説明

ゲル状接着剤剥離組成物および使用方法

本発明は、硬い基材、特に、自動車、トラック、バス、および飛行機を含む航空宇宙乗物などといった乗物から接着剤残留物を取除くための環境に優しい材料を用いた処理を含む。この処理は、1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒と、非研磨増粘剤、界面活性剤、蒸気圧調節剤を含む新規な接着剤剥離組成物を用いる。非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータ(δt)は、約14MPa1/2から約24MPa1/2である。この発明は、たとえば、感圧性接着剤の残留物を航空機の複合およびアルミニウム表面の広い領域ならびにその他の領域から取除くために具体的に配合された、コスト効率がよく、安全で、環境に優しい接着剤剥離組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本開示は、硬い基材、特に、自動車、トラック、バス、飛行機を含む航空宇宙乗物などといった乗物から接着剤残留物を除去するための環境に優しい材料を用いる処理を含む。この処理は、1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒、非研磨増粘剤、界面活性剤、蒸気圧調節剤を含む新規な接着剤剥離組成物を用いる。非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計ハンセン溶解度パラメータ(「δt」または「HSP」)は、約14MPa1/2から約24MPa1/2である。この開示は、たとえば、航空機の複合およびアルミニウム表面の広い領域ならびにその他の領域から感圧性接着剤の残留物を除去するために具体的に配合されたコスト効率がよく、安全で、環境に優しい接着剤剥離組成物を提供する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
たとえば、自動車、トラック、バス、列車、船、および航空機の本体などといった硬い表面からビニール製のシールを取除くことに関連する、接着剤残留物を取除くための従来の方法はしばしば、多大な時間を要し、高価であり、非能率であるとともに、環境に有害な材料を用いる必要がある。たとえば、当該技術で認識される技術を用いると、ビニール製のシールはしばしば、ヒートガンを通じて熱を慎重に加え、シールと接着剤のほとんどを取除くよう擦ることにより取除かれる。残っている接着剤残留物を取除く典型的な方法は、溶媒が染み込んだ布切れで拭き取り去ることである。この方法は、小さい領域を清浄する場合には許容可能であり得るが、飛行機の翼のような大きい領域を清浄する場合には実用的でない。
【0003】
さらに、多くの商業上入手可能な接着剤剥離組成物は、塩化メチレンまたは四塩化炭素のような塩素系有機溶媒を含むか(CFCは成層圏のオゾンにダメージを与えることで知られる)、または水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムを多く含むアルカリ系である。ラベル、ゴムのり、およびマスキングテープなどを非吸収性の表面から取除くのに有用であるとされるいくつかの商品が存在する。このような商品にはハロゲン系有機溶媒は存在しないが、それでも液体である。したがって、その利用は当該液体が封じ込められ得る小規模での適用に限られる。このような接着剤剥離組成物は、大規模の産業利用には望ましくない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複合材料からなり得る飛行機の外側表面からの接着剤残留物の除去は特別な技術的問題を与える。たとえば、飛行機の翼の下側(2000ft2まで、またはそれ以上の表面領域を有する)に液体を塗布することは、液体が滴って作業領域を汚染するので、実際的ではない。体積の大きいフリーフローする(すなわち液体の)有機溶媒は、火事または環境汚染のリスク、人員の保護、および有害廃棄物処理の必要性から望ましくない。飛行機の外側表面上で用いられる接着剤残留物剥離組成物は、近隣または下に存在する構造および仕上げ物に対して機械的損傷を引起すべきではない。さらに、近傍または下に存在する基材および下塗りを含む仕上げ物は、化学薬品によって腐食または劣化されるべきではない。実用的となるよう、接着剤残留物を取除く如何なる方法も、水ベースの洗浄ステップ、たとえば石鹸および水を用いた洗浄で終了するべきであるのが理想的である。さらに、接着剤剥離方法は、水平、垂直、およびオーバーヘッド表面に適用可能であるとともに、それらについて実用的であるべきである。炭素複合材料が新型の航空機に著しく用いられるようになったことで、化学洗浄材料に対する従来では知られていなかった規制がなされる
。従来のアルミニウムの航空機表面上に用いられる、クリーナ、ストリッパ、および他の材料のほとんどは、複合材料と適合しない。
【0005】
現在必要とされている規模で、大きな複合的な航空機表面から接着剤残留物を取除くことを達成するための、コスト効率がよく、環境に適合し、または実用的である公知の方法または材料は存在しない。シール、塗布物、テープなどを取除いた後に残る接着剤残留物を取除くための高速で、安全で、かつ効果的な処理の必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本開示の発明は、硬い基材、特に、自動車、トラック、バス、および飛行機を含む航空宇宙乗物などといった乗物から接着剤残留物を取除くための環境に優しい材料を用いた処理を含む。この処理は、1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒と、非研磨増粘剤、界面活性剤、蒸気圧調節剤を含む新規な接着剤剥離組成物を用いる。非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータ(「δt」または「HSP」)は、約14MPa1/2から約24MPa1/2である。この発明は、たとえば、感圧性接着剤の残留物を航空機の複合およびアルミニウム表面の広い領域ならびにその他の領域から取除くために具体的に配合された、コスト効率がよく、安全で、環境に優しい接着剤剥離組成物を提供する。
【0007】
ここで記載される実施の形態によると、上述した公知の方法および材料の欠点が克服され、大量の有機溶媒の利用が低減され、特に飛行機の表面から接着剤残留物を除去するのに用いられる際に近傍または下に存在する構造および仕上げ物に対する機械的損傷が制限され、下地を含む近傍または下に存在する基材および仕上げ物の化学的腐食または劣化が制限され、最終の随意である水ベースの洗浄ステップ(例えば、石鹸と水とを用いる)または任意のほかの許容可能な清浄溶液を用いる洗浄との適合性が与えられ、水平、垂直、およびオーバーヘッド表面への利用に適合性が与えられる。
【0008】
例示的な実施の形態では、この発明は基材から接着剤残留物を取除く方法を提供し、当該方法は1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒を含む接着剤剥離組成物を与えるステップを含み、該1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒の各々は約14MPa1/2から約24MPa1/2の25℃での合計のハンセン溶解度パラメータを有する。接着剤剥離組成物はさらに非研磨増粘剤と、界面活性剤と、蒸気圧調節剤とを含む。接着剤剥離組成物はさらに、吸収性指示染料を含んでもよい。この発明の方法に従えば、接着剤剥離組成物は接着剤残留物がくっついた基材に適用され、その後、接着剤残留物が接着剤剥離組成物の中へ取込まれる十分な量の時間が経過するのを待つステップが行なわれ、その後、清浄された基材を得るよう接着剤剥離組成物が取除かれ、当該清浄された基材を検査する。
【0009】
接着剤剥離組成物が基材と接触する時間量は接着剤残留物の性質ならびに溶媒の相対量および特性などに依存する。時間の長さは、溶媒が接着剤残留物を軟化させるのに十分であるべきである。好適な時間は、10分、20分、30分、またはそれ以上を含むが、これらに限定されない。しかしながら、当該時間は、接着剤剥離組成物が十分に乾燥するほど長くはない。一般的には、この発明の接着剤剥離組成物における蒸気圧調節剤の量が多くなればなるほど、溶媒の実際の蒸気圧は低くなる。例えばグリセリンのような蒸気圧調節剤の量が大きくなればなるほど、したがって定温放置期間が長くなり得る。
【0010】
この開示はさらに、新規な接着剤剥離組成物に関する。この発明の接着剤剥離組成物は、主な航空機のメンテナンスにおいて出くわすような水平、垂直、およびオーバーヘッド表面への機械化された塗布に適した粘度および取扱特性を有してもよい。この発明の好ましい実施の形態では、接着剤剥離組成物は、基材の損傷または近傍の表面または機器に対
する問題が最小限で、接着剤残留物を効果的に取除く。ある実施の形態では、接着剤剥離組成物の中の吸収性の指示(追跡用)染料により処理の有効性の高速な視覚評価が可能になる。この発明の他の特徴は、引火性、爆発、および健康特性が向上した接着剤剥離組成物を含む。別の局面では、この発明の接着剤剥離組成物は、一般的な廃棄物処理および破棄方法と適合し得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法および接着剤剥離組成物によると、先行技術の欠点が克服される。本発明の他の特徴および利点は、この発明の原理を例示目的で示す添付の図面とあわせて考慮すると、以下の好ましい実施の形態のより詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明に従った、接着剤残留物を取除く例示的な方法のステップを示す図である。
【図2】この発明に従った、接着剤残留物を取除く例示的な方法のステップを示す図である。
【図3】この発明に従った、接着剤残留物を取除く例示的な方法のステップを示す図である。
【図4】この発明に従った、接着剤残留物を取除く例示的な方法のステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
添付の図面を参照して、図1では、接着剤残留物が接着しているサンプル基材が、テープ(18)によって作業台(10)に固定され、接着剤剥離組成物(16)の薄いコーティング(約1cmの厚さ)が、適用ツール(14)を用いて手(12)によって塗布される。たとえば、この基材は、アルミニウムまたはグラファイトエポキシ複合材料であってもよく、以前にはシールが存在していた場合がある。当該シールは、細長い片にされ、ヒートガンで加熱され、基材から細長い片を剥き取ることにより取除かれた。
【0014】
図2はその後のステップを示し、当該ステップでは、随意のドロップクロス(20)が、コーティングされたサンプル基材の上に置かれ、接着剤剥離組成物(16)が接着剤残留物の中に浸透するのを促進するよう約20分経過させる。ドロップクロス(20)は、接着剤剥離組成物(16)の過度のまたは速すぎる乾燥を防止し得る。
【0015】
図3は付加的なステップを示し、当該ステップでは、接着剤剥離組成物(16)は、擦り落しツール(23)を用いて手(12)により基材から擦り落とされ、これにより接着剤残留物が実質的に存在しない清浄された基材(26)が現れる。
【0016】
図4は、この発明に従った接着剤残留物を取除く最後のステップを示し、当該ステップでは、清浄された基材(26)が、(手)皿洗浄用液体洗剤および水道水の水溶液を用いて、非研磨(たとえばナイロン)の掃除パッド(28)で清浄される。
【0017】
接着剤は、他の物質または構成要素をともに表面接着によって結合させることができる任意の物質である。接着剤は典型的には、機械的性質、接着性、および結合性について本質的に関与する、ポリマー、コポリマー、またはそれらの組合せを含んでもよい低分子量の可塑剤、のり、結合剤、および他のこのような材料を含む。このような接着剤が特に長期間の利用の後でさまざまな表面から取除かれると、跡、変色、およびくず(たとえば接着剤残留物)がしばしば残される。多くの接着剤は固定または剥離の際には基材の機械的な破壊を引起すことはないが、それでも当該固定部位を見掛けが悪い状態または利用不可
能な状態にしてしまう。
【0018】
乾燥接着剤、接触接着剤、熱接着剤、反応型接着剤、および感圧性接着剤を含むいくつかのタイプの接着剤が存在する。白のりおよびゴムのりといったのりのような乾燥接着剤は典型的には、溶媒に溶解される成分、通常はポリマー、の混合物である。当該溶媒が蒸発すると、接着剤が固化する。接触接着剤は、両面に塗布されるとともに、該2つの表面が互いに押される前に乾くように塗布されなければならない。しかしながら、これらの表面がともに押し当てられると、接着剤の結合部が非常に速く形成され、通常は圧力をかける必要がない。熱可塑性接着剤または熱溶融性接着剤としても知られる熱接着剤は、たとえばのり銃(glue gun)を用いて熱い状態で塗布され、冷却されると単純に硬化する熱可塑性物質である。反応性接着剤は、表面材料との化学結合により作用し、薄いフィルムにおいて塗布される。これは、表面の間のギャップを充填することが二次的な目標である場合にはあまり効果的ではない。反応性接着剤は、二液型エポキシおよびイソシアネート接着剤を含む。
【0019】
アクリル、シリコーン、ならびに自然および人工ゴム、ならびにそれらの組合せといった感圧性接着剤は、構成要素を結合するよう軽い圧力を加えることにより結合部を形成する。この結合部が形成されるのは、接着剤が基材の微細な表面特性に適合するほど十分に柔らかいからである。感圧性接着剤は、結合部に圧力が加えられる際にフローに耐えるほど十分に硬いので、この結合部には強度がある。接着剤および結合された構成要素が近傍に存在すると、ファン・デル・ワールス力のような分子の相互作用により強い結合が作り出される。感圧性接着剤は、恒久的かつ除去可能な用途のために用いられてもよい。高性能の恒久的な感圧性接着剤の中には、高い接着値を示すとともに、高温度でも接触領域にて平方センチ当たり数キログラムの重量を結合し得るものもある。恒久的な感圧性接着剤は、元々除去可能であり得、接着部を構築し数時間または数日後に恒久的な結合部になる。除去可能な接着剤の中には、繰返し接着および剥離するよう設計されたものもあり、これらは接着性が低く、一般的に高重量を支持することができない。感圧性接着剤は、コーティングされ、次いで放射に反応して、分子量を増加するとともに接着剤を形成する低粘性のポリマーであってもよく、または、コーティングを可能とするのに十分になるように粘性を低減するべく加熱され、次いで最終状態へと冷却される高粘性材料であってもよい。
【0020】
この発明の例示的な実施の形態は、接着剤残留物、特に感圧性接着剤残留物を基材から取除くための複数ステップの処理を含み、当該処理は、1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒、非研磨増粘剤、界面活性剤、蒸気圧調節剤を含む接着剤剥離組成物を提供するステップを含み、非ハロゲン系有機溶媒の各々について25℃での合計のハンセン溶解度パラメータは、約14MPa1/2から約24MPa1/2である。この方法はさらに、接着剤残留物が引っ付いている基材に接着剤剥離組成物を適用するステップを含む。当該接着剤残留物が軟化して接着剤剥離組成物内に取込まれるのに十分な量の時間を経過させる。接着剤剥離組成物が取除かれ、清浄された基材が得られる。この方法はさらに、水道水と皿洗浄用液体洗剤のような水溶液または任意の他の溶媒もしくは洗浄溶液で、当該清浄された基材を洗浄するステップを含んでもよい。たとえば、世界において、水溶液の利用が実用的ではない乾燥地帯では、非ハロゲン系有機溶媒のような非水溶液が用いられてもよい。接着剤剥離組成物に取込まれた接着剤残留物は、水で流されなくてもよい。したがって、適用の後、取込まれた残留物とともに擦り落とされ、溶媒を含む廃棄物として処分されるべきである。
【0021】
この発明の実施の形態はさらに、1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒、非研磨増粘剤、界面活性剤、および蒸気圧調節剤を含む接着剤剥離組成物に関し、非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータは、約14MPa1/2から約
24MPa1/2である。この発明の別の実施の形態では、1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータは、約18MPa1/2から約20MPa1/2である。この発明の別の実施の形態では、1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータは、約14MPa1/2から約19MPa1/2である。別の実施の形態では、この発明は、2つ以上の非ハロゲン系有機溶媒を含む接着剤剥離組成物を含む。いくつかの場合、二成分溶媒系が好ましい場合がある。すなわち、接着剤剥離組成物は、同一でないHSP値を有し得る2つの非ハロゲン系有機溶媒を含む場合である。二成分溶媒系が用いられる場合、溶媒のHSPにおける差は以下の範囲内であり得る。すなわち、他のものの中で、0<(HSPsolvent1−HSPsolvent2)≦6である。いくつかのより狭いサブレンジは、0<(HSPsolvent1−HSPsolvent2)≦2および4<(HSPsolvent1−HSPsolvent2)≦6を含む。このような接着剤剥離組成物が、溶媒のないまたは濃縮された形態で与えられる場合、使用の前に非ハロゲン系有機溶媒で再構成されてもよい。
【0022】
接着剤剥離組成物において用いられる非ハロゲン系有機溶媒は、当業者には公知であるそれらのハンセン溶解度パラメータで把握されてもよい。ハンセン溶解度パラメータは、比較目的のために溶媒を特徴付けるよう開発された。3つのパラメータの各々、すなわち分散(δd)、極性(δp)、および水素結合(δh)は、所与の溶媒の異なる特性を示す。合計のハンセン溶解度パラメータ(δt)は、これら3つのパラメータの二乗の和の平方根であり、当該溶解度パラメータを見れば特定の有機溶媒の溶解度を把握することができる。「ハンセン溶解度パラメータ−ユーザハンドブック(Hansen Solubility Parameters - A Users Handbook)」,チャールズ・M・ハンセン(Charles M. Hansen),CRCプレス(CRC Press),ボカレイトン(Boca Raton),フロリダ(Florida)(2000)を参照のこと。本発明者らは、合計のハンセン溶解度パラメータが約14MPa1/2と約24MPa1/2との間(たとえば、約18MPa1/2と約20MPa1/2との間または約14MPa1/2と約19MPa1/2との間)である非ハロゲン系有機溶媒を含む接着剤剥離組成物が感圧性接着剤残留物に対して好ましいことを発見した。
【0023】
非ハロゲン系有機溶媒は、接着剤剥離組成物の粘性を減少させ、接着剤残留物の中に溶解し、これにより、接着剤残留物を軟化して、その後の除去を可能にすると考えられる。非ハロゲン系有機溶媒は、以下のものを含む任意の好適な非ハロゲン系有機溶媒であってもよい(合計のハンセン溶解度パラメータ、すなわちδt/MPa1/2、を括弧内に示す)。n−ブタン(14.1)、イソオクタン(14.3)、n−ペンタン(14.5)、n−ヘキサン(14.9)、n−ヘプタン(15.3)、n−オクタン(15.5)、オレイン酸(15.6)、ジエチルエーテル(15.8)、n−ドデカン(16.0)、メチルシクロヘキサン(16.0)、イソ酪酸イソブチル(16.5)、シクロヘキサン(16.8)、酢酸イソブチル(16.8)、ジイソブチルケトン(16.9)、メチルイソブチルケトン(17.0)、酢酸イソアミル(17.1)、メチルイソアミルケトン(17.4)、N−酢酸ブチル(17.4)、ステアリン酸(17.6)、エチルベンゼン(17.8)、炭酸ジエチル(17.9)、o−キシレン(18.0)、p−ジエチルベンゼン(18.0)、ジエチルケトン(18.1)、酢酸エチル(18.1)、トルエン(18.2)、ベンゼン(18.6)、酢酸メチル(18.7)、蟻酸エチル(18.7)、シクロヘキシルアミン(18.9)、スチレン(19.0)、メチルエチルケトン(19.0)、ジベンジルエーテル(19.3)、テトラヒドロフラン(19.4)、シクロヘキサノン(19.6)、イソホロン(19.9)、アセトン(20.0)、酢酸2−エトキシエチル(20.0)、ナフタリン(20.3)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(20.4)、1−デカノール(20.4)、1,4−ジオキサン(20.5)、2−ニトロプロパン(20.6)、ジアセトンアルコール(20.8)、エチレングリコールモノブチルエーテル(20.8)、酢酸(21.4)、モルホリン(21.5)、サリチル酸メチル(21.7)、アセトフェノン(21.8)、ピリジン(21.8)
、安息香酸(21.8)、キノリン(22.0)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(22.0)、ニトロベンゼン(22.2)、2−ブタノール(22.2)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(22.3)、シクロヘキサノール(22.4)、アニリン(22.6)、ニトロエタン(22.7)、イソブタノール(22.7)、m−クレゾール(22.7)、硫酸ジエチル(22.8)、N−メチル−2−ピロリドン(22.9)、1−ブタノール(23.1)、2−プロパノール(23.5)、エチレングリコールモノエチルエーテル(23.5)、およびベンジルアルコール(23.8)。
【0024】
好ましい実施の形態では、接着剤剥離組成物は、塩化メチレン、クロロホルム、および四塩化炭素(または他の塩化炭化水素)といったハロゲン系有機溶媒が本質的に存在しない(たとえば、1重量%未満、0.1重量%未満、または約0重量%)。この接着剤剥離組成物は水の中に容易に分散可能である。
【0025】
この発明の接着剤剥離組成物の増粘剤は、ヒュームドシリカ、セルロース、または、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエーテルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、もしくはそれらの組み合わせのようなセルロースエーテルといったセルロース誘導体のような、水に完全に分散する任意の不活性コロイド固体材料であってもよい。好ましい増粘剤は非研磨剤である、すなわち、この発明の接着剤剥離組成物は、好ましくは、ここに記載される方法に従って用いられる際に基部に引っかき傷がつけられることがない、または基部を損なわせることがない。例示的な増粘剤は、ヒュームドシリカについての、ポリマーテクノロジーグループInc(Polymer Technology Group,Inc)(バークレイ、カリフォルニア;Berkeley,California)の商標であるCARBOSIL(登録商標)である。
【0026】
この発明の接着剤剥離組成物の界面活性剤は、アニオン系界面活性剤(たとえば、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、およびラウレス硫酸ナトリウム)と、(手)皿洗浄用液体洗剤において一般的に見つけられるような非イオン系界面活性剤(たとえば、オクチルグルコシド、デシルマルトシド、セチルアルコール、およびオレイルアルコール)との組み合わせであってもよい。たとえば、ここにすべて参照により援用される米国特許番号第4,556,509号、第5,990,065号、および第6,069,122号を参照のこと。例示的な界面活性剤は、プロクター・アンド・ギャンブル・カンパニー(The Procter & Gamble Company)(シンシナティ、オハイオ;Cincinnati、Ohio)の商標である皿洗浄用液体洗剤のジョイ(JOY)(登録商標)である。
【0027】
たとえば、好適なアニオン系洗剤は以下のものを含む。すなわち、C−C18アルキル硫酸塩、スルホン酸塩、およびカルボキシレート、特に、アルキル基において10−16の炭素を含むアルキル硫酸塩と;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのようなアルキル基が直鎖または分枝鎖のいずれかであるC−C15アルキルベンゼンスルホン酸塩と;C−C22オレフィンスルホン酸塩、特にC14−17オレフィンスルホン酸塩のようなアルケニル基において12−22の炭素原子を含むオレフィンスルホン酸塩と;アンモニウムラウリルトリエテノキシエーテルスルフェートのような、式がR(OCOSOMであるC−C18アルキルエーテルエチレンオキシスルフェート(式中、nは1−12であり、好ましくは1−6であり、Rは8−18の炭素原子および好ましくは10−16の炭素を含むアルキル基であり、Mは陽イオン、好ましくはナトリウム陽イオンまたはアンモニウム陽イオンである)と;C10−C20パラフィンスルホネート、特にナトリウムC14−17パラフィンスルホネートのようなアルキル基において14−17の炭素原子を含むアルカンスルホネートと;C−C12フェニルエーテルポリエチレンオキシスルフェート、特にアンモニウムノニルフェニルテトラエタノキシエーテルスルフェートのようなアルキル基において8−12の炭素を有するスルホネートと;式ROCHSOMに対応するC−C12アルキルスルホ酢酸(式中、RはC−C
アルキル、特にアルキル基に12−16の炭素原子を含むスルホ酢酸である)と;エーテル基もしくはアミド基により分断されるアルキルまたはアルケニル基を含むN−モノ−C−C22アルキルまたはアルケニルと;ジソジウムN−モノ−C−C18アシルイソプロパノールアミドスルホサクシネート、ジソジウムラウリルスルホサクシネート、およびN−モノオレイルイソプロパノールアミドスルホサクシネートを含むスルホサクシネートと;N−C−C18アシルタウリン、特にアシル基において12−14の炭素原子を含むタウレートと;O−C−C18アシルイセチオネート、特にアシル基において12−14の炭素原子を含むイセチオネートとである。
【0028】
例示的な非イオン界面活性剤は、8−18の炭素原子を有するエトキシル化脂肪アルコールと、アルキル基に6−12の炭素を有するエトキシル化アルキルフェノールと、RCONR(EtO)という構造を有するエトキシル化脂肪酸アルカノールアミド(式中、RCOは、6−18の炭素原子を含むアシル基であり、Rは、H、CH、またはCHCHOH基であり、Rは、CH、CHCHOH、またはCHCHOHCH基であり、xは0−20の整数である)と、脂肪酸基に10−18の炭素原子を有するソルビトールの脂肪酸エステルを含むエトキシル化ラノリン誘導体およびエトキシル化ソルビタンとを含む。他の好適な非イオン洗剤は、RN→Oという式を有するトリアルキル極性アミンオキシドである(式中、RはC−C18アルキル、アルケニル、またはヒドロキシアルキル基であり、RおよびRは各々、メチル、エチル、プロピル、エタノール、もしくはプロパノールであるか、またはRおよびRは窒素原子とともに結合して、ラウリン酸−ミリスチン酸モノエタノールアミド、ラウリン酸−ミリスチン酸ジエタノールアミド、およびラウリルジメチルアミンオキシドのようなモルホリノ基を形成する。
【0029】
接着剤剥離組成物に蒸気圧調節剤を加えることで、非ハロゲン系有機溶媒の蒸気圧を低減し、したがって、接着剤残留物を当該溶媒が軟化する十分な時間が経過し得るように乾燥時間が増加すると考えられる。蒸気圧調節剤は、非ハロゲン系有機溶媒に溶解可能であり、非反応性であり、非ハロゲン系有機溶媒の蒸気圧の低減を引起す。ある実施の形態では、蒸気圧調節剤は、20torrで沸点が180℃であるグリセリン(HSP=36.1)のような、約20torrで約100℃よりも大きな沸点を有する非イオン系の液体である。さらなる例には、雰囲気圧(760torr)で約100℃より大きい沸点を有するとともに約30より大きいHSPを有する非イオン系の液体が含まれ、この例には、エチレングリコール(雰囲気圧でb.p.=192℃、HSP=32.9)、プロピレングリコール(雰囲気圧でb.p.=189℃、HSP=30.2)、および水(雰囲気圧でb.p.=100℃、HSP=47.8)がある。
【0030】
この発明の接着剤剥離組成物はさらに、接着剤残留物の中に吸収またはその上に吸収(ここでは互いに置き換え可能に用いられる)される吸収性指示染料を含んでもよい。この発明の接着剤剥離組成物が吸収性指示染料を含む場合、清浄された基材は、残っている接着剤残留物の存在を示す保持された指示染料の存在について検査される。一般的には、たとえば1重量%または0.1重量%未満といったわずかな量の吸収性指示染料しか必要とされない。
【0031】
接着剤剥離組成物の吸収性指示染料の例はメチレンブルーおよび食品着色料を含み、当該吸収性指示染料は、この発明の方法において用いられる際には、接着剤残留物に吸収される。吸収性指示染料は、接着剤剥離組成物の溶媒成分に溶解可能であるべきであり、当該染料は残留物の除去の完了についてのインジケータとして機能し得るように、取除かれる接着剤残留物内に吸収(上に吸収)されるべきである。ここで記載される方法に従って接着剤剥離組成物が基材から取除かれても、基材上に何らかの染料が存在していれば、すべての接着剤残留物が完全に取除かれたということではないということが示される。した
がって、この方法が繰返されるべきである。
【0032】
多くの吸収性有機および有機金属指示染料、特に青色の染料は、一般的な用途、すなわち基材が青でない場合、について有用である。当該染料は、基材と吸収された染料との間に色のコントラストが存在する場合に、接着剤残留物が残っていることを示す観察可能なインジケータである。典型的な実施の形態では、接着剤剥離組成物の他の成分は白または無色である。指示染料は、したがって、特定の用途の固有の要件のためにカスタマイズされてもよい。さまざまな色のいくつかの有用な染料が、イーガー・プラスチックスInc.(Eager Plastics, Inc)(シカゴ、イリノイ;Chicago, Illinois)から商業的に入手可能であり、これには、「ハイブライトレッド(Hi-Bright Red)」、「ルビーレッド(Ruby Red)」、「オールドローズ(Old Rose)」、「スカーレットレッド(Scarlet Red)」、「ショッキングピンク(Shocking Pink)」、「マゼンタ(Magenta)」、「バイオレット(Violet)」、「ブライトパープル(Bright Purple)」、「ブライトオレンジ(Bright Orange)」、「ハニーブラウン(Honey Brown)」、「ライトブラウン(Light Brown)」、「ブライトブルー(Brilliant Blue)」、「ロイヤルブルー(Royal Blue)」、「ターコイズ(Turquoise)」、「ケリーグリーン(Kelly Green)」、「ライムグリーン(Lime Green)」、「蛍光イエロー(Fluorescent Yellow)」、「レモンイエロー(Lemon Yellow)」、「蛍光ライム(Fluorescent Lime)」、「アボガドグリーン(Avocado Green)」および「アズテックゴールド(Aztec Gold)」が含まれる。さらなる例示的な吸収性指示染料には、以下のような食品着色料が含まれる。すなわち、ブリリアントブルー(brilliant blue)FCF(FD&CブルーNo.1)、インディゴティン(indigotine)(FD&CブルーNo.2)、ファストグリーン(fast green)FCF(FD&CグリーンNo.3)、アルラレッド(allura red)AC(FD&CレッドNo.40)、エリトロシン(erythrosine)(FD&CレッドNo.3)、タルトラジン(tartrazine)(FD&CイエローNo.5)、およびサンセットイエロー(sunset yellow)FCF(FD&CイエローNo.6)である。吸収性指示染料の他の例は、一般に安全と認められる(Generally Recognized As Safe (「GRAS」))物質の米国食品医薬品局(the U.S. Food and
Drug Administration)リスト、食品添加物状態リスト(the Food Additive Status List)、および着色添加物状態リスト(the Color Additive Status List)において発見され得る。
【0033】
この発明の接着剤剥離組成物の成分の相対量は、当該組成物がここで記載される方法において有効であるように選択される。例示的な接着剤剥離組成物は、約75重量%未満の1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒と、約5重量%から約10重量%の非研磨増粘剤と、約10重量%未満の蒸気圧調節剤と、約1重量%未満の吸収性指示染料と、界面活性剤などを含む約5重量%未満の他の成分とを含む。大規模な産業上の用途での利用のために、成分の相対量は、約500ポイズから約1000ポイズ(たとえば600または700ポイズ)を有する組成物を作り出すよう選択され得、その場合、当該組成物はエアレスペイントガンを用いて飛行機の翼の下側といった大きな基材に容易に塗布し得る。このような用途において、接着剤剥離組成物は、オーバーヘッドまたは垂直表面にくっつくのに十分に高い粘性を有するべきであるが、エアレスポンプを用いたスプレーでの塗布のために十分に薄くあるべきである。たとえばグリセリンといった蒸気圧調節剤の量は、接着剤残留物が軟化する前に乾燥しないように組成物の蒸気圧を低減するのに十分な量で与えられる。
【0034】
この発明の接着剤剥離組成物のさらなる成分には、pH調整(すなわち緩衝)剤、EDTAまたはDTPAのような金属錯化(すなわちキレート)剤、乳化剤、および香料などが含まれてもよい。
【0035】
この発明の有利な実施の形態において、水の中の接着剤剥離組成物の5重量%懸濁液は、約6から約8または約6と約7との間のpHを有する。好ましい実施の形態では、水の
中の接着剤剥離組成物の5重量%の懸濁液は、水道水のpHと本質的に同じpHを有する。
【0036】
この発明の方法において、接着剤剥離組成物が塗布される基材は、自身の上に接着剤残留物、特に自動車、トラック、バス、および飛行機を含む航空宇宙乗物といった乗物上にシールまたは塗布物(applique)を貼付けるのに用いられる感圧性接着剤の残留物を有する任意の硬い平滑な表面であり得る。感圧性接着剤の適用例の付加的な例には、電力機器のための安全ラベル、HVACダクト工事のためのホイルテープ、自動車用内装品アセンブリ、および音/振動を和らげるフィルムが含まれる。さらなる例示的な適用例には、カーペットおよび壁紙からの残留物が含まれる。
【0037】
有利な実施の形態において、基材は、航空宇宙乗物の外面のようなエポキシグラファイト複合材料である。このような航空宇宙適用例はさらに、感圧性接着剤を用いて重要な翼領域に適用されるフレキシブルな過フッ化炭化水素のシート材料の層を用いる飛行機塗布物光保護系を含む塗布物系のメンテナンスおよびサービスを含む。その一方、テープは通常、媒体の接着剤結合が除去の容易さと相補的である短期間の利用を意図する。しかしながら、塗布物はしばしば航空機の恒久的な部分として意図され、非常に強い接着結合を有さなければならない。除去の容易さは二次的な問題である。航空機の動作寿命の間、塗布物系は、部分的または完全に取除かれ、再設置されなければならない場合がある。塗布物シートを除去すれば、下塗りされた複合表面の大きな表面領域にわたって多量の接着剤残留物が残ることになる。これらの残留物は、航空機にダメージを与えない効率的、人間工学的、環境に優しい、かつコスト効率のよい処理により、塗布物系の再設置に先立って取除かれなければならない。本発明は、飛行機の下地、塗装、シーリング材、アルミニウム、または他の材料に対してダメージを与えない、腐食しない、または劣化させないゲルまたはペースト状の接着剤剥離組成物を提供する。
【実施例1】
【0038】
実施例
実施例1−塗布物接着剤残留物
ハンセンプロファイルが、各種溶媒について「軟化率」(Softening Index;S.I.)を判断することにより生成される。S.I.は、合計のハンセン溶解度パラメータ(δt)の範囲を示すよう選択される標準的な溶媒の組に対する接着剤残留物の反応の相対的な計測値である。ある塩素系テスト溶媒をこの分析において用いたが、この発明の接着剤剥離組成物における利用には好ましくない。なぜならば、塩素系テスト溶媒は廃棄物処理および安全上の望ましくない問題を与えるからである。塗布物系からの残留物を軟化することについての軟化率を判断するために、ASTM標準テスト方法D4752−03を適応したものを用いた。
【0039】
端的にいえば、アクリルベースの感圧性接着剤残留物を炭素複合材料からなる基材に塗布し、所定量のいくつかのテスト溶媒を当該接着剤残留物の部分に塗布した。金属のヘラまたはナイフのような擦り落しツールを用いて、一定でかつ再現可能な量の圧力を加えながら、接着剤残留物を擦り落とした。接着剤残留物を取除き、清浄された基材が現れるのに必要とされるストロークまたは擦り落とし運動の相対的な回数を計測し、相対的な軟化率(すなわち、テストされている溶媒についてのストローク数)を記録した。以下の表、特に「塗布物」の欄を参照のこと。S.I.が300である溶媒は、接着剤残留物に対して本質的に何の影響も有さず、S.I.の値が低いほど、接着剤残留物を軟化することがより可能である溶媒に関連付けられる。
【0040】
表.塗布物の接着剤残留物の場合の標準的な溶媒に対する軟化率
【0041】
【表1】

【0042】
【数1】

【0043】
テストされる各々の溶媒についての合計のハンセン溶解度パラメータ(δt,「HSP」)の関数としての軟化率のプロットが、当該塗布物系のハンセンプロファイルである。テスト塗布物についてのハンセンプロファイルは、この残留物に対して有効な溶媒の実質的にすべてが、約18と約24との間のHSPを有し、ほとんどの有効な溶媒が約19を中心とするクラスタにグループ分けされていることを示す。この発明の実施の形態において、航空宇宙適用例において用いられる接着剤剥離組成物にて用いられる溶媒は各々約18から約20のHSPを有する。ハンセンプロファイルはさらに、当該接着剤は、ジェッ
ト燃料炭化水素成分の範囲内にある約14から15のHSP数を有する溶媒に対して非常に抵抗があることを示す。
【0044】
航空宇宙適用例における利用のための例示的な接着剤剥離組成物は、グラファイトの複合材料と適合するイソプロパノールおよびメチルプロピルケトンを含む。イソプロパノール(HSP=23.6)は、熱硬化および経年した接着剤残留物を取除くのに非常に効果的である、それよりも小量のメチルプロピルケトン(HSP=18.3)とともに用いた場合、産業上の衛生的な問題が最小となるので、主な溶媒成分となるよう選択された。増粘剤として選ばれたヒュームドシリカを、イソプロパノールおよびメチルプロピルケトンの体積に対して、90−10の混合物となるように混合した。垂直表面にくっつくのに十分な稠度、ガーディナー粘性スケール上で約25、の薄いペーストを提供するようシリカを加えた。合計の蒸気圧を低減することにより一次溶媒の蒸発を遅らせるとともに、さらに混合物が長期にわたって完全に乾燥してしまうことを防ぐよう約3容積%のグリセリンを混合物に混合した。メチレンブルーのエタノール/水の溶液が、スカイブルーの色を与えるよう加えられた。この場合、染料は接着剤によって優先的に吸収され、したがって残っている接着剤の跡を検出するための検査を補助するものとして機能する。統合された液体石鹸および界面活性剤パッケージを有する液体皿洗浄洗剤を、スムーズな均一のゲルが達成されるまで混合物に加えた。このゲルがpH感受性または腐食性表面に対して用いられる場合は、所望のpH範囲における2容量%の標準的な緩衝溶液が加えられ得る。この場合、pH調整剤は、グラファイト複合材料および関連する仕上げのストリッパが強く意図されているので、必要とされない。当該混合物は、垂直およびオーバーヘッド表面に対する接着についてテストされ、必要に応じてシリカまたはイソプロパノールで調節された。
【実施例2】
【0045】
実施例2−テープ接着剤の残留物
テープ残留物を取除くための接着剤剥離組成物をこの発明の原理に従って調製した。ここで上述した方法を用いて、ゴリラテープ(GORILLA TAPE)(登録商標)についての軟化率を判断した。上記の表の「テープ」の欄を参照のこと。ゴリラテープ(登録商標)は、シンシナティ(Cincinnati)、オハイオ(Ohio)のゴリラグルーカンパニー(Gorilla Glue Company)の商標であり、ポリオレフィンならびに天然ゴムおよび合成ゴムを含む感圧性接着剤を有するテープである。
【0046】
テープの布裏打まで接着剤が完全に除去されるよう、非常に多くの各テスト溶媒がグリッド正方形に対して適用されるとともに擦り落しツールの均一なストロークの数がカウントされる。必要とされるストロークの数が、テスト溶媒についての「軟化率」である。ゴリラテープ(登録商標)を用いてテストされる各溶媒についての合計のハンセン溶解度パラメータの関数としての軟化率のプロットが、最も効果的な溶媒を示すこの接着剤系についてのハンセンプロファイルである。このゴリラテープ(登録商標)についてのハンセンプロファイルは、この残留物に対して効果的である実質的にすべての溶媒が約14と約19との間のHSP値を有するということを示す。
【0047】
この例示的な接着剤剥離組成物のための一次溶媒系として、高引火点脂肪族ナフサ(HSP=18.0)およびトルエン(HSP=18.2)の95−5の混合物を選んだ。ナフサが選ばれたのは、塗装格納庫および他の航空機製造作業においてすでに一般的に用いられているからである。経年し、かつ熱硬化する可能性のある残留物を攻撃するようトルエン成分を加えた。脂肪族ナフサおよびトルエンの体積が95−5となる混合物になるように、増粘剤であるヒュームドシリカを掻混ぜながら入れた。少量のシリカおよびナフサを加えて粘性を調節し、これにより垂直表面にくっつくのに十分な稠度のペーストが得られた。これは通常、ガーディナー粘性スケール上では約25である。1容量%のグリセリ
ンを当該混合物の中に混合し、合計の蒸気圧を低減することにより一次溶媒の蒸発を遅らせ、混合物が長期の間にわたって完全に乾燥してしまうことを防ぎ、これにより材料の寿命が延長する。水/エタノール中のメチレンブルー溶液が、ライトブルーの色を与えるよう加えられた。染料は、接着剤により優先的に吸収され、さらにこれにより残っている接着剤残留物を検出するための検査の助けとなるように機能する。界面活性剤/液体石鹸パッケージを包含する商業的な洗剤を加え、混合し、これにより平滑なゲル状の稠度が与えられた。pHが7の緩衝溶液が1容量%(リン酸2水素カリウムおよびリン酸ナトリウム)、敏感な被覆アルミニウム表面の腐食を遅らせるよう加えられた。混合物は、垂直およびオーバーヘッド表面に対する接着についてテストされた。粘性がシリカおよびナフサで必要に応じて調節された。接着剤剥離組成物は、アルミニウム上の経年および硬化したゴリラテープ(登録商標)上でテストされた。接着剤剥離組成物は、テープ残留物を取込むと示された。
【0048】
好ましい実施例を参照してこの発明を記載してきたが、この発明の範囲から逸脱することがなければさまざまな変更がなされ得るとともに均等物がその要素について代替され得るということを当業者ならば理解するであろう。さらに、この本質的な範囲から逸脱することがなければ、この発明の教示に対して特定の状態または材料を適合するように多くの修正がなされてもよい。したがって、この発明は、この発明を実施するための最良の形態であると考えられるものとして開示される特定の実施例に限定されるということを意図しておらず、この発明は特許請求の範囲に該当するすべての実施例を含むことになる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒と、非研磨増粘剤と、界面活性剤と、蒸気圧調節剤とを含み、非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータは約14MPa1/2から約24MPa1/2である、接着剤剥離組成物。
【請求項2】
2つ以上の非ハロゲン系有機溶媒を含む、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項3】
2つの非ハロゲン系有機溶媒を含み、ハンセン溶解度パラメータの差が0より大きく、かつ約6MPa1/2未満である、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項4】
1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータは約18MPa1/2から約20MPa1/2である、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項5】
1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータは約14MPa1/2から約l9MPa1/2である、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項6】
前記非研磨増粘剤はシリカ、セルロース、セルロース誘導体、またはそれらの組み合わせである、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項7】
前記界面活性剤は、アニオン系および非イオン系界面活性剤の組み合わせである、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項8】
前記蒸気圧調節剤は前記1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒に溶解可能であり、前記接着剤剥離組成物は前記1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒の蒸気圧を低減するのに十分な量の前記蒸気圧調節剤を含む、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項9】
前記蒸気圧調節剤は、20torrで約100℃より大きい沸点を有する非イオン系の液体である、請求項8に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項10】
前記蒸気圧調節剤はグリセリンである、請求項9に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項11】
吸収性指示染料をさらに含み、前記吸収性指示染料は接着剤残留物の中または上へと吸収可能であり、前記吸収性指示染料は前記1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒に溶解可能である、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項12】
前記吸収性指示染料はメチレンブルーまたは食品着色料である、請求項11に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項13】
水における前記接着剤剥離組成物の5重量%の懸濁液は約6から約8のpHを有する、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項14】
緩衝剤、金属錯化剤、乳化剤、香料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される添加物をさらに含む、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項15】
前記接着剤剥離組成物にはハロゲン系有機溶媒が本質的に存在しない、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項16】
粘度が約500から約1000ポイズである、請求項1に記載の接着剤剥離組成物。
【請求項17】
以下の成分を含む接着剤剥離組成物であって、
【表1】

1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータが約14MPa1/2から約24MPa1/2である、接着剤剥離組成物。
【請求項18】
基材から接着剤残留物を取除く方法であって、
1つ以上の非ハロゲン系有機溶媒と、非研磨増粘剤と、界面活性剤と、蒸気圧調節剤と、吸収性指示染料とを含む接着剤剥離組成物を与えるステップを含み、非ハロゲン系有機溶媒の各々についての25℃での合計のハンセン溶解度パラメータは、約14MPa1/2から約24MPa1/2であり、前記方法はさらに、
接着剤残留物が引っ付いている基材に前記接着剤剥離組成物を適用するステップと、
前記吸収性指示染料が前記接着剤残留物の中または上へと吸収されるのに十分な時間を経過させるステップと、
清浄された基材が得られるよう前記接着剤剥離組成物を取除くステップと、
前記吸収性指示染料の存在について前記清浄された基材を検査するステップとを含む、方法。
【請求項19】
前記清浄された基材を水溶液で洗浄するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記清浄された基材を非水溶液で洗浄するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記基材はエポキシグラファイトの複合材料である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記基材は航空宇宙乗物の外面である、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−513598(P2010−513598A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541466(P2009−541466)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/085846
【国際公開番号】WO2008/076603
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】