説明

ケトチフェンフマル酸塩含有カプセル剤

【課題】ケトチフェンフマル酸塩の溶出が長時間持続するケトチフェンフマル酸塩を含有するカプセル充てん用液状医薬組成物の提供。
【解決手段】ケトチフェンフマル酸塩と、ケトチフェンフマル酸塩1重量部あたり0.1〜100重量部のクロスポビドンを、油性の液状担体に分散させてなるカプセル充てん用液状医薬組成物。さらに該カプセル充てん用液状医薬組成物を、遮光の施されたカプセル剤皮に充てんしてなるケトチフェンフマル酸塩含有カプセル剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケトチフェンフマル酸塩含有カプセル剤に関する。本発明によって、ケトチフェンフマル酸塩の溶出持続性の付与が可能となった。
【背景技術】
【0002】
ケトチフェンフマル酸塩は、気管支喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性皮膚疾患の治療薬として、世界各国で長年使用されている有用性の高いアレルギー性疾患治療剤である。ケトチフェンフマル酸塩は、H1レセプターを遮断する抗ヒスタミン作用に加え、I型アレルギー反応に基づく肥満細胞や白血球からのケミカルメディエーターの遊離を抑制する作用を有する。既存の一般用鼻炎用内服薬は、抗ヒスタミン薬、血管収縮薬、抗コリン薬等の複数の成分を組み合わせて、アレルギー性鼻炎の特徴的な症状である、「くしゃみ」、「鼻汁」、「鼻閉」を改善するが、ケトチフェンフマル酸塩は、単一有効成分で優れた効果を示し、また、血管収縮作用を有する薬物等に起因する副作用・相互作用の懸念がないため、セルフメディケーションにおいても有用性の高い抗アレルギー薬である。経口投与用の製剤として、1カプセル中にケトチフェンフマル酸塩1.38mgを含有する硬カプセル剤が市販されており、1日2回投与される。抗アレルギー用薬は、慢性的なアレルギー症状に対して、効果が持続することが求められ、また、発生頻度の高い「眠気」の副作用が抑えられることが望まれている。
【0003】
ケトチフェンフマル酸塩を含む持続性経口投与用医薬組成物が特許文献1に記載されている。ここではケトチフェンフマル酸塩を脂肪中に含有させた脂肪顆粒と、プラセボ顆粒を混合し、滑沢剤等を添加して圧縮成形して錠剤とし、二酸化チタンおよび酸化鉄を含むヒドロキシプロピルメチルセルロースのフィルムをコーティングしている。このものは剤形が錠剤であるが、製造に手間がかかる。特許文献2は、ケトチフェンフマル酸塩製剤に、グリチルリチン酸またはその塩を配合することにより、賦形剤等の製剤用添加剤との相互作用による着色、分解等が防止できることを記載し、特許文献3は、ケトチフェンフマル酸塩の液剤、特に点眼液等の眼科用液剤において、光安定性がイプシロンアミノカプロン酸、非イオン界面活性剤、ソルビン酸またはその塩の添加によって改善されることを記載している。
【0004】
【特許文献1】特開平5−246849号公報
【特許文献2】特開平10−152439
【特許文献3】特開2004−315365
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記先行技術の有する問題点を解決し、製造に際して極めて省力化することが可能で、更に溶出の持続性が可能となり、また、カプセル剤とすることで、光安定性が付与されるケトチフェンフマル酸塩含有カプセル剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ケトチフェンフマル酸塩と、クロスポビドンと、製剤化助剤とを含む医薬組成物である。本発明では、クロスポビドンと製剤化助剤を使用することによって、特別な製造工程を必要とせず、効果的にケトチフェンフマル酸塩の溶出持続性が付与したカプセル剤を製することが可能となった。ここで「製剤化助剤」とは、カプセル充てん用医薬組成物において薬物が溶解および/または分散される液状担体を意味する。
【0007】
本発明におけるケトチフェンフマル酸塩とクロスポビドンの割合は、ケトチフェンフマル酸塩が1重量部に対し、0.1〜100重量部であり、好ましくは1〜20重量部、更に好ましくは5〜11重量部である。また、ケトチフェンフマル酸塩と製剤化助剤の割合は、特に限定しないが、実用的なカプセル剤のサイズを考慮した場合、ケトチフェンフマル酸塩が1重量部に対し、50〜500重量部の範囲となることが好ましい。
【0008】
クロスポビドンは、1-ビニル-2-ピロリドンの架橋重合物であり、不溶化ポリビニルピロリドンとも呼ばれる。一般に錠剤の崩壊剤として使用され、速やかな崩壊を付与するが、本発明においてはケトチフェンフマル酸塩の溶出制御剤として作用している。
【0009】
本発明で使用できる製剤化助剤は、中鎖脂肪酸トリグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル、ミツロウ、非イオン界面活性剤、プロピレングリコール脂肪酸エステル、動植物油、脂肪酸があるが、これらに限定されず、カプセル充てん用医薬組成物に常法として使用される添加剤は使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のカプセル充てん用医薬組成物の調製は、例えば、ジャケット付き真空乳化混合機で定温均一に調製した製剤化助剤中に、ケトチフェンフマル酸塩及びクロスポビドンを加え、撹拌して均一な懸濁液とすることによって行うことができる。投入するケトチフェンフマル酸塩及びクロスポビドンの粒子の大きさは特に限定されないが、混合工程では、カプセル充てんに支障をきたさない、通常、粒子径数μm〜数百μmの範囲となるように、微粒子・懸濁化することが好ましい。なお、前記カプセル充てん用医薬組成物の調製方法は、当技術分野では一般的な調製方法であり、特殊な装置・機器を必要としない。
本発明に使用する製剤化助剤としては、中鎖脂肪酸トリグリセリドを主体とし、合計して中鎖脂肪酸トリグリセリドの20重量%以下のグリセリン脂肪酸エステルおよびサラシミツロウを加えた油性の液状担体であることが好ましい。
【0011】
本発明のカプセル剤は、軟カプセル剤であっても硬カプセル剤であってもよい。軟カプセル剤は、常法により、本発明の医薬組成物をゼラチン等の軟カプセル用のカプセル剤皮に充てんすることにより製造することができ、また硬カプセル剤は、液体充てんの常法により、本発明の医薬組成物をゼラチン等の硬カプセルに封入することにより製造することができる。ケトチフェンフマル酸塩は、光に対して不安定なため、カプセル剤皮には酸化チタンを代表とする遮光性成分を含有することが望ましい。
【0012】
本発明のカプセル剤は、クロスポビドンの配合割合を調節することによって、持続的な溶出性を付与することができる。このことは、服用直後の一時的な血中濃度の増大を抑制し、さらに有効な血中濃度の維持時間が延長する効果が期待できる。服用直後の一時的な血中濃度の増大は、副作用の発生頻度を増大させることとなるため、リスク低減が望まれる。ケトチフェンフマル酸塩を含有する市販製剤では副作用発現率で約4%もの眠気が生じており、その低減のための初期溶出特性の制御は有用性が高い。また、血中濃度の維持時間の延長効果によって、服用間隔内での安定した薬効発現が期待できる。
【0013】
本発明のカプセル充てん用医薬組成物には、d−クロルフェニラミンマレイン酸塩などの抗ヒスタミン剤、テオフイリン、アミノフィリン、サルブタモールなどの交感神経作用薬(気管支拡張剤)、ベラドンナ総アルカロイドのような副交感神経遮断剤、イブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェンのような鎮痛解熱剤、トラニラスト、アゼラスチン塩酸塩のような抗アレルギー剤、およびカフェインを含むことができる。また、所望により公知の生薬、鎮咳剤、去痰剤などを含むこともできる。
【0014】
以下、実施例によりこの発明を説明する。
【0015】
試験例1
ケトチフェンフマル酸塩20mgを精密に量り、30分超音波処理し,標準試料とした。別にケトチフェンフマル酸塩20mgを精密に量り、表1に示す各種成分約4gを精密に量り加えた後、30分超音波処理し、ガラス瓶に封入し密栓して、50℃75%RHの環境で1週間、2週間、4週間保管し、保管試料とした。保管試料のケトチフェンフマル酸塩の含量をHPLCにより測定し、ケトチフェンフマル酸塩の残存率を求めた。
【0016】
【表1】

【0017】
ケトチフェンフマル酸塩と製剤化助剤な成分との配合変化は表1のとおりであった。残存率が95%を下回る保管試料は次時点での測定を中止した。その結果、一般的なカプセル充てん液の添加剤である中鎖脂肪酸トリグリセリド、サラシミツロウ、グリセリン脂肪酸エステル及びクロスポビドンは、ケトチフェンフマル酸塩の安定性に対し、影響がわずかであることが観察された。
【0018】
試験例2
表2に示す処方及びケトチフェンフマル酸塩含有の市販製剤について、溶出試験を実施した。具体的には、処方1から処方4の内容液約150mgを精密に量り、硬カプセル剤の剤皮に封入し、試験液に水900mLを用い、パドル法により、毎分50回転で試験を行った。規定時間で溶出液10mLをとり、HPLCにより、製剤単位中に含まれるケトチフェンフマル酸塩の表示含有量に対する溶出率を算出した。市販製剤は検体1個をとり、同様に試験を行った。その結果、ケトチフェンフマル酸塩の溶出が制御され、24時間以上にわたって持続的に放出された。結果を表3及び図1に示す。
【0019】
【表2】

【0020】
【表3】

【実施例】
【0021】
以下に実施例として処方例を挙げる。各成分は常法に従って混合しカプセル充てん用医薬組成物を調製し、さらに該医薬組成物を常法により充てんして、軟カプセル剤を製造した。
【0022】

【0023】

【0024】

【0025】

【0026】

【0027】

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】表2の処方及びケトチフェンフマル酸塩含有の市販製剤の溶出試験の結果を示したグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトチフェンフマル酸塩と、ケトチフェンフマル酸塩1重量部あたり0.1〜100重量部のクロスポビドンを、油性の液状担体に分散させてなるカプセル充てん用液状医薬組成物。
【請求項2】
ケトチフェンフマル酸塩1重量部あたり、クロスポビドンが1〜20重量部である請求項1のカプセル充てん用液状医薬組成物。
【請求項3】
前記液状担体は、中鎖脂肪酸トリグリセリド、グリセリン脂肪酸エステル、ミツロウ、非イオン界面活性剤、プロピレングリコール脂肪酸エステル、動植物油、脂肪酸およびそれらの混合物よりなる群から選ばれる請求項1または2のカプセル充てん用液状医薬組成物。
【請求項4】
前記液状担体は、中鎖脂肪酸トリグリセリド、合計して中鎖脂肪酸トリグリセリドの20重量%以下のグリセリン脂肪酸エステルおよびサラシミツロウとの混合物である請求項1または2のカプセル充てん用液状医薬組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかのカプセル充てん用液状医薬組成物を、遮光の施されたカプセル剤皮に充てんしてなるケトチフェンフマル酸塩含有カプセル剤。

【図1】
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【公開番号】特開2011−219371(P2011−219371A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86651(P2010−86651)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【出願人】(000222200)東洋カプセル株式会社 (14)
【Fターム(参考)】