ケーブルおよびモータ駆動制御システム
【課題】サージノイズを十分に抑制できるケーブルおよび該ケーブルを用いたモータ駆動制御システムを提供する。
【解決手段】導体線12と、絶縁体14と、導体線12の長手方向に沿って絶縁体14を介して配置された金属体16とを有し、金属体16が配置された1つ以上の領域(I)と、金属体16が配置されていない1つ以上の領域(II)とが、導体線16の長手方向に交互に存在するケーブル1。
【解決手段】導体線12と、絶縁体14と、導体線12の長手方向に沿って絶縁体14を介して配置された金属体16とを有し、金属体16が配置された1つ以上の領域(I)と、金属体16が配置されていない1つ以上の領域(II)とが、導体線16の長手方向に交互に存在するケーブル1。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルおよび該ケーブルを用いたモータ駆動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータによってモータの駆動が制御されるモータ駆動制御システムにおいては、最近、制御パルスのライズタイムが早まり、また高電圧化している。そのため、インバータとモータとがケーブルによって接続されたモータ駆動制御システムにおいては、ケーブルとモータとの間やケーブルとインバータとの間のインピーダンス不整合によってこれらの接続点にて反射波が発生し、ケーブル内で共鳴することによって、サージノイズが発生する。そして、サージノイズによって、以下の問題が生じる。
・インバータとモータとを接続するケーブルにおける制御パルスの信号品質を落とし、駆動制御信号が正確に伝わらない。
・ケーブルから放射ノイズが発生し、周辺機器が誤動作を起こす。
・サージノイズのピーク電圧の上昇に伴い、導体線の周囲に存在する絶縁体の劣化を促進し、絶縁性の低下をもたらす。
【0003】
サージノイズが抑制されたモータ駆動ケーブルとしては、例えば、下記のものが提案されている。
(1)モータに接続される主線と、一端がモータ側の主線から分岐し、他端が開放した補助線とを組み合わせた反射型サージ抑制ケーブル(特許文献1)。
(2)モータに接続される主線の近傍に、グランドに接続される電流リターン線を隣接させたモータ駆動ケーブル(特許文献2)。
【0004】
(1)のケーブルにおいては、高域ノイズ成分を抑制するために、抵抗およびまたはインダクタンスを増加させるような、抵抗が大きく、複素透磁率が大きな材料を補助線にメッキしている。そして、ケーブルとモータとの接続点にて反射したノイズ電流を、補助線に導き、サージノイズを熱エネルギに変えて抑制するとされている。
しかし、ケーブルとモータとの間のインピーダンス不整合によって発生したノイズ電流は、異なるインピーダンスを有する補助線においても反射するため、また実際に使用するケーブル長、モータの種類等でインピーダンスが異なるため、インピーダンスの適合が難しく、ノイズ電流を補助線に十分に導入することができない。そのため、サージノイズの抑制効果が小さいものとなる。
【0005】
(2)のケーブルにおいては、電流リターン線の断面積は、十分なリターンパスとしての機能を発揮するために、主線の断面積の1/3より大きくされている。そして、低いループインダクタンスによって、効果的に不要な高周波漏れ電流をインバータに戻し、周辺機器の誤動作を防止できるとされている。
しかし、低いインピーダンスでリターンパスを形成したとしても、(1)のケーブルと同様に反射が生じてしまうため、高周波漏れ電流をインバータに戻すことは難しく、また、戻った高周波漏れ電流は、再度インピーダンスの異なるインバータ側で反射してしまう。そのため、サージノイズの抑制には十分な効果がない。
【0006】
また、ケーブルには、軽量で、フレキシビリティを有することが求められるが、(1)、(2)のケーブルにおいては、補助線または電流リターン線の断面積が大きいため、軽量化やフレキシビリティを満足するものではない。さらに、ケーブルをモータ等の機器に接続する際には、主線を外部端子に接続するほか、補助線等も外部端子に接続しなければならず、接続作業が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4131686号公報
【特許文献2】国際公開第2008/041708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、サージノイズを十分に抑制できるケーブルおよび該ケーブルを用いたモータ駆動制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のケーブルは、導体線と、絶縁体と、前記導体線の長手方向に沿って前記絶縁体を介して配置された金属体とを有し、前記金属体が配置された1つ以上の領域(I)と、前記金属体が配置されていない1つ以上の領域(II)とが、前記導体線の長手方向に交互に存在することを特徴とする。
【0010】
本発明のケーブルは、インバータとモータとを繋ぐためのモータ駆動ケーブルであって、各領域(I)および各領域(II)の導体線の長手方向の長さが、前記インバータから出力される制御パルスの波長の1/100以下であることが好ましい。
本発明のケーブルは、複数条の絶縁心線を有するケーブルであって、各絶縁心線が、それぞれ前記導体線と、前記絶縁体と、前記金属体とを有し、各絶縁心線における各領域(I)および各領域(II)の前記ケーブルの長手方向の位置が、すべての絶縁心線においてそれぞれ同じ位置とされていることが好ましい。
前記金属体は、金属薄膜であることが好ましい。
【0011】
本発明のモータ駆動制御システムは、本発明のケーブルと、インバータと、該インバータによって駆動が制御されるモータとを備え、前記ケーブルの導体線の一方の端部が、前記インバータの端子に接続され、前記ケーブルの導体線の他方の端部が、前記モータの端子に接続されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のケーブルおよびモータ駆動制御システムによれば、サージノイズを十分に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のケーブルを構成する絶縁心線の一例を示す側面図である。
【図3】本発明のケーブルに金属体を配置する際に用いられる金属薄膜付きスリットテープを示す上面図である。
【図4】本発明のモータ駆動制御システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ケーブル>
図1は、本発明のケーブルの一例を示す断面図である。ケーブル1は、断面円形の4条の絶縁心線10と、平行に延びる4条の絶縁心線10からなる絶縁心線束を囲むシース20と、絶縁心線10および絶縁心線10とシース20との間に充填された介在物30とを有する。
【0015】
(絶縁心線)
絶縁心線10は、導体線12と、導体線12を被覆する絶縁体14と、導体線12の長手方向に沿って絶縁体14を介して配置された、絶縁体14を被覆する金属体16とを有する。
【0016】
絶縁心線10には、図2に示すように、金属体16が配置された複数の領域(I)および金属体16が配置されていない複数の領域(II)が、導体線12の長手方向に交互に存在する。
領域(I)と領域(II)とでは、金属体16の有無によって絶縁心線10のインピーダンスが異なるため、領域(I)と領域(II)との間のインピーダンス不整合によって領域(I)と領域(II)との境界にて故意に反射波が発生するようにされている。
【0017】
ケーブル1が、後述するインバータとモータとを繋ぐためのモータ駆動ケーブルである場合、各領域(I)および各領域(II)の導体線12の長手方向の長さは、インバータから出力される制御パルスの波長の1/100以下が好ましく、該波長の1/200以下がより好ましい。
【0018】
各領域(I)および各領域(II)の導体線12の長手方向の長さがインバータから出力される制御パルスの波長の1/100以下であれば、領域(I)と領域(II)との間、ケーブルとモータとの間、ケーブルとインバータとの間のインピーダンス不整合によって反射波が発生しても、該反射波が共鳴しにくく、定在波となりにくいため、サージノイズをさらに抑制できる。
【0019】
なお、反射波が発生する箇所の数を抑える点からは、各領域(I)および各領域(II)の導体線12の長手方向の長さは、3m以上が好ましい。
インバータから出力される制御パルスの波長は、インバータから出力される制御パルスの周波数から計算によって求める。
【0020】
また、複数条の絶縁心線を有するケーブル1の場合、例えば、図4に示すように、各絶縁心線10における各領域(I)および各領域(II)のケーブル1の長手方向の位置が、すべての絶縁心線10においてそれぞれ同じ位置とされていることが好ましい。絶縁心線10ごとに各領域(I)および各領域(II)の位置がずれてしまうと、ケーブル1全体で見たときに、ある絶縁心線10の領域(I)位置と他の絶縁心線10の領域(II)の位置とが重なり、インピーダンスが平均化されてしまうため、領域(I)と領域(II)との間においてインピーダンス不整合による反射波が発生しにくくなるおそれがある。
【0021】
(導体線)
導体線12の材料としては、導電性の高い金属(銅、アルミニウム等)が好ましい。
導体線12の断面形状は、通常、略円形である。略円形の導体線12は、円形の開口を有するダイス中を引き抜くことで作製された単線のものであってもよく、複数の細線を束ねた撚線であってもよい。撚線の場合、その断面は表面が粗面化した略円形と見なすことができる。円形が崩れ、楕円、三角形等の異形状になっても構わない。
【0022】
(絶縁体)
絶縁体14の材料は、通常、樹脂またはゴム弾性体である。絶縁体14の材料としては、具体的には、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂等が挙げられる。
絶縁体14の体積抵抗は、1×106Ω以上が好ましい。
【0023】
(金属体)
金属体16の材料としては、導電性の高い金属(アルミニウム、銅等)が好ましい。
金属体16は、ケーブル1の軽量化やフレキシビリティの点から、金属薄膜が好ましい。金属薄膜としては、金属箔、金属蒸着膜等が挙げられ、軽量化やフレキシビリティの点から、金属蒸着膜が特に好ましい。
【0024】
(ケーブルの製造)
絶縁心線10は、導体線12と絶縁体14の材料(樹脂等)とを共押し出しして金属体16が配置されていない絶縁心線本体を製造した後、(i)図3に示すような、フィルム42の表面に金属体16(金属蒸着膜)が形成された領域と、金属体16(金属蒸着膜)が形成されていない領域とが、長手方向に交互に存在するスリットテープ40を、絶縁心線本体の長手方向に少しずつずらしながら絶縁心線本体の表面に捲回する、または、(ii)絶縁心線本体の表面に金属を蒸着して金属体16(金属蒸着膜)形成することによって製造される。
【0025】
ケーブル1は、例えば、シース20の材料の押し出しと同時に、あらかじめ準備された絶縁心線10および介在物30を共押し出しすることによって製造される。
【0026】
(作用効果)
以上説明したケーブル1にあっては、導体線12の長手方向に沿って絶縁体14を介して配置された金属体16を有し、かつ金属体16が配置された領域(I)と、金属体16が配置されていない領域(II)とが、導体線12の長手方向に交互に存在するため、下記の理由から、サージノイズを十分に抑制できる。
【0027】
理由:
インバータの出力インピーダンスは、通常、数Ωであり、インバータから出力される制御パルスの周波数(キャリア周波数)は、通常、1k〜50kHzである。また、モータのインピーダンスは、出力に依存するが、例えば、5kWでは5kΩ程度である。一方、ケーブルが4条の絶縁心線を有する場合、ある絶縁心線と、他の3条すべての絶縁心線との間のインピーダンスは、例えば、制御パルスの周波数が10kHzでケーブル長が30mの場合、およそ5kΩ程度となる。
そのため、領域(I)と領域(II)とが存在するように金属体16が配置されていない従来のケーブルにおいては、ケーブルとモータとの間やケーブルとインバータとの間のインピーダンス不整合によってこれらの接続点にて反射波が発生し、ケーブル内で共鳴することによって、反射波が定在波化し、サージノイズが発生する。制御パルスが10kHzでケーブル長が30mの場合、およそサージノイズ周波数は1MHzで制御パルス周波数の100倍となる。このときのサージノイズのピーク電圧は、インバータの出力電圧の1.5倍以下となることから、サージノイズのピーク電圧を抑制するためには、エネルギの大きな高周波をカットすることがよいから、100倍以上がよく、さらには200倍以上がよい。波長の関係に直すと、定在波化するケーブルの長さは、制御パルス周波数の1/100以下がよく、さらには1/200以下がよい。
そこで、本発明においては、インピーダンスが異なる領域(I)と領域(II)とを存在させ、領域(I)と領域(II)との間のインピーダンス不整合によって領域(I)と領域(II)との境界にて故意に反射波が発生するようにしている。これによって、反射波が閉じ込められるケーブルの長さが領域(I)または領域(II)の長さとなる、すなわち領域(I)と領域(II)とが存在しないケーブルに比べ、反射波が閉じ込められるケーブルの長さが短くなるため、反射波の共鳴、定在波化が起きにくくなる。その結果、領域(I)と領域(II)とが存在しないケーブルに比べ、サージノイズが十分に抑制される。
【0028】
また、以上説明したケーブル1にあっては、金属体16が金属薄膜である場合に、軽量で、かつフレキシビリティを有する。
また、以上説明したケーブル1にあっては、導体線12以外を外部端子に接続する必要がないため、外部端子への接続が煩雑ではない。
【0029】
また、以上説明したケーブル1にあっては、複数の領域(I)および複数の領域(II)が、導体線12の長手方向に交互に存在するため、ケーブル1の長さが、各領域(I)および各領域(II)の導体線12の長手方向の長さよりも長ければ、ケーブル1内に必ず領域(I)と領域(II)とが存在することになる。そして、ケーブル1内に領域(I)と領域(II)とが存在しさえすれば、ケーブル長、モータの種類等にあわせてインピーダンスを適合させる必要はないため、従来のようなケーブル1の特別な設計が不要である。そのため、製造直後の長いケーブルから所望の長さのケーブル1を切り出しても、ケーブル1内に領域(I)と領域(II)とが存在することになり、従来のような特別な設計を行うことなく、そのままサージノイズ対策がなされたケーブルとして用いることができる。
【0030】
(他の形態)
なお、本発明のケーブルは、導体線と、絶縁体と、導体線の長手方向に沿って絶縁体を介して配置された金属体とを有し、金属体が配置された1つ以上の領域(I)と、金属体が配置されていない1つ以上の領域(II)とが、導体線の長手方向に交互に存在するものであればよく、図示例のケーブル1に限定はされない。
【0031】
例えば、ケーブル内の絶縁心線の数は、図示例のように4条に限定されず、1条であってもよく、2〜3条または5条以上であってもよい。
また、金属体は、絶縁体の円周方向の全体を被覆するものであってもよく、絶縁体の円周方向の一部を被覆するもの(例えば、絶縁心線の長手方向に延びる切り欠きを有するもの)であってもよい。
また、金属体は、図示例のように各絶縁心線の表面を個別に覆うように配置されてもよく、複数条の絶縁心線からなる絶縁心線束の全体をまとめて覆うように配置されてもよい。
また、図示例のように複数の領域(I)および複数の領域(II)が、導体線12の長手方向に交互に存在してもよく、1つの領域(I)と1つの領域(II)が、導体線の長手方向に隣り合って存在していてもよい。
また、絶縁心線とシースとの間に公知のシールド材(金属網組、アルミニウム薄膜等)を配置してもよい。
【0032】
<モータ駆動制御システム>
本発明のモータ駆動制御システムは、本発明のケーブルと、インバータと、該インバータによって駆動が制御されるモータとを備え、前記ケーブルの導体線の一方の端部が、前記インバータの端子に接続され、前記ケーブルの導体線の他方の端部が、前記モータの端子に接続されたものである。
【0033】
図4は、本発明のモータ駆動制御システムの一例を示す概略図である。モータ駆動制御システム50は、インバータ(図示略)と、インバータによって駆動が制御されるモータ70と、ケーブル1とを備え、導体線12の一方の端部が、インバータの端子62に接続され、導体線12の他方の端部が、モータ70の端子72に接続され、金属体16が、端子62および端子72を含むいかなる外部導電体に接続されていないものである。
【0034】
このような本発明のモータ駆動制御システムにあっては、本発明のケーブルによってインバータとモータとを繋いでいるため、ケーブルにおいてサージノイズを十分に抑制できる。そのため、インバータとモータとを接続するケーブルにおける制御パルスの信号品質を維持できる。また、ケーブルから放射ノイズが発生しにくく、周辺機器が誤動作を起こしにくい。また、制御パルスのピーク電圧の上昇が抑えられ、導体線の周囲に存在する絶縁体の劣化が抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のケーブルは、インバータとモータ等の負荷とを繋ぐ駆動ケーブル(モータ駆動ケーブル等)等として有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 ケーブル
10 絶縁心線
12 導体線
14 絶縁体
16 金属体
20 シース
30 介在物
40 スリットテープ
42 フィルム
50 モータ駆動制御システム
62 端子
70 モータ
72 端子
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルおよび該ケーブルを用いたモータ駆動制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インバータによってモータの駆動が制御されるモータ駆動制御システムにおいては、最近、制御パルスのライズタイムが早まり、また高電圧化している。そのため、インバータとモータとがケーブルによって接続されたモータ駆動制御システムにおいては、ケーブルとモータとの間やケーブルとインバータとの間のインピーダンス不整合によってこれらの接続点にて反射波が発生し、ケーブル内で共鳴することによって、サージノイズが発生する。そして、サージノイズによって、以下の問題が生じる。
・インバータとモータとを接続するケーブルにおける制御パルスの信号品質を落とし、駆動制御信号が正確に伝わらない。
・ケーブルから放射ノイズが発生し、周辺機器が誤動作を起こす。
・サージノイズのピーク電圧の上昇に伴い、導体線の周囲に存在する絶縁体の劣化を促進し、絶縁性の低下をもたらす。
【0003】
サージノイズが抑制されたモータ駆動ケーブルとしては、例えば、下記のものが提案されている。
(1)モータに接続される主線と、一端がモータ側の主線から分岐し、他端が開放した補助線とを組み合わせた反射型サージ抑制ケーブル(特許文献1)。
(2)モータに接続される主線の近傍に、グランドに接続される電流リターン線を隣接させたモータ駆動ケーブル(特許文献2)。
【0004】
(1)のケーブルにおいては、高域ノイズ成分を抑制するために、抵抗およびまたはインダクタンスを増加させるような、抵抗が大きく、複素透磁率が大きな材料を補助線にメッキしている。そして、ケーブルとモータとの接続点にて反射したノイズ電流を、補助線に導き、サージノイズを熱エネルギに変えて抑制するとされている。
しかし、ケーブルとモータとの間のインピーダンス不整合によって発生したノイズ電流は、異なるインピーダンスを有する補助線においても反射するため、また実際に使用するケーブル長、モータの種類等でインピーダンスが異なるため、インピーダンスの適合が難しく、ノイズ電流を補助線に十分に導入することができない。そのため、サージノイズの抑制効果が小さいものとなる。
【0005】
(2)のケーブルにおいては、電流リターン線の断面積は、十分なリターンパスとしての機能を発揮するために、主線の断面積の1/3より大きくされている。そして、低いループインダクタンスによって、効果的に不要な高周波漏れ電流をインバータに戻し、周辺機器の誤動作を防止できるとされている。
しかし、低いインピーダンスでリターンパスを形成したとしても、(1)のケーブルと同様に反射が生じてしまうため、高周波漏れ電流をインバータに戻すことは難しく、また、戻った高周波漏れ電流は、再度インピーダンスの異なるインバータ側で反射してしまう。そのため、サージノイズの抑制には十分な効果がない。
【0006】
また、ケーブルには、軽量で、フレキシビリティを有することが求められるが、(1)、(2)のケーブルにおいては、補助線または電流リターン線の断面積が大きいため、軽量化やフレキシビリティを満足するものではない。さらに、ケーブルをモータ等の機器に接続する際には、主線を外部端子に接続するほか、補助線等も外部端子に接続しなければならず、接続作業が煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4131686号公報
【特許文献2】国際公開第2008/041708号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、サージノイズを十分に抑制できるケーブルおよび該ケーブルを用いたモータ駆動制御システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のケーブルは、導体線と、絶縁体と、前記導体線の長手方向に沿って前記絶縁体を介して配置された金属体とを有し、前記金属体が配置された1つ以上の領域(I)と、前記金属体が配置されていない1つ以上の領域(II)とが、前記導体線の長手方向に交互に存在することを特徴とする。
【0010】
本発明のケーブルは、インバータとモータとを繋ぐためのモータ駆動ケーブルであって、各領域(I)および各領域(II)の導体線の長手方向の長さが、前記インバータから出力される制御パルスの波長の1/100以下であることが好ましい。
本発明のケーブルは、複数条の絶縁心線を有するケーブルであって、各絶縁心線が、それぞれ前記導体線と、前記絶縁体と、前記金属体とを有し、各絶縁心線における各領域(I)および各領域(II)の前記ケーブルの長手方向の位置が、すべての絶縁心線においてそれぞれ同じ位置とされていることが好ましい。
前記金属体は、金属薄膜であることが好ましい。
【0011】
本発明のモータ駆動制御システムは、本発明のケーブルと、インバータと、該インバータによって駆動が制御されるモータとを備え、前記ケーブルの導体線の一方の端部が、前記インバータの端子に接続され、前記ケーブルの導体線の他方の端部が、前記モータの端子に接続されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のケーブルおよびモータ駆動制御システムによれば、サージノイズを十分に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明のケーブルの一例を示す断面図である。
【図2】本発明のケーブルを構成する絶縁心線の一例を示す側面図である。
【図3】本発明のケーブルに金属体を配置する際に用いられる金属薄膜付きスリットテープを示す上面図である。
【図4】本発明のモータ駆動制御システムの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<ケーブル>
図1は、本発明のケーブルの一例を示す断面図である。ケーブル1は、断面円形の4条の絶縁心線10と、平行に延びる4条の絶縁心線10からなる絶縁心線束を囲むシース20と、絶縁心線10および絶縁心線10とシース20との間に充填された介在物30とを有する。
【0015】
(絶縁心線)
絶縁心線10は、導体線12と、導体線12を被覆する絶縁体14と、導体線12の長手方向に沿って絶縁体14を介して配置された、絶縁体14を被覆する金属体16とを有する。
【0016】
絶縁心線10には、図2に示すように、金属体16が配置された複数の領域(I)および金属体16が配置されていない複数の領域(II)が、導体線12の長手方向に交互に存在する。
領域(I)と領域(II)とでは、金属体16の有無によって絶縁心線10のインピーダンスが異なるため、領域(I)と領域(II)との間のインピーダンス不整合によって領域(I)と領域(II)との境界にて故意に反射波が発生するようにされている。
【0017】
ケーブル1が、後述するインバータとモータとを繋ぐためのモータ駆動ケーブルである場合、各領域(I)および各領域(II)の導体線12の長手方向の長さは、インバータから出力される制御パルスの波長の1/100以下が好ましく、該波長の1/200以下がより好ましい。
【0018】
各領域(I)および各領域(II)の導体線12の長手方向の長さがインバータから出力される制御パルスの波長の1/100以下であれば、領域(I)と領域(II)との間、ケーブルとモータとの間、ケーブルとインバータとの間のインピーダンス不整合によって反射波が発生しても、該反射波が共鳴しにくく、定在波となりにくいため、サージノイズをさらに抑制できる。
【0019】
なお、反射波が発生する箇所の数を抑える点からは、各領域(I)および各領域(II)の導体線12の長手方向の長さは、3m以上が好ましい。
インバータから出力される制御パルスの波長は、インバータから出力される制御パルスの周波数から計算によって求める。
【0020】
また、複数条の絶縁心線を有するケーブル1の場合、例えば、図4に示すように、各絶縁心線10における各領域(I)および各領域(II)のケーブル1の長手方向の位置が、すべての絶縁心線10においてそれぞれ同じ位置とされていることが好ましい。絶縁心線10ごとに各領域(I)および各領域(II)の位置がずれてしまうと、ケーブル1全体で見たときに、ある絶縁心線10の領域(I)位置と他の絶縁心線10の領域(II)の位置とが重なり、インピーダンスが平均化されてしまうため、領域(I)と領域(II)との間においてインピーダンス不整合による反射波が発生しにくくなるおそれがある。
【0021】
(導体線)
導体線12の材料としては、導電性の高い金属(銅、アルミニウム等)が好ましい。
導体線12の断面形状は、通常、略円形である。略円形の導体線12は、円形の開口を有するダイス中を引き抜くことで作製された単線のものであってもよく、複数の細線を束ねた撚線であってもよい。撚線の場合、その断面は表面が粗面化した略円形と見なすことができる。円形が崩れ、楕円、三角形等の異形状になっても構わない。
【0022】
(絶縁体)
絶縁体14の材料は、通常、樹脂またはゴム弾性体である。絶縁体14の材料としては、具体的には、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂等が挙げられる。
絶縁体14の体積抵抗は、1×106Ω以上が好ましい。
【0023】
(金属体)
金属体16の材料としては、導電性の高い金属(アルミニウム、銅等)が好ましい。
金属体16は、ケーブル1の軽量化やフレキシビリティの点から、金属薄膜が好ましい。金属薄膜としては、金属箔、金属蒸着膜等が挙げられ、軽量化やフレキシビリティの点から、金属蒸着膜が特に好ましい。
【0024】
(ケーブルの製造)
絶縁心線10は、導体線12と絶縁体14の材料(樹脂等)とを共押し出しして金属体16が配置されていない絶縁心線本体を製造した後、(i)図3に示すような、フィルム42の表面に金属体16(金属蒸着膜)が形成された領域と、金属体16(金属蒸着膜)が形成されていない領域とが、長手方向に交互に存在するスリットテープ40を、絶縁心線本体の長手方向に少しずつずらしながら絶縁心線本体の表面に捲回する、または、(ii)絶縁心線本体の表面に金属を蒸着して金属体16(金属蒸着膜)形成することによって製造される。
【0025】
ケーブル1は、例えば、シース20の材料の押し出しと同時に、あらかじめ準備された絶縁心線10および介在物30を共押し出しすることによって製造される。
【0026】
(作用効果)
以上説明したケーブル1にあっては、導体線12の長手方向に沿って絶縁体14を介して配置された金属体16を有し、かつ金属体16が配置された領域(I)と、金属体16が配置されていない領域(II)とが、導体線12の長手方向に交互に存在するため、下記の理由から、サージノイズを十分に抑制できる。
【0027】
理由:
インバータの出力インピーダンスは、通常、数Ωであり、インバータから出力される制御パルスの周波数(キャリア周波数)は、通常、1k〜50kHzである。また、モータのインピーダンスは、出力に依存するが、例えば、5kWでは5kΩ程度である。一方、ケーブルが4条の絶縁心線を有する場合、ある絶縁心線と、他の3条すべての絶縁心線との間のインピーダンスは、例えば、制御パルスの周波数が10kHzでケーブル長が30mの場合、およそ5kΩ程度となる。
そのため、領域(I)と領域(II)とが存在するように金属体16が配置されていない従来のケーブルにおいては、ケーブルとモータとの間やケーブルとインバータとの間のインピーダンス不整合によってこれらの接続点にて反射波が発生し、ケーブル内で共鳴することによって、反射波が定在波化し、サージノイズが発生する。制御パルスが10kHzでケーブル長が30mの場合、およそサージノイズ周波数は1MHzで制御パルス周波数の100倍となる。このときのサージノイズのピーク電圧は、インバータの出力電圧の1.5倍以下となることから、サージノイズのピーク電圧を抑制するためには、エネルギの大きな高周波をカットすることがよいから、100倍以上がよく、さらには200倍以上がよい。波長の関係に直すと、定在波化するケーブルの長さは、制御パルス周波数の1/100以下がよく、さらには1/200以下がよい。
そこで、本発明においては、インピーダンスが異なる領域(I)と領域(II)とを存在させ、領域(I)と領域(II)との間のインピーダンス不整合によって領域(I)と領域(II)との境界にて故意に反射波が発生するようにしている。これによって、反射波が閉じ込められるケーブルの長さが領域(I)または領域(II)の長さとなる、すなわち領域(I)と領域(II)とが存在しないケーブルに比べ、反射波が閉じ込められるケーブルの長さが短くなるため、反射波の共鳴、定在波化が起きにくくなる。その結果、領域(I)と領域(II)とが存在しないケーブルに比べ、サージノイズが十分に抑制される。
【0028】
また、以上説明したケーブル1にあっては、金属体16が金属薄膜である場合に、軽量で、かつフレキシビリティを有する。
また、以上説明したケーブル1にあっては、導体線12以外を外部端子に接続する必要がないため、外部端子への接続が煩雑ではない。
【0029】
また、以上説明したケーブル1にあっては、複数の領域(I)および複数の領域(II)が、導体線12の長手方向に交互に存在するため、ケーブル1の長さが、各領域(I)および各領域(II)の導体線12の長手方向の長さよりも長ければ、ケーブル1内に必ず領域(I)と領域(II)とが存在することになる。そして、ケーブル1内に領域(I)と領域(II)とが存在しさえすれば、ケーブル長、モータの種類等にあわせてインピーダンスを適合させる必要はないため、従来のようなケーブル1の特別な設計が不要である。そのため、製造直後の長いケーブルから所望の長さのケーブル1を切り出しても、ケーブル1内に領域(I)と領域(II)とが存在することになり、従来のような特別な設計を行うことなく、そのままサージノイズ対策がなされたケーブルとして用いることができる。
【0030】
(他の形態)
なお、本発明のケーブルは、導体線と、絶縁体と、導体線の長手方向に沿って絶縁体を介して配置された金属体とを有し、金属体が配置された1つ以上の領域(I)と、金属体が配置されていない1つ以上の領域(II)とが、導体線の長手方向に交互に存在するものであればよく、図示例のケーブル1に限定はされない。
【0031】
例えば、ケーブル内の絶縁心線の数は、図示例のように4条に限定されず、1条であってもよく、2〜3条または5条以上であってもよい。
また、金属体は、絶縁体の円周方向の全体を被覆するものであってもよく、絶縁体の円周方向の一部を被覆するもの(例えば、絶縁心線の長手方向に延びる切り欠きを有するもの)であってもよい。
また、金属体は、図示例のように各絶縁心線の表面を個別に覆うように配置されてもよく、複数条の絶縁心線からなる絶縁心線束の全体をまとめて覆うように配置されてもよい。
また、図示例のように複数の領域(I)および複数の領域(II)が、導体線12の長手方向に交互に存在してもよく、1つの領域(I)と1つの領域(II)が、導体線の長手方向に隣り合って存在していてもよい。
また、絶縁心線とシースとの間に公知のシールド材(金属網組、アルミニウム薄膜等)を配置してもよい。
【0032】
<モータ駆動制御システム>
本発明のモータ駆動制御システムは、本発明のケーブルと、インバータと、該インバータによって駆動が制御されるモータとを備え、前記ケーブルの導体線の一方の端部が、前記インバータの端子に接続され、前記ケーブルの導体線の他方の端部が、前記モータの端子に接続されたものである。
【0033】
図4は、本発明のモータ駆動制御システムの一例を示す概略図である。モータ駆動制御システム50は、インバータ(図示略)と、インバータによって駆動が制御されるモータ70と、ケーブル1とを備え、導体線12の一方の端部が、インバータの端子62に接続され、導体線12の他方の端部が、モータ70の端子72に接続され、金属体16が、端子62および端子72を含むいかなる外部導電体に接続されていないものである。
【0034】
このような本発明のモータ駆動制御システムにあっては、本発明のケーブルによってインバータとモータとを繋いでいるため、ケーブルにおいてサージノイズを十分に抑制できる。そのため、インバータとモータとを接続するケーブルにおける制御パルスの信号品質を維持できる。また、ケーブルから放射ノイズが発生しにくく、周辺機器が誤動作を起こしにくい。また、制御パルスのピーク電圧の上昇が抑えられ、導体線の周囲に存在する絶縁体の劣化が抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明のケーブルは、インバータとモータ等の負荷とを繋ぐ駆動ケーブル(モータ駆動ケーブル等)等として有用である。
【符号の説明】
【0036】
1 ケーブル
10 絶縁心線
12 導体線
14 絶縁体
16 金属体
20 シース
30 介在物
40 スリットテープ
42 フィルム
50 モータ駆動制御システム
62 端子
70 モータ
72 端子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体線と、絶縁体と、前記導体線の長手方向に沿って前記絶縁体を介して配置された金属体とを有し、
前記金属体が配置された1つ以上の領域(I)と、前記金属体が配置されていない1つ以上の領域(II)とが、前記導体線の長手方向に交互に存在する、ケーブル。
【請求項2】
インバータとモータとを繋ぐためのモータ駆動ケーブルであって、
各領域(I)および各領域(II)の導体線の長手方向の長さが、前記インバータから出力される制御パルスの波長の1/100以下である、請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
複数条の絶縁心線を有するケーブルであって、
各絶縁心線が、それぞれ前記導体線と、前記絶縁体と、前記金属体とを有し、
各絶縁心線における各領域(I)および各領域(II)の前記ケーブルの長手方向の位置が、すべての絶縁心線においてそれぞれ同じ位置とされている、請求項1または2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記金属体が、金属薄膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のケーブルと、
インバータと、
該インバータによって駆動が制御されるモータと
を備え、
前記ケーブルの導体線の一方の端部が、前記インバータの端子に接続され、
前記ケーブルの導体線の他方の端部が、前記モータの端子に接続された、モータ駆動制御システム。
【請求項1】
導体線と、絶縁体と、前記導体線の長手方向に沿って前記絶縁体を介して配置された金属体とを有し、
前記金属体が配置された1つ以上の領域(I)と、前記金属体が配置されていない1つ以上の領域(II)とが、前記導体線の長手方向に交互に存在する、ケーブル。
【請求項2】
インバータとモータとを繋ぐためのモータ駆動ケーブルであって、
各領域(I)および各領域(II)の導体線の長手方向の長さが、前記インバータから出力される制御パルスの波長の1/100以下である、請求項1に記載のケーブル。
【請求項3】
複数条の絶縁心線を有するケーブルであって、
各絶縁心線が、それぞれ前記導体線と、前記絶縁体と、前記金属体とを有し、
各絶縁心線における各領域(I)および各領域(II)の前記ケーブルの長手方向の位置が、すべての絶縁心線においてそれぞれ同じ位置とされている、請求項1または2に記載のケーブル。
【請求項4】
前記金属体が、金属薄膜である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のケーブル。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のケーブルと、
インバータと、
該インバータによって駆動が制御されるモータと
を備え、
前記ケーブルの導体線の一方の端部が、前記インバータの端子に接続され、
前記ケーブルの導体線の他方の端部が、前記モータの端子に接続された、モータ駆動制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2013−93229(P2013−93229A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234982(P2011−234982)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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