説明

キャストコート紙及びその製造方法

【課題】本発明の目的は、本発明は、カゼインに起因する臭いが無く、キャストドラムからの離型性が良好で、印刷強度が強く、ラミネート加工に適したキャストコ−ト紙及びその製造方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係るキャストコート紙は、顔料及び接着剤を含有するキャスト塗工液を原紙の表面に塗工してキャスト塗工層を設け、次いで乾燥し、乾燥した前記キャスト塗工層の表面を再湿潤して鏡面光沢を有するキャストドラムに圧接し、乾燥することからなるリウェット法によってキャスト処理したキャストコート紙において、前記キャスト塗工層は、接着剤として、ラテックスの全モノマー100質量部に対して、ブタジエンモノマー35〜55質量部及びカルボン酸系モノマー1〜8質量部を含有するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスを含有し、且つカゼインを使用せず大豆タンパクを必須成分として含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カゼインに起因する臭いが無く、キャストドラムからの離型性が良好で、印刷強度が強く、ラミネート加工に適したキャストコ−ト紙及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JIS Z 8741:1997「鏡面光沢度−測定方法(20度法)」による光沢度が40〜70である強光沢塗工紙は一般にキャストコート紙(キャスト紙)と呼ばれ、高級書籍、写真集、カレンダー及びカタログ等に使用される。その製造方法としては、例えば、主成分が顔料、水性接着剤及び助剤からなる塗工組成物を原紙の表面に塗工し乾燥後、乾燥された塗工層を再湿潤液によって再湿潤して可塑化し、加熱した鏡面仕上げされたドラム(以下、「キャストドラム」と称する。)表面に圧接させながら乾燥するリウェット法がある。キャストコート紙の製造方法では、乾燥後にキャストドラム面からの塗工紙の離型性を良好にするため、カゼインが広く使用されている。カゼインは、塩による膠化性があり、かつ、熱によって容易に伸び縮みする粘弾性を有する可変性のゲルとなる特性を有し、更に光沢発現効果が高いという特性を有する。
【0003】
しかしながら、カゼインは、供給や価格の面で不安定であるばかりでなく、動物性蛋白質であるため特有の臭気が発生する。特に、塗工液を製造するときのカゼインの腐敗による臭気、及び塗工紙を高速印刷する場合に、インキの乾燥のために加熱処理を施すときに出る臭気は作業環境の悪化に繋がっている。また、カゼインは、退色度が大きいことが知られている。
【0004】
そこで、カゼインを使用しないキャストコート紙及びその製造方法が検討されている(例えば、特許文献1、2、3、4又は5を参照。)。特許文献1には、接着剤としてカゼイン、酸化澱粉、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子の代わりに、エマルジョン、コロイダルディスパージョン、水溶液などの形態で水中において安定に存在し得る水性ウレタン樹脂を用いた塗料組成物及びこの組成物を塗工して得られる強光沢紙が開示されている。この強光沢紙は、接着剤としてカゼイン、酸化澱粉、カルボキシメチルセルロースなどの水溶性高分子を使用する限りは得られない程高い光沢度を有するというものである。
【0005】
特許文献2には、カゼインの代わりにエポキシ樹脂変性水性ウレタン樹脂又はアクリル樹脂変性水性ウレタン樹脂をアルカリ金属水酸化物で中和した変性水性ウレタン樹脂を用い、ピンホール、膨れ、ドラムピックなどの欠陥を発生させずに、高光沢で、表面強度及び均一性に優れたキャスト面を可能とするキャストコート紙用組成物及びそれを用いたキャストコート紙の製造方法が開示されている。この方法ではカゼインを使用しないのでカゼインに含まれているリン成分に起因する、廃溶剤燃焼時の触媒劣化という問題も解消できるというものである。
【0006】
特許文献3には、接着剤としてオレフィン系モノマーの単独又は二種以上を共重合してなる変性水性ウレタン樹脂と脂肪族共役ジオレフィン系モノマー及びオレフィン系モノマーを単独又は二種以上使用し、乳化重合して得られる粒子径が150〜300nm、ゲル分含有率が70質量%以上のラテックスとを併用した塗料組成物を及びそれを塗工して得られるキャストコート紙が開示されている。この方法では、光沢、乾燥及び湿潤状態の表面強度及び耐ブリスター性に優れたキャスト面を可能とし、かつ、オフセット輪転印刷が可能となる。
【0007】
特許文献4には、顔料としてカオリナイトクレーとサチンホワイトを含有し、助剤としてカチオン性樹脂を所定量用い、かつ、接着剤としてカゼインを用いないキャスト塗工紙の製造方法が開示されている。この方法では、キャストドラムからの離型性とキャスト面の光沢度に優れるキャストコート紙を得ることができる。
【0008】
特許文献5には、顔料としてカオリナイトクレーと炭酸カルシウムを含有し、接着剤としてカゼインを用いず大豆タンパク、スチレン・ブタジエン・ゴム・ラテックス及びポリアクリル酸を使用し、かつゲル化液に蟻酸、蟻酸亜鉛及び蟻酸カルシウム用いたキャスト紙の製造方法が開示されている。この方法では、カゼインに起因する臭いを生じることなく印刷ないしラミネート加工用キャストコート紙を得ることができる。
【0009】
特許文献1、2又は3に記載のキャストコート紙は、水性ウレタン樹脂又は変性水性ウレタン樹脂が極めて高価であるという欠点を有する。
【0010】
特許文献4に記載のキャストコート紙も、サチンホワイト及びカチオン性樹脂が高価であるため実用性に欠ける。
【0011】
特許文献5に記載のキャストコート紙も、ゲル化法の為生産性が低く実用性に欠ける。
【0012】
カゼインは、前述のとおり、臭気の問題を抱えているものの、石油系でなく動物系タンパク質であり、高い光沢発現効果、キャストコート紙の製造工程で良好な離型性が得られるなどの優れた点も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平3−252473号公報
【特許文献2】特開平5−44193号公報
【特許文献3】特開平6−2299号公報
【特許文献4】特開平9−111694号公報
【特許文献5】特開2010−180489公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
そこで、その臭気に問題があるカゼインを使用せず、石油系の水性ウレタン樹脂のように高価なものを接着剤として使用しなくとも、キャストドラムからの離型性が良好で、印刷強度が強く、ラミネート加工に適した高いリウェット法によるキャストコート紙の製造方法の具現化が強く望まれている。
【0015】
本発明の目的は、本発明は、カゼインに起因する臭いが無く、キャストドラムからの離型性が良好で、印刷強度が強く、ラミネート加工に適したキャストコート紙及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、かかる現状に鑑み、リウェット法による優れたキャスト面を有するキャストコート紙を得るために、鋭意研究した結果、キャスト塗工液に用いる接着剤としてカゼインを使用せず、植物由来の大豆タンパクを使用し、特定のスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合ラテックスを使用することによってキャストドラムからの離型性が良好で、印刷強度が強く、ラミネート加工に適したリウェット法によるキャストコート紙を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明に係るキャストコート紙は、顔料及び接着剤を含有するキャスト塗工液を原紙の表面に塗工してキャスト塗工層を設け、次いで乾燥し、乾燥した前記キャスト塗工層の表面を再湿潤して鏡面光沢を有するキャストドラムに圧接し、乾燥することからなるリウェット法によってキャスト処理したキャストコート紙において、接着剤として、ラテックスの全モノマー100質量部に対して、ブタジエンモノマー35〜55質量部及びカルボン酸系モノマー1〜8質量部を含有するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスを含有し、且つカゼインを使用せず大豆タンパクを必須成分として含有することを特徴とする。
【0017】
本発明に係るキャストコート紙では、前記キャスト塗工液のスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスがアクリロニトリルモノマーを5〜15質量部含有することが好ましい。この範囲にすることで、より塗工層の強度が強くなりラミネート加工に適したキャストコート紙を得ることができる。
【0018】
本発明に係るキャストコート紙では、前記キャスト塗工液のスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのゲル含量が88〜97質量%であることが好ましい。この範囲にすることで、ラテックスの粘性を適性に保つことが出来るため、キャストドラムからの離型性が良好となり容易にキャストコート紙とすることができる。
【0019】
本発明に係るキャストコート紙では、前記キャスト塗工液の前記大豆タンパクの含有量が、前記顔料100質量部に対して3〜13質量部であることが好ましい。カゼインの含有量を前記範囲にすることで、カゼイン由来の臭気低減することができる。また、均一な塗工層を形成することができるため、より光沢度の高いキャストコート紙とすることができる。
【0020】
本発明に係るキャストコート紙では、前記キャスト塗工液の前記スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスの含有量が、前記顔料100質量部に対して5〜25質量部であることが好ましい。スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスの含有量を前記範囲にすることで、ラミネート加工後の接着強度や印刷強度を得ることができる。また、均一な塗工層を形成することができるため、より光沢度の高いキャストコート紙とすることができる。
【0021】
本発明に係るキャストコート紙では、前記キャスト塗工液の酸化亜鉛の含有量が前記全顔料100質量部に対して0〜0.5質量部であることが好ましい。酸化亜鉛含有量を前記範囲にすることで、ラミネート加工後の接着強度や印刷強度を得ることができる。
【0022】
本発明に係るキャストコート紙では、ラミネート加工用としての特性を得ることができる。
【0023】
本発明に係るキャストコート紙の製造方法は、顔料及び接着剤を含有するキャスト塗工液を原紙の表面に塗工してキャスト塗工層を設け、次いで乾燥し、乾燥した前記キャスト塗工層の表面を再湿潤して鏡面光沢を有するキャストドラムに圧接し、乾燥することからなるリウェット法によってキャスト処理したキャストコート紙において、接着剤として、ラテックスの全モノマー100質量部に対して、ブタジエンモノマー35〜55質量部及びカルボン酸系モノマー1〜8質量部を含有するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスを含有し、且つカゼインを使用せず大豆タンパクを必須成分として含有させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、キャストコート紙及びその製造方法において、本発明は、カゼインに起因する臭いが無く、キャストドラムからの離型性が良好で、印刷強度が強く、ラミネート加工に適するという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
【0026】
本実施形態に係るキャストコート紙は、顔料及び接着剤を含有するキャスト塗工液を原紙の表面に塗工してキャスト塗工層を設け、次いで乾燥し、乾燥した前記キャスト塗工層の表面を再湿潤して鏡面光沢を有するキャストドラムに圧接し、乾燥することからなるリウェット法によってキャスト処理したキャストコート紙において、接着剤として、ラテックスの全モノマー100質量部に対して、ブタジエンモノマー35〜55質量部及びカルボン酸系モノマー1〜8質量部を含有するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスを含有し、且つカゼインを使用せず大豆タンパクを必須成分として含有する。
【0027】
本実施形態に係るキャストコート紙に使用する原紙は、原料パルプを公知の湿式抄紙機で単層又は多層で抄紙した紙又は板紙を使用することができる。原紙の原料パルプとしては、透気性を有する公知のパルプを選択することができる。例えば、広葉樹材又は針葉樹材を蒸解して得られる未さらしパルプ、広葉樹さらしクラフトパルプ(LBKP)、針葉樹さらしクラフトパルプ(NBKP)などの化学パルプ、グランドパルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナー砕木パルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ
(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP
)、ケミグランドパルプ(CGP)などの機械パルプ、脱墨古紙パルプなどの古紙パルプが挙げられる。これらの原料パルプから適宜選択したパルプを単独又は2種以上を混合して使用することができる。本発明においては、例えば、全パルプ中、広葉樹さらしパルプ(L−BKP)を70質量%以上、例えば、75〜98質量%含むことができる。
【0028】
前記原料パルプは、離解機及び叩解機を使用して適切な叩解度を有するパルプスラリーとする。各層のパルプの叩解度は、本実施形態では、限定されるものではないが、カナダ標準ろ水度(JIS P 8121:1995 パルプのろ水度試験方法)でCSF300ml以上600ml以下とすることが好ましい。より好ましくは、CSF400ml以上550ml以下である。CSF300ml未満では、原紙の透気性が悪化し、キャスト処理時にピットと呼ばれるクレーター状の微小な欠点が発生する場合がある。一方、CSF600mlを超えると、原紙がポーラスになり、キャスト塗工液が原紙に多く浸透し、結果として光沢度が低下する場合がある。また、紙層が弱くなるため、印刷時に紙ムケなどが発生し、使用に適さない場合がある。
【0029】
また、パルプスラリーには、原料パルプの他に、必要に応じて従来公知の填料、バインダー、サイズ剤、定着剤、歩留まり向上剤、紙力増強剤などの各種添加剤を1種以上用いて混合することができる。填料は、例えば、白土、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、非晶質シリカ、二酸化チタンである。サイズ剤は、例えば、ロジンサイズ、カチオン化澱粉、カチオン化ポリアクリルアマイド、アルキルケテンダイマーである。歩留まり向上剤は、例えば、硫酸バンドである。紙力増強剤は、例えば、カチオン化澱粉、両性澱粉、ポリアクリルアマイドである。
【0030】
前記パルプスラリーを、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの公知の湿式抄紙機を用いて、単層又は多層で抄紙し、乾燥させて原紙を抄造することができる。なお、本実施形態では、抄紙方法は特に限定されず、酸性紙、中性紙又はアルカリ性紙を包含する。原紙の坪量は、特に制限されないが、100〜700g/mとすることが好ましい。より好ましくは、150〜600g/mである。特に好ましくは、150〜450g/mである。
【0031】
原紙の片面又は両面には、澱粉、ポリビニルアルコール、外添用サイズ剤、合成樹脂などの公知の表面サイズ液を、サイズプレス、ロールコーターなどの公知の塗工機で塗布したサイズプレス面とすることができる。さらに、本実施形態では、原紙として、顔料及びバインダーを含有する顔料塗工組成物を下塗り層として塗工した塗工紙、キャスト塗工層の裏面に前記顔料塗工組成物を塗工した塗工紙、裏面をキャスト処理して光沢仕上げした塗工紙などの塗工紙を使用することができる。また、インク受容層を設けてインクジェット印字に適したインクジェット記録紙とすることもできる。
【0032】
キャスト塗工液は、顔料及び接着剤を含有する。キャスト塗工液に含有される顔料は、カオリンクレー、焼成クレー、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、サチンホワイト、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、プラスチックピグメントなど公知の塗工用顔料であり、1種又は2種以上の顔料を適宜選択して使用することができる。本実施形態では、顔料の種類は限定されないが、カオリンクレーを選択することが好ましい。カオリンクレーは、キャストコート紙の光沢性及びキャストドラム表面からの離型性の点で優れている。また、軽質炭酸カルシウムを選択することが好ましい。軽質炭酸カルシウムを添加することで、所望する高い白色度を得ることができる。2種以上の顔料を使用する場合は、カオリンクレーの含有率は、絶乾全顔料当り50〜90質量%とすることが好ましく、より好ましくは60〜80質量%である。また、軽質炭酸カルシウムの含有率は、絶乾全顔料当り10〜50質量%とすることが好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。
【0033】
キャスト塗工液には、接着剤として大豆タンパクを含有させる。また接着剤として、カゼインは前述のとおり臭気の問題があるため使用しない。大豆タンパクは、例えば、大豆タンパク、カルボキシル変性、スルホン化、リン酸化などの官能基を導入した大豆タンパクが挙げられる。キャスト塗工液中の大豆タンパクの含有量は、顔料100質量部に対して1〜20質量部とすると良く、3〜13質量部であることがより好ましい。この範囲にすることで、均一なキャスト塗工層を形成することができるため、より光沢度の高いキャストコート紙とすることができる。1質量部未満では、キャストドラムからの離型性が悪化し、ドラム汚れにつながる場合がある。20質量部を超えると、キャスト塗工液の粘度が急激に上昇することでキャスト塗工液の流動性が悪化し、無理に塗工しても均一な面とならず、結果として光沢度が低下する場合がある。
【0034】
接着剤としては、大豆タンパクの他に、スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスを含有する。このスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスは、ラテックスの全モノマー100質量部に対してブタジエンモノマーを35〜55質量部及びカルボン酸系モノマー1〜8質量部とすることが必要である。また、ブタジエンモノマーを38〜53質量部とすることが好ましい。また、カルボン酸系モノマー2〜6質量部とすることが好ましい。ブタジエンモノマーが35質量部より少ない場合にはキャストドラムからの離型性が悪化し、ドラム汚れにつながる場合がある。55質量部より多い場合には印刷強度、ラミネート加工後の接着強度は高くなるが、キャスト時の成膜性が強くなり透気性が悪化しピットと呼ばれるクレーター状の欠点が発生し易い。又、カルボン酸が1質量部より少ない場合はラミネート加工後の接着強度が低くなり、8質量部より多い場合にはキャスト塗工液の流動性が悪化し、無理に塗工しても均一な面とならず、結果として光沢度が低下する場合がある。ここで当該カルボン酸系モノマーとしてはフタル酸、イタコン酸、アクリル酸がより効果的である。
【0035】
スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのアクリロニトリルモノマーをラテックスの全モノマー100質量部に対して5〜15質量部含有することが好ましく、より好ましくは8〜14質量部含有する。5質量部未満の場合はラミネート加工後の接着強度が低くなり、15質量部を超える場合はキャストドラムからの離型性が悪くなり、褪色性も悪化する。またスチレンモノマーをラテックスの全モノマー100質量部に対して22〜59質量部とすればよく、好ましくは25〜55質量部である。
【0036】
スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのゲル含量が88質量%を以上97質量%以下であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上96質量%以下である。また91質量%以上95質量%以下が更に好ましい。88質量%以下ではラミネート加工後の接着強度が低くなり、97質量%を越えるとドラムピックが発生し操業が困難となる虞がある。
【0037】
キャスト塗工液中のスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックス含有量は、顔料100質量部に対して5〜25質量部含有することが好ましく、より好ましくは10〜21質量部含有する。5質量部未満の場合印刷強度及びラミネート加工後の接着強度が低くなり、25質量部を超えるとキャストドラムからの離型性が悪化し、透気性が低くなりピットが発生し易くなる。
【0038】
キャスト塗工液中には顔料として酸化亜鉛を含むこともできる。この場合、キャスト塗工液中の全顔料100質量部に対して酸化亜鉛を0.5質量部以下とすればよく、0.01〜0.5質量部含有することが好ましく、より好ましくは0.01〜0.2質量部含有する。0.5質量部を超えるとラミネート加工後の接着強度が低くなりやすい。
【0039】
キャスト塗工液に含有させる接着剤としては、大豆タンパク及びスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスの他に、酸化澱粉、酵素変性澱粉などの澱粉類、ポリビニルアルコール、オレフィン無水マレイン酸樹脂、メラミン樹脂などの合成樹脂系接着剤、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル酸エステルの重合体、アクリル酸エステル共重合体などのアクリル系重合体ラテックス、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのビニル系重合体ラテックス、又はこれらの各種重合体ラテックスをカルボキシル基のような官能基を含有する単量体で変性したアルカリ溶解性又はアルカリ非溶解性の重合体などを挙げることができ、適宜選択して用いることができる。尚、カゼインは使用しない。ここで使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスの平均粒子径(レーザー回折散乱法により求めた粒度分布%での粒子径)は90nm〜200nmが好ましく、より好ましくは100nm〜160nmである。90nm未満では紙の透気性が悪くキャスト時にピットと呼ばれる欠点が発生し易く、200nmを超えると印刷強度及びラミネート加工後の接着強度が低くなりやすい。
【0040】
キャスト塗工液には、必要に応じて、分散剤、消泡剤、着色剤、離型剤、流動変性剤などの各種の助剤を適宜配合して用いることができる。分散剤としては、例えば、アロンT50、東亜合成社製を顔料100質量部に対して0.01〜2質量部含有させることができる。また、離型剤としては、例えば、ノプコートPEM17、サンノプコ社製を顔料100質量部に対して0.01〜8質量部含有させることができる。
【0041】
キャスト塗工液は、アルカリ性に調製して用いることが好ましい。アルカリ性にすることによって、キャスト塗工液を作製するときに、大豆タンパク、カゼインなどの成分が水に溶解しやすくなる。また、キャスト塗工液の粘度が小さくなり、均一なキャスト塗工層を形成することができる。結果として、光沢度をより高めることができる。
【0042】
本実施形態では、キャスト塗工液の塗工には、公知の塗工機、例えばブレードコーター
、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーターなどから選ばれた塗工機を用いることができる。また、塗工は、1回又は複数回に分けて行うことができる。キャスト塗工液の固形分濃度は、30〜70質量%とすることが好ましいが、塗工機の種類、塗工速度などの各塗工条件に応じて適宜調節する。
【0043】
本実施形態に係るキャストコート紙では、キャスト塗工液の塗工量は、5〜50g/mであることが好ましく、より好ましくは10〜30g/mである。5g/m未満で
は所望する光沢度が得られない場合があり、50g/mを超えると、キャスト塗工液を過剰に使用することとなり不経済である。また乾燥時間が長くなるため生産性が低下するおそれがある。さらに、品質面でもインク乾燥性が遅くなるなどの弊害が発生する場合がある。
【0044】
キャスト処理方法としては、ウェット法、リウェット法、ゲル化法など公知の方法があるが、本実施形態では、リウェット法を選択する。リウェット法は、原紙上に塗工したキャスト塗工層を一旦乾燥して、その後、キャスト塗工層の表面を再湿潤液で再湿潤して鏡面光沢を有するキャストドラムに圧着乾燥させ強光沢仕上げして光沢面を形成するキャスト処理方法である。リウェット法は、キャスト塗工層を一旦乾燥する工程を経ているため他のキャスト処理法と比較して生産性が高く、コストダウンを図ることができる。逆にウェット法、ゲル化法はリウェット法に対して生産性が低いだけでなく、キャスト層が柔らかくなるため印刷強度、ラミネート加工後の接着強度が低くなる。
【0045】
キャスト塗工層の乾燥は、熱風ドライヤー、エアーキャップドライヤー、シリンダードライヤー、赤外線ドライヤー、電子線ドライヤーなどの塗工紙用乾燥装置を使用することができる。キャストコート紙の乾燥の程度は、水分が、キャストコート紙の全質量当り4〜8質量%となるようにすることが好ましい。
【0046】
再湿潤液には蟻酸を含有することが好ましい。蟻酸は、大豆タンパクをゲル化して、蟻酸がキャスト塗工層に含有される。キャスト塗工層の蟻酸含有量は、0.05〜0.35g/mであることが好ましい。より好ましくは、0.07〜0.30g/mであり
、特に好ましくは、0.07〜0.25g/mである。0.05g/m未満では、キャストドラムに圧着前のゲル化が弱く、結果として光沢度が低くなる。0.35g/mを超えると光沢面の強度が低下し、印刷に耐えることができない虞がある。
【0047】
キャスト塗工層中の蟻酸含有量を前記の所望の範囲に調節する手段として、例えば、蟻酸水溶液の濃度を、0.25〜2.00質量%とすることによって行うことができる。より好ましくは、0.50〜1.50質量%とする。また、再湿潤液のキャスト塗工層への吸収量を5〜40ml/mに調整することによっても行うことができる。
【0048】
大豆タンパクは、カゼインと比較して末端基のカルボキシル基及びアミノ基の数が少ないため、反応性が低くなる。その結果として、大豆タンパクを接着剤として使用したキャストコート紙は、カゼインを接着剤として使用したキャストコート紙よりも、光沢度が劣るところ、本実施形態に係るキャストコート紙のように、キャスト塗工層中に含有する蟻酸量を規定することによって、カゼインを接着剤として使用したキャストコート紙よりも光沢度の高いキャストコート紙を得ることができる。
【0049】
再湿潤液には、本発明の効果が損なわれない程度に、その他の資材を添加してもよい。その他の資材としては、例えば清水、温水、熱水、離型剤、クエン酸ナトリウム、硫酸亜鉛、ジシアンジアミド、尿素が挙げられる。例えば、クエン酸ナトリウムを再湿潤液中に0.001質量%〜2質量%含むことができる。
【0050】
再湿潤液をキャスト塗工層上に塗布する方法としては、公知の塗工機、例えばディップコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーターなどから選ばれた塗工機を用いることができる。
【0051】
キャスト処理後に、必要に応じてマシンキャレンダー、スーパーキャレンダーなどによって平滑化処理が行うことができるが、嵩高さ、剛度などのキャストコート紙の特長を著しく損なうような過度の処理は避ける必要がある。
【0052】
本実施形態に係るキャストコート紙では、両面をキャスト処理した光沢面とした両面キャストコート紙又は一方の面をキャスト処理した光沢面とし、他方の面にはキャスト処理しない片面キャストコート紙とすることができる。片面キャストコート紙では、キャスト処理しない面に顔料とバインダーとを含有する塗工層を設けて印刷適性を付与してもよい。
【実施例】
【0053】
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、例中の「部」、「%」は、特に断らない限り「質量部」、「質量%」を示し、塗工量はすべて絶乾質量である。
【0054】
(実施例1)
<原紙の作製>
原料パルプは、広葉樹さらしクラフトパルプ90部と針葉樹さらしクラフトパルプ10部とを混合した混合パルプとし、叩解機によってカナダ標準濾水度(JIS P 8121:1995 パルプのろ水度試験方法)CSF500mlとなるように叩解処理した。このパルプスラリーに、カチオン化澱粉(ネオタック40T、日本食品加工社製)を1.0部、中性ロジンサイズ剤(CC1461、星光PMC社製)を0.4部、液体硫酸バンドを1.0部及び軽質炭酸カルシウム(TP121S、奥多摩工業社製)を灰分10%になるよう添加量を調整して配合し、長網3層抄紙機にて抄紙し、坪量300g/mの原紙を抄造した。尚、各層に使用した原料は同一とした。
【0055】
<表面サイズ液の塗布>
酸化澱粉糊液(王子エースA、王子コーンスターチ社製)を表面サイズ液とし、原紙の両面に、乾燥塗工量が片面当たり1g/mとなるようにサイズプレスで塗布し、シリンダードライヤーで乾燥した。スチールカレンダーを用いて線圧40kg/cm、25℃、2ニップ1パスの条件で表面処理を行った。
【0056】
<キャスト塗工液の調製>
次に、キャスト塗工液を次に示す組成で調製した。顔料と分散剤とを固形分濃度65%においてセリエミキサー(三菱M−40ミキサー、三菱重工業社製)で分散させ、次いで撹拌しながら接着剤と他の助剤とを順次添加して十分に混合分散した後、工業用水で調製し、固形分濃度を40%とし、更に25%アンモニア水溶液を用いて、塗工液をpH10
.0のアルカリ性に調製してキャスト塗工液を得た。
〔キャスト塗工液の組成〕
<顔料>
カオリン(UWー90、エンゲルハードM&C社製) 70部
軽質炭酸カルシウム(タマパール123CS、
奥多摩工業社製) 29.8部
酸化亜鉛 0.2部

<キャスト塗工液> 顔料100部当り
分散剤(アロンT50、東亜合成社製) 0.3部
大豆タンパク(プロコート4610、デュポン社製) 8部
スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル
共重合体ラテックス 15部
(スチレンモノマー37質量部、ブタジエンモノマー47質量部、カルボン
酸モノマー4質量部、アクリロニトリルモノマー12質量部、ゲル含量93質量%、 平均粒子径130nm)
離型剤(ノプコートPEM17、サンノプコ社製) 2部
【0057】
<キャスト塗工層の形成>
前記原紙の片面に、前記キャスト塗工液をエアーナイフコーターで15g/mとなるように塗工した後、紙水分が6%になるまで熱風式ドライヤーで乾燥させて、キャスト塗工層を形成した。
【0058】
<キャスト処理>
その後、得られたキャスト塗工層に、再湿潤液として蟻酸濃度が0.8質量%であり、かつ、クエン酸ナトリウム濃度が0.1質量%である水溶液を湿潤塗布量が20g/mとなるようにディップコーターで塗布し、この面を直ちに110℃の表面温度を有するキャストドラムにプレスロールで圧接して乾燥した後、テークオフロールでキャストドラムから剥離する、所謂「リウェット法」によって光沢面を形成し、キャストコート紙を作製した。このときの巻取り速度は、50m/分で行った。
【0059】
(実施例2)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのブタジエンモノマー含有量を40質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0060】
(実施例3)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのブタジエンモノマー含有量を52質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0061】
(実施例4)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのカルボン酸モノマー含有量を2質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0062】
(実施例5)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのカルボン酸モノマー含有量を6質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0063】
(実施例6)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのブタジエンモノマー含有量を35質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0064】
(実施例7)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのブタジエンモノマー含有量を55質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0065】
(実施例8)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのカルボン酸モノマー含有量を1質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0066】
(実施例9)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのカルボン酸モノマー含有量を8質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0067】
(実施例10)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのアクリロニトリルモノマー含有量を5質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0068】
(実施例11)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのアクリロニトリルモノマー含有量を15質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0069】
(実施例12)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのゲル含量を88質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0070】
(実施例13)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのゲル含量を97質量%に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0071】
(実施例14)
キャスト塗工液に使用する大豆タンパクの部数を3部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0072】
(実施例15)
キャスト塗工液に使用する大豆タンパクの部数を13部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0073】
(実施例16)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスの部数を5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0074】
(実施例17)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスの部数を25部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0075】
(実施例18)
キャスト塗工液に使用する酸化亜鉛を0.5部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0076】
(比較例1)
キャスト塗工液に大豆タンパクを使用せず、カゼインを8部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0077】
(比較例2)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのブタジエン含有量を30質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0078】
(比較例3)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのブタジエンモノマー含有量を60質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0079】
(比較例4)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのカルボン酸モノマー含有量を0質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0080】
(比較例5)
キャスト塗工液に使用するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのカルボン酸モノマー含有量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0081】
(比較例6)
リウェット法からゲル化法に変更した以外は、実施例1と同様にしてキャストコート紙を作製した。
【0082】
以上の実施例1〜14及び比較例1〜6で得られたキャストコート紙の品質評価及びキャストコート紙を製造時の操業性を評価するため、次の試験法及び評価法を用いた。結果を表1に示した。
【0083】
(1)ラテックスのゲル含量
スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックス約0.3gをスライドグラス上に薄く広げ、50℃の乾燥機でフィルムとなるまで乾燥する。得られたラテックスフィルムを約50mlのトルエン中に一昼夜浸せきし、ガラスフィルターでろ過後、ろ液を105℃の乾燥機で乾燥して、トルエン可溶分の重量を測定する。ここで得られたトルエン可溶分の重量から、次式によりゲル含量を算出する。
ゲル含量(%)=(乾燥フィルム重量−トルエン可溶分重量)×100/乾燥フィルム重量
【0084】
(2)キャストドラムからの離型性
キャストドラムからキャスト処理した面が離れるときの状態を目視で観察し、その評価を次のとおり行った。
◎:キャスト処理した面がドラムに付着せず、離れるときに抵抗がない(使用可)。
○:キャスト処理した面がドラムにわずかに付着しているが、離れるときに抵抗がない(使用可)。
△:キャスト処理した面がドラムにわずかに付着しており、やや離れ難い(使用下限)

×:キャスト処理した面がドラムに付着しており、離れ難い(使用不可)。
【0085】
(3)キャスト塗工液の流動性
キャスト塗工液をエアーナイフで原紙上に塗工した直後のキャスト塗工層の表面状態を目視で観察し、その評価を次のとおり行った。
◎:キャスト塗工液に流動性があり、キャスト塗工層に塗りムラが無く、均一で非常に良好である(使用可)。
○:キャスト塗工液の流動性が若干劣るが、キャスト塗工層に塗りムラは無く良好である(使用可)。
△:キャスト塗工液の流動性が劣り、キャスト塗工面の一部に塗りムラが見られる(使用下限)。
×:キャスト塗工液の流動性が悪く、キャスト塗工面に塗りムラが多い(使用不可)。
【0086】
(4)光沢面印刷強度
RI印刷試験機(RI−3、明製作所社製)にて、墨インキ(SMXタックグレード15、東洋インキ製造社製)1mlを使用し、回転数を60rpmとして、200mm×2
50mmのキャストコート紙表面のピック数に基づいて、光沢面の印刷強度を評価した。強度は、次に示す4段階の評価基準で目視評価した。
◎:ピック数が無い(使用可)。
○:ピック数が1〜2個である(使用可)。
△:ピック数が3〜4個である(使用下限)。
×:ピック数が5個以上である(使用不可)。
【0087】
(5)ラミネート接着強度
ラミネートフイルムにラミ用糊を塗工しキャスト紙光沢面と貼り合わせ、乾燥後に15mm幅の180度剥離強度を測定する。尚、接着剤量3〜4g/m2、使用接着剤:サイビノールDBA−136(サイデン化学社製)、フィルム:VM−PET1200(東レフィルム加工社製)を使用。
◎:剥離強度500g以上(使用可)。
○:剥離強度400〜500g(使用可)。
△:剥離強度300〜400g(使用下限)。
×:剥離強度300g以下(使用不可)。
【0088】
【表1】

【0089】
表1に示すとおり、実施例1〜18で得られたキャストコート紙は、いずれもカゼインに起因する臭いが無く、キャストドラムからの離型性が良好で、印刷強度が強く、ラミネート加工に適したキャストコート紙であった。
【0090】
一方、比較例1は、接着剤としてカゼインを使用した場合であり、臭気は改善されない。比較例2はスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのブタジエンモノマー含有量が少なかったため所望するラミネート加工後の接着強度が低く、又比較例3は逆にブタジエンモノマー含有量が多すぎたためキャストドラムからの離型性が悪く、又キャスト塗工液の流動性が低く、実用に適さないキャストコート紙となった。比較例4はスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのカルボン酸含有量が少なかったため所望するラミネート加工後の接着強度が低く、又比較例5は逆にブタジエンモノマー含有量が多すぎたためキャストドラムからの離型性が悪く、又キャスト塗工液の流動性が低く、実用に適さないキャストコート紙となった。又、比較例6はゲル化法でキャスト処理を行ったため印刷強度及びラミネート加工後の接着強度が低くなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料及び接着剤を含有するキャスト塗工液を原紙の表面に塗工してキャスト塗工層を設け、次いで乾燥し、乾燥した前記キャスト塗工層の表面を再湿潤して鏡面光沢を有するキャストドラムに圧接し、乾燥することからなるリウェット法によってキャスト処理したキャストコート紙において、接着剤として、ラテックスの全モノマー100質量部に対してブタジエンモノマー35〜55質量部及びカルボン酸系モノマー1〜8質量部を含有するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスを含有し、且つカゼインを使用せず大豆タンパクを必須成分として含有することを特徴とするキャストコート紙。
【請求項2】
スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスが、ラテックスの全モノマー100質量部に対してアクリロニトリルモノマーを5〜15質量部含有することを特徴とする請求項1に記載のキャストコート紙。
【請求項3】
スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスのゲル含量が88〜97質量%であることを特徴とする請求項1又は2に記載のキャストコート紙。
【請求項4】
前記キャスト塗工液は、前記スチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスの含有量が、前記顔料100質量部に対して,5〜25質量部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のキャストコート紙。
【請求項5】
前記キャスト塗工液は、前記大豆タンパクの含有量が、前記顔料100質量部に対して3〜13質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のキャストコート紙。
【請求項6】
前記顔料として酸化亜鉛を含み、該酸化亜鉛の含有量が、全顔料100質量部に対して0.5質量部以下であることを特徴とする請求項請求項1〜5のいずれか一つに記載のキャストコート紙。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載されたキャストコート紙を用いたことを特徴とするラミネート加工用専用紙。
【請求項8】
顔料及び接着剤を含有するキャスト塗工液を原紙の表面に塗工してキャスト塗工層を設け、次いで乾燥し、乾燥した前記キャスト塗工層の表面を再湿潤して鏡面光沢を有するキャストドラムに圧接し、乾燥することからなるリウェット法によってキャスト処理したキャストコート紙において、接着剤として、ラテックスの全モノマー100質量部に対して、ブタジエンモノマー35〜55質量部及びカルボン酸系モノマー1〜8質量部を含有するスチレンブタジエン−カルボン酸−アクリロニトリル共重合体ラテックスを含有し、且つカゼインを使用せず大豆タンパクを必須成分として含有させることを特徴とするキャストコート紙の製造方法。

【公開番号】特開2013−40417(P2013−40417A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177689(P2011−177689)
【出願日】平成23年8月15日(2011.8.15)
【出願人】(000241810)北越紀州製紙株式会社 (196)
【Fターム(参考)】