説明

クラウンエーテルを含む抽出剤を用いた放射性核種の抽出

本発明は、ナトリウムを含めた大量のきょう雑物と、放射性核種とを含む放射化学系生成物の高レベルの廃棄物の処理に関する。放射性核種を抽出するための本発明の方法は、化学式:H(CF2CF2nCH2OH(式中、n=3である。)のポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1、及び次の一般式:Cn2n+1O(C24O)mH(式中、n=12〜14であり、そしてm=2である。)のC12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物を含む有機溶媒中に、直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択される大環状化合物を含む抽出剤により、酸性水溶液の廃棄物を処理することを含む。共同又は個々の放射性核種の抽出に与えられた課題及び上記廃棄物組成に従って、抽出組成物の量及び定量的組成を選択することができるので、多目的の技術を開発することができる。再使用可能な抽出剤の再生に関連して、動的な向流モードで放射性核種を工業的に抽出することができるクラウンエーテルを含む抽出剤を再生する方法がまた、開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射化学系生成物の液状の放射性廃棄物の処理及び分別に関するものであり、特に、照射核燃料を処理する場合に、高レベルの液状廃棄物からの、放射性核種(例えば、ストロンチウム及びセシウム)の抽出、精製及び濃縮技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所における閉鎖型燃料サイクルの概念は、長期間の貯蔵又は埋蔵に好適な生成物(例えば、固化材料(hardened material)中の結合状態にある放射性核種)、又は、例えば、同位体生成物のような、将来、それらの放射性を用いるために好適な生成物を得る一方で、全ての放射性廃棄物を処理することを提供することである。
【0003】
照射核燃料の再生後の放射性核種の基本的な集団は、高レベルの液状廃棄物の状態にあり、最大300g/Lの量の、高含有率の安定な大量のきょう雑物(macro admixture)−ナトリウム、アルミニウム、鉄、希土類及び他の元素と比較して、少量のセシウム、ストロンチウム及び超ウラン元素の放射性核種を含む。
【0004】
しかし、程度の異なる活性を有する放射性核種を含む、埋蔵すべき固化材料(例えば、現在用いられている、ボロシリケート又はリン酸塩ガラス)の体積を減らすため、ガラス体積中の放射性核種の比放射能を増す必要がある。固化及び次の埋蔵に用いる溶液の比放射能は、放射性核種の溶液中の塩の量を減らすこと、又は埋蔵すべき放射性核種の溶液に、ストロンチウム及びセシウム放射性核種の塩を含まない分画を添加することにより増加させることができる。
【0005】
現時点では、ストロンチウム放射性核種及びセシウム放射性核種を含む放射性核種の抽出に基づいた、液状の放射性廃棄物を分別する最も進んだ方法は、2つの方式で実施することができる。
【0006】
それらのひとつは、多面体のカルボラン錯体を用いることであり、そこでは、セシウムの抽出用の錯化剤として、コバルトジカルボリドクロリド(DCC)が用いられ、一方、ストロンチウムは、フッ素化ニトロ芳香族溶媒中に溶解した高分子量ポリエチレングリコールを用いて抽出されている。しかし、この技術は、当初溶液の予備調整の必要性、精製された生成物の分離及び目的生成物の分離工程における抽出剤の損失の高さ、並びに高コストの抽出剤及び潜伏性溶剤を含む大きな欠点を有する。
【0007】
別の方式は、抽出混合物の作成のために、広範囲のクラウンエーテルに適用可能な溶媒を用いて、ストロンチウム−90及びセシウム−137のイオンを含む放射性核種に特有の選択性を有する異なる構造の大環状ポリエーテル又はクラウンエーテルから成る錯化剤を用いる可能性に関連するものである。
しかし、クラウンエーテル(特に、有機溶媒中の、ベンゼン置換基を含むクラウンエーテル)それら自体の溶解性の低さ、及び水溶液中のクラウンエーテル及びそれらの錯体の溶解性の高さのため、クラウンエーテルの実用化は、相当限定されている。
【0008】
有機溶媒中のクラウンエーテルの溶解性を高くし、そして水溶液中のそれらの溶解性を低くするように、大環状化合物が、直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から合成された。
【0009】
最も広範囲の構造には、ジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(DTBDB18C6)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(DIODB18C6)、ジベンゾ−21−クラウン−7(DB21C7)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(クラウンXVII)、ジ−tert−ブチルシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DTBDCH18C6)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(クラウンXVI)、ジベンゾ−18−クラウン−6(DB18C6)、ジベンゾ−24−クラウン−8(DB24C8)、ジベンゾ−30−クラウン−10(DB30C10)が含まれる。DB18C6、DB21C7、DB24C8及びDB30C10を除いて、列挙されたクラウンエーテル全ては、有機溶媒(特に、パラフィン)への溶解性がより高く、そして水−有機接触保持における、損失がより小さく、公表データに従うと、放射性核種のカチオンに対する高い選択性が引用される。
【0010】
トリ−n−ブチルホスフェート又はメチルイソブチルケトンを含む有機溶媒中で、クラウンエーテル、ビス−4,4’(5’)(ヒドロキシアルキル−ベンゾ)−18−クラウン−6系抽出混合物を用いて、他のイオンを含む水溶液からセシウムを抽出し、続いて得られた有機溶液を無機酸の溶液と接触させる方法が当技術分野で公知である(米国特許第5888398号明細書)。
【0011】
炭化水素溶媒中のカリックスアレーンクラウンエーテル、例えば、脂肪族の灯油中のカリックス[4]アレーン−(ジ−tert−オクチルベンゾ−クラウン−6)エーテル系抽出混合物を用いて、相当量の他のアルカリ金属(例えば、ナトリウム及びカリウム)のイオンをも含む水性のアルカリ性廃棄物からセシウムを抽出する方法が、当技術分野で公知である(米国特許第6174503号明細書)。
【0012】
クラウン−エーテル、tert−ブチルベンゾ−21−クラウン−7(TBB21C7)及びテトラフェニルホウ酸ナトリウム(フランス国出願特許出願公開第2700709号明細書)を含む抽出混合物による、セシウム−135を選択的に抽出する方法が当技術分野で公知である。
また、有機溶媒、2,2−ジヒドロトリフルオロエチレンペンタフルオロエチルエーテル中の0.1〜0.2モル/Lの濃度のクラウンエーテル、ジベンゾ−21−クラウン−7を含む水性硝酸塩媒体からセシウムを抽出するための抽出混合物が、当技術分野に公知である(SU1693438A1)。
【0013】
放射性廃棄物の酸性溶液からセシウム及びストロンチウムを連続的に抽出する方法:クラウンエーテル、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(以下、「クラウンXVII」と称する。)を、液体のカチオン交換ジノニルナフタレン硫酸又はジドデシルナフタレンスルホン酸から主に成るセシウム抽出剤、及びトリブチルホスフェート及び灯油を含む同一のカチオン交換体を用いた、クラウンエーテル、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(以下、「クラウンXVI」と称する。)から主に成る抽出剤によるストロンチウムの抽出が当技術分野で公知である(米国特許第4749518号明細書)。ストロンチウム及びセシウムの共抽出(joint extraction)のこの方法の欠点は、抽出混合物成分の放射線抵抗性が低いため、放射性核種の抽出処理及び分離におけるストロンチウム及びセシウムの構成比(distribution ratio)が低いことである。
【0014】
通常のパラフィン系炭化水素及びイソパラフィン系炭化水素を含む群から選択される溶媒中で、クラウンエーテル、例えば.4,4’(5’)[R,R’]ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(式中、R及びR’は、メチル、プロピル、イソブチル、t−ブチル、ヘキシル、ヘプチル、及びn−オクチル(フェニル)−N,N−ジイソブチルカルバモイルホスフィンオキシドを含む群から選択される。)を含む抽出混合物による水性硝酸塩溶液からストロンチウム、ネプツニウム、アメリシウム及びプルトニウムを分離する方法が、当技術分野に公知である(米国特許第5169609号明細書)。
【0015】
しかし、上記方法群の共通の欠点は、連続的な抽出サイクルにおける抽出剤の放射線抵抗性が低いことである。種々の溶媒と共にクラウンエーテルを含む抽出剤を用いた、ストロンチウム−90、セシウム−135及びセシウム−137を含む放射性核種の抽出法、並びに放射線に対する抵抗性が、当技術分野に公知である。
【0016】
固相(例えば、シリコン)において、有機溶媒(例えば、ニトロベンゼン又はエチレンジクロリド)中のクラウンエーテル、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)のcis−sin−cis異性体を用いた水溶液から、金属(例えば、プルトニウム、ウラン及びストロンチウム)を抽出するために用いられる方法が知られている(フランス国出願公開第2656149号明細書)。
【0017】
カチオン交換樹脂中に置かれた、クラウンエーテル、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)及び溶媒(例えば、クロロホルム、CHCl3、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ジクロロメタン、ニトロベンゼン、ブロモベンゼン)を含む混合物を用いて、0.01〜0.2モル/Lの濃度のナトリウム及びストロンチウムを含む放射性硝酸塩溶液を中和する方法が、当技術分野に公知である(フランス国出願公開第2707416号明細書)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかし、上記抽出混合物及び溶媒の適用は、産業的用途に許容可能なストロンチウム及びセシウムの構成比及び抽出剤の放射線抵抗性が高いことを示しているが、水溶液による放射性核種の再抽出法における流出による、相当な量のクラウンエーテルの損失をまだ解消できていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、抽出剤、及び他の大量のきょう雑物(特に、液状抽出剤の抽出特性に大きな影響を与えるナトリウム)をも含む、放射化学系の方法の高レベルの液状廃棄物から、ストロンチウム及び/又はセシウムを含む放射性核種を抽出する方法を改良することである。本発明の合成法において、課題を、放射性核種(例えば、セシウムカチオン及びストロンチウムカチオン)と結合する際に、高い選択容量を有する錯化剤を含む抽出剤を提供すること、そして抽出剤の水−有機接触成分を保持することができる有機溶媒中の高レベルの廃棄物に含まれる他のイオン(例えば、ナトリウム)との相互作用の低さを付与することに設定し、そして抽出されるべき放射性核種のイオン(例えば、セシウム及び/又はストロンチウム)に関連し、そして流出液と共に抽出剤が流出することを防ぐことである。課題はまた、上記方法中で再使用するために、抽出剤を効果的に再生する方法を改良することに設定する。
【0020】
本発明者達は、フルオロポリマーの生産において、反応媒体成分として、ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1の適用に気がつき、また有機溶媒−テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1及び2,4−ジエチルオクタノールの混合物中のジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)の溶液を含む抽出混合物により、原子力発電所の硝酸塩廃棄物からストロンチウム放射性核種を抽出する方法に着目し、上記方法には、上記廃棄物を抽出混合物と接触させる段階、上記抽出物を洗浄する段階、そしてストロンチウムを蒸留水で再抽出する段階が含まれる(SU1706661.A1)。その際、上記抽出剤中のクラウンエーテルの含有率は、約60〜65%の1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1及び40〜35%の2,4−ジエチルオクタノールを有する溶媒混合物中で、0.1〜0.2モル/Lであった。
【0021】
本発明の目的を、直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択される大環状化合物を含む溶液の溶媒として、
式:H(CF2CF2nCH2OH(式中、n=3である。)(以下、フルオロヘプタノールn3」と称する。)を有するポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1を用いることにより達成した。
【0022】
本発明の目的を、ナトリウムを含めた他の大量のきょう雑物をも含む放射化学系生成物の高レベルの廃棄物の酸性水溶液から放射性核種を抽出するための、有機溶媒中で放射性核種のイオンと結合できる大環状化合物を含む抽出剤を開発することにより達成した。上記大環状化合物は、直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択され、そして上記有機溶媒には、ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1が含まれる。
【0023】
さらに、本発明に従って、上記抽出剤中の有機溶媒は、次の一般式:
n2n+1O(C24O)m
(式中、n=12〜14であり、m=2である。)
のC12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物をさらに含むことができる。
【0024】
その際、上記抽出剤中の有機溶媒は、次の成分量(体積%):
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1,80〜99
12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物,20〜1
を有することが好ましい。
【0025】
他にも、本発明に従って、上記抽出剤を、セシウムのカチオンを含む廃棄物から、セシウムの放射性核種を抽出するように適合させることができ、そしてジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(DTBDB18C6)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(DIODB18C6)、ジベンゾ−21−クラウン−7(DB21C7)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(クラウンXVII)を含む群から選択されるクラウンエーテルが含まれうる。
【0026】
その際、本発明に従って、セシウムの放射性核種の抽出用の抽出剤には、抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lの濃度で、クラウンエーテル、ジベンゾ−21−クラウン−7が含まれることが好ましい。
【0027】
他にも、本発明に従って、上記抽出剤を、ストロンチウムカチオンを含む廃棄物からストロンチウムの放射性核種を抽出するように適合させることができ、そしてジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(クラウンXVI)を含む群から選択されるクラウンエーテルが含まれる。
【0028】
その際、本発明に従って、ストロンチウム放射性核種の抽出用の抽出剤には、抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lの濃度で、クラウンエーテル、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6が含まれることが好ましい。
【0029】
他にも、本発明に従って、ストロンチウム及びセシウムカチオンを含む廃棄物から、ストロンチウム放射性核種及びセシウム放射性核種を共抽出するように適合させることができ、上記抽出剤は、クラウンエーテルの混合物を含み、そこでは、少なくとも一種の上記クラウンエーテルは、ジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(DTBDB18C6)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(DIODB18C6)、ジベンゾ−21−クラウン−7(DB21C7)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(クラウンXVII)を含む群から選択され、そして少なくとも1種のクラウンエーテルは、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(クラウンXVI)を含む群から選択される。
【0030】
その際、本発明に従って、上記有機溶媒は、次の成分量(体積%):
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1,87
12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物,13
を有することが好ましい。
【0031】
その際、本発明に従って、セシウム及びストロンチウムを共抽出するための抽出剤には、例えば、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6及びジベンゾ−21−クラウン−7のクラウンエーテル類の混合物が含まれることが好ましい。
その際、本発明に従って、上記抽出剤において、各クラウンエーテルの濃度は、当該抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lであることが好ましい。
【0032】
本発明の目的をまた、pH約8.0〜9.0のエチレンジアミン四酢酸カリウムの水溶液を用いて使用済みの抽出剤を処理することにより、ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1を含む有機溶媒中に、直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択される大環状化合物の、抽出可能なカチオンとの錯体を含む、使用済みの抽出剤を再生する方法を開発することにより達成した。
【0033】
その際、本発明に従って、上記水溶液中のエチレンジアミン四酢酸カリウムの濃度は、約0.02モル/L〜0.03モル/Lの範囲で選択されることが好ましい。
その際、本発明に従って、水酸化カリウムを添加することにより上記pHを保持することが妥当である。
【0034】
本発明の目的は、ナトリウムを含み、他の大量のきょう雑物を含む放射化学系生成物の高レベルの廃棄物の酸性水溶液から放射性核種を抽出する方法を提供することにより達成する。上記方法は、抽出の際に、ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1を含む有機溶媒中で、放射性核種のイオンと結合できる大環状化合物(直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択される)を含む抽出剤を用いて廃棄物の水溶液を処理する段階、そして次の脱イオン水による、抽出物から放射性核種を再抽出する段階を含む。
【0035】
その際、本発明に従って、上記抽出剤を溶解させるための有機溶媒は、C12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物をさらに含むことができる(以下、「シンタノール」と称する。)。
【0036】
その際、本発明に従って、上記抽出剤の有機溶媒は、次の成分量(体積%):
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1,80〜99
12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物,20〜1
を有することが好ましい。
【0037】
他にも、本発明に従って、特許請求の範囲に記載される抽出法を、セシウム放射性核種を抽出するように適合させることができ、そして当該抽出剤は、ジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(DTBDB18C6)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(DIODB18C6)、ジベンゾ−21−クラウン−7(DB21C7)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(クラウンXVII)を含む群から選択されるクラウンエーテルを含むことができる。
【0038】
その際、本発明に従って、上記抽出剤は、抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lの濃度で、ジベンゾ−21−クラウン−7を含むことが好ましい。
他にも、本発明に従って、上記抽出法を、ストロンチウム放射性核種を抽出するように適合させることができ、当該抽出剤には、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(クラウンXVI)を含む群から選択されるクラウンエーテルが含まれうる。
【0039】
その際、本発明に従って、ストロンチウム放射性核種の抽出法において、上記抽出剤は、当該抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lの濃度で、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6を含むことが好ましい。
【0040】
他にも、本発明に従って、放射性核種の抽出法を、セシウム及びストロンチウムの両方の放射性核種を共抽出するように適合させることができ、そして当該抽出剤は、クラウンエーテル類の混合物を含むことができ、そこでは、少なくとも一種の上記クラウンエーテルは、ジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(DTBDB18C6)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(DIODB18C6)、ジベンゾ−21−クラウン−7(DB21C7)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(クラウンXVII)から選択され、そして少なくとも一種の上記クラウンエーテルは、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(クラウンXVI)を含む群から選択される。
【0041】
その際、本発明に従って、上記有機溶媒は、次の成分量(体積%):
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1,87
12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物,13
を有することが好ましい。
【0042】
その際、本発明に従って、上記抽出剤は、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6及びジベンゾ−21−クラウン−7の混合物を含むことが好ましい。
その際、本発明に従って、上記混合物中の各クラウンエーテルの濃度は、抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lである。
【0043】
本発明の目的をまた、本発明に従う放射性核種の抽出法を提供することにより達成する。当該方法は、再使用された抽出剤の分離段階、及びpH約8.0〜9.0においてエチレンジアミン四酢酸カリウムの水溶液を用いて処理することにより利用するための再生段階のさらなる段階を有する。
その際、本発明に従って、水溶液中のエチレンジアミン四酢酸カリウムの濃度は、約0.02モル/L〜0.03モル/Lの範囲で選択されることが好ましい。
【0044】
その際、本発明に従って、水酸化カリウムを添加することにより上記pHを与えることが妥当である。
他にも、本発明に従って、放射性核種の抽出法の全ての段階を、向流の動的条件の下で実施する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
本発明を、その具現化の具体例に基づいてさらに記載する。具体的な実施形態の記載において、特定の専門用語が用いられるが、本発明は、一般的に容認された用語に限定されるものでなく、そして上記用語は、同一の結果を得るために用いられる全ての均等な用語をも含有することが理解されるべきである。
【0046】
1.放射性核種の抽出に対する本発明に従う抽出剤の選択
1.1.種々の溶媒中のクラウンエーテル系抽出剤の選択
本発明に従う有機溶媒、ポリフッ素化テロマー系アルコール 1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1(以下、「フルオロヘプタノールn3」と称する。)中で、錯化剤としての種々のクラウンエーテル、ジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(以下、「DTBDB18C6」と称する。)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(以下、「DIODB18C6」と称する。)、ジ−tert−ブチルシクロヘキサノ−18−クラウン−6(以下、「DTBDCH18C6」と称する。)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(以下、「DIODCH18C6」と称する。)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(以下、「DCH18C6」と称する。)又はジベンゾ−21−クラウン−7(以下、「DB21C7」と称する。)を含む、本発明に従う抽出剤により抽出すべき放射性核種(例えば、ストロンチウム又はセシウム)の構成比を測定するために検討を行った。
【0047】
比較のため、ストロンチウム及びセシウムの構成比を、別の有機溶媒(デカン)中の類似のクラウンエーテルを用いて測定した。
約3.0モル/Lの硝酸含有率と共に、1g/Lの濃度のストロンチウム及びセシウムを含む実験的な硝酸塩水溶液を、試験のために選択した。種々の抽出系No.1〜12に関して得られたストロンチウム及びセシウムの構成比を表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
表1のデータから、パラフィン系炭化水素(例えば、デカン)中のクラウンエーテルを用いた抽出系を使用すると、ストロンチウム及びセシウムの構成比が低く、実際には使用不可であることが理解される。
【0050】
アルキル分子鎖のサイズは、クラウンエーテルの抽出特性に大きく作用する、というのは、大員環スペースにカチオンを配置させる上で立体的な困難性が生じるためであろう。フルオロヘプタノールn3中の有機溶液、DCH18C6(系No.10)及びDTBDCH18C6(系No.6)におけるストロンチウムの構成比は、ほぼ同一の値(1.91及び1.6)を有するが、結合基中の炭素原子数が増加するにつれ、例えば、イソオクチル基(系No.8)まで、構成比が大きく減少する。
【0051】
ジベンゾ−クラウンエーテルの誘導体を含む抽出剤を用いたセシウムの抽出は、フルオロヘプタノールn3内のみで有効である。その際、置換基のアルキル分子鎖の炭素原子数が増加すると、同一の実験条件系(No.2及び系No.4)において測定されるセシウムの構成比が、大きく減少することにまた、留意すべきである。
【0052】
1.2.酸及び水−有機接触におけるクラウンエーテルベースの抽出剤の溶解性
硝酸塩溶液及び水溶液中において、他の溶媒中の、本発明に従う抽出剤及び類似のクラウンエーテルを含む抽出剤の溶解性を検討した。
異なる溶媒中の約0.1モル/Lの濃度においてDCH18C6又はDB21C7を含むクラウンエーテルを試験用に選択した。上記抽出剤を、閉鎖型のサーモスタットで制御したチャンバー内に、約3時間、水溶液、あるいは3モル/Lの硝酸含有率を用いた硝酸塩溶液と混合した。次いで、得られた水−有機系を分離した。沈降及びろ過した後、光度測定を用い、クラウンエーテルの含有率に関して、水性部分を解析した。試験結果を、表2に示す。
【0053】
【表2】

【0054】
表2に示される試験結果により、水溶液又は硝酸塩溶液中のクラウンエーテルの最小の溶解性は、本発明に従うフルオロヘプタノールn3中のクラウンエーテル系抽出剤に観察されたことが示されている。
【0055】
1.3.処理すべき廃棄物の組成に対する本発明に従う抽出剤の選択性
本発明に従う抽出剤の選択性に影響を及ぼす高レベルの廃棄物溶液の組成の違いを検討した。
1.3.1.放射性核種の抽出に影響を及ぼす溶液成分の測定
放射性核種の抽出を受ける放射化学系生成物から、実在の当初溶液1及び2の組成を測定した。
その際、実験溶液1は、ロシアで用いられている燃料電池の処理の、蒸発させ、生成した生成物のシミュレータであり、そして溶液2は、INEEL(米国)で用いられる高レベルの液状廃棄物のシミュレータである。平均的な組成を、表3に示す。
【0056】
【表3】

【0057】
表3から、溶液No.1及びNo.2の組成の主要な相違点は、抽出された元素の低濃度のバックグラウンドに対する、高濃度の大量のきょう雑物(例えば、ナトリウム及びカリウム)であり、それらは、放射性核種の抽出処理に影響を及ぼす可能性がある。
【0058】
1.3.2.本発明に従う抽出剤により、ナトリウムの抽出に影響を及ぼす当初溶液における硝酸濃度の測定
フルオロヘプタノールn3中の約0.1モル/Lの濃度における、クラウンエーテル、DB18C6、DTBDB18C6、DCH18C6又はDB21C7を含む抽出剤を、検討用に選択した。硝酸ナトリウムの水溶液を実験溶液として用い、ナトリウム−22同位体の、あらかじめ添加したアリコートに基づく放射分析技法を用いて、硝酸ナトリウムの濃度を測定した。試験結果を表4に示す。
【0059】
【表4】

【0060】
表4から、クラウンエーテル、DB18C6及びDTBDB18C6を含む抽出剤は、約0〜0.1モル/Lの硝酸濃度を用いた溶液のナトリウムの構成比が最小であり、それより高濃度で、ナトリウムの抽出が増加することが理解される。DB21C7を、0〜約0.1モル/Lの硝酸濃度の範囲で含む抽出剤は、実際には、ナトリウムを抽出せず、そしてより高い硝酸濃度において、ナトリウムを大きく抽出する。0〜0.5モル/Lの硝酸濃度が低いDCH18C6を含む抽出剤は、ナトリウムの構成比が低く、そして0.5モル/L超において、当初溶液中の硝酸濃度が増加するにつれ、ナトリウムの抽出量は、実際には、ゼロまで落ちる。
【0061】
1.3.3.本発明に従う抽出剤による放射性核種の抽出に影響を及ぼすナトリウム濃度の決定
種々のナトリウム濃度において、約3.0モル/Lの濃度を有する硝酸中の、1g/Lのセシウムを含む当初溶液からセシウムの抽出を行った。上記溶液を、フルオロヘプタノールn3中の約0.1モル/Lの濃度におけるクラウンエーテル、DTBDB18C6を含む本発明に従う抽出剤を用いて処理した。試験結果を表5に示す。
【0062】
【表5】

【0063】
表5のデータから、当初溶液中の微々たる濃度の硝酸ナトリウムの中でさえ、抽出剤の空隙を占拠し、セシウムの構成比を減少させることが明らかである。
【0064】
高レベルの廃棄物の酸性水溶液から、ナトリウムを抽出する方法における本発明に従う抽出剤の特徴を評価した。この目的において、フルオロヘプタノールn3中の約0.05モル/Lの濃度のDTBDB18C6、DCH18C6又はDB21C7系抽出剤を含む有機相及び水性相中のナトリウム濃度が解析された。結果を、表6に示す。
【0065】
【表6】

【0066】
表6の検討により、本発明に従う非アルキル化クラウンエーテル、DCH18C6及びDB21C7系抽出剤は、非アルキル化クラウンエーテル、DTBDB18C6を含む抽出剤と比較して、ナトリウムの構成比が低いという結論に達することができる。この特性は、相当量のナトリウムを含む高レベルの廃棄物、例えば、約0.4モル/Lのナトリウム濃度(約10g/L以上のナトリウム濃度に相当する)を有する濃溶液から、放射性核種を抽出するための抽出剤を選択するため、そして同様に放射性核種を抽出するために十分な、錯化剤に関する遊離のスペースを保護するために重要である。
【0067】
1.3.4.廃棄物溶液から放射性核種の抽出に影響を及ぼす硝酸濃度の測定
当初溶液において、硝酸濃度に対する、有機溶液、フルオロヘプタノールn3中のDTBDB18C6、及びフルオロヘプタノールn3中のDB21C7のセシウムの抽出の依存性を検討した。組成が表2に列挙されている溶液No.1を、当初溶液として用いた。結果を表7に示す。
【0068】
【表7】

【0069】
表7に示される結果から、フルオロヘプタノールn3中のDTBDB18C6を含む本発明に従う抽出剤(pH−th領域から始まる)は、中性、弱酸性、及び幾分酸性の媒体において、向流の動的工程のセシウム抽出を実施するために十分な構成比を有し、そして最高の抽出特性は、約0.3〜1.5モル/Lの範囲の硝酸濃度において得られることは明らかであり、従って、特許請求の範囲に記載される抽出剤は、廃棄物、コンター、汚水溜め、排水及び他の多くの流出液を含む中性媒体からセシウムを抽出することができる。
【0070】
0〜約0.7モル/Lの硝酸濃度を有する溶液中のフルオロヘプタノールn3中のDB21C7を含む本発明に従う抽出剤は、抽出特性が乏しく、そしてセシウム抽出における最も良好な選択性は、約3.0モル/Lの最高濃度と共に、約2.0〜5.0モル/Lの範囲の硝酸濃度において現れる。
【0071】
2.先行技術のクラウンXVI及びクラウンXVII系抽出剤との比較における、本発明に従う抽出剤の選択容量
硝酸塩水溶液から種々の金属のカチオンを抽出する方法を、約190g/Lの硝酸含有率及び0.05モル/Lのクラウンエーテル濃度において、フルオロヘプタノールn3(80体積%)及びシンタノール(20体積%)を含む有機溶媒中の、DCH18C6又はDB21C7を含む本発明に従う抽出剤を用いてそれらを処理することにより検討した。比較のため、米国特許第4749518号明細書(カチオン交換体−トリブチルホスフェート及び灯油を含むマトリックス溶液中のジナニルナフタレンスルホン酸と共に、クラウンXVI又はクラウンXVIIを含む抽出剤の類似試験が記載される)に与えられるデータを用いた。
【0072】
上記溶液を、1:1の比率の有機相及び水性相において、5分間、温度を制御した(25±3℃)分離漏斗内で、本発明に従う抽出剤と接触させた。60分以内の沈降後、上記相を分離し、そして当該水性相を解析し、元素濃度を測定した。対応する元素の分析結果により計算された構成比を、表8に示す。
【0073】
【表8】

【0074】
表8に示すデータから、特許請求の範囲及び公知の方法により確保されたストロンチウム及びセシウムの抽出特性は、ほとんど変わらないという結論に達するであろう。
【0075】
3.本発明に従う抽出剤中のクラウンエーテル濃度の範囲の選択
ストロンチウム及びセシウム放射性核種を抽出する場合に、下記(体積%):
フルオロヘプタノールn3 87
シンタノール 13
を含む有機溶媒中の、クラウンエーテル、DCH18C6及びDB21C7(それぞれは、異なる濃度である。)の混合物を含む本発明に従う抽出剤の選択容量(クラウンエーテルの濃度によって決まる)を検討した。
【0076】
ストロンチウム及びセシウムの水溶液(事前に添加したストロンチウム−85及びセシウム−34のアリコートと共に、各元素は、1g/Lの濃度を有し、そして3.0モル/Lの硝酸濃度を有する)を、1:1の比率の有機相及び水性相において、5分間、25±3℃の温度で、分離漏斗内で、上述の抽出剤と接触させた。60分以内の沈降後、上記相を分離し、そして当該水性相を解析した。当該水溶液中のストロンチウム及びセシウムの濃度を、放射分析法を用いて測定した。得られた結果を、表9に具体的に説明する。
【0077】
【表9】

【0078】
表9に示される結果から、全ての範囲のクラウンエーテルの濃度において、本発明に従う抽出剤は、ストロンチウム及びセシウムを有効に抽出し、そしてそれぞれのクラウンエーテルの濃度は、処理すべき水溶液の組成に従って選択できるという結論に達することができる。
【0079】
4.本発明に従う抽出剤中のシンタノールの最適濃度の決定
溶媒の量比によって決まる、フルオロヘプタノールn3及びシンタノールを含む有機溶媒中のクラウンエーテル、DCH18C6及びDB21C7(それぞれは、約0.05モル/Lの濃度である。)の混合物を含む本発明に従う抽出剤の選択性を検討した。
【0080】
事前に添加したストロンチウム−85及びセシウム−134のアリコートと共に、上述と同様の組成を有する硝酸塩水溶液を、1:1の比率の有機相及び水性相において、5分間、25±3℃の温度で、分離漏斗内で、上記抽出剤と接触させた。60分以内の沈降後、上記相を分離し、そして当該水性相を解析した。当該水溶液中のストロンチウム及びセシウムの濃度を、放射分析法を用いて測定した。得られた結果を、表10に具体的に示す。
【0081】
【表10】

【0082】
表10から、本発明に従う抽出剤の有機溶媒中のシンタノールの濃度が増加すると、ストロンチウムの抽出にプラスに作用し、そしてセシウムの抽出にマイナスに作用することは明らかである。抽出結果の図形の比較から、ストロンチウム及びセシウムの共抽出に関する特許請求の範囲の抽出剤において、フルオロヘプタノールn3を含む溶媒中のシンタノールの最適濃度は、13体積%に等しいという結論に達することができる。
【0083】
5.本発明に従う抽出剤の放射線抵抗性
ストロンチウム又はセシウムの放射性核種の抽出用に用いられる、本発明に従う抽出剤の放射線抵抗性を検討した。この目的において、硝酸塩廃棄物水溶液及びフルオロヘプタノールn3中のクラウンエーテル、DCH18C6又はDB21C7系抽出剤を含む二相、水−有機系からなる反応混合物と、トリブチルホスフェート及び灯油を含むマトリックス溶液中のカチオン交換体、ジナニルナフタレンスルホン酸と共にクラウンエーテル、クラウンXVI又はクラウンXVII系抽出剤を含む比較用の反応混合物とを、バブリングによる連続撹拌と共に、温度が制御されたステンレス鋼のセル内でガンマ線Co60を用いて照射した。最高積分放射線量は、285.3kGrに等しかった。上記抽出剤試料を試験し、そしてそれらの放射線の前後に抽出特性を評価し、抽出剤成分の放射線破壊による構成比DMeの減少を評価した。得られた結果を表11に示す。
【0084】
【表11】

【0085】
表11に示す結果から、100kGrの線量による照射後、クラウンXVI系抽出剤は、ストロンチウムの構成比を約21%減少させ、そしてクラウンXVII系抽出剤は、セシウムの構成比を35%減少させることが明らかである。285.3kGrの線量の照射後、クラウンXVI及びクラウンXVII系抽出剤は、実際には使い物にならない。100kGrの線量による照射後、本発明に従う抽出剤におけるストロンチウム及びセシウムの構成比の損失は、微々たるものであり、そして100kGrを相当上回る線量による照射の後でさえ有効なままである。
【0086】
6.本発明に従う抽出剤の再生
クラウンエーテルが高価な製品であるという事実のため、当クラウンエーテルを再使用する目的で、それらを含む抽出剤を再生する可能性を検討した。
【0087】
本発明に従う抽出剤を得るため、23.64gのクラウンエーテル、DB21C7(0.06モル/L)及び29.8gのDCH18C6(0.08モル/L)を、13体積%のシンタノール及び87体積%のフルオロヘプタノールn3を含む、本発明に従う有機溶媒1Lに連続的に溶解させ、得られた抽出剤の有機相を1時間保持し、そして冷却させた。
次いで、次の操作を連続的に実施した;
有機相を当初水溶液と接触させた、溶液No.1に関する組成を、表3に記載する;沈降後、当該相を分離する;
水性相(精製溶液)を解析し、そして上記有機相を脱イオン水と連続的に混合(2回の接触)し、抽出すべき元素の分析用の水性再抽出物と、有機相(再使用される抽出剤)とを分離する:
再使用される抽出剤を、溶液中のpH約8.0〜9.0(水酸化カリウム)において、0.025モル/Lの濃度を有するエチレンジアミン四酢酸カリウム(以下、「EDATA」と称する。)の水溶液と接触させる(1回の接触)。
【0088】
相の接触、分離及び分析条件は、パラグラフ4に記載されるものと同様である。当該構成比を、表12に与えられる金属カチオンの相分析の結果を用いて計算した。
【0089】
【表12】

【0090】
表12から、水を用いたセシウム、ストロンチウム及びバリウムの抽出、洗浄及び再抽出が、満足のいく構成比で行われたことは明らかである。再使用される抽出剤をEDATA(K)と接触させることにより、次の使用向けに、本発明に従う抽出剤の錯化剤を完全に回復させることができ、そしてこれは、本発明に従う方法により有機相から放射性核種を抽出する循環的な動的技法の系統化に対する重要な要素である。鉛は、水により再抽出されなかったので、エチレンジアミン四酢酸のカリウム塩を、水性相として用いることができる再生手段により、再使用される抽出剤から抽出しなければならない。
【0091】
上記から、放射性核種を抽出することができるクラウンエーテルを含む本発明に従う抽出剤であって、ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1中か、又はポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1及びC12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物を含む有機溶媒中の、直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択される抽出剤は、次の特性を有することが理解される;
当初溶液の大量のきょう雑物の元素組成及び酸性度に若干依存する、放射性核種、例えば、ストロンチウム又はセシウムに関する高い抽出能;
放射線照射に対する抵抗性;
抽出剤に用いられる溶媒により、ストロンチウム及びセシウムの有効な抽出向けに要求されるクラウンエーテルの濃度を得ることができる一方、放射性核種の再抽出向けに用いることができる、硝酸溶液及び水溶液との接触の際、クラウンエーテルと、抽出されるべきカチオンとのそれらの関連物の両方とを保持する;
次の再使用向けの、本発明に従う、使用済みの抽出剤を再生する能力(動的な産業条件の下、繰返し、本発明に従う抽出剤を適用可能である)。
【0092】
上記から、本発明に従う抽出剤を用いて、高レベルの廃棄物の酸性水溶液からストロンチウム及び/又はセシウムの放射性核種を抽出する方法を実施することが、上記例により具体的に説明され、異なる酸性度及び異なる組成の放射性元素の含有率が異なる大量のきょう雑物(例えば、ナトリウム)を有する媒体から、放射性核種の抽出の具体的な課題を解決するために、本発明に従う抽出剤の溶媒及び錯化剤の量及び定量的組成の最適な選択を実施することができることがまた理解される。
【0093】
7.工業条件下における、本発明に従う抽出剤を用いた、本発明に従う放射化学系生成物の酸性水溶液からの放射性核種の抽出
放射化学系生成物の高レベルの廃棄物を処理する分野で働く専門家は、塩素化コバルトジカルボリド(DCC)を含む抽出剤を用いたそれらの周知の抽出法において、高濃度のI〜III族の元素を含む溶液からセシウムを抽出する可能性が、制限されていることを理解している。DCCの選択性の低さのために、当初溶液は、実際には2回希釈されるので、第二の放射性廃棄物の体積が増加することになる。DCCベースの抽出剤は、硝酸濃度約2.0モル/L〜4.0モル/Lにおける、最高の構成比を実証している。DCCを用いた抽出剤の場合、セシウムの再抽出用の溶液は、約8.0モル/L〜10.0モル/Lの濃度を有する硝酸中のヒドラジンである。エバポレーション及びグレージングの工程における火災及び爆発安全性の要件に適合させるため、処理溶液中のヒドラジンの含有率は、1.0g/L以下でなければならず、その結果、得られた再抽出物を、それらをグレージングする前に希釈しなければならない。
【0094】
DCCを用いる場合、いくつかの種類の技術的スキームが提案されている:硝酸中のヒドラジン溶液による次の分離再抽出を用いたストロンチウム及びセシウムの共抽出、又は1回の抽出サイクルを用いて全ての放射性核種を抽出する複合スキーム。その際、上記抽出剤は、1つの錯化剤−DCCを使用し、相当高い構成比でセシウムを抽出するが、他の元素を同様に抽出するので選択性が低い。DCCを用いたストロンチウムの単離は、不可能である。
【0095】
産業において、クラウンエーテルを含む抽出剤を用いて、ストロンチウム及びセシウムを含む放射性核種を抽出する方法を使用する可能性は、水溶液中のクラウンエーテル及び抽出されたカチオンとのそれらの錯体の、水溶液への溶解性の高さにより制限されている。塩素化炭化水素、パラフィン中のトリブチルホスフェート、及びクラウンエーテルの他の溶媒を用いた多くの実験により、研究者は、クラウンエーテルを用いた放射性核種の抽出の産業規模の技術を作り出すことはできなかった。
【0096】
この場合には、放射性核種の抽出の任意の方法には、抽出剤を処理可能な溶液に接触させる操作、抽出されたカチオンで飽和した有機相及び水性相を含む抽出物を分離する操作、有機相を洗浄し、きょう雑物を除去する操作、次いで異なるコンプレキソンの溶液又は水を用いて放射性核種を単独又は共同で再抽出する操作が含まれる。
【0097】
本発明に従って、使用済みの抽出剤の再生のさらなる操作をまた、実施することができる。本発明者達は、動的な工業条件の下で実施すべき操作を可能とする、本発明に従う抽出剤の適用を伴う、放射性核種を抽出する方法を開発した。
【0098】
7.1.動的様式における本発明に従うストロンチウムの抽出法
抽出器、例えば、衝撃撹拌及び相輸送を有する「ミキサー・セトラー」を備える設備上の連続的な向流工程において、20体積%のシンタノール及び80体積%のフルオロヘプタノールn3を含む溶媒中で、当初水溶液(当該成分の組成及び濃度は、表3中の溶液No.1に関して与えられる。)を、0.05モル/LのDCH18C6を含む本発明に従う抽出剤と接触させた。上記抽出には、8回の抽出段階、2回の洗浄段階、8回の再抽出段階、及び2回の再使用される抽出剤の再生段階が含まれる。抽出法の成分の流速及び組成を、表13に記載する。
【0099】
【表13】

【0100】
設備を稼動させる際には、放射分析モニター装置を用い、精製された生成物、再抽出物、及び再生物中のストロンチウムの濃度、並びに抽出された生成物中のクラウンエーテルの濃度を制御した。上記方法の技術的特性及びクラウンエーテルの溶解性(平均値)を、表14に記載する。
【0101】
【表14】

【0102】
表14のデータから、ストロンチウムの抽出効率は、99%を越えることは明らかである。約1.7倍の平均濃縮係数が得られた。残差の元素を、再生溶液により完全に抽出し、そしてこれにより、再使用される抽出剤が、作業サイクルに戻ることができ、そして当該方法を連続的なものとすることができる。処理すべき水性生成物と共に、有機相の損失は微々たるものなので、本発明に従う抽出剤の有機相の組成を修正することなく、連続法を実施することができる。
【0103】
7.2.動的条件下における、本発明に従うセシウムの抽出法
本発明に従う方法によるセシウムの抽出条件及び工程のスキームは、上述の7.1のものと同様であるが、セシウムの抽出用の有機相は、5体積%の量のシンタノール及び約95体積%の量のフルオロヘプタノールn3を含む有機溶媒中の、約0.05モル/Lの濃度のDB21C7の溶液を含む。上記抽出成分の流速及び組成を、表15に列挙する。
【0104】
【表15】

【0105】
実験設備の操作の際、放射分析モニター装置を用い、精製された生成物、再抽出物、及び再生物中のセシウムの濃度、並びに抽出された生成物中のクラウンエーテルの濃度を制御した。上記方法の技術的特性及びクラウンエーテルの溶解性(いくつかの実験の平均値)を、表16に記載する。
【0106】
【表16】

【0107】
表16のデータから、セシウムの抽出率は、塩を含まない生成物中の、約95%のセシウム収率において、98%超であることは明らかである。セシウムを有しない再生抽出剤を、最小の損失で、作業サイクルに戻すことができる。
【0108】
7.3.ロシアの放射化学系プラントの廃棄物から、動的条件の下で、本発明に従ってストロンチウム及びセシウムを共抽出する方法
放射性廃棄物組成物の溶液からなる原料を、表3の溶液No.1と特定した。
抽出条件及び工程のスキームは、7.1に記載されるものと同様であるが、抽出剤が、シンタノール(13体積%)及びフルオロヘプタノールn3(87体積%)を含む溶媒中の、約0.08モル/Lの濃度のDCH18C6と約0.06モル/LのDB21C7との混合物から成った。抽出された成分の流速及び組成を、表17に列挙する。
【0109】
【表17】

【0110】
実験設備の稼動の際、精製された生成物、再抽出物、及び再生物中のストロンチウム及びセシウムの濃度、並びに抽出された生成物中のクラウンエーテルの濃度を制御した。上記方法の技術的特性及びクラウンエーテルの溶解性(いくつかの実験の平均値)を、表18に記載する。
【0111】
【表18】

【0112】
表18に記載される結果から、ストロンチウム及びセシウム放射性核種の共抽出率は、95〜97%に等しい最終生成物の収率及び約1.7倍の平均濃度において、98%を超えることは明らかである。残差の元素を、再生溶液により完全に抽出し、そしてこれにより、再使用される抽出剤を、作業サイクルに戻すことができ、そして当該方法を連続的なものとすることができる。50サイクルの抽出剤回転数の後、抽出混合物組成を検討することにより、下記が示された:水性生成物と共に有機相の微々たる損失により、本発明に従う抽出剤の有機相の組成を調整することなく、長期にわたり連続工程を実施することができる。
【0113】
7.4.動的条件の下、INEEL(米国)の放射化学系生成物の廃棄物から、本発明に従うストロンチウム及びセシウムを共抽出する方法
当初水溶液は、INEEL(米国、アイダホ州)の廃棄物をシミュレートした。その組成は、表19に記載されている。抽出器、例えば、衝撃撹拌及び相輸送を有する「ミキサー・セトラー」の設備上の連続的な向流様式において、フルオロヘプタノールn3を含む溶媒中で、この溶液を、約0.1モル/Lの濃度のDCH18C6及び約0.1モル/Lの濃度のDB21C7の混合物を含む本発明に従う抽出剤と接触して置いた。
【0114】
【表19】

【0115】
上記抽出法には、8回の抽出段階、2回の洗浄段階、10回の再抽出段階、及び4回の再使用される抽出剤の再生段階が含まれる。成分の流速及び組成を、表20に記載する。
【0116】
【表20】

【0117】
実験設備の操作の際、精製された生成物、再抽出物、及び再生物中のストロンチウム及びセシウムの濃度、並びに抽出された生成物中のクラウンエーテルの濃度を制御した。上記方法の技術的特性及びクラウンエーテルの溶解性(いくつかの実験の平均値)を、表21に記載する。
【0118】
【表21】

【0119】
表21から、ストロンチウム及びセシウム放射性核種の共抽出率は、最終生成物中の約95%の収率及び約1.2倍の平均濃度において、98%を超えることは明らかである。与えられた工程において、水溶液と共に抽出剤の損失は、最小である。
【0120】
上記方法の試験結果から、下記が明らかとなった;
クラウンエーテル、DB21C7及びDCH18C6の混合物を含む本発明に従う抽出剤を適用することにより、1回の抽出サイクルにつき、98%超のストロンチウム及びセシウムを抽出することができる;
ストロンチウムの濃度は、1.8倍より高く、得られた塩を含まない水性再抽出物は、0.1モル/L未満の硝酸を含む;
上記抽出剤の損失は、処理溶液1Lあたり、1.0mL未満である。
【0121】
従って、我々は、放射性核種に対する選択性が高いクラウンエーテル系抽出剤、及び相当量のナトリウムを含めた大量のきょう雑物を含む放射化学系生成物の高レベルの廃棄物の酸性水溶液から放射性核種を抽出する方法を開発した。
【0122】
本発明に従う放射性核種を抽出する方法の優位性はまた、下記を含む;
前処理なしで任意の組成の液状の放射性廃棄物を処理できること;
水溶液により放射性核種を再抽出することができること、そして結果として、ガラス比放射能を増すため、再抽出物をグレージング加熱炉に直接移動させることができること;
本発明に従う方法の多様性、というのは、それらは、ストロンチウム−セシウム再抽出物の共同生成向け、あるいは、個々の抽出剤を用いた一つの技術的スキーム及び別個の技術的スキームの両方における別の再抽出向けに用いることができるからである。
【0123】
異なる濃度の、硝酸を用いた混合物中の抽出剤の熱安定性の実験により、抽出及び再抽出、並びに抽出スキームの水性の抽出された生成物の次のエバポレーションの操作は、耐爆発性及び耐火性を有することが示された。
【0124】
クラウンエーテル類及び抽出されたイオンとのそれらの関連物を保持することができる大環状化合物(例えば、クラウンエーテル)の溶媒として、フルオロヘプタノールn3を適用する可能性により、例えば、放射性核種を抽出するための種々の抽出剤、及び安全でありかつ実際に実現可能なそれらの抽出方法を開発することができた。
【0125】
本発明に従うクラウンエーテル系抽出剤を適用する経済的な優位性は、クラウンエーテルを再生しそれらのコストを減らすこと、ヒドラジン及び硝酸を節約すること、並びに水性相との接触の際の抽出剤成分の損失が少ないため、抽出剤そのものを節約することができることにある。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明に従う抽出剤を、公知の技術を用いて得ることができる。種々の産業工程において、本発明に従う、次の再使用向けに抽出剤を再生する方法及び本発明に従う抽出剤を適用して放射性核種を抽出する方法を、処理すべき溶液の組成に従う処理条件及び抽出スキームの成分の組成及び量比を選択することにより実現することができる。
【0127】
本発明に従う方法の技術的スキームの簡潔さにより、装置の配列のキャニオンバージョン及びチャンバーの両方において、放射性核種、特に、ストロンチウム及びセシウムの抽出技術を用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択される大環状化合物を含む溶液用の溶媒として、次の一般式:
H(CF2CF2nCH2OH
(式中、n=3である。)
を有するポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1の適用。
【請求項2】
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1を含む有機溶媒中に、直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択される、放射性核種のイオンと結合することができる大環状化合物を含む、ナトリウムを含めた大量のきょう雑物をも含む放射化学系生成物の高レベルの廃棄物の酸性水溶液から放射性核種を抽出するための抽出剤。
【請求項3】
前記有機溶媒が、次の一般式:
n2n+1O(C24O)m
(式中、n=12〜14、m=2である。)
のC12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物をさらに含むことを特徴とする、請求項2に記載の抽出剤。
【請求項4】
前記有機溶媒が、次の成分量(体積%):
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1、80〜99
12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物、20〜1
を有することを特徴とする、請求項3に記載の抽出剤。
【請求項5】
前記抽出剤が、セシウムのカチオンを含む廃棄物からセシウムの放射性核種を抽出するように適合され、
前記抽出剤が、ジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(DTBDB18C6)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(DIODB18C6)、ジベンゾ−21−クラウン−7(DB21C7)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(クラウンXVII)を含む群から選択されるクラウンエーテルを含むことを特徴とする、
請求項2〜4のいずれか一項に記載の抽出剤。
【請求項6】
前記抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lの濃度でジベンゾ−21−クラウン−7を含むことを特徴とする、請求項5に記載の抽出剤。
【請求項7】
前記抽出剤が、ストロンチウムカチオンを含む廃棄物からストロンチウム放射性核種を抽出するように適合され、
前記抽出剤が、ジ−tert−ブチルシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DTBDCH18C6)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(クラウンXVI)を含む群から選択されるクラウンエーテルを含むことを特徴とする、
請求項2〜4のいずれか一項に記載の抽出剤。
【請求項8】
前記抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lの濃度で、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6を含むことを特徴とする、請求項7に記載の抽出剤。
【請求項9】
前記抽出剤が、ストロンチウムカチオン及びセシウムカチオンを含む廃棄物からストロンチウム及びセシウム放射性核種を共抽出するように適合され、そして
クラウンエーテルの混合物を含み、
少なくとも一種の前記クラウンエーテルは、ジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(DTBDB18C6)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(DIODB18C6)、ジベンゾ−21−クラウン−7(DB21C7)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(クラウンXVII)を含む群から選択され、そして
少なくとも一種の前記クラウンエーテルは、ジ−tert−ブチルシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DTBDCH18C6)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(クラウンXVI)を含む群から選択されることを特徴とする、
請求項2〜4のいずれか一項に記載の抽出剤。
【請求項10】
クラウンエーテル、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6及びジベンゾ−21−クラウン−7の混合物を含むことを特徴とする、請求項9に記載の抽出剤。
【請求項11】
前記有機溶媒が、次の成分量(体積%):
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1,87
12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物,13
を好ましくは有することを特徴とする、請求項10に記載の抽出剤。
【請求項12】
各クラウンエーテルの濃度が、前記抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lであることを特徴とする、請求項9又は10に記載の抽出剤。
【請求項13】
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1を含む有機溶媒中において、直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択される大環状化合物の、抽出されたカチオンとの錯体を含む使用済みの抽出剤の再生方法であって、pH約8.0〜9.0において、エチレンジアミン四酢酸カリウムの水溶液を用いて前記使用済みの抽出剤を処理することによる前記再生方法。
【請求項14】
前記水溶液中のエチレンジアミン四酢酸カリウムの濃度が、約0.02モル/L〜0.03モル/Lであることを特徴とする、請求項13に記載の再生方法。
【請求項15】
要求されるpHが、水酸化カリウムの添加により与えられる、請求項13に記載の再生方法。
【請求項16】
ナトリウムを含めた他の大量のきょう雑物を含む放射化学系生成物の高レベルの廃棄物の酸性水溶液から放射性核種を抽出する方法であって、
前記廃棄物の水溶液は、抽出の際に放射性核種のイオンと結合できる大環状化合物を含む抽出剤を用いて処理され、そして前記放射性核種は、脱イオン水により当該抽出物から再抽出され、
前記抽出剤は、ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1を含む有機溶媒中に、直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含む芳香族フラグメント、並びに/又は直鎖及び/若しくは分岐鎖構造のアルキル及び/若しくはヒドロキシアルキル置換基を含むシクロヘキサンフラグメント、並びに/又はフラグメント、−O−CHR−CH2O−(式中、Rは、直鎖又は分岐鎖のアルキル又はヒドロキシアルキルである。)を有するクラウンエーテルの群から選択される大環状化合物を含む。
【請求項17】
前記抽出剤中の前記有機溶媒が、次の一般式:
n2n+1O(C24O)m
(式中、n=12〜14、m=2である。)
のC12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物をさらに含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記有機溶媒が、次の成分の割合(体積%):
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1,80〜99
12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物,20〜1
を有することを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が、セシウムの放射性核種を抽出するように適合され、
前記抽出剤が、ジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(DTBDB18C6)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(DIODB18C6)、ジベンゾ−21−クラウン−7(DB21C7)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(クラウンXVII)を含む群から選択されるクラウンエーテルを含むことを特徴とする、
請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抽出剤が、前記抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lの濃度で、ジベンゾ−21−クラウン−7を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が、ストロンチウムカチオンを含む廃棄物からストロンチウム放射性核種を抽出するように適合され、そして
前記抽出剤が、ジ−tert−ブチルシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DTBDCH18C6)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(クラウンXVI)を含む群から選択されるクラウンエーテルを含むことを特徴とする、
請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抽出剤が、前記抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lの濃度で、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6を含むことを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が、ストロンチウム及びセシウムの両方の放射性核種を共抽出するように適合され、そして
前記抽出剤はクラウンエーテルの混合物を含み、
少なくとも一種の前記クラウンエーテルは、ジ−tert−ブチルベンゾ−18−クラウン−6(DTBDB18C6)、ジイソオクチルベンゾ−18−クラウン−6(DIODB18C6)、ジベンゾ−21−クラウン−7(DB21C7)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシ−2−エチルヘキシル]ベンゾ−18−クラウン−6(クラウンXVII)を含む群から選択され、そして
少なくとも一種の前記クラウンエーテルは、ジ−tert−ブチルシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DTBDCH18C6)、ジイソオキシルジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DIODCH18C6)、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6(DCH18C6)、ビス−4,4’(5’)[1−ヒドロキシヘプチル]シクロヘキソ−18−クラウン−6(クラウンXVI)を含む群から選択されることを特徴とする、
請求項16〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記有機溶媒が、次の成分量(体積%):
ポリフッ素化テロマー系アルコール、1,1,7−トリヒドロドデカフルオロヘプタノール−1,87
12〜C14画分の合成高級脂肪族第1級アルコールのポリオキシエチレングリコールエーテルの混合物,13
を好ましくは有することを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記抽出剤が、ジシクロヘキサノ−18−クラウン−6及びジベンゾ−21−クラウン−7の混合物を含むことを特徴とする、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記混合物における各クラウンエーテルの濃度が、前記抽出剤の約0.04モル/L〜0.1モル/Lであることを特徴とする、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
大環状化合物のカチオンとの錯体を含む再使用された抽出剤の分離段階、及び
pH約8.0〜9.0において、エチレンジアミン四酢酸カリウムの水溶液により、前記再使用された抽出剤を処理することにより再使用するための前記抽出剤の再生段階
のさらなる段階を有することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項28】
前記水溶液中のエチレンジアミン四酢酸カリウムの濃度が、約0.02モル/L〜0.03モル/Lの範囲から選択されることを特徴とする、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記水溶液pHが、水酸化カリウムの添加により与えられることを特徴とする、請求項27に記載の再生方法。
【請求項30】
前記方法の全ての操作が、向流の動的条件の下で実施されることを特徴とする、請求項13〜29のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2008−512675(P2008−512675A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531105(P2007−531105)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【国際出願番号】PCT/RU2004/000348
【国際公開番号】WO2006/036083
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(507078902)オブシェストボ エス オグラニチェンノイ オトベツトベンノスチュ“プロエクトノ−コンストルクトルスコエ イー プロイズボヅトベンノ−ブネドレンチェスコエ プレドプリヤティエ“デイモス リミティド” (1)
【出願人】(507077972)
【Fターム(参考)】