を示す。このデータは、実施例A−2が、塗料およびプラスチックでの用途のいずれにおいても、Sunfast Magenta 228-67253と同様の色合いおよび性能を有することを示す。熱安定性試験を、エンジニアリングプラスチックであるABS媒体およびCibaの市販製品(登録商標)CINQUASIA MAGENTA RT-265-D4を標準として使用して行った。着色されたABSの200〜300℃の温度範囲での熱安定性が試験された。実施例A−2は、ティントおよびマストーンの両方においてRT-265-Dよりも熱安定であり、200〜300℃の温度範囲で、RT-265-DのマストーンのdE=2.87と比較してマストーンのdE=2であった。
【0119】
実施例A−3 粗製γ−キナクリドンおよび2,9−ジクロロキナクリドンの混合物の水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、γ−キナクリドン圧縮ケーク(40.3重量%固体)972.7g、2,9−ジクロロキナクリドン圧縮ケーク(46.6重量%固体)17.2g、水260.1g、Joncryl HPD-96(34重量%固体)47.0gおよびSurfynol DF-37消泡剤9.0gを加える。この原料を、高剪断撹拌機(例えば、ロスミキサ)で適切な設定で15分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムで8.5〜9.0の範囲に調節する。得られたスラリーを、ダイノーミルでミリングした。
【0120】
ダイノーミルを、0.4〜0.6mm ZrO2/SiO2ビーズ1220g(500ml)で充填する(ミルギャップ設定0.10、周速度30m/分)。顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移す。ミリングを、80〜100ml/分の流速で開始した。全ミリング時間は、2.5時間であり、20回のミリング循環を行い、31.5重量%固体のスラリー生成物1300mlが得られた。このスラリー試料は、ラテックス塗料カードドローダウン法(Latex paint card drawdown method)を用いた前実験室試験のために使用する。
【0121】
実施例A−4 水性ミリング後の実施例A−3の分離
実施例A−3 500mlを水2500ml中へ加え、pHを2%H2SO4で5.0〜6.0に調節する。試料を濾過し、洗浄してpH=7.0とする。連続的な真空濾過によって、固体は47重量%まで増大する。実施例A−4を、Bayer R-67005を標準として使用して、ラテックス塗料系で試験した。実施例A−4は、Quindo Red R-67005と同様の色空間を示し、マストーンdE=0.3およびティントdE=0.9であった。
【0122】
実施例A−5 塗料およびプラスチックでの試験を行う実施例A−3の試料調製
200mlビーカーに、実施例A−3のスラリー(28.8重量%固体)100gおよび水1500mlを添加する。この混合物のpHを、2%H2SO4で5.0に調節する。スラリーを濾過して、水で洗浄した。圧縮ケークを80℃で一夜乾燥させ、試料24gを得た。続いてこの試料を、レッチミルでミリングして(Retsch milled)、塗料およびプラスチックでの用途における試験のための微粉体とした。
【0123】
PVC試験で、実施例A−5は、Cibaの市販製品である(登録商標)CINQUASIA RED RT-790-D6よりも11%高い着色力を示し、同様の色合い、ならびにマストーン色およびティント色の両方においてdE<0.2示した。エンジニアリングプラスチックであるHDPE(高密度ポリエチレン)でも、実施例A−5は、RT-790-Dと同様の色を示し、熱安定性はRT-790-Dよりはるかに良好であった。温度が200℃から300℃へと上昇すると、実施例A−5のマストーンおよびティントのdEは1.5未満であり、一方で、RT-790-DにおいてはマストーンでdE=9.92、ティントでdE=12.1であった。
【0124】
ベースコートクリアコート塗料では、実施例5を、Cibaの市販製品(登録商標)CINQUASIA RED NRT-742-D7および(登録商標)CINQUASIA RED B NRT-796-D8と比較した。その結果は、実施例A−5が両標準よりも透明であり、RT-796-Dと比較して、ティント/マストーンでdE<1.5およびメタリックでdE=2.0の同様の色合いを有していることを示す。ラテックス装飾塗料の用途において、実施例A−5は、ディープトーン(deep tone)およびライトトーン(light tone)の両方においてRT-796-Dよりも大きな強さを有しており、同様の色合いおよびわずかに高い色度を有していた。
【0125】
実施例A−6 粗製β−キナクリドン水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、β−キナクリドン圧縮ケーク(51.9重量%固体)770.7g、水479.3g、Joncryl HPD-96(34重量%固体)37.5gおよびSurfynol DF-37消泡剤3.9gを加えた。この原料を、ロスミキサによって設定5で15分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムで8.5〜9.0の範囲に調節し、ダイノーミル中でのミリングのためのスラリーを調製した。
【0126】
ダイノーミルを、0.4〜0.6mm ZrO2/SiO2ビーズ1220g(500ml)で充填する(ミルギャップ設定0.10、周速度30m/分)。顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移し、80〜100ml/分の流速でミリングを開始する。流動性を維持するためにミリングを続けて、Joncryl HPD-96およびDF-37の添加を行い、全量でJoncryl HPD-96 111.5gおよびDF-37 6.9gを使用した。1時間毎にサンプリングを行い、ミリングプロセスをモニタする。全ミリング時間は、12.3時間であり、96回のミリング循環を行い、32.0重量%固体のスラリー生成物1200mlを得た。このスラリー生成物を、約5.0に調節し、濾過して、熱水で洗浄してpHを約7.0までにする。圧縮ケーク試料を、80℃でオーブン中で一夜乾燥し、その後、レッチミルによってミリングして、塗料およびプラスチックの篩い分けを行う微粉体を得た。
【0127】
実施例A−6の生成物を、ベースコート/クリアコート塗料中でCibaの市販製品(登録商標)CINQUASIA VIOLET R NRT-201-D9と比較し、それによれば、NRT-201-Dと同様の色合いを有し、ティントでdE=0.4であった。実施例A−6の生成物は、マストーンでNRT-201-Dよりも透明度が高く、メタリック色でわずかに黄味がかっていた。
【0128】
実施例A−6は、PVCプラスチック中で、Cibaの市販製品である(登録商標)CINQUASIA VIOLET R RT-791-D10とも比較した。RT-791-Dと比べて、実施例A−6は、同一のティント色およびより高い着色力を有しており、RT-791-Dよりも高い色度を有していて、マストーンでdE=3.5であった。
【0129】
実施例A−7
実施例A−6を繰り返すが、ミリングプロセスで0.3〜0.4mm ZrO2/SiO2ビーズを使用せず、実験を8時間で停止する。実施例A−6と同様の生成物を得た。
【0130】
実施例A−8 粗製γ−キナクリドン水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、γ−キナクリドン圧縮ケーク(40.3重量%固体)992.6g、水386.1g、Joncryl HPD-96(34重量%固体)48.8gおよびSurfynol DF-37消泡剤3.9gを加えた。この原料を、ロスミキサによって設定5で15分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムで9.4に調節し、調製されたスラリーをダイノーミル中でミリングした。
【0131】
ダイノーミルを、0.4〜0.6mm ZrO2/SiO2ビーズ1220g(500ml)で充填する(ミルギャップ設定0.10、周速度30m/分)。調製された顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移す。ミリングを、80〜100ml/分の流速で開始する。流動性を維持するためにミリングを続けながら、Joncryl HPD-96およびDF-37の添加を行い、全量でJoncryl HPD-96 64.8gおよびDF-37 7.8gを使用した。1時間毎にサンプリングを行い、ミリングプロセスをモニタする。全ミリング時間は、5時間であった。固体含有量25.6重量%の生成物1300mlを得た。始めのγ−キナクリドンはγ−II相を有していたが、ミリングを続けると、結晶はγ−Iへと相変化した。最終生成物は、100重量%のγ−I結晶相を有しており、開始顔料であるCiba(登録商標)Cinquasia Red Y RT-759-D11と比べて青味がかったティント色を有し、より透明度が高く、ティントおよびマストーン色の両方においてより高い色度を有していた。
【0132】
実施例A−9 粗製ペリレン水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、ペリレン(Lot番号MO2326D)圧縮ケーク(38.6重量%固体)1295.3、水434.2g、Joncryl HPD-96(34重量%固体)73.5gおよびSurfynol DF-37消泡剤5.0gを加える。この原料を、高剪断撹拌機で15分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムで9.4に調節し、調製されたスラリーをダイノーミルでミリングする。
【0133】
ダイノーミルを、0.4〜0.6mm ZrO2/SiO2ビーズ1170g(500ml)で充填する(ミルギャップ設定0.10、周速度30M/分)。調製された顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移す。ミリングを、80〜100ml/分の流速で開始する。流動性を維持するためにミリングを続けながら、Joncryl HPD-96およびDF-37の添加を行い、全量でJoncryl HPD-96(34重量%活性の原料)238.2gおよびDF-37 7.0gを使用した。1時間毎にサンプリングを行い、ミリングプロセスをモニタする。全ミリング時間は、5時間であった。固体含有量25.7重量%の顔料スラリー300mlを得た。
【0134】
【表1】
【0135】
ラテックス塗料組成
ディープベース(Deep Base):PREMIUM PLUS(登録商標)Interior Semi-Gloss Enamel、No.5340、100%アクリルラテックス。BEHR Process Corporation、3400 W. Segerstrom Ave., Santa Ana, CA 92704。
【0136】
パステルベース(Pastel Base):PREMIUM PLUS(登録商標)Interior Semi-Gloss Enamel、No. 5560、100%アクリルラテックス。BEHR Process Corporation、3400 W. Segerstrom Ave., Santa Ana, CA 92704。
【0137】
マストーン試料は、ミリングされたスラリー生成物2.5g(水中に30重量%の顔料含有)をディープベースの担体と共に混合することによって調製した。
【0138】
ティント試料は、ミリングされたスラリー生成物0.6g(水中に30重量%の顔料含有)をパステルベースの担体と共に混合することによって調製した。
【0139】
実施例B
一般的な湿式ミリングプロセス
粗製β−キナクリドンのための水性の粒度絞りプロセス(湿式ミリング)は、約0.2〜1.2mmの直径の粒度範囲のミリング媒体、例えば酸化ジルコニウムビーズを約75〜約90%の装填量で使用して、ネッチミルおよびダイノーミル中で行う。水以外に、ミリングスラリーは、有機顔料または顔料混合物をスラリーの全量に対して約5〜約45%含有する組成物を含む。場合により、ミリング媒体は、顔料誘導体添加剤を顔料の乾燥重量に対して約0.5〜約20%有していてよい。非顔料添加物は、ポリマー分散剤または添加剤の混合物を含む。粒度絞りの時間は約10分〜約48時間とすることができ、これにより、用途で必要とされる粒度を得る。ミリングされた生成物は、粒度絞りプロセス後に分離することができる、または塩基、極性有機溶媒および/またはアミン塩を添加して約70〜95℃に水性スラリーを加熱することによって結晶の寸法を再成長させることができる。
【0140】
一般的な分散液ミリングプロセス
粗製γ−またはβ−キナクリドンのための分散液ミリングプロセスを、市販のボールミルを、市販の硫酸アンモニウムおよび結晶化溶媒と共に「Cyl-Pebs(登録商標)」(直径1.6cmのスチールロッドの約2.5cm区分)および犬釘(railroad spike)で装填する。本発明では、結晶化溶媒はジメチルグルタレートである。続いて粗製γ−またはβ−キナクリドンを、ボールミル内に装填する。この装填物は、約2〜約48時間のミルの回転によって磨砕される。その後、ミルの内容物を、「Cyl-Pebs(登録商標)」および犬釘を残すよう篩い分けしながら排出させる。
【0141】
β−またはγ−キナクリドンの分散液ミリング後の抽出
適切な容器に、1.5%硫酸および上記のミリングされた内容物を装填する。混合物を約90℃まで加熱する。γ−キナクリドンの顔料溶液を、適切な濾過装置で分離し、酸および塩不含で洗浄する。水で湿潤した得られた顔料を乾燥するか、または所望の末端用途に応じてさらに処理することができる。
【0142】
カラーデータを、Minolta Corporation USA. 101 Williams Drive, Ramsey, NJにより製造されたCM−3600d分光光度計を使用して得る。
【0143】
β−キナクリドン
実施例B−1
粗製β−キナクリドンを、2,9−ジクロロキナクリドンなしでフタルイミドメチルキナクリドンと共に水性ミリング
5000ml循環フラスコに、乾燥のβ−キナクリドン粗製物200.0g、ポリマー分散剤、Hercules Incorporated, Wilmington, Delawareにより製造されたScripset720(水中にマレイン酸アクリル酸コポリマーを25%含む)32.0g、フタルイミドメチルキナクリドン8.0gおよび水500.0gを加える。上記の化学物質を、機械的撹拌機で30分間混合する。得られたスラリーをネッチミル中でpH7.0〜9.0でミリングする。
【0144】
ネッチミル磨砕チャンバを、0.3mmのZrO2/Y2O3ビーズ1825.0g(500ml)および水367.0gで充填する。調製された顔料スラリーをネッチミル中にポンピングし、ミリングを400.0g/分の流速、12.0M/分で設定された周速度で開始し、ミリング温度は50〜55℃に制御する。全ミリング時間は120分である。ミリングされたβ−キナクリドンスラリーを、水500.0gで希釈して、スラリーpHを2%H2SO4で5.0に調節し、続いて濾過して、pH7.0になるまで熱水で洗浄し、オーブン中で80℃で乾燥させる。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図では、α−キナクリドンに対応する14θでピークが現れている。β−キナクリドンおよびミリングされた生成物の色データを表3に示す。2,9−ジクロロキナクリドンなしでミリングされた粗製β−キナクリドンのX線図を図3に示す。
【0145】
実施例B−2
粗製β−キナクリドンを、フタルイミドメチルキナクリドンおよび2,9−ジクロロキナクリドンと共に水性ミリング
5000ml循環フラスコに、乾燥β−キナクリドン171.5g、フタルイミドメチルキナクリドン3.5g、2,9−ジクロロキナクリドン3.5gおよび水1951.5gを加える。この化学物質を、機械的撹拌機により30分間混合する。得られたスラリーを、ネッチミルでpH7.0〜9.0でミリングする。
【0146】
ネッチミル磨砕チャンバを、0.3mmのZrO2/Y2O3ビーズ1825.0g(500ml)および水367.0gで充填する。調製された顔料スラリーをネッチミル中にポンピングし、ミリングを800.0g/分の流速、12.0M/分で設定された周速度で開始し、ミリング温度を80〜85℃に制御する。全ミリング時間は102分である。ミリングされたβ−キナクリドンスラリー500.0gを、水500.0gで希釈して、続いて濾過して、pH7.0になるまで熱水で洗浄し、オーブン中で80℃で乾燥させる。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図では、α−キナクリドンに対応する14θでピークがない。ミリングされた生成物の色データを表3に示す。ミリングされた生成物のX線図を図4に示す。
【0147】
実施例B−3
2,9−ジクロロキナクリドンの存在下での粗製β−キナクリドンの水性ミリング
5000ml循環フラスコに、乾燥したβ−キナクリドン粗製物171.5g、2,9−ジクロロキナクリドン3.5g、ポリマー分散剤10〜WK(Eastman Chemical Resins, Kingsport, Tennesseeにより製造された、水酸化ロジンのグリセロールエステル混合物の55%活性水性分散液)であるStaybelite Ester(登録商標)14.0gおよび水1955.0gを加える。この化学物質を、機械的撹拌機で30分間混合する。得られたスラリーは、ネッチミルでpH7.0〜9.0でミリングされる。
【0148】
ネッチミル磨砕チャンバを、0.3mmのZrO2/Y2O3ビーズ1825.0g(500ml)および水367.0gで充填する。調製された顔料スラリーをネッチミル中にポンピングする。ミリングを800.0g/分の流速、12.0M/分で設定された周速度で開始し、ミリング温度を80〜85℃に制御する。全ミリング時間は60分である。ミリングされたβ−キナクリドンスラリー300.0gを、水500.0gで希釈して、続いて濾過して、pH7.0になるまで熱水で洗浄し、オーブン中で80℃で乾燥させる。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図は14θでピークを示さず、α−キナクリドンが存在しないということである。ミリングされた生成物の色データを表3に示す。ミリングされた生成物のX線図を図5に示す。
【0149】
実施例B−4
2,9−ジクロロキナクリドンの存在下での粗製β−キナクリドンの水性ミリング
実施例B−3を繰り返すが、ミリング時間は90分である。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図は14θでのピークを示さず、α−キナクリドンが存在しないことを示す。ミリングされた生成物の色データを表3に示す。ミリングされた生成物のX線図を図6に示す。
【0150】
実施例B−5
2,9−ジクロロキナクリドンの存在下での粗製β−キナクリドンの水性ミリング
実施例B−3を繰り返すが、ミリング時間は120分である。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図は14θでのピークを示さず、α−キナクリドンが存在しないことを示す。ミリングされた生成物の色データを表3に示す。ミリングされた生成物のX線図を図7に示す。
【0151】
実施例B−6〜B−11
実施例B−6〜B−11のために、実施例B−3を繰り返すが、ミリング時間を変化させ、2,9−ジクロロキナクリドンの量も変化させ、Staybelite Ester(登録商標)を添加しない。図20〜24を参照されたい。
【0152】
ミリングされた生成物のX線図は、14θでピークを示さない。よって、2,9−ジクロロキナクリドンは、様々な配量レベルおよび様々なミリング時間で、α相の抑制剤として機能する。
【0153】
【表2】
【0154】
γ−キナクリドン
実施例B−12
分散ミルに、Cylpebs(登録商標)100lbs(ポンド)および釘10lbsを装填し、さらに、硫酸アルミニウム(無水物)1532.2g、粗製γ−キナクリドン647.1g、4,11−ジクロロキナクリドン20.4g、2,9−ジクロロキナクリドン13.6gおよびジメチルグルタレート18.7gを装填する。磨砕を40rpmで5時間続ける。
【0155】
ミル粉体を、硫酸および水(1.5%硫酸)によって、90℃で2時間撹拌して抽出する。続いて水を加えて、抽出混合物を約60〜約65℃に冷却し、濾過し、洗浄して中性のpHにする。得られたγ−キナクリドンを1%未満の水分含有量にまで乾燥させ、その後、アルキルメラニン塗料と共に組成物を形成し、試験して表5に示す色空間を測定する。
【0156】
粗製γ−キナクリドンを、2,9−ジクロロキナクリドンと共に分散液ミリングする場合には、上記のように抽出し、γ相が保持される。表5に示す実施例B−12に関する色空間を参照されたい。
【0157】
実施例B−13〜B−18
2,9−ジクロロキナクリドンの存在下での粗製γ−キナクリドンの水性ミリング
実施例B−13〜B−18のために、実施例B−3を繰り返すが、Staybelite Ester(登録商標)を添加せず、ミリングされる粗製顔料がγ−キナクリドンである。ミリング時間および湿式ミリング中に添加する2,9−ジクロロキナクリドンの量を下の表2のように変化させる。以下の表5には色データを示す。
【0158】
【表3】
【0159】
2,9−ジクロロキナクリドンと共にミリングすることによって、γ−キナクリドンは、2,9−ジクロロキナクリドンの量に依存して、βおよび/またはαへと変化する。γ−キナクリドン粗製物を2,9−ジクロロキナクリドン0.5%と共に最大で2時間ミリングした場合、γは主にβ粗製物に変化する。図16のX線図を参照されたい。2,9−ジクロロキナクリドンの量を1.0%〜3%に増加させると、αへ変化する量が増加する。したがって、2,9−ジクロロキナクリドンと共にγ粗製物をミリングすることによって、約0.5重量%以下の配量で2,9−ジクロロキナクリドンを添加剤として使用する場合、粗製γ相が主にβへと変化する。主にとは、本発明において、約85%を超えるγ粗製物、好ましくは約90%を超えるγ粗製物がβに変化するということを意味する。
【0160】
α−キナクリドンおよびβ−キナクリドン混合物のX線パターンを検討するために、比較例を調製した。試料は、既知のβ−キナクリドンおよびα−キナクリドンを任意の割合で物理的に混合することによって生成し、X線スペクトルを得る。
【0161】
比較例B−1
100ml固体試料ビンに、ミリングプロセスから得られたα−キナクリドン0.250gおよびβ−キナクリドン粗製物2.0gを加えた。α−キナクリドン粗製物とβ−キナクリドン粗製物との重量比は、1.0/8.0に等しい。この試料をシェーカーに装填し、60分間混合して、その後、X線測定を行う。14θでのピークはα−キナクリドンに対応する。このX線スペクトルを図8に示す。
【0162】
比較例B−2
100ml固体試料ビンに、ミリングプロセスから得られたα−キナクリドン0.600gおよびβ−キナクリドン粗製物2.0gを加えた。α−キナクリドン粗製物とβ−キナクリドン粗製物との重量比は、1.0/3.3に等しい。この試料をシェーカーに装填し、60分間混合して、その後、X線測定を行う。14θでのピークはα−キナクリドンに対応する。このX線スペクトルを図9に示す。
【0163】
比較例B−3
100ml固体試料ビンに、ミリングプロセスから得られたα−キナクリドン1.0gおよびβ−キナクリドン粗製物1.0gを加えた。α−キナクリドン粗製物とβ−キナクリドン粗製物との重量比は、1/1に等しい。この試料をシェーカーに装填し、60分間混合して、その後、X線測定を行う。14θでのピークはα−キナクリドンに対応する。このX線スペクトルを図10に示す。
【0164】
【表4】
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【0167】
a:アルキルメラミン塗料の組成:
【0168】
ミルベース(固体粒子懸濁液):
8oz(オンス)の容器に、顔料試料1.2g、disperbyk 161(添加剤を分散させた高分子ブロックコポリマー、活性成分30%)0.6g、アルキドメラミン樹脂56.2gおよびガラスビーズ(粒径2mm)100gを加える。この混合物を、Skandexに装填し、2時間ミリングを行う。顔料スラリーをガラスビーズから分離して、ミルベースとして回収する。顔料割合は、2.1%であった。
【0169】
マストーン色:
上記のミルベース7.5gをアルキドメラミン樹脂22.5gで希釈し、顔料分散液を、KCC自動フィルムアプリケータを備えている、ウェット膜厚100μmワイヤーバーコーター(wired bar coater)(No.8)によって、Black/White Cartonに塗布し、130℃で30分間乾燥させた。
【0170】
ティント色:
上記のミルベース16.7gを白色塗料(20%TiO2)15.0gで希釈し、顔料分散液を、KCC自動フィルムアプリケータを備えている、ウェット膜厚100μmワイヤーバーコーター(wired bar coater)(No.8)によって、Black/White Cartonに塗布し、130℃で30分間乾燥させた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレンコポリマー分散剤の存在下で粗製顔料をミリング(milling)することによって有機顔料の粒度絞りする水性方法に関する。
【0002】
有機顔料、例えばキナクリドンは、未処理では、一般に、顔料としての使用には不適であり、必要とされる顔料の特性、例えば粒度、粒子形状、多形相および着色力を得るために、さらに処理しなければならないことが、当分野でよく知られている。
【0003】
特定の用途のために必要な色特性を得るためには、粗製顔料を、特定の用途のための適正な着色力、透明度または不透明度を有する顔料グレードに変えなくてはならない。任意の種類の顔料の色を付与する作用は、分散液中の顔料の粒度に依存する。したがって、着色力、透明度および不透明度といった特性は全て、粒度に大きく依存する。よって、粗製有機顔料に施す1つ以上の仕上げ工程またはコンディショニング工程は、粒度絞り(粒度を小さくすること)を必要とする。例えば、R. B. McKay、「Control of the Application Performance of Classical Organic Pigments」in JOCCA, 89-93を参照されたい。
【0004】
例えば、米国特許第5,840,901号明細書に記載のように、キナクリドンを過酸化物方法から合成することができる。得られた顔料は、様々な用途のために必要な色特性を有していないので、粗製顔料と呼ばれる。さらなる粒度絞りが必要となる。乾式ミリング方法を含む、適正な顔料の粒度絞りを達成する様々な従来の手段があり、それらは、例えば、米国特許第2,402,167号明細書、第3,030,370号明細書および第5,084,100号明細書に記載されている。これらの文献は、無機塩の存在下でかつ金属製のツメ(nails)および/またはボールを使用して乾燥顔料粉末をミリングすることによる顔料の粒度絞りを開示している。この方法では、粗製顔料を、まず、ほぼ無定形相にまでミリングし、続いて再成長方法を行って、適正な結晶の寸法を得る。このように粗製顔料をミリングし、続いて再結晶することにより、この仕上げ方法は複雑に、そして高価になる。別の従来の顔料仕上げ方法は、例えば、米国特許第3,326,918号明細書、第3,607,336号明細書および第4,455,173号明細書に記載されているような酸排出(acid drowning)である。この方法では、粗製有機顔料を、大抵は極性有機溶媒の存在下で、硫酸のような強酸に溶解させる。次に、顔料を、排出して(drown out)、特定の用途のために設計された適切な粒度に再結晶させる。いずれの方法でも、最初に合成された顔料結晶は、多かれ少なかれ破壊されて、再構築され、このことにより、最終生成物のコストは著しく高くなる。さらに、乾式ミリング方法は、無機塩の存在を必要とし、また、強酸中での再結晶を必要とするので、多量の環境廃棄物を生成する。溶解方法も同様に、多量の酸廃棄物を生成する。
【0005】
ミリング法は、様々な有機顔料の特性を改善するものとして知られている。そのいくつかの例は、米国特許第6,210,474号明細書、米国特許第4,597,794号明細書、米国特許第5,231,131号明細書および米国特許第5,530,043号明細書に記載されている。しかし、これらの文献に記載のミリングされた顔料は、粗製有機顔料ではなく、仕上げ製造された顔料である。さらに、分散ミリング剤は、スチレンコポリマーではない。
【0006】
米国特許第6,410,619号明細書には、純粋なアクリルコポリマー分散剤を使用して粗製有機顔料を分散させる方法が記載されている。欧州特許第496149号明細書には、グラフィックで利用される水性エマルジョンの形成に利用されるスチレンコポリマーが開示されている。特開昭55−89366号公報および米国特許第4,293,475号明細書は、顔料分散液を製造するために使用するスチレンコポリマーを開示している。国際公開第9905575号パンフレット、欧州特許第636,942号明細書および米国特許第5,432,036号明細書は、乾式の電子写真画像形成のためのトナー組成物を製造するためのスチレンコポリマーベースの樹脂を開示している。米国特許第2,816,115号明細書は、フタロシアニン顔料を分散させるための加水分解されたスチレン−無水マレイン酸コポリマーの使用を開示している。米国特許第6,056,814号明細書は、粗製有機顔料の乾式ミリングのためのスチレンコポリマーの使用を開示している。
【0007】
粒度絞りの際に、顔料の結晶構造を破壊せず、キナクリドンの2つの同形結晶相、好ましくはβ結晶相およびγ結晶相での粒度絞りにも使用できる方法が必要とされている。また、ミリングまたは再結晶化において多量の廃棄物を生成しない環境にやさしい方法も必要とされている。これに加えて、高い顔料濃度での粒度絞りを可能にし、これにより、製造処理量を増大させる方法も必要とされている。さらに、粒度絞りの前に粗製顔料を乾燥させなくともよい、エネルギーコストを節約する方法が必要とされている。
【0008】
上記の文献はいずれも、スチレンコポリマー分散剤を、粗製有機顔料の光学的特性を改善するためにナノメートルの範囲にまで粒度を小さくする方法のための水性ミリング剤として使用することを開示していない。
【0009】
本発明は、高分子量までのスチレンコポリマーの媒体を分散剤として使用する、キナクリドン顔料の水性粒度絞り方法に関する。得られた生成物は、場合により、塩基性または酸性の条件下で熟成させ、スチレンコポリマー分散剤の存在下で結晶を再成長させる。よって、本発明の方法は、強酸の使用および/または無機塩を利用するミリングを必要とする仕上げ方法およびミリング方法の必要性を回避する。
【0010】
本発明で開示する水性有機顔料粒子の粒度絞り方法は、公知の方法と比較して経済的な方法である。この方法では、第一には、粗製有機顔料のナノメートルの範囲までの水性粒度絞りのためにスチレンコポリマー分散剤を使用する。得られた生成物は、熟成してもしなくても、コーティング物、フィルム、プラスチックおよびインク中で優れた適用特性を有している。得られた生成物は、極めて良好な分散性および耐光性も有している。この簡単なミリング方法は、ミリング、ならびに高性能の不透明顔料の製造に適した粒度再成長方法(粒度を増大させる方法)と組み合わせて、透明または半透明の顔料生成物を製造するために使用することができる。
【0011】
好ましくは、この分離されミリングされた有機顔料または顔料混合物を、塩基性条件下で再成長させ、不透明な顔料を形成する。
【0012】
本発明の顔料は、分離し、純粋な形態で乾燥することができ、その場合、顔料は、その後、例えばボールミルまたはビーズミルを使用して、プラスチック、塗料および印刷用インク中で簡単に分散させることができる。また、本発明の顔料を、湿った圧縮ケークとしても、インク、コーティング物および化粧品のための顔料分散液を直接的に調製するために使用することができる。
【0013】
本発明の方法によって製造された顔料(場合によりさらなる添加剤が添加されていてもよい)は、マスターバッチ(「濃縮物」)の形態でポリマーに添加することができ、このマスターバッチは、ポリマー中に組み込まれて、例えば、約1重量%〜約40重量%、好ましくは2重量%から約20重量%の濃度でその成分を含む。
【0014】
本発明の顔料は、優れた適用特性、特に、高い着色力を備えた良好な色特性を示す印刷用インクを調製するための濃縮物としても理想的である。
【0015】
本明細書に記載の本発明の方法によって製造された、分離された顔料を含む材料は、成型物、ロトモールディングによる成型物(回転成型物)、射出成型物、ブロー成型物、フィルム、テープ、単一フィラメント、繊維、不織布、所定の輪郭を有する成形物(profiles)、粘着物またはパテ、表面コーティング物およびこれらに類するものの製造のために使用することができる。
【0016】
特に記載がなければ、全ての重量は、組成物または混合物の全重量に対する値である。ただし、水溶性スチレンコポリマー分散剤(ii)および任意の添加物(iv)の重量パーセントは、粗製有機顔料の乾燥重量に対する値である。
【0017】
有機顔料の粒度絞りの方法であって、この顔料の光学的特性を改善するための本発明の方法は、
(a)
i)1種以上の粗製有機顔料約10〜60重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)混合物をミリングすることと、
(b)ミリングされた有機顔料を分離することとを含む。
【0018】
好ましくは、上記混合物は、
i)1種以上の粗製有機顔料約10〜45重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜20重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)。
【0019】
より好ましくは、上記混合物は、
i)1種以上の粗製有機顔料約15〜35重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約5〜10重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.5〜5.0重量%、および
v)水約30重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)。
【0020】
この方法では、顔料懸濁液を、ダイノーミル(Dyno-mill)またはネッチミル(Netzsch-mill)のようなミル中のミリング媒体、例えば酸化ジルコニウムビーズを介して連続的に循環させる。顔料の一次粒子の粒度分布は、ミリング時間およびミリング媒体の寸法によって、約30〜300nmにまで小さくなる。好ましくは、顔料の一次粒子の粒度分布は、約40〜200nmにまで小さくなる。場合により、特定の用途のために必要な不透明性を得るために、続いて再成長方法を行うことができる。本発明によって得られた生成物は、透明、半透明または不透明であってよく、塗料、プラスチックまたはインク塗布物中で、着色力、レオロジー、耐熱性および耐光性といった優れた特性を示す。
【0021】
本発明で使用される粗製顔料は、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン、トリフェンジオキサジン、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンサンスロン、フラバンスロン、インダンスロン、ペリノン、ピランスロン、チオインディゴ、4,4’−ジアミノ−1,1−ジアントラキノニルおよびアゾ化合物、ならびにこれらの置換誘導体を含む。固溶体を含む混合物も使用することができる。好ましい有機顔料は、高性能顔料、例えば、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、1,4−ジケトピロロピロールおよびジオキサジン顔料である。特に好ましい顔料は、キナクリドン、ペリレンおよび1,4−ジケトピロロピロールである。
【0022】
粗製顔料
粗製顔料または顔料混合物は、一般に、発色が良好でないことおよび粒径範囲が約0.2〜40μm、好ましくは0.3〜4ミクロン、より好ましくは約1.0〜3.0μmであることから、着色剤として必要な特性を欠いている。これに替えて、本発明では、粒径範囲が約0.3〜0.5ミクロンである顔料粒子からなる市販の顔料を、ミリングすべき原材料として使用することができる。
【0023】
特に、β結晶相およびγ結晶相中の式(A)の置換されたまたは置換されていないキナクリドンが特に好ましい。
【0024】
【化1】
【0025】
式(A)中、XおよびYは、互いに独立して、水素、ハロゲン、−OH、−NO2、−CF3、C1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基、置換されたC1〜C4アルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、フェノキシ基、−COOH、−COO−C1〜C4アルキル基、−SO3H、フェニルアミノ基、ベンズアミノ基、−N(CH3)2、−SO2NH2、−SO2N(CH3)2、ピリジノ基、−CONH2または−CON(CH3)2、特にH、F、Cl、Br、I、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシであり、
nは、0、1または2、特に0または1であり、
C1〜C4アルコキシ基は、4個までの炭素原子を有するように規定されており、分枝しているまたは分枝していないラジカルであり、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシおよびn−ブトキシである。
【0026】
C1〜C4アルキル基は、4個までの炭素原子を有するように規定されており、分枝しているまたは分枝していないラジカルであり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルおよびn−ブチルである。
【0027】
さらに好ましいキナクリドンは、例えば、キナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、3,10−ジクロロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、2,3,9,10−テトラクロロキナクリドン、2,4,9,11−テトラクロロキナクリドン、2,9−ジフルオロキナクリドン、2,9−ジブロモキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、3,10−ジメチルキナクリドン、4,11−ジメチルキナクリドン、2,4,9,11−テトラメチルキナクリドン、2,9−ジ(t−ブチル)キナクリドン、2,9−ジヒドロキシルキナクリドン、2,9−ジ(トリフルオロメチル)キナクリドン、2,9−ジメトキシキナクリドン、2,9−ジエトキシキナクリドン、2,4,9,11−テトラメトキシキナクリドン、2,9−ジカルボキシルキナクリドン、2,9−ジクロロヘキシルキナクリドン、2,9−ジフェニルキナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノ)キナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノスルホ)キナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノカルボニル)キナクリドン、3,10−ジニトロキナクリドン、2,9−ジメチル−4,11−ジクロロキナクリドン、2,9−ジメチル−4,11−ジカルボキシキナクリドンおよび2,9−ジピリジノキナクリドンである。キナクリドンは、複数の多形相(例えば、α相、β相およびγ相)で存在することができ、全てが包含されている。
【0028】
式(A)の最も好ましいキナクリドンは、β−またはγ−未置換キナクリドンまたは2,9−ジクロロキナクリドンである。
【0029】
コポリマー分散剤
粗製顔料の水性ミリングのためのコポリマー分散剤としては、親水性官能基および疎水性官能基を含むコポリマーを使用するのが好ましい。前者の部分は、イオン化可能であって、アンモニウム塩またはアルカリ金属塩を形成することができる。典型的なスチレンコポリマー分散剤の化学的構造を、次の式(B)に示す。
【0030】
【化2】
【0031】
式中、R1は、H、C1〜C4アルキル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ニトロ基またはアミノ基、C1〜C18アルキレン基またはC1〜C4アルコキシ基である。R2は、HおよびC1〜C4アルキル基であり、R3は、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基であり、R4およびR5は、互いに独立して、HまたはC1〜C4アルキル基である。100>n>1であり、100>m>1である。コポリマー中のスチレンモノマー単位の割合は、約10〜90モル%の範囲にあってよいが、スチレンまたはスチレン誘導体モノマーが、式(B)のコポリマーの疎水性モノマー単位の約50モル%より多くを占めていることが望ましい。
【0032】
(単数または複数の)モノマー単位は、最終的なスチレンコポリマーの形成において使用される(単数または複数の)モノマーとして定義される。
【0033】
本発明の好ましいスチレンコポリマー分散剤では、スチレン対(メタ)アクリルモノマー単位の比が、約2:1以上である。
【0034】
コポリマーは、好ましくはランダムコポリマー、ブロックコポリマーまたはグラフトコポリマーである。
【0035】
コポリマーの親水性部分は、アクリル酸、メタクリル酸、またはアクリル酸またはメタクリル酸の加水分解エステルを含む、適切な不飽和酸モノマー単位からなっている。適切な不飽和酸モノマー単位の例は、(メタ)アクリル酸およびその低級アルキルエステル、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸、クロトン酸およびこれらに類するもの、ならびにこれらの組合せを含む。不飽和酸モノマー単位は、ナトリウム、カリウムおよびアンモニウムを含む適切なカチオンを有するカルボキシレート塩の形態とすることができる。
【0036】
(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸誘導体を指す。
【0037】
スチレンコポリマー分散剤が、不飽和酸モノマー単位を最大で約49モル%含むことが望ましい。特に、不飽和酸モノマー単位は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸の誘導体、またはそれらのカルボキシレート塩であることが好ましい。
【0038】
コポリマーの疎水部分を形成するモノマーは、スチレンおよびスチレン誘導体、例えば、C1〜C4アルキルまたは置換スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、o−、p−およびm−クロロメチルスチレン、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ニトロ基またはアミノ基で置換されたスチレン、ブタジエンまたはオクタジエンから選択することができる。
【0039】
本発明で使用されるスチレンコポリマーは、平均分子量が約5,000〜20,000の高分子量までのコポリマーの媒体である。好ましくは、コポリマーの平均分子量は、約9,000〜17,000の範囲にある。
【0040】
本発明で使用される好ましいスチレンコポリマーは、SC Johnson Polymer(1525 Howe St.; Racine, Wis. 53403; USA)のような多くの専門の化学製造者より市販のスチレンアクリルコポリマーである。製品の例としては、Joncryl種(シリーズ)の全てのスチレンコポリマーを挙げることができ、固体状態の製品およびその溶液、例えばアンモニウム塩およびナトリウム塩を含む。これらのスチレンコポリマーの分子量は、約8,500〜16,500の範囲にある。スチレン対アクリル酸モノマー単位の比は、約2:1以上である。
【0041】
スチレンコポリマーは、湿式ミリング混合物中で、乾燥顔料を約0.1〜20重量%、好ましくは約1.0〜20重量%、より好ましくは顔料の約5〜10重量%を占めている。
【0042】
湿式ミリング混合物は、湿式ミリング混合物の全量中で、有機顔料を約10〜60重量%、好ましくは約15〜35重量%含む。
【0043】
スチレンコポリマーは、粗製顔料ミリング混合物の粘度を調整するために、ミリング前およびミリング中に添加することができる。
【0044】
スチレンコポリマーは、好ましくは、水性ミリング媒体中に可溶である。
【0045】
ミリング
水性ミリングを、公知の湿式ミリング法を用いて行う。特定のミリング装置は、一般に、使用が難しいわけではないが、適切なミルは、水平ミル、例えばダイノーミル、アイガーミル(Eiger-mill)、ネッチミルおよびスーパーミル(Super mill)を含む。また、様々な粉砕媒体を含む、追加的な垂直ミル、ボールミル、磨砕機、振動ミルおよびこれらに類するものが適切である。適切な粉砕媒体は、塩、砂、ガラスビーズ、セラミックスビーズおよびアルミナ、または金属ビーズを含む。
【0046】
用いられるミルの種類に関わらず、粗製顔料、スチレンコポリマーおよび別の任意の成分を、所望の粒度に達するまでミリングする。ミリング温度は、ミルの寸法およびミリングされる粗製顔料の量に依存するが、一般に、0℃〜約60℃の温度である。好ましくは、方法ミリング温度は、15℃〜約60℃である。場合により、水で冷却して温度を制御することもできる。
【0047】
本発明では、水性ミリングによって得られる顔料の平均粒径は、約30〜300nm、好ましくは40〜200nmである。
【0048】
粉砕時間
粒度絞りの時間は、特定の用途のために必要とされる粒度および湿式ミリングされる特定の粗製顔料に依存して、30分から12時間とすることができる。β−キナクリドン粗製顔料の場合には、ミリングされた生成物は、12時間の水性ミリング後もβ結晶相を維持していた。γ−キナクリドンの場合には、粗製顔料を5時間ミリングした後、γ−II結晶相が完全にγ−I相に変化していた。最も高い着色力は、5時間のミリング時間内に得られた。ミリング時間を延長することによって、顔料の透明度は向上したが、着色力は一定のままであるかまたはわずかに変化しただけであった。
【0049】
破砕媒体
破砕媒体は、通常、チャンバ空間の約75%〜85%に装填される。ミリング媒体は、例えば酸化ジルコニウム、ガラス、ボロシリケート、金属、アルミナおよびポリマービーズのような材料からなるビーズを含んでおり、これらは、例えば、米国特許第5,902,711号明細書および米国特許第5,478,705号明細書に記載されている。
【0050】
ミリング液体
適切なミリング液体は水であり、極性有機溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メタノールのような低級脂肪族アルコール、テトラヒドロフランおよびジオキサンを含むエーテル、ならびエチレングリコールやグリセロールのようなアルキレングリコールおよびトリオールを5重量%未満含むことができる。
【0051】
ミリング液体は、約10重量%を超える、好ましくは約20重量%を超える、最も好ましくは30重量%を超える水からなっている。
【0052】
ミリング添加剤
有機顔料誘導体のような顔料添加剤、またはポリマーのような非顔料添加剤を、ミリング方法においてミリング混合物に場合により添加することができる。
【0053】
粗製顔料は、場合により、別の添加剤、例えば表面改質剤、レオロジー改良剤および質感改良剤(texture improving agents)、消泡剤、湿潤剤、粒子成長抑制剤、結晶相調整剤(crystal phase directors)および凝集防止剤と共に湿式ミリングすることができる。
【0054】
表面改質試薬、レオロジー改良剤および質感改良剤は、キナクリドンモノスルホン酸またはキナクリドンモノスルホン酸アルミニウム塩または3,5−ジメチルピラゾール−1−メチルキナクリドンを含むことができる。別の適切な質感改良剤は、特に、18個より少ない炭素原子の脂肪酸、例えばステアリン酸またはベヘン酸またはそれらのアミドまたは金属塩、好ましくはナトリウムまたはアンモニウム塩、ならびに可塑剤、ワックス、樹脂酸、例えば、アビエチン酸またはその金属塩、コロフォニー、アルキルフェノール、または脂肪族アルコール、例えばステアリルアルコール、またはビシナルジオール、例えばドデカン−1,2ジオールである。添加剤は、ミリングスラリーに直接的に添加することもできるし、粗製顔料と同時に添加することもできる。1種または複数種の添加剤は、場合により、約0.5〜20重量%で添加することができる。好ましくは、1種または複数種の添加剤は、場合により、約1.0〜5.0重量%で添加することができる。
【0055】
消泡剤
消泡剤を、本発明の湿式ミリング方法で場合により使用することができる。アセチレンベースの消泡剤が好ましい。消泡剤は、泡の制御のために、ミリング前および/またはミリング中に添加することができる。
【0056】
湿式ミリングされた粗製顔料の分離
ミリング後、顔料を、当分野で公知の1つ以上の分離方法によって、ミリング混合物から分離することができる。塩の残渣を除去するための濾過、および続いて洗浄が、好ましい分離方法である。当分野で公知の別の回収方法、例えばトレー乾燥、噴霧乾燥、スピンフラッシュ乾燥(spin flash drying)、凍結乾燥、遠心分離または簡単なデカンテーションも、適切な分離方法である。このような方法を、個々でまたは組み合わせて用いることができる。
【0057】
別の態様では、本発明は、β−キナクリドンまたはγ−キナクリドン粗製顔料の粒度絞り方法中の結晶相抑制剤としての2,9−ジクロロキナクリドンの方法または使用にも関する。
【0058】
キナクリドン(QA)は、3種の結晶相中で存在することが知られている。米国特許第2,844,484号明細書に記載のα相、米国特許第2,844,581号明細書および第2,969,366号明細書に記載のγ相は、青みがかった赤色をしている。米国特許第2,844,485号明細書および第4,857,646号明細書に記載のβ形態は、バイオレットである。αキナクリドン結晶形態は、熱に対して不安定であるので市販されていない。W. Herbst and K. Hunger, "Industrial Organic Pigments", VCH Publishers, Inc., 1997, 464頁を参照されたい。
【0059】
キナクリドンのような有機顔料は未処理では、一般に顔料としての使用には不適であって、必要な原料特性、例えば粒度、粒子形状、多形相および着色力を向上させるようにさらなる処理が行われなければならないことは、当分野で知られている。
【0060】
特定の用途に必要な色特性を得るためには、粗製顔料を、特定の用途のための適正な着色力、透明度または不透明度を有する顔料グレードに変化させなければならない。任意の種類の顔料の色を付与する作用は、分散液中の顔料の粒度に依存する。したがって、着色力、透明度および不透明度といった特性は全て、粒度に大きく依存する。よって、粗製有機顔料に施す1つ以上の仕上げ工程またはコンディショニング工程は、粒度絞りを必要とする。例えば、R. B. McKay、「Control of the Application Performance of Classical Organic Pigments」in JOCCA, 89-93を参照されたい。
【0061】
したがって、粗製β−キナクリドンまたはγ−キナクリドンに、通常、粒度絞りの方法を施す。このβ−またはγ−キナクリドンの粒度絞り中、β相またはγ相は、結晶相抑制剤がないと、ミリング条件によってα結晶態に変化する傾向がある。α−キナクリドンが、β−またはγ−キナクリドンのいずれかと混ざると、生成物の色合いは変化し、最終的に完成した顔料の熱安定性は低下するので、ミリング中のこのような変化の抑制を回避しなくてはならない。
【0062】
欧州特許第517662号明細書および米国特許第5281269号明細書には、塩基および相転位触媒によってβ−キナクリドン(QA)を変化させる水性ミリング方法が開示されている。
【0063】
欧州特許第1020497号明細書には、2,9−ジクロロキナクリドンを含む混合結晶相顔料の色特性について記載されている。
【0064】
欧州特許第799863号明細書には、α相キナクリドンの変化によってβ相キナクリドンを調製することが記載されている。
【0065】
欧州特許第517663号明細書および第517662号明細書には、β−キナクリドン粗製顔料を乾式ミリングするかまたは水およびアルコールの存在下でβ−キナクリドンをミリングすることによって、マゼンタ色のβ−1型キナクリドン顔料を調製する方法が記載されている。
【0066】
欧州特許第305328号明細書には、0.1ミクロンを超える平均粒度を有する新規のマゼンタ色のβ−キナクリドンが開示されている。
【0067】
しかし、上記の文献にはいずれも、β−キナクリドンの粒度絞り方法において、2,9−ジクロロキナクリドンを、α−キナクリドン結晶相抑制剤として使用することは開示していない。
【0068】
驚くべきことに、仕上げ方法において2,9−ジクロロキナクリドンを加えることによって、粒度絞り中にβ−キナクリドン結晶相が維持されうることが分かった。この方法から得られたβ−キナクリドン生成物は、青みがかったバイオレットをしており、この色は、α−キナクリドンが生成物中に存在している場合には得ることのできないものである。
【0069】
さらに、この同じ結晶相抑制剤、2,9−ジクロロキナクリドンを、粒度絞り中のγ−キナクリドンに対しても、α−キナクリドンの形成を防ぐために使用することができる。γ−キナクリドンは、黄色味または青色味にシフトしうる赤色を有している。α−キナクリドンが存在してもしなくても、粒度絞りによって、色は、より青色味へとシフトする。β−キナクリドンは、粒度が小さくなるとバイオレット色が強くなる。α−キナクリドンがない場合には、β−キナクリドンは、より青味がかったバイオレットへとシフトする。したがって、βについては飽和バイオレット色の生成物が、γについては赤色の生成物が、コーティング、プラスチックおよびインク用途のためのより良好な顔料特性を有するものであるが、そのような生成物は、結晶相抑制剤としての2,9−ジクロロキナクリドンの存在下でミリングを行うことによって、β−キナクリドンおよびγ−キナクリドンの両方に対して得られる。
【0070】
本発明のこのような態様の方法は、
粗製のβ−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、βまたはγ結晶相を維持する粒度絞り方法であって、
2,9−ジクロロキナクリドンを、粗製β−またはγ−キナクリドンと混ぜ合わせる工程であって、粗製顔料に添加される2,9−ジクロロキナクリドンが、粗製顔料の乾燥重量に対して約0.5重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.1重量%〜約2.0重量%である工程と、
β−またはγ−キナクリドンが所望の顔料粒度に達するまでミリングを行う工程とを含む方法である。
【0071】
本発明の別の態様は、β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、βまたはγ結晶相がα結晶相に変化することを防ぐ粒度絞り方法であって、
2,9−ジクロロキナクリドンを、粗製β−またはγ−キナクリドンと混ぜ合わせる工程であって、2,9−ジクロロキナクリドンを、粗製顔料の乾燥重量に対して約0.5重量%〜約5.0重量%、好ましくは約0.1重量%〜約2.0重量%粗製顔料に添加する工程と、
β−またはγ−キナクリドンが、所望の顔料粒度に達するまでミリングを行う工程とを含む方法を包含する。
【0072】
本発明の目的のための所望の顔料粒度は、最終用途によって異なる。顔料の一次粒子の粒度分布は、一般に、ミリング時間およびミリング媒体の寸法によって、約30〜300nmにまで減少する。好ましくは、顔料の一次粒子の粒度分布は、約40〜200nmまで減少する。場合により、特定の用途のために必要な不透明度を得るために、再成長方法を続いて行うことができる。本発明の方法から得られた生成物は、透明、半透明または不透明であってよい。
【0073】
2,9−ジクロロキナクリドンは、粗製顔料または完成した顔料とすることができる。
【0074】
本発明で使用した2,9−ジクロロキナクリドンの構造を、式(A)に示す。
【0075】
【化3】
【0076】
本発明で使用するβ−キナクリドンまたはγ−キナクリドン粗製顔料は、式(B)に示す、β結晶相またはγ結晶相中の不飽和キナクリドン顔料である。
【0077】
【化4】
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】図1は、純粋なα−キナクリドンのX線図である。
【図2】図2は、純粋なβ−キナクリドンのX線図である。
【図3】図3は、2,9−ジクロロキナクリドンのなしで水性湿式ミリングされたβ−キナクリドンを示す実施例B−1のX線図である。
【図4】図4は、2,9−ジクロロキナクリドンの存在下で水性湿式ミリングされたβ−キナクリドンを示す実施例B−2のX線図である。
【図5】図5は、2,9−ジクロロキナクリドンの存在下で水性湿式ミリングされたβ−キナクリドンを示す実施例B−3のX線図である。
【図6】図6は、2,9−ジクロロキナクリドンの存在下で水性湿式ミリングされたβ−キナクリドン示す実施例B−4のX線図である。
【図7】図7は、2,9−ジクロロキナクリドンの存在下で水性湿式ミリングされたβ−キナクリドン示す実施例B−5のX線図である。
【図8】図8は、比較例B−1のX線図である。
【図9】図9は、比較例B−2のX線図である。
【図10】図10は、比較例B−3のX線図である。
【図11】図11は、ミリングされていないγ−キナクリドンのX線図である。
【図12】図12は、12分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図13】図13は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例18の、30分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図14】図14は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例13の、60分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図15】図15は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例14の、90分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図16】図16は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例16の、120分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図17】図17は、2,9−ジクロロキナクリドン1.0%を含む実施例15の、120分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図18】図18は、2,9−ジクロロキナクリドン2.0%を含む実施例11の、120分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図19】図19は、2,9−ジクロロキナクリドン3.0%を含む実施例17の、120分間水性湿式ミリングされたγ粗製物のX線図である。
【図20】図20は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例6の、60分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【図21】図21は、2,9−ジクロロキナクリドン0.5%を含む実施例7の、120分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【図22】図22は、2,9−ジクロロキナクリドン1.0%を含む実施例8の、60分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【図23】図23は、2,9−ジクロロキナクリドン1.0%を含む実施例9の、120分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【図24】図24は、2,9−ジクロロキナクリドン2.0%を含む実施例10の、60分間水性湿式ミリングされたβ粗製物のX線図である。
【0079】
粗製β−またはγ−顔料は、一般に、発色が良好でないことおよび粒径範囲が約0.2〜40μm、好ましくは0.3〜4ミクロン、より好ましくは約1.0〜3.0μmであることから、着色剤として必要な特性を欠いている。これに替えて、本発明では、粒径範囲が約0.3〜0.5ミクロンである顔料粒子からなる市販の顔料を、ミリングすべき原材料として使用することができる。
【0080】
特に、β結晶相およびγ結晶相中の式(B)の未置換のキナクリドンが特に好ましい。
【0081】
水性ミリングを、公知の湿式ミリング法を用いて行うことができる。特定のミリング装置は、一般に、使用が難しいわけではないが、適切なミルは、水平ミル、例えばダイノーミル、アイガーミル、ネッチミルおよびスーパーミルを含む。また、様々な粉砕媒体を含む、追加的な垂直ミル、ボールミル、磨砕機、振動ミルおよびこれらに類するものが適切である。適切な粉砕媒体は、塩、砂、ガラスビーズ、セラミックスビーズおよびアルミナ、ジルコニウムまたは金属ビーズを含む。
【0082】
ミリングは、分散液ミリングによっても行うことができる。一般の、キナクリドン顔料のための、粒度絞りがなされる分散液ミリング方法は、米国特許第3,030,370号明細書に記載されている。この方法は、無水硫酸アルミニウムの存在下でかつ結晶化溶媒の存在下で行うミリングである。結晶化溶媒は、揮発することなく磨砕の熱に耐性である十分に高いかつ水蒸気蒸留による除去を可能にする十分に低い沸点範囲を有する無水有機溶媒として、広く定義される。適切な溶剤は、テトラクロロエチレン、他の炭化水素および塩素化された炭化水素を含み、C2〜C10の二塩基カルボン酸の低級アルキルエステルも、このような分散液ミリング方法において結晶化溶媒として簡単に使用することができる。
【0083】
溶媒を存在させないで行う磨砕は、最も安定性の低い相(α相)へと生成物を変化させる傾向がある。溶媒を導入することによって平衡が移動するが、その度合いは、溶媒の性質および量、顔料の性質および磨砕の量により影響される。溶媒は、より安定な相の形成を促進する傾向があり、その結果、より安定な相が、それが出発材料であっても維持される。
【0084】
用いられるミリング法の種類(湿式ミリングまたは分散液ミリング)に関わらず、本発明の方法によれば、驚くべきことに、粗製β−またはγ−キナクリドン顔料を2,9−ジクロロキナクリドンと共にミリングすることによって、β相またはγ相が維持されかつ/またはβ相またはγ相のより不安定なα相への変化が防止されることが分かった。
【0085】
ミリング温度は、ミルの寸法およびミリングされる粗製顔料の量に依存するが、一般に、20℃〜約95℃の温度である。好ましくは、方法ミリング温度は、30℃〜約90℃である。場合により、水で冷却して温度を制御することもできる。
【0086】
本発明の態様では、ミリングによって得られる顔料の平均粒径は、約30〜300nm、好ましくは40〜200nmである。
【0087】
結晶相抑制剤である2,9−ジクロロキナクリドンの存在下でのβ−キナクリドンまたはγ−キナクリドンのいずれかの粒度絞りの時間は、特定の用途のために必要とされる粒度および湿式ミリングまたは分散液ミリングが行われる特定の粗製顔料に依存して、30分から48時間とすることができる。
【0088】
湿式ミリングのための破砕媒体は、通常、チャンバ空間の約75%〜85%に装填される。ミリング媒体は、例えば酸化ジルコニウム、ガラス、ボロシリケート、金属、アルミナおよびポリマービーズのような材料からなるビーズを含んでおり、これらは例えば、米国特許第5,902,711号明細書および米国特許第5,478,705号明細書に記載されている。
【0089】
分散液ミリングのための破砕媒体は、一般に、スチールショット、鉄製ツメおよびスパイク、またはセラミックスビーズである。分散液ミリングの循環は、一般に、約2〜約48時間である。溶媒の量は、所望の結晶相が維持され、かつ合理的なミリング時間で所望の粒度を得ることができるように選択される。キナクリドンは、一般に、2〜15重量%、好ましくは4〜13%の量で使用される。
【0090】
湿式ミリングに適したミリング液体は水であり、極性有機溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、メタノールのような低級脂肪族アルコール、テトラヒドロフランおよびジオキサンを含むエーテル、ならびエチレングリコールやグリセロールのようなアルキレングリコールおよびトリオールを5重量%未満含むことができる。
【0091】
湿式ミリング液体は、約10重量%を超える、好ましくは約20重量%を超える、最も好ましくは30重量%を超える水からなっている。
【0092】
ミリングは、約4.0〜約12.0のpHで行うことができる。このpHは、好ましくは、約6〜約9である。
【0093】
分散液ミリングは、適切な結晶化溶媒中で行うことができる。この結晶化溶媒は、揮発することなく磨砕の熱に耐性である十分に高いかつ水蒸気蒸留による除去を可能にする十分に低い沸点範囲を有する無水有機溶媒として、広く定義される。適切な溶剤は、テトラクロロエチレン、他の炭化水素および塩素化された炭化水素を含み、C2〜C10の二塩基カルボン酸の低級アルキルエステルも、このような分散液ミリング方法において結晶化溶媒として簡単に使用することができる。
【0094】
有機顔料誘導体のような色の付いた添加剤、またはポリマーのような色の付いていない添加剤を、ミリング方法においてミリング混合物に場合により添加することができる。
【0095】
粗製顔料は、場合により、別の添加剤、例えば表面改質剤、レオロジー改良剤および質感改良剤、消泡剤、湿潤剤、粒子成長抑制剤、他の結晶相調整剤、凝集防止剤、ポリマー湿式ミリング助剤および分散剤と共に湿式ミリングまたは分散液ミリングすることができる。
【0096】
表面改質試薬、レオロジー改良剤および質感改良剤は、キナクリドンモノスルホン酸またはキナクリドンモノスルホン酸アルミニウム塩、3,5−ジメチルピラゾール−1−メチルキナクリドンまたはフタルイミドメチルキナクリドンを含むことができる。別の適切な質感改良剤は、特に、18個より少ない炭素原子の脂肪酸、例えばステアリン酸またはベヘン酸またはそれらのアミドまたは金属塩、好ましくはナトリウムまたはアンモニウム塩、ならびに可塑剤、ワックス、樹脂酸、例えば、アビエチン酸またはその金属塩、コロフォニー、アルキルフェノール、または脂肪族アルコール、例えばステアリルアルコール、またはビシナルジオール、例えばドデカン−1,2ジオールである。添加剤は、ミリングスラリーに直接的に添加することもできるし、粗製顔料と同時に添加することもできる。1種または複数種の添加剤は、場合により、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.5〜20.0重量%で添加することができる。好ましくは、1種または複数種の添加剤は、場合により、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約1.0〜5.0重量%で添加することができる。
【0097】
本発明のこの態様の湿式ミリング方法では、消泡剤を場合により使用することができる。消泡剤は、泡の制御のために、ミリング前および/またはミリング中に添加することができる。
【0098】
湿式ミリングのための分散剤またはポリマー磨砕助剤は、スチレン樹脂、例えば同時係属中の米国特許出願第60/519,842号明細書に記載のものまたはアクリル樹脂、例えば米国特許第6,410,619号明細書に記載のものであってよい。
【0099】
ミリング後、顔料を、当分野で公知の1つ以上の分離方法によって、ミリング混合物から分離することができる。塩の残渣を除去するための濾過、および続いて洗浄が、好ましい分離方法である。当分野で公知の別の回収方法、例えばトレー乾燥、噴霧乾燥、スピンフラッシュ乾燥(spin flash drying)、凍結乾燥、遠心分離または簡単なデカンテーションも適切な分離方法である。このような方法を、個々でまたは組み合わせて用いることができる。
【0100】
本発明による、粒度絞りされたγ−および/またはβ−キナクリドン顔料は、無機または有機の基材に対する着色物質として適している。この顔料は、高分子の材料であって、加工して注型物および成型物にすることができるもの、またはインク中、および溶媒または水ベースのコーティング物のようなコーティング組成物中、例えば自動車用コーティング剤中で使用されるものを着色するのに極めてよく適している。好ましい高分子材料は、実質的にカレンダー加工され、注型されまたは繊維へと加工されたプラスチック、および工業用塗料または自動車用塗料またはインクコーティング物である。
【0101】
本発明の目的のためには、高分子材料は、103〜108g/molの分子量を有する材料として定義される。
【0102】
適切な高分子有機材料は、熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチックまたはエラストマーを含み、例えば、エチルセルロースのようなセルロースエステル、直鎖のまたは架橋されたポリウレタン、直鎖の、架橋したまたは不飽和のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレンまたはポリ−4−メチルペンタ−1−エンのようなポリオレフィン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリシクロアミド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリフェニレンオキサイドのようなポリエーテルケトン、さらには、ポリ−p−キシレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンのようなポリビニルハロゲン化物、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリアクリロニトリルのようなアクリルポリマーおよびメタクリルポリマー、ゴム、シリコンポリマー、フェノール/ホルムアルデヒド樹脂、メラミン/ホルムアルデヒド樹脂、尿素/ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、ジエンゴムまたはそのコポリマー、例えばスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴムまたはクロロプレンゴムを、単独でまたは混合して含む。
【0103】
一般に、本発明による、粒度絞りされたγ−および/またはβ−キナクリドン顔料は、効果的に着色する量、例えば、着色すべき高分子有機材料の重量に対して0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜10重量%で使用される。したがって、本発明は、着色されたプラスチック組成物であって、プラスチック材料と、本発明の方法によって調製された、効果的に着色する量の顔料または顔料固溶体とを含むものにも関し、また、このような着色されたプラスチック組成物を形成する方法にも関する。
【0104】
本発明による、粒度絞りされたγ−および/またはβ−キナクリドン顔料は、容易に分散可能であり、有機マトリックス中に簡単に組み込むことができ、これにより、高い飽和度で処理される均一な着色が得られる。
【0105】
高分子有機材料は、本発明による粒度絞りされたγ−および/またはβ−キナクリドン顔料により、ロールミルまたはミキシングまたは磨砕装置を含む高剪断技術を利用して、所望であればマスターバッチの形態でこの顔料を基材に混ぜることによって、着色される。次に、着色された材料は、公知の方法、例えばカレンダー加工、圧縮、押出し、ブラッシング(brushing)、注型または射出成型によって、所望の最終形状にされる。
【0106】
さらに別の態様では、本発明は、β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、β結晶相またはγ結晶相を維持してこれらの顔料の光学的特性を改善する粒度絞り方法であって、
(a)
i)β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物(2,9−ジクロロキナクリドンの重量%は、β−またはγ−顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%である)約10〜60重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)混合物をミリングすることと、
(b)β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を分離することとを含む。
【0107】
好ましくは、上記混合物は、
i)β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物(2,9−ジクロロキナクリドンの重量%は、β−またはγ−顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%である)約10〜45重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約1.0〜20重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)。
【0108】
より好ましくは、上記混合物は、
i)β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物(2,9−ジクロロキナクリドンの重量%は、β−またはγ−顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%である)約15〜35重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約5〜10重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.5〜5.0重量%、および
v)水約30重量%を超える量
を含む(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)。
【0109】
実施例A
水性粒度絞りプロセスを、ダイノーミルおよびネッチミルで、直径約0.2〜1.2mmの循環するミリング媒体、例えば酸化ジルコニウムビーズをミリングチャンバ空間の75〜85%で装填して使用して行う。水の他に、ミリングスラリーは、有機顔料または顔料混合物を組成物の全重量に対して約10〜60重量%、スチレンコポリマー分散剤を顔料の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、および消泡剤を組成物の全重量に対して0.1〜1重量%含む組成物を有する。場合により、ミリング媒体は、非顔料ミリング添加剤、顔料添加剤または添加物の混合物を顔料の乾燥重量に対して約0.1〜5重量%含んでいてもよい。粒度絞り時間は、使用に必要な粒度を得るために、約30分〜約12時間とすることができる。粒度絞りプロセス後、ミリングされた生成物を分離することができ、または塩基、極性有機溶媒および/またはアミン塩を添加して水性スラリーを70〜95℃にまで加熱することによって結晶の寸法を再成長させることができる。
【0110】
色についてのデータは、Minolta Corporation USA. Williams Drive Ramsey, NJにより製造されているCM−3600d分光光度計を使用して得る。
【0111】
実施例A−2および実施例A−5では、熱安定性のデータを得た。この場合、着色したプラスチックチップを5分間200〜300℃へと20℃毎に加熱し、CM−3600d分光光度計によってプラスチックチップの色の変化を測定した。温度を上昇させていき、色差(マストーンおよびティントの両方でdEとして測定)がより小さいことは、プラスチックの着色に使用された顔料のより良好な熱安定性を示す。
【0112】
定義
1(登録商標)Joncryl HPD-96 スチレンアクリルコポリマー。分子量8,500〜16,500、酸価215〜240。SC Johnson Polymers, 8310 16th Street, P. O. Box 902, Sturtevant, Wlより製造。
2(登録商標)Surfynol DF-37 アセチレン系消泡剤。Air Products, 7207 Hamilton Boulevard, Allentown, PAにより製造。
3(登録商標)Sunfast 228-6725−2,9−ジクロロキナクリドン、Sun Chemicalsにより製造。
4Ciba(登録商標)Cinquasia Magenta RT-265-D−Cibaの市販製品、2,9−ジクロロキナクリドン顔料。
5Quindo Red R-6700−市販製品、Bayer Corporationにより製造。
6Ciba(登録商標)Cinquasia Red RT-790-D−Cibaの市販製品、γ−キナクリドン顔料
7Ciba(登録商標)Cinquasia Red NRT-742-D−Cibaの市販製品、γ−キナクリドン顔料。
8Ciba(登録商標)Cinquasia Red B NRT-796-D−Cibaの市販製品、γ−キナクリドン顔料。
9Ciba(登録商標)Cinquasia Violet R NRT-201-D−Cibaの市販製品、β−キナクリドン顔料。
10Ciba(登録商標)Cinquasia Violet R RT-791-D−Cibaの市販製品、β−キナクリドン顔料。
11Ciba(登録商標)Cinquasia Red Y RT-759-D−Cibaの市販製品、γ−キナクリドン顔料。
12ZrO2/SiO2ビーズは、Glen Mills Inc., 395 Allwood Road, Clifton, New Jersey, 07012により製造されたもの。
【0113】
実施例A−1 粗製2,9−ジクロロキナクリドンの水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、2,9−ジクロロキナクリドン圧縮ケーク858.4g(46.6重量%固体)、水391.6g、Joncryl HPD-961(34重量%固体)37.5gおよびSurfynol DF-372消泡剤3.9gを加えた。これらの原料を、高剪断撹拌機(例えばロスミキサ(Ross Mixer))で、適切な設定で5分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムにより8.5〜9.0重量%に調節する。得られたスラリーを、ダイノーミル中でミリングする。
【0114】
ダイノーミルを、1.0〜1.25mm ZrO2/SiO2ビーズ1220g(500ml)で充填する(ミルギャップ(mill gap)設定0.10、周速度(tip speed)30m/分)。調製した顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移す。ミリングを、80〜100ml/分の流速で開始する。流体粘度を維持するためにミリングを続けながらJoncryl HPD-96およびDF-37の添加を行い、全量でJoncryl HPD-96 45.5gおよびSurfynol DF-37 5.1gを使用した。1時間毎にサンプリングを行い、ミリングプロセスをモニタする。全ミリング時間は、4.8時間であり、42回の循環を行い、30.2重量%固体のスラリー生成物1200mlが得られ、これを実施例A−2の熟成実験で使用する。ミリングされた製品は、プレミリングされた粗製顔料と比較して、ティントおよびマストーンの両方においてより高い色度を示し、着色力は87%増加した。
【0115】
実施例A−2 水性ミリング後の、高性能の不透明顔料の製造のための粒度再成長プロセス
1000mlフラスコに、水120ml、NaOH(50%溶液)24.0g、ベンジルトリブチルアンモニウムクロライドの50%ヘキシレングリコール/水溶液3.6gおよびペンタノール7.2gを加え、室温で10分間撹拌する。ミリングされたキナクリドンの実施例A−1のスラリー試料60gを、上記の混合物に加え、室温で30分間撹拌し、還流(97℃)で4時間加熱する。
【0116】
反応混合物を、60℃にまで冷却し、濾過漏斗へ移し、濾過して、0.1%硫酸水溶液で洗浄し、続いてpH7.0、75.2重量%の固体圧縮ケーク試料が得られるまで熱水で洗浄する。この試料を、オーブン内で一夜、80℃で乾燥し、混合して粉末の形態とし、塗料およびプラスチックの篩い分けを行う。
【0117】
実施例A−2を、Sunfast Magenta 228-67253市販製品を標準として使用して、ベースコート/クリアコート塗料で試験する。実施例A−2は、同様の不透明度、マストーンおよびティントの両方において同様の色度、マストーンで青みがかった色相、ティントでdE=0.5を示す。
【0118】
プラスチックPVC試験によれば、ティントでdE=0.7という同様の傾向を示す。このデータは、実施例A−2が、塗料およびプラスチックでの用途のいずれにおいても、Sunfast Magenta 228-67253と同様の色合いおよび性能を有することを示す。熱安定性試験を、エンジニアリングプラスチックであるABS媒体およびCibaの市販製品(登録商標)CINQUASIA MAGENTA RT-265-D4を標準として使用して行った。着色されたABSの200〜300℃の温度範囲での熱安定性が試験された。実施例A−2は、ティントおよびマストーンの両方においてRT-265-Dよりも熱安定であり、200〜300℃の温度範囲で、RT-265-DのマストーンのdE=2.87と比較してマストーンのdE=2であった。
【0119】
実施例A−3 粗製γ−キナクリドンおよび2,9−ジクロロキナクリドンの混合物の水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、γ−キナクリドン圧縮ケーク(40.3重量%固体)972.7g、2,9−ジクロロキナクリドン圧縮ケーク(46.6重量%固体)17.2g、水260.1g、Joncryl HPD-96(34重量%固体)47.0gおよびSurfynol DF-37消泡剤9.0gを加える。この原料を、高剪断撹拌機(例えば、ロスミキサ)で適切な設定で15分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムで8.5〜9.0の範囲に調節する。得られたスラリーを、ダイノーミルでミリングした。
【0120】
ダイノーミルを、0.4〜0.6mm ZrO2/SiO2ビーズ1220g(500ml)で充填する(ミルギャップ設定0.10、周速度30m/分)。顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移す。ミリングを、80〜100ml/分の流速で開始した。全ミリング時間は、2.5時間であり、20回のミリング循環を行い、31.5重量%固体のスラリー生成物1300mlが得られた。このスラリー試料は、ラテックス塗料カードドローダウン法(Latex paint card drawdown method)を用いた前実験室試験のために使用する。
【0121】
実施例A−4 水性ミリング後の実施例A−3の分離
実施例A−3 500mlを水2500ml中へ加え、pHを2%H2SO4で5.0〜6.0に調節する。試料を濾過し、洗浄してpH=7.0とする。連続的な真空濾過によって、固体は47重量%まで増大する。実施例A−4を、Bayer R-67005を標準として使用して、ラテックス塗料系で試験した。実施例A−4は、Quindo Red R-67005と同様の色空間を示し、マストーンdE=0.3およびティントdE=0.9であった。
【0122】
実施例A−5 塗料およびプラスチックでの試験を行う実施例A−3の試料調製
200mlビーカーに、実施例A−3のスラリー(28.8重量%固体)100gおよび水1500mlを添加する。この混合物のpHを、2%H2SO4で5.0に調節する。スラリーを濾過して、水で洗浄した。圧縮ケークを80℃で一夜乾燥させ、試料24gを得た。続いてこの試料を、レッチミルでミリングして(Retsch milled)、塗料およびプラスチックでの用途における試験のための微粉体とした。
【0123】
PVC試験で、実施例A−5は、Cibaの市販製品である(登録商標)CINQUASIA RED RT-790-D6よりも11%高い着色力を示し、同様の色合い、ならびにマストーン色およびティント色の両方においてdE<0.2示した。エンジニアリングプラスチックであるHDPE(高密度ポリエチレン)でも、実施例A−5は、RT-790-Dと同様の色を示し、熱安定性はRT-790-Dよりはるかに良好であった。温度が200℃から300℃へと上昇すると、実施例A−5のマストーンおよびティントのdEは1.5未満であり、一方で、RT-790-DにおいてはマストーンでdE=9.92、ティントでdE=12.1であった。
【0124】
ベースコートクリアコート塗料では、実施例5を、Cibaの市販製品(登録商標)CINQUASIA RED NRT-742-D7および(登録商標)CINQUASIA RED B NRT-796-D8と比較した。その結果は、実施例A−5が両標準よりも透明であり、RT-796-Dと比較して、ティント/マストーンでdE<1.5およびメタリックでdE=2.0の同様の色合いを有していることを示す。ラテックス装飾塗料の用途において、実施例A−5は、ディープトーン(deep tone)およびライトトーン(light tone)の両方においてRT-796-Dよりも大きな強さを有しており、同様の色合いおよびわずかに高い色度を有していた。
【0125】
実施例A−6 粗製β−キナクリドン水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、β−キナクリドン圧縮ケーク(51.9重量%固体)770.7g、水479.3g、Joncryl HPD-96(34重量%固体)37.5gおよびSurfynol DF-37消泡剤3.9gを加えた。この原料を、ロスミキサによって設定5で15分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムで8.5〜9.0の範囲に調節し、ダイノーミル中でのミリングのためのスラリーを調製した。
【0126】
ダイノーミルを、0.4〜0.6mm ZrO2/SiO2ビーズ1220g(500ml)で充填する(ミルギャップ設定0.10、周速度30m/分)。顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移し、80〜100ml/分の流速でミリングを開始する。流動性を維持するためにミリングを続けて、Joncryl HPD-96およびDF-37の添加を行い、全量でJoncryl HPD-96 111.5gおよびDF-37 6.9gを使用した。1時間毎にサンプリングを行い、ミリングプロセスをモニタする。全ミリング時間は、12.3時間であり、96回のミリング循環を行い、32.0重量%固体のスラリー生成物1200mlを得た。このスラリー生成物を、約5.0に調節し、濾過して、熱水で洗浄してpHを約7.0までにする。圧縮ケーク試料を、80℃でオーブン中で一夜乾燥し、その後、レッチミルによってミリングして、塗料およびプラスチックの篩い分けを行う微粉体を得た。
【0127】
実施例A−6の生成物を、ベースコート/クリアコート塗料中でCibaの市販製品(登録商標)CINQUASIA VIOLET R NRT-201-D9と比較し、それによれば、NRT-201-Dと同様の色合いを有し、ティントでdE=0.4であった。実施例A−6の生成物は、マストーンでNRT-201-Dよりも透明度が高く、メタリック色でわずかに黄味がかっていた。
【0128】
実施例A−6は、PVCプラスチック中で、Cibaの市販製品である(登録商標)CINQUASIA VIOLET R RT-791-D10とも比較した。RT-791-Dと比べて、実施例A−6は、同一のティント色およびより高い着色力を有しており、RT-791-Dよりも高い色度を有していて、マストーンでdE=3.5であった。
【0129】
実施例A−7
実施例A−6を繰り返すが、ミリングプロセスで0.3〜0.4mm ZrO2/SiO2ビーズを使用せず、実験を8時間で停止する。実施例A−6と同様の生成物を得た。
【0130】
実施例A−8 粗製γ−キナクリドン水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、γ−キナクリドン圧縮ケーク(40.3重量%固体)992.6g、水386.1g、Joncryl HPD-96(34重量%固体)48.8gおよびSurfynol DF-37消泡剤3.9gを加えた。この原料を、ロスミキサによって設定5で15分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムで9.4に調節し、調製されたスラリーをダイノーミル中でミリングした。
【0131】
ダイノーミルを、0.4〜0.6mm ZrO2/SiO2ビーズ1220g(500ml)で充填する(ミルギャップ設定0.10、周速度30m/分)。調製された顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移す。ミリングを、80〜100ml/分の流速で開始する。流動性を維持するためにミリングを続けながら、Joncryl HPD-96およびDF-37の添加を行い、全量でJoncryl HPD-96 64.8gおよびDF-37 7.8gを使用した。1時間毎にサンプリングを行い、ミリングプロセスをモニタする。全ミリング時間は、5時間であった。固体含有量25.6重量%の生成物1300mlを得た。始めのγ−キナクリドンはγ−II相を有していたが、ミリングを続けると、結晶はγ−Iへと相変化した。最終生成物は、100重量%のγ−I結晶相を有しており、開始顔料であるCiba(登録商標)Cinquasia Red Y RT-759-D11と比べて青味がかったティント色を有し、より透明度が高く、ティントおよびマストーン色の両方においてより高い色度を有していた。
【0132】
実施例A−9 粗製ペリレン水性ミリング
4000mlプラスチックビーカーに、ペリレン(Lot番号MO2326D)圧縮ケーク(38.6重量%固体)1295.3、水434.2g、Joncryl HPD-96(34重量%固体)73.5gおよびSurfynol DF-37消泡剤5.0gを加える。この原料を、高剪断撹拌機で15分間混合する。pHを、10%水酸化アンモニウムで9.4に調節し、調製されたスラリーをダイノーミルでミリングする。
【0133】
ダイノーミルを、0.4〜0.6mm ZrO2/SiO2ビーズ1170g(500ml)で充填する(ミルギャップ設定0.10、周速度30M/分)。調製された顔料スラリーを、ダイノーミルに吐出管から色が見られるまで移す。ミリングを、80〜100ml/分の流速で開始する。流動性を維持するためにミリングを続けながら、Joncryl HPD-96およびDF-37の添加を行い、全量でJoncryl HPD-96(34重量%活性の原料)238.2gおよびDF-37 7.0gを使用した。1時間毎にサンプリングを行い、ミリングプロセスをモニタする。全ミリング時間は、5時間であった。固体含有量25.7重量%の顔料スラリー300mlを得た。
【0134】
【表1】
【0135】
ラテックス塗料組成
ディープベース(Deep Base):PREMIUM PLUS(登録商標)Interior Semi-Gloss Enamel、No.5340、100%アクリルラテックス。BEHR Process Corporation、3400 W. Segerstrom Ave., Santa Ana, CA 92704。
【0136】
パステルベース(Pastel Base):PREMIUM PLUS(登録商標)Interior Semi-Gloss Enamel、No. 5560、100%アクリルラテックス。BEHR Process Corporation、3400 W. Segerstrom Ave., Santa Ana, CA 92704。
【0137】
マストーン試料は、ミリングされたスラリー生成物2.5g(水中に30重量%の顔料含有)をディープベースの担体と共に混合することによって調製した。
【0138】
ティント試料は、ミリングされたスラリー生成物0.6g(水中に30重量%の顔料含有)をパステルベースの担体と共に混合することによって調製した。
【0139】
実施例B
一般的な湿式ミリングプロセス
粗製β−キナクリドンのための水性の粒度絞りプロセス(湿式ミリング)は、約0.2〜1.2mmの直径の粒度範囲のミリング媒体、例えば酸化ジルコニウムビーズを約75〜約90%の装填量で使用して、ネッチミルおよびダイノーミル中で行う。水以外に、ミリングスラリーは、有機顔料または顔料混合物をスラリーの全量に対して約5〜約45%含有する組成物を含む。場合により、ミリング媒体は、顔料誘導体添加剤を顔料の乾燥重量に対して約0.5〜約20%有していてよい。非顔料添加物は、ポリマー分散剤または添加剤の混合物を含む。粒度絞りの時間は約10分〜約48時間とすることができ、これにより、用途で必要とされる粒度を得る。ミリングされた生成物は、粒度絞りプロセス後に分離することができる、または塩基、極性有機溶媒および/またはアミン塩を添加して約70〜95℃に水性スラリーを加熱することによって結晶の寸法を再成長させることができる。
【0140】
一般的な分散液ミリングプロセス
粗製γ−またはβ−キナクリドンのための分散液ミリングプロセスを、市販のボールミルを、市販の硫酸アンモニウムおよび結晶化溶媒と共に「Cyl-Pebs(登録商標)」(直径1.6cmのスチールロッドの約2.5cm区分)および犬釘(railroad spike)で装填する。本発明では、結晶化溶媒はジメチルグルタレートである。続いて粗製γ−またはβ−キナクリドンを、ボールミル内に装填する。この装填物は、約2〜約48時間のミルの回転によって磨砕される。その後、ミルの内容物を、「Cyl-Pebs(登録商標)」および犬釘を残すよう篩い分けしながら排出させる。
【0141】
β−またはγ−キナクリドンの分散液ミリング後の抽出
適切な容器に、1.5%硫酸および上記のミリングされた内容物を装填する。混合物を約90℃まで加熱する。γ−キナクリドンの顔料溶液を、適切な濾過装置で分離し、酸および塩不含で洗浄する。水で湿潤した得られた顔料を乾燥するか、または所望の末端用途に応じてさらに処理することができる。
【0142】
カラーデータを、Minolta Corporation USA. 101 Williams Drive, Ramsey, NJにより製造されたCM−3600d分光光度計を使用して得る。
【0143】
β−キナクリドン
実施例B−1
粗製β−キナクリドンを、2,9−ジクロロキナクリドンなしでフタルイミドメチルキナクリドンと共に水性ミリング
5000ml循環フラスコに、乾燥のβ−キナクリドン粗製物200.0g、ポリマー分散剤、Hercules Incorporated, Wilmington, Delawareにより製造されたScripset720(水中にマレイン酸アクリル酸コポリマーを25%含む)32.0g、フタルイミドメチルキナクリドン8.0gおよび水500.0gを加える。上記の化学物質を、機械的撹拌機で30分間混合する。得られたスラリーをネッチミル中でpH7.0〜9.0でミリングする。
【0144】
ネッチミル磨砕チャンバを、0.3mmのZrO2/Y2O3ビーズ1825.0g(500ml)および水367.0gで充填する。調製された顔料スラリーをネッチミル中にポンピングし、ミリングを400.0g/分の流速、12.0M/分で設定された周速度で開始し、ミリング温度は50〜55℃に制御する。全ミリング時間は120分である。ミリングされたβ−キナクリドンスラリーを、水500.0gで希釈して、スラリーpHを2%H2SO4で5.0に調節し、続いて濾過して、pH7.0になるまで熱水で洗浄し、オーブン中で80℃で乾燥させる。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図では、α−キナクリドンに対応する14θでピークが現れている。β−キナクリドンおよびミリングされた生成物の色データを表3に示す。2,9−ジクロロキナクリドンなしでミリングされた粗製β−キナクリドンのX線図を図3に示す。
【0145】
実施例B−2
粗製β−キナクリドンを、フタルイミドメチルキナクリドンおよび2,9−ジクロロキナクリドンと共に水性ミリング
5000ml循環フラスコに、乾燥β−キナクリドン171.5g、フタルイミドメチルキナクリドン3.5g、2,9−ジクロロキナクリドン3.5gおよび水1951.5gを加える。この化学物質を、機械的撹拌機により30分間混合する。得られたスラリーを、ネッチミルでpH7.0〜9.0でミリングする。
【0146】
ネッチミル磨砕チャンバを、0.3mmのZrO2/Y2O3ビーズ1825.0g(500ml)および水367.0gで充填する。調製された顔料スラリーをネッチミル中にポンピングし、ミリングを800.0g/分の流速、12.0M/分で設定された周速度で開始し、ミリング温度を80〜85℃に制御する。全ミリング時間は102分である。ミリングされたβ−キナクリドンスラリー500.0gを、水500.0gで希釈して、続いて濾過して、pH7.0になるまで熱水で洗浄し、オーブン中で80℃で乾燥させる。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図では、α−キナクリドンに対応する14θでピークがない。ミリングされた生成物の色データを表3に示す。ミリングされた生成物のX線図を図4に示す。
【0147】
実施例B−3
2,9−ジクロロキナクリドンの存在下での粗製β−キナクリドンの水性ミリング
5000ml循環フラスコに、乾燥したβ−キナクリドン粗製物171.5g、2,9−ジクロロキナクリドン3.5g、ポリマー分散剤10〜WK(Eastman Chemical Resins, Kingsport, Tennesseeにより製造された、水酸化ロジンのグリセロールエステル混合物の55%活性水性分散液)であるStaybelite Ester(登録商標)14.0gおよび水1955.0gを加える。この化学物質を、機械的撹拌機で30分間混合する。得られたスラリーは、ネッチミルでpH7.0〜9.0でミリングされる。
【0148】
ネッチミル磨砕チャンバを、0.3mmのZrO2/Y2O3ビーズ1825.0g(500ml)および水367.0gで充填する。調製された顔料スラリーをネッチミル中にポンピングする。ミリングを800.0g/分の流速、12.0M/分で設定された周速度で開始し、ミリング温度を80〜85℃に制御する。全ミリング時間は60分である。ミリングされたβ−キナクリドンスラリー300.0gを、水500.0gで希釈して、続いて濾過して、pH7.0になるまで熱水で洗浄し、オーブン中で80℃で乾燥させる。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図は14θでピークを示さず、α−キナクリドンが存在しないということである。ミリングされた生成物の色データを表3に示す。ミリングされた生成物のX線図を図5に示す。
【0149】
実施例B−4
2,9−ジクロロキナクリドンの存在下での粗製β−キナクリドンの水性ミリング
実施例B−3を繰り返すが、ミリング時間は90分である。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図は14θでのピークを示さず、α−キナクリドンが存在しないことを示す。ミリングされた生成物の色データを表3に示す。ミリングされた生成物のX線図を図6に示す。
【0150】
実施例B−5
2,9−ジクロロキナクリドンの存在下での粗製β−キナクリドンの水性ミリング
実施例B−3を繰り返すが、ミリング時間は120分である。分離された生成物を、篩い分けしてアルキドメラニン塗料中に加える。ミリングされた生成物のX線図は14θでのピークを示さず、α−キナクリドンが存在しないことを示す。ミリングされた生成物の色データを表3に示す。ミリングされた生成物のX線図を図7に示す。
【0151】
実施例B−6〜B−11
実施例B−6〜B−11のために、実施例B−3を繰り返すが、ミリング時間を変化させ、2,9−ジクロロキナクリドンの量も変化させ、Staybelite Ester(登録商標)を添加しない。図20〜24を参照されたい。
【0152】
ミリングされた生成物のX線図は、14θでピークを示さない。よって、2,9−ジクロロキナクリドンは、様々な配量レベルおよび様々なミリング時間で、α相の抑制剤として機能する。
【0153】
【表2】
【0154】
γ−キナクリドン
実施例B−12
分散ミルに、Cylpebs(登録商標)100lbs(ポンド)および釘10lbsを装填し、さらに、硫酸アルミニウム(無水物)1532.2g、粗製γ−キナクリドン647.1g、4,11−ジクロロキナクリドン20.4g、2,9−ジクロロキナクリドン13.6gおよびジメチルグルタレート18.7gを装填する。磨砕を40rpmで5時間続ける。
【0155】
ミル粉体を、硫酸および水(1.5%硫酸)によって、90℃で2時間撹拌して抽出する。続いて水を加えて、抽出混合物を約60〜約65℃に冷却し、濾過し、洗浄して中性のpHにする。得られたγ−キナクリドンを1%未満の水分含有量にまで乾燥させ、その後、アルキルメラニン塗料と共に組成物を形成し、試験して表5に示す色空間を測定する。
【0156】
粗製γ−キナクリドンを、2,9−ジクロロキナクリドンと共に分散液ミリングする場合には、上記のように抽出し、γ相が保持される。表5に示す実施例B−12に関する色空間を参照されたい。
【0157】
実施例B−13〜B−18
2,9−ジクロロキナクリドンの存在下での粗製γ−キナクリドンの水性ミリング
実施例B−13〜B−18のために、実施例B−3を繰り返すが、Staybelite Ester(登録商標)を添加せず、ミリングされる粗製顔料がγ−キナクリドンである。ミリング時間および湿式ミリング中に添加する2,9−ジクロロキナクリドンの量を下の表2のように変化させる。以下の表5には色データを示す。
【0158】
【表3】
【0159】
2,9−ジクロロキナクリドンと共にミリングすることによって、γ−キナクリドンは、2,9−ジクロロキナクリドンの量に依存して、βおよび/またはαへと変化する。γ−キナクリドン粗製物を2,9−ジクロロキナクリドン0.5%と共に最大で2時間ミリングした場合、γは主にβ粗製物に変化する。図16のX線図を参照されたい。2,9−ジクロロキナクリドンの量を1.0%〜3%に増加させると、αへ変化する量が増加する。したがって、2,9−ジクロロキナクリドンと共にγ粗製物をミリングすることによって、約0.5重量%以下の配量で2,9−ジクロロキナクリドンを添加剤として使用する場合、粗製γ相が主にβへと変化する。主にとは、本発明において、約85%を超えるγ粗製物、好ましくは約90%を超えるγ粗製物がβに変化するということを意味する。
【0160】
α−キナクリドンおよびβ−キナクリドン混合物のX線パターンを検討するために、比較例を調製した。試料は、既知のβ−キナクリドンおよびα−キナクリドンを任意の割合で物理的に混合することによって生成し、X線スペクトルを得る。
【0161】
比較例B−1
100ml固体試料ビンに、ミリングプロセスから得られたα−キナクリドン0.250gおよびβ−キナクリドン粗製物2.0gを加えた。α−キナクリドン粗製物とβ−キナクリドン粗製物との重量比は、1.0/8.0に等しい。この試料をシェーカーに装填し、60分間混合して、その後、X線測定を行う。14θでのピークはα−キナクリドンに対応する。このX線スペクトルを図8に示す。
【0162】
比較例B−2
100ml固体試料ビンに、ミリングプロセスから得られたα−キナクリドン0.600gおよびβ−キナクリドン粗製物2.0gを加えた。α−キナクリドン粗製物とβ−キナクリドン粗製物との重量比は、1.0/3.3に等しい。この試料をシェーカーに装填し、60分間混合して、その後、X線測定を行う。14θでのピークはα−キナクリドンに対応する。このX線スペクトルを図9に示す。
【0163】
比較例B−3
100ml固体試料ビンに、ミリングプロセスから得られたα−キナクリドン1.0gおよびβ−キナクリドン粗製物1.0gを加えた。α−キナクリドン粗製物とβ−キナクリドン粗製物との重量比は、1/1に等しい。この試料をシェーカーに装填し、60分間混合して、その後、X線測定を行う。14θでのピークはα−キナクリドンに対応する。このX線スペクトルを図10に示す。
【0164】
【表4】
【0165】
【表5】
【0166】
【表6】
【0167】
a:アルキルメラミン塗料の組成:
【0168】
ミルベース(固体粒子懸濁液):
8oz(オンス)の容器に、顔料試料1.2g、disperbyk 161(添加剤を分散させた高分子ブロックコポリマー、活性成分30%)0.6g、アルキドメラミン樹脂56.2gおよびガラスビーズ(粒径2mm)100gを加える。この混合物を、Skandexに装填し、2時間ミリングを行う。顔料スラリーをガラスビーズから分離して、ミルベースとして回収する。顔料割合は、2.1%であった。
【0169】
マストーン色:
上記のミルベース7.5gをアルキドメラミン樹脂22.5gで希釈し、顔料分散液を、KCC自動フィルムアプリケータを備えている、ウェット膜厚100μmワイヤーバーコーター(wired bar coater)(No.8)によって、Black/White Cartonに塗布し、130℃で30分間乾燥させた。
【0170】
ティント色:
上記のミルベース16.7gを白色塗料(20%TiO2)15.0gで希釈し、顔料分散液を、KCC自動フィルムアプリケータを備えている、ウェット膜厚100μmワイヤーバーコーター(wired bar coater)(No.8)によって、Black/White Cartonに塗布し、130℃で30分間乾燥させた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料の光学的特性を改善する有機顔料の粒度絞りの方法であって、
(a)
i)1種以上の粗製有機顔料約10〜60重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
vi)水約10重量%を超える量
を含む混合物をミリングし(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)、
(b)有機顔料を分離する、方法。
【請求項2】
粗製有機顔料が、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン、トリフェンジオキサジン、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンサンスロン、フラバンスロン、インダンスロン、ペリノン、ピランスロン、チオインディゴ、4,4’−ジアミノ−1,1−ジアントラキノニル、およびアゾ化合物、ならびにこれらの置換誘導体または混合物から選択され、好ましくは、粗製有機顔料が、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、1,4−ジケトピロロピロールおよびジオキサジン顔料である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
粗製有機顔料が、式A:
【化5】
[式中、XおよびYは、互いに独立して、水素、ハロゲン、−OH、−NO2、−CF3、C1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基、置換されたC1〜C4アルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、フェノキシ基、−COOH、−COO−C1〜C4アルキル基、−SO3H、フェニルアミノ基、ベンズアミノ基、−N(CH3)2、−SO2NH2、−SO2N(CH3)2、ピリジノ基、−CONH2または−CON(CH3)2、特にH、F、Cl、Br、I、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシであり、nは、0、1または2、特に0または1である]のキナクリドンまたは式Aの異なる誘導体の混合物である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
キナクリドンが、β結晶相またはγ結晶相の、キナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、3,10−ジクロロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、2,3,9,10−テトラクロロキナクリドン、2,4,9,11−テトラクロロキナクリドン、2,9−ジフルオロキナクリドン、2,9−ジブロモキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、3,10−ジメチルキナクリドン、4,11−ジメチルキナクリドン、2,4,9,11−テトラメチルキナクリドン、2,9−ジ(t−ブチル)キナクリドン、2,9−ジヒドロキシルキナクリドン、2,9−ジ(トリフルオロメチル)キナクリドン、2,9−ジメトキシキナクリドン、2,9−ジエトキシキナクリドン、2,4,9,11−テトラメトキシキナクリドン、2,9−ジカルボキシルキナクリドン、2,9−ジクロロヘキシルキナクリドン、2,9−ジフェニルキナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノ)キナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノスルホ)キナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノカルボニル)キナクリドン、3,10−ジニトロキナクリドン、2,9−ジメチル−4,11−ジクロロキナクリドン、2,9−ジメチル−4,11−ジカルボキシキナクリドンおよび2,9−ジピリジノキナクリドンであり、好ましくは、キナクリドンが、未置換のβ−もしくはγ−キナクリドンまたは2,9−ジクロロキナクリドンである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
スチレンコポリマー分散剤が、式B:
【化6】
[式中、R1は、H、C1〜C4アルキル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ニトロ基もしくはアミノ基、C1〜C18アルキレン基またはC1〜C4アルコキシ基であり、R2は、HおよびC1〜C4アルキル基であり、R3は、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基であり、100>n>1であり、100>m>1であり、R4およびR5は、互いに独立して、HまたはC1〜C4アルキル基である]
に示す化学構造を有している、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
成分ii)のスチレンコポリマー分散剤が、約2:1以上のスチレン対(メタ)アクリルモノマー単位の比を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
成分ii)のスチレンコポリマー分散剤が、約5,000〜20,000、好ましくは約9,000〜17,000の分子量を有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
成分i)の粗製顔料または粗製顔料混合物が、約0.3〜4.0μm、好ましくは約1.0〜3.0μmの粒度を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
分離されたミリング済み顔料またはミリング済み顔料混合物が、約30〜300nm、好ましくは20〜400nmの粒度を有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の方法によって調製された顔料組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載の方法によって調製された顔料を含むコーティング組成物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載の方法によって調製された顔料を含む、繊維およびプラスチックでの用途のための組成物。
【請求項13】
粗製β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、βまたはγ結晶相を維持する粒度絞り方法であって、
2,9−ジクロロキナクリドンを含むミリング組成物を、粗製β−またはγ−キナクリドンと混ぜ合わせ、
2,9−ジクロロキナクリドンの重量%が、粗製βまたはγ顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%であり、
β−またはγ−キナクリドンが所望の顔料粒度に達するまでミリングする、方法。
【請求項14】
γ−キナクリドン顔料結晶を、γ結晶相がα相に変化することを抑制しながら粒度絞りする方法であって、
2,9−ジクロロキナクリドンを含むミリング組成物を、粗製γ−キナクリドンと混ぜ合せ、
2,9−ジクロロキナクリドンの重量%が、粗製γ顔料の乾燥重量に対して0.1重量%〜約5.0重量%であり、
γ−キナクリドンが所望の顔料粒度に達するまで組成物をミリングする、方法。
【請求項15】
粗製顔料結晶相がβである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
粗製顔料結晶相がγである、請求項13記載の方法。
【請求項17】
粗製顔料を、湿式ミリングまたは分散液ミリングする、請求項13記載の方法。
【請求項18】
粗製β顔料を、湿式ミリングする、請求項15記載の方法。
【請求項19】
粗製β顔料を、分散液ミリングする、請求項15記載の方法。
【請求項20】
粗製γ顔料を、分散液ミリングする、請求項16記載の方法。
【請求項21】
粗製顔料が、約0.3〜約4.0μmの粒度を有する、請求項13記載の方法。
【請求項22】
顔料粒度が、約30〜約300nmである、請求項13記載の方法。
【請求項23】
粗製顔料を、改質試薬、レオロジー改良剤、質感改良剤、消泡剤、湿潤剤、粒子成長抑制剤、他の結晶相調整剤、凝集防止剤、ポリマーミリング助剤および分散剤からなる群から選択される、1種以上の別の添加剤の存在下でミリングする、請求項13記載の方法。
【請求項24】
粗製γ顔料を湿式ミリングし、2,9−ジクロロキナクリドン約0.5重量%未満を湿式ミリング組成物に加え、重量%が、粗製γ顔料の乾燥重量に対する値である、請求項14記載の方法。
【請求項25】
粗製γ−キナクリドン顔料が、湿式ミリング後、主にβ−キナクリドン顔料に変化している、請求項24記載の方法。
【請求項26】
組成物が、ミリング後、α−キナクリドンの最大重量%が、ミリングされた組成物の乾燥重量に対して約5重量%である、請求項18記載の方法。
【請求項27】
γまたはβ粗製キナクリドンが、ミリング組成物の全重量に対して約5〜約95重量%である、請求項13記載の方法。
【請求項28】
粗製γ−またはβ−キナクリドンが、ミリング組成物の全重量に対して約5〜約30重量%である、請求項23記載の方法。
【請求項29】
ミリング組成物が、水を含む、請求項13記載の方法。
【請求項30】
水が、全ミリング組成物に対して約5〜約98重量%を占める、請求項29記載の方法。
【請求項31】
水が、全ミリング組成物に対して約60〜約95重量%を占める、請求項30記載の方法。
【請求項32】
γまたはβ粗製キナクリドンが、全ミリング組成物の約2〜約75重量%を占める、請求項13記載の方法。
【請求項33】
γまたはβ粗製キナクリドンが、全ミリング組成物の約2〜約20重量%を占める、請求項28記載の方法。
【請求項34】
粒度絞りを、約4.0〜約12.0のpHで行う、請求項28記載の方法。
【請求項35】
方法が、分離、結晶再成長および表面処理からなる群から選択される少なくとも1つの工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項36】
β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、β結晶相またはγ結晶相を維持してこれらの顔料の光学的特性を改善する粒度絞り方法であって、
(a)
i)β−またはγ−キナクリドンと共に、β−またはγ−顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%である2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物約10〜60重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む混合物をミリングし(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントが、混合物の全重量に対する値である)、
(b)β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を分離する、方法。
【請求項37】
請求項13記載の方法により粒度絞りされたγ−またはβ−キナクリドンを組み込まれた高分子量有機材料。
【請求項38】
材料が、インク、コーティング物またはプラスチックである、請求項37記載の材料。
【請求項39】
請求項13記載の方法により得られた粒度絞りされたγ−またはβ−キナクリドンの有効顔料量を組み込むことを含む、高分子量有機材料を着色する方法。
【請求項40】
2,9−ジクロロキナクリドンの、β−および/またはγ−キナクリドンのβおよび/またはγ結晶相を保持する結晶相抑制剤としての使用。
【請求項1】
顔料の光学的特性を改善する有機顔料の粒度絞りの方法であって、
(a)
i)1種以上の粗製有機顔料約10〜60重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、粗製有機顔料の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
vi)水約10重量%を超える量
を含む混合物をミリングし(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントは、混合物の全重量に対する値である)、
(b)有機顔料を分離する、方法。
【請求項2】
粗製有機顔料が、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、ジオキサジン、トリフェンジオキサジン、1,4−ジケトピロロピロール、アントラピリミジン、アンサンスロン、フラバンスロン、インダンスロン、ペリノン、ピランスロン、チオインディゴ、4,4’−ジアミノ−1,1−ジアントラキノニル、およびアゾ化合物、ならびにこれらの置換誘導体または混合物から選択され、好ましくは、粗製有機顔料が、ペリレン、キナクリドン、フタロシアニン、イソインドリン、1,4−ジケトピロロピロールおよびジオキサジン顔料である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
粗製有機顔料が、式A:
【化5】
[式中、XおよびYは、互いに独立して、水素、ハロゲン、−OH、−NO2、−CF3、C1〜C4アルキル基、置換されたC1〜C4アルキル基、C1〜C4アルコキシ基、置換されたC1〜C4アルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、フェノキシ基、−COOH、−COO−C1〜C4アルキル基、−SO3H、フェニルアミノ基、ベンズアミノ基、−N(CH3)2、−SO2NH2、−SO2N(CH3)2、ピリジノ基、−CONH2または−CON(CH3)2、特にH、F、Cl、Br、I、C1〜C4アルキルまたはC1〜C4アルコキシであり、nは、0、1または2、特に0または1である]のキナクリドンまたは式Aの異なる誘導体の混合物である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
キナクリドンが、β結晶相またはγ結晶相の、キナクリドン、2,9−ジクロロキナクリドン、3,10−ジクロロキナクリドン、4,11−ジクロロキナクリドン、2,3,9,10−テトラクロロキナクリドン、2,4,9,11−テトラクロロキナクリドン、2,9−ジフルオロキナクリドン、2,9−ジブロモキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、3,10−ジメチルキナクリドン、4,11−ジメチルキナクリドン、2,4,9,11−テトラメチルキナクリドン、2,9−ジ(t−ブチル)キナクリドン、2,9−ジヒドロキシルキナクリドン、2,9−ジ(トリフルオロメチル)キナクリドン、2,9−ジメトキシキナクリドン、2,9−ジエトキシキナクリドン、2,4,9,11−テトラメトキシキナクリドン、2,9−ジカルボキシルキナクリドン、2,9−ジクロロヘキシルキナクリドン、2,9−ジフェニルキナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノ)キナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノスルホ)キナクリドン、2,9−ジ(ジメチルアミノカルボニル)キナクリドン、3,10−ジニトロキナクリドン、2,9−ジメチル−4,11−ジクロロキナクリドン、2,9−ジメチル−4,11−ジカルボキシキナクリドンおよび2,9−ジピリジノキナクリドンであり、好ましくは、キナクリドンが、未置換のβ−もしくはγ−キナクリドンまたは2,9−ジクロロキナクリドンである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
スチレンコポリマー分散剤が、式B:
【化6】
[式中、R1は、H、C1〜C4アルキル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ニトロ基もしくはアミノ基、C1〜C18アルキレン基またはC1〜C4アルコキシ基であり、R2は、HおよびC1〜C4アルキル基であり、R3は、ヒドロキシルまたはC1〜C4アルコキシ基であり、100>n>1であり、100>m>1であり、R4およびR5は、互いに独立して、HまたはC1〜C4アルキル基である]
に示す化学構造を有している、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
成分ii)のスチレンコポリマー分散剤が、約2:1以上のスチレン対(メタ)アクリルモノマー単位の比を有する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
成分ii)のスチレンコポリマー分散剤が、約5,000〜20,000、好ましくは約9,000〜17,000の分子量を有する、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
成分i)の粗製顔料または粗製顔料混合物が、約0.3〜4.0μm、好ましくは約1.0〜3.0μmの粒度を有する、請求項1〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
分離されたミリング済み顔料またはミリング済み顔料混合物が、約30〜300nm、好ましくは20〜400nmの粒度を有する、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項記載の方法によって調製された顔料組成物。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項記載の方法によって調製された顔料を含むコーティング組成物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか1項記載の方法によって調製された顔料を含む、繊維およびプラスチックでの用途のための組成物。
【請求項13】
粗製β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、βまたはγ結晶相を維持する粒度絞り方法であって、
2,9−ジクロロキナクリドンを含むミリング組成物を、粗製β−またはγ−キナクリドンと混ぜ合わせ、
2,9−ジクロロキナクリドンの重量%が、粗製βまたはγ顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%であり、
β−またはγ−キナクリドンが所望の顔料粒度に達するまでミリングする、方法。
【請求項14】
γ−キナクリドン顔料結晶を、γ結晶相がα相に変化することを抑制しながら粒度絞りする方法であって、
2,9−ジクロロキナクリドンを含むミリング組成物を、粗製γ−キナクリドンと混ぜ合せ、
2,9−ジクロロキナクリドンの重量%が、粗製γ顔料の乾燥重量に対して0.1重量%〜約5.0重量%であり、
γ−キナクリドンが所望の顔料粒度に達するまで組成物をミリングする、方法。
【請求項15】
粗製顔料結晶相がβである、請求項13記載の方法。
【請求項16】
粗製顔料結晶相がγである、請求項13記載の方法。
【請求項17】
粗製顔料を、湿式ミリングまたは分散液ミリングする、請求項13記載の方法。
【請求項18】
粗製β顔料を、湿式ミリングする、請求項15記載の方法。
【請求項19】
粗製β顔料を、分散液ミリングする、請求項15記載の方法。
【請求項20】
粗製γ顔料を、分散液ミリングする、請求項16記載の方法。
【請求項21】
粗製顔料が、約0.3〜約4.0μmの粒度を有する、請求項13記載の方法。
【請求項22】
顔料粒度が、約30〜約300nmである、請求項13記載の方法。
【請求項23】
粗製顔料を、改質試薬、レオロジー改良剤、質感改良剤、消泡剤、湿潤剤、粒子成長抑制剤、他の結晶相調整剤、凝集防止剤、ポリマーミリング助剤および分散剤からなる群から選択される、1種以上の別の添加剤の存在下でミリングする、請求項13記載の方法。
【請求項24】
粗製γ顔料を湿式ミリングし、2,9−ジクロロキナクリドン約0.5重量%未満を湿式ミリング組成物に加え、重量%が、粗製γ顔料の乾燥重量に対する値である、請求項14記載の方法。
【請求項25】
粗製γ−キナクリドン顔料が、湿式ミリング後、主にβ−キナクリドン顔料に変化している、請求項24記載の方法。
【請求項26】
組成物が、ミリング後、α−キナクリドンの最大重量%が、ミリングされた組成物の乾燥重量に対して約5重量%である、請求項18記載の方法。
【請求項27】
γまたはβ粗製キナクリドンが、ミリング組成物の全重量に対して約5〜約95重量%である、請求項13記載の方法。
【請求項28】
粗製γ−またはβ−キナクリドンが、ミリング組成物の全重量に対して約5〜約30重量%である、請求項23記載の方法。
【請求項29】
ミリング組成物が、水を含む、請求項13記載の方法。
【請求項30】
水が、全ミリング組成物に対して約5〜約98重量%を占める、請求項29記載の方法。
【請求項31】
水が、全ミリング組成物に対して約60〜約95重量%を占める、請求項30記載の方法。
【請求項32】
γまたはβ粗製キナクリドンが、全ミリング組成物の約2〜約75重量%を占める、請求項13記載の方法。
【請求項33】
γまたはβ粗製キナクリドンが、全ミリング組成物の約2〜約20重量%を占める、請求項28記載の方法。
【請求項34】
粒度絞りを、約4.0〜約12.0のpHで行う、請求項28記載の方法。
【請求項35】
方法が、分離、結晶再成長および表面処理からなる群から選択される少なくとも1つの工程をさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項36】
β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を、β結晶相またはγ結晶相を維持してこれらの顔料の光学的特性を改善する粒度絞り方法であって、
(a)
i)β−またはγ−キナクリドンと共に、β−またはγ−顔料の乾燥重量に対して約0.1〜約5.0重量%である2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物約10〜60重量%、
ii)水溶性スチレンコポリマー分散剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜25重量%、
iii)場合により消泡剤約0.1〜1.0重量%、
iv)場合により添加剤、β−またはγ−キナクリドンと共に2,9−ジクロロキナクリドンを含む組成物の乾燥重量に対して約0.1〜5.0重量%、および
v)水約10重量%を超える量
を含む混合物をミリングし(成分i)、iii)およびv)の重量パーセントが、混合物の全重量に対する値である)、
(b)β−またはγ−キナクリドン顔料結晶を分離する、方法。
【請求項37】
請求項13記載の方法により粒度絞りされたγ−またはβ−キナクリドンを組み込まれた高分子量有機材料。
【請求項38】
材料が、インク、コーティング物またはプラスチックである、請求項37記載の材料。
【請求項39】
請求項13記載の方法により得られた粒度絞りされたγ−またはβ−キナクリドンの有効顔料量を組み込むことを含む、高分子量有機材料を着色する方法。
【請求項40】
2,9−ジクロロキナクリドンの、β−および/またはγ−キナクリドンのβおよび/またはγ結晶相を保持する結晶相抑制剤としての使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2012−177130(P2012−177130A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−108493(P2012−108493)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2006−540019(P2006−540019)の分割
【原出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108493(P2012−108493)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【分割の表示】特願2006−540019(P2006−540019)の分割
【原出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(396023948)チバ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Holding Inc.
【Fターム(参考)】
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