説明

キャップ、キャップ付きバレル、及びプレフィルドシリンジ

【課題】 ノズル部が開封されたことを容易に認識することができるキャップ、キャップ付きバレル、及びプレフィルドシリンジを提供する。
【解決手段】 キャップ本体部22は、封止部21がノズル部11を封止する位置である初期位置から封止部21がノズル部11を開封できる位置である開封位置に移動すべく、着脱部23に対して軸線方向を先端側に向けて移動可能に構成され、着脱部23は、キャップ本体部22が開封位置に位置する際に、バレル1から離脱され、キャップ本体部22及び着脱部23は、キャップ本体部22が開封位置からさらに先端側に移動して着脱部23の先端部から離脱することを防止すべく、互いに係合する離脱防止部224,232と、開封位置に移動したキャップ本体部22が初期位置に戻ることを防止すべく、互いに係合する戻り防止部225,233とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バレルの先端部に設けられるノズル部を封止する封止部を備えるキャップ、キャップ付きバレル、及びプレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バレルの先端部に設けられるノズル部を封止するキャップとして、ノズル部を封止する封止部と、封止部を内部に配置すると共に、封止部を固定する筒状のキャップ本体部と、バレル本体部の先端部に固定されると共に、キャップ本体部の基端側に配置される筒状の接続部とを備えるキャップが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
斯かる構成のキャップによれば、キャップ本体部の基端部と接続部の先端部とが連結片で連結されているため、連結片が破断されることで、キャップ本体部が接続部から分離され、ノズル部が開封される。その後、封止部が再びノズル部を封止する状態に戻した場合には、その形跡として連結片が破断されているため、ノズル部が開封されたこと(又は、その疑いがあること)を第三者に認識させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−108350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に係るキャップにおいては、ノズル部が開封されたこと(又は、その疑いがあること)を認識するには、連結片が破断されているか否かについて確認する必要がある。しかしながら、斯かる連結片が一般的に小さいものであるため、ノズル部が開封されたことを、さらに容易に認識したいという要望がある。
【0006】
よって、本発明は、斯かる事情に鑑み、ノズル部が開封されたことを容易に認識することができるキャップ、キャップ付きバレル、及びプレフィルドシリンジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るキャップは、バレルの先端部に設けられるノズル部を封止する封止部と、封止部を内部に配置すると共に、封止部を固定する筒状のキャップ本体部と、キャップ本体部を外周部又は内周部に装着すると共に、バレルの先端部に着脱される筒状の着脱部とを備え、キャップ本体部は、封止部がノズル部を封止する位置である初期位置から封止部がノズル部を開封できる位置である開封位置に移動すべく、着脱部に対して軸線方向を先端側に向けて移動可能に構成され、着脱部は、キャップ本体部が開封位置に位置する際に、バレルから離脱されるキャップであって、キャップ本体部及び着脱部は、キャップ本体部が開封位置からさらに先端側に移動して着脱部の先端部から離脱することを防止すべく、互いに係合する離脱防止部と、開封位置に移動したキャップ本体部が初期位置に戻ることを防止すべく、互いに係合する戻り防止部とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るキャップによれば、筒状の着脱部は、キャップ本体部を外周部又は内周部に装着すると共に、バレルの先端部に装着されている。そして、キャップ本体部が着脱部に対して軸線方向を先端側に向けて移動することで、キャップ本体部は、封止部がノズル部を封止する位置である初期位置から、封止部がノズル部を開封できる位置である開封位置に移動する。その後、キャップ本体部が開封位置に位置する際に、着脱部がバレルから離脱される。
【0009】
このとき、キャップ本体部及び着脱部が互いに係合する離脱防止部を備えるため、キャップ本体部が開封位置からさらに先端側に移動して着脱部の先端部から離脱することを防止すると共に、キャップ本体部及び着脱部が互いに係合する戻り防止部を備えるため、開封位置に移動したキャップ本体部が初期位置に戻ることを防止する。したがって、キャップ本体部が開封位置で保持されることになる。
【0010】
また、本発明に係るキャップにおいては、着脱部は、キャップ本体部が初期位置に位置する際に、バレルに装着されるべくバレルを軸線方向で係止する係止部を備え、係止部は、キャップ本体部が開封位置に位置した際に、バレルから径方向で離反可能となるべく、開封位置に位置したキャップ本体部よりも基端側に位置するように配置されてもよい。
【0011】
斯かる構成のキャップによれば、キャップ本体部が初期位置に位置する際に、係止部がバレルを軸線方向で係止することで、着脱部がバレルに装着される。そして、キャップ本体部が開封位置に位置した際に、係止部がキャップ本体部よりも基端側に位置しているため、係止部がバレルから径方向で離反できる。これにより、キャップ本体部が開封位置に位置する際に、着脱部がバレルから離脱できる。
【0012】
また、本発明に係るキャップにおいては、着脱部は、軸線方向に沿って配置され且つ軸線方向の中途部を支点として径方向で傾動可能な長尺体を備え、係止部は、長尺体の基端部から径方向に突出され、キャップ本体部は、開封位置に位置した際に、長尺体の先端部を径方向に押圧することで係止部をバレルから径方向で離反させるべく、径方向に突出する押圧部を備えてもよい。
【0013】
斯かる構成のキャップによれば、軸線方向に沿って配置されている長尺体が軸線方向の中途部を支点として径方向で傾動できると共に、係止部が長尺体の基端部から突出している。そして、キャップ本体部が開封位置に位置した際に、径方向に突出している押圧部が長尺体の先端部を径方向に押圧するため、長尺体が傾動し、長尺体の基端部が径方向に移動する。これにより、係止部がバレルから径方向で離反するため、着脱部がバレルから離脱される。
【0014】
また、本発明に係るキャップ付きバレルは、ノズル部を有するバレルと、前記のキャップとを備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係るプレフィルドシリンジは、前記のキャップ付きバレルと、バレルの内部に充填された充填物を封止すべくバレルの内部に挿入される弾性のガスケットとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上の如く、本発明によれば、ノズル部が開封されると、キャップ本体部が開封位置で保持されるため、ノズル部が開封されたことを容易に認識することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレフィルドシリンジの全体図であって、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)はA−B−C線組合せ断面図を示す。
【図2】同実施形態に係るプレフィルドシリンジの要部図であって、(a)は図1(c)の拡大図、(b)は着脱部の全体側面図を示す。
【図3】同実施形態に係るキャップによるノズル部の封止方法を説明する図であって、(a)及び(b)はそれぞれ縦断面図を示す。
【図4】同実施形態に係るキャップによるノズル部の開封方法を説明する図であって、(a)及び(b)はそれぞれ縦断面図を示す。
【図5】本発明の他の実施形態に係るキャップによるノズル部の開封方法を説明する図であって、(a)〜(c)はそれぞれ縦断面図を示す。
【図6】本発明のさらに他の実施形態に係るキャップによるノズル部の開封方法を説明する図であって、(a)〜(c)はそれぞれ縦断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係るキャップ、キャップ付きバレル、及びプレフィルドシリンジにおける一実施形態について、図1〜図4を参酌して説明する。
【0019】
本実施形態に係るプレフィルドシリンジは、図1及び図2に示すように、先端部にノズル部11を有するバレル1と、バレル1の先端部に装着されるキャップ2と、バレル1の内部に充填された薬液等の充填物Xを封止するプランジャ3とを備える。なお、図1の「上方(側)」を「先端(側)」とし、図1の「下方(側)」を「基端(側)」として、以下説明する。
【0020】
バレル1は、先端部がノズル部11に連結されてなる円筒状のバレル本体12と、バレル本体部12の先端部に設けられ、キャップ2を外周部に装着する円筒状の接続部13とを備える。なお、バレル1は、例えば、プラスチック等の樹脂やガラスで形成されている。
【0021】
ノズル部11は、バレル本体12の内部に充填される充填物Xを外部に注出するための注出口111を先端部に備えると共に、充填物Xが流通すべく、注出口111とバレル本体12の内部とを連通させる流通部112とを備える。そして、ノズル部11は、円筒状に形成されていると共に、基端部から先端部に向けて外径が小さくなるように、テーパ状に形成されている。
【0022】
バレル本体12は、先端部に、キャップ2の基端部と当接する平面状の当接部121を備える。また、バレル本体12は、基端部に、指を掛けるためのフランジ形状の指掛部122を備える。そして、バレル本体12は、外径がノズル部11の外径よりも大きくなるように形成されている。
【0023】
接続部13は、円筒状に形成される接続部本体131と、ルアロック式の注射針やアクセスポート等と螺合するように、接続部本体131の内周部に配置されるネジ部132と、接続部本体131の外周部に配置され、周方向に沿って延設される凹部133とを備える。また、接続部13は、ノズル部11を挿入するようにしてノズル部11の径方向外方に配置されている。なお、ノズル部11の先端部は、接続部13の先端部から突出している。
【0024】
キャップ2は、バレル1の先端部に設けられるノズル部11を封止する封止部21と、封止部21を内部に配置すると共に、封止部21を固定する筒状のキャップ本体部22とを備える。また、キャップ2は、キャップ本体部22を外周部に装着し且つバレル1の接続部13に着脱される筒状の着脱部23を備える。
【0025】
封止部21は、ノズル部11の先端部に装着される封止部本体211と、封止部本体211の先端側に配置され、キャップ本体22と一体的になるようにキャップ本体22に固定される封止固定部212とを備える。なお、封止部21は、例えば、ゴム等の樹脂で形成されている。
【0026】
封止部本体211は、先端側を閉塞する円筒状に形成されており、ノズル部11に装着された際に、注出口111を閉塞し且つノズル部11の先端部を外側から嵌合する。また、封止固定部212は、円柱状に形成されていると共に、外径が封止部本体211の外径よりも大きくなるように形成されている。
【0027】
キャップ本体部22は、円筒状に形成されるキャップ基部221と、先端部に配置され、封止部21を固定するキャップ固定部222とを備える。なお、キャップ本体部22は、封止部21がノズル部11を封止する位置である初期位置から封止部21がノズル部11を開封できる位置である開封位置に移動すべく、着脱部23に対して軸線方向を先端側に向けて移動可能に構成されている一方、回転規制機構(図示及び採番していない)により、着脱部23に対して軸線方向を中心に回転することを規制されている。
【0028】
また、キャップ本体22は、初期位置で保持されるべく、着脱部23と係合する一対の保持部223,223を備える。そして、キャップ本体部22は、開封位置からさらに先端側に移動して着脱部23の先端部から離脱することを防止すべく、着脱部23と係合する一対の離脱防止部(以下、「第1離脱防止部」という)224,224を備える。
【0029】
さらに、キャップ本体22は、開封位置に移動した後に初期位置に戻ることを防止すべく、着脱部23と係合する一対の戻り防止部(以下、「第1戻り防止部」という)225,225を備える。なお、キャップ本体部22は、例えば、プラスチック等の樹脂で形成されている。
【0030】
キャップ固定部222は、封止固定部212を軸線方向で挟持する挟持部222a,222bを備える。そして、一方の挟持部222aは、キャップ基部221の先端部から径方向に沿って突設され、封止固定部212の先端側の面と当接していると共に、他方の挟持部222bは、キャップ基部221の中途部から径方向に沿って突設され、封止固定部212の基端側の面と当接している。
【0031】
各保持部223は、キャップ基部221の内周部から径方向内方に突出し且つ周方向に沿って延設されている。そして、一対の保持部223,223は、それぞれキャップ基部221の軸線方向における中途部に配置されていると共に、径方向で互いに対面するように配置されている。
【0032】
各第1離脱防止部224は、キャップ基部221の内周部から径方向内方に突出し且つ周方向に沿って延設されている。そして、一対の第1離脱防止部224,224は、それぞれキャップ基部221の基端部に配置されていると共に、径方向で互いに対面するように配置されている。
【0033】
また、各第1離脱防止部224は、キャップ本体部22が開封位置に位置した際に、着脱部23の先端部を径方向内方に押圧する押圧部224aを径方向の内端部に備える。そして、各第1離脱防止部224の先端側の面は、径方向に沿って形成されていると共に、各第1離脱防止部224の基端側の面は、基端側へいくに従って径方向外方に向かうようなテーパ状に形成されている。
【0034】
各第1戻り防止部225は、キャップ基部221の内周部から径方向内方に突出し且つ周方向に沿って延設されている。そして、一対の第1戻り防止部225,225は、それぞれキャップ基部221の基端部に配置されていると共に、径方向で互いに対面するように配置されている。また、各第1戻り防止部225の基端側の面は、径方向に沿って形成されていると共に、各第1戻り防止部225の先端側の面は、先端側へいくに従って径方向外方に向かうようなテーパ状に形成されている。
【0035】
着脱部23は、円筒状に形成される着脱部本体231と、キャップ本体部22が開封位置からさらに先端側に移動して先端部から離脱することを防止すべく、各第1離脱防止部224と係合する一対の離脱防止部(以下、「第2離脱防止部」という)232,232と、開封位置に移動したキャップ本体部22が初期位置に戻ることを防止すべく、各第1戻り防止部225と係合する一対の戻り防止部(以下、第2戻り防止部」という)233,233とを備える。
【0036】
そして、着脱部23は、キャップ本体部22が初期位置に位置する際に、バレル1に装着されるべく接続部13の凹部133を軸線方向で係止する一対の係止部234,234を備える。なお、着脱部23は、キャップ本体部22が開封位置に位置する際に、バレル1から離脱されるように構成されている。また、着脱部23は、例えば、プラスチック等の樹脂で形成されている。
【0037】
着脱部本体231は、径方向の断面が円弧状となるように形成され且つ径方向で互いに対面するように配置される一対の着脱基部231a,231aと、軸線方向に沿って配置され、着脱基部231a,231a間にそれぞれ配置される一対の長尺体231b,231bとを備える。また、着脱部本体231は、着脱基部231aと長尺体231bとを軸線方向の中途部で連結する連結部231c,…を備える。
【0038】
一対の長尺体231b,231bは、互いに径方向で対面するように配置されている。また、各長尺体231bは、軸線方向の中途部で連結部231c,231cを介して着脱基部231a,231aに連結されていることで、連結部231c,231cを支点として径方向で傾動可能に構成されている。そして、各長尺体231bは、キャップ本体部22が開封位置に位置した際に、キャップ本体部22の押圧部224aに先端部を径方向内方に押圧されることで、基端部を径方向外方に移動するように傾動する。
【0039】
各第2離脱防止部232は、着脱部本体231の長尺体231bの外周部から径方向外方に突出し且つ周方向に沿って延設されている。そして、一対の第2離脱防止部232,232は、それぞれ長尺体231bの先端部に配置されている。また、各第2離脱防止部232の基端側の面は、径方向に沿って形成されている。
【0040】
各第2戻り防止部233は、着脱部本体231の着脱基部231aの外周部から径方向外方に突出し且つ周方向に沿って延設されている。そして、一対の第2戻り防止部233,233は、それぞれ着脱基部231aの中途部に配置されている。
【0041】
また、各第2戻り防止部233の先端側の面は、径方向に沿って形成されていると共に、各第2戻り防止部233の基端側の面は、基端側へいくに従って径方向内方に向かうようなテーパ状に形成されている。なお、各第2戻り防止部233は、キャップ本体部22が初期位置に位置している際に、キャップ本体部22の各保持部223と係合するように構成されている。
【0042】
各係止部234は、長尺体231bの基端部から径方向内方に突出され、接続部13の凹部133を軸線方向で係止可能に構成されている。また、一対の係止部234,234は、開封位置に位置したキャップ本体部22よりも基端側に位置するように配置されている。これにより、キャップ本体部22が開封位置に位置した際に、各係止部234がバレル1の接続部13から径方向で離反できる。また、各係止部234の先端側の面は、径方向に沿って形成されている。
【0043】
プランジャ3は、バレル本体12の内部に充填された充填物Xを封止すべくバレル本体12の内部に挿入される弾性のガスケット31と、先端部がガスケット31とネジ結合されるプランジャロッド32とを備える。なお、バレル1とキャップ2との組立体を、「キャップ付きバレル」いい、キャップ付きバレル(バレル1及びキャップ2)とプランジャ3との組立体とを、「シリンジ」という。
【0044】
本実施形態に係るキャップ2、キャップ付きバレル、及びプレフィルドシリンジの構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るキャップ2によるノズル部11の封止方法及び開封方法について、図3及び4を参酌して説明する。
【0045】
はじめに、封止部21でノズル部11を封止する方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、キャップ本体部22の内部に封止部21が固定されていると共に、キャップ本体部22の保持部223が着脱部23の第2戻り防止部233と係合しているため、キャップ本体部22が着脱部23に対して初期位置に位置している。
【0046】
そして、ノズル部11が封止部本体211の内部に挿入されるように、キャップ2をバレル1に押し込む。すると、図3(b)に示すように、キャップ2の基端部がバレル本体12の当接部121に当接すると共に、長尺体231bから突出する係止部234が接続部13の凹部133を軸線方向で係止する。これにより、キャップ2がバレル1に装着され、封止部21がノズル部11を封止する。
【0047】
次に、ノズル部11を開封する方法について説明する。まず、キャップ本体部22を初期位置から軸線方向を先端側に向けて移動させる。すると、係止部234が凹部133を係止しているため、着脱部23が接続部13に装着された状態を維持しつつ、キャップ本体部22のみが着脱部23に対して軸線方向を先端側に向けて移動する。
【0048】
そして、キャップ本体部22が移動するのに伴って、キャップ本体部22の一部及び着脱部23の一部が弾性変形するため、第1戻り防止部225の先端側が第2戻り防止部233の基端側を案内する。さらに、キャップ本体部22を先端側に移動させると、図4(a)に示すように、第1戻り防止部225が第2戻り防止部233よりも先端側に位置し、キャップ本体部22が開封位置に位置する。
【0049】
このとき、キャップ本体部22の押圧部224aが長尺体231bの先端部を径方向内方に押圧するため、長尺体231bが連結部231cを支点として傾動する。すると、長尺体231bの基端部が径方向外方に移動するため、係止部234が接続部13の凹部133から径方向で離反する。
【0050】
さらに、キャップ本体部22を先端側に移動させると、キャップ本体部22の第1離脱防止部224の先端側と、着脱部23の第2離脱防止部232の基端側とが係合する。これにより、図4(b)に示すように、キャップ本体部22が開封位置に位置した状態で、キャップ本体部22と着脱部23とが一体となってバレル1の接続部13から離脱される。それに伴って、封止部21もノズル部11から離脱するため、ノズル部11が開封される。
【0051】
ところで、キャップ本体部22の第1戻り防止部225の基端側と、着脱部23の第2戻り防止部233の先端側とが係合することで、開封位置に位置したキャップ本体部22が初期位置に戻るのを防止している。したがって、離脱されたキャップ2において、各離脱防止部224,232と各戻り防止部225,233とにより、キャップ本体部22が着脱部23に対して開封位置で保持されることになる。
【0052】
以上より、本実施形態に係るキャップ2、キャップ付きバレル、及びプレフィルドシリンジによれば、キャップ本体部22が着脱部23に対して軸線方向を先端側に向けて移動すると、キャップ本体部22は、封止部21がノズル部11を封止する位置である初期位置から、封止部21がノズル部11を開封できる位置である開封位置に移動する。そして、キャップ本体部22が開封位置に位置することで、着脱部23がバレル1から離脱される。
【0053】
このとき、キャップ本体部22及び着脱部23が互いに係合する離脱防止部224,232を備えるため、キャップ本体部22が開封位置からさらに先端側に移動して着脱部23の先端部から離脱することを防止する。加えて、キャップ本体部22及び着脱部23が互いに係合する戻り防止部225,233を備えるため、開封位置に移動したキャップ本体部22が初期位置に戻ることを防止する。
【0054】
これにより、離脱されたキャップ2においては、キャップ本体部22が着脱部23に対して開封位置で保持されることになる。したがって、ノズル部11が開封されると、キャップ本体部22が開封位置で保持されるため、ノズル部11が開封されたことを容易に認識することができる。
【0055】
また、本実施形態に係るキャップ2、キャップ付きバレル、及びプレフィルドシリンジによれば、キャップ本体部22が初期位置に位置する際に、係止部234がバレル1の凹部133を軸線方向で係止することで、着脱部23がバレル1の接続部13に装着される。そして、キャップ本体部22が初期位置に位置する際に、係止部234が径方向でキャップ本体部22と重なっているため、係止部234が径方向で凹部133から離反することを防止している。
【0056】
そして、キャップ本体部22が開封位置に位置した際には、係止部234がキャップ本体部22よりも基端側に位置している。したがって、係止部234が径方向外方に移動できるため、係止部234が接続部13の凹部133から径方向で離反できる。これにより、キャップ本体部22が開封位置に位置する際に、着脱部23がバレル1から離脱できる。
【0057】
また、本実施形態に係るキャップ2、キャップ付きバレル、及びプレフィルドシリンジによれば、軸線方向に沿って配置されている長尺体231bが軸線方向の中途部を支点として径方向で傾動できると共に、係止部234が長尺体231bの基端部から突出している。
【0058】
そして、キャップ本体部22が開封位置に位置した際に、径方向に突出している押圧部224aが長尺体231bの先端部を径方向内方に押圧するため、長尺体231bが傾動し、長尺体231の基端部が径方向外方に移動する。これにより、係止部234がバレル1の凹部133から径方向で離反するため、着脱部23がバレル1から離脱される。
【0059】
なお、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。また、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0060】
例えば、上記実施形態に係るキャップ2においては、封止部21とキャップ本体部22とが別部材である構成を説明したが、斯かる構成に限られない。具体的には、封止部とキャップ本体部とは、一体成形された一つの部材である構成でもよい。
【0061】
また、上記実施形態に係るキャップ2においては、着脱部23がキャップ本体部22を外周部に装着する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、着脱部は、キャップ本体部を内周部に装着する構成でもよい。加えて、着脱部は、バレルの接続部の内周部に装着される構成でもよい。
【0062】
また、上記実施形態に係るキャップ2においては、係止部234が長尺体231bの基端部に配置され、キャップ本体部22が開封位置に位置するのに伴って、長尺体231bが傾動することで、着脱部23が接続部13から離脱される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、図5に示すように、キャップ本体部24が開封位置に位置することで、係止部252が接続部130から離脱可能な状態となる構成でもよい。ここで、図5に示すキャップについて以下説明する。
【0063】
図5(a)に示すように、着脱部25は、軸線方向に沿って配置され且つ先端部で固定される弾性片251と、弾性片251の基端部から径方向内方に突出し、バレル10の接続部130の先端側に配置される凹部134を軸線方向で係止する係止部252とを備えている。また、キャップ本体部24は、係止部252が径方向外方に移動するのを規制すべく、径方向内方に突出し且つ係止部252の外周部と当接する規制部241を備えている。
【0064】
そして、図5(b)に示すように、係止部252は、開封位置に位置したキャップ本体部24よりも基端側に位置するように配置されている。したがって、キャップ本体部24が初期位置(図5(a)に示す位置)から開封位置(図5(b)に示す位置)に移動することで、規制部241が係止部252よりも先端側に位置するため、係止部252が径方向外方に移動できるようになる。
【0065】
したがって、図5(c)に示すように、キャップ本体部24をさらに先端側に移動させると、弾性片251が弾性変形し、係止部252が接続部130の外周部に案内されて径方向外方に移動する。これにより、係止部252が接続部130の凹部134を係止する状態が解除されるため、着脱部25が接続部130から離脱できる。
【0066】
また、上記実施形態に係るキャップ2においては、キャップ本体部22が移動するのに伴って、キャップ本体部22の一部及び着脱部23の一部が弾性変形することで、キャップ本体部22が初期位置から開封位置に移動する構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、キャップ本体部が移動するのに伴って、キャップ本体部の戻り防止部が弾性変形する構成でもよく、また、図6に示すように、着脱部26の戻り防止部262が弾性変形する構成でもよい。ここで、図6に示すキャップについて以下説明する。
【0067】
図6に示す着脱部26は、軸線方向に沿って配置され且つ基端部で固定される弾性片261と、弾性片261の先端部に配置され、キャップ本体部22の第1戻り防止部225と係合する第2戻り防止部262とを備えている。そして、弾性片261は、先端側にいくに従って径方向外方に向けて拡がるように配置されている。
【0068】
斯かる構成のキャップによれば、まず、図6(a)に示すように、キャップ本体部22の保持部223が着脱部26の第2戻り防止部262と係合しているため、キャップ本体部22が着脱部26に対して初期位置に保持されている。そして、キャップ本体部22を先端側に移動させると、図6(b)に示すように、着脱部26の弾性片261が弾性変形するため、キャップ本体部22を円滑に移動することができる。
【0069】
さらに、キャップ本体部22を先端側に移動させると、図6(c)に示すように、第1戻り防止部225が第2戻り防止部262よりも先端側に位置し、キャップ本体部22が開封位置に位置する。このとき、キャップ本体部22の第1戻り防止部225と、着脱部26の第2戻り防止部262とが係合することで、開封位置に位置したキャップ本体部22が初期位置に戻るのを防止している。
【0070】
また、上記実施形態に係るキャップ付きバレルにおいては、接続部13がバレル本体12に一体成形されて固定される構成を説明したが、斯かる構成に限られない。例えば、接続部は、バレル本体とは別部材で構成されると共に、バレル本体に装着される構成でもよく、また、ノズル部に装着される構成でもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…バレル、2…キャップ、3…プランジャ、10…バレル、11…ノズル部、12…バレル本体、13…接続部、21…封止部、22…キャップ本体部、23…着脱部、24…キャップ本体部、25…着脱部、26…着脱部、31…ガスケット、32…プランジャロッド、224…(第1)離脱防止部、224a…押圧部、225…(第1)戻り防止部、231b…長尺体、232…(第2)離脱防止部、233…(第2)戻り防止部、234…係止部、252…係止部、262…(第2)戻り防止部、X…充填物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレルの先端部に設けられるノズル部を封止する封止部と、封止部を内部に配置すると共に、封止部を固定する筒状のキャップ本体部と、キャップ本体部を外周部又は内周部に装着すると共に、バレルの先端部に着脱される筒状の着脱部とを備え、
キャップ本体部は、封止部がノズル部を封止する位置である初期位置から封止部がノズル部を開封できる位置である開封位置に移動すべく、着脱部に対して軸線方向を先端側に向けて移動可能に構成され、
着脱部は、キャップ本体部が開封位置に位置する際に、バレルから離脱されるキャップであって、
キャップ本体部及び着脱部は、キャップ本体部が開封位置からさらに先端側に移動して着脱部の先端部から離脱することを防止すべく、互いに係合する離脱防止部と、開封位置に移動したキャップ本体部が初期位置に戻ることを防止すべく、互いに係合する戻り防止部とを備えることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
着脱部は、キャップ本体部が初期位置に位置する際に、バレルに装着されるべくバレルを軸線方向で係止する係止部を備え、
係止部は、キャップ本体部が開封位置に位置した際に、バレルから径方向で離反可能となるべく、開封位置に位置したキャップ本体部よりも基端側に位置するように配置される請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
着脱部は、軸線方向に沿って配置され且つ軸線方向の中途部を支点として径方向で傾動可能な長尺体を備え、
係止部は、長尺体の基端部から径方向に突出され、
キャップ本体部は、開封位置に位置した際に、長尺体の先端部を径方向に押圧することで係止部をバレルから径方向で離反させるべく、径方向に突出する押圧部を備える請求項2に記載のキャップ。
【請求項4】
ノズル部を有するバレルと、請求項1〜3の何れか1項に記載のキャップとを備えることを特徴とするキャップ付きバレル。
【請求項5】
請求項4に記載のキャップ付きバレルと、バレルの内部に充填された充填物を封止すべくバレルの内部に挿入される弾性のガスケットとを備えることを特徴とするプレフィルドシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−78442(P2013−78442A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219538(P2011−219538)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000206185)大成化工株式会社 (83)
【Fターム(参考)】