説明

ゲル化剤

【課題】 常温で液状の有機溶媒や油脂類を加熱することなく十分な強度でゲル化することができるゲル化剤を提供すること。
【解決手段】 本発明のゲル化剤は、(A)油性ゲル化剤と、(B)水酸基を有するテルペン系溶媒とを含み、(A)成分と(B)成分との質量比(A)/(B)が10/90以上25/75以下であることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温で液状の有機溶媒や油脂類をゲル化するために用いられるゲル化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機溶媒や油脂類をゲル化或いは固化するために油性ゲル化剤が利用されている。油性ゲル化剤の用途は、塗料、インク、化粧品、医薬品などの粘度調整剤や固化剤や、廃食用油、廃潤滑油などの廃油の固形化処理剤など多岐にわたる。油性ゲル化剤としては、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸ナトリウムなどの長鎖脂肪酸の金属塩、ジベンジリデンソルビトール、アミノ酸誘導体等が知られている。
【0003】
油性ゲル化剤はゲル化の対象物である有機溶媒や油脂類中に分子レベルで均一に分散し、水素結合などの分子間相互作用によりネットワーク構造を形成することでゲル化を生じさせる。そのため、有機溶媒や油脂類への添加後に油性ゲル化剤を均一分散させるための加熱が行われる。しかし、このような加熱を行うことは、例えば、ゲル化の対象物中の成分が変性する問題や、廃食用油などの廃油を固形化処理する場合には廃油の加熱による火災の問題がある。
【0004】
上記事情から、液状の有機溶媒や油脂類を加熱することなくゲル化することができるゲル化剤が望まれている。廃食用油の固形化処理剤は家庭における廃油の廃棄手段として普及しており、廃油の加熱を必要としない処理方法や処理剤についてはこれまでにも種々検討がなされている。例えば、下記特許文献1には、12−ヒドロキシステアリン酸の微粉末化物を用いる廃食用油の処理方法が開示されている。下記特許文献2には、12−ヒドロキシステアリン酸をN−メチルピロリドンのようなアルキルピロリドン化合物からなる溶剤に溶解させた固形化処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−253797号公報
【特許文献2】特開平6−80986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、12−ヒドロキシステアリン酸の微粉末化物をゲル化対象物中に均一に分散させるために、機械的な処理による分散、長時間の攪拌が必要である。そのうえ、攪拌後のゲル化対象物はペースト状になり固形物として取り扱うことができないという問題がある。
【0007】
特許文献2に記載の処理剤は、ゲル化対象物にゲル化剤を加熱することなく容易に分散することができる点では優れている。しかし、ゲル化後の固形物の強度が低いという問題がある。そのうえ、N−メチルピロリドンなどの溶剤が含まれているため、皮膚に接触したときの安全性の問題や、固形化処理剤及びゲル化後の固形物が魚臭のような不快な臭いを有することの問題もある。
【0008】
本発明は、上記従来技術が有する問題を鑑みてなされたものであり、常温で液状の有機溶媒や油脂類を加熱することなく十分な強度でゲル化することができるゲル化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油性ゲル化剤を、水酸基を有するテルペン系溶媒に特定の割合で溶解した液状のゲル化剤が、常温で液体の有機溶媒および油脂類を加熱することなく十分な強度でゲル化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、以下の[1]〜[2]に関する。
[1] (A)油性ゲル化剤と、(B)水酸基を有するテルペン系溶媒と、を含み、(A)成分と(B)成分との質量比(A)/(B)が10/90以上25/75以下であるゲル化剤。
[2] 上記(A)油性ゲル化剤が12−ヒドロキシステアリン酸である[1]に記載のゲル化剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、常温で液状の有機溶媒や油脂類を加熱することなく十分な強度でゲル化できるゲル化剤を提供することができる。本発明のゲル化剤によれば、廃食用油などの廃油の固形化処理剤として使用する場合、加熱や機械的な処理による分散、長時間の攪拌など煩雑な操作を必要とせず、より安全で容易に廃油の処理が可能であるとともに、不快な匂いが少ないという効果が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。まず、本発明に係るゲル化剤の実施形態について説明する。
【0013】
本実施形態のゲル化剤は、(A)油性ゲル化剤(以下、成分Aと略称することがある。)と、(B)水酸基を有するテルペン系溶媒(以下、成分Bと略称することがある。)と、を含み、(A)成分と(B)成分との質量比(A)/(B)が10/90以上25/75以下である液状のゲル化剤である。
【0014】
本実施形態のゲル化剤は、常温(約25℃)環境下にて液状であり、成分B中に成分Aが均一に分子レベルで分散した状態であることが好ましい。このような状態は、例えば、成分Aと成分Bとを混合し、この混合物を、成分Aの融点以上で加熱して成分Aを溶解した後、常温(約25℃)に冷却或いは常温で静置することにより得ることができる。本実施形態のゲル化剤は、ゲル化対象物に混合することで、加熱することなく、また機械的な処理や長時間の攪拌を伴わずにゲル化対象物を十分な強度でゲル化することができる。
【0015】
本実施形態において、ゲル化剤の25℃における粘度が55mPa・s〜105mPa・sであると、ゲル化対象物へ混合した際に、機械的な処理や長時間の攪拌をしなくても、十分に分散されるので好ましい。ゲル化剤の粘度は、東機産業株式会社製TVE−22形粘度計・コーンプレートタイプ(E型粘度計)及び1°34’×R24の標準コーンロータ(ロータコード01)を用い、温度25℃、ずり速度76.6sec−1にて測定される。
【0016】
本実施形態のゲル化剤において、成分Bである水酸基を有するテルペン系溶媒は水素結合形成能を有しており、成分Aがゲル化剤として機能するのに重要な分子間水素結合を阻害することができる。成分Aと成分Bとが上記特定の質量比で混合されていることにより、本実施形態のゲル化剤は、成分Aが分子間水素結合による会合体を形成することなく成分B中に分子レベルで分散した液状の状態を取ることができる。そして、このゲル化剤がゲル化対象物に混合されたときには、成分Aがゲル化対象物中に十分分散され、成分Bによる上記阻害が低下することで、成分Aによるゲル化能を十分に発現させることができる。
【0017】
成分Aとしては、例えば、3−ヒドロキシミリスチン酸、10−ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、8,10−ジヒドロキシオクタデカン酸などの炭素数16〜30のヒドロキシ脂肪酸及び12−ヒドロキシステアリン酸のグリセライドであるヒマシ硬化油、ジベンジリデンソルビトール及びその誘導体、ラウロイルグルタミン酸ジブチルアミドやジカプロイルリジンラウリルアミドなどのN−アシルアミノ酸誘導体などが挙げられる。これらの中でも、12−ヒドロキシステアリン酸が比較的融点が低く、成分Bへ加熱溶解する際に、低沸点の溶媒を選択することができることから、好ましく用いることができる。
【0018】
成分Bとしては、例えば、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、カルベオール、シトロネロール、ミルテノール、ペリリルアルコールなどが挙げられる。これらは、香料にも利用されている溶媒であり、有機溶剤特有の不快な臭いを有さず、柑橘系の臭いを有する。そのため、上記の溶媒をゲル化剤の成分として使用した場合、他の有機溶剤を用いた場合に比べて臭いの問題を低減することができる。特に、ターピネオール、ジヒドロターピネオールは、沸点が高く安全性が高いことから好ましく用いることができる。水酸基を有するテルペン系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、あるいは2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
本実施形態のゲル化剤において、成分Aと成分Bの質量比((A)/(B))は10/90以上25/75以下であり、より好ましくは15/85以上23/77以下である。質量比(A)/(B)が10/90未満であると、ゲル化剤をゲル化対象物に混合した際に、成分Bのゲル化阻害効果が過剰に働くため、結果として十分なゲル強度を有するゲル化物が得られなくなる。一方、(A)/(B)が25/75を超えると、成分Bの成分Aに対する分子間水素結合の阻害効果が低くなるため、成分Aと成分Bとを加熱混合した後にゲル化が生じやすくなり常温で液状のゲル化剤が得られなくなる。この場合、成分Aのゲル化対象物への分散性が低下し、十分な強度のゲル化が困難となる。
【0020】
本実施形態のゲル化剤における成分Aの含有量は、十分なゲル化能を発現させる観点から、ゲル化剤全量を基準として10〜25質量%であることが好ましく、15〜23質量%であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態のゲル化剤は、成分Aと成分Bに加えて、本発明の目的を損なわない範囲で、各種添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、ゲル強度向上のための有機カルボン酸などの金属塩、石油樹脂系や天然樹脂系の粘着付与剤、ゲル化対象物への分散性向上や成分Aと成分Bの相溶性を調整するための各種界面活性剤や溶剤、ゲル化剤の香りを調整するための各種香料、ゲル化剤の安定性向上のための酸化防止剤や各種保存剤などが挙げられる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。添加剤の配合量は、A成分とB成分の合計100質量部に対して2質量%以下の割合が好ましい。添加剤の配合量が2質量%以下であれば、本実施形態のゲル化剤の粘度の増加やゲル化が生じにくく、液状のゲル化剤が得られやすい。
【0022】
次に、本発明に係るゲル化剤の製造方法の実施形態について説明する。
【0023】
本実施形態の方法では、まず、成分Aと成分Bとを上記の質量比で混合し、この混合物を、成分Aの融点以上で加熱しながら成分Aが完全に融解するまで攪拌する。このとき、成分Aと成分Bとの混合割合が変化しないように成分Bの沸点以上の温度にならないように加熱することが好ましい。成分Aが融解したことを確認後、混合物を常温(約25℃)に冷却或いは常温で静置することで液状のゲル化剤が得られる。上記添加剤を配合する場合、添加剤を予め成分Bに配合しておき、成分Aと一緒に加熱混合してもよく、また上記添加剤の加熱による蒸散や変質を防ぐ場合には、成分Aの融解後の冷却過程において添加剤を配合し混合してもよい。
【0024】
次に、本発明に係るゲル化剤の使用方法について説明する。
【0025】
本実施形態の使用方法では、常温のゲル化対象物100質量部に対して、本発明のゲル化剤を10質量部以上30質量部以下の割合で混合することが好ましい。混合は、ゲル化剤が均一に分散するように攪拌することが好ましい。攪拌方法としては、菜箸、へら等による人為的な攪拌方法が挙げられ、ゲル化対象物が、有機溶剤やパラフィン類に香料などの機能性成分を含有させた油性材料の場合、ホモミキサーやホモジナイザーなどによる攪拌が挙げられる。混合後は、常温にて30分程度静置することで流動性のないゲル化物が得られる。
【0026】
ゲル化剤が成分Aを10〜25質量%含むものである場合、上記の混合割合ではゲル化剤とゲル化対象物の混合物中に含まれる成分Aの割合は0.9質量%以上5.7質量%以下となる。成分Aの割合が0.9質量%以上であれば、流動性もなく十分なゲル強度を有するゲル化物を得ることが容易となり、成分Aの割合が5.7質量%以下であると、成分Aを分散させる成分Bの配合量が適切であるため、結果的にゲル強度の高いゲル化物が得られやすくなる。固形物としての取り扱い性を向上させるなど、ゲル強度を更に高める場合には、ゲル化対象物中に含まれる成分Aの割合が2質量%以上5質量%以下となるようにゲル化剤の混合割合を調整することが好ましい。
【0027】
ゲル化対象物としては、有機溶媒や油脂類などが挙げられ、具体的には、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサンなどの比較的極性が低い有機溶媒、大豆油、菜種油、サラダ油などの動植物油、ガソリン、重油、流動パラフィンなどの鉱油類、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、テレピン油、オレンジ油、レモン油などの植物製油、ヒノキオイル、アリルイソチオシアネートなどの揮散性剤などが挙げられる。また、ゲル化対象物は、上記の油性成分を1種又は2種以上含有するものであってもよい。
【0028】
本発明のゲル化剤はゲル化に加熱作業を必要としないため、アリルイソチオシアネートなどの揮散性機能成分を含有したゲル化物を製造する場合、揮散性機能成分の事前蒸散、変質、変色を防ぐことができる。本発明のゲル化剤は、揮散性機能成分を含有する芳香剤、消臭剤、害虫忌避剤などの製造に有用である。
【0029】
本発明のゲル化剤に含有される水酸基を有するテルペン系溶媒は、揮散性の香料、消臭剤、害虫忌避剤などに利用されているものを用いることができる。このような溶媒を含有するゲル化剤によって得られるゲル化物は、上記の効果を有するゲル状薬剤としても使用することができる。
【0030】
本発明のゲル化剤は、廃食用油や廃潤滑油などの廃油の固形化処理剤として有用である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
油性ゲル化剤として12−ヒドロキシステアリン酸(伊藤製油株式会社製)を2g、および水酸基を有するテルペン系溶媒としてターピネオール(日本テルペン化学株式会社製、α−ターピネオール)8gを混合し、約80℃にて加熱攪拌した。12−ヒドロキシステアリン酸が完全に溶融したことを目視にて確認後、25℃の環境下にて1日静置した溶液をゲル化剤として得た。ゲル化剤の状態は液体であった。
【0033】
[有機溶媒及び油脂のゲル化及びその評価]
(1)トルエン、(2)流動パラフィン、(3)大豆油、(4)流動パラフィンとアリルイソチオシアネート(AITC)との混合溶媒(流動パラフィン/AITC=8/2(質量比))の4種類の溶媒又は油脂10gに対して、上記で得られたゲル化剤2gを、25℃の温度条件下で混合し、スターラーにて10秒攪拌した。1時間後の状態を観察した結果、いずれの溶媒及び油脂も流動性のないゲルが形成された。また、上記溶媒及び油脂のそれぞれから得られたゲルのゲル強度を測定し、以下に示す評価基準にしたがって評価した。結果を表1に示す。
【0034】
[ゲル強度の測定]
形成されたゲルのゲル強度(g/cm)は、小型卓上試験機(日本電産シンポ株式会社製 FGS−10TV)とデジタルフォースゲージ(日本電産シンポ株式会社製 FPG−5 プローブ:φ12 侵入速度3mm)を用いて測定した。
[ゲル化の評価]
「◎」:ゲル強度が200g/cmより大きく、十分な形状保持性があり、固形物として取り扱える状態である。
「○」:ゲル強度が100〜200g/cmであり、固形物として取り扱える状態である。
「×」:ゲル強度が100g/cm未満であり、固形物として取り扱うことができない状態である。
【0035】
(実施例2)
ターピネオールに代えて、水酸基を有するテルペン系溶媒としてジヒドロターピネオール(日本テルペン化学株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、ゲル化剤を得た。ゲル化剤の状態は液体であった。
【0036】
上記で得られたゲル化剤を用いて実施例1と同様にして各溶媒及び油脂のゲル化を行い、その状態を評価した。いずれの溶媒及び油脂も流動性のないゲルが形成された。また、上記溶媒及び油脂のそれぞれから得られたゲルについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
(実施例3)
12−ヒドロキシステアリン酸を1.2g及びターピネオールを8.8g混合した以外は実施例1と同様にして、ゲル化剤を得た。ゲル化剤の状態は液体であった。
【0038】
上記で得られたゲル化剤を用いて実施例1と同様にして各溶媒及び油脂のゲル化を行い、その状態を評価した。いずれの溶媒及び油脂も流動性のないゲルが形成された。また、上記溶媒及び油脂のそれぞれから得られたゲルについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
(実施例4)
12−ヒドロキシステアリン酸を2.3g及びターピネオールを7.7g混合した以外は実施例1と同様にして、ゲル化剤を得た。ゲル化剤の状態は液体であった。
【0040】
上記で得られたゲル化剤を用いて実施例1と同様にして各溶媒及び油脂のゲル化を行い、その状態を評価した。いずれの溶媒及び油脂も流動性のないゲルが形成された。また、上記溶媒及び油脂のそれぞれから得られたゲルについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
(実施例5)
12−ヒドロキシステアリン酸に代えて、油性ゲル化剤としてヒマシ硬化油(伊藤製油株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、ゲル化剤を得た。ゲル化剤の状態は液体であった。
【0042】
上記で得られたゲル化剤を用いて実施例1と同様にして各溶媒及び油脂のゲル化を行い、その状態を評価した。いずれの溶媒及び油脂も流動性のないゲルが形成された。また、上記溶媒及び油脂のそれぞれから得られたゲルについて実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
(比較例1)
12−ヒドロキシステアリン酸を0.5g及びターピネオールを9.5g混合した以外は実施例1と同様にして、ゲル化剤を得た。ゲル化剤の状態は液体であった。
【0044】
上記で得られたゲル化剤を用いて実施例1と同様にして各溶媒及び油脂のゲル化を行い、その状態を評価した。その結果、いずれの溶媒及び油脂も流動性があり、固形物として取り扱うことができなかった。結果を表1に示す。
【0045】
(比較例2)
12−ヒドロキシステアリン酸を3g及びターピネオールを7g混合した以外は実施例1と同様にして、ゲル化剤を調製した。得られたゲル化剤は、固体の状態であった。
【0046】
上記で得られたゲル化剤を用いて実施例1と同様にして各溶媒及び油脂のゲル化を行い、その状態を評価した。その結果、いずれの溶媒及び油脂も流動性があり、固形物として取り扱うことができなかった。結果を表1に示す。
【0047】
(比較例3)
ターピネオールに代えて、水酸基を有していないテルペン系溶媒としてd−リモネン(日本テルペン化学株式会社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、ゲル化剤を調製した。得られたゲル化剤は、固体の状態であった。
【0048】
上記で得られたゲル化剤を用いて実施例1と同様にして各溶媒及び油脂のゲル化を行い、その状態を評価した。その結果、いずれの溶媒及び油脂も流動性があり、固形物として取り扱うことができなかった。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】



【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、常温で液状の有機溶媒や油脂類を加熱することなく十分な強度でゲル化することができるゲル化剤を提供することができる。本発明のゲル化剤によれば、例えばトルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサンなどの比較的極性が低い有機溶媒、大豆油、菜種油、サラダ油などの動植物油、ガソリン、重油、流動パラフィンなどの鉱油類、リモネン、α−ピネン、β−ピネン、テレピン油、オレンジ油、レモン油などの植物製油、ヒノキチオール、アリルチオイソシアネートなどの揮散性剤を、加熱することなく十分な強度を有するゲル化物或いは固化物にすることができる。また本発明のゲル化剤は、廃食用油や廃潤滑油などの廃油の固形化処理剤として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)油性ゲル化剤と、(B)水酸基を有するテルペン系溶媒と、を含み、
前記(A)成分と前記(B)成分との質量比(A)/(B)が10/90以上25/75以下である、ゲル化剤。
【請求項2】
前記(A)油性ゲル化剤が12−ヒドロキシステアリン酸である、請求項1に記載のゲル化剤。

【公開番号】特開2012−77113(P2012−77113A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221034(P2010−221034)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(390017949)旭化成ホームプロダクツ株式会社 (56)