クリニカルパス運用支援情報システム
【課題】診療記録の分析結果を、診療に効率良くフィードバックする方法および情報システムを提供する。
【解決手段】本発明のクリニカルパス運用支援情報システムは、蓄積された診療記録を分析し、クリニカルパスを作成・修正および記憶する機能を備えたクリニカルパス分析環境15を有する。さらに本情報システムは、蓄積されたクリニカルパスから患者状態等に応じた最適クリニカルパス選択機能17を有する。また、クリニカルパス分析環境15には、診療プロセス評価機能とクリニカルパス評価機能を備える。
【効果】上記機能により現実に即したクリニカルパスの作成・修正、患者に適したクリニカルパスの選択、およびクリニカルパスに沿った診療を支援することが可能となる。
【解決手段】本発明のクリニカルパス運用支援情報システムは、蓄積された診療記録を分析し、クリニカルパスを作成・修正および記憶する機能を備えたクリニカルパス分析環境15を有する。さらに本情報システムは、蓄積されたクリニカルパスから患者状態等に応じた最適クリニカルパス選択機能17を有する。また、クリニカルパス分析環境15には、診療プロセス評価機能とクリニカルパス評価機能を備える。
【効果】上記機能により現実に即したクリニカルパスの作成・修正、患者に適したクリニカルパスの選択、およびクリニカルパスに沿った診療を支援することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野における情報システムや情報提供サービスに関する。特に、クリニカルパス(標準的もしくは最適な診療プロセス)を用いた診療記録分析結果の診療へのフィードバック、クリニカルパスの作成、クリニカルパスと診療プロセス記録の適合度評価、最適なクリニカルパスの選択を行うソフトウェア、及びそのソフトウェアを搭載する医療情報システム,その医療情報システムを用いた医療情報提供サービスに関する。
【背景技術】
【0002】
クリニカルパスに関する従来技術について説明する。クリニカルパスは標準的もしくは最適な診療プロセスを指し、クリティカルパスと呼ばれることもある。また、クリニカルガイドラインと呼ばれる最適な診療行為を行うための診療指針があるが、本明細書ではこれもクリニカルパスに含めて考える。なお、ここで、診療プロセスとは一連の診療行為を表す。クリニカルパスに関しては、例えば、「ナーシングインフォマティクス」、167−183頁、スプリンガー社、1995年発行(”Nursing Informatics”、Springer−Verlag、pp.167−183、1995)、「クリティカル・パス」、文光堂、1998年発行などが参考となる。以下、本発明に関連する従来例について詳細に説明する。
(従来例1)診療記録の分析方法および分析システムに関する従来例について説明する。特開2000−181981では、時間情報を伴った形式でデータを蓄積し、時間情報を用いた診療記録の抽出と分析を行う方法が記載されている。特開2001−101296には、ある患者に対する診療記録を時系列に一画面に表示するシステムが記載されている。第17回医療情報学連合大会予稿集、140−141頁、1997年発行に記載されている方法は、診療記録の統計量を計算し、時系列に表示するものである。
(従来例2)クリニカルパス作成に関する従来例について説明する。クリニカルパス作成では、対象とする症例について経験豊富な医師や看護師等からなるクリニカルパス作成チームが作られ、経験とカルテ検索、文献検索によってクリニカルパスを決定していくのが一般的である。本方法については前記文献「クリティカル・パス」に記載されている。
(従来例3)診療プロセスとクリニカルパスの適合度を求める従来例について説明する。診療プロセスがクリニカルパスから外れる場合や他のクリニカルパスに変更する場合、その出来事をバリアンス(変動)と呼ぶ。これを分析することをバリアンス分析と呼び、診療プロセスがクリニカルパスにどの程度沿っているかを示す指標が得られる。例えば、バリアンス毎の回数や頻度などが指標として計算され、あるバリアンスが起きる頻度が高い等といった情報が得られる。なお、本方法については、前記文献「クリティカル・パス」に記載されている。
(従来例4)患者に適したクリニカルパスの選択方法に関する従来例について説明する。特開2001−273362には、病名、年齢、性別などの患者分類項目を入力し、その条件に合致した医療行為指針やクリニカルパスをデータベースから取得する方法が記載されている。また、クリニカルパスではないが、患者に適した診療方法を選択する方法が特開2001−118014に記載されている。この方法は、患者へのある時点までの診療記録に類似した診療記録を抽出するものである。
(従来例5)クリニカルパスに沿った診療を支援する方法の従来技術について説明する。特許2706645、特許2815346には、患者に行った診療記録とこれから行うべき診療行為を表形式にして表示する方法が記載されている。また、特開2001−290885には、クリニカルパスを用いて、患者に行う診療オーダーを一括発行可能なシステムについて記載されている。
【非特許文献1】「ナーシングインフォマティクス」、167−183頁、スプリンガー社、1995年発行(”Nursing Informatics”、Springer−Verlag、pp.167−183、1995)
【非特許文献2】「クリティカル・パス」、文光堂、1998年発行
【非特許文献3】第17回医療情報学連合大会予稿集、140−141頁、1997年発行
【特許文献1】特開2000−181981
【特許文献2】特開2001−101296
【特許文献3】特開2001−273362
【特許文献4】特開2001−118014
【特許文献5】特許2706645
【特許文献6】特許2815346
【特許文献7】特開2001−290885
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術(従来例1)では診療記録の蓄積や分析に重点が置かれ、分析結果を診療に効率良くフィードバックする方法や情報システムについて考慮されていなかった。また、(従来例5)では、診療実施支援に重点が置かれ、診療記録の分析結果を反映する方法について考慮されていなかった。
前記クリニカルパス作成の従来技術(従来例2)では、大部分の作業を手作業で行うため、効率面で問題があった。また、経験やカルテ検索結果に立脚するため、偏りやサンプリングによる情報不足のために現実から乖離したクリニカルパスが作成され得るという問題があった。また、診療記録の時系列表示技術(従来例1)を併用すれば、ユーザが表示結果を見ながらクリニカルパスを作成することができたが、クリニカルパスと分析結果の比較等を別途実施せねばならず、効率が悪いという問題があった。また、病名や性別、年齢といった患者の基本的な情報に依って診療プロセスを抽出した場合、本来異なった症例に関する診療プロセスも抽出結果に入り込み、その影響を排除しながらクリニカルパスを作成しなければならなかった。
前記診療プロセスの評価技術(従来例3)では、クリニカルパス作成と共に生じうるバリアンスを設定しなければならなかった。このため、クリニカルパス毎に診療プロセスの評価基準が変わってしまい、横断的な評価ができないという問題点があった。同様に、この従来技術では各クリニカルパスを個別評価することは可能だが、複数のクリニカルパスを横断的に評価し、比較することができないという問題点があった。
前記クリニカルパスの選択技術(従来例4)では、病名、年齢、性別などの患者の基本的な情報をパラメータとして適切なクリニカルパスを抽出しようというものだが、この方法では治療の進行や患者状態の経時変化に応じて適切なクリニカルパスを選択することができなかった。また、医療機関によって設備の有無や可能な術式といった制約や治療方針といった条件についても考慮されていなかった。また、類似した診療記録を抽出してくる方法では、必ずしも抽出結果が最適な診療プロセスとは限らないという問題があった。
本発明の目的は、診療記録などの分析結果を効率良く診療にフィードバックする方法および情報システムを提供することにある。特に、クリニカルパスの簡便な作成方法、クリニカルパスと診療プロセスとの適合度の評価方法、最適なクリニカルパスの選択方法を提供することが目的である。また、このような機能を備えた医療情報提供サービスを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明のクリニカルパス運用支援情報システムは、図1に示すように、診療記録やコスト情報等のデータを分析し、クリニカルパス作成や各種評価を行うクリニカルパス分析環境15を持つ。特に、この分析環境には次の三つの機能の全部または一部を有する。一つ目の機能は、診療記録やコスト情報等のデータを分析して症例分類とクリニカルパスを作成し、それを症例分類・クリニカルパス関連DB16に蓄積する症例分類・クリニカルパス作成機能である。二つ目の機能は、診療プロセス記録とクリニカルパスとの差異を計算する診療プロセス評価機能である。三つ目の機能は、診療プロセス記録とクリニカルパスとの差異を計算し、それを元にクリニカルパスの評価や変更を行うクリニカルパス評価機能である。本環境と前記機能により、診療時に参照しやすい形式で診療記録の分析結果が蓄積可能となる。
特に、症例分類・クリニカルパス作成機能では、図2に示すような診療プロセスの選択手段、選択されたプロセスの平均プロセス計算手段、前記平均プロセスのクリニカルパス初期値設定手段、クリニカルパス編集手段、および作成したクリニカルパスの登録手段を備える。これにより、現実の診療に即したクリニカルパスの作成を容易にすることが可能となる。また、診療プロセスの選択手段には、診療プロセスの統計量を、時間と項目からなる2次元マトリクスと各診療プロセスの統計量をあらわす1次元グラフに表示し、両グラフ上で関心領域の選択と関心領域に入る診療プロセスの統計量のみを表示する機能を備える診療プロセスの表示手段を用いても良い。これにより、診療プロセスの時系列パターンを観察しながらクリニカルパス作成に使用する診療プロセスを選択することが可能となる。また、診療プロセス間に距離を定義して距離による診療プロセスのクラスタリング手段を診療プロセス選択手段に付加しても良い。これにより、一様な診療プロセスを抽出することが容易となり、クリニカルパスの編集にかかる労力を軽減することが可能となる。
診療プロセス評価手段とクリニカルパス評価手段に、前記診療プロセス間の距離を使用し、診療プロセスとクリニカルパスとの距離から導き出される指標を導入しても良い。これにより、複数のクリニカルパスや症例分類を横断的に比較し、どのクリニカルパスを重点的に向上させる必要があるか、新規クリニカルパスを作成する必要があるか、どの診療プロセスをクリニカルパスに沿うように働きかける必要があるか、などの判断基準が得られる。
本発明のクリニカルパス運用支援情報システムは、図1に示すように患者の基本的な診断情報とある時点までの診療記録、医療機関の制約や治療方針の全て若しくは一部の情報を元にして最適なクリニカルパスを選択する最適クリニカルパス選択機能17を有してもよい。これにより症例分類・クリニカルパス関連DB16に蓄積されたクリニカルパスを活用することが容易となる。
さらに本発明のクリニカルパス運用支援情報システムによれば、図12に示すようなクリニカルパス運用支援サービスが可能である。本サービスでは、クライアントとなる医療機関から患者情報や診療プロセス等の情報を提供を受けて、当該患者に最適なクリニカルパスや症例分類・クリニカルパスの配信、診療プロセスの評価結果の配信、クリニカルパスや症例分類の向上を行う。本サービスにより、ある症例に関する診療プロセスデータの蓄積が複数の医療機関から集積されることで進み、該当する症例に関するクリニカルパスを向上させやすくなる。各医療機関は向上されたクリニカルパスを獲得でき、診療の質や効率を向上させることが可能となる。また、複数の医療機関を横断的に評価・比較可能となり、各医療機関の質向上の指標が得られる。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように、本発明によれば、診療記録を分析し結果を診療へとフィードバック可能な情報システムを構築することが可能となる。特に、クリニカルパスを介在させることで効率的に情報をフィードバックできるという顕著な効果を有する。また、本発明のクリニカルパス作成方法によれば、現実の診療プロセスに即したクリニカルパスの作成・修正を支援することが可能となる。本発明の最適クリニカルパス選択方法によれば、患者情報とある時点までの診療記録から最適なクリニカルパスを選択することが可能となる。本発明の診療プロセス評価方法とクリニカルパス評価方法によれば、診療記録とクリニカルパスとの差異を指標とすることで、クリニカルパスや診療の向上が可能となる。さらに本発明の情報システムを使用して、クリニカルパスを広範に流通させ、診療の質と効率の向上を支援可能なサービスを提供することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明のクリニカルパス運用支援情報システムの概念図である。電子カルテ11を用いて診療記録や検査値などが入力され、電子カルテDB(Database、データベース)12に蓄積される。なお、電子カルテの枠中に記載してあるのは電子カルテの代表的な機能である。SOAP入力機能は、診療記録をSubjective、Objective、Assessment、Progressに分類整理しながら入力するための機能である。クリニカルパス機能は、患者に適したクリニカルパスの参照・カスタマイズ・オーダー発行を可能にする機能である。なお、これらは代表的な機能であり、これら以外にも例えば、放射線科用の画像診断機能や病棟看護用の機能などが搭載されていても良い。また、本発明ではクリニカルパス機能は必須であるが、他の機能はなくても構わない。また、電子カルテ11で使用される端末は、診療室に固定されるデスクトップコンピュータや病棟や病院外で可動性をもって使用されるノート型コンピュータや携帯端末などが使用可能である。電子カルテDB12に蓄積されたデータは適当なタイミングでセントラルDWH(Data Warehouse、データウェアハウス)13に反映される。適当なタイミングとは、例えば、オーダー発行時や診療記録を入力し登録した時点、一日毎または毎定時、もしくはセントラルDWHがシステムダウンしているときには復旧時などである。これにより、電子カルテDB12とセントラルDWH13に記録されているデータは統一性がとられ、またセントラルDWH13の参照や分析などで高負荷がかかった場合でも、電子カルテDB12が独立しているため、診療記録入力のレスポンス低下を防ぐといった効果を奏する。セントラルDWH13には、電子カルテによる診療記録等の他、コストや診療報酬等も蓄積される。電子カルテDB12とセントラルDWH13の連携と、コストや診療報酬の入力などはアドミニストレーション14を介して行われる。なお、コストや診療報酬等は他の医事会計システムやオーダー発行システム、原価計算システムから自動的に転送、もしくはそれらシステムが有するDBと連携をとってもよい。これら情報が加味されることで、診療プロセスを収入やコスト、収益の観点からも分析可能となる。
これら、蓄積されたデータは各種分析環境で統計計算等を用いて分析される。そのうち、クリニカルパス分析環境15は本発明の特徴となる機能である。ここでは、セントラルDWH13に蓄積されたデータをクリニカルパスや診療プロセスの観点から分析を行い、診療へとフィードバックする情報を作成する。具体的には、クリニカルパス分析環境15の枠内に記述している機能を備える。症例分類・クリニカルパス作成機能は、セントラルDWH13に蓄積されたデータを分析し、症例分類とクリニカルパスを作成し、それを関連付けて症例分類・クリニカルパス関連DB16へ格納するものである。この機能により、実際の診療に立脚したクリニカルパスを作成できるという効果がある。なお、本機能の動作については、実施例2で詳述する。ここで、クリニカルパスを登録する際に、クリニカルパスの選択時に指標となる数値を一緒に登録しても良い。この数値としては、例えば、治癒率や期待される看護度の改善、当該クリニカルパス実施にかかる総コストや収入、利益などがある。これら数値もしくはそれから副次的に計算される指標を用いて、最適なクリニカルパスを選択することが可能となる。
診療プロセス評価機能では、セントラルDWH13から診療プロセスを抽出し、症例分類・クリニカルパス関連DB16から対応するクリニカルパスを選択し、抽出された診療プロセスがクリニカルパスからどの程度乖離しているか計算する機能である。計算結果はセントラルDWH13に記録され、電子カルテ11のクリニカルパス機能等で参照する。本機能により、クリニカルパスによるプロセスコントロールを強化すべき医療機関・科・医師や症例などを探索できるという効果がある。
クリニカルパス評価機能では、診療プロセス評価機能と同様の計算を行うが、評価結果をクリニカルパスの修正や選択に活かしていく点が異なる。このため、評価結果を症例分類・クリニカルパス関連DB16に記録し、最適クリニカルパス選択機能17でクリニカルパスを選択する際の評価基準の一つとする。また、クリニカルパスが実際の診療プロセスから著しく乖離している場合など、修正が必要な場合には症例分類・クリニカルパス作成機能に戻し、クリニカルパスを修正する。なお、この二つの機能で使用するクリニカルパスと診療プロセスとの差異を計算する手法については、実施例3で詳述する。本提案の情報システムにとって、診療プロセス評価機能とクリニカルパス評価機能は必須機能ではないが、これら機能があるとクリニカルパスの向上やマクロな観点からの診療の向上が可能となる。
公開/提携症例分類・クリニカルパス関連DB19は、症例分類・クリニカルパス関連DB16と同様に症例分類とクリニカルパスの情報が蓄積されている。外部連携インタフェース18は、二つのDB間のデータ交換や、公開/提携症例分類・クリニカルパス関連DB19の情報を元とした症例分類・クリニカルパス関連DB16の情報の修正、公開/提携症例分類・クリニカルパス関連DB19への情報発信を行う。
これにより、外部の情報を取り入れ、症例分類・クリニカルパス関連DBを向上させることが可能となる。
以上記述したようにクリニカルパス分析環境15により、クリニカルパスの作成や適用範囲、優先度等が症例分類・クリニカルパス関連DB16に蓄積される。最適クリニカルパス選択機能17では、この蓄積されたデータを基にして、患者に対する最適なクリニカルパスの選択やクリニカルパスの優先度計算を行う。患者に対してクリニカルパスを適用しようとする場合、電子カルテ11を用いて患者の性別・年齢・病名などの基本的な情報とある時点までの診療記録が電子カルテDB12に登録されている。これら患者情報と、医療機関や部署・医師等の制限や治療方針を用いて、症例分類・クリニカルパス関連DB16から最適なクリニカルパスを選択もしくは順位付けして表示する。特にある時点までの診療記録がクリニカルパス選択に使用されることで、患者の状態変化に即したクリニカルパスを動的に選択していくことが可能となる。なお、本機能の動作については実施例4で詳述する。
医師等は、表示されたクリニカルパスの中から適切なものを選択し、さらに必要であればカスタマイズして該当患者用のクリニカルパスを作成する。作成後、予めオーダー可能な診療行為については予約してオーダーを発行することも可能である。
本情報システムは、単一の医療機関に限定されたものではなく、複数の医療機関に向けたサービスも可能である。この場合、図1のクリニカルパス作成・分析・提供に関する機能を医療機関から独立させ、電子カルテ等の診療部分は複数の医療機関に散在することになる。独立した部分は、複数の医療機関に向けて該当する機能または該当する機能による結果を提供するクリニカルパス運用支援サービスを行う。この場合、各医療機関ではクリニカルパスのメンテナンス等をする手間が省力でき、また複数の医療機関のデータが集まってくるため、精度の高い症例分類やクリニカルパスの情報を得ることが可能となる。また、診療プロセス評価を受けることにより他医療機関との比較が可能となる。本サービスに関しては、実施例5で詳述する。
【実施例2】
【0008】
図2は、本発明のクリニカルパス作成方法を概念的に示した図である。本作成方法は、図1のクリニカルパス分析環境15の症例分類・クリニカルパス作成機能で使用される。プロセス集合の各プロセスは、行為の時間(経過日数)、項目(診療行為)、量の少なくとも三要素からなる診療行為の一連の実施記録である。ここで、量とは、行為を行った回数や時間、行為にかかるコスト、行為による報酬や利益などである。行為が検査など測定に関するものの場合、測定値を量として扱ってもよい。また、行為が投薬や注射などの場合、投与量を量として扱っても良い。図では、各プロセスを経過日数と項目を軸とし、量をセルの値とする2次元マトリクスとして表現している。このプロセス集合をプロセス表示手段を用いて表示し、プロセス選択手段を用いて関心のあるプロセス部分集合のみ選択する。プロセス表示手段としては、典型的には、時間と項目とからなる時系列パターンを表す2次元マトリクスと各プロセスの統計量を表す1次元グラフを用い、両グラフ上に関心領域の選択投影機能を備えた表示手段を用いる。これにより、1次元グラフ上で関心領域を設定することでプロセスを選択し、選択されたプロセスの平均的なプロセスを2次元マトリクスで観察することが可能となる。その結果、クリニカルパス作成に適したほぼ一様な診療プロセスを施された患者群を抽出することが可能となる。なお、プロセス選択手段には、患者の病名・性別・年齢・手術名・人種などの基本的な情報による患者選択手段を含んでも良い。選択されたプロセスの平均プロセスが平均プロセス計算手段によって計算され、クリニカルパス初期値設定手段によってこれがクリニカルパスの初期値とされる。クリニカルパス編集手段では、閾値処理や丸め処理などの数値演算と作成者による数値の変更や移動、新規項目の追加が行われ、クリニカルパスが作成される。作成されたクリニカルパスはクリニカルパス登録手段によってデータ保存され、クリニカルパス表示手段によって表示される。なお、クリニカルパス表示手段はプロセス表示手段と同一のものでよく、作成したクリニカルパスと記録されたプロセスとを表示・比較・分析可能な手段である。このように、クリニカルパスの初期値としてデータに基づいた平均診療プロセスが設定されることで、現実の診療に沿ったクリニカルパスの作成が容易になるという効果がある。また、2次元マトリクスと1次元グラフの両者を活用してプロセス集合を把握しやすく表示することで、対象となるプロセスを選択しやすくできるという効果がある。
図3は、本クリニカルパス作成手段の典型的なフローチャートを表す。クリニカルパス作成のために、先ずプロセスデータを選択し、選択されたプロセスはプロセス表示部に表示される。ユーザは、これを基にしてクリニカルパスを作成するか判断し、Noであれば再度プロセスデータの選択に戻る。Yesの場合、クリニカルパス作成部は選択プロセスの平均値を計算し、計算された平均プロセスがクリニカルパスの初期値として設定される。ユーザは、数値演算や数値の変更・移動・追加・削除等の操作によりクリニカルパスの編集を行い、所望のクリニカルパスを作成する。ユーザは、作成したクリニカルパスを登録するか判断し、Yesであればクリニカルパスを登録する。登録されたクリニカルパスはプロセス表示部でプロセス記録と共に表示される。作成者は、表示されたクリニカルパスとプロセス記録を比較してクリニカルパスを変更するか判断し、Yesであればクリニカルパス編集手段により編集し、所望のクリニカルパスが得られるまで繰り返す。なお、このフローチャートは典型的な処理の流れを示したもので、他の処理の流れもあることは言うまでもない。例えば、このフローチャートでは判断木を使って処理の分岐を記述したが、表示プログラムではイベントとイベントハンドラーを使って処理が選択されるのが一般的である。また、既存のクリニカルパスを変更する場合、既存のクリニカルパスと、選択されたプロセスの平均プロセスを併記し、既存のクリニカルパスを修正しやすくしてもよい。
図4は、プロセス集合とクリニカルパスのデータ構造の一例を示す図である。データ構造は、ファクトテーブルとディメンジョンテーブルとからなるスタースキーマをとっている。左側のファクトテーブルはプロセステーブル41からなる。
プロセステーブル41は患者ID、経過日数、診療項目と対応する診療量(回数、コスト等)を記録したものである。右側のディメンジョンテーブルは、患者の基本情報を記録した患者テーブル42と診療項目の内容を記述した診療項目テーブル43である。例えば、患者テーブル42には、患者IDがPat001の人は年齢が34で性別は女性、診断名は病名1であるといった情報が記載されている。また、患者ID=CP001は作成されたクリニカルパスを示している。この図では、患者テーブル42に、関連するクリニカルパスのIDを記載する欄が設けられている。これにより、どの患者群に対してどのクリニカルパスが関連しているのか判断することが可能となる。なお、図では関連クリニカルパスを一欄しか記述していないが、実際には複数の関連するクリニカルパスがある。例えば、診療を行う際に実際に使用したクリニカルパスや、クリニカルパス作成方法において元となった選択患者に振る当該クリニカルパス等がある。なお、関連クリニカルパスの欄は、患者とクリニカルパスとの関連性を明確にするために導入したが、必須項目ではない。また、本データ形式では患者の診療プロセスデータとクリニカルパスデータとを同一のデータ構造(プロセステーブル41と患者テーブル42)に入れているが、クリニカルパスデータを別のデータ構造に入れることも可能である。例えば、プロセステーブル41に混在させる代わりに、クリニカルパステーブルを作成し、同様の記録を行うことも可能である。同一のデータ構造に入れた場合、データの取り扱いは統一性が取り易いが、クリニカルパスとプロセスデータとの判別はフラグによるしかない。逆に、別のデータ構造に入れた場合、診療記録とクリニカルパスとの判別は容易だが、データを統一的に扱うためには、両方を入れたテーブルを一時的に作成するか、分析ソフトウェアの内部データに両者を入れるかもしくはプログラムに統一的に扱う機能を入れる必要がある。なお、図4にはスタースキーマを採用したデータ構造を例示したが、この構造に限らない。例えば、患者テーブル中の診断名等に関し、診断群分類等を記述するためのテーブルを付加し、スノーフレークスキーマとしても良い。この場合、テーブルの修正等は容易になるが、データ抽出・検索等に関しては、結合すべきテーブルが増加するために速度が低下することもある。データ構造は、テーブル修正頻度や要求されるデータ抽出レスポンス時間に応じて変更され得る。
図5は、本クリニカルパス作成方法の代表的な画面遷移を示す。診療プロセス表示画面51では左側に診療プロセスを表している。横軸は入院からの日数、縦軸は診療項目、濃淡はその実施量を表している。右側は患者毎の実施量を表しおり、横軸は患者、縦軸は実施量を取っている。図では、右の3人の患者が選択され、この3人の平均もしくは和のプロセスが右側の画面に表示されている。ここで、クリニカルパス作成ボタンを押すと、平均プロセスが計算されクリニカルパス初期値設定画面52が表示される。ここで例えば、閾値を0.5としてそれ以下の値を切り捨てて初期値を計算させると、クリニカルパス編集画面53にその初期値が設定される。クリニカルパスの作成者はこの画面上で数値や項目名を編集し、所望の結果が得られたら作成されたクリニカルパスを登録する。このように、分析画面と編集画面を連携させることで、クリニカルパスの効率的な作成が可能となる。
図6は、本クリニカルパス作成方法で登録されたクリニカルパスを検証する診療プロセス表示画面を2例表す。診療プロセス表示画面61、62共に登録されたクリニカルパスは最右端に表示されている。診療プロセス表示画面61では作成されたクリニカルパスとその基となった診療プロセスとの差分を計算し、画面左側にその差分を表示する。診療プロセス表示画面62では、作成されたクリニカルパスとその基となった診療プロセスとを同時に上下に表示し、相違点を比較しやすく表示している。これら表示機能により、作成されたクリニカルパスが実際の診療プロセスに合致したものか判断することが可能となる。
図7は、図3のフローチャートを修正し、クリニカルパスの作成効率を向上させる方法を示したものである。前述したクリニカルパス作成手段では、所望のクリニカルパスに適した患者群を選択することが効率向上の面で重要である。即ち、一様な診療プロセスを施された患者群が選択できれば、クリニカルパスの編集作業を低減することが可能である。一様なプロセスを抽出しやすくするために、本フローチャートでは、プロセス間に距離を定義し、その距離を用いてプロセスを分類する手段(クラスタリング)を付加する。ここで、プロセス間に定義される距離の概念図を図8に示す。プロセス集合81は、各患者に施された診療記録を時間と項目の2次元プロセスマトリクスで表したものの集合である。ここでプロセスマトリクスの各セルの値は、診療行為量(回数やコスト、診療報酬、薬剤投与量、検査値など)である。このプロセス集合81に、各セルを多次元空間の軸と見做したユークリッド距離(距離計算手段82)を導入し、プロセス距離空間83を構成する。すなわち、プロセス間の距離を、各セルの診療行為量の差の自乗和の平方根と定義する。ただし、通常、診療プロセスでは時間方向の誤差はある程度許容されるべきものなので、各プロセスを時間方向に鈍らせてからユークリッド距離を計算するなどの修正を加えても良い。この場合、鈍らせる量により、どの程度診療行為のタイミングに正確性が要求されているか調整することができる。例えば、全く鈍らせない場合には、時間的な正確性が要求され、鈍らせる量が大きい場合には、いつ診療行為を行ってもよいということになる。図9は、本手段の典型的な画面遷移を表す。診療プロセス分析ウィンドウ91にはプロセス集合が表示される。左側の2次元マトリクスは横軸を時間、縦軸を項目、診療量の平均を濃淡で表している。右側の1次元グラフは各患者の診療量を表す。プロセスクラスタリングボタンが押された場合、クラスタリング設定ウィンドウ92が起動される。このウィンドウでは、複数の距離の定義のうち、クラスタリング作成に使用する距離の選択と時間方向に鈍らせる量を表すパラメータの入力等を行う。入力に従い、プロセス間の距離が計算され、最近隣法などのクラスタリング手法を用いてプロセス分類が作成される。図では階層的クラスタリング手法が採られた場合を示しており、横軸は距離、上のグラフの縦軸はクラスタの個数、下のグラフの縦軸は各プロセスを表し樹状図によりクラスタの構成具合を表している。ユーザは、スライダ等の指示手段を操作して、所望のクラスタを決定し、登録ボタンを押して登録する。診療プロセス分析ウィンドウ93では、登録されたクラスタを用いて右側のグラフが変更されている。本手段の実施後、図5と同様にしてクラスタを選択し、平均プロセスの計算、クリニカルパスの初期値設定、編集、および登録を行う。このように、診療プロセス間に距離を定義し、その距離によるクラスタを予め作成しておくことで、対象とするプロセスを効率的に選択できるという効果がある。
【実施例3】
【0009】
図10は、実施例2で説明したプロセス間の距離を用いて、クリニカルパスと診療プロセスとの適合度を計算するフローチャートである。本計算方法は、図1のクリニカルパス分析環境15の診療プロセス分析機能とクリニカルパス分析機能で使用される。先ず、ユーザは適合度を計算するプロセスデータとクリニカルパスとを選択する。第1の評価基準では、選択されたプロセスデータの平均プロセスを計算し、これとクリニカルパスとの距離を計算し表示する。これにより、プロセスが平均的にどの程度クリニカルパスと差があるか判断することが可能となる。第2の評価基準では、各プロセスとクリニカルパスとの距離の自乗誤差を計算し表示する。これにより、各プロセスがクリニカルパスからどの程度分散しているか判断することが可能となる。第3の評価基準では、クリニカルパスからの距離に閾値を設け、その閾値以上の距離となったプロセスの個数または比率を計算し表示する。これにより、アウトライアと呼ばれるクリニカルパスから大きく外れた患者の人数又は比率を判断することが可能となる。以上、三つの評価基準もしくはそのうちの一つを用いて、クリニカルパスと診療プロセスとの適合度を評価できる。
本評価方法の結果は、診療プロセス評価機能では診療プロセスをコントロールする指標、クリニカルパス評価機能ではクリニカルパスを修正する指標となる。なお、本評価はクリニカルパス作成方法の中で、作成されたクリニカルパスの評価にも使用可能である。図3のフローチャートおよび図6のクリニカルパスの表示画面例では、クリニカルパスと診療プロセスとを表示してその差異を判断している。
本評価方法を使用することで、差異を数値として表す事が可能となり、クリニカルパスを更に修正するか判断することが容易となる。
【実施例4】
【0010】
図11は、最適クリニカルパス選択機能の典型的な画面遷移を表す。患者情報ウィンドウ111には、患者の基本的な情報が表示される。診療計画ウィンドウ112には、ある時点までの診療プロセスの記録と計画すべき診療プロセスを記入する欄が表示される。図では、横軸に日付、縦軸に診療項目がとられ、各セルには診療項目をどの程度の量実施したかが示されている。例えば、2/5にはAという診療項目分類に属するA1という診療行為を5単位と、Dという診療項目分類に属するD1という診療行為を4単位行ったことが表示されている。2/9以降網線で示されている箇所は、まだ診療が行われておらず、これから診療計画を立案すべき部分である。最適クリニカルパス選択ボタンが押されたとき、患者の基本的診療情報(診断名、手術名、性別、年齢、人種、既往歴、薬歴など)の全部もしくは一部と、ある時点(この例では、2/8)までの診療記録を条件として、類似した症例分類を抽出し、それに関連したクリニカルパスを図1で示した症例分類・クリニカルパス関連DBから抽出する。類似した症例分類を計算方法は、患者の基本的診療情報が同一もしくは年齢等はある一定範囲に入り、ある時点までの診療プロセスが実施例2で説明した距離を用い、その距離の近さで症例分類を抽出すればよい。ここで、抽出する症例分類は複数あってよい。また、抽出した症例分類に関連するクリニカルパスも複数あってよい。例えば、同一の症例分類であっても、未分類の部分に関して複数のクリニカルパスを持ちうるし、また医療機関の設備的な制約等によっても複数のクリニカルパスが存在し得るからである。なお、複数のクリニカルパスが表示される場合、類似度等により優先度を付して表示を行っても良い。医師等のユーザは、複数のクリニカルパスが表示されている場合には、そのうちの一つを選択する。選択されたクリニカルパスに応じて、診療計画を立案すべき箇所にデータが挿入され表示される。ユーザは、患者の状態や設備の空き状況などを加味して、診療計画ウィンドウ113上で挿入されたデータを編集する。この後、予約可能な診療行為等は予約オーダーをこの画面上から発行することも可能である。本機能により、患者の基本的な診療情報だけでなく、ある時点までの患者の状態や患者に行った診療記録に応じた最適なクリニカルパスの選択、およびそれを元に患者に適した診療計画の作成が可能となる。
【実施例5】
【0011】
図12は、クリニカルパス運用支援サービスの概略図である。図中CPはクリニカルパスを表す。クライアント医療機関(CP非作成)121とクライアント医療機関(CP作成)122は本サービスのクライアント、クリニカルパス運用支援サービス機関123は本サービスのサーバ、クリニカルパス提携/公開機関124は本サービスと提携した他のサーバまたはクリニカルパス等を公開している機関である。図中に箇条書きしてあるのは各機関で実施する項目を表し、矢印の横に記してある項目は、流通する情報を表している。クライアント医療機関(CP非作成)121では、患者情報・診療プロセスの登録を行い、患者情報と診療プロセスがクリニカルパス運用支援サービス機関123に送出される。クリニカルパス運用支援サービス機関123では、送出されたデータを受け付け、最適なクリニカルパスを選択し、選択した最適クリニカルパスをクライアント医療機関(CP非作成)121に返送する。また、クリニカルパス運用支援サービス機関は、各クライアント医療機関の設備等の制約条件や診療方針に従って、クリニカルパスをカスタマイズして返送するサービスを行う。さらに、クリニカルパス運用支援サービス機関では、各クライアントから集められた診療プロセスを用いて、症例分類・クリニカルパスの作成や修正、蓄積を行う。蓄積された情報は、最適クリニカルパスの選択や症例分類・クリニカルパスの配信に使用される。また、クリニカルパス運用支援サービス機関では、各クライアントから集められた診療プロセスを用いて診療プロセス評価を行い、診療プロセス評価結果を各医療機関に送出する。この際、診療プロセス評価は、集められた診療プロセスを記憶されている症例分類に分類し、各分類に関連付けられたクリニカルパスとの距離から計算される適合度を計算し、症例分類毎の適合度を計算することで行われる。また、クリニカルパス運用支援サービス機関では、各クライアントから集められた診療プロセスを用いてクリニカルパス評価を行い、クリニカルパスを修正する。クライアント医療機関(CP作成)122では、クライアント医療機関(CP非作成)121と同様なサービスを受ける。それ以外では、独自に症例分類・クリニカルパスを作成・変更し、これをクリニカルパス運用支援サービス機関に登録する。クリニカルパス運用支援サービス機関では、登録された情報を元に症例分類・クリニカルパスを蓄積・配布・修正等を行う。また、集められた診療プロセスを元に、登録されたクリニカルパスの評価を行い、評価結果をクライアント医療機関(CP作成)122に送出する。
なお、クライアント医療機関が有する機能は様々な場合が考えられる。例えば、最適クリニカルパス選択や診療プロセス評価も独自に行う場合などが考えられる。また、クリニカルパス運用支援サービス機関は医療機関を兼ねる場合も考えられる。
クライアントからサーバへの対価は、固定額、クリニカルパスの使用量に応じた額、サービス項目の契約数や使用量に応じた額などが考えられる。また、クライアント医療機関(CP作成)がクリニカルパスを登録した場合、登録したクリニカルパスの使用量に応じて対価を減額もしくは逆に対価を支払うことも考えられる。
このように、複数の医療機関から診療情報等を集積することで、クリニカルパスや症例分類の質や精度を向上でき、医療機関において診療の質や効率向上が可能となる。また、複数の医療機関を比較することで、改善すべき点を見つけられるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のクリニカルパス運用支援情報システムの概念図である。
【図2】本発明のクリニカルパス作成方法の概念図である。
【図3】本発明のクリニカルパス作成手段の典型的なフローチャートである。
【図4】本発明のプロセスとクリニカルパスのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】本発明のクリニカルパス作成方法の代表的な画面遷移を表す図である。
【図6】本発明のクリニカルパス作成方法で作成されたクリニカルパスの検証画面例である。
【図7】本発明のクリニカルパス作成手段にプロセスクラスタリングを付加した場合の典型的なフローチャートである。
【図8】プロセス間への距離の導入方法を表す概念図である。
【図9】本発明のクリニカルパス作成手段にプロセスクラスタリングを付加した場合の代表的な画面遷移を表す図である。
【図10】プロセス間の距離を用いて、クリニカルパスと診療プロセスとの適合度の計算方法を表すフローチャートである。
【図11】本発明の最適クリニカルパス選択機能の典型的な画面遷移を表す図である。
【図12】本発明のクリニカルパス運用支援サービスの概略図である。
【符号の説明】
【0013】
11.電子カルテ
12.電子カルテDB
13.セントラルDWH
14.アドミニストレーション
15.クリニカルパス分析環境
16.症例分類・クリニカルパス関連DB
17.最適クリニカルパス選択機能
18.外部連携インタフェース
19.公開/提携症例分類・クリニカルパス関連DB
41.プロセステーブル
42.患者テーブル
43.診療行為項目テーブル
51−53.診療プロセス表示画面
61、62.診療プロセス表示画面
81.プロセス集合
82.距離計算手段
83.プロセス距離空間
91、93.診療プロセス表示ウィンドウ
92.クラスタリング設定ウィンドウ
111.患者情報ウィンドウ
112、113.診療計画ウィンドウ
121.クライアント医療機関(クリニカルパス非作成)
122.クライアント医療機関(クリニカルパス作成)
123.クリニカルパス運用支援サービス機関
124.クリニカルパス公開/提携機関。
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野における情報システムや情報提供サービスに関する。特に、クリニカルパス(標準的もしくは最適な診療プロセス)を用いた診療記録分析結果の診療へのフィードバック、クリニカルパスの作成、クリニカルパスと診療プロセス記録の適合度評価、最適なクリニカルパスの選択を行うソフトウェア、及びそのソフトウェアを搭載する医療情報システム,その医療情報システムを用いた医療情報提供サービスに関する。
【背景技術】
【0002】
クリニカルパスに関する従来技術について説明する。クリニカルパスは標準的もしくは最適な診療プロセスを指し、クリティカルパスと呼ばれることもある。また、クリニカルガイドラインと呼ばれる最適な診療行為を行うための診療指針があるが、本明細書ではこれもクリニカルパスに含めて考える。なお、ここで、診療プロセスとは一連の診療行為を表す。クリニカルパスに関しては、例えば、「ナーシングインフォマティクス」、167−183頁、スプリンガー社、1995年発行(”Nursing Informatics”、Springer−Verlag、pp.167−183、1995)、「クリティカル・パス」、文光堂、1998年発行などが参考となる。以下、本発明に関連する従来例について詳細に説明する。
(従来例1)診療記録の分析方法および分析システムに関する従来例について説明する。特開2000−181981では、時間情報を伴った形式でデータを蓄積し、時間情報を用いた診療記録の抽出と分析を行う方法が記載されている。特開2001−101296には、ある患者に対する診療記録を時系列に一画面に表示するシステムが記載されている。第17回医療情報学連合大会予稿集、140−141頁、1997年発行に記載されている方法は、診療記録の統計量を計算し、時系列に表示するものである。
(従来例2)クリニカルパス作成に関する従来例について説明する。クリニカルパス作成では、対象とする症例について経験豊富な医師や看護師等からなるクリニカルパス作成チームが作られ、経験とカルテ検索、文献検索によってクリニカルパスを決定していくのが一般的である。本方法については前記文献「クリティカル・パス」に記載されている。
(従来例3)診療プロセスとクリニカルパスの適合度を求める従来例について説明する。診療プロセスがクリニカルパスから外れる場合や他のクリニカルパスに変更する場合、その出来事をバリアンス(変動)と呼ぶ。これを分析することをバリアンス分析と呼び、診療プロセスがクリニカルパスにどの程度沿っているかを示す指標が得られる。例えば、バリアンス毎の回数や頻度などが指標として計算され、あるバリアンスが起きる頻度が高い等といった情報が得られる。なお、本方法については、前記文献「クリティカル・パス」に記載されている。
(従来例4)患者に適したクリニカルパスの選択方法に関する従来例について説明する。特開2001−273362には、病名、年齢、性別などの患者分類項目を入力し、その条件に合致した医療行為指針やクリニカルパスをデータベースから取得する方法が記載されている。また、クリニカルパスではないが、患者に適した診療方法を選択する方法が特開2001−118014に記載されている。この方法は、患者へのある時点までの診療記録に類似した診療記録を抽出するものである。
(従来例5)クリニカルパスに沿った診療を支援する方法の従来技術について説明する。特許2706645、特許2815346には、患者に行った診療記録とこれから行うべき診療行為を表形式にして表示する方法が記載されている。また、特開2001−290885には、クリニカルパスを用いて、患者に行う診療オーダーを一括発行可能なシステムについて記載されている。
【非特許文献1】「ナーシングインフォマティクス」、167−183頁、スプリンガー社、1995年発行(”Nursing Informatics”、Springer−Verlag、pp.167−183、1995)
【非特許文献2】「クリティカル・パス」、文光堂、1998年発行
【非特許文献3】第17回医療情報学連合大会予稿集、140−141頁、1997年発行
【特許文献1】特開2000−181981
【特許文献2】特開2001−101296
【特許文献3】特開2001−273362
【特許文献4】特開2001−118014
【特許文献5】特許2706645
【特許文献6】特許2815346
【特許文献7】特開2001−290885
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記従来技術(従来例1)では診療記録の蓄積や分析に重点が置かれ、分析結果を診療に効率良くフィードバックする方法や情報システムについて考慮されていなかった。また、(従来例5)では、診療実施支援に重点が置かれ、診療記録の分析結果を反映する方法について考慮されていなかった。
前記クリニカルパス作成の従来技術(従来例2)では、大部分の作業を手作業で行うため、効率面で問題があった。また、経験やカルテ検索結果に立脚するため、偏りやサンプリングによる情報不足のために現実から乖離したクリニカルパスが作成され得るという問題があった。また、診療記録の時系列表示技術(従来例1)を併用すれば、ユーザが表示結果を見ながらクリニカルパスを作成することができたが、クリニカルパスと分析結果の比較等を別途実施せねばならず、効率が悪いという問題があった。また、病名や性別、年齢といった患者の基本的な情報に依って診療プロセスを抽出した場合、本来異なった症例に関する診療プロセスも抽出結果に入り込み、その影響を排除しながらクリニカルパスを作成しなければならなかった。
前記診療プロセスの評価技術(従来例3)では、クリニカルパス作成と共に生じうるバリアンスを設定しなければならなかった。このため、クリニカルパス毎に診療プロセスの評価基準が変わってしまい、横断的な評価ができないという問題点があった。同様に、この従来技術では各クリニカルパスを個別評価することは可能だが、複数のクリニカルパスを横断的に評価し、比較することができないという問題点があった。
前記クリニカルパスの選択技術(従来例4)では、病名、年齢、性別などの患者の基本的な情報をパラメータとして適切なクリニカルパスを抽出しようというものだが、この方法では治療の進行や患者状態の経時変化に応じて適切なクリニカルパスを選択することができなかった。また、医療機関によって設備の有無や可能な術式といった制約や治療方針といった条件についても考慮されていなかった。また、類似した診療記録を抽出してくる方法では、必ずしも抽出結果が最適な診療プロセスとは限らないという問題があった。
本発明の目的は、診療記録などの分析結果を効率良く診療にフィードバックする方法および情報システムを提供することにある。特に、クリニカルパスの簡便な作成方法、クリニカルパスと診療プロセスとの適合度の評価方法、最適なクリニカルパスの選択方法を提供することが目的である。また、このような機能を備えた医療情報提供サービスを提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するために、本発明のクリニカルパス運用支援情報システムは、図1に示すように、診療記録やコスト情報等のデータを分析し、クリニカルパス作成や各種評価を行うクリニカルパス分析環境15を持つ。特に、この分析環境には次の三つの機能の全部または一部を有する。一つ目の機能は、診療記録やコスト情報等のデータを分析して症例分類とクリニカルパスを作成し、それを症例分類・クリニカルパス関連DB16に蓄積する症例分類・クリニカルパス作成機能である。二つ目の機能は、診療プロセス記録とクリニカルパスとの差異を計算する診療プロセス評価機能である。三つ目の機能は、診療プロセス記録とクリニカルパスとの差異を計算し、それを元にクリニカルパスの評価や変更を行うクリニカルパス評価機能である。本環境と前記機能により、診療時に参照しやすい形式で診療記録の分析結果が蓄積可能となる。
特に、症例分類・クリニカルパス作成機能では、図2に示すような診療プロセスの選択手段、選択されたプロセスの平均プロセス計算手段、前記平均プロセスのクリニカルパス初期値設定手段、クリニカルパス編集手段、および作成したクリニカルパスの登録手段を備える。これにより、現実の診療に即したクリニカルパスの作成を容易にすることが可能となる。また、診療プロセスの選択手段には、診療プロセスの統計量を、時間と項目からなる2次元マトリクスと各診療プロセスの統計量をあらわす1次元グラフに表示し、両グラフ上で関心領域の選択と関心領域に入る診療プロセスの統計量のみを表示する機能を備える診療プロセスの表示手段を用いても良い。これにより、診療プロセスの時系列パターンを観察しながらクリニカルパス作成に使用する診療プロセスを選択することが可能となる。また、診療プロセス間に距離を定義して距離による診療プロセスのクラスタリング手段を診療プロセス選択手段に付加しても良い。これにより、一様な診療プロセスを抽出することが容易となり、クリニカルパスの編集にかかる労力を軽減することが可能となる。
診療プロセス評価手段とクリニカルパス評価手段に、前記診療プロセス間の距離を使用し、診療プロセスとクリニカルパスとの距離から導き出される指標を導入しても良い。これにより、複数のクリニカルパスや症例分類を横断的に比較し、どのクリニカルパスを重点的に向上させる必要があるか、新規クリニカルパスを作成する必要があるか、どの診療プロセスをクリニカルパスに沿うように働きかける必要があるか、などの判断基準が得られる。
本発明のクリニカルパス運用支援情報システムは、図1に示すように患者の基本的な診断情報とある時点までの診療記録、医療機関の制約や治療方針の全て若しくは一部の情報を元にして最適なクリニカルパスを選択する最適クリニカルパス選択機能17を有してもよい。これにより症例分類・クリニカルパス関連DB16に蓄積されたクリニカルパスを活用することが容易となる。
さらに本発明のクリニカルパス運用支援情報システムによれば、図12に示すようなクリニカルパス運用支援サービスが可能である。本サービスでは、クライアントとなる医療機関から患者情報や診療プロセス等の情報を提供を受けて、当該患者に最適なクリニカルパスや症例分類・クリニカルパスの配信、診療プロセスの評価結果の配信、クリニカルパスや症例分類の向上を行う。本サービスにより、ある症例に関する診療プロセスデータの蓄積が複数の医療機関から集積されることで進み、該当する症例に関するクリニカルパスを向上させやすくなる。各医療機関は向上されたクリニカルパスを獲得でき、診療の質や効率を向上させることが可能となる。また、複数の医療機関を横断的に評価・比較可能となり、各医療機関の質向上の指標が得られる。
【発明の効果】
【0005】
以上説明したように、本発明によれば、診療記録を分析し結果を診療へとフィードバック可能な情報システムを構築することが可能となる。特に、クリニカルパスを介在させることで効率的に情報をフィードバックできるという顕著な効果を有する。また、本発明のクリニカルパス作成方法によれば、現実の診療プロセスに即したクリニカルパスの作成・修正を支援することが可能となる。本発明の最適クリニカルパス選択方法によれば、患者情報とある時点までの診療記録から最適なクリニカルパスを選択することが可能となる。本発明の診療プロセス評価方法とクリニカルパス評価方法によれば、診療記録とクリニカルパスとの差異を指標とすることで、クリニカルパスや診療の向上が可能となる。さらに本発明の情報システムを使用して、クリニカルパスを広範に流通させ、診療の質と効率の向上を支援可能なサービスを提供することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0007】
図1は、本発明のクリニカルパス運用支援情報システムの概念図である。電子カルテ11を用いて診療記録や検査値などが入力され、電子カルテDB(Database、データベース)12に蓄積される。なお、電子カルテの枠中に記載してあるのは電子カルテの代表的な機能である。SOAP入力機能は、診療記録をSubjective、Objective、Assessment、Progressに分類整理しながら入力するための機能である。クリニカルパス機能は、患者に適したクリニカルパスの参照・カスタマイズ・オーダー発行を可能にする機能である。なお、これらは代表的な機能であり、これら以外にも例えば、放射線科用の画像診断機能や病棟看護用の機能などが搭載されていても良い。また、本発明ではクリニカルパス機能は必須であるが、他の機能はなくても構わない。また、電子カルテ11で使用される端末は、診療室に固定されるデスクトップコンピュータや病棟や病院外で可動性をもって使用されるノート型コンピュータや携帯端末などが使用可能である。電子カルテDB12に蓄積されたデータは適当なタイミングでセントラルDWH(Data Warehouse、データウェアハウス)13に反映される。適当なタイミングとは、例えば、オーダー発行時や診療記録を入力し登録した時点、一日毎または毎定時、もしくはセントラルDWHがシステムダウンしているときには復旧時などである。これにより、電子カルテDB12とセントラルDWH13に記録されているデータは統一性がとられ、またセントラルDWH13の参照や分析などで高負荷がかかった場合でも、電子カルテDB12が独立しているため、診療記録入力のレスポンス低下を防ぐといった効果を奏する。セントラルDWH13には、電子カルテによる診療記録等の他、コストや診療報酬等も蓄積される。電子カルテDB12とセントラルDWH13の連携と、コストや診療報酬の入力などはアドミニストレーション14を介して行われる。なお、コストや診療報酬等は他の医事会計システムやオーダー発行システム、原価計算システムから自動的に転送、もしくはそれらシステムが有するDBと連携をとってもよい。これら情報が加味されることで、診療プロセスを収入やコスト、収益の観点からも分析可能となる。
これら、蓄積されたデータは各種分析環境で統計計算等を用いて分析される。そのうち、クリニカルパス分析環境15は本発明の特徴となる機能である。ここでは、セントラルDWH13に蓄積されたデータをクリニカルパスや診療プロセスの観点から分析を行い、診療へとフィードバックする情報を作成する。具体的には、クリニカルパス分析環境15の枠内に記述している機能を備える。症例分類・クリニカルパス作成機能は、セントラルDWH13に蓄積されたデータを分析し、症例分類とクリニカルパスを作成し、それを関連付けて症例分類・クリニカルパス関連DB16へ格納するものである。この機能により、実際の診療に立脚したクリニカルパスを作成できるという効果がある。なお、本機能の動作については、実施例2で詳述する。ここで、クリニカルパスを登録する際に、クリニカルパスの選択時に指標となる数値を一緒に登録しても良い。この数値としては、例えば、治癒率や期待される看護度の改善、当該クリニカルパス実施にかかる総コストや収入、利益などがある。これら数値もしくはそれから副次的に計算される指標を用いて、最適なクリニカルパスを選択することが可能となる。
診療プロセス評価機能では、セントラルDWH13から診療プロセスを抽出し、症例分類・クリニカルパス関連DB16から対応するクリニカルパスを選択し、抽出された診療プロセスがクリニカルパスからどの程度乖離しているか計算する機能である。計算結果はセントラルDWH13に記録され、電子カルテ11のクリニカルパス機能等で参照する。本機能により、クリニカルパスによるプロセスコントロールを強化すべき医療機関・科・医師や症例などを探索できるという効果がある。
クリニカルパス評価機能では、診療プロセス評価機能と同様の計算を行うが、評価結果をクリニカルパスの修正や選択に活かしていく点が異なる。このため、評価結果を症例分類・クリニカルパス関連DB16に記録し、最適クリニカルパス選択機能17でクリニカルパスを選択する際の評価基準の一つとする。また、クリニカルパスが実際の診療プロセスから著しく乖離している場合など、修正が必要な場合には症例分類・クリニカルパス作成機能に戻し、クリニカルパスを修正する。なお、この二つの機能で使用するクリニカルパスと診療プロセスとの差異を計算する手法については、実施例3で詳述する。本提案の情報システムにとって、診療プロセス評価機能とクリニカルパス評価機能は必須機能ではないが、これら機能があるとクリニカルパスの向上やマクロな観点からの診療の向上が可能となる。
公開/提携症例分類・クリニカルパス関連DB19は、症例分類・クリニカルパス関連DB16と同様に症例分類とクリニカルパスの情報が蓄積されている。外部連携インタフェース18は、二つのDB間のデータ交換や、公開/提携症例分類・クリニカルパス関連DB19の情報を元とした症例分類・クリニカルパス関連DB16の情報の修正、公開/提携症例分類・クリニカルパス関連DB19への情報発信を行う。
これにより、外部の情報を取り入れ、症例分類・クリニカルパス関連DBを向上させることが可能となる。
以上記述したようにクリニカルパス分析環境15により、クリニカルパスの作成や適用範囲、優先度等が症例分類・クリニカルパス関連DB16に蓄積される。最適クリニカルパス選択機能17では、この蓄積されたデータを基にして、患者に対する最適なクリニカルパスの選択やクリニカルパスの優先度計算を行う。患者に対してクリニカルパスを適用しようとする場合、電子カルテ11を用いて患者の性別・年齢・病名などの基本的な情報とある時点までの診療記録が電子カルテDB12に登録されている。これら患者情報と、医療機関や部署・医師等の制限や治療方針を用いて、症例分類・クリニカルパス関連DB16から最適なクリニカルパスを選択もしくは順位付けして表示する。特にある時点までの診療記録がクリニカルパス選択に使用されることで、患者の状態変化に即したクリニカルパスを動的に選択していくことが可能となる。なお、本機能の動作については実施例4で詳述する。
医師等は、表示されたクリニカルパスの中から適切なものを選択し、さらに必要であればカスタマイズして該当患者用のクリニカルパスを作成する。作成後、予めオーダー可能な診療行為については予約してオーダーを発行することも可能である。
本情報システムは、単一の医療機関に限定されたものではなく、複数の医療機関に向けたサービスも可能である。この場合、図1のクリニカルパス作成・分析・提供に関する機能を医療機関から独立させ、電子カルテ等の診療部分は複数の医療機関に散在することになる。独立した部分は、複数の医療機関に向けて該当する機能または該当する機能による結果を提供するクリニカルパス運用支援サービスを行う。この場合、各医療機関ではクリニカルパスのメンテナンス等をする手間が省力でき、また複数の医療機関のデータが集まってくるため、精度の高い症例分類やクリニカルパスの情報を得ることが可能となる。また、診療プロセス評価を受けることにより他医療機関との比較が可能となる。本サービスに関しては、実施例5で詳述する。
【実施例2】
【0008】
図2は、本発明のクリニカルパス作成方法を概念的に示した図である。本作成方法は、図1のクリニカルパス分析環境15の症例分類・クリニカルパス作成機能で使用される。プロセス集合の各プロセスは、行為の時間(経過日数)、項目(診療行為)、量の少なくとも三要素からなる診療行為の一連の実施記録である。ここで、量とは、行為を行った回数や時間、行為にかかるコスト、行為による報酬や利益などである。行為が検査など測定に関するものの場合、測定値を量として扱ってもよい。また、行為が投薬や注射などの場合、投与量を量として扱っても良い。図では、各プロセスを経過日数と項目を軸とし、量をセルの値とする2次元マトリクスとして表現している。このプロセス集合をプロセス表示手段を用いて表示し、プロセス選択手段を用いて関心のあるプロセス部分集合のみ選択する。プロセス表示手段としては、典型的には、時間と項目とからなる時系列パターンを表す2次元マトリクスと各プロセスの統計量を表す1次元グラフを用い、両グラフ上に関心領域の選択投影機能を備えた表示手段を用いる。これにより、1次元グラフ上で関心領域を設定することでプロセスを選択し、選択されたプロセスの平均的なプロセスを2次元マトリクスで観察することが可能となる。その結果、クリニカルパス作成に適したほぼ一様な診療プロセスを施された患者群を抽出することが可能となる。なお、プロセス選択手段には、患者の病名・性別・年齢・手術名・人種などの基本的な情報による患者選択手段を含んでも良い。選択されたプロセスの平均プロセスが平均プロセス計算手段によって計算され、クリニカルパス初期値設定手段によってこれがクリニカルパスの初期値とされる。クリニカルパス編集手段では、閾値処理や丸め処理などの数値演算と作成者による数値の変更や移動、新規項目の追加が行われ、クリニカルパスが作成される。作成されたクリニカルパスはクリニカルパス登録手段によってデータ保存され、クリニカルパス表示手段によって表示される。なお、クリニカルパス表示手段はプロセス表示手段と同一のものでよく、作成したクリニカルパスと記録されたプロセスとを表示・比較・分析可能な手段である。このように、クリニカルパスの初期値としてデータに基づいた平均診療プロセスが設定されることで、現実の診療に沿ったクリニカルパスの作成が容易になるという効果がある。また、2次元マトリクスと1次元グラフの両者を活用してプロセス集合を把握しやすく表示することで、対象となるプロセスを選択しやすくできるという効果がある。
図3は、本クリニカルパス作成手段の典型的なフローチャートを表す。クリニカルパス作成のために、先ずプロセスデータを選択し、選択されたプロセスはプロセス表示部に表示される。ユーザは、これを基にしてクリニカルパスを作成するか判断し、Noであれば再度プロセスデータの選択に戻る。Yesの場合、クリニカルパス作成部は選択プロセスの平均値を計算し、計算された平均プロセスがクリニカルパスの初期値として設定される。ユーザは、数値演算や数値の変更・移動・追加・削除等の操作によりクリニカルパスの編集を行い、所望のクリニカルパスを作成する。ユーザは、作成したクリニカルパスを登録するか判断し、Yesであればクリニカルパスを登録する。登録されたクリニカルパスはプロセス表示部でプロセス記録と共に表示される。作成者は、表示されたクリニカルパスとプロセス記録を比較してクリニカルパスを変更するか判断し、Yesであればクリニカルパス編集手段により編集し、所望のクリニカルパスが得られるまで繰り返す。なお、このフローチャートは典型的な処理の流れを示したもので、他の処理の流れもあることは言うまでもない。例えば、このフローチャートでは判断木を使って処理の分岐を記述したが、表示プログラムではイベントとイベントハンドラーを使って処理が選択されるのが一般的である。また、既存のクリニカルパスを変更する場合、既存のクリニカルパスと、選択されたプロセスの平均プロセスを併記し、既存のクリニカルパスを修正しやすくしてもよい。
図4は、プロセス集合とクリニカルパスのデータ構造の一例を示す図である。データ構造は、ファクトテーブルとディメンジョンテーブルとからなるスタースキーマをとっている。左側のファクトテーブルはプロセステーブル41からなる。
プロセステーブル41は患者ID、経過日数、診療項目と対応する診療量(回数、コスト等)を記録したものである。右側のディメンジョンテーブルは、患者の基本情報を記録した患者テーブル42と診療項目の内容を記述した診療項目テーブル43である。例えば、患者テーブル42には、患者IDがPat001の人は年齢が34で性別は女性、診断名は病名1であるといった情報が記載されている。また、患者ID=CP001は作成されたクリニカルパスを示している。この図では、患者テーブル42に、関連するクリニカルパスのIDを記載する欄が設けられている。これにより、どの患者群に対してどのクリニカルパスが関連しているのか判断することが可能となる。なお、図では関連クリニカルパスを一欄しか記述していないが、実際には複数の関連するクリニカルパスがある。例えば、診療を行う際に実際に使用したクリニカルパスや、クリニカルパス作成方法において元となった選択患者に振る当該クリニカルパス等がある。なお、関連クリニカルパスの欄は、患者とクリニカルパスとの関連性を明確にするために導入したが、必須項目ではない。また、本データ形式では患者の診療プロセスデータとクリニカルパスデータとを同一のデータ構造(プロセステーブル41と患者テーブル42)に入れているが、クリニカルパスデータを別のデータ構造に入れることも可能である。例えば、プロセステーブル41に混在させる代わりに、クリニカルパステーブルを作成し、同様の記録を行うことも可能である。同一のデータ構造に入れた場合、データの取り扱いは統一性が取り易いが、クリニカルパスとプロセスデータとの判別はフラグによるしかない。逆に、別のデータ構造に入れた場合、診療記録とクリニカルパスとの判別は容易だが、データを統一的に扱うためには、両方を入れたテーブルを一時的に作成するか、分析ソフトウェアの内部データに両者を入れるかもしくはプログラムに統一的に扱う機能を入れる必要がある。なお、図4にはスタースキーマを採用したデータ構造を例示したが、この構造に限らない。例えば、患者テーブル中の診断名等に関し、診断群分類等を記述するためのテーブルを付加し、スノーフレークスキーマとしても良い。この場合、テーブルの修正等は容易になるが、データ抽出・検索等に関しては、結合すべきテーブルが増加するために速度が低下することもある。データ構造は、テーブル修正頻度や要求されるデータ抽出レスポンス時間に応じて変更され得る。
図5は、本クリニカルパス作成方法の代表的な画面遷移を示す。診療プロセス表示画面51では左側に診療プロセスを表している。横軸は入院からの日数、縦軸は診療項目、濃淡はその実施量を表している。右側は患者毎の実施量を表しおり、横軸は患者、縦軸は実施量を取っている。図では、右の3人の患者が選択され、この3人の平均もしくは和のプロセスが右側の画面に表示されている。ここで、クリニカルパス作成ボタンを押すと、平均プロセスが計算されクリニカルパス初期値設定画面52が表示される。ここで例えば、閾値を0.5としてそれ以下の値を切り捨てて初期値を計算させると、クリニカルパス編集画面53にその初期値が設定される。クリニカルパスの作成者はこの画面上で数値や項目名を編集し、所望の結果が得られたら作成されたクリニカルパスを登録する。このように、分析画面と編集画面を連携させることで、クリニカルパスの効率的な作成が可能となる。
図6は、本クリニカルパス作成方法で登録されたクリニカルパスを検証する診療プロセス表示画面を2例表す。診療プロセス表示画面61、62共に登録されたクリニカルパスは最右端に表示されている。診療プロセス表示画面61では作成されたクリニカルパスとその基となった診療プロセスとの差分を計算し、画面左側にその差分を表示する。診療プロセス表示画面62では、作成されたクリニカルパスとその基となった診療プロセスとを同時に上下に表示し、相違点を比較しやすく表示している。これら表示機能により、作成されたクリニカルパスが実際の診療プロセスに合致したものか判断することが可能となる。
図7は、図3のフローチャートを修正し、クリニカルパスの作成効率を向上させる方法を示したものである。前述したクリニカルパス作成手段では、所望のクリニカルパスに適した患者群を選択することが効率向上の面で重要である。即ち、一様な診療プロセスを施された患者群が選択できれば、クリニカルパスの編集作業を低減することが可能である。一様なプロセスを抽出しやすくするために、本フローチャートでは、プロセス間に距離を定義し、その距離を用いてプロセスを分類する手段(クラスタリング)を付加する。ここで、プロセス間に定義される距離の概念図を図8に示す。プロセス集合81は、各患者に施された診療記録を時間と項目の2次元プロセスマトリクスで表したものの集合である。ここでプロセスマトリクスの各セルの値は、診療行為量(回数やコスト、診療報酬、薬剤投与量、検査値など)である。このプロセス集合81に、各セルを多次元空間の軸と見做したユークリッド距離(距離計算手段82)を導入し、プロセス距離空間83を構成する。すなわち、プロセス間の距離を、各セルの診療行為量の差の自乗和の平方根と定義する。ただし、通常、診療プロセスでは時間方向の誤差はある程度許容されるべきものなので、各プロセスを時間方向に鈍らせてからユークリッド距離を計算するなどの修正を加えても良い。この場合、鈍らせる量により、どの程度診療行為のタイミングに正確性が要求されているか調整することができる。例えば、全く鈍らせない場合には、時間的な正確性が要求され、鈍らせる量が大きい場合には、いつ診療行為を行ってもよいということになる。図9は、本手段の典型的な画面遷移を表す。診療プロセス分析ウィンドウ91にはプロセス集合が表示される。左側の2次元マトリクスは横軸を時間、縦軸を項目、診療量の平均を濃淡で表している。右側の1次元グラフは各患者の診療量を表す。プロセスクラスタリングボタンが押された場合、クラスタリング設定ウィンドウ92が起動される。このウィンドウでは、複数の距離の定義のうち、クラスタリング作成に使用する距離の選択と時間方向に鈍らせる量を表すパラメータの入力等を行う。入力に従い、プロセス間の距離が計算され、最近隣法などのクラスタリング手法を用いてプロセス分類が作成される。図では階層的クラスタリング手法が採られた場合を示しており、横軸は距離、上のグラフの縦軸はクラスタの個数、下のグラフの縦軸は各プロセスを表し樹状図によりクラスタの構成具合を表している。ユーザは、スライダ等の指示手段を操作して、所望のクラスタを決定し、登録ボタンを押して登録する。診療プロセス分析ウィンドウ93では、登録されたクラスタを用いて右側のグラフが変更されている。本手段の実施後、図5と同様にしてクラスタを選択し、平均プロセスの計算、クリニカルパスの初期値設定、編集、および登録を行う。このように、診療プロセス間に距離を定義し、その距離によるクラスタを予め作成しておくことで、対象とするプロセスを効率的に選択できるという効果がある。
【実施例3】
【0009】
図10は、実施例2で説明したプロセス間の距離を用いて、クリニカルパスと診療プロセスとの適合度を計算するフローチャートである。本計算方法は、図1のクリニカルパス分析環境15の診療プロセス分析機能とクリニカルパス分析機能で使用される。先ず、ユーザは適合度を計算するプロセスデータとクリニカルパスとを選択する。第1の評価基準では、選択されたプロセスデータの平均プロセスを計算し、これとクリニカルパスとの距離を計算し表示する。これにより、プロセスが平均的にどの程度クリニカルパスと差があるか判断することが可能となる。第2の評価基準では、各プロセスとクリニカルパスとの距離の自乗誤差を計算し表示する。これにより、各プロセスがクリニカルパスからどの程度分散しているか判断することが可能となる。第3の評価基準では、クリニカルパスからの距離に閾値を設け、その閾値以上の距離となったプロセスの個数または比率を計算し表示する。これにより、アウトライアと呼ばれるクリニカルパスから大きく外れた患者の人数又は比率を判断することが可能となる。以上、三つの評価基準もしくはそのうちの一つを用いて、クリニカルパスと診療プロセスとの適合度を評価できる。
本評価方法の結果は、診療プロセス評価機能では診療プロセスをコントロールする指標、クリニカルパス評価機能ではクリニカルパスを修正する指標となる。なお、本評価はクリニカルパス作成方法の中で、作成されたクリニカルパスの評価にも使用可能である。図3のフローチャートおよび図6のクリニカルパスの表示画面例では、クリニカルパスと診療プロセスとを表示してその差異を判断している。
本評価方法を使用することで、差異を数値として表す事が可能となり、クリニカルパスを更に修正するか判断することが容易となる。
【実施例4】
【0010】
図11は、最適クリニカルパス選択機能の典型的な画面遷移を表す。患者情報ウィンドウ111には、患者の基本的な情報が表示される。診療計画ウィンドウ112には、ある時点までの診療プロセスの記録と計画すべき診療プロセスを記入する欄が表示される。図では、横軸に日付、縦軸に診療項目がとられ、各セルには診療項目をどの程度の量実施したかが示されている。例えば、2/5にはAという診療項目分類に属するA1という診療行為を5単位と、Dという診療項目分類に属するD1という診療行為を4単位行ったことが表示されている。2/9以降網線で示されている箇所は、まだ診療が行われておらず、これから診療計画を立案すべき部分である。最適クリニカルパス選択ボタンが押されたとき、患者の基本的診療情報(診断名、手術名、性別、年齢、人種、既往歴、薬歴など)の全部もしくは一部と、ある時点(この例では、2/8)までの診療記録を条件として、類似した症例分類を抽出し、それに関連したクリニカルパスを図1で示した症例分類・クリニカルパス関連DBから抽出する。類似した症例分類を計算方法は、患者の基本的診療情報が同一もしくは年齢等はある一定範囲に入り、ある時点までの診療プロセスが実施例2で説明した距離を用い、その距離の近さで症例分類を抽出すればよい。ここで、抽出する症例分類は複数あってよい。また、抽出した症例分類に関連するクリニカルパスも複数あってよい。例えば、同一の症例分類であっても、未分類の部分に関して複数のクリニカルパスを持ちうるし、また医療機関の設備的な制約等によっても複数のクリニカルパスが存在し得るからである。なお、複数のクリニカルパスが表示される場合、類似度等により優先度を付して表示を行っても良い。医師等のユーザは、複数のクリニカルパスが表示されている場合には、そのうちの一つを選択する。選択されたクリニカルパスに応じて、診療計画を立案すべき箇所にデータが挿入され表示される。ユーザは、患者の状態や設備の空き状況などを加味して、診療計画ウィンドウ113上で挿入されたデータを編集する。この後、予約可能な診療行為等は予約オーダーをこの画面上から発行することも可能である。本機能により、患者の基本的な診療情報だけでなく、ある時点までの患者の状態や患者に行った診療記録に応じた最適なクリニカルパスの選択、およびそれを元に患者に適した診療計画の作成が可能となる。
【実施例5】
【0011】
図12は、クリニカルパス運用支援サービスの概略図である。図中CPはクリニカルパスを表す。クライアント医療機関(CP非作成)121とクライアント医療機関(CP作成)122は本サービスのクライアント、クリニカルパス運用支援サービス機関123は本サービスのサーバ、クリニカルパス提携/公開機関124は本サービスと提携した他のサーバまたはクリニカルパス等を公開している機関である。図中に箇条書きしてあるのは各機関で実施する項目を表し、矢印の横に記してある項目は、流通する情報を表している。クライアント医療機関(CP非作成)121では、患者情報・診療プロセスの登録を行い、患者情報と診療プロセスがクリニカルパス運用支援サービス機関123に送出される。クリニカルパス運用支援サービス機関123では、送出されたデータを受け付け、最適なクリニカルパスを選択し、選択した最適クリニカルパスをクライアント医療機関(CP非作成)121に返送する。また、クリニカルパス運用支援サービス機関は、各クライアント医療機関の設備等の制約条件や診療方針に従って、クリニカルパスをカスタマイズして返送するサービスを行う。さらに、クリニカルパス運用支援サービス機関では、各クライアントから集められた診療プロセスを用いて、症例分類・クリニカルパスの作成や修正、蓄積を行う。蓄積された情報は、最適クリニカルパスの選択や症例分類・クリニカルパスの配信に使用される。また、クリニカルパス運用支援サービス機関では、各クライアントから集められた診療プロセスを用いて診療プロセス評価を行い、診療プロセス評価結果を各医療機関に送出する。この際、診療プロセス評価は、集められた診療プロセスを記憶されている症例分類に分類し、各分類に関連付けられたクリニカルパスとの距離から計算される適合度を計算し、症例分類毎の適合度を計算することで行われる。また、クリニカルパス運用支援サービス機関では、各クライアントから集められた診療プロセスを用いてクリニカルパス評価を行い、クリニカルパスを修正する。クライアント医療機関(CP作成)122では、クライアント医療機関(CP非作成)121と同様なサービスを受ける。それ以外では、独自に症例分類・クリニカルパスを作成・変更し、これをクリニカルパス運用支援サービス機関に登録する。クリニカルパス運用支援サービス機関では、登録された情報を元に症例分類・クリニカルパスを蓄積・配布・修正等を行う。また、集められた診療プロセスを元に、登録されたクリニカルパスの評価を行い、評価結果をクライアント医療機関(CP作成)122に送出する。
なお、クライアント医療機関が有する機能は様々な場合が考えられる。例えば、最適クリニカルパス選択や診療プロセス評価も独自に行う場合などが考えられる。また、クリニカルパス運用支援サービス機関は医療機関を兼ねる場合も考えられる。
クライアントからサーバへの対価は、固定額、クリニカルパスの使用量に応じた額、サービス項目の契約数や使用量に応じた額などが考えられる。また、クライアント医療機関(CP作成)がクリニカルパスを登録した場合、登録したクリニカルパスの使用量に応じて対価を減額もしくは逆に対価を支払うことも考えられる。
このように、複数の医療機関から診療情報等を集積することで、クリニカルパスや症例分類の質や精度を向上でき、医療機関において診療の質や効率向上が可能となる。また、複数の医療機関を比較することで、改善すべき点を見つけられるという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のクリニカルパス運用支援情報システムの概念図である。
【図2】本発明のクリニカルパス作成方法の概念図である。
【図3】本発明のクリニカルパス作成手段の典型的なフローチャートである。
【図4】本発明のプロセスとクリニカルパスのデータ構造の一例を示す図である。
【図5】本発明のクリニカルパス作成方法の代表的な画面遷移を表す図である。
【図6】本発明のクリニカルパス作成方法で作成されたクリニカルパスの検証画面例である。
【図7】本発明のクリニカルパス作成手段にプロセスクラスタリングを付加した場合の典型的なフローチャートである。
【図8】プロセス間への距離の導入方法を表す概念図である。
【図9】本発明のクリニカルパス作成手段にプロセスクラスタリングを付加した場合の代表的な画面遷移を表す図である。
【図10】プロセス間の距離を用いて、クリニカルパスと診療プロセスとの適合度の計算方法を表すフローチャートである。
【図11】本発明の最適クリニカルパス選択機能の典型的な画面遷移を表す図である。
【図12】本発明のクリニカルパス運用支援サービスの概略図である。
【符号の説明】
【0013】
11.電子カルテ
12.電子カルテDB
13.セントラルDWH
14.アドミニストレーション
15.クリニカルパス分析環境
16.症例分類・クリニカルパス関連DB
17.最適クリニカルパス選択機能
18.外部連携インタフェース
19.公開/提携症例分類・クリニカルパス関連DB
41.プロセステーブル
42.患者テーブル
43.診療行為項目テーブル
51−53.診療プロセス表示画面
61、62.診療プロセス表示画面
81.プロセス集合
82.距離計算手段
83.プロセス距離空間
91、93.診療プロセス表示ウィンドウ
92.クラスタリング設定ウィンドウ
111.患者情報ウィンドウ
112、113.診療計画ウィンドウ
121.クライアント医療機関(クリニカルパス非作成)
122.クライアント医療機関(クリニカルパス作成)
123.クリニカルパス運用支援サービス機関
124.クリニカルパス公開/提携機関。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者のある時点までの診療情報を受け付ける入力手段と、
データベースに登録されたクリニカルパスのうち、前記ある時点までの診療情報に類似した症例分類を抽出し、前記症例分類に関連付けられたクリニカルパスを少なくとも一つ選択するクリニカルパス選択手段と、
前記ある時点以降の診療プロセスの計画を表示手段に出力する診療計画作成支援システムにおいて、
予め前記入力手段により入力され複数の患者の診療プロセスを記憶する電子カルテデータベースと、
該診療プロセスを、時間軸と診療行為とからなる2次元マトリクスとして分類し、前記診療プロセスの内で選択された診療プロセスの平均プロセスを計算し、前記平均プロセスをクリニカルパスの初期値として設定するクリニカルパス分析手段と、
前記平均プロセスは出力して編集可能であって、該編集された平均プロセスをクリニカルパスとして登録し、前記クリニカルパスを適用すべき症例分類を前記クリニカルパスと関連付けて登録するデータベースと、
前記選択された診療プロセスは、
診療プロセス間に距離を定義し、前記距離により診療プロセスのクラスタリングを行う手段とを備え、
診療プロセスを選択する際には、前記診療プロセスのクラスタのうち一つまたは複数が選
択されることを特徴とする診療計画作成支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の診療計画作成支援システムにおいて、
前記記憶された診療プロセスと前記クリニカルパスとの適合度を計算する手段を備えることを特徴とする診療計画作成支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の診療計画作成支援システムにおいて、
前記診療プロセスと前記クリニカルパスの距離を計算する計算手段とを備え、
該計算手段は、前記診療プロセスと前記クリニカルパスとの距離の平均、分散、自乗誤差、ある特定の閾値以上となった診療プロセスの個数や比率の全部もしくは一部を計算することを特徴とする診療計画作成支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の診療計画作成支援システムにおいて、
前記プロセス間の距離は、各セルの診療行為の差の自乗和の平方根であって、
前記距離を計算する前に、前記各プロセスを時間方向に予め誤差を持たせることを特徴とする診療計画作成支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の診療計画作成支援システムにおいて、
前記選択された診療プロセスは、
時間と診療項目からなる2次元マトリクスを用いた診療プロセスの時系列パターンの統計量と、1次元グラフを用いた各診療プロセスの統計量とから、関心のある領域に入る診療プロセスが選択されることを特徴とする診療計画作成支援システム。
【請求項1】
患者のある時点までの診療情報を受け付ける入力手段と、
データベースに登録されたクリニカルパスのうち、前記ある時点までの診療情報に類似した症例分類を抽出し、前記症例分類に関連付けられたクリニカルパスを少なくとも一つ選択するクリニカルパス選択手段と、
前記ある時点以降の診療プロセスの計画を表示手段に出力する診療計画作成支援システムにおいて、
予め前記入力手段により入力され複数の患者の診療プロセスを記憶する電子カルテデータベースと、
該診療プロセスを、時間軸と診療行為とからなる2次元マトリクスとして分類し、前記診療プロセスの内で選択された診療プロセスの平均プロセスを計算し、前記平均プロセスをクリニカルパスの初期値として設定するクリニカルパス分析手段と、
前記平均プロセスは出力して編集可能であって、該編集された平均プロセスをクリニカルパスとして登録し、前記クリニカルパスを適用すべき症例分類を前記クリニカルパスと関連付けて登録するデータベースと、
前記選択された診療プロセスは、
診療プロセス間に距離を定義し、前記距離により診療プロセスのクラスタリングを行う手段とを備え、
診療プロセスを選択する際には、前記診療プロセスのクラスタのうち一つまたは複数が選
択されることを特徴とする診療計画作成支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の診療計画作成支援システムにおいて、
前記記憶された診療プロセスと前記クリニカルパスとの適合度を計算する手段を備えることを特徴とする診療計画作成支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の診療計画作成支援システムにおいて、
前記診療プロセスと前記クリニカルパスの距離を計算する計算手段とを備え、
該計算手段は、前記診療プロセスと前記クリニカルパスとの距離の平均、分散、自乗誤差、ある特定の閾値以上となった診療プロセスの個数や比率の全部もしくは一部を計算することを特徴とする診療計画作成支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の診療計画作成支援システムにおいて、
前記プロセス間の距離は、各セルの診療行為の差の自乗和の平方根であって、
前記距離を計算する前に、前記各プロセスを時間方向に予め誤差を持たせることを特徴とする診療計画作成支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の診療計画作成支援システムにおいて、
前記選択された診療プロセスは、
時間と診療項目からなる2次元マトリクスを用いた診療プロセスの時系列パターンの統計量と、1次元グラフを用いた各診療プロセスの統計量とから、関心のある領域に入る診療プロセスが選択されることを特徴とする診療計画作成支援システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−47154(P2008−47154A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271945(P2007−271945)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【分割の表示】特願2002−137918(P2002−137918)の分割
【原出願日】平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【分割の表示】特願2002−137918(P2002−137918)の分割
【原出願日】平成14年5月14日(2002.5.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]