説明

クロマトグラフ質量分析用データ処理装置

【課題】クロマトグラム上のピークの保持時間やマススペクトルの強度パターンに基づいた成分同定に際し、分析者の目視によるマススペクトル比較や抽出イオンクロマトグラム(EIC)の波形確認等の作業の効率改善を図る。
【解決手段】成分テーブル表示領域13に表示された成分テーブル上で分析者が任意の成分を指定すると、その成分の保持時間付近で特徴的な質量のEICが作成され、クロマトグラム表示領域11に表示される。また、指定された成分の保持時間における実測マススペクトルと該成分の純粋な標準マススペクトルとが同一の質量軸目盛りで上下に並べてマススペクトル表示領域12に表示される。さらに、マウスのドラッグ操作や拡大・縮小ボタン14により一方のマススペクトルの質量軸が拡大・縮小されると、他方のマススペクトルの質量軸も連動して拡大・縮小される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスクロマトグラフ(GC)や液体クロマトグラフ(LC)の検出器として質量分析装置(MS)を用いたクロマトグラフ質量分析装置で収集されたデータを処理するデータ処理装置に関し、さらに詳しくは、クロマトグラフ質量分析装置における画面表示処理や操作入力処理等のマンマシンインターフェイスに係るデータ処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
GC/MS分析では、被検試料中に含まれる各種成分をカラムを通して時間的に分離し、その分離された各成分から生成したイオンを四重極マスフィルタ等の質量分析器により質量電荷比(m/z)に応じて分離し検出器で検出する。試料に含まれる未知の化合物を同定する際には、通常、MSにおいて所定の質量範囲(m/z範囲)のスキャン測定が繰り返し実行され、各スキャン測定でそれぞれマススペクトルが作成される。各マススペクトルにおいて全てのイオン強度を合算した強度を時間経過に伴ってプロットしたものが全イオン電流クロマトグラム(TIC)である。
【0003】
このTIC上に現れるピークに対応した化合物を同定する場合、そのピークのピークトップが示す保持時間と、そのピークが出現した時点でのマススペクトルの特徴的なピークパターン(複数のm/zにおける信号強度比)とが利用される。例えば特許文献1に記載の装置では、保持時間に基づいてクロマトグラムピークに対応した同定候補となる化合物が挙げられ、その候補化合物について、データベースに登録されている標準マススペクトルとクロマトグラムピークの位置における実測マススペクトルとのピークパターンの類似性が判定され、その判定結果により化合物候補が絞られるようになっている。また、非特許文献1に記載のように、市販のGC/MSのデータ処理用ソフトウエアでは、分析者による化合物同定を支援するような様々な機能が搭載されている。
【0004】
上記のような同定に際してのマススペクトルの類似度の算出などの処理自体は自動的に行われるものの、同定作業の中で分析者の判断や確認が必要になることも多い。例えば、TICに現れるピークが単一の化合物に由来するものではなく、GCからほぼ同時に溶出する夾雑成分などが目的化合物に重なっている場合がよくある。そのために、多くの場合、実測マススペクトルと目的化合物の純粋な標準マススペクトルとを分析者が目視で比較して夾雑成分の存在の可能性を判断したり、目的化合物に特徴的なm/zの抽出イオンクロマトグラム(マスクロマトグラム)の保持時間付近におけるピーク形状を確認したりする作業が欠かせない。
【0005】
しかしながら、従来の装置では、上記のような同定に係る作業を分析者が行う際に、実測スペクトルと目的化合物の標準マススペクトルとを比較しにくい、或いは、比較するための作業が煩雑で面倒であるといった問題があった。また、TIC上の1つのピークに成分の重なりが疑われる場合に、確認したい抽出イオンクロマトグラムを表示させるためにそのm/z値を手動で入力する必要があり、作業が煩雑であるのみならずミスを引き起こす原因ともなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−431992号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「ガスクロマトグラフ質量分析計用ワークステーション GCMS Solutionの特長 ■確実な成分同定を支援」、[online]、株式会社島津製作所、[平成22年4月26日検索]、インターネット<URL : http://www.an.shimadzu.co.jp/gcms/gcmssol3.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、クロマトグラフ質量分析により収集されたデータを解析処理して成分同定を行う場合に、分析者による作業を簡素化して作業効率を改善すると共に、作業ミスを軽減することができるクロマトグラフ質量分析用データ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた本発明は、クロマトグラフ質量分析により時間経過に伴って繰り返し収集されたマススペクトルデータに基づいて、全イオンの経時変化を示す全イオン電流クロマトグラムと該クロマトグラム上の任意の時点における実測マススペクトルとをそれぞれ作成して表示画面上に表示するクロマトグラフ質量分析用データ処理装置において、
a)各種の成分についての標準マススペクトルを格納しておく記憶手段と、
b)前記記憶手段に格納されている各種成分の中で確認対象として指定された成分の標準マススペクトルと前記実測マススペクトルとを、質量軸の目盛りを揃えて上下に並べて配置して前記全イオン電流クロマトグラムと同一画面上に表示し、且つ、前記実測マススペクトル及び標準マススペクトルの質量軸方向の拡大・縮小操作を連動させるスペクトル表示処理手段と、
c)前記スペクトル表示処理手段により表示画面上に表示された標準マススペクトル上又は実測マススペクトル上の任意のピークの指示を受けて、前記マススペクトルデータに基づいて、その指示されたピークの質量に対する抽出イオンクロマトグラムを作成して前記実測マススペクトル及び標準マススペクトルと同一画面上に表示する抽出イオンクロマトグラム表示処理手段と、
を備えることを特徴としている。
【0010】
本発明に係るクロマトグラフ質量分析用データ処理装置は、上記各手段に対応した機能を実現する専用のコンピュータプログラムを、表示部、操作部(キーボード、ポインティングデバイスなど)などを含む汎用のコンピュータ上で実行することにより具現化することができる。
【0011】
また本発明に係るクロマトグラフ質量分析用データ処理装置において、上記記憶手段としては、NIST、Wiley、Drugなどの一般に提供されているデータベース(ライブラリ)、装置メーカが独自に作成してユーザに提供するデータベース、ユーザ自身が標準物質の測定により作成するデータベースなどのいずれを用いてもよい。
【0012】
本発明に係るクロマトグラフ質量分析用データ処理装置では、例えば分析者が再解析対象の測定データを指定すると、その測定データが読み込まれ、全イオン電流クロマトグラムが作成されて表示画面上の一部領域に表示される。分析者がその全イオン電流クロマトグラムに現れている任意のピークや任意の位置をポインティングデバイスなどにより指定すると、或いは、存在の有無を確認したい化合物の保持時間を特定すると、そのピークや位置に応じた測定時点或いは保持時間における実測マススペクトルが作成され、表示画面上の別の領域に表示される。
【0013】
一方、スペクトル表示処理手段は、確認対象として指定された成分の標準マススペクトルを記憶手段から読み出し、上記実測マススペクトルと質量軸の目盛りを揃えてその直上又は直下に用意された領域に表示する。両マススペクトルの質量軸方向の拡大・縮小操作は連動され、分析者が一方のマススペクトルの質量軸の拡大又は縮小操作を行うと、他方のマススペクトルの質量軸も同率で拡大・縮小する。したがって、上下の2つのマススペクトルの質量軸の目盛りは常に揃うことになる。このため、分析者は実測マススペクトルと標準マススペクトルとの強度パターンを容易に且つ的確に比較することができる。
【0014】
また上記のように表示された標準マススペクトル上の任意のピークを分析者が例えばポインティングデバイスで指示すると、抽出イオンクロマトグラム表示処理手段はこの指示を受けて、指示されたピークの質量に対する実測の抽出イオンクロマトグラムを作成して表示画面上に表示する。このときの抽出イオンクロマトグラムは全イオン電流クロマトグラムに重ねて(但し、線色を変える等、互いに判別可能な形式で)表示してもよいし、同一画面上の別の領域に独立に表示するようにしてもよい。マススペクトル上で複数のピークが指示された場合、指示された複数のピークの質量に対する抽出イオンクロマトグラムを作成して線色等を変えて1つのグラフに重ねて表示すればよい。これにより、マウスのクリック操作等の簡単な操作により、複数の抽出イオンクロマトグラムを描出してその形状を比較することができる。
【0015】
また本発明に係るクロマトグラフ質量分析用データ処理装置において、前記スペクトル表示処理手段は、前記標準マススペクトルに代えて、前記実測マススペクトルから強度が一律に調整された標準マススペクトルを差し引くことにより得られる差分マススペクトルを、実測マススペクトルと質量軸の目盛りを揃えて上下に並べて配置するとよい。上記の「強度が一律に調整された標準マススペクトル」は、標準マススペクトルに対し各ピークの強度が実測マススペクトルを上回らないように一律に決定された倍率を各強度に乗じることにより得られたものである。
【0016】
この構成によれば、実測マススペクトルと標準マススペクトルとについて、ピーク毎の強度の差が一目で分かるので、実測マススペクトルにおける確認対象成分以外の夾雑成分の重なりの有無の把握が一層容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るクロマトグラフ質量分析用データ処理装置によれば、クロマトグラム上の任意のピークに目的成分以外の夾雑成分が重なっているか否かを、マススペクトルの強度パターンに基づいて分析者が容易に、つまり簡単な操作で的確に確認できるようになる。また、マススペクトルの強度パターンの比較から成分の重なりが疑われる場合に、ごく簡単な操作でもって、疑わしいスペクトルピークに対応した抽出イオンクロマトグラムの波形を確認することができる。それによって、試料中に目的成分が存在するか否かの確認や含まれる成分の同定などの作業を行う際に、分析者が目視で行う確認作業の操作が簡単になって効率が改善され、また作業ミスも軽減されるために結果の信頼性も高まる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るデータ処理装置を含むGC−MSシステムの一実施例の概略構成図。
【図2】本実施例のGC−MSシステムで収集されるデータを模式的に示す図。
【図3】本実施例のGC−MSシステムにおける成分同定のための手順の一例を示すフローチャート。
【図4】本実施例のGC−MSシステムにおける表示画面の一例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るクロマトグラフ質量分析用データ処理装置を含むGC−MSシステムについて、添付図面を参照して説明する。図1は本実施例によるGC−MSシステムの概略構成図である。
【0020】
このシステムは、試料中の含有成分を時間的に分離するガスクロマトグラフ(GC)1と、分離された各成分を質量(厳密にはm/z)に応じて分離して検出する質量分析計(MS)2と、MS2で取得されたデータを処理するためのパーソナルコンピュータ(PC)3と、を備える。PC3には専用のデータ処理用ソフトウエアがインストールされており、このソフトウエアをPC3で実行することにより、図示したデータ処理部4、測定データ保存部5、標準データ保存部6などの機能が実現される。またPC3には、キーボードやマウス等のポインティングデバイスである操作部7及び、表示部8が接続されている。
【0021】
図2は上記GC−MSシステムにおいて分析時に収集されるデータについて説明するための模式図である。図1、図2により、GC−MSシステムにおけるデータ収集動作を説明する。
【0022】
GC1に試料が導入されると、試料中の含有成分はカラム(図示せず)を通過する間に時間的に分離されて溶出する。図2の例では、A、B、C、D、E、Fなる6種の成分が時間的にずれて溶出している。MS2では、所定の質量範囲の質量走査を伴うスキャン測定を一定時間間隔で繰り返す。1回のスキャン測定(質量走査)により、図2中に示すような1つの実測マススペクトルを構成するデータ(マススペクトルデータ)が得られる。したがって、所定時間間隔のスキャン測定の繰り返しによって、所定時間間隔でそれぞれ実測マススペクトルが得られる。1つの実測マススペクトルに含まれる全てのイオン強度を合算し、これを時間方向に並べたものが全イオン電流クロマトグラム(TIC)である。また、特定の質量のみに着目してその質量におけるイオン強度を時間方向に並べたものが抽出イオンクロマトグラム(EIC)である。図2の例では、時刻t1における実測マススペクトルに現れるピークに対応した質量M1におけるEICを示している。
【0023】
本実施例のGC−MSシステムでは、1つの試料がGC1に導入された時点(又はそれよりも所定時間遅れた時点)から該試料中の成分が溶出し終わってから適宜遅れた時点までの間、上述のようにマススペクトルデータが繰り返し収集され、それが1つのデータファイルに集約されて測定データ保存部5に格納される。測定データ保存部5に格納された測定データは分析者の指定によりデータ処理部4に読み込まれ、成分同定等のための再解析に供される。
【0024】
一方、標準データ保存部6には、様々な成分の保持時間、特徴的な質量、標準マススペクトル等が予め登録される。この標準データ保存部6としては、NIST、Wiley、Drugなどの一般に提供されているデータベースをそのまま使用したり、その一部を抽出して用いたりすることができるほか、装置メーカが独自に作成してユーザに提供するデータベース、或いはユーザ自身が標準物質の測定等に基づいて作成するデータベースなどを利用してもよい。
【0025】
次に、本実施例のGC−MSシステムにおける特徴的なデータ処理、さらに詳しくは、成分同定等の際の分析者による確認作業の支援のためのデータ処理について、図3のフローチャートに従って説明する。
また、図4はその処理に際して表示部8に表示される画面の一例を示す模式図である。図4に示すデータ再解析画面10には、クロマトグラム表示領域11、マススペクトル表示領域12、成分テーブル表示領域13などの各表示領域が、それぞれ区画され配置されている。各表示領域中に表示されるグラフやテーブルの詳細は後述する。
【0026】
分析者が解析対象のデータを特定するために操作部7で所定の操作を行うと、データ処理部4は測定データ保存部5に格納されている測定データを処理対象として読み込む(ステップS1)。またデータ処理部4は、読み込んだ測定データを取得する際に用いられた分析条件などが格納されたメソドファイルで指定されている成分に関する情報を標準データ保存部6から抽出し、成分名、質量、保持時間などが列挙された成分テーブルを作成して成分テーブル表示領域13に表示する(ステップS2)。この成分テーブル表示領域13に表示されている成分が、この再解析において同定したい成分又は存在の有無を確認したい成分である。
【0027】
分析者は表示されている成分テーブル上で確認したい成分の上にカーソルを移動させ、クリック操作することで、いずれかの成分を選択・指定する(ステップS3)。図4の例では、成分Dが指定されており、それによって成分Dの行が網掛け表示になって、選択されたことが識別可能となっている。データ処理部4は成分の選択指示を受け、その成分に対応した特徴的な質量情報を取得し、測定データに基づいてその質量のEICを作成する。そして、その成分の保持時間付近の所定時間範囲におけるEICを、クロマトグラム表示領域11に表示する(ステップS4)。
【0028】
またデータ処理部4は測定データに基づいて、選択された成分の保持時間における実測マススペクトルを作成し、マススペクトル表示領域12の上段12aに表示する。さらに、選択された成分に対応付けて予め登録されている標準マススペクトルを、実測マススペクトルと同一の質量軸目盛りでもってマススペクトル表示領域12の下段12bに表示する(ステップS5)。両マススペクトル共に、強度軸は最大強度が100%となるように規格化されたものである。質量軸は、マウスによるドラッグ操作により、又は各マススペクトルの右方に表示されている拡大・縮小ボタン14の操作により拡大又は縮小することが可能であるが、上下段12a、12bのいずれのマススペクトルで拡大・縮小が行われた場合でも他方のマススペクトルの質量軸もそれに連動して拡大・縮小する。そのため、拡大・縮小の操作に拘わらず、質量軸の目盛りは上下のマススペクトルで揃う。それにより、分析者は両マススペクトルの強度パターンを容易に比較することができ、例えば、下段12bの標準マススペクトル上でピークが存在しない質量において上段12aの実測マススペクトル上ではピークが存在していることや、両マススペクトル間で複数の同一質量のピークの強度比が大きく異なる、といった状況を的確に且つ一目で把握することができる。
【0029】
なお、マススペクトル表示領域12の上段12aに表示される実測マススペクトルは選択された成分の保持時間におけるものではなく、該保持時間近傍で実測TIC又はEIC上のピークトップの時間におけるマススペクトルを用いてもよい。
【0030】
実測マススペクトルと標準マススペクトルとの比較により、夾雑成分の重なりが疑わしいピークがあった場合、分析者はそれを確認するために、表示されている標準マススペクトル上又は実測マススペクトル上で確認したいピークの上又は近傍にカーソルを移動させ、ダブルクリック操作によりピークを選択指示する(ステップS6)。データ処理部4はこのピークの選択指示を受けて、該ピークに対応した質量のEICを測定データに基づいて作成し、クロマトグラム表示領域11に表示されているEICとは別の線色でこれに重ねて表示する(ステップS7)。クロマトグラム表示領域11に同時に表示可能なEICの数の上限(例えば8、12など)以下であれば、新たにピークが指定される毎に(ステップS8でYes)別のEICが追加的に重ねて表示される。これにより、夾雑成分の重なりが疑われるスペクトルピークや夾雑成分であることが疑われるピークの質量のEICを、簡単な操作で確認することができる。
【0031】
また、先に成分テーブル上で指定した成分とは異なる別の成分についても同様の確認を行いたい場合には(ステップS9でYes)、分析者は成分テーブル上で別の成分を指定すればよい。以上のようにして、本実施例のGC−MSシステムによれば、既に収集した測定データに基づく成分同定等の作業の際に、分析者は簡便な操作で、実測マススペクトルと標準マススペクトルとの強度パターンの比較や疑義のあるピークに対応した質量のEICの形状確認を行うことができる。
【0032】
上記実施例では、マススペクトル表示領域12内で実測マススペクトルの下に、指定された成分の標準マススペクトルをそのまま表示していたが、これに代えて、実測マススペクトルと標準マススペクトルとの強度差を示す差分マススペクトルを作成して表示するようにしてもよい。但し、単純に強度の差分をとると強度が負値になり得るから、標準マススペクトルの各ピークの強度が実測マススペクトルの各ピークの強度を上回らないように決められた倍率を標準マススペクトルの各ピークの強度に乗じ、これを実測マススペクトルの各ピークの強度から差し引くことで差分マススペクトルを求めるようにするとよい。これにより、両マススペクトルの強度差が一層把握し易くなり、特に、比較的解析の経験が浅い分析者でもミスのない解析が可能となる。
【0033】
また、上記実施例は本発明の一例にすぎず、本発明の趣旨に沿った範囲で適宜変形や修正、追加を行っても本願特許請求の範囲に包含されることは明らかである。
【符号の説明】
【0034】
1…ガスクロマトグラフ(GC)
2…質量分析計(MS)
3…パーソナルコンピュータ(PC)
4…データ処理部
5…測定データ保存部
6…標準データ保存部
7…操作部
8…表示部
10…データ再解析画面
11…クロマトグラム表示領域
12…マススペクトル表示領域
13…成分テーブル表示領域
14…拡大・縮小ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロマトグラフ質量分析により時間経過に伴って繰り返し収集されたマススペクトルデータに基づいて、全イオンの経時変化を示す全イオン電流クロマトグラムと該クロマトグラム上の任意の時点における実測マススペクトルとをそれぞれ作成して表示画面上に表示するクロマトグラフ質量分析用データ処理装置において、
a)各種の成分についての標準マススペクトルを格納しておく記憶手段と、
b)前記記憶手段に格納されている各種成分の中で確認対象として指定された成分の標準マススペクトルと前記実測マススペクトルとを、質量軸の目盛りを揃えて上下に並べて配置して前記全イオン電流クロマトグラムと同一画面上に表示し、且つ、前記実測マススペクトル及び標準マススペクトルの質量軸方向の拡大・縮小操作を連動させるスペクトル表示処理手段と、
c)前記スペクトル表示処理手段により表示画面上に表示された標準マススペクトル又は実測マススペクトル上の任意のピークの指示を受けて、前記マススペクトルデータに基づいて、その指示されたピークの質量に対する抽出イオンクロマトグラムを作成して前記実測マススペクトル及び標準マススペクトルと同一画面上に表示する抽出イオンクロマトグラム表示処理手段と、
を備えることを特徴とするクロマトグラフ質量分析用データ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のクロマトグラフ質量分析用データ処理装置であって、
前記スペクトル表示処理手段は、前記標準マススペクトルに代えて、前記実測マススペクトルから強度が一律に調整された標準マススペクトルを差し引くことにより得られる差分マススペクトルを、実測マススペクトルと質量軸の目盛りを揃えて上下に並べて配置することを特徴とするクロマトグラフ質量分析用データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−237311(P2011−237311A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109890(P2010−109890)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】