説明

グリコロニトリルの製造方法

【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
本発明は、グリコロニトリルの改良された製造方法に関する。
グリコロニトリルはヒダントイン類の製造中間体として有用な化合物である。
(従来の技術)
ホルマリンに塩基性触媒の存在下、青酸を反応させてグリコロニトリルを製造する一般的な方法は既によく知られている。
しかしながら、これらの公知方法は、副生物の生成を抑制し、目的生物の着色を防止し、且つ高純度の製品を高収率で製造するには未だ満足できるものではない。
(発明が解決しようとする問題点)
本発明の課題は、このような従来技術の問題点を解決し、副生物の生成を抑制しながら反応を進め、着色がなく、高純度のグリコロニトリルを高収率で製造する方法を提供することである。
(問題点を解決するための手段)
本発明者等は、上記課題解決のために鋭意検討を行った。その結果、上記課題解決のためには、ホルマリンと青酸およびグリコロニトリルが、安定に保持され、かつ反応が円滑に進行する条件の選定が極めて重要であることを見出した。
すなわち、反応中の反応液のpH、反応温度、反応後の反応液のpH、反応液の後処理条件、製品の保存条件等を厳しく制御することにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、触媒量の酢酸ナトリウムを溶解したホルマリン液にほぼ等モルの青酸を液温15〜30℃で、必要ならば、酢酸または酢酸ナトリウムを添加しながらpHを4.8〜6.0に保って滴下し同条件下で反応を行った後、硫酸で反応液のpHを2以下に調製し、次いで50℃以下、減圧下に残留青酸を除去することを特徴とするグリコロニトリルの製造方法である。
本発明の方法において、触媒量の酢酸ナトリウムを溶解したホルマリン液とは、ホルマリンに酢酸ナトリウムの結晶、もしくは酢酸ナトリウムの水溶液を加え、ホルマリン中に酢酸ナトリウムを溶解させたものである。
ここで、本発明に用いられるホルマリンは特に制限はなく、通常市販のホルマリン、パラホルムアルデヒドを水に溶解させたものなどが挙げられる。
このようなホルマリン液に溶解させる酢酸ナトリウムは触媒量でよい。通常、0.005%〜2重量%の範囲、好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。
この酢酸ナトリウムを溶解したホルマリン液に添加する青酸の量は、ホルマリンに対して1.0〜1.05モル倍程度で良い。
青酸の添加温度は、15〜30℃の範囲に保つことが必要である。15℃未満ではホルマリンとの反応速度が遅くなり、反応系に蓄積した青酸が一時に反応してその制御が困難になる恐れがある。また、30℃を越えると反応後のpHが徐々に上昇し生成したグリコロニトリルが分解し着色の原因となることがある。
青酸の滴下中は、ホルマリン液のpHを4.8〜6.0に保って行う。青酸の滴下により反応が進行し反応液のpHが変動するので、必要に応じて、酢酸または酢酸ナトリウムを添加し、反応液のpHを4.8〜6.0に保ちながら、青酸の滴下および反応を行うのが好ましい。反応液のpHが4.8未満では反応速度が小さくなり、また、6.0を越えると重合反応が起こり、製品が着色してくる場合があるので好ましくない。
反応時間は、上記反応条件の制御が十分に行われていれば、その影響は小さい。反応の完了に合わせて適宜決定すればよい。
反応終了後、反応液のpHを酸を用いて2以下、好ましくは1.5程度に調整する。この調整は、通常、硫酸で行うのが好ましい。
調整した後、ついで減圧下、50℃以下の温度で反応液中に残存する青酸を除去する。
この際、反応液の温度が50℃を越えると、グリコロニトリルの分解が生じる恐れがある。
除去された青酸はホルマリン液に吸収させ、つぎのグリコロニトリルの製造に使用することができる。
以上のようにして、グリコロニトリルを得る。得られたグリコロニトリルは、pH1.5程度の水溶液の形態で、20℃以下で安定に保存することができる。
(効果)
本発明の方法によれば、高純度のグリコロニトリルをほぼ定量的に製造することが可能である。
(実施例)
以下、実施例により本発明の方法を具体的に説明する。
実施例137重量%ホルマリン液1100gに酢酸ナトリウム0.8gを水4mlに溶解して加えたのち、液温15℃、pH4.9〜5.7に保って、98重量%青酸374gを加え、同条件下で12時間反応を行った。
反応後25重量%硫酸3.7gでpH1.5に調整し、次いで50℃、50mmHgで残留青酸を除去した。
青酸を除去した反応液は、無色透明でグリコロニトリル51.4重量%を含む水溶液1475gであり、ホルムアルデヒドに対するグリコロニトリルの収率は98%であった。
なお、除去した青酸は次のグリコロニトリルの製造に問題なく使用することができた。
実施例287重量%パラホルムアルデヒド509gに水591g、酢酸ナトリウム1.5gを加え、溶解後、液温25℃、pH4.8〜5.8に保って、98重量%青酸374gを加え、同条件下で5時間反応を行った。
反応後25重量%硫酸4.0gでpH1.5に調整し、次いで50℃、50mmHgで残留青酸を除去した。
青酸を除去した反応液は、無色透明でグリコロニトリル51.6重量%を含む水溶液1470gであり、ホルムアルデヒドに対するグリコロニトリルの収率は98%であった。
比較例137重量%ホルマリン1100gに酢酸ナトリウム0.8gを水4mlに溶解して加えた後、液温40℃、pH5.5に保って、98重量%青酸の滴下を開始した。
滴下途中、急激な温度の上昇に伴い反応液は黒色となり分解した。
比較例237重量%ホルマリン1100gに2N水酸化ナトリウム水溶液5mlを加え、液温15℃にて、98重量%青酸374gを加え、同条件下で12時間反応を行った。
この間、pHは9.4〜7.0であり、反応液は黄色に着色していた。ホルムアルデヒドに対するグリコロニトリルの収率は96%であった。
比較例3実施例1と同様に青酸との反応を行い、25重量%硫酸にてpHを1.5に調整した。
ついで、70℃、150mmHgで残留青酸の除去を開始したところ、反応液は黒色となり分解した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】触媒量の酢酸ナトリウムを溶解したホルマリン液に青酸を液温15〜30℃で、必要ならば、酢酸または酢酸ナトリウムを添加しながらpHを4.8〜6.0に保って滴下し同条件で反応を行った後、硫酸で反応液のpHを2以下に調整し、次いで50℃以下、減圧下に残留青酸を除去することを特徴とするグリコロニトリルの製造方法

【公告番号】特公平7−30004
【公告日】平成7年(1995)4月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願昭61−110837
【出願日】昭和61年(1986)5月16日
【公開番号】特開昭62−267257
【公開日】昭和62年(1987)11月19日
【出願人】(999999999)三井東圧化学株式会社