説明

ケーブルドラム支持装置

【課題】余分なケーブルが巻き出されないケーブルドラム支持装置を提供する。
【解決手段】ケーブルドラム支持装置30は、ケーブル10が巻き付けられたケーブルドラムを支持する。ケーブルドラム支持装置30は、装置本体部31と軸部39と回転制御手段Aとを備えている。装置本体部31は、ケーブルドラム20の一部が収容可能な柱状の収容部31aを備えている。軸部39は、収容部31aの長手方向に延びて装置本体部31に固定され、且つ、ケーブルドラム20の巻き取り部21内部と連通可能にフランジ22に形成されたシャフト孔22aに挿通される。回転制御手段Aは、装置本体部31に取り付けられ、フランジ22の周縁に押しつけられてフランジ22と共回りをすることにより、ケーブルドラム20の回転を制御するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルドラム支持装置に関し、特に、ケーブルが巻かれたケーブルドラムを支持するケーブルドラム支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電柱間には、光ドロップケーブルなどの光ケーブルが架設されている。そして、特許文献1及び2には、光ケーブルが巻き付けられたケーブルドラムが支持されるケーブルドラム支持装置が開示されている。
【0003】
特許文献1には、ドラムを回転させてメッセンジャワイヤまたはケーブルなどの下線を繰り出す線出器(ケーブルドラム支持装置)が開示されている。この線出器は、線出器本体と複数のブレーキとを備え、その複数のブレーキは、各々、線出器本体に取り付けられ、回動するドラムに対して制動力を付与して回動を制御するように構成されている。そして、この線出器は、複数のブレーキのうちの何れかのブレーキが故障しても他のブレーキによりドラムが制動されるように構成されている。これにより、架線敷設作業の安全性を高めることができる、と記載されている。
【0004】
特許文献2には、ブレーキ制動を加えつつドラムを回転させてメッセンジャワイヤ、ケーブル延線ロープ、またはケーブルなどの架線を繰り出すブレーキ付線出器が開示されている。このブレーキ付線出器は、線出器本体とブレーキドラムと摩擦力付与部とバンド帯と固定部と梃子部と調整ハンドルとを備えている。ブレーキドラムは、線出器本体の側部に回動自在に軸支されるとともに、ドラム装着時に一体に固定されている。摩擦力付与部は、ブレーキドラムの外周面に周接している。バンド帯は、ブレーキドラムの外周面に沿うように配置され、摩擦力付与部が固着されるように構成されている。固定部は、線出器本体に取り付けられ、バンド帯の一端を固定する。梃子部は、支軸を介して線出器本体に回動自在に取り付けられ、一端がバンド帯の他端を遊支するように構成されている。調整ハンドルは、支軸を挟んでバンド帯の反対側に配置され、梃子部を移動させてバンド帯の張り具合を調整する。そして、このブレーキ付線出器では、調整ハンドルを回転させることにより、ブレーキ制動力を調整することができる。これにより、ブレーキ付線出器では、ブレーキ制動力の調整作業を容易に行うことができる、と記載されている。
【特許文献1】特開2001−327014号公報
【特許文献2】特開2003−148521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2に開示されている技術は、作業員がブレーキを調整するように構成されている。そのため、ブレーキを掛けるべきときに、作業員がブレーキを掛けるのを忘れてしまえば、余分なケーブルが巻き出されてしまう。なお、余分なケーブルとは、架設作業に必要なケーブルよりも長く巻き出されてしまったケーブルを意味する。
【0006】
また、このようにして巻き出された余分なケーブルは、地面に接触したり、地上に置いてある物に巻き付いたりする虞がある。その結果、巻き出された余分なケーブルは、ケーブル表面にキズが付いたり、ケーブル内部で心線が断線したりしてしまうため、電柱間に架設することができなくなってしまう。よって、巻き出されたケーブルが無駄となってしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、作業員によるドラム回転制御指示が発令されなくてもドラム回転が制御され、それにより、余分なケーブルが巻き出されないケーブルドラム支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のケーブルドラム支持装置は、筒の両端に筒よりも大径のフランジが形成され、筒にケーブルが巻き付けられるケーブルドラムを支持する。そして、ケーブルドラムの少なくとも一部が収容される柱状の収容部を有する装置本体部と、収容部の長手方向に延びて装置本体部に固定され、且つ、筒内部と連通可能にフランジに形成されたシャフト孔に挿通される軸部と、装置本体部に取り付けられ、フランジの周縁に押しつけられてフランジと共回りをすることによりケーブルドラムの回転を制御する回転制御手段と、を備えている。
【0009】
このような構成では、ケーブルドラムの回転に伴って、回転制御手段がケーブルドラムの回転を制御する。そのため、作業員がケーブルドラムの回転制御を指示しなくても、ケーブルドラムの回転を制御することができる。よって、ケーブルドラム支持装置の利便性を向上させることができる。
【0010】
また、ケーブルドラムの回転を制御できるため、ケーブルドラムの空回りを防止でき、その結果、不必要なケーブルの地面への接触や物体への絡まりを防止できる。そのため、ケーブル表面にキズが付いたり、ケーブル内部の心線が切れたりすることを防止できる。
【0011】
後述の好ましい実施形態では、回転制御手段は、軸部と略平行に延びてフランジと接触可能に配置され、且つ、ケーブルドラムの回転に伴いその回転方向と逆向きに回転可能に構成された棒状部材である。
【0012】
また、本発明のケーブルドラム支持装置では、棒状部材と軸部を挟んで反対側に、軸部と略平行に延びる別の棒状部材が設けられ、棒状部材及び別の棒状部材は、各々、第1及び第2弾性体により装置本体部に付勢されており、棒状部材が装置本体部に付勢される付勢力は、別の棒状部材が装置本体部に付勢される付勢力よりも小さいことが好ましい。
【0013】
このような付勢力の大小関係により、別の棒状部材は、棒状部材よりも弱くフランジに押しつけられる。そのため、別の棒状部材は、ケーブルドラムの回転を若干制御し、ケーブルドラムの回転を補助的に制御する。
【0014】
また、作業中において、ケーブルを引っ張る速さとケーブルドラムに巻き付けられているケーブルの長さとの関係によっては、ケーブルドラムの回転制御が困難となる場合がある。この場合であっても、別の棒状部材が取り付けられているため、ケーブルがフランジからはみ出てしまうことを防止できる。
【0015】
また、本発明のケーブルドラム支持装置では、棒状部材と軸部との距離を変化させる第1距離変更手段と、別の棒状部材と軸部との距離を変化させる第2距離変更手段とをさらに備えていることが好ましい。
【0016】
このような構成では、異なるフランジの外径を有するケーブルドラムであっても、ケーブルドラムを支持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、作業員によるドラム回転制御指示が発令されなくてもドラム回転が制御され、それにより、余分なケーブルが巻き出されることはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の説明をする前に、図7を用いて、従来のケーブルドラム支持装置90を説明する。なお、図7には、光ケーブル70がケーブルドラム80に7回巻かれている様子が記載されているが、巻き数が限定されないことは言うまでもない。
【0019】
従来のケーブルドラム支持装置90は、図7に示すように、1本の軸部91と、2つの連結具93,93と、2本の脚部95,95と、で構成されており、いずれも金属製である。
【0020】
軸部91は、ケーブルドラム80の巻き取り部81の中空部及び各フランジ82のシャフト孔に挿通可能となるように、形成されている。
【0021】
各連結具93は、略T字状であり、軸部91と各脚部95とを連結している。具体的には、連結具93は、軸部91が内部に挿通可能な軸挿通部93aと、連結具95の上部が嵌合可能な嵌合部93bとを有し、軸挿通部93aと嵌合部93bとが略垂直に配置されてT字状を形成している。
【0022】
各脚部95は、地面に設置される板状の設置部95aと、設置部95aから延びてケーブルドラム80を支持する3本の支持部95b,95b,95bとを備えている。
【0023】
そして、従来のケーブルドラム支持装置90を用いて光ケーブル70を架線するためには、まず、光ケーブル70が巻かれたケーブルドラム80と、軸部91と、2つの連結具93,93と、2本の脚部95,95とを作業現場まで運搬する。
【0024】
次に、ケーブルドラム80の巻き取り部81の長手方向の長さよりも若干長めの間隔を空けて、支持部95b,95bが地面から上方へ延びるように、また、互いに略平行となるように、設置部95a,95aを地面の上に置く。そして、各脚部95の上部に、各連結具93の嵌合部93bを嵌合させる。
【0025】
続いて、2本の脚部95,95の間に、軸部91が巻き取り部の中空部及び各フランジのシャフト孔に挿通可能となるように、ケーブルドラムを配置する。その後、軸部91の一端を、一方の脚部95に嵌合された連結具93の軸挿通部93aに挿通させ、ケーブルドラム80の巻き取り部81の中空部及び各フランジ82のシャフト孔に挿通させて、他方の脚部95に嵌合された連結具93の軸挿通部93aに挿通させる。これにより、光ケーブル70がケーブルドラム80から巻きだし可能となる。
【0026】
しかし、従来のケーブルドラム支持装置90には、以下に示す2つの不具合がある。
【0027】
1つ目の不具合は、作業現場で、ケーブルドラム支持装置90を組み立てなければならない、ということである。すなわち、作業現場まで、ケーブルドラム80と、軸部91と、2つの連結具93,93と、2本の脚部95,95とを運搬しなければならない。そして、いずれも軽量ではないため、一人での運搬が不可能であり、複数の人間の労力が必要となる。その上、運搬後、組み立てて架設を行い、架設終了後、解体するため、作業時間が長時間となり、作業効率の低下を招来する。
【0028】
2つ目の不具合は、従来のケーブルドラム支持装置90がブレーキ機能を有していない、ということである。そのため、ケーブルドラム80の空回りを防止することができず、余分な光ケーブルが巻き出されてしまう虞がある。その結果、巻き出された光ケーブルが地面に接触したり、地上の物に巻き付いたりして、ケーブル表面にキズが付いたり、ケーブル内部の心線が切断されてしまう。
【0029】
また、上述のように、特許文献1及び2等には、ブレーキ機能を有するケーブルドラム支持装置が開示されているが、いずれも、作業員による回転制御指示が発令されて回転が制御される。そのため、作業員が不注意で回転制御指示の発令を忘れると、ケーブルドラムの空回りを止めることができない。
【0030】
そこで、本願発明者らは、上記の点に鑑みて、効率良く架設作業を行うことができるとともに、ケーブルドラムの空回りを自動的に防止可能なケーブルドラム支持装置を発明した。以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0031】
本実施形態では、光ケーブル10としてドロップケーブルを例に挙げ、図1から図5を用いて、光ケーブル10の構成、ケーブルドラム20の構成、ケーブルドラム支持装置30の構成及びケーブルドラム支持装置30を用いた架設方法を示す。
【0032】
まず、図1及び図2を用いて、光ケーブル10及びケーブルドラム20の構成を示す。図1は、光ケーブル10の横断面図である。図2は、ケーブルドラム20の斜視図である。
【0033】
光ケーブル10は、図1に示すように、ケーブル本体部1と支持線部2と首部3とを備え、ケーブル本体部1と支持線部2とは、互いに長手方向を揃えて、首部3を介して連結されている。ケーブル本体部1は、1本または複数本の光ファイバ4,4,…と、テンションメンバ5,5と、共通被覆6とで構成されている。テンションメンバ5,5は、各々、光ファイバ4から所定距離隔てた上下に配置され、光ケーブル本体部1における張力を保つ。共通被覆6は、光ファイバ4,4,…とテンションメンバ5,5との外周に施されている。また、支持線部2は、支持線7と被覆8とで構成されており、支持線7の外周に被覆8が施されている。
【0034】
ケーブルドラム20は、図2に示すように、巻き取り部(筒)21と、シャフト孔22aを有するフランジ22,22とで構成されており、いずれも樹脂製である。巻き取り部21は、円筒状に形成され、光ケーブル10が巻き付けられる部分である。各フランジ22は、巻き取り部21の外径よりも大きな径の円盤状に形成され、シャフト孔22aと巻き取り部21の筒の中空部とが連通されて、巻き取り部21の端部に連結されている。
【0035】
次に、図3、図4及び図6を用いて、ケーブルドラム支持装置30の構成を示す。図3は、装置本体部31を上から見た図である。図4は、装置本体部31を側面側から見た図である。図6は、距離変更手段B付近の拡大図である。なお、以下において、「装置本体部31の正面」とは、作業時に作業員側に配置される装置本体部31の面を意味し、「装置本体部31の背面」とは、作業時に作業員から離れて配置される装置本体部31の面を意味する。
【0036】
ケーブルドラム支持装置30は、図3及び図4に示すように、樹脂製の装置本体部31と軸部39とを備えている。なお、軸部39(図5に図示)は、金属製パイプであり、巻き取り部21の中空部及び各フランジ22の各シャフト孔22aに挿通可能となるように形成されている。
【0037】
装置本体部31は、図3及び図4に示すように、上面を有していない略直方体状の箱である。そして、その箱内部(収容部)31aに、ケーブルドラム20の一部が収容される。
【0038】
装置本体部31の両側面には、各々、外部連結具32,32が装置本体部31の外側に取り付けられており、内部連結具33,33が装置本体部31の内側に取り付けられている。各外部連結具32及び各内部連結具33は、各々、長尺な板状部材であり、各側面の長手方向に延びて、且つ、上面が各側面の上部と面一となるように、取り付けられている。また、各外部連結具32の上面には、軸固定具37が取り付けられている。各内部連結具33には、樹脂製の半円盤状のフランジ当接部35が、装置本体部31の内側を向いて取り付けられている。各フランジ当接部35は、各フランジ22を当接するだけでなく、光ケーブル10が取り出される際には、その取り出し方向に各フランジ22を回転させるように構成されている。
【0039】
装置本体部31の正面及び背面には、各々、切り欠き部31b,31bが上部から下方へ向かって形成されている。これにより、装置本体部31の正面及び背面は、各々、上部の一部が切り欠けられて形成されている。また、装置本体部31の正面及び背面には、各々、外部連結具41,51が装置本体部31の外側に取り付けられている。外部連結具41,51は、各々、長尺な板状部材であり、正面及び背面の長手方向に延びて、且つ、上面が切り欠き部31bの上部と面一となるように、取り付けられている。
【0040】
外部連結具41の上方には、外側管(別の棒状部材)43及び内側管44が、外部連結具41の長手方向と略平行に延びて配置されている。外側管43は、塩化ビニル製の管である。内側管44は、鉄管であり、外側管43よりも小径且つ長尺であり、互いに長手方向を揃えて外側管43の内部に配置されている。そのため、内側管44の両端は外側管43から露出されており、内側管の露出された部分には、各々、ネジ45,45が外部連結具41の上面に向かって刺さっている。なお、各ネジ45の頭部は、内側管44の外面よりも上方へ突設している。
【0041】
図6に示すように、ネジ45,45には、各々、バネ(第2弾性体)46,46と、ナット(第2距離変更手段)47,47と緩衝具48,48とが取り付けられている。各バネ46は、内側管44よりも下側の各ネジ45の外側に、各ネジ45の長手方向に伸縮自在となるように配置されている。各ナット47は、内側管44よりも上側の各ネジ45のネジ溝に螺合され、各ネジ45のネジ溝に螺合されながら各ネジ45の頭部と内側管44の側面との間を移動可能である。また、各ナット47は固定手段を有しており、これにより、各ネジ45の長手方向への各ナット47の移動を阻止することができる。各緩衝具48は、上側緩衝具と下側緩衝具とで構成されており、内側管44の側面を挟持可能に形成されている。
【0042】
外部連結具51の上方には、外側管(棒状部材)53及び内側管54が、外部連結具51の長手方向と略平行に延びて配置されている。外側管53は、塩化ビニル製の管であり、フランジ22,22が接触可能となるように配置されている。そして、外側管53が装置本体部31に付勢される付勢力は、外側管43が装置本体部31に付勢される付勢力よりも大きい。内側管54は、鉄管であり、外側管53よりも小径且つ長尺であり、互いに長手方向を揃えて外側管53の内部に配置されている。そのため、内側管54の両端は外側管53から露出されており、内側管の露出された部分には、各々、ネジ55,55が外部連結具51の上面に向かって刺さっている。
【0043】
ネジ55,55には、ネジ45,45と同様、図6に示すように、各々、バネ(第2弾性体)56,56と、ナット(第2距離変更手段)57,57と緩衝具58,58とが取り付けられている。各バネ56は、内側管54よりも下側の各ネジ55の外側に、各ネジ55の長手方向に伸縮自在となるように配置されている。各緩衝具58は、内側管54の側面を挟持可能に形成されている。各ナット57は、内側管54よりも上側の各ネジ55のネジ溝に螺合され、各ネジ55のネジ溝に螺合されながら各ネジ55の頭部と内側管54の側面との間を移動可能である。また、各ナット57は固定手段を有しており、これにより、各ネジ55の長手方向への各ナット57の移動を阻止することができる。各緩衝具58は、内側管54の側面を挟持可能に形成されている。
【0044】
以上より、外側管53は、外部連結具51に固定されることなく、ケーブルドラム20のフランジ22が接触可能となるように配置されている。そのため、ケーブルドラム20が回転すると、外側管53は、ケーブルドラム20の回転方向とは逆向きに回転して、ケーブルドラムの回転を制御するように構成されている。すなわち、本実施形態において、ケーブルドラム20の回転を制御する回転制御手段Aは、外側管53である。
【0045】
なお、外側管43は、各ネジ45の頭部が内側管44よりも上方へ突設されているために、外側管53よりも下方へ配置されている。具体的には、後述の通り、ネジ45を下方へ回して外側管43を下方へ移動させることにより、外側管43をフランジ22,22に軽く接触させている。そのため、外側管43は、外側管53よりも、ケーブルドラム20のフランジ22へ弱く接触されている。よって、ケーブルドラム20の回転時に、外側管43は、その回転方向と逆向きに若干回転されるにすぎず、外側管53ほどケーブルドラム20の回転を制御しない。すなわち、外側管43は、ケーブルドラム20の回転を補助的に制御する。
【0046】
続いて、図5を用いて、光ケーブル10を架線する方法を示す。図5は、ケーブルドラム20が取り付けられたドラム支持装置130の側面側から見た図である。
【0047】
まず、図4に示すケーブルドラム支持装置30を組み立てる。
【0048】
ケーブルドラム支持装置30を組み立てるためには、まず、装置本体部31と、外側連結具41,51と、塩化ビニル製の外側管43,53と、鉄製の内側管44,54とを用意する。
【0049】
次に、上面が切り欠き部31b,31bと面一となるように、装置本体部31の外側に外側連結具41,51を取り付ける。また、互いに長手方向を揃えて、内側管44,54を、各々、外側管43,53の内部に挿入する。
【0050】
続いて、ネジ45,55を2本ずつ、ナット47,57を2個ずつ、緩衝具48,58を2個ずつ用意する。そして、各ネジ45,55のネジ溝に各ナット47,57を螺合させて、各ナット47,57よりもネジ先端側に各緩衝具48,58の上側緩衝具を取り付ける。また、外側連結具41,51の上面の各端には、各バネ46,56を戴置し、各バネ46,56の上端には各緩衝具48,58の下側緩衝具を戴置する。
【0051】
続いて、内側管44,54が各々挿入された外側管43,53を、各々、外側連結具41,51の上方に配置し、各ナット47,57及び各緩衝具48,58の上側緩衝具が取り付けられたネジ45,55を、外側管43,53から露出された内側管44,54の上方から外側連結具41,51の上面へ向かって差す。これにより、図4に示すケーブルドラム支持装置30を組み立てることができる。
【0052】
次に、図5に示すように、ケーブルドラム20をケーブルドラム支持装置30に支持させる。具体的には、ケーブルドラムの一部を装置本体部31の内部31aに収容させ、各フランジ22を切り欠き部31b,31bの上部に接触させて、巻き取り部21の中空部及びケーブルドラム20のシャフト孔22aに軸部39を挿通させる。そして、一方のフランジ当接部35に一方のフランジ22を当接させて、その軸部39の両端を、各々、軸固定部37,37に固定する。すると、ケーブルドラム20の重みにより、各バネ46,56が縮み、外側管43,53がフランジ22,22の一部に接触する。そして、緩衝具58の上側緩衝具を内側管54の上に戴置し、内側管54の上にナット57を戴置する。また、同様に、緩衝具48の上側緩衝具を内側管44の上に戴置し、内側管44の上にナット47を戴置する。そして、ナット47をネジ45に螺合させながら若干下方へ移動させ、外側管43をフランジ22,22の一部に軽く接触させる。そして、ナット47をその位置に固定させる。これにより、外側管53をフランジ22に付勢させる一方、外側管43をフランジ22に軽く接触させる。
【0053】
続いて、ケーブルドラム20を取り付けたケーブルドラム支持装置130を、作業現場まで運搬する。
【0054】
続いて、ケーブルドラム20から光ケーブル10を巻きだし、所定の箇所に架設する。このとき、図5に示すように、外側管53は、ケーブルドラム20のフランジ22に接触しているため、ケーブルドラム20の回転に伴ってその回転方向とは逆向きに回転する。これにより、ケーブルドラム20の回転が制御され、ケーブルドラム20を空回りさせることなく架設作業を行うことができる。また、外側管43は、ケーブルドラム20のフランジ22に軽く接触しているため、ケーブルドラム20の回転に伴ってその回転方向とは逆向きに若干回転する。これにより、ケーブルドラム20の回転が若干制御される。
【0055】
フランジの外径の異なるケーブルドラムを用いて架設作業を行う場合、ケーブルドラム20をケーブルドラム支持装置30から取り外し、ナットの固定を解除する。すると、各バネ46,56は、各々、復元力に従って延びる。その後、フランジの外径の異なるケーブルドラムを固定する。すると、各バネ46,56は、各々、再度縮む。このとき、各バネ46,56は、各々、より大きなフランジ外径を有するケーブルドラムが固定された場合には、さらに縮み、より小さなフランジ外径を有するケーブルドラムが固定された場合には、それほど縮まない。これにより、ケーブルドラム支持装置30は、異なるフランジの外径を有するケーブルドラムを支持することができる。
【0056】
以上より、本実施形態におけるケーブルドラム支持装置30は、回転制御手段Aを備えている。回転制御手段Aは、ケーブルドラム20の回転により、外側管53がその回転方向と逆向きに回転してケーブルドラム20の回転を制御するように構成されている。そのため、ケーブルドラム20の空回りを防止することができる。その結果、余分なケーブルが巻き出されることなく、架設作業を行うことができる。そのため、巻き出された余分なケーブルが地面と接触したり、地上の物に巻き付いたりすることはない。よって、架設前に、ケーブル表面にキズが付いたり、ケーブル内部で心線が切れてしまったりすることはなく、光ケーブル10が無駄になってしまうことはない。
【0057】
また、外側管43が装置本体部31に付勢される付勢力が、外側管53が装置本体部31に付勢される付勢力よりも大きくなるように、ケーブルドラム支持装置30は構成されている。換言すると、図5に示す通り、外側管43は、外側管43に比べてフランジ22,22に軽く接触している。その結果、外側管43は、ケーブルドラム20の回転により、その回転方向と逆向きに若干回転してケーブルドラム20の回転を制御するように構成されている。そのため、ケーブルドラム20の空回りを若干防止することができる。さらに、光ケーブル10を引っ張る速さとケーブルドラム30に巻かれている光ケーブル10の長さとの関係によっては、回転制御手段Aによる回転制御を行えない場合がある。その場合であっても、外側管43により、光ケーブル10がフランジ22,22からはみ出てしまうことを防止することができる。
【0058】
また、ケーブルドラム支持装置30は、外側管43,53を備えている。そのため、本実施形態のように、外側管43がケーブルドラム20の回転を補助的に制御し外側管53がケーブルドラム20の回転を制御するように、ケーブルドラム20をケーブルドラム支持装置30に支持させることができるだけでなく、逆に、外側管43がケーブルドラム20の回転を制御し外側管53がケーブルドラム20の回転を補助的に制御するように、ケーブルドラム20をケーブルドラム支持装置30に支持させることができる。従って、ケーブルドラム支持装置30は、ケーブルドラム20の回転方向や光ケーブル10の巻きだし方向を考慮することなく、ケーブルドラム20を支持することができる。
【0059】
さらに、外側管43,53は、ケーブルドラム支持装置30の下方に設置されている。そのため、ケーブルドラム20をケーブルドラム支持装置30に容易に設置することができる。
【0060】
その上、外側管43,53は、ネジ45,55により装置本体部31に固定されているため、光ケーブル10がドラム回転時にケーブルドラム20からはみ出してしまうことを防止することができる。
【0061】
また、ケーブルドラム支持装置30は、距離変更手段Bを備えている。そのため、ケーブルドラム支持装置30は、フランジ22の外径が変わっても、ケーブルドラム支持装置30にそのケーブルドラムを取り付けて架設作業を行うことができるように構成されている。よって、ケーブルドラムの大きさに合わせてケーブルドラム支持装置を変える必要はなく、経済的である。
【0062】
また、ケーブルドラム支持装置30は、従来のケーブルドラム支持装置90と異なり、装置の組立が不要なため、架設時間を短縮することができる。また、ケーブルドラム支持装置30を一人で運搬可能なため、少ない人数で作業を行うことができる。そのため、ケーブルドラム支持装置30は、作業効率を向上させることができる。
【0063】
なお、本実施形態において、距離変更手段は、外側管43,53が、各々、各バネ46,56の伸縮に伴って、各ネジ45,55の長手方向に沿って移動可能となるように構成されているとしたが、外側管43,53が上下方向、左右方向、フランジの半径方向に移動可能となるように構成されていてもよい。
【0064】
また、外側管43,53は、何れも、ケーブルドラム支持装置30の下方に設けられているとしたが、フランジ22に接触可能であればケーブルドラム支持装置30の下方以外に設けられていても良い。ただし、ケーブルドラム20をケーブルドラム支持装置30に設置する際の利便性を考慮すると、外側管43,53は、何れも、ケーブルドラム支持装置30の下方に設けられていることが好ましい。
【0065】
外側管43が装置本体部31に付勢される付勢力は、外側管53が装置本体部31に付勢される付勢力よりも大きくなるとしたが、各バネ46の伸縮力が各バネ56の伸縮力よりも大きくなるように構成されていてもよい。
【0066】
装置本体部31は、略直方体状の箱であるとしたが、角柱状の箱であってもよい。装置本体部31の形状は、ケーブルドラム20の一部が収容される形状であれば、特に限定されない。また、装置本体部31は蓋を備えていてもよく、その場合には、蓋は、ケーブルドラム20を支持後、ケーブルドラム20の上面を覆うように構成されていることが好ましい。
【0067】
各外部連結具32及び各内部連結具33の代わりに、各々、装置本体部31の各側面の上部が装置本体部31の外側及び内側に延びて形成されていてもよい。同様に、外部連結具41の代わりに、各々、装置本体部31の正面の上部が装置本体部31の外側に延びて形成されていてもよく、外部連結具51の代わりに、各々、装置本体部31の背面の上部が装置本体部31の外側に延びて形成されていてもよい。
【0068】
軸部39は、金属製パイプとしたが、樹脂製パイプであってもよい。軸部39の材質は、特に限定されない。同様に、外側管43,53の材質は、各々、塩化ビニルとしたが、塩化ビニルに限定されない。また、内側管44,54の材質は、各々、鉄としたが、鉄に限定されない。さらに、内側管44,54は、各々、管でなく、棒であってもよい。
【0069】
また、ケーブルドラム20において、巻き取り部21及びフランジ22,22は、何れも樹脂製であるとしたが、発泡スチロール製であってもよく、厚紙製であってもよく、その材質に限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明は、ケーブルドラム支持装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】ケーブルの横断面を示す図である。
【図2】ケーブルドラムの正面図である。
【図3】ケーブルドラム支持装置を上方から見た図である。
【図4】ケーブルドラム支持装置を側面から見た平面図である。
【図5】ケーブルドラムが取り付けられたケーブルドラム支持装置を側面から見た図である。
【図6】距離変更手段付近の拡大図である。
【図7】従来におけるケーブルドラム支持装置を正面から見た図である。
【符号の説明】
【0072】
10 光ケーブル
20 ケーブルドラム
21 巻き取り部(筒)
22 フランジ
22a シャフト孔
30 ケーブルドラム支持装置
31 装置本体部
31a 収容部
39 軸部
43,53 外側管(棒状部材)
44,54 内側管(別の棒状部材)
46,56 バネ(第1及び第2弾性体)
47,57 ナット
A 回転制御手段
B 距離変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒の両端に該筒よりも大径のフランジが形成され該筒にケーブルが巻き付けられるケーブルドラムを支持するケーブルドラム支持装置であって、
前記ケーブルドラムの少なくとも一部が収容される収容部を有する装置本体部と、
筒内部と連通可能に前記フランジに形成されたシャフト孔に挿通され、且つ、前記装置本体部に固定されている軸部と、
前記装置本体部に取り付けられ、前記フランジの周縁に押しつけられて該フランジと共回りをすることにより前記ケーブルドラムの回転を制御する回転制御手段と
を備えていることを特徴とするケーブルドラム支持装置。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブルドラム支持装置において、
前記回転制御手段は、前記軸部と略平行に延びて前記フランジと接触可能に配置され、且つ、前記ケーブルドラムの回転に伴いその回転方向と逆向きに回転可能に構成された棒状部材であることを特徴とするケーブルドラム支持装置。
【請求項3】
請求項2に記載のケーブルドラム支持装置において、
前記棒状部材と前記軸部を挟んで反対側に、該軸部と略平行に延びる別の棒状部材が設けられ、
前記棒状部材及び前記別の棒状部材は、各々、第1及び第2弾性体により前記装置本体部に付勢されており、
前記棒状部材が前記装置本体部に付勢される付勢力は、前記別の棒状部材が該装置本体部に付勢される付勢力よりも小さいことを特徴とするケーブルドラム支持装置。
【請求項4】
請求項1に記載のケーブルドラム支持装置において、
前記棒状部材と前記軸部との距離を変化させる第1距離変更手段と、
前記別の棒状部材と前記軸部との距離を変化させる第2距離変更手段と
をさらに備えていることを特徴とするケーブルドラム支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−91444(P2007−91444A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286263(P2005−286263)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(505368302)株式会社ネット・エックス (1)
【Fターム(参考)】