説明

ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法

【課題】ネガ現像において得られる親水性有機化合物で形成されるレジストパターンに適用出来るだけでなく従来のポジ現像で得られる疎水性化合物からなるレジストパターンにも適用出来るレジスト下層膜を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、下記一般式(1)で示される有機ホウ素化合物及びその縮合物からなる群から選ばれる化合物(A)一種以上と、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(B)一種以上とを含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであることを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
m0B(OH)m1(OR)(3−m0−m1) (1)
10m1011m1112m12Si(OR13(4−m10−m11−m12) (2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びこれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レジストパターン形成の際に使用する露光光として、1980年代には水銀灯のg線(436nm)又はi線(365nm)を光源とする光露光が広く用いられた。更なる微細化のための手段として、露光波長を短波長化する方法が有効とされ、1990年代の64Mビット(加工寸法が0.25μm以下)DRAM(ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリー)以降の量産プロセスには、露光光源としてi線(365nm)に代わって短波長のKrFエキシマレーザー(248nm)が利用された。しかし、更に微細な加工技術(加工寸法が0.2μm以下)を必要とする集積度256M及び1G以上のDRAMの製造には、より短波長の光源が必要とされ、10年ほど前からArFエキシマレーザー(193nm)を用いたフォトグラフィーが本格的に検討されてきた。当初ArFリソグラフィーは180nmノードのデバイス作製から適用されるはずであったが、KrFエキシマリソグラフィーは130nmノードデバイス量産まで延命され、ArFリソグラフィーの本格適用は90nmノードからである。更に、NAを0.9にまで高めたレンズと組み合わせて65nmノードデバイスの量産が行われている。次の45nmノードデバイスには露光波長の短波長化が推し進められ、波長157nmのFリソグラフィーが候補に挙がった。しかしながら、投影レンズに高価なCaF単結晶を大量に用いることによるスキャナーのコストアップ、ソフトペリクルの耐久性が極めて低いためのハードペリクル導入に伴う光学系の変更、レジスト膜のエッチング耐性低下等の種々問題により、Fリソグラフィーの開発が中止され、ArF液浸リソグラフィーが導入された。
【0003】
ArF液浸リソグラフィーにおいては、投影レンズとウエハーの間に屈折率1.44の水がパーシャルフィル方式によって挿入され、これによって高速スキャンが可能となり、NA1.3級のレンズによって45nmノードデバイスの量産が行われている。
【0004】
32nmノードのリソグラフィー技術としては、波長13.5nmの真空紫外光(EUV)リソグラフィーが候補に挙げられている。EUVリソグラフィーの問題点としてはレーザーの高出力化、レジスト膜の高感度化、高解像度化、低ラインエッジラフネス(LER)化、無欠陥MoSi積層マスク、反射ミラーの低収差化等が挙げられ、克服すべき問題が山積している。
【0005】
32nmノードのもう一つの候補の高屈折率液浸リソグラフィーは、高屈折率レンズ候補であるLUAGの透過率が低いことと、液体の屈折率が目標の1.8に届かなかったことによって開発が中止された。
【0006】
以上のように、汎用技術として用いられている光露光では、光源の波長に由来する本質的な解像度の限界に近づきつつある。そこで、近年、従来のアルカリ現像によるポジティブトーンによるパターン形成では達成できない非常に微細なホールパターンを、有機溶剤現像によるネガティブトーンによってパターン形成する有機溶剤現像が再び脚光を浴びている。これは、解像性の高いポジ型レジスト組成物を用いて有機溶剤現像によりネガパターンを形成するプロセスである。更に、アルカリ現像と有機溶剤現像の2回の現像を組み合わせることにより、2倍の解像力を得る検討も進められている。
【0007】
このような有機溶剤によるネガティブトーン現像用のArFレジスト組成物としては、従来型のポジ型ArFレジスト組成物を用いることができ、例えば特許文献1〜3にパターン形成方法が示されている。
【0008】
このようにして形成されたネガティブトーンのパターンを基板に転写する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜、即ちレジスト上層膜とエッチング選択性が異なるレジスト下層膜、例えばケイ素含有レジスト下層膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、上層レジストパターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングによりケイ素含有レジスト下層膜にパターンを転写し、更にケイ素含有レジスト下層膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0009】
この様な多層レジスト法で使用されるケイ素含有レジスト下層膜としては、CVDによるケイ素含有無機膜、例えばSiO膜(例えば、特許文献4等)やSiON膜(例えば、特許文献5等)、回転塗布により膜を得られるものとしては、SOG(スピンオンガラス)膜(例えば、特許文献6等)や架橋性シルセスキオキサン膜(例えば、特許文献7等)等が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−281974号公報
【特許文献2】特開2008−281980号公報
【特許文献3】特開2009−53657号公報
【特許文献4】特開平7−183194号公報
【特許文献5】特開平7−181688号公報
【特許文献6】特開2007−302873号公報
【特許文献7】特表2005−520354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、アルカリ現像液に溶解しない疎水性化合物からなるレジストパターンが形成されるポジ現像(アルカリ現像)と異なり、ネガ現像(有機溶剤現像)では脱保護反応によって酸性のカルボキシル基等を高濃度で有する親水性有機化合物からなるレジストパターンが形成されるため、従来のアルカリ現像用レジスト下層膜では上層レジストの性能を十分に発揮出来ない。
一方、ネガ現像で使用されるレジスト下層膜とポジ現像で使用されるレジスト下層膜が異なると、それぞれに専用の配管設備が必要となるため、経済的に不合理である。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ネガ現像において得られる親水性有機化合物で形成されるレジストパターンに適用出来るだけでなく従来のポジ現像で得られる疎水性化合物からなるレジストパターンにも適用出来るレジスト下層膜を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、少なくとも、下記一般式(1)で示される有機ホウ素化合物及びその縮合物からなる群から選ばれる化合物(A)一種以上と、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(B)一種以上とを含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであることを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を提供する。
m0B(OH)m1(OR)(3−m0−m1) (1)
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、2個のORが結合して環状有機基を形成してもよく、Rは酸不安定基で置換された水酸基又はカルボキシル基を有する有機基であり、2個のRが結合して環状有機基を形成してもよい。m0は1又は2、m1は0、1又は2であり、1≦m0+m1≦3である。)
10m1011m1112m12Si(OR13(4−m10−m11−m12) (2)
(式中、R13は炭素数1〜6の有機基であり、R10、R11、R12はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜30の1価の有機基であり、m10、m11、m12は0又は1であり、0≦m10+m11+m12≦3である。)
【0014】
本発明は、ケイ素含有膜にホウ素原子を導入することにより、ドライエッチングガスに対する反応性が高くなり、従来知られているケイ素含有材料より、上層フォトレジストに対して高いエッチング選択比を得ることが出来る。
【0015】
また、前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物が、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び下記一般式(3)で示される化合物(C)を含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであってもよい。
U(ORm2(ORm3(O)m4 (3)
(式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜30の有機基であり、m2+m3+m4はUの種類により決まる価数であり、m2、m3、m4は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素及びケイ素を除くものである。)
【0016】
本発明では、更にケイ素以外の金属酸化物を加えることにより、レジストパターンとの密着性が良好で保存安定性がよいケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を得ることができる。
【0017】
また、前記一般式(3)中のUが、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、リン、バナジウム、ヒ素、アンチモン、ニオブ、及びタンタルのいずれかであることが好ましい。
【0018】
上記のUとして示されている金属が含まれているケイ素含有レジスト下層膜は、Uが含まれていないケイ素含有レジスト下層膜に比べてエッチング速度が速く、薄膜化されたフォトレジストをエッチングマスクとして用いても、パターン転写が可能なレジスト下層膜を形成することができる。
【0019】
また、前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物には、沸点が180度以上の溶媒を含有することもできる。
【0020】
沸点が180度以上の高沸点溶剤を含有することにより、上層レジストパターンとの密着性が良好なケイ素含有レジスト下層膜を形成することができる。
【0021】
また本発明は、被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0022】
また本発明は、被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0023】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物により形成されたケイ素含有レジスト下層膜を使用してポジ現像でパターンを形成すると、上記のように、CVD膜や塗布膜の組み合わせを最適化することで、サイズ変換差を生じさせることなく上層レジストで形成されたパターンを基板上に形成出来る。
【0024】
また、前記フォトレジスト膜を形成する前のケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角と、前記露光後のフォトレジスト膜の未露光部に対応する前記ケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角との差が、10度以下であることが好ましい。
【0025】
フォトレジスト膜を形成する前のケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角と、露光後のフォトレジスト膜の未露光部に対応するケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角との差が、10度以下であると、上層レジストとケイ素含有レジスト下層膜の未露光部との接触角の差も10度以下とすることができ、ポジ現像において密着性が良好であるため、微細なパターンを形成することが出来る。
【0026】
また本発明は、被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、有機溶剤の現像液を用いて前記フォトレジスト膜の未露光部を溶解させることによりネガ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0027】
また本発明は、被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、有機溶剤の現像液を用いて前記フォトレジスト膜の未露光部を溶解させることによりネガ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにしてケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する。
【0028】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物により形成されたケイ素含有レジスト下層膜を使用してネガ現像パターンを形成すると、上記のように、CVD膜や塗布膜の組み合わせを最適化することで、サイズ変換差を生じさせることなく上層レジストで形成されたパターンを基板上に形成出来る。
【0029】
また、前記フォトレジスト膜の露光において、該フォトレジスト膜の露光部に対応する前記ケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角が、露光前と比較して10度以上低下することが好ましい。
【0030】
ケイ素含有レジスト下層膜の露光部の接触角が露光前に比べて10度以上低下すると、ネガ現像後のレジストパターンとの接触角の差が小さくなり、密着性が向上しパターン倒れが防止され、微細なパターンを形成することが出来る。
【0031】
また、前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかを成膜したものを用いることができる。
【0032】
この場合、前記被加工体を構成する金属がケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、及び鉄のいずれか、あるいはこれらの合金であることが好ましい。
【0033】
本発明のパターン形成方法を用いると、上記のような被加工体を加工してパターンを形成することが出来る。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明の組成物を用いて形成されたケイ素含有レジスト下層膜を使用すると、アルカリ現像においても、有機溶剤現像においても、形成されたレジストパターンは密着性が良好でパターン倒れが発生せず、表面ラフネスも良好なパターン形成が可能である。さらに、当該ケイ素含有レジスト下層膜は、有機材料との間で高いエッチング選択性が得られることから、形成されたフォトレジストパターンを、ケイ素含有レジスト下層膜、有機下層膜又はCVDカーボン膜へと順にドライエッチングプロセスを用いて転写可能である。特に、微細化が進んでいる近年の半導体装置製造プロセスでは、現像後のパターンの倒れを防止するため、上層レジストの膜厚が薄くなり、下層膜へのパターン転写が困難になってきている。しかし、本発明の組成物を用いて形成されたケイ素含有レジスト下層膜を用いると、薄膜化した上層レジストをエッチングマスクとして使用しても、ドライエッチング中の上層レジストパターンの変形を抑え、このパターンを基板に高い精度で転写することが出来る。
また、実際の半導体装置製造工程において、すべてのパターン形成工程がネガ現像に置き換えられるわけではなく、ごく一部の超微細な工程が置き換わるのであって、従来のポジ現像工程もそのまま残ると考えられる。その際、ネガ型専用レジスト下層膜、ポジ型専用下層膜と専用化すると装置的にも組成物の品質管理においても煩雑になる。そこで、ポジ型、ネガ型両方の工程において適用可能なレジスト下層膜材料であれば、装置的にも品質管理的にも合理的な運用が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明のパターン形成方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。
上述のように、従来、ポジ型上層レジストでは、露光前の塗布膜を形成する膜質と露光後のアルカリ現像で形成されたパターン(以後、ポジ現像パターンと呼ぶ)の膜質は同じ膜質である。そこでポジ現像パターンとケイ素含有レジスト下層膜との密着性を向上させるためには、純水に対する接触角(以後、接触角と呼ぶ)を上層レジストとケイ素含有レジスト下層膜の接触角を近似させることでパターンの密着性向上やラフネスの低減に効果があった。
【0037】
しかしながら、ネガ現像で得られるパターン(以後、ネガ現像パターンと呼ぶ)では、露光前の上層レジスト塗布膜とネガ現像パターンの膜質を比較すると、ネガ現像パターンは露光で発生した酸により酸不安定基(酸脱離基)が外れ、カルボキシル基やフェノール性水酸基等の親水性基の量が多くなり、レジストパターンの接触角が、成膜直後より親水性側、即ちより低い方向に変化している。そのため、露光前のフォトレジスト膜の接触角に合わせた従来のポジ型用のレジスト下層膜ではネガ型パターンとの接触角に乖離が生じ、パターンの倒れやラフネスに影響が発生することが判明した。
【0038】
そこで本発明者らは、ポジ現像パターンは未露光部の上層レジスト膜であり、ネガ現像パターンは露光部の上層レジスト膜であることを利用して、未露光部においては、上層のレジスト膜の接触角に近似した接触角を有し、露光部においては、露光後の上層レジストの接触角に近似した接触角を有することが出来れば、いずれのプロセスにおいても最適な表面状態をもつレジスト下層膜となることを見出した。そこで、露光部においてのみ接触角が低下するべくケイ素含有レジスト下層膜材料について鋭意検討したところ、酸不安定基を持つポリマーとそれを持たないポリマーを適切な量比で配合することにより、露光部においてのみ接触角の低下するケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を得ることができ、本発明を完成するに至った。更に、接触角を変化させる原動力となる有機基を含む膜中の構成元素を制御することにより、上層レジストとのエッチング選択比を最適化することが可能になり、エッチング性能とパターニング性能を両立することが可能となった。
【0039】
即ち、本発明は、少なくとも、下記一般式(1)で示される有機ホウ素化合物及びその縮合物からなる群から選ばれる化合物(A)一種以上と、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(B)一種以上とを含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであることを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を提供する。
m0B(OH)m1(OR)(3−m0−m1) (1)
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、2個のORが結合して環状有機基を形成してもよく、Rは酸不安定基で置換された水酸基又はカルボキシル基を有する有機基であり、2個のRが結合して環状有機基を形成してもよい。m0は1又は2、m1は0、1又は2であり、1≦m0+m1≦3である。)
10m1011m1112m12Si(OR13(4−m10−m11−m12) (2)
(式中、R13は炭素数1〜6の有機基であり、R10、R11、R12はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜30の1価の有機基であり、m10、m11、m12は0又は1であり、0≦m10+m11+m12≦3である。)
【0040】
本発明は、特許4716044号で既に知られているエッチング選択比の高いケイ素含有膜にホウ素原子を導入することにより、ドライエッチングガスに対する反応性が高くなり、従来知られているケイ素含有材料より、上層フォトレジストに対して高いエッチング選択比を得ることが出来る。
【0041】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物において、本発明で使用されるホウ素含有化合物(A)は、下記一般式(1)で示される有機ホウ素化合物及びその縮合物からなる群から選ばれる化合物である。
【0042】
m0B(OH)m1(OR)(3−m0−m1) (1)
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、2個のORが結合して環状有機基を形成してもよく、Rは酸不安定基で置換された水酸基又はカルボキシル基を有する有機基であり、2個のRが結合して環状有機基を形成してもよい。m0は1又は2、m1は0、1又は2であり、1≦m0+m1≦3である。)
【0043】
ここで、Rは炭素数1〜6の有機基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基等を例示出来る。
【0044】
尚、本発明において有機基とは、炭素を含む基の意味であり、更に水素を含み、また窒素、酸素、硫黄、ケイ素等を含んでもよい。
【0045】
上記一般式(1)中のRとして、以下のものを挙げることが出来る。なお、下記式中において、(B)はBとの結合箇所を示すために記載した。また、Bには、−OH又は−ORが結合している。
【化1】

【0046】
【化2】

【0047】
【化3】

【0048】
【化4】

【0049】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物において使用される化合物(B)は、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物である。
10m1011m1112m12Si(OR13(4−m10−m11−m12) (2)
(式中、R13は炭素数1〜6の有機基であり、R10、R11、R12はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜30の1価の有機基であり、m10、m11、m12は0又は1であり、0≦m10+m11+m12≦3である。)
【0050】
10、R11、R12の有機基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基等の非置換の1価炭化水素基、及びこれらの基の水素原子の1個又はそれ以上がエポキシ基、アルコキシ基、ヒドロキシ基等で置換された基や、−O−,−CO−,−OCO−,−COO−,−OCOO−が介在された基等の後述する一般式(4)で示される基、ケイ素−ケイ素結合を含む有機基等を挙げることができる。
【0051】
上記一般式(2)で示される化合物として、以下のものを挙げることが出来る。
m10=0、m11=0、m12=0であるテトラアルコキシシランとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン等を例示できる。
【0052】
m10+m11+m12=1であるトリアルコキシシランとして、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−iso−プロポキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、n−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリ−n−プロポキシシラン、i−プロピルトリ−iso−プロポキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ブチルトリ−nプロポキシシラン、n−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、sec−ブチルトリメトキシシラン、sec−ブチル−トリエトキシシラン、sec−ブチル−トリ−n−プロポキシシラン、sec−ブチル−トリ−iso−プロポキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリ−nプロポキシシラン、t−ブチルトリ−iso−プロポキシシラン、シクロプロピルトリメトキシシラン、シクロプロピルトリエトキシシラン、シクロプロピル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロプロピル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロブチルトリメトキシシラン、シクロブチルトリエトキシシラン、シクロブチル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロブチル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロペンチル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロヘキシル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリエトキシシラン、シクロヘキセニル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロヘキセニル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルエチル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリ−iso−プロポキシシラン、シクロオクタニルトリメトキシシラン、シクロオクタニルトリエトキシシラン、シクロオクタニル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロオクタニル−トリ−iso−プロポキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリメトキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリエトキシシラン、シクロペンタジエニルプロピル−トリ−n−プロポキシシラン、シクロペンタジエニルプロピル−トリ−iso−プロポキシシラン、ビシクロヘプテニルトリメトキシシラン、ビシクロヘプテニルトリエトキシシラン、ビシクロヘプテニル−トリ−n−プロポキシシラン、ビシクロヘプテニル−トリ−iso−プロポキシシラン、ビシクロヘプチルトリメトキシシラン、ビシクロヘプチルトリエトキシシラン、ビシクロヘプチル−トリ−n−プロポキシシラン、ビシクロヘプチル−トリ−iso−プロポキシシラン、アダマンチルトリメトキシシラン、アダマンチルトリエトキシシラン、アダマンチル−トリ−n−プロポキシシラン、アダマンチル−トリ−iso−プロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−iso−プロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリ−n−プロポキシシラン、ベンジルトリ−iso−プロポキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、トリルトリ−n−プロポキシシラン、トリルトリ−iso−プロポキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、フェネチルトリ−n−プロポキシシラン、フェネチルトリ−iso−プロポキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリ−n−プロポキシシラン、ナフチルトリ−iso−プロポキシシラン等を例示できる。
【0053】
m10+m11+m12=2であるジアルコキシシランとして、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジメチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジメチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジエチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−プロピル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−プロピル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピルジメトキシシラン、ジ−iso−プロピルジエトキシシラン、ジiso−プロピル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−iso−プロピル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−n−プロポキシシラン、ジ−n−ブチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチルジメトキシシラン、ジ−sec−ブチルジエトキシシラン、ジ−sec−ブチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−sec−ブチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジエトキシシラン、ジt−ブチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−t−ブチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロプロピルジメトキシシラン、ジ−シクロプロピルジエトキシシラン、ジ−シクロプロピル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロプロピル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロブチルジメトキシシラン、ジ−シクロブチルジエトキシシラン、ジ−シクロブチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロブチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロペンチルジメトキシシラン、ジ−シクロペンチルジエトキシシラン、ジ−シクロペンチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロペンチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジ−シクロヘキシル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキシル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキセニルジメトキシシラン、ジ−シクロヘキセニルジエトキシシラン、ジシクロヘキセニル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキセニル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキセニルエチルジメトキシシラン、ジ−シクロヘキセニルエチルジエトキシシラン、ジ−シクロヘキセニルエチル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロヘキセニルエチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロオクタニルジメトキシシラン、ジ−シクロオクタニルジエトキシシラン、ジシクロオクタニル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロオクタニル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジ−シクロペンタジエニルプロピルジメトキシシラン、ジ−シクロペンタジエニルプロピルジエトキシシラン、ジ−シクロペンタジエニルプロピル−ジ−n−プロポキシシラン、ジ−シクロペンタジエニルプロピル−ジ−iso−プロポキシシラン、ビス−ビシクロヘプテニルジメトキシシラン、ビス−ビシクロヘプテニルジエトキシシラン、ビス−ビシクロヘプテニル−ジ−n−プロポキシシラン、ビス−ビシクロヘプテニル−ジ−iso−プロポキシシラン、ビス−ビシクロヘプチルジメトキシシラン、ビス−ビシクロヘプチルジエトキシシラン、ビス−ビシクロヘプチル−ジ−n−プロポキシシラン、ビス−ビシクロヘプチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ビス−アダマンチルジメトキシシラン、ビス−アダマンチルジエトキシシラン、ビス−アダマンチル−ジ−n−プロポキシシラン、ビス−アダマンチル−ジ−iso−プロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニル−ジ−エトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニル−ジ−nプロポキシシラン、ジフェニル−ジ−iso−プロポキシシラン等を例示できる。
【0054】
m10=1、m11=1、m12=1であるモノアルコキシシランとして、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルエチルエトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、ジメチルベンジルメトキシシラン、ジメチルベンジルエトキシシラン、ジメチルフェネチルメトキシシラン、ジメチルフェネチルエトキシシラン等を例示できる。
【0055】
好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、iso−プロピルトリメトキシシラン、iso−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリメトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピル−ジ−メトキシシラン、ジ−n−ブチルジ−メトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルベンジルメトキシシラン、ジメチルフェネチルメトキシシラン等を例示できる。
【0056】
上記R10、R11、R12で表される有機基の別の例として、炭素−酸素単結合又は炭素−酸素二重結合を1以上有する有機基を挙げることができる。具体的には、エポキシ基、エステル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基からなる群から選択される1以上の基を有する有機基である。上記一般式(2)中の炭素−酸素単結合、炭素−酸素二重結合の1以上を有する有機基は、例として次の一般式(4)で示されるものを挙げることができる。
【0057】
(P−Q−(Sv1−Q−)−(T)v2−Q−(Sv3−Q− (4)
(上記式中、Pは水素原子、ヒドロキシル基、
【化5】

炭素数1〜4のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基、又は炭素数1〜6のアルキルカルボニル基であり、QとQとQとQは各々独立して−C(2q−p)−(式中、Pは上記と同様であり、pは0〜3の整数であり、qは0〜10の整数(但し、q=0は単結合であることを示す。)である。)、uは0〜3の整数であり、SとSは各々独立して−O−、−CO−、−OCO−、−COO−又は−OCOO−を表す。v1、v2、v3は、各々独立して0又は1を表す。これらとともに、Tはヘテロ原子を含んでもよい脂環又は芳香環からなる2価の基であり、Tの酸素原子等のヘテロ原子を含んでもよい脂環又は芳香環の例を以下に示す。TにおいてQとQと結合する位置は、特に限定されないが、立体的な要因による反応性や反応に用いる市販試薬の入手性等を考慮して適宜選択できる。)
【0058】
【化6】

【0059】
上記一般式(2)中の炭素−酸素単結合又は炭素−酸素二重結合を1以上有する有機基の好ましい例として、以下のものが挙げられる。なお、下記式中において、(Si)はSiとの結合箇所を示すために記載した。
【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
【化9】

【0063】
また、R10、R11、R12の有機基の例として、ケイ素−ケイ素結合を含む有機基を用いることもできる。具体的には下記のものを挙げることができる。
【0064】
【化10】

【0065】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び下記一般式(3)で示される化合物(C)を含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有してもよい。
U(ORm2(ORm3(O)m4 (3)
(式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜30の有機基であり、m2+m3+m4はUの種類により決まる価数であり、m2、m3、m4は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素及びケイ素を除くものである。)
【0066】
上記一般式(3)で表す化合物として以下のような化合物を例示出来るが、これに限られるものではない。
例えば、Uがホウ素の場合、上記一般式(3)で示される化合物は、上記一般式(1)で示される化合物とは異なるものであり、ボロンメトキシド、ボロンエトキシド、ボロンプロポキシド、ボロンブトキシド、ボロンアミロキシド、ボロンヘキシロキシド、ボロンシクロペントキシド、ボロンシクロヘキシロキシド、ボロンアリロキシド、ボロンフェノキシド、ボロンメトキシエトキシド、ホウ酸、酸化ホウ素等をモノマーとして例示できる。
【0067】
Uがアルミニウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、アルミニウムメトキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムプロポキシド、アルミニウムブトキシド、アルミニウムアミロキシド、アルミニウムヘキシロキシド、アルミニウムシクロペントキシド、アルミニウムシクロヘキシロキシド、アルミニウムアリロキシド、アルミニウムフェノキシド、アルミニウムメトキシエトキシド、アルミニウムエトキシエトキシド、アルミニウムジプロポキシエチルアセトアセテート、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムプロポキシビスエチルアセトアセテート、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、アルミニウム2,4−ペンタンジオネート、アルミニウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0068】
Uがガリウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、ガリウムメトキシド、ガリウムエトキシド、ガリウムプロポキシド、ガリウムブトキシド、ガリウムアミロキシド、ガリウムヘキシロキシド、ガリウムシクロペントキシド、ガリウムシクロヘキシロキシド、ガリウムアリロキシド、ガリウムフェノキシド、ガリウムメトキシエトキシド、ガリウムエトキシエトキシド、ガリウムジプロポキシエチルアセトアセテート、ガリウムジブトキシエチルアセトアセテート、ガリウムプロポキシビスエチルアセトアセテート、ガリウムブトキシビスエチルアセトアセテート、ガリウム2、4−ペンタンジオネート、ガリウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0069】
Uがイットリウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、イットリウムメトキシド、イットリウムエトキシド、イットリウムプロポキシド、イットリウムブトキシド、イットリウムアミロキシド、イットリウムヘキシロキシド、イットリウムシクロペントキシド、イットリウムシクロヘキシロキシド、イットリウムアリロキシド、イットリウムフェノキシド、イットリウムメトキシエトキシド、イットリウムエトキシエトキシド、イットリウムジプロポキシエチルアセトアセテート、イットリウムジブトキシエチルアセトアセテート、イットリウムプロポキシビスエチルアセトアセテート、イットリウムブトキシビスエチルアセトアセテート、イットリウム2、4−ペンタンジオネート、イットリウム2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0070】
Uがゲルマニウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、ゲルマニウムメトキシド、ゲルマニウムエトキシド、ゲルマニウムプロポキシド、ゲルマニウムブトキシド、ゲルマニウムアミロキシド、ゲルマニウムヘキシロキシド、ゲルマニウムシクロペントキシド、ゲルマニウムシクロヘキシロキシド、ゲルマニウムアリロキシド、ゲルマニウムフェノキシド、ゲルマニウムメトキシエトキシド、ゲルマニウムエトキシエトキシド等をモノマーとして例示できる。
【0071】
Uがチタンの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンプロポキシド、チタンブトキシド、チタンアミロキシド、チタンヘキシロキシド、チタンシクロペントキシド、チタンシクロヘキシロキシド、チタンアリロキシド、チタンフェノキシド、チタンメトキシエトキシド、チタンエトキシエトキシド、チタンジプロポキシビスエチルアセトアセテート、チタンジブトキシビスエチルアセトアセテート、チタンジプロポキシビス2、4−ペンタンジオネート、チタンジブトキシビス2、4−ペンタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0072】
Uがジルコニウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシジルコニウム、エトキシジルコニウム、プロポキシジルコニウム、ブトキシジルコニウム、フェノキシジルコニウム、ジルコニウムジブトキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、ジルコニウムジプロポキシドビス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート)等をモノマーとして例示できる。
【0073】
Uがハフニウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、ハフニウムメトキシド、ハフニウムエトキシド、ハフニウムプロポキシド、ハフニウムブトキシド、ハフニウムアミロキシド、ハフニウムヘキシロキシド、ハフニウムシクロペントキシド、ハフニウムシクロヘキシロキシド、ハフニウムアリロキシド、ハフニウムフェノキシド、ハフニウムメトキシエトキシド、ハフニウムエトキシエトキシド、ハフニウムジプロポキシビスエチルアセトアセテート、ハフニウムジブトキシビスエチルアセトアセテート、ハフニウムジプロポキシビス2、4−ペンタンジオネート、ハフニウムジブトキシビス2、4−ペンタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0074】
Uがビスマスの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシビスマス、エトキシビスマス、プロポキシビスマス、ブトキシビスマス、フェノキシビスマス等をモノマーとして例示できる。
【0075】
Uがスズの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシスズ、エトキシスズ、プロポキシスズ、ブトキシスズ、フェノキシスズ、メトキシエトキシスズ、エトキシエトキシスズ、スズ2、4−ペンタンジオネート、スズ2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート等をモノマーとして例示できる。
【0076】
Uがリンの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、トリメチルフォスファイト、トリエチルフォスファイト、トリプロピルフォスファイト、トリメチルフォスフェイト、トリエチルフォスフェイト、トリプロピルフォスフェイト、五酸化二リン等をモノマーとして例示できる。
【0077】
Uがバナジウムの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、バナジウムオキシドビス(2,4−ペンタンジオネート)、バナジウム2,4−ペンタンジオネート、バナジウムトリブトキシドオキシド、バナジウムトリプロポキシドオキシド等をモノマーとして例示できる。
【0078】
Uがヒ素の場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシヒ素、エトキシヒ素、プロポキシヒ素、ブトキシヒ素、フェノキシヒ素等をモノマーとして例示できる。
【0079】
Uがアンチモンの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシアンチモン、エトキシアンチモン、プロポキシアンチモン、ブトキシアンチモン、フェノキシアンチモン、酢酸アンチモン、プロピオン酸アンチモン等をモノマーとして例示できる。
【0080】
Uがニオブの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシニオブ、エトキシニオブ、プロポキシニオブ、ブトキシニオブ、フェノキシニオブ等をモノマーとして例示できる。
【0081】
Uがタンタルの場合、上記一般式(3)で示される化合物として、メトキシタンタル、エトキシタンタル、プロポキシタンタル、ブトキシタンタル、フェノキシタンタル等をモノマーとして例示できる。
【0082】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、上記一般式(1)で示される化合物(A)を一種以上、上記一般式(2)で示される化合物(B)を一種以上、更に、必要に応じて上記一般式(3)で示される化合物(C)を一種以上選択して、反応前又は反応中に混合した混合物(以下、「モノマー混合物」ということもある)を、縮合物及び/又は加水分解縮合物(以下、「ケイ素含有化合物」ということもある)を形成する反応原料とすることができる。
【0083】
〔ケイ素含有化合物の合成方法〕
(合成方法1:縮合物の合成)
モノマー混合物から縮合物を製造することが出来る。
操作方法として、下記の合成方法に記載されている酸触媒、塩基触媒を用いて、あるいは無触媒で、モノマー混合物を室温から反応混合物が還流する間の温度で加熱しその後熟成させる方法により得ることができる。この方法は、特に(A)成分でm1が1又は2の場合に好ましい。
【0084】
このとき、必要であれば有機溶媒を足してもよい。例えば、アルコール系の溶媒としてメタノール、エタノール、ブタノール等、エーテル系としてテトラヒドロフラン、ブチルエーテル等、エステル系としてプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ケトン系としてメチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン等、炭化水素系としてヘキサン、トルエン等を例示することが出来る。
【0085】
縮合が進んでくると、アルコールが副生してくるので、これによっても反応の進行を確認することが出来る。反応が適当に進行したところで室温に戻すことにより、反応を停止することが出来る。
【0086】
反応終了後、必要であれば、反応に使用した有機溶媒や、副生したアルコールを適切な温度圧力条件下で除去し、縮合物を得る。当該縮合物は、そのままケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の成分(ベースポリマー)として使用してもよい。また、反応に使用した有機溶媒や副生アルコールを除去せずに、次の操作に適用してもよい。
更に、以下に示されているように、酸触媒又は塩基触媒による加水分解縮合した後、レジスト下層膜形成用組成物の成分として使用してもよい。
【0087】
(合成方法2:酸触媒を用いた加水分解縮合物の合成)
本発明の加水分解縮合物は、モノマー混合物、前記縮合物、又は前記縮合物に更に別のモノマーを添加した混合物を、有機酸、無機酸等から選ばれる一種以上の化合物を酸触媒として用いて、加水分解縮合を行うことで製造することができる。
【0088】
このとき使用される酸触媒は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、トリフロオロ酢酸、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸等を挙げることができる。触媒の使用量は、モノマー混合物等1モルに対して1×10−6〜10モル、好ましくは1×10−5〜5モル、より好ましくは1×10−4〜1モルである。
【0089】
これらのモノマー混合物等から加水分解縮合により加水分解縮合物を得るときの水の量は、モノマー混合物等に結合している加水分解性置換基1モル当たり0.01〜100モル、より好ましくは0.05〜50モル、更に好ましくは0.1〜30モルを添加することが好ましい。100モル以下であれば、反応に使用する装置が小さくなり経済的になる。
【0090】
操作方法として、触媒水溶液にモノマー混合物等を添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶剤を加えてもよいし、モノマー混合物等を有機溶剤で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは5〜80℃である。モノマー混合物等の滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0091】
酸触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマー混合物等を希釈することのできる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン及びこれらの混合物等が好ましい。
【0092】
これらの溶剤の中で好ましいものは水溶性のものである。例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。この中で特に好ましいのは、沸点が100℃以下のものである。
【0093】
尚、有機溶剤の使用量は、モノマー混合物等1モルに対して0〜1,000ml、特に0〜500mlが好ましい。有機溶剤の使用量が少ない方が反応容器が小さくなり経済的である。
【0094】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできるアルカリ性物質の量は、触媒で使用された酸に対して0.1〜2当量が好ましい。このアルカリ性物質は水中でアルカリ性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0095】
続いて、加水分解縮合物水溶液から加水分解縮合反応で生成したアルコール等の副生物を減圧除去等で取り除くことが好ましい。このとき加水分解縮合物水溶液を加熱する温度は、添加した有機溶剤と反応で発生したアルコール等の種類によるが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶剤及びアルコール等の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコール等のおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0096】
次に、加水分解縮合物から加水分解縮合に使用した酸触媒を除去してもよい。酸触媒を除去する方法として、水と加水分解縮合物を混合し、加水分解縮合物を有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、加水分解縮合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、ガンマブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル等及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0097】
更に、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤の混合物を使用することも可能である。例えばメタノール−酢酸エチル混合物、エタノール−酢酸エチル混合物、1−プロパノール−酢酸エチル混合物、2−プロパノール−酢酸エチル混合物、ブタンジオールモノメチルエーテル−酢酸エチル混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル−酢酸エチル混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル−酢酸エチル混合物、ブタンジオールモノエチルエーテル−酢酸エチル混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル−酢酸エチル混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル−酢酸エチル混合物、ブタンジオールモノプロピルエーテル−酢酸エチル混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル−酢酸エチル混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル−酢酸エチル混合物、メタノール−メチルイソブチルケトン混合物、エタノール−メチルイソブチルケトン混合物、1−プロパノール−メチルイソブチルケトン混合物、2−プロパノール−メチルイソブチルケトン混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル−メチルイソブチルケトン混合物、メタノール−シクロペンチルメチルエーテル混合物、エタノール−シクロペンチルメチルエーテル混合物、1−プロパノール−シクロペンチルメチルエーテル混合物、2−プロパノール−シクロペンチルメチルエーテル混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル−シクロペンチルメチルエーテル混合物、メタノール−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エタノール−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、1−プロパノール−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、2−プロパノール−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル−プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物等が好ましいが、組み合わせはこれらに限定されることはない。
【0098】
尚、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合割合は、適宜選定されるが、水難溶性有機溶剤100質量部に対して、水溶性有機溶剤0.1〜1,000質量部、好ましくは1〜500質量部、更に好ましくは2〜100質量部である。
【0099】
続いて、中性水で洗浄してもよい。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、加水分解縮合物溶液1Lに対して、0.01〜100L、好ましくは0.05〜50L、より好ましくは0.1〜5Lである。この洗浄の方法は、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないため、好ましくは1〜5回程度である。
【0100】
その他に酸触媒を除去する方法として、イオン交換樹脂による方法や、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエポキシ化合物で中和したのち除去する方法を挙げることができる。これらの方法は、反応に使用された酸触媒に合わせて適宜選択することができる。
【0101】
このときの水洗操作により、加水分解縮合物の一部が水層に逃げ、実質的に分画操作と同等の効果が得られている場合があるため、水洗回数や洗浄水の量は触媒除去効果と分画効果を鑑みて適宜選択すればよい。
【0102】
酸触媒が残留している加水分解縮合物水溶液及び酸触媒が除去された加水分解縮合物溶液、いずれの場合においても、最終的な溶剤を加え、減圧で溶剤交換することで所望の加水分解縮合物溶液を得る。このときの溶剤交換の温度は、除去すべき反応溶剤や抽出溶剤の種類によるが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0103】
このとき、溶剤が変わることにより加水分解縮合物が不安定になる場合がある。これは最終的な溶剤と加水分解縮合物との相性により発生するが、これを防止するため、安定剤として、特開2009−126940号公報(0181)〜(0182)段落に記載されている環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを加えてもよい。加える量としては溶剤交換前の溶液中の加水分解縮合物100質量部に対して0〜25質量部、好ましくは0〜15質量部、より好ましくは0〜5質量部であるが、添加する場合は0.5質量部以上が好ましい。溶剤交換前の溶液に必要であれば、環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを添加して溶剤交換操作を行えばよい。
【0104】
加水分解縮合物は、ある濃度以上に濃縮すると更に縮合反応が進行し、有機溶剤に対して再溶解不可能な状態に変化してしまう恐れがあるため、適度な濃度の溶液状態にしておくことが好ましい。また、あまり薄すぎると、溶剤の量が過大となるため、適度な濃度の溶液状態にしておくことが経済的で好ましい。このときの濃度としては、0.1〜20質量%が好ましい。
【0105】
加水分解縮合物溶液に加える最終的な溶剤として好ましいものはアルコール系溶剤であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール等のモノアルキルエーテル誘導体である。具体的には、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等が好ましい。
【0106】
これらの溶剤が主成分であれば、補助溶剤として、非アルコール系溶剤を添加する事も可能である。この補助溶剤としては、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t−ブチル、プロピオン酸t−ブチル、プロピレングリコールモノt−ブチルエーテルアセテート、ガンマブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル等を例示できる。
【0107】
更に沸点が180度以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である。この高沸点溶剤としては、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、1−ノナノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2,4−ヘプタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、酢酸n−ノニル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2−ジアセトキシエタン、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、1,2−ジアセトキシプロパン、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等を例示できる。
【0108】
また、酸触媒を用いた別の反応操作としては、モノマー混合物等又はモノマー混合物等の有機溶液に、水又は含水有機溶剤を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はモノマー混合物等又はモノマー混合物等の有機溶液に添加してもよいし、水又は含水有機溶剤に添加しておいてもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。水の滴下時に10〜50℃に加熱し、その後20〜80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0109】
有機溶剤を使用する場合は、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0110】
有機溶剤の使用量は、モノマー混合物等1モルに対して0〜1,000ml、特に0〜500mlが好ましい。有機溶剤の使用量が少ない方が反応容器が小さくなり経済的である。得られた反応混合物の後処理は、前記の方法と同様で後処理し、加水分解縮合物を得ることができる。
【0111】
(合成方法3:塩基触媒を用いた加水分解縮合物の合成)
また、加水分解縮合物は、モノマー混合物等を塩基触媒の存在下、加水分解縮合を行うことで製造することができる。このとき使用される塩基触媒は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、ピリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。触媒の使用量は、モノマー混合物等1モルに対して1×10−6モル〜10モル、好ましくは1×10−5モル〜5モル、より好ましくは1×10−4モル〜1モルである。
【0112】
上記のモノマー混合物等から加水分解縮合により加水分解縮合物を得るときの水の量は、モノマー混合物等に結合している加水分解性置換基1モル当たり0.1〜50モルを添加することが好ましい。50モル以下であれば、反応に使用する装置が小さくなり経済的になる。
【0113】
操作方法として、触媒水溶液にモノマー混合物等を添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶媒を加えてもよいし、モノマー混合物等を有機溶媒で希釈しておいてもよいし、両方行っても良い。反応温度は0〜100℃、好ましくは5〜80℃である。モノマー混合物等の滴下時に5〜80℃に温度を保ち、その後20〜80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0114】
塩基触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマー混合物等を希釈することのできる有機溶媒としては、酸触媒水溶液に加えることのできるものとして例示した有機溶剤と同様のものが好ましく用いられる。尚、有機溶媒の使用量は、経済的に反応を行えるため、モノマー混合物等1モルに対して0〜1,000mlが好ましい。
【0115】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、加水分解縮合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできる酸性物質の量は、触媒で使用された塩基性物質に対して0.1〜2当量が好ましい。この酸性物質は水中で酸性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0116】
続いて、加水分解縮合物水溶液から加水分解縮合反応で生成したアルコール等の副生物を減圧除去等で取り除くことが好ましい。このとき加水分解縮合物水溶液を加熱する温度は、添加した有機溶媒と反応で発生したアルコールの種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき有機溶剤及びアルコールの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0117】
次に加水分解縮合に使用した塩基触媒を除去するため、加水分解縮合物を有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、加水分解縮合物を溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。更に、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤の混合物を使用することも可能である。
【0118】
塩基触媒を除去する際に用いられる有機溶剤の具体例は、酸触媒を除去する際に用いられるものとして具体的に例示した上述の有機溶剤や、水溶性有機溶剤と水難性有機溶剤の混合物と同様のものを用いることができる。
【0119】
続いて、中性水で洗浄する。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、加水分解縮合物溶液1Lに対して、0.01〜100L、好ましくは0.05〜50L、より好ましくは0.1〜5Lである。この洗浄の方法は、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られないため、好ましくは1〜5回程度である。
【0120】
洗浄済みの加水分解縮合物溶液に最終的な溶媒を加え、減圧で溶媒交換することで所望の加水分解縮合物溶液を得る。このときの溶媒交換の温度は、除去すべき抽出溶剤の種類に依るが、好ましくは0〜100℃、より好ましくは10〜90℃、更に好ましくは15〜80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0121】
加水分解縮合物溶液に加える最終的な溶媒として好ましいものはアルコール系溶媒であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のモノアルキルエーテルである。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等が好ましい。
【0122】
これらの溶剤が主成分であれば、補助溶剤として、非アルコール系溶剤を添加する事も可能である。更に沸点が180度以上の高沸点溶剤を添加する事も可能である。
この補助溶剤や高沸点溶剤の具体例は、(合成方法2)で具体的に例示した上述の補助溶剤や、高沸点溶剤と同様のものを用いることができる。
【0123】
また、塩基触媒を用いた別の反応操作としては、モノマー混合物等又はモノマー混合物等の有機溶液に、水又は含水有機溶媒を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はモノマー混合物等又はモノマー混合物等の有機溶液に添加しても良いし、水又は含水有機溶媒に添加しておいてもよい。反応温度は0〜100℃、好ましくは10〜80℃である。水の滴下時に10〜50℃に加熱し、その後20〜80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0124】
モノマー混合物等の有機溶液又は含水有機溶媒として使用できる有機溶媒としては、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0125】
上記合成方法1〜3等により得られるケイ素含有化合物の分子量は、モノマー混合物の選択だけでなく、縮合時の反応条件制御により調整することができるが、重量平均分子量が100,000を超えるものを用いると、ケースによっては異物の発生や塗布斑が生じることがあり、100,000以下、より好ましくは200〜50,000、更には300〜30,000のものを用いることが好ましい。尚、上記重量平均分子量に関するデータは、検出器としてRI、溶離溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算で分子量を表したものである。
【0126】
〔その他の成分〕
(熱架橋促進剤)
本発明においては、熱架橋促進剤をケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に配合してもよい。配合可能な熱架橋促進剤として、下記一般式(5)又は(6)で示される化合物を挙げることができる。具体的には、特許文献6に記載されている材料を添加することができる。
X (5)
(式中、Lはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、及びセシウムのいずれか、Xは水酸基、又は炭素数1〜30の1価もしくは2価以上の有機酸基であり、aは1以上の整数、bは0又は1以上の整数で、a+bは水酸基又は有機酸基の価数である。)
MY (6)
(式中、Mはスルホニウム、ヨードニウム、及びアンモニウムのいずれかであり、Yは非求核性対向イオンである。)
【0127】
尚、上記熱架橋促進剤は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。熱架橋促進剤の添加量は、ベースポリマー(上記合成方法で得られたケイ素含有化合物)100質量部に対して、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.1〜40質量部である。
【0128】
(有機酸)
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の安定性を向上させるため、炭素数が1〜30の1価又は2価以上の有機酸を添加することが好ましい。このとき添加する酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クエン酸等を例示することができる。特にシュウ酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸等が好ましい。また、安定性を保つため、二種以上の酸を混合して使用してもよい。添加量は組成物に含まれるケイ素100質量部に対して0.001〜25質量部、好ましくは0.01〜15質量部、より好ましくは0.1〜5質量部である。
【0129】
あるいは、上記有機酸を組成物のpHに換算して、好ましくは0≦pH≦7、より好ましくは0.3≦pH≦6.5、更に好ましくは0.5≦pH≦6となるように配合することがよい。
【0130】
(水)
本発明では組成物に水を添加してもよい。水を添加すると、ケイ素含有化合物が水和されるため、リソグラフィー性能が向上する。組成物の溶剤成分における水の含有率は0質量%を超え50質量%未満であり、特に好ましくは0.3〜30質量%、更に好ましくは0.5〜20質量%である。それぞれの成分は、添加量が多すぎると、ケイ素含有レジスト下層膜の均一性が悪くなり、最悪の場合はじきが発生してしまう恐れがある。一方、添加量が少ないとリソグラフィー性能が低下する恐れがある。
【0131】
水を含む全溶剤の使用量は、ベースポリマー100質量部に対して100〜100,000質量部、特に200〜50,000質量部が好適である。
【0132】
(光酸発生剤)
本発明では組成物に光酸発生剤を添加してもよい。本発明で使用される光酸発生剤として、具体的には、特開2009−126940号公報(0160)〜(0179)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0133】
(安定剤)
更に、本発明では組成物に安定剤を添加することができる。安定剤として環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを添加することができる。特に特開2009−126940号公報(0180)〜(0184)段落に記載されている安定剤を添加するとケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の安定性を向上させることができる。
【0134】
(界面活性剤)
更に、本発明では必要に応じて組成物に界面活性剤を配合することが可能である。このようなものとして、具体的には、特開2009−126940号公報(0185)段落に記載されている材料を添加することができる。
【0135】
〔ネガ型パターン形成方法〕
(ネガ型パターン形成方法1)
本発明では、被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、有機溶剤の現像液を用いて前記フォトレジスト膜の未露光部を溶解させることによりネガ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する(所謂「多層レジスト法」)。
【0136】
(ネガ型パターン形成方法2)
また、本発明では、被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、有機溶剤の現像液を用いて前記フォトレジスト膜の未露光部を溶解させることによりネガ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにしてケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供する(所謂「多層レジスト法」)。
【0137】
本発明のレジスト下層膜を使用してネガ型パターンを形成すると、上記のように、CVD膜や有機下層膜の組み合わせを最適化することで、サイズ変換差を生じさせることなくフォトレジストで形成されたパターンを基板上に形成できる。
【0138】
さらに、前記フォトレジスト膜の露光において、前記露光されたフォトレジスト膜の露光部に対応する前記ケイ素含有レジスト下層膜の部分の露光後の接触角が、露光前と比較して10度以上低下することが好ましい。
【0139】
ケイ素含有レジスト下層膜の露光部の接触角が露光前に比べて10度以上低下すると、ネガ現像後のレジストパターンとの接触角の差が小さくなり、密着性が向上しパターン倒れが防止され、微細なパターンを形成することができる。
【0140】
本発明のパターンの形成方法に使用されるケイ素含有レジスト下層膜は、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物からフォトレジスト膜と同様にスピンコート法等で被加工体上に作製することが可能である。スピンコート後、溶剤を蒸発させ、フォトレジスト膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベークをすることが望ましい。ベーク温度は50〜500℃の範囲内で、ベーク時間は10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。特に好ましい温度範囲は、製造されるデバイスの構造にもよるが、デバイスへの熱ダメージを少なくするため、400℃以下が好ましい。
【0141】
ここで、被加工体は、半導体装置基板、又は、半導体装置基板に被加工層(被加工部分)として、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかが成膜されたもの等を用いることができる。
【0142】
半導体装置基板としては、シリコン基板が一般的に用いられるが、特に限定されるものではなく、Si、アモルファスシリコン(α−Si)、p−Si、SiO、SiN、SiON、W、TiN、Al等で被加工層と異なる材質のものが用いられてもよい。
【0143】
被加工体を構成する金属としては、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、及び鉄のいずれか、あるいはこれらの合金であるものを用いることができる。このような金属を含む被加工層としては、例えば、Si、SiO、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、W、W−Si、Al、Cu、Al−Si等及び種々の低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が用いられ、通常1〜10,000nm、特に5〜5,000nmの厚さに形成し得る。
【0144】
本発明のネガ型パターン形成方法において、フォトレジスト膜は、化学増幅型であり、有機溶剤の現像液を用いた現像によりネガ型のパターンを形成できるものであれば、特に限定されない。
【0145】
例えば、本発明における露光工程を、ArFエキシマレーザー光による露光プロセスとする場合、フォトレジスト膜としては、通常のArFエキシマレーザー光用レジスト組成物をいずれも使用可能である。
【0146】
このようなArFエキシマレーザー光用レジスト組成物は多数の候補がすでに公知であり、すでに公知の樹脂を大別すると、ポリ(メタ)アクリル系、COMA(Cyclo Olefin Maleic Anhydride)系、COMA−(メタ)アクリルハイブリッド系、ROMP(Ring Opening Methathesis Polymerization)系、ポリノルボルネン系等があるが、このうち、ポリ(メタ)アクリル系樹脂を使用したレジスト組成物は、側鎖に脂環式骨格を導入することでエッチング耐性を確保しているため、解像性能は、他の樹脂系に比較して優れる。
【0147】
ネガ型パターン形成方法では、ケイ素含有レジスト下層膜を形成した後、その上にフォトレジスト組成物溶液を用いてフォトレジスト膜を形成するが、ケイ素含有レジスト下層膜と同様にスピンコート法が好ましく用いられる。フォトレジスト組成物をスピンコート後、プリベークを行うが、温度は80〜180℃の範囲で、時間は10〜300秒の範囲が好ましい。その後露光を行い、有機溶剤現像を行い、ネガ型のレジストパターンを得る。また、露光後にポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行うことが好ましい。
【0148】
当該有機溶剤の現像液としては、4−メチル−2−ペンタノール、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸−2−フェニルエチルから選ばれる一種以上を成分として含む現像液等を使用することができ、現像液成分一種又は二種以上の合計が、50質量%以上である現像液を使用することが、パターン倒れ改善等の観点から好ましい。
【0149】
本発明のパターン形成方法において、ケイ素含有レジスト下層膜をエッチングする場合、フロン系ガス等のフッ素を含有したガスを主成分としたガスを使ってエッチングを行う。フォトレジスト膜の膜減りを小さくするため、ケイ素含有レジスト下層膜は前記ガスに対するエッチング速度が速いことが好ましい。
【0150】
このような多層レジスト法において、上述のように、ケイ素含有レジスト下層膜と被加工体との間に有機下層膜を設けて、有機下層膜を被加工体のエッチングマスクとする場合には、有機下層膜は芳香族骨格を有する有機膜であることが好ましいが、有機下層膜が犠牲膜である場合等は、ケイ素含量が15質量%以下のものであればケイ素含有有機下層膜であってもよい。
【0151】
このような有機下層膜としては、既に3層レジスト法用、あるいはシリコンレジスト組成物を使用した2層レジスト法用の下層膜として公知のもの、特開2005−128509号公報記載の4,4’−(9−フルオレニリデン)ビスフェノールノボラック樹脂(分子量11,000)の他、ノボラック樹脂をはじめとする多数の樹脂であって、2層レジスト法や3層レジスト法のレジスト下層膜材料として公知のもの等を使用することができる。また、通常のノボラックよりも耐熱性を上げたい場合には、6,6’−(9−フルオレニリデン)−ジ(2−ナフトール)ノボラック樹脂のような多環式骨格を入れることもでき、更にポリイミド系樹脂を選択することもできる(例えば、特開2004−153125号公報)。
【0152】
上記有機下層膜は、組成物溶液を用い、フォトレジスト組成物と同様にスピンコート法等で被加工体上に形成することが可能である。スピンコート法等で有機下層膜を形成した後、有機溶剤を蒸発させるためベークをすることが望ましい。ベーク温度は80〜300℃の範囲内で、ベーク時間は10〜300秒の範囲内が好ましく用いられる。
【0153】
尚、特に限定されるものではなく、エッチング加工条件により異なるが、有機下層膜の厚さは5nm以上、特に20nm以上であり、50,000nm以下であることが好ましく、本発明に係るケイ素含有レジスト下層膜の厚さは1nm以上500nm以下であることが好ましく、より好ましくは300nm以下、更に好ましくは200nm以下である。また、フォトレジスト膜の厚さは1nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0154】
〔3層レジスト法による本発明のパターン形成方法〕
以上のような3層レジスト法による本発明のネガ型パターン形成方法は次の通りである(図1参照)。このプロセスにおいては、まず被加工体1上に有機下層膜2をスピンコートで作製する(図1(I−A))。この有機下層膜2は、被加工体1をエッチングするときのマスクとして作用するので、エッチング耐性が高いことが望ましく、上層のケイ素含有レジスト下層膜とミキシングしないことが求められるため、スピンコートで形成した後に熱あるいは酸によって架橋することが望ましい。
【0155】
その上に本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜3をスピンコート法で成膜し(図1(I−B))、その上にフォトレジスト膜4をスピンコート法で成膜する(図1(I−C))。尚、ケイ素含有レジスト下層膜3は、フォトレジスト膜4が露光された時に、該露光部に対応する前記ケイ素含有レジスト下層膜3の露光後の純水に対する接触角が40度以上70度未満となる組成物を用いて形成することができる。
【0156】
フォトレジスト膜4は、定法に従い、マスク5を用いて、フォトレジスト膜4に応じた光源P、例えばKrFエキシマレーザー光や、ArFエキシマレーザー光、Fレーザー光、あるいはEUV光を用いたパターン露光により、好ましくは、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、及びナノインプリンティングのいずれか、あるいはこれらの組み合わせによりパターン形成し(図1(I−D))、個々のフォトレジスト膜に合わせた条件による加熱処理の後(図1(I−E))、有機現像液による現像操作(ネガ現像)、その後必要に応じてリンスを行うことで、ネガ型のレジストパターン4aを得ることができる(図1(I−F))。
【0157】
次に、このネガ型レジストパターン4aをエッチングマスクとして、フォトレジスト膜に対し、ケイ素含有レジスト下層膜3のエッチング速度が優位に高いドライエッチング条件、例えばフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングでのエッチングを行う。結果としてレジスト膜のサイドエッチングによるパターン変化の影響を殆ど受けずに、ネガ型のケイ素含有レジスト下層膜パターン3aを得ることができる(図1(I−G))。
【0158】
次に、上記で得たネガ型レジストパターン4aが転写されたネガ型ケイ素含有レジスト下層膜パターン3aを持つ基板に対し、有機下層膜2のエッチング速度が優位に高いドライエッチング条件、例えば酸素を含有するガスプラズマによる反応性ドライエッチングや、水素−窒素を含有するガスプラズマによる反応性ドライエッチングを行い、有機下層膜2をエッチング加工する。このエッチング工程によりネガ型の有機下層膜パターン2aが得られるが、同時に最上層のフォトレジスト膜は、通常失われる(図1(I−H))。更に、ここで得られたネガ型有機下層膜パターン2aをエッチングマスクとして、被加工体1のドライエッチング、例えば、フッ素系ドライエッチングや塩素系ドライエッチングを使用することで、被加工体1を精度よくエッチング加工し、被加工体1にネガ型パターン1aを転写することができる(図1(I−I))。
【0159】
尚、上記の3層レジスト法によるプロセスにおいて、有機下層膜2の代わりにCVD法で形成された有機ハードマスクを適用することも可能である。その場合も、上記と同様の手順で被加工体の加工が可能である。
【0160】
〔ポジ型パターン形成方法〕
(ポジ型パターン形成方法1)
また、本発明では、被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供することができる(所謂「多層レジスト法」)。
【0161】
(ポジ型パターン形成方法2)
また、本発明では、被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法を提供することができる(所謂「多層レジスト法」)。
【0162】
本発明のレジスト下層膜を使用してポジ現像でパターンを形成すると、上記のように、CVD膜や有機下層膜の組み合わせを最適化することで、サイズ変換差を生じさせることなくフォトレジストで形成されたパターンを基板上に形成できる。
【0163】
また、前記フォトレジスト膜を形成する前のケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角と、前記露光後のフォトレジスト膜の未露光部に対応する前記ケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角との差が、10度以下であることが好ましい。このように接触角の差が10度以下であれば、フォトレジスト膜の未露光部と、これに対応するケイ素含有レジスト下層膜の部分との接触角の差も10度以下とすることができ、ポジ現像において密着性が良好であるため、微細なパターンを形成することができる。
【0164】
本発明のポジ型パターン形成方法において、フォトレジスト膜は、化学増幅型であり、アルカリの現像液を用いた現像によりポジ型のパターンを形成できるものであれば、特に限定されない。その他の成膜方法、被加工体、有機下層膜、有機ハードマスクについてはネガ型パターン形成方法で説明したものと同様とすることができる。
【0165】
ポジ型パターン形成方法では、フォトレジスト膜形成、加熱処理後に、露光を行い、アルカリ現像液を用いてアルカリ現像を行い、ポジ型のレジストパターンを得る。また、露光後にポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行うことが好ましい。
【0166】
当該アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等を使用することができる。
【0167】
〔3層レジスト法による本発明のパターン形成方法〕
3層レジスト法による本発明のポジ型パターン形成方法は次の通りである(図1参照)。このプロセスにおいては、まず被加工体1上に有機下層膜2をスピンコートで作製する(図1(II−A))。この有機下層膜2は、被加工体1をエッチングするときのマスクとして作用するので、エッチング耐性が高いことが望ましく、上層のケイ素含有レジスト下層膜とミキシングしないことが求められるため、スピンコートで形成した後に熱あるいは酸によって架橋することが望ましい。
【0168】
その上に本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜3をスピンコート法で成膜し(図1(II−B))、フォトレジスト膜4をスピンコート法で成膜する(図1(II−C))。尚、ケイ素含有レジスト下層膜3は、フォトレジスト膜4が露光された時に、該露光部に対応する前記ケイ素含有レジスト下層膜3の露光後の純水に対する接触角が40度以上70度未満となる組成物を用いて形成することができる。
【0169】
フォトレジスト膜4は、定法に従い、マスク5を用いて、フォトレジスト膜4に応じた光源P、例えばKrFエキシマレーザー光や、ArFエキシマレーザー光、Fレーザー光、あるいはEUV光を用いたパターン露光により、好ましくは、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、及びナノインプリンティングのいずれか、あるいはこれらの組み合わせによりパターン形成し(図1(II−D))、個々のフォトレジスト膜に合わせた条件による加熱処理の後(図1(II−E))、アルカリ現像液による現像操作、その後必要に応じてリンスを行うことで、ポジ型のレジストパターン4bを得ることができる(図1(II−F))。
【0170】
次に、このレジストパターン4bをエッチングマスクとして、フォトレジスト膜に対し、ケイ素含有レジスト下層膜3のエッチング速度が優位に高いドライエッチング条件、例えばフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングでのエッチングを行う。結果としてレジスト膜のサイドエッチングによるパターン変化の影響を殆ど受けずに、ポジ型のケイ素含有レジスト下層膜パターン3bを得ることができる(図1(II−G))。
【0171】
次に、上記で得たポジ型レジストパターンが転写されたポジ型ケイ素含有レジスト下層膜パターン3bを持つ基板に対し、有機下層膜2のエッチング速度が優位に高いドライエッチング条件、例えば酸素を含有するガスプラズマによる反応性ドライエッチングや、水素−窒素を含有するガスプラズマによる反応性ドライエッチングを行い、有機下層膜2をエッチング加工する。このエッチング工程によりポジ型の有機下層膜パターン2bが得られるが、同時に最上層のフォトレジスト膜は、通常失われる(図1(II−H))。更に、ここで得られたポジ型有機下層膜パターン2bをエッチングマスクとして、被加工体1のドライエッチング、例えば、フッ素系ドライエッチングや塩素系ドライエッチングを使用することで、被加工体を精度よくエッチング加工し、被加工体1にポジ型パターン1bを転写することができる(図1(II−I))。
【0172】
尚、上記の3層レジスト法によるプロセスにおいて、有機下層膜2の代わりにCVD法で形成された有機ハードマスクを適用することも可能である。その場合も、上記と同様の手順で被加工体1の加工が可能である。
【実施例】
【0173】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。なお、下記例で%は質量%を示し、分子量測定はGPCによった。
【0174】
[合成例A−1]
フェニルトリメトキシシラン(モノマー100)9.9g、メチルトリメトキシシラン(モノマー101)13.6g、テトラメトキシシラン(モノマー102)38.1g及び(モノマー120)で示されるボロン酸誘導体25.6gのモノマー混合物を窒素雰囲気中100℃で3時間加熱し、GPCでボロン酸誘導体の消失を確認し、ホウ素含有シラン混合物を得た。この混合物を室温に冷却し、メタノール120g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水60gの混合物に室温下、30分かけて添加し、添加終了後24時間、20℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)100gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000mlを加え、水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層にPGEE200gを加え、減圧で濃縮してホウ素を含むケイ素含有化合物A−1のPGEE溶液450g(ポリマー濃度19.9%)を得た。得られた溶液をイオンクロマトグラフでメタンスルホン酸イオンを分析したが、検出されなかった。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=3,600であった。
【0175】
[合成例A−1]と同様の条件で表1に示してあるモノマーを使用して[合成例A−2]から[合成例A−3]まで行い、それぞれ目的物を得た。
【0176】
[合成例A−4]
メチルトリメトキシシラン(モノマー101)27.2g、テトラメトキシシラン(モノマー102)38.1g及び(モノマー123)で示されるボロン酸誘導体11.1gのモノマー混合物を、メタノール120g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水60gの混合物に室温下、30分かけて添加し、添加終了後24時間、20℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)100gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000mlを加え、水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層にPGEE200gを加え、減圧で濃縮してホウ素を含むケイ素含有化合物A−4のPGEE溶液250g(ポリマー濃度13.9%)を得た。得られた溶液をイオンクロマトグラフでメタンスルホン酸イオンを分析したが、検出されなかった。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2,200であった。
【0177】
[合成例A−4]と同様の条件で表1に示してあるモノマーを使用して[合成例A−5]から[合成例A−6]まで行い、それぞれ目的物を得た。
【0178】
[合成例A−7]
メチルトリメトキシシラン(モノマー101)20.4g、テトラエトキシシラン(モノマー103)52.2g、ホウ酸トリイソプロピル(モノマー110)9.4g及び(モノマー123)で示されるボロン酸誘導体11.1gのモノマー混合物を、メタノール120g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水60gの混合物に室温下、30分かけて添加し、添加終了後12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)100gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000ml及を加え、水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層にPGEE200gを加え、減圧で濃縮してホウ素を含むケイ素含有化合物A−7のPGEE溶液250g(ポリマー濃度12.6%)を得た。得られた溶液をイオンクロマトグラフでメタンスルホン酸イオンを分析したが、検出されなかった。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=3,300であった。
【0179】
[合成例A−7]と同様の条件で表1に示してあるモノマーを使用して[合成例A−8]から[合成例A−11]まで行い、それぞれ目的物を得た。
【0180】
[合成例A−12]
メチルトリメトキシシラン(モノマー101)34.1g及び(モノマー123)で示されるボロン酸誘導体55.5gのモノマー混合物を、メタノール120g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水60gの混合物に室温下、30分かけて添加し、添加終了後24時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)100gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000mlを加え、水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層にPGEE500gを加え、減圧で濃縮してホウ素を含むケイ素含有化合物A−12のPGEE溶液500g(ポリマー濃度11.4%)を得た。得られた溶液をイオンクロマトグラフでメタンスルホン酸イオンを分析したが、検出されなかった。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=4,200であった。
【0181】
[合成例A−13]
メチルトリメトキシシラン(モノマー101)6.8g及びテトラエトキシシラン(モノマー103)94.0gのモノマー混合物を、メタノール120g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水60gの混合物に室温下、30分かけて添加し、添加終了後12時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)600gを加え、副生アルコールを減圧で留去してケイ素含有化合物A−13のPGEE溶液500g(ポリマー濃度10.9%)を得た。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=4,800であった。
【0182】
[合成例A−14]
3−t−ブトキシフェニルトリメトキシシラン(モノマー104)13.5g、メチルトリメトキシシラン(モノマー101)27.2g、テトラメトキシシラン(モノマー102)38.1gのモノマー混合物を、メタノール120g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水60gの混合物に室温下、30分かけて添加し、添加終了後24時間、20℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)100gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000mlを加え、水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層にPGEE400g加え、減圧で濃縮してケイ素含有化合物A−14のPGEE溶液450g(ポリマー濃度14.6%)を得た。得られた溶液をイオンクロマトグラフでメタンスルホン酸イオンを分析したが、検出されなかった。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2,900であった。
【0183】
[合成例A−14]と同様の条件で表1に示してあるモノマーを使用して[合成例A−16]を行い、目的物を得た。
【0184】
[合成例A−15]
メチルトリメトキシシラン(モノマー101)34.1g及び3−t−ブトキシフェニルトリメトキシシラン(モノマー104)67.6gのモノマー混合物を、メタノール120g、メタンスルホン酸1g及び脱イオン水60gの混合物に室温下、30分かけて添加し、添加終了後24時間、40℃に保持し、加水分解縮合させた。反応終了後、プロピレングリコールエチルエーテル(PGEE)100gを加え、副生アルコールを減圧で留去した。そこに、酢酸エチル1000ml及び水層を分液した。残った有機層に、イオン交換水100mlを加えて撹拌、静置、分液した。これを3回繰り返した。残った有機層にPGEE500g加え、減圧で濃縮してケイ素含有化合物A−15のPGEE溶液500g(ポリマー濃度12.2%)を得た。得られた溶液をイオンクロマトグラフでメタンスルホン酸イオンを分析したが、検出されなかった。このもののポリスチレン換算分子量を測定したところMw=4,900であった。
【0185】
[合成例A−15]と同様の条件で表1に示してあるモノマーを使用して[合成例A−17]を行い、目的物を得た。
【0186】
【表1】

【0187】
【表2】

【0188】
[実施例、比較例]
上記合成例で得られたホウ素を含むケイ素含有化合物(A−1)〜(A−12)、(A−16)〜(A−17)、ホウ素を含まないケイ素含有化合物(A−13)〜(A−15)、酸、熱架橋促進剤、溶剤、その他添加剤等を表3に示す割合で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液をそれぞれ調製し、それぞれSol.1〜26とした。
【表3】

【0189】
TPSOH :水酸化トリフェニルスルホニウム
TPSHCO :炭酸モノ(トリフェニルスルホニウム)
TPSOx :シュウ酸モノ(トリフェニルスルホニウム)
TPSTFA :トリフルオロ酢酸トリフェニルスルホニウム
TPSOCOPh :安息香酸トリフェニルスルホニウム
TPSHPO :リン酸モノ(トリフェニルスルホニウム)
TPSMA :マレイン酸モノ(トリフェニルスルホニウム)
TPSNf :ノナフルオロブタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム
QMAMA :マレイン酸モノ(テトラメチルアンモニウム)
QMATFA :トリフルオロ酢酸テトラメチルアンモニウム
QBANO :硝酸テトラブチルアンモニウム
PhICl :塩化ジフェニルヨードニウム
PGMEA :酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル
GBL :ガンマブチロラクトン
【0190】
接触角の測定
<下層膜の接触角サンプル>
ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液Sol.1〜26を塗布して240℃で60秒間加熱して、膜厚35nmのケイ素含有レジスト下層膜Film1〜26を形成し、純水との接触角(CA1)を測定した(表4)。
【0191】
<下層膜上にポジ現像用レジストを塗布後、除去して作られた下層膜の未露光部に対応した接触角サンプル>
シリコンウエハー上にケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液Sol.1〜26を塗布して240℃で60秒間加熱して、膜厚35nmのケイ素含有レジスト下層膜Film1〜26を形成した。その膜の上に表9記載のArFレジスト溶液(PR−1)を塗布し、100℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。次いで、このレジスト膜を全てプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)でリンス除去し、レジスト下層膜の未露光部と同等の膜を得た。これらについて、純水との接触角(CA2)を測定した(表5)。
【0192】
<下層膜を塗ってネガ現像用レジストを塗布後、除去して作られた下層膜の未露光部に対応した接触角サンプル>
シリコンウエハー上に、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液Sol.1〜26を塗布して240℃で60秒間加熱して、膜厚35nmのレジスト下層膜Film1〜26を形成した。その膜の上に表12記載のネガ現像用ArFレジスト溶液(PR−3)を塗布し、100℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。更にこのフォトレジスト膜上に表10記載の液浸保護膜(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。次いで、液浸保護膜及びフォトレジスト膜をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で全てリンス除去し、レジスト下層膜の未露光部と同等の膜を得た。これらについて、純水との接触角(CA3)を測定した(表6)。
【0193】
<下層膜を塗ってネガ現像用レジストを塗布後、除去して作られた下層膜の露光部に対応した接触角サンプル>
シリコンウエハー上に、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液Sol.1〜26を塗布して240℃で60秒間加熱して、膜厚35nmのレジスト下層膜Film1〜26を形成した。その膜の上に表12記載のネガ現像用ArFレジスト溶液(PR−3)を塗布し、100℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。更にこのフォトレジスト膜上に表10記載の液浸保護膜(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610Cで全面露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、30rpmで回転させながら現像ノズルから現像液として酢酸ブチルを3秒間吐出し、その後回転を止めてパドル現像を27秒間行い、ジイソアミルエーテルでリンス後スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させた。残ったレジスト膜を全てPGMEでリンス除去した後、レジスト下層膜の露光部と同等の膜を得た。これらについて、純水との接触角(CA4)を測定した(表7)。
【0194】
<ネガ現像用レジストの露光部に対応した接触角サンプル>
表12記載のネガ現像用ArFレジスト溶液(PR−3、PR−4)を塗布し、100℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成し純水との接触角(CA5)を測定した。次いで、同じレジスト膜をArF露光装置((株)ニコン製;NSR−S307E)で全面露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)して、ジイソアミルエーテルでリンス後スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させて、酸脱離基が外れたネガ現像時のパターン部分に相当するArFレジスト膜を形成し純水との接触角(CA6)を測定した(表8)。
【0195】
【表4】

【0196】
【表5】

【0197】
【表6】

【0198】
【表7】

【0199】
【表8】

【0200】
ポジ型現像によるパターニング試験
シリコンウエハー上に、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボン含有量80質量%)を膜厚200nmで形成した。その上にケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液Sol.11〜26を塗布して240℃で60秒間加熱して、膜厚35nmのケイ素含有レジスト下層膜Film11〜26を形成した。
【0201】
続いて、ケイ素含有レジスト下層膜上に表9記載のポジ現像用ArFレジスト溶液(PR−1)を塗布し、110℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。更にフォトレジスト膜上に表10記載の液浸保護膜(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0202】
別に、ケイ素含有レジスト下層膜上に表9記載のポジ現像用ArFレジスト溶液(PR−2)を塗布し、110℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。
【0203】
次いで、これらをArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポール偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液で30秒間現像し、43nm 1:1のポジ型のラインアンドスペースパターンを得た。この寸法を(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)でパターン倒れを、断面形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−9380)で測定した(表11)。
【0204】
【表9】

【0205】
ArFレジストポリマー1:
分子量(Mw)=7,800
分散度(Mw/Mn)=1.78
【化11】

【0206】
酸発生剤:PAG1
【化12】

【0207】
塩基:Quencher
【化13】

【0208】
撥水性ポリマー1:
分子量(Mw)=8,200
分散度(Mw/Mn)=1.67
【化14】

【0209】
保護膜ポリマー
分子量(Mw)=8,800
分散度(Mw/Mn)=1.69
【化15】

【0210】
【表10】

【0211】
【表11】

【0212】
表11に示されているように、レジスト下層膜の接触角(CA1)とポジ現像用上層レジスト塗布、剥離後のケイ素含有レジスト下層膜の接触角(CA2)の間の変化量が10度以下であるものを使用したところ、ポジ現像では垂直形状のレジスト断面を得ることができた。そして、パターン倒れのないことが認められた。また、レジスト塗布、剥離による接触角の変化が10度以下であることから、ケイ素含有レジスト下層膜と上層のフォトレジストとの間のインターミキシングがほとんどなく、ケイ素含有レジスト下層膜が十分に硬化していると判断できる。
【0213】
ネガ型現像によるパターニング試験
シリコンウエハー上に、信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−50(カーボン含有量80質量%)を膜厚200nmで形成した。その上にケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液Sol.11〜26を塗布して240℃で60秒間加熱して、膜厚35nmのケイ素含有レジスト下層膜Film11〜26を形成した。
【0214】
続いて、ケイ素含有レジスト下層膜上に表12記載のネガ現像用ArFレジスト溶液(PR−3)を塗布し、100℃で60秒間ベークして膜厚100nmのフォトレジスト膜を形成した。このフォトレジスト膜上に表10記載の液浸保護膜(TC−1)を塗布し90℃で60秒間ベークし膜厚50nmの保護膜を形成した。
【0215】
次いで、ArF液浸露光装置((株)ニコン製;NSR−S610C,NA1.30、σ0.98/0.65、35度ダイポール偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク)で露光し、100℃で60秒間ベーク(PEB)し、30rpmで回転させながら現像ノズルから現像液として酢酸ブチルを3秒間吐出し、その後回転を止めてパドル現像を27秒間行い、ジイソアミルエーテルでリンス後スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させた。このパターニングにより、43nm1:1のネガ型のラインアンドスペースパターンを得た。この寸法を(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)でパターン倒れを、断面形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−4700)で測定した(表13)。
【0216】
【表12】

【0217】
ArFレジストポリマー2:
分子量(Mw)=8,600
分散度(Mw/Mn)=1.88
【化16】

【0218】
ArFレジストポリマー3:
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.93
【化17】

【0219】
酸発生剤:PAG2
【化18】

【0220】
塩基:Quencher
【化19】

【0221】
【表13】

【0222】
表13に示されているように、ネガ現像用上層レジスト塗布、剥離後のレジスト下層膜の接触角(CA3)とネガ現像用上層レジスト塗布、露光、剥離後のレジスト下層膜の接触角(CA4)との間の変化量が10度以上あるものをレジスト下層膜として使用したところ、ネガ現像では垂直形状のレジスト断面を得ることができた。そして、パターン倒れのないことが認められた。一方、酸脱離基で置換された有機基を含まない比較例2−3、4のネガ現像では、接触角の変化量が小さくパターンの倒れが発生した。
【0223】
パターニング試験:現像液
表12記載のネガ現像用ArFレジスト(PR−3、PR−4、PR−5)、上記の実施例1で示された現像液(酢酸ブチル)の代わりに以下に示した現像液を用いて、実施例2と同様手順で、43nm 1:1のネガ型のラインアンドスペースパターンを得た。
【0224】
【表14】

【0225】
各種現像液を用いても断面が垂直形状を有するネガ型レジストパターンを得ることができた。
【0226】
パターンエッチング試験:ポジ現像パターン
上記、ポジ型現像によるパターニング試験で作製したポジ型現像によるレジストパターンをマスクにしてレジスト下層膜の加工を条件(1)でドライエッチングし、次いで条件(2)でドライエッチングしスピンオンカーボン膜にパターンを転写した。得られたパターンの断面形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−9380)で、パターンラフネスを(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)でそれぞれ形状を比較し表15にまとめた。
【0227】
(1)CHF/CF系ガスでのエッチング条件
装置:東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SP
エッチング条件(1):
チャンバー圧力 10Pa
Upper/Lower RFパワー 500W/300W
CHFガス流量 50ml/min
CFガス流量 150ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 40sec
【0228】
(2)O/N系ガスでのエッチング条件
装置:東京エレクトロン(株)製ドライエッチング装置Telius SP
エッチング条件(2):
チャンバー圧力 2Pa
Upper/Lower RFパワー 1000W/300W
ガス流量 300ml/min
ガス流量 100ml/min
Arガス流量 100ml/min
処理時間 30sec
【0229】
【表15】

【0230】
本発明では、表15に示されているように、現像後のレジスト形状、スピンオンカーボン膜加工後の断面形状及びパターンラフネスも良好であることが認められた。一方、比較例として、ケイ素化合物だけで形成されているレジスト下層膜(比較例4−1、2)では、表面付近に偏在している成分のエッチング耐性が比較的強いため、上層レジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜をドライエッチング加工している際、上層レジストがダメージを受けてしまい最終的なスピンオンカーボン膜加工後のパターンラフネスとして観測された。
【0231】
パターンエッチング試験:ネガ現像パターン
上記、ネガ型現像によるパターニング試験で作製したネガ型現像によるレジストパターンをマスクにしてレジスト下層膜の加工を条件(1)でドライエッチングし、次いで条件(2)でドライエッチングしスピンオンカーボン膜にパターンを転写した。得られたパターンの断面形状を(株)日立製作所製電子顕微鏡(S−9380)で、パターンラフネスを(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)でそれぞれ形状を比較し表16にまとめた。
【0232】
【表16】

【0233】
本発明では、表16に示されているように、現像後のレジスト形状、スピンオンカーボン膜加工後の断面形状及びパターンラフネスも良好であることが認められた。一方、比較例として、ケイ素化合物だけで形成されているレジスト下層膜(比較例5−1、2)では、表面付近に偏在している成分のエッチング耐性が比較的強いため、上層レジストパターンをマスクとしてレジスト下層膜をドライエッチング加工している際、上層レジストがダメージを受けてしまい最終的なスピンオンカーボン膜加工後のパターンラフネスとして観測された。
【0234】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0235】
1…被加工体、 1a…ネガ型パターン、 1b…ポジ型パターン、
2…有機下層膜、 2a…ネガ型有機下層膜パターン、
2b…ポジ型有機下層膜パターン、 3…ケイ素含有レジスト下層膜、
3a…ネガ型ケイ素含有レジスト下層膜パターン、
3b…ポジ型ケイ素含有レジスト下層膜パターン、 4…フォトレジスト膜、
4a…ネガ型レジストパターン、 4b…ポジ型レジストパターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、下記一般式(1)で示される有機ホウ素化合物及びその縮合物からなる群から選ばれる化合物(A)一種以上と、下記一般式(2)で示されるケイ素化合物(B)一種以上とを含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであることを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
m0B(OH)m1(OR)(3−m0−m1) (1)
(式中、Rは炭素数1〜6の有機基であり、2個のORが結合して環状有機基を形成してもよく、Rは酸不安定基で置換された水酸基又はカルボキシル基を有する有機基であり、2個のRが結合して環状有機基を形成してもよい。m0は1又は2、m1は0、1又は2であり、1≦m0+m1≦3である。)
10m1011m1112m12Si(OR13(4−m10−m11−m12) (2)
(式中、R13は炭素数1〜6の有機基であり、R10、R11、R12はそれぞれ水素原子、又は炭素数1〜30の1価の有機基であり、m10、m11、m12は0又は1であり、0≦m10+m11+m12≦3である。)
【請求項2】
前記ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物が、前記化合物(A)、前記化合物(B)、及び下記一般式(3)で示される化合物(C)を含む混合物の縮合物及び/又は加水分解縮合物を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
U(ORm2(ORm3(O)m4 (3)
(式中、R、Rは水素原子、炭素数1〜30の有機基であり、m2+m3+m4はUの種類により決まる価数であり、m2、m3、m4は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素及びケイ素を除くものである。)
【請求項3】
前記一般式(3)中のUが、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ゲルマニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ビスマス、スズ、リン、バナジウム、ヒ素、アンチモン、ニオブ、及びタンタルのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項4】
沸点が180度以上の溶媒を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に請求項1〜4のいずれか1項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に請求項1〜4のいずれか1項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、アルカリ現像液を用いて前記フォトレジスト膜の露光部を溶解させることによりポジ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
前記フォトレジスト膜を形成する前のケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角と、前記露光後のフォトレジスト膜の未露光部に対応する前記ケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角との差が、10度以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
被加工体上に塗布型有機下層膜材料を用いて有機下層膜を形成し、該有機下層膜の上に請求項1〜4のいずれか1項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、有機溶剤の現像液を用いて前記フォトレジスト膜の未露光部を溶解させることによりネガ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機下層膜をドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機下層膜をマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成し、該有機ハードマスクの上に請求項1〜4のいずれか1項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成し、該ケイ素含有レジスト下層膜上に化学増幅型レジスト組成物を用いてフォトレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で前記フォトレジスト膜を露光し、有機溶剤の現像液を用いて前記フォトレジスト膜の未露光部を溶解させることによりネガ型パターンを形成し、該パターンが形成されたレジスト膜をマスクにしてケイ素含有レジスト下層膜にドライエッチングでパターン転写し、該パターンが転写されたケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機ハードマスクをドライエッチングでパターン転写し、さらに該パターンが転写された有機ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写することを特徴とするパターン形成方法。
【請求項10】
前記フォトレジスト膜の露光において、該フォトレジスト膜の露光部に対応する前記ケイ素含有レジスト下層膜の純水に対する接触角が、露光前と比較して10度以上低下することを特徴とする請求項8又は9に記載のパターン形成方法。
【請求項11】
前記被加工体として、半導体装置基板、又は該半導体装置基板に金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜、及び金属酸化窒化膜のいずれかを成膜したものを用いることを特徴とする請求項5〜10のいずれか1項に記載のパターン形成方法。
【請求項12】
前記被加工体を構成する金属がケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、及び鉄のいずれか、あるいはこれらの合金であることを特徴とする請求項11に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2013−114059(P2013−114059A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260525(P2011−260525)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】