説明

コアシェル型粒子、その製造方法および用途

【課題】加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質、摺動性、耐摩耗性、耐衝撃性などに優れかつ他部材との接着性、親和性に優れたコアシェル型粒子を提供する。
【解決手段】本発明のコアシェル型粒子は、樹脂微粒子が分散された溶媒中において、該樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン原子を結合させるとともに、ラジカル重合性単量体を表面グラフト重合させることにより形成された、グラフト重合体からなる被覆層を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル型粒子、その製造方法および用途に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ポリマー微粒子の開発が活発化しており、産業上さまざまな用途で幅広く使用されている。なかでも、粒子形状が球形で粒度分布の狭いポリマー微粒子は、その加工性、流動性、表面物性の良さから滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、光拡散用の添加剤、低密度ポリエチレンからなる包装材のブロッキング防止材をはじめ、フィルター、分離膜、分散剤、粉体塗装、樹脂改質剤、コーティング剤、絶縁フィラー、結晶核剤、クロマトグラフィー用充填剤や免疫診断試薬用担体等の用途に広く利用されている。
【0003】
これらポリマー粒子の材質は、アクリル樹脂系、スチレン樹脂系、メラミン樹脂系、ポリオレフィン系など多種にわたるが、結晶性や融点が高く、高い化学的安定性を有するといった特長から、ポリオレフィン系樹脂の微粒子が注目されている。ポリオレフィン系樹脂微粒子は、他の材料に見られない耐水・耐油性、耐薬品性や生体安全性といった特長を活かし、さまざまな新材料、新用途が考案・実用化されている。
【0004】
例えば、ポリエチレン微粒子やポリプロピレン粒子、およびそれらの表面改質を施したものは、化学や生物系物質の高効率な分離用カラム充填剤として、また高比表面積の吸着材や触媒担体などとして利用できる。また、薬物などの送達と除放を担わせた担体としての利用、分散性の悪い微粒子物質を均一に分散させるための散布剤や、化粧品素材として肌への良好な感触効果をもたらす安全性の高い微粒子材料に活用される。その他、リチウム電池やリチウムイオン2次電池のセパレータ用部材、光拡散・反射・反射防止などの機能を持った光学フィルター用部材、セラミックなどの焼結多孔体の高性能バインダー、通気性フィルムなどの賦孔材、免疫化学的活性物質固定化用担体、微小細孔・高比表面積焼結フィルターなど機能性新材料用途への応用が積極的に検討されている。
【0005】
ポリオレフィン系樹脂は基本的に炭素原子と水素原子のみから構成されており、軽量かつ安価な上に、優れた物性と加工性を持つという特性を有する反面、金属や他の樹脂などの異種材料との親和性や接着性、反応性に乏しい。したがって、このような特性を有するポリオレフィン系樹脂で構成された微粒子を上記の各種用途に利用する場合には、他の部材との親和性や接着性、反応性に優れた極性基あるいは極性セグメントを微粒子表面に導入する必要がある。
【0006】
表面に極性基や極性セグメントが導入されたポリオレフィン微粒子としては、例えば、特許文献1に開示されているようなEVAの表面にn−ブチルアクリレートの重合体セグメントを導入したものや、特許文献2に開示されているような極性基含有高分子量ポリオレフィン粒子などが挙げられるが、これらの文献に記載の方法ではコア部とシェル層との間の結合力は比較的弱く、用途によっては両者の分離により所定の機能が発現しなくなる場合がある。
【0007】
一方、ポリオレフィンに極性セグメントを導入する方法としては、ハロゲン化ポリオレフィンとリビングラジカル重合との組合せによる方法が開示されている(特許文献3)。この方法で製造された重合体は、ポリオレフィンセグメントと極性セグメントとが炭素−炭素結合により化学結合しているため、上記のようなコア部とシェル層との分離といった問題は起こりえない。しかしながら、特許文献3に記載の方法を用いるだけではコアシェル型構造の重合体を製造することは困難であり、また、この方法によりコアシェル型粒子を製造した例はない。
【0008】
また、特許文献4〜8には、ポリオレフィン樹脂に予めハロゲン含有有機基を導入し、そしてこのポリオレフィン樹脂を用いてシートを成形し、次いでシート表面のハロゲン原子を開始基として表面グラフト重合することにより、シート表面にグラフト重合体からなる被覆層を形成する方法が開示されている。
【0009】
しかしながら、このような方法により樹脂粒子表面にハロゲン含有有機基を導入したとしても、緻密であり膜厚が均一な被覆層を形成することは困難であり、所望のコアシェル型粒子を製造することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−182925号公報
【特許文献2】特開2007−161896号公報
【特許文献3】WO2006/088197号公報
【特許文献4】特開2008−37950号公報
【特許文献5】特開2008−63532号公報
【特許文献6】特開2008−63533号公報
【特許文献7】特開2008−63534号公報
【特許文献8】特開2008−95083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らはこのような従来技術に基づき検討した結果、樹脂微粒子表面をその形状を損なうことなくハロゲン原子で変性させた後、表面グラフト重合することにより得られた樹脂微粒子が、コアシェル型構造を有する粒形の整った粒子であることを見出した。さらに、コア部を構成するポリオレフィンセグメントとシェル層を構成する極性セグメントとが炭素−炭素結合を介して化学結合していることを見出して本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るコアシェル型粒子は、以下に示すことができる。
(1)樹脂微粒子が分散された溶媒中において、該樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン原子を結合させるとともに、ラジカル重合性単量体を表面グラフト重合させることにより形成された、グラフト重合体からなる被覆層を備えることを特徴とするコアシェル型粒子。
(2)表面グラフト重合は、原子移動ラジカル重合であることを特徴とする(1)に記載のコアシェル型粒子。
【0013】
(3)前記樹脂微粒子表面の樹脂と、前記グラフト重合体とが、炭素−炭素結合により化学的に結合していることを特徴とする(1)または(2)に記載のコアシェル型粒子。
(4)前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、オレフィン系樹脂であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【0014】
(5)前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、下記(A1)〜(A5)よりなる群から1種以上選択されることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載のコアシェル型粒子;
(A1)下記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体、
CH=CH−C2x+1 ・・・(1)
(式(1)において、xは0または正の整数である。)
(A2)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体
(A3)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体
(A4)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体
(A5)前記(A1)〜(A4)で表される重合体を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性したポリオレフィン
【0015】
【化1】

【0016】
(上記式(2)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表し、R15〜R18は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。)。
【0017】
(6)前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、極性基を有さない炭化水素樹脂であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
(7)前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、70℃以上の融点を有する結晶性樹脂であることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【0018】
(8)前記樹脂微粒子を構成する樹脂の数平均分子量が、5,000〜10,000,000であることを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
(9)前記樹脂微粒子の平均粒子径が、0.1〜5000μmであることを特徴とする(1)乃至(8)のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
(10)前記樹脂微粒子の嵩比重が、0.20〜0.60g/cmであることを特徴とする(1)乃至(9)のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【0019】
(11)前記樹脂微粒子を10〜99重量%、前記グラフト重合体を1〜90重量%の量で含むことを特徴とする(1)乃至(10)のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【0020】
(12)前記グラフト重合体が、前記ラジカル重合性単量体に由来する構成単位を主として含む構成単位の連鎖構造を有し、数平均分子量が500〜1,000,000の範囲であることを特徴とする(1)乃至(11)のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【0021】
(13)前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸とその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、スチレンとその誘導体、(メタ)アクリルアミドとその誘導体、マレイン酸とその誘導体、マレイミドとその誘導体、ビニルエステル類、共役ジエン類およびハロゲン含有オレフィン類よりなる群から選択されることを特徴とする(1)乃至(12)のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【0022】
(14)前記樹脂微粒子が、下記(1)〜(3)をいずれも満たす超高分子量エチレン系重合体粒子であることを特徴とする(1)乃至(13)のいずれかに記載のコアシェル型粒子;
(1)デカリン中で測定された極限粘度[η]の値が10dl/g以上である。
(2)平均粒子径が0.1〜100μmの範囲内である。
(3)エチレンに由来する構成単位が95〜100mol%、炭素数3〜6の直鎖または分岐α―オレフィンから選ばれる1種以上のモノマー由来の構成単位が0〜5mol%である。
【0023】
(15)樹脂微粒子が分散された溶媒中において該樹脂微粒子にハロゲン化剤を接触させ、該樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン原子を結合させる工程と、
前記ハロゲン原子が結合した前記樹脂微粒子表面にラジカル重合性単量体を接触させ、前記ハロゲン原子を重合開始基として前記ラジカル重合性単量体を表面グラフト重合させることにより、前記樹脂微粒子表面にグラフト重合体からなる被覆層を形成する工程と、
を含むコアシェル型粒子の製造方法。
【0024】
(16)前記被覆層を形成する前記工程において、
表面グラフト重合は、原子移動ラジカル重合であることを特徴とする(15)に記載のコアシェル型粒子の製造方法。
(17)前記被覆層を形成する前記工程において、
前記樹脂微粒子表面の樹脂と、前記グラフト重合体とが、炭素−炭素結合により化学的に結合していることを特徴とする(15)または(16)に記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0025】
(18)前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、オレフィン系樹脂であることを特徴とする(15)乃至(17)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
(19)前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、下記(A1)〜(A5)よりなる群から1種以上選択されることを特徴とする(15)乃至(18)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法;
(A1)下記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体、
CH=CH−C2x+1 ・・・(1)
(式(1)において、xは0または正の整数である。)
(A2)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体
(A3)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体
(A4)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体
(A5)前記(A1)〜(A4)で表される重合体を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性したポリオレフィン
【0026】
【化2】

【0027】
(上記式(2)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表し、R15〜R18は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。)。
【0028】
(20)前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、極性基を有さない炭化水素樹脂であることを特徴とする(15)乃至(19)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0029】
(21)前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、70℃以上の融点を有する結晶性樹脂であることを特徴とする(15)乃至(20)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0030】
(22)前記樹脂微粒子を構成する樹脂の数平均分子量が、5,000〜10,000,000であることを特徴とする(15)乃至(21)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0031】
(23)前記樹脂微粒子の平均粒子径が、0.1〜5000μmであることを特徴とする(15)乃至(22)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0032】
(24)前記樹脂微粒子の嵩比重が、0.20〜0.60g/cmであることを特徴とする(15)乃至(23)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0033】
(25)前記グラフト重合体が、前記ラジカル重合性単量体に由来する構成単位を主として含む構成単位の連鎖構造を有し、数平均分子量が500〜1,000,000の範囲であることを特徴とする(15)乃至(24)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0034】
(26)前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸とその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、スチレンとその誘導体、(メタ)アクリルアミドとその誘導体、マレイン酸とその誘導体、マレイミドとその誘導体、ビニルエステル類、共役ジエン類およびハロゲン含有オレフィン類よりなる群から選択されることを特徴とする(15)乃至(25)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0035】
(27)前記樹脂微粒子が、下記(1)〜(3)をいずれも満たす超高分子量エチレン系重合体粒子であることを特徴とする(15)乃至(26)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法;
(1)デカリン中で測定された極限粘度[η]の値が10dl/g以上である。
(2)平均粒子径が0.1〜100μmの範囲内である。
(3)エチレンに由来する構成単位が95〜100mol%、炭素数3〜6の直鎖または分岐α―オレフィンから選ばれる1種以上のモノマー由来の構成単位が0〜5mol%である。
【0036】
(28)前記樹脂にハロゲン原子を結合させる前記工程および前記被覆層を形成する前記工程は、
前記樹脂微粒子が前記溶媒に溶解しない温度条件下で行われることを特徴とする(15)乃至(27)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0037】
(29)前記被覆層を形成する前記工程の後に、
前記被覆層を備える前記樹脂微粒子を洗浄する工程を含むことを特徴とする(15)乃至(28)のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【0038】
(30) 上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のコアシェル型粒子を、前記樹脂微粒子を構成する前記樹脂を選択的に溶解する溶媒で抽出することにより、前記樹脂微粒子の少なくとも一部を得られた中空状コアシェル型粒子。
【0039】
(31) 上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含むフィルムまたはシート。
(32) 上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含む樹脂添加剤。
(33) 上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含むコーティング剤。
(34) 上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含む分散剤。
(35) 上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含む粉体塗装剤。
(36) 上記(1)乃至(14)のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含む成形体。
【発明の効果】
【0040】
本発明に係るコアシェル型粒子は、緻密であり膜厚が均一な被覆層を有するため、加工性、耐薬品性、電気的性質、機械的性質、摺動性、耐摩耗性、耐衝撃性などに優れかつ他部材との接着性、親和性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1(a)は、実施例16で得られたブロモ化ポリエチレン粒子表面の走査型電子顕微鏡写真であり、図1(b)は、その部分拡大写真である。
【図2】図2(a)は、実施例16で得られたコアシェル型粒子表面の走査型電子顕微鏡写真であり、図2(b)は、その部分拡大写真である。
【図3】図3は、実施例28で得られた中空状コアシェル型粒子断面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】図4(a)は、実施例30で得られたコアシェル型粒子の光学顕微鏡写真であり、図4(b)は、透過型電子顕微鏡によるコアシェル型粒子表面の部分拡大写真である。
【図5】図5は、実施例33で得られたコアシェル型粒子の光学電子顕微鏡写真である。
【図6】図6(a)は、参考例1で得られた粉末の光学顕微鏡写真であり、図6(b)は、透過型電子顕微鏡による拡大写真である。
【図7】図7は、実施例48で得られたコアシェル型粒子の透過型電子顕微鏡による部分拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明に係るコアシェル型粒子について具体的に説明する。
本発明のコアシェル型粒子は、樹脂微粒子表面にグラフト重合体からなる被覆層を備えるコアシェル型粒子であり、樹脂微粒子表面の樹脂と、グラフト重合体が炭素−炭素結合で化学的に結合した構造を有する。
【0043】
(樹脂微粒子)
本発明に用いられる樹脂微粒子は、その平均粒子径(D50)が、0.1〜5,000μmの範囲であり、好ましくは0.5〜4,000μm、より好ましくは1〜3,000μmの範囲である。平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法により測定することができる。
【0044】
樹脂微粒子の嵩比重は、0.2〜0.6g/cmの範囲である。嵩比重が0.2g/cm以下であると、粒子の大きさが不均一であり形状も球形とはならず、しかも粒子内に空隙が多いため、被覆層を形成する際に、均一な被覆層を形成することができず、所望のコアシェル型粒子の形成が困難となる。樹脂微粒子の嵩比重は、好ましくは0.25〜0.55g/cm、より好ましくは0.3〜0.5g/cmである。
本発明においては、樹脂微粒子を用いており、成形加工時に取り扱いが容易であり、加工性も良好であることから工業的に好ましい。
【0045】
本発明に用いられる樹脂微粒子としては、種々の樹脂からなる有機粒子を用いることができる。本発明においては、オレフィン系樹脂を用いることが好ましく、下記(A1)〜(A5)よりなる群から1種以上選択されることがより好ましい。
(A1)下記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体
CH=CH−C2x+1 ・・・(1)
(式(1)において、xは0または正の整数である。)
(A2)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体
(A3)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体
(A4)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体
(A5)前記(A1)〜(A4)で表される重合体を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性したポリオレフィン
【0046】
【化3】

【0047】
上記一般式(2)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表し、R15〜R18は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。
【0048】
qが1の場合には、RおよびRは、それぞれ独立に、下記の原子または炭化水素基を表し、qが0の場合には、それぞれの結合手が結合して5員環を形成する。
【0049】
上記一般式(2)において、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表す。
【0050】
ここで、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。また炭化水素基としては、それぞれ独立に、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、または炭素原子数3〜15のシクロアルキル基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基が挙げられ、ハロゲン化アルキルとしては、上記のようなアルキル基を形成している水素原子の少なくとも一部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子で置換された基が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられる。
【0051】
これらの基は低級アルキル基を含有していてもよい。さらに上記一般式(2)において、R15とR16とが、R17とR18とが、R15とR17とが、R16とR18とが、R15とR18とが、あるいはR16とR17とがそれぞれ結合して(互いに共同して)、単環または多環を形成していてもよい。ここで形成される単環または多環としては、具体的に以下に示すようなものが挙げられる。
【0052】
【化4】

【0053】
なお上記例示において、1および2の番号を付した炭素原子は、上記一般式(2)において、それぞれR15(R16)またはR17(R18)が結合している炭素原子を表す。
【0054】
上記一般式(2)で表される環状オレフィンとしては、具体的には、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2- エン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3- デセン誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]-3- ウンデセン誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3- ドデセン誘導体、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]-3- ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4- ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ[8.4.0.12,3.19,12.08,13]-3- ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]-4- ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]-4- ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16 ]-4- エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5- エイコセン誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5- ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]-5- ドコセン誘導体、ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]-5- ペンタコセン誘導体、ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]-5-ヘキサコセン誘導体などが挙げられる。
【0055】
上記のような一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物は、シクロペンタジエンと対応する構造を有するオレフィン類とを、ディールス・アルダー反応させることによって製造することができる。これらの環状オレフィンは、単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0056】
≪(A1)一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体≫
本発明において、一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物としては、具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどの炭素数が4〜20の直鎖状または分岐状のα−オレフィンが挙げられる。これらの例示オレフィン類の中では、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテンから選ばれる少なくても1種以上のオレフィンを使用することが好ましい。
【0057】
本発明で用いられる「一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体(A1)」としては、上記のα−オレフィン化合物を単独重合または共重合して得られるものであれば特に制限はないが、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのエチレン系重合体、プロピレンホモポリマー、プロピレンランダムコポリマー、プロピレンブロックコポリマーなどのプロピレン系重合体、ポリブテン、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ポリ(1−ヘキセン)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−(4−メチル−1−ペンテン)共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−(4−メチル−1−ペンテン)共重合体、プロピレン−ヘキセン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体などの粒子が好ましく挙げられる。
【0058】
≪(A2)一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体≫
一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物としては、上記(A1)の項で記載したものと同様のα−オレフィン化合物が挙げられる。
【0059】
芳香環を有するモノオレフィン化合物としては、具体的には、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系化合物やビニルピリジンなどが挙げられる。本発明で用いられる共重合体(A2)としては、上記のα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物とを共重合して得られるものであれば特に制限はない。
【0060】
≪(A3)一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体≫
一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物としては、上記(A1)の項で記載したものと同様のα−オレフィン化合物が挙げられる。
一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物から誘導される構成単位は、下記一般式(3)で示される。
【0061】
【化5】

【0062】
一般式(3)において、n、m、q、R〜R18ならびにR、Rは式(2)と同じ意味である。
【0063】
≪(A4)一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体≫
一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物としては、上記(A1)の項で記載したものと同様のα−オレフィン化合物が挙げられる。
【0064】
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えば、不飽和モノカルボン酸およびその誘導体や不飽和ジカルボン酸およびその誘導体、ビニルエステル類が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸ハライド、(メタ)アクリル酸アミド、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、マレイン酸ハライド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミド、酢酸ビニルや酪酸ビニルなどの脂肪族ビニルエステル類などが挙げられる。
【0065】
本発明で用いられるランダム共重合体(A4)としては、上記のα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体粒子であれば特に制限はないが、前記α−オレフィン化合物を50モル%以上含有するものが好ましい。
【0066】
≪(A5)前記(A1)〜(A4)で表される重合体を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性したポリオレフィン≫
不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、具体的には、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、マレイン酸ハライド、マレイン酸アミド、マレイン酸イミドなどが挙げられる。
【0067】
前記(A1)〜(A4)で表される重合体を不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性する方法としては、例えば、有機過酸化物などのラジカル発生剤の存在下、あるいは紫外線や放射線の存在下に不飽和カルボン酸またはその誘導体を前記(A1)〜(A4)で表される重合体と反応させる方法などが挙げられる。
【0068】
本発明に用いられる(A1)〜(A5)からなる群から選ばれるオレフィン系重合体を製造する条件や方法については特に制限はないが、例えばチーグラー・ナッタ触媒やメタロセン触媒、ポストメタロセン触媒などのような公知の遷移金属触媒を用いた配位アニオン重合や、高圧下あるいは放射線照射下でのラジカル重合などの方法を用いることができる。また、上記方法で製造したポリオレフィンを熱やラジカルで分解したものを用いることもできる。
【0069】
なお、本発明に用いられる樹脂微粒子としては、炭素−炭素二重結合を複数有する化合物、例えばヘキサジエンやオクタジエンなどの直鎖状ジエン化合物、ジビニルベンゼンなどのスチレン系ジエン化合物、ビニルノルボルネンやエチリデンノルボルネンなどの環状ジオレフィン化合物などを上記α−オレフィン化合物と共重合して得られる重合体粒子を用いることもできる。また本発明では、オレフィン系重合体として、上記のような(A1)〜(A5)からなる群から選ばれる重合体を2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0070】
本発明において、樹脂微粒子を構成する樹脂は結晶性であっても非晶性であってもよいが、機械物性を発現するために結晶性を有することが好ましく、DSCで測定した融点が70℃以上であることが好ましい。より好ましくは80℃以上であり、さらに好ましくは90℃以上である。
【0071】
本発明において、樹脂微粒子を構成する樹脂の分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、そのようにして測定された数平均分子量(Mn)の値が5,000〜10,000,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは8,000〜5,000,000であり、さらに好ましくは10,000〜1,000,000である。
【0072】
また本発明に係る樹脂微粒子を構成する樹脂は、主鎖の末端に下記一般式(I)〜(III)で表される構成単位から選ばれる少なくとも一つの構成単位が接続された構造、および/または重合体主鎖中に下記一般式(IV)〜(VII)で表される構成単位から選ばれる少なくとも一つの構成単位が挿入された構造を有する。
【0073】
【化6】

【0074】
上記一般式(I)〜(VII)において、Xはハロゲン原子を表し、R1a、R1b、R2a、R2b、R3a、R3b、R3c、R4a、R5a、R5b、R6a、R6b、R7a、R7bは水素原子、ハロゲン原子、一つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよい炭化水素基、酸素含有基または窒素含有基を表し、互いに同一でも異なっていてもよい。
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、好ましくは塩素または臭素である。
【0075】
炭化水素基として具体的には、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、ビニル、アリル、イソプロペニルなどの炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルケニル基、エチニル、プロパルギルなど炭素原子数が2〜30、好ましくは2〜20の直鎖状または分岐状のアルキニル基、フェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基、トリル、iso-プロピルフェニル、t-ブチルフェニル、ジメチルフェニル、ジ-t-ブチルフェニルなどのアルキル置換アリール基などが挙げられる。
【0076】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル、ペンタフルオロフェニル、クロロフェニルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル、クミルなどのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0077】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基、アルコシキ基、アリールオキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基などで置換されていてもよい。
【0078】
これらのうち、特に、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、t-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基、フェニル、ナフチル、ビフェニル、ターフェニル、フェナントリル、アントラセニルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基、これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリールオキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0079】
酸素含有基は、基中に酸素原子を1〜5個含有する基であり、具体的には、例えばアルコキシ基、アリールオキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシル基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などが挙げられ、アルコキシ基、アリールオキシ基、アセトキシ基、カルボニル基、ヒドロキシル基などが好ましい。
【0080】
なお酸素含有基が炭素原子を含む場合は、炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の範囲にあることが望ましい。これらの酸素含有基のうち、アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、tert-ブトキシなどが、アリールオキシ基としては、フェノキシ、2,6-ジメチルフェノキシ、2,4,6-トリメチルフェノキシなどが、アシル基としては、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、p-クロロベンゾイル、p-メトキシベンソイルなどが、エステル基としては、アセチルオキシ、ベンゾイルオキシ、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル、p-クロロフェノキシカルボニルなどが好ましく例示される。
【0081】
窒素含有基は、基中に窒素原子を1〜5個含有する基であり、具体的には、例えばアミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどが挙げられ、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ニトロ基、シアノ基が好ましい。
【0082】
なお、窒素含有基が炭素原子を含む場合は、炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の範囲にあることが望ましい。これらの窒素含有基のうち、アミド基としては、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルベンズアミドなどが、アミノ基としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジシクロヘキシルアミノなどのアルキルアミノ基;フェニルアミノ、ジフェニルアミノ、ジトリルアミノ、ジナフチルアミノ、メチルフェニルアミノなどのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが、イミド基としては、アセトイミド、ベンズイミドなどが、イミノ基としては、メチルイミノ、エチルイミノ、プロピルイミノ、ブチルイミノ、フェニルイミノなどが好ましく例示される。
以下に、上記一般式(I)〜(VII)で表される構成単位の好ましい形態について構造式で例示する。
[上記一般式(I)で表される構成単位の好ましい形態の例示]
【0083】
【化7】

【0084】
上記式中、Xはハロゲン原子を表す。
[上記一般式(II)で表される構成単位の好ましい形態の例示]
【0085】
【化8】

【0086】
上記式中、Xはハロゲン原子を表す。
[上記一般式(III)で表される構成単位の好ましい形態の例示]
【0087】
【化9】

【0088】
上記式中、Xはハロゲン原子を表す。
[上記一般式(IV)で表される構成単位の好ましい形態の例示]
【0089】
【化10】

【0090】
上記式中、Xはハロゲン原子を表す。
[上記一般式(V)で表される構成単位の好ましい形態の例示]
【0091】
【化11】

【0092】
上記式中、Xはハロゲン原子を表す。
[上記一般式(VI)で表される構成単位の好ましい形態の例示]
【0093】
【化12】

【0094】
上記式中、Xはハロゲン原子を表す。
[上記一般式(VII)で表される構成単位の好ましい形態の例示]
【0095】
【化13】

【0096】
上記式中、Xはハロゲン原子を表す。
【0097】
また本発明に用いられる有機微粒子を構成する樹脂は、重合体主鎖の末端に上記一般式(I)〜(III)で表される構成単位中の炭素−炭素二重結合に水素原子2個が付加して炭素−炭素単結合になった構造として表される構成単位から選ばれる少なくとも一つの構成単位が接続された構造、および/または重合体主鎖中に下記一般式(IV)〜(VII)で表される構成単位中の炭素−炭素二重結合に水素原子2個が付加して炭素−炭素単結合になった構造として表される構成単位から選ばれる少なくとも一つの構成単位が挿入された構造を有することもある。そのような構成単位の好ましい形態について以下に構造式で示す。
【0098】
【化14】

【0099】
上記式中、Xはハロゲン原子を示す。
【0100】
ここで、重合体主鎖とは、重合体一分子鎖中に存在するα−オレフィンおよびそれと共重合させたコモノマーに由来する繰り返し単位が最も多い、すなわちモノマー連鎖構造の最も長い部分を表し、そのような重合体主鎖には2つの末端位置が存在する。したがって重合体主鎖の末端に上記一般式(I)〜(III)で表される構成単位およびその構成単位中に含まれる炭素−炭素二重結合に水素原子2個が付加して炭素−炭素単結合になった構造として表される構成単位から選ばれる少なくとも一つの構成単位が接続されている場合、重合体一分子鎖中に含まれる上記構成単位の個数は最大で2個となる。
【0101】
また、重合体主鎖中に下記一般式(IV)〜(VII)で表される構成単位およびその構成単位中に含まれる炭素−炭素二重結合に水素原子2個が付加して炭素−炭素単結合になった構造として表される構成単位から選ばれる少なくとも一つの構成単位が挿入されている場合、その重合体一分子鎖当たりに存在する上記構成単位の個数に関しては特に制限はないが、個数が多すぎるとポリオレフィンとしての性質が充分に発現しない可能性がある。
【0102】
したがって、上記一般式(I)〜(VII)で表される構成単位および上記一般式(I)〜(VII)で表される構成単位中に含まれる炭素−炭素二重結合に水素原子2個が付加して炭素−炭素単結合になった構造として表される構成単位を合計した全構成単位の総数としては、ハロゲン原子含有量に換算して0.01〜20重量%であることが好ましく、0.05〜10重量%であることがより好ましい。また、一つの重合体分子鎖中にこれらの構成単位が数種類含まれていてもよい。
【0103】
本発明において、樹脂微粒子を構成する樹脂中に存在するハロゲン原子含有量は、例えば元素分析やイオンクロマトグラフィーなどの方法により測定することができ、測定値は通常、重量%単位で表される。また、本発明において、樹脂微粒子中に存在する炭素−炭素二重結合含有量は、例えば赤外分光法や核磁気共鳴法(NMR)などの方法により測定することができ、測定値は通常、重量%あるいはモル%単位で表される。
さらに、炭素−炭素二重結合のアリル位に存在するハロゲン原子については、例えばNMRにより確認および定量することができる。
【0104】
アリル位に存在するハロゲン原子確認の具体例としては、例えば本発明の方法で得られた臭素化ポリプロピレン粒子の重水素化オルトジクロロベンゼンを溶媒に用いたプロトンNMRにおいて、炭素−炭素二重結合に基づくシグナルは通常δ4.5〜6.0ppmの範囲に観測され、臭素原子が結合したアリル位のメチレン基およびメチン基は通常δ3.5〜4.5ppmに観測される。アリル位以外のメチレン基およびメチン基に臭素原子が導入された場合のシグナル位置は通常、δ3.0〜3.5ppmであるため、臭素原子がアリル位に存在しているかそうでないかは容易に識別可能である。加えて、例えばプロトン−プロトン二次元NMR(HH−COSY)を用いることにより、上記炭素−炭素二重結合に基づくシグナルと、臭素原子が結合したメチレン基およびメチン基のシグナルとの相関関係を確認することも可能である。
【0105】
一方、樹脂微粒子を構成する樹脂の分子量は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができ、そのようにして測定された数平均分子量(Mn)の値と樹脂微粒子を構成する樹脂中に含まれる各ユニット(各オレフィンモノマーに由来するユニット、ハロゲンが結合したユニット、炭素−炭素二重結合ユニットなど)の組成比(モル分率)から、炭素−炭素二重結合の含有量を一分子鎖あたりの平均値として算出することができる。
また、樹脂微粒子を構成する樹脂としては、下記要件(1)〜(3)をいずれも満たす超高分子量エチレン系重合体粒子のハロゲン化物を用いることも好ましい。
(1)デカリン中で測定された極限粘度[η]の値が10dl/g以上である。
(2)レーザー回折・散乱法で測定された平均粒子径が0.1〜100μmの範囲内である。
(3)エチレンに由来する構成単位が95〜100mol%、炭素数3〜6の直鎖または分岐α―オレフィンから選ばれる1種以上のモノマー由来の構成単位が0〜5mol%である。
本発明においては、後述するコアシェル型粒子の製造方法において樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン原子を直接結合させるため、樹脂微粒子を構成する樹脂として、上述の樹脂のうちでも極性基を有さない炭化水素樹脂を用いることができる。
【0106】
樹脂微粒子を構成する樹脂は、溶媒に対して室温で安定である。溶媒としては室温で液体であれば何でもよいが、例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、テトラヒドロフランおよびアニソールのようなエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド、N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン、水等を挙げることができる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。
本発明において用いられる有機微粒子は、通常の方法により製造することができる。
【0107】
(被覆層)
本発明に係るコアシェル型粒子を構成する被覆層は、炭素−炭素不飽和結合を有する有機化合物から選ばれる1種以上のラジカル重合性単量体に由来する繰り返し単位を主たる構成単位とする連鎖構造を有するグラフト重合体からなる。被覆層を構成するグラフト重合体は、樹脂微粒子表面の樹脂と炭素−炭素結合により化学的に結合している。
【0108】
本発明で用いられるラジカル重合性単量体としては、具体的には、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、(メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩等のスチレン系モノマー、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニル系モノマー、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステル及びジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル系モノマー、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィン系モノマー、ブタジエン、イソプレン等のジエン系モノマー、塩化ビニル、塩化ビニリデン、塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらの有機化合物は、単独で、または2種類以上を組み合わせて使用しても構わない。
【0109】
被覆層を構成するグラフト重合体としては、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、スチレンおよびその誘導体、(メタ)アクリルアミドおよびその誘導体、マレイン酸およびその誘導体、マレイミドおよびその誘導体、ビニルエステル類、共役ジエン類、ハロゲン含有オレフィン類から選ばれる一種あるいは二種以上の単量体を(共)重合して得られる重合体が好ましく、(メタ)アクリル酸およびその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、スチレンおよびその誘導体から選ばれる1種あるいは2種以上の単量体を(共)重合して得られる重合体がより好ましく、(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸の単独重合体および共重合体を更に好ましく用いることができる。
【0110】
[コアシェル型粒子の製造方法]
本発明に係るコアシェル型粒子の製造方法について以下に詳細に説明する。
本発明に係るコアシェル型粒子は、有機微粒子と被覆層とからなり、有機微粒子表面の樹脂に被覆層を構成するグラフト重合体が炭素−炭素結合で化学的に結合している。このようなコアシェル型粒子の製造方法としては、例えば以下の工程(A)〜(C)を順次実施する方法が挙げられる。
【0111】
工程(A):樹脂微粒子が分散された溶媒中において、樹脂微粒子にハロゲン化剤を接触させ、樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン原子を結合させる工程。
工程(B):溶媒中において、工程(A)で得られたハロゲン原子が結合した樹脂微粒子表面にラジカル重合性単量体を接触させ、ハロゲン原子を重合開始基としてラジカル重合性単量体を表面グラフト重合させることにより、樹脂微粒子表面にグラフト重合体からなる被覆層を形成する工程。
工程(C):工程(A)で得られた被覆層を備える前記樹脂微粒子を洗浄する工程。
【0112】
《工程(A)》
工程(A)は、樹脂微粒子が分散された溶媒中において、樹脂微粒子にハロゲン化剤を接触させ、樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン原子を結合させる工程である。
【0113】
樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン原子を結合させる方法については、従来公知の種々の方法が採用できる。例えば、樹脂微粒子を溶媒に懸濁させて、通常−80℃〜250℃の温度、好ましくは室温以上溶媒の沸点以下の温度で、ハロゲン化剤と必要に応じてラジカル開始剤などを添加混合して反応させる方法などが挙げられる。また、樹脂微粒子とハロゲン原子とを反応させるに際して、樹脂微粒子が溶解しない溶媒および温度条件を選択することが好ましい。ハロゲン化に際し、樹脂微粒子が溶解した場合、反応後に元の粒子形状に戻すことは困難であり、粒径が不均一になったり粒子内部に空隙ができたりするために所望のコアシェル型粒子を製造することは容易ではない。
【0114】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素から選ばれ、これらの組み合わせであってもよい。本発明においては、臭素を用いることが特に好ましい。
【0115】
本発明で用いられるハロゲン化剤としては、樹脂微粒子をハロゲン化することができるものであれば特に制限はないが、具体的には、塩素、臭素、ヨウ素、三塩化リン、三臭化リン、三ヨウ化リン、五塩化リン、五臭化リン、五ヨウ化リン、塩化チオニル、塩化スルフリル、臭化チオニル、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−クロログルタルイミド、N−ブロモグルタルイミド、N,N'−ジブロモイソシアヌル酸、N−ブロモアセトアミド、N−ブロモカルバミド酸エステル、ジオキサンジブロミド、フェニルトリメチルアンモニウムトリブロミド、ピリジニウムヒドロブロミドペルブロミド、ピロリドンヒドロトリブロミド、次亜塩素酸t−ブチル、次亜臭素酸t−ブチル、塩化銅(II)、臭化銅(II)、塩化鉄(III)、塩化オキサリル、IBrなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは塩素、臭素、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−クロログルタルイミド、N−ブロモグルタルイミド、N,N'−ジブロモイソシアヌル酸であり、より好ましくは臭素および、N−ブロモスクシンイミド、N−ブロモカプロラクタム、N−ブロモフタルイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、N−ブロモグルタルイミド、N,N'−ジブロモイソシアヌル酸などのN−Br結合を有する化合物である。
【0116】
また、樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン化剤を接触させる方法は、溶媒中で行うことができる。溶媒としては反応を阻害しないものであればいずれでも使用することができる。
【0117】
具体的には、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフランおよびアニソールのようなエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド、N−ジメチルホルムアミド、水、ジオキサン等を挙げることができる。好ましくは、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロロエチレン、テトラクロロエタン等の塩素化炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフランおよびアニソールのようなエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド、N−ジメチルホルムアミド、水、ジオキサン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0118】
ハロゲン化剤との反応においては、反応を促進するために必要に応じてラジカル開始剤を添加することもできる。ラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビス-2-アミジノプロパン塩酸塩、アゾビスイソ酪酸ジメチル、アゾビスイソブチルアミジン塩酸塩または4,4'-アゾビス-4-シアノ吉草酸等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル、2,4-ジクロル過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジイソプロピルジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ピナンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジイソプロピルペルオキシジカルボナート、tert-ブチルペルオキシラウレート、ジ-tert-ブチルペルオキシフタレート、ジベンジルオキシドまたは2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジヒドロペルオキシド等の過酸化物系開始剤、または過酸化ベンゾイル-N,N-ジメチルアニリンまたはペルオキソ二硫酸−亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系開始剤等が挙げられる。これらのうち、アゾ系開始剤または過酸化物系開始剤が好ましく、更に好ましくは、過酸化ベンゾイル、過酸化ジ-tert-ブチル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジイソプロピルジカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチルである。これらのラジカル開始剤は、単独でもまたは2種以上を同時にまたは順次に使用することもできる。
上記のような反応は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、例えば窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスが挙げられる。
【0119】
このようにして得られたハロゲン変性された樹脂微粒子のハロゲン含有率は、0.01〜20重量%、好ましくは0.02〜15重量%、さらに好ましくは0.05〜10重量%である。
【0120】
《工程(B)》
工程(B)は、溶媒中において、工程(A)で得られたハロゲン変性された樹脂微粒子表面にラジカル重合性単量体を接触させ、ハロゲン原子を重合開始基としてラジカル重合性単量体を表面グラフト重合させることにより、樹脂微粒子表面にグラフト重合体からなる被覆層を形成する工程である。
【0121】
本工程では、ハロゲン原子が結合した樹脂微粒子をマクロ開始剤として、ラジカル重合性単量体から選ばれる1種以上のモノマーを原子移動ラジカル重合することにより製造される。なお、本発明のマクロ開始剤とは、原子移動ラジカル重合の開始能を有する重合体であり、分子鎖中に原子移動ラジカル重合の開始点となりうる部位を有する重合体を表す。
【0122】
本発明における原子移動ラジカル重合とは、リビングラジカル重合の一つであり、有機ハロゲン化物又はハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、遷移金属を中心金属とする金属錯体を触媒としてラジカル重合性単量体をラジカル重合する方法である。
【0123】
具体的には、例えば、Matyjaszewskiら、Chem. Rev., 101, 2921 (2001)、WO96/30421号公報、WO97/18247号公報、WO98/01480号公報、WO98/40415号公報、WO00/156795号公報、あるいは澤本ら、Chem. Rev., 101, 3689 (2001)、特開平8−41117号公報、特開平9−208616号公報、特開2000−264914号公報、特開2001−316410号公報、特開2002−80523号公報、特開2004−307872号公報などが挙げられる。
【0124】
用いられる開始剤としては、例えば有機ハロゲン化物やハロゲン化スルホニル化合物が挙げられるが、特に炭素−炭素二重結合または炭素−酸素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合、あるいは一つの炭素原子上に複数のハロゲンが付加した構造が開始剤構造として好適である。本発明においては、炭素−炭素二重結合のα位に存在する炭素−ハロゲン結合、あるいは一つの炭素原子上に複数のハロゲンが付加した構造を開始剤構造として利用することができる。
【0125】
重合触媒として用いられる遷移金属錯体としては特に限定されないが、好ましくは周期律表第7族、8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体である。更に好ましいものとして、0価の銅、1価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄又は2価のニッケルの錯体が挙げられる。なかでも、銅の錯体が好ましい。1価の銅化合物を具体的に例示するならば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅等である。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために2,2′−ビピリジル若しくはその誘導体、1,10−フェナントロリン若しくはその誘導体、又はテトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン若しくはヘキサメチルトリス(2−アミノエチル)アミン等のポリアミン等が配位子として添加される。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として好適である。ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類が添加される。更に、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、及び、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も、触媒として好適である。
本工程で用いられるラジカル重合性単量体としては、前述の化合物と同様のものが挙げられる。
【0126】
本発明の製造方法において、重合方法は特に限定されず、塊状重合、懸濁重合、乳化重合、塊状・懸濁重合などを適用することができる。本発明のラジカル重合において使用できる溶媒としては、反応を阻害しないものであればいずれでも使用することができる。
具体的には、ベンゼン、トルエンおよびキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナンおよびデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびデカヒドロナフタレンのような脂環族炭化水素系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素およびテトラクロルエチレン等の塩素化炭化水素系溶媒、メタノール、エタノール、n-プロパノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノールおよびtert-ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルおよびジメチルフタレート等のエステル系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジ-n-アミルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフランおよびアニソールのようなエーテル系溶媒、ジメチルスルホキシド、N−ジメチルホルムアミド、ジオキサン等を挙げることができる。
【0127】
また、水を溶媒として、懸濁重合、乳化重合することもできる。これらの溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの溶媒の使用によって、反応液が均一相となることが好ましいが、不均一な複数の相となっても構わない。
【0128】
反応温度はラジカル重合反応が進行する温度であればいずれでも構わず、所望する重合体の重合度、使用するラジカル重合開始剤および溶媒の種類や量によって一様ではないが、通常、−100℃〜250℃である。好ましくは−50℃〜180℃であり、更に好ましくは0℃〜160℃である。反応は場合によって減圧、常圧または加圧のいずれでも実施できる。また、反応に際して、樹脂微粒子を構成する樹脂が溶解しない溶媒および温度条件を選択することが好ましい。反応中に樹脂微粒子が溶解した場合、粒径が不均一になったり粒子内部に空隙ができたりするために所望のコアシェル型粒子を製造することは困難となることが多い。また、上記重合反応は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0129】
《工程(C)》
工程(C)は、工程(B)で得られた被覆層を備える樹脂微粒子を洗浄する工程である。
本工程により、樹脂微粒子の被覆層から、被覆層を構成しない遊離の重合体を除去することができる。
【0130】
遊離の重合体を室温で溶解し得る溶媒としては、重合体の種類によって一様ではないが、例えば、前記工程(B)で使用したものと同様の溶媒が挙げられる。被覆層を備える樹脂微粒子の洗浄方法としては、従来公知の様々な方法を用いることができるが、例えば得られた樹脂微粒子を、溶媒中に懸濁させて一定時間撹拌した後ろ過する方法や、ソックスレー抽出装置を用い、溶媒で処理する方法などが挙げられる。
以上の工程(A)〜(C)を順次実施することにより、本発明のコアシェル型粒子を製造することができる。
【0131】
また、ソックスレー抽出装置を用いて、コアシェル型粒子から樹脂微粒子を構成する樹脂を抽出することにより、中空構造のコアシェル型粒子を得ることができる。
【0132】
(用途)
本発明に係るコアシェル型粒子は、電気特性、耐薬品性、耐候性、靭性、摺動性、耐摩耗性、耐衝撃性、接着性などに優れた特性を有しており、滑り性付与剤、トナー、塗料用艶消し剤、光拡散用の添加剤、低密度ポリエチレンからなる包装材のブロッキング防止材をはじめ、フィルターやしゅう動部材等の成形体、分離膜、分散剤、粉体塗装、樹脂改質剤等の樹脂添加剤、コーティング剤、絶縁フィラー、結晶核剤、クロマトグラフィー用充填剤や免疫診断試薬用担体等の用途に広く利用することができる。さらに、本発明に係るコアシェル型粒子は、コア部をオレフィン系重合体から構成することができ、結晶性や融点が高く、高い化学的安定性をもつことから、他の材料に見られない耐水・耐油性、耐薬品性や生体安全性といった様々な特徴を有する。
【0133】
例えば、ポリエチレン微粒子やポリプロピレン粒子、およびそれらの表面改質を施したものは、化学や生物系物質の高効率な分離用カラム充填剤として、また高比表面積の吸着材や触媒担体などとして利用できる。また、薬物などの送達と除放を担わせた担体としての利用、分散性の悪い微粒子物質を均一に分散させるための分散剤や、化粧品素材として肌への良好な感触効果をもたらす安全性の高い微粒子材料に活用される。
【0134】
その他、リチウム電池やリチウムイオン2次電池のセパレータ用部材、光拡散・反射・反射防止などの機能を持った光学フィルター用部材、セラミックなどの焼結多孔体の高性能バインダー、通気性フィルムなどの賦孔材、免疫化学的活性物質固定化用担体、微小細孔・高比表面積焼結フィルターなど機能性新材料用途への応用が期待できる。
【実施例】
【0135】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
なお本実施例中の各物性の測定は以下のように行なった。
【0136】
(i)分子量および分子量分布の測定
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を使用して以下の条件で測定した。
測定装置:Waters社製 allianceGPC2000
解析装置:Waters社製Empowerプロフェッショナル
カラム:TSKgel GMH6HT×2+TSKgel GMH6HTL×2
カラム温度:140℃
移動相:o−ジクロロベンゼン(ODCB)
検出器:示差屈折率計
流速:1mL/min
試料濃度:30mg/20mL−ODCB
注入量:500μL
カラム較正:単分散ポリスチレン(東ソー社製)
【0137】
(ii)ポリマーの組成分析
H−NMRを使用して以下の条件で測定した。
測定装置:日本電子製JNMGSX−400型核磁気共鳴装置
試料管:5mmφ
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン−d4
測定温度:120℃
測定幅:8000Hz
パルス幅:7.7μs(45°)
パルス間隔:6.0s
測定回数:〜8000回
【0138】
(iii)ハロゲン含量
試料を酸素フラスコ燃焼法にて分解処理し、イオンクロマトグラフ(DIONEX DX−500)にて定量した。
(iv)嵩比重:JIS K−6721に従って測定した。
【実施例1】
【0139】
(1)臭素変性ポリエチレン(PE)微粒子−1の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、超高分子量PE微粒子(三井化学製ミペロンXM-220、平均粒子径(レーザー回折・散乱法)30μm、[η] 14 dl/g)300gおよびクロロベンゼン1.2Lを入れ、室温で窒素バブリング(10L/H)を実施した後、気相部を窒素雰囲気下に保ったまま80℃に昇温し、臭素3.0mlを加え6時間加熱攪拌した。反応液を濾過して得られたパウダーを2Lのアセトン中に加え、室温で攪拌、濾過後パウダーを80℃で減圧乾燥して299gの白色PEパウダー(コアシェル型粒子)を得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.24重量%であった。
【0140】
(2)ポリエチレン−ポリメタクリル酸メチル(PE−PMMA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、上記(1)で得たブロモ化PEパウダー30gとメチルメタクリレート(MMA)100ml、トルエン200mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)71.7mg(0.5mmol)、PMDETA0.42ml(2.0mmol)を加え、80℃に昇温して150分間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン1.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して30.55gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は1.8重量%であった。
【実施例2】
【0141】
PE−PMMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積200mlのガラス製反応器に、実施例1(1)で得たブロモ化PEパウダー15gとメチルメタクリレート(MMA)100mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)143.45mg(1.0mmol)、PMDETA 0.42ml(2.0mmol)を加え、80℃に昇温して80分間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン1.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して18.86gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は20.5重量%であった。
【実施例3】
【0142】
PE−PMMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、実施例1(1)で得たブロモ化PEパウダー200gとメチルメタクリレート(MMA)533ml、トルエン800mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)765mg(5.33mmol)、PMDETA2.23ml(10.67mmol)を加え、80℃に昇温して3時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン2.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して215.18gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は7.1重量%であった。
【実施例4】
【0143】
PE−メタクリル酸メチル/メタクリル酸グリシジル共重合体(MMA/GMA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例1(1)で得たブロモ化PEパウダー30gとメチルメタクリレート(MMA)50ml、グルシジルメタクリレート(GMA)25ml、トルエン125mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)114.8mg(0.8mmol)、PMDETA0.33ml(1.6mmol)を加え、90℃に昇温した後150分間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン1.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して30.68gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は2.2重量%であった。
【実施例5】
【0144】
PE−(MMA/GMA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、実施例1(1)で得たブロモ化PEパウダー200gとメチルメタクリレート(MMA)333ml、グルシジルメタクリレート(GMA)167ml、トルエン833mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)765mg(5.33mmol)、PMDETA2.23ml(10.67mmol)を加え、80℃に昇温して2.5時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン2.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して224.85gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は11.1重量%であった。
【実施例6】
【0145】
PE−ポリ(メタクリル酸t−ブチル)(PtBMA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、実施例1(1)で得たブロモ化PEパウダー200gとt−ブチルメタクリレート1000ml、トルエン333mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)765mg(5.33mmol)、PMDETA2.23ml(10.67mmol)を加え、90℃に昇温し、3時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン2.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して223.27gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は10.4重量%であった。
【実施例7】
【0146】
(1)臭素変性PE微粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、超高分子量PE微粒子(三井化学製ミペロンXM-220)120gおよび酢酸ブチル600mlを入れ、室温で窒素バブリング(10L/H)を実施した後、気相部を窒素雰囲気下に保ったまま80℃に昇温し、臭素1.2mlを加え6時間加熱攪拌した。反応液を濾過して得られたパウダーを2Lのアセトン中に加え、室温で攪拌、濾過後パウダーを80℃で減圧乾燥して119gの白色PEパウダーを得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.06重量%であった。
【0147】
(2)PE−PtBMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、上記(1)で得たブロモ化PEパウダー80gとt−ブチルメタクリレート500mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)538mg(3.75mmol)、PMDETA2.23ml(7.50mmol)を加え、90℃で2.5時間、110℃で1.5時間重合を行った。反応液スラリーを冷却後濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン2.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して99.41gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は19.5重量%であった。
【実施例8】
【0148】
PE−PtBMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積200mlのガラス製反応器に、実施例1(1)で得たブロモ化PEパウダー15gとt−ブチルメタクリレート100mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)143.45mg(1.0mmol)、PMDETA0.42ml(2.0mmol)を加え、80℃に昇温し、3時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン1.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して21.15gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は29.1重量%であった。
【実施例9】
【0149】
PE−ポリメタクリル酸(PMAA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、上記実施例7で得られたパウダー95gとトルエン500ml、トリフルオロ酢酸50ml、水50mlを入れ、70℃に昇温した。70℃を維持しながら5.5時間反応後、冷却し濾過した。濾紙上のパウダーをアセトン2.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して87.34gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量変化分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は12.4重量%であった。
【実施例10】
【0150】
PE−ポリメタクリル酸ナトリウムコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例9で得たポリマー30gと0.5Nの水酸化ナトリウム水溶液200mlを加え、25℃で4時間攪拌した。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーを水1Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、水洗した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して30.58gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量変化分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は14.1重量%であった。
【実施例11】
【0151】
PE−ポリ(N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート)(PDMAEMA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、実施例7(1)で得たブロモ化PEパウダー80gとN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート380ml、トルエン120mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)358.6mg(2.5mmol)、PMDETA1.05ml(5.0mmol)を加え、90℃に昇温し、3時間重合を行った。反応液スラリーを冷却後濾過し、濾紙上のパウダーをメタノール2.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して85.24gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は6.2重量%であった。
【実施例12】
【0152】
PE−ポリ(メタクリロイルコリンヨージド)コアシェル粒子の製造
充分に窒素置換した内容積300mlのガラス製反応器に、実施例11で得たパウダー30.1gとテトラヒドロフラン200mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、ヨウ化メチル2.0ml(32.4mmol)を加え、2.5時間反応を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをメタノール1Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して31.6gの黄白色パウダーを得た。収量変化分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は11.9重量%であった。また、イオンクロマトグラフィーで測定したパウダー中のヨウ素含量は4.4重量%であった。
【実施例13】
【0153】
PE−ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)(PHEMA)コアシェル型微粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例1(1)で得たブロモ化PEパウダー30gとヒドロキシエチルメタクリレート75ml、エタノール125mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)114.8mg(0.8mmol)、PMDETA0.33ml(1.6mmol)を加え、70℃に昇温した後3時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをメタノール1.0Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して30.97gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は3.1重量%であった。
【実施例14】
【0154】
PE−(MMA/HEMA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例1(1)で得たブロモ化PEパウダー30gとメチルメタクリレート50ml、ヒドロキシエチルメタクリレート25ml、トルエン125mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)114.8mg(0.8mmol)、PMDETA0.33ml(1.6mmol)を加え、80℃に昇温した後150分間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをメタノール1.0Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して30.80gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は2.6重量%であった。
【実施例15】
【0155】
(1) 超高分子量PE微粒子(平均粒子径9μ)の製造
塩化マグネシウム溶液の調製
無水塩化マグネシウム 95.2g(1.0モル)、デカン 442mlおよび2-エチルヘキシルアルコール 390.6g(3.0モル)を130℃で2時間反応を行い、均一溶液を得た。
Mg含有担体成分(B1−2)の調製
充分に窒素置換した内容積1400mlのフラスコに、上記塩化マグネシウム溶液100ml(マグネシウム原子換算で100mmol)、精製デカン 50ml、およびクロロベンゼン560mlを装入し、オルガノ社製クレアミックスCLM−1.5Sを用い、回転数20000rpmの攪拌下、液温を0℃に保持しながら、精製デカンで希釈したトリエチルアルミニウム 110mmolを、30分間にわたって滴下装入した。その後、液温を5時間かけて80℃に昇温し、1時間反応させた。次いで、80℃を保持しながら、再び精製デカン希釈のトリエチルアルミニウム 202mmolを、30分間にわたって滴下装入し、その後さらに1時間加熱反応した。反応終了後、濾過にて固体部を採取し、精製トルエンにて充分洗浄した後、精製トルエンを加えてMg含有担体成分(B1−2)の300mlトルエンスラリーとした。得られたMg含有担体成分(B1−2)の平均粒子径は0.95μmであった。
【0156】
固体触媒成分(B1-1-A2-172I)の調製
充分に窒素置換した内容積1000mlのフラスコに、Mg含有担体成分(B1-1)をマグネシウム原子換算で20mmol、および精製トルエン 600mlを装入し、攪拌下、室温に保持しながら、下記遷移金属化合物(A2-172)のトルエン溶液(0.0001mmol/ml)20mlを20分にわたって滴下装入した。1時間攪拌した後、濾過にて固体部を採取し、トルエンにて充分洗浄し、精製デカンを加えて固体触媒成分(B1-1-A2-172I)の200mlデカンスラリーとした。
【化15】

【0157】
超高分子量PE微粒子(平均粒子径9μ)の調製
充分に窒素置換した内容積1LのSUS製オートクレーブに精製ヘプタン 500mlを装入し、室温でエチレン100L/hrを15分間流通させ、液相及び気相を飽和させた。続いて63℃に昇温した後、エチレンを12L/hrで流通させたまま、トリエチルアルミニウムのデカン溶液(Al原子で1.0mmol/ml)1.25ml、固体触媒成分(B1−2−A2−172)を5.33ml(Zr原子換算で0.00008mmol)を加え、温度を維持したまま3分間攪拌し、エマルゲン E−108(花王(株)製)40mgを加えてすぐ、エチレン圧の昇圧を開始した。10分かけてエチレン圧を0.8MPa・Gに昇圧し、圧を維持するようエチレンを供給しながら65℃で2時間重合を行なった。その後、オートクレーブを冷却し、エチレンを脱圧した。得られたパウダースラリーを濾過後、ヘキサンで洗浄し、80℃で10時間減圧乾燥することにより、パウダー51.87gを得た。生成パウダーの平均粒子径は9.5μmであった
【0158】
(2)臭素変性PE微粒子の合成
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、(1)で得られた超高分子量PE微粒子300gおよびクロロベンゼン1.2Lを入れ、室温で窒素バブリング(10L/H)を実施した後、気相部を窒素雰囲気下に保ったまま80℃に昇温し、臭素3.0mlを加え6時間加熱攪拌した。反応液を濾過して得られたパウダーを2Lのアセトン中に加え、室温で攪拌、濾過後パウダーを80℃で減圧乾燥して298gの白色PEパウダー(コアシェル型粒子)を得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.04重量%であった。
【0159】
(3)PE−PMMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、上記(2)で得たブロモ化PEパウダー30gとメチルメタクリレート80ml、トルエン120mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)114.8mg(0.8mmol)、PMDETA0.33ml(1.6mmol)を加え、80℃に昇温した後3時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン1.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して30.78gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は2.5重量%であった。
【実施例16】
【0160】
PE−PMMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積200mlのガラス製反応器に、実施例15(2)で得たブロモ化PEパウダー14.9gとメチルメタクリレート100mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)114.8mg(0.8mmol)、PMDETA0.33ml(1.6mmol)を加え、80℃に昇温した後80分間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン1.0Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して17.46gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は14.7重量%であった。
図1(a)(b)に、ブロモ化ポリエチレン粒子表面の走査型電子顕微鏡(SEM)による観察結果、図2(a)(b)にコアシェル型粒子表面の走査型電子顕微鏡による観察結果を示す。図1と図2を比較すると、明らかに粒子表面上に新たなポリマー層が生成している事が観察された。
【実施例17】
【0161】
PE−(MMA/GMA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、実施例15(2)で得たブロモ化PEパウダー200gとメチルメタクリレート(MMA)333ml、グルシジルメタクリレート(GMA)167ml、トルエン833mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)765mg(5.33mmol)、PMDETA 2.2ml(10.67mmol)を加え、80℃に昇温して2.5時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン2.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して224.86gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は11.1重量%であった。
【実施例18】
【0162】
PE−PtBMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積200mlのガラス製反応器に、実施例15(2)で得たブロモ化PEパウダー15.0gとt−ブチルメタクリレート100mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)143.5mg(1.0mmol)、PMDETA0.42ml(2.0mmol)を加え、80℃に昇温した後3時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン1.0Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して17.54gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は14.5重量%であった。
【実施例19】
【0163】
PE−PMAAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積300mlのガラス製反応器に、上記実施例18で得られたパウダー12.0gとトルエン150ml、トリフルオロ酢酸15ml、水15mlを入れ、70℃に昇温した。70℃を維持しながら4時間反応後、冷却し濾過した。濾紙上のパウダーをアセトン1.0Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して11.31gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量変化分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は12.4重量%であった。
【実施例20】
【0164】
PE−ポリメタクリル酸ナトリウムコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積200mlのガラス製反応器に、上記実施例19で得たパウダー3.12gと0.2Nの水酸化ナトリウム水溶液100mlを加え、25℃で4時間攪拌した。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーを水500mlに投入して30分間攪拌後、ろ過、水洗した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して3.17 gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量変化分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は13.8重量%であった。
【実施例21】
【0165】
PE−PDMAEMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積200mlのガラス製反応器に、実施例15(2)で得たブロモ化PEパウダー10.0gとN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート100mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)143.5mg(1.0mmol)、PMDETA0.42ml(2.0mmol)を加え、80℃に昇温し、3時間重合を行った。反応液スラリーを冷却後濾過し、濾紙上のパウダーをメタノール1.0Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して10.71gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は6.6重量%であった。
【実施例22】
【0166】
PE−ポリ(メタクリロイルコリンクロリド)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積200mlのガラス製反応器に、上記実施例21で得たパウダー5.0gと1N HCl水溶液100mlを加え、25℃で2時間攪拌した。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーを水500mlに投入して30分間攪拌後、ろ過、水洗した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して5.05gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は7.5重量%であった。
【実施例23】
【0167】
(1)ポリプロピレン(PP)粒子の製造
(特開2005−126703号の記載の方法に準拠して行った。)
(固体状チタン触媒成分(A)の調製)
内容積2Lの高速撹拌装置(特殊機化工業製)を充分窒素置換した後精製灯油700ml、市販塩化マグネシウム10g、エタノール24.2gおよび商品名エマゾール320(花王アトラス(株)製ソルビタンジステアレート)3gをいれ、系を撹拌下に昇温し、120℃にて800rpmで30分撹拌した。高速撹拌下、内径5mmのテフロン(登録商標)製チューブを用いて、予め-10℃に冷却された精製灯油1Lを張り込んである2Lのガラスフラスコ(攪拌機付)に移液した。精製固体を濾過により精製n-ヘキサンで充分洗浄することにより、塩化マグネシウム1モルに対してエタノールが2.8モル配位した固体状付加物を得た。
【0168】
デカン30mlで懸濁状にした上記固体状付加物をマグネシウム原子に換算して46.2mmolを−20℃に保持した四塩化チタン200ml中に攪拌下、全量導入した。この混合液を5時間かけて80℃に昇温し、80℃に達したところで、ジイソブチルフタレート1.9gを添加し、40分間で120℃まで昇温した。温度を120℃で90分間攪拌しながら保持した。
【0169】
90分間の反応終了後、熱濾過にて固体部を採取し、この固体部を200mlの四塩化チタンにて再懸濁させた後、昇温して130℃に達したところで、45分間撹拌しながら保持した。45分間の反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、100℃のデカンおよびヘキサンで洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで充分洗浄した。
以上の操作によって調製した固体状チタン触媒成分はデカンスラリ-として保存した。
このようにして得られた固体状チタン触媒成分の組成はチタン2.4質量%,マグネシウム19質量%,ジイソブチルフタレート6.8質量%であった。平均粒子径は58μm、触媒成分粒子の圧壊強度は5MPaであった。
【0170】
(予備重合)
100mlの反応器に、窒素雰囲気下、精製ヘキサン50ml、トリエチルアルミニウム1.5mmol、固体状チタン触媒成分をチタン原子に換算して0.5mmol添加した後、系内を振とうさせつつ20℃でプロピレンを1.6NL/hの速度で1時間供給した。プロピレンの供給が終了したところで反応器内を窒素置換し、上澄み液の除去および精製ヘキサンの添加からなる洗浄操作を4回行った後、得られた予備重合触媒成分を精製ヘキサンに再懸濁して触媒瓶に全量移液した。
【0171】
(本重合)
内容積2Lの重合器に、室温で500gのプロピレンおよび水素1NLを加えた後、トリエチルアルミニウム1.0mmol、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン0.05mmol、固体状チタン触媒成分をチタン原子換算で0.002mmolを加え、速やかに重合器内を70℃まで昇温した。70℃で30分重合した後、少量のメタノールにて反応停止し、プロピレンをパージした。更に得られた重合体粒子を80℃で一晩、減圧乾燥した。
【0172】
得られたパウダーの収量は67.8gで、見かけ嵩比重は0.49g/ml、MFRは6.9dg/min、沸騰ヘプタン抽出残率は、97.8%であり、活性は34kg-PP/mmol Tiであった。パウダー平均粒子径は1.8mmであった。
【0173】
(2)臭素変性PP粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得られたPP粒子60gおよび酢酸ブチル200mlを入れ、室温で窒素バブリング(10L/H)を実施した後、気相部を窒素雰囲気下に保ったまま50℃に昇温し、臭素0.25mlを加え4時間加熱攪拌した。反応液を濾過して得られたパウダーを2Lのアセトン中に加え、室温で攪拌、濾過後、1Lのメタノール中で再攪拌、濾過し、得られたパウダーを80℃で減圧乾燥して60.1gの白色PP粒子を得た。得られたPP粒子に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.38重量%であった。
【0174】
(3)PP−PMMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、上記(2)で得たブロモ化PP粒子30gとメチルメタクリレート80ml、トルエン120mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)114.8mg(0.8mmol)、PMDETA0.33ml(1.6mmol)を加え、80℃に昇温した後3時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン1.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して31.74gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は5.5重量%であった。
【実施例24】
【0175】
PP−PtBMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例23(2)で得たブロモ化PP粒子20gとtert-ブチルメタクリレート150ml、トルエン100mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)215.2mg(1.5mmol)、PMDETA0.63ml(3.0mmol)を加え、100℃に昇温した後3時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン1.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して30.30gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は34.0重量%であった。
【実施例25】
【0176】
PP−PtBMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例23(2)で得たブロモ化PP粒子20gとtert-ブチルメタクリレート250ml、トルエン100mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)286.9mg(2.0mmol)、PMDETA0.84ml(4.0mmol)を加え、100℃に昇温した後3.5時間重合を行った後、脱気したトルエン100mlを加え更に100℃で1時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをアセトン2.0Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して53.26gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は62.4重量%であった。
【実施例26】
【0177】
PP−ポリ(メタクロイルコリンクロリド)(PMCC)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例23(2)で得たブロモ化PP粒子20gとメタクリルコリンクロリド80%水溶液150ml、エタノール100mlを入れ、25℃で攪拌した。このスラリーに、臭化銅(I)215.2mg(1.5mmol)、PMDETA0.63ml(3.0mmol)を加え、70℃に昇温した後3時間重合を行った。反応液スラリーを濾過し、濾紙上のパウダーをメタノール1.5Lに投入して30分間攪拌後、ろ過、メタノール洗浄した。得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで洗浄後減圧乾燥して20.52gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。収量増加分から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は2.5重量%であった。
【実施例27】
【0178】
PP−PMAAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例25で得られたパウダー20.0gとトルエン200ml、トリフルオロ酢酸15ml、水15mlを入れ、70℃に昇温した。70℃を維持しながら4時間反応後、冷却し濾過した。濾紙上のパウダーをメタノール1.0Lに投入して30分間攪拌後、ろ過し、10gの水酸化カリウムを100mlの水と500mlのメタノールの溶解させた液中に投入し2時間攪拌した。パウダーを濾過後、水で3回洗浄し、得られたパウダーを減圧下、80℃で乾燥することで18.3gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。イオンクロマトによるカリウム含量は7.6重量%、収量変化から計算したコアシェル型粒子の極性ポリマー含量(グラフト重合体含量)は30重量%であった。
【実施例28】
【0179】
中空状PPハイブリッド粒子の製造
実施例27で得られたパウダー4.21gを、キシレン150mlを溶媒として4時間ソックスレー抽出を行った。その結果、2.55gの抽出残パウダーが得られた。抽出溶液をメタノール500mlに投入し、濾過、メタノール洗浄後減圧乾燥し、1.65gのポリマーを回収した。回収ポリマーは、NMR分析の結果、ポリプロピレンのみ含まれている事がわかった。抽出ポリマー量から計算した抽出残パウダー中の極性ポリマー含量は55%であった。図3に示すように、粒子断面のSEM測定の結果、粒子中心に空隙が存在する事がわかった。
【実施例29】
【0180】
(1)臭素変性ポリプロピレン(PP)粒子の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン(PP)粒子(プライムポリマー社製F102WP、嵩比重=0.48g/ml)600gおよびクロロベンゼン1.5Lを入れ、攪拌下70℃で2時間窒素バブリングした。その後、N−ブロモスクシンイミド20gを加えて70℃で2時間スラリー状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して602gの白色変性ポリプロピレン粒子を得た。得られた粒子中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.81重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=94,300、Mn=41,600、Mw/Mn=2.27であり、粒子の嵩比重は0.48g/mlであった。
【0181】
(2)ポリプロピレン−ポリメタクリル酸メチル(PP−PMMA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子150g、メタクリル酸メチル(MMA)500mlを入れ、攪拌下80℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)157mg、N,N,N',N'',N''−ペンタメチルジエチレントリアミン(PMDETA)0.46mlを加え、80℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して167.2gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/PMMAの組成比は、90/10(重量%)であった。
【実施例30】
【0182】
PP−PMMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例29(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子60g、MMA200mlを入れ、攪拌下90℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化鉄(II)94mg、トリ(n−ブチル)ホスフィン0.22mlを加え、90℃で50分間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して82.0gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/PMMAの組成比は、74/26(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察により、得られた粒子はPPのコアとPMMAのシェルからなるコアシェル型粒子であることを確認した。さらに、図4に示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、PP粒子表面が数μmの厚みのPMMA層で覆われていることが判明した。
【実施例31】
【0183】
PP−PMMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、実施例29(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子150g、MMA500mlを入れ、攪拌下80℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)392mg、PMDETA1.14mlを加え、80℃で3時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して215.3gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/PMMAの組成比は、70/30(重量%)であった。
【実施例32】
【0184】
(1)臭素変性ポリプロピレン粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン粒子(プライムポリマー社製J139P、嵩比重=0.49g/ml)300gおよび酢酸ブチル700mLを入れ、攪拌下100℃で2時間窒素バブリングした。その後、N−ブロモスクシンイミド10gを加えて100℃で2時間スラリー状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して301.5gの淡黄色変性ポリプロピレン粒子を得た。得られた粒子中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.55重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=68,800、Mn=19,800、Mw/Mn=3.48であり、嵩比重は0.47g/mlであった。
【0185】
(2)PP−PMMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子120g、MMA308ml、キシレン896mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)1.05g、PMDETA3.01mlを加え、80℃で6時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して259.5gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/PMMAの組成比は、46/54(重量%)であった。
【実施例33】
【0186】
PP−ポリ(アクリル酸n−ブチル)(PnBA)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例29(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子60g、アクリル酸n−ブチル200mlを入れ、攪拌下90℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化鉄(II)94mg、トリ(n−ブチル)ホスフィン0.22mlを加え、90℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して68.5gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/PnBAの組成比は、88/12(重量%)であった。また、図5に示すように、光学顕微鏡観察により、得られた粒子はPPのコアとPnBAのシェルとからなるコアシェル型粒子であることを確認した。
【実施例34】
【0187】
(1)臭素変性ポリプロピレン粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン粒子(プライムポリマー社製J139P、嵩比重=0.49g/ml)300gおよびクロロベンゼン700mLを入れ、攪拌下100℃で2時間窒素バブリングした。その後、N−ブロモスクシンイミド10gを加えて100℃で2時間スラリー状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して297.9gの淡黄色変性ポリプロピレン粒子を得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.63重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=65,900、Mn=20,300、Mw/Mn=3.24であり、嵩比重は0.47g/mlであった。
(2)PP−ポリ(メタクリル酸t−ブチル)(PtBMA)コアシェル型粒子の製造
【0188】
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子100g、メタクリル酸t−ブチル400ml、エチルベンゼン400mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)1.43g、PMDETA4.18mlを加え、80℃で6時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して242.5gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/PtBMAの組成比は、40/60(重量%)であった。
【実施例35】
【0189】
(1)臭素変性ポリプロピレン粒子の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン粒子(プライムポリマー社製F102WP、嵩比重=0.48g/ml)150gおよびクロロベンゼン1.5Lを入れ、攪拌下100℃で2時間窒素バブリングした。その後、N−ブロモスクシンイミド5gを加えて100℃で2時間スラリー状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して149gの白色変性ポリプロピレン粒子を得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.65重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=124,000、Mn=51,100、Mw/Mn=2.43であり、嵩比重は0.45g/mlであった。
【0190】
(2)PP−スチレン/アクリロニトリル共重合体(AS)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子15g、スチレン120ml、アクリロニトリル30ml、トルエン26mlを入れ、攪拌下80℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)189.4mg、PMDETA0.55mlを加え、80℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して20.8gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、72/28(重量%)であった。
【実施例36】
【0191】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
臭化銅とPMDETAの代わりにシクロペンタジエニル鉄(I)ジカルボニル二量体4.55mgを使用した以外は実施例35と同様にして、23gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、65/35(重量%)であった。
【実施例37】
【0192】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例34(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン194ml、アクリロニトリル48mlを入れ、攪拌下85℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)258mg、PMDETA0.75mlを加え、85℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して31gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、81/19(重量%)であった。
【実施例38】
【0193】
(1)臭素変性ポリプロピレン粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン粒子(プライムポリマー社製J139P、嵩比重=0.49g/ml)300gおよびデカリン700mLを入れ、攪拌下100℃で2時間窒素バブリングした。その後、N−ブロモスクシンイミド10gを加えて100℃で2時間スラリー状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して303gの白色変性ポリプロピレン粒子を得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.21重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=90,500、Mn=23,900、Mw/Mn=3.78であり、嵩比重は0.48g/mlであった。
【0194】
(2)PP−スチレン/アクリロニトリル共重合体(AS)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン194ml、アクリロニトリル48mlを入れ、攪拌下85℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)258mg、PMDETA0.75mlを加え、85℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して28gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、90/10(重量%)であった。
【実施例39】
【0195】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン194ml、アクリロニトリル48mlを入れ、攪拌下85℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)258mg、PMDETA0.75mlを加え、85℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して34gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、73/27(重量%)であった。
【実施例40】
【0196】
(1)臭素変性ポリプロピレン粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン粒子(プライムポリマー社製J139P、嵩比重=0.49g/L)300gおよびジフェニルエーテル700mLを入れ、攪拌下100℃で2時間窒素バブリングした。その後、N−ブロモスクシンイミド10gを加えて100℃で2時間スラリー状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して303gの白色変性ポリプロピレン粒子を得た。得られた粒子中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.52重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=74,800、Mn=20,200、Mw/Mn=3.70であり、嵩比重は0.46g/mlであった。
【0197】
(2)PP−スチレン/アクリロニトリル共重合体(AS)コアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン194ml、アクリロニトリル48mlを入れ、攪拌下85℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)258mg、PMDETA0.75mlを加え、85℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して30gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、83/17(重量%)であった。
【実施例41】
【0198】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン194ml、アクリロニトリル48mlを入れ、攪拌下85℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(II)201mg、PMDETA0.19ml、2−エチルヘキサノエート錫(II)のキシレン溶液(0.1mol/L)9.0mlを加え、85℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して29gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、85/15(重量%)であった。
【実施例42】
【0199】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン194ml、アクリロニトリル48mlを入れ、攪拌下85℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(II)40mg、PMDETA0.038ml、2−エチルヘキサノエート錫(II)のキシレン溶液(0.1mol/L)1.8mlを加え、85℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して25.5gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、98/2(重量%)であった。
【実施例43】
【0200】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子90g、スチレン960ml、アクリロニトリル240mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)1.27g、PMDETA3.70mlを加え、95℃で6時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して195.5gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、46/54(重量%)であった。
【実施例44】
【0201】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積2Lのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン97ml、アクリロニトリル24ml、アニソール120mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)258mg、PMDETA0.75mlを加え、100℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して31.9gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、78/22(重量%)であった。
【実施例45】
【0202】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
アニソールの代わりに酢酸ブチルを使用した以外は実施例44と同様にして、29.2gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、85/15(重量%)であった。
【実施例46】
【0203】
(1)臭素変性ポリプロピレン粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン粒子(プライムポリマー社製J139P、嵩比重=0.49g/ml)75gおよびクロロベンゼン750mLを入れ、攪拌下108℃で2時間窒素バブリングした。その後、N−ブロモスクシンイミド2.5gを加えて108℃で2時間スラリー状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して74gの淡黄色変性ポリプロピレン粒子を得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.41重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=98,300、Mn=25,600、Mw/Mn=3.85であり、嵩比重は0.39g/mlであった。
【0204】
(2)PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子15g、スチレン160ml、アクリロニトリル40mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)189mg、PMDETA0.55mlを加え、90℃で6時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して30gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、51/49(重量%)であった。
【実施例47】
【0205】
(1)臭素変性ポリプロピレン粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン粒子(プライムポリマー社製J139P、嵩比重=0.49g/ml)75gおよびクロロベンゼン750mLを入れ、攪拌下106℃で2時間窒素バブリングした。その後、N−ブロモスクシンイミド2.5gを加えて106℃で2時間スラリー状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して74gの淡黄色変性ポリプロピレン粒子を得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.47重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=91,000、Mn=22,800、Mw/Mn=4.00であり、嵩比重は0.44g/mlであった。
【0206】
(2)PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子15g、スチレン160ml、アクリロニトリル40mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)189mg、PMDETA0.55mlを加え、90℃で6時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して31gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、49/51(重量%)であった。
[参考例1]
【0207】
(1)臭素変性ポリプロピレン粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン粒子(プライムポリマー社製J139P、嵩比重=0.49g/ml)75gおよびクロロベンゼン750mLを入れ、攪拌下120℃まで加熱し、均一溶液にした。110℃まで温度を下げて2時間窒素バブリングした後、N−ブロモスクシンイミド2.5gを加えて2時間溶液状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して75gの淡黄色変性ポリプロピレン粉末を得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.38重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=101,000、Mn=22,400、Mw/Mn=4.51であり、嵩比重は0.10/mlであった。
【0208】
(2)PP−PMMAの合成
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、参考例1(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粉末15g、MMA53ml、アセトン190mlを入れ、攪拌下55℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)229mg、PMDETA0.67mlを加え、55℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して24gのパウダーを得た。H−NMR分析より、PP/PMMAの組成比は、61/39(重量%)であった。また、図6(a)に示すように光学顕微鏡観察から、得られた粉末は不定形であり、コアシェル型粒子の生成は認められなかった。さらに、図6(b)に示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、PP部分とPMMA部分は不規則に分散していた。
[参考例2]
【0209】
PP−ASの合成
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、参考例1(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粉末15g、スチレン160ml、アクリロニトリル40mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、シクロペンタジエニル鉄(I)ジカルボニル二量体3.5mgを加え、80℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して26gのパウダーを得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、57/43(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察から、得られた粉末は不定形であり、コアシェル型粒子の生成は認められなかった。
[参考例3]
【0210】
PP−ASの合成
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、参考例1(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粉末15g、スチレン160ml、アクリロニトリル40mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)189mg、PMDETA0.55mlを加え、90℃で6時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して33gのパウダーを得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、46/54(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察から、得られた粉末は不定形であり、コアシェル型粒子の生成は認められなかった。
[参考例4]
【0211】
(1)臭素変性ポリプロピレン粒子の製造
充分に窒素置換した内容積1Lのガラス製反応器に、ポリプロピレン粒子(プライムポリマー社製J139P、嵩比重=0.49g/ml)75gおよびクロロベンゼン750mLを入れ、攪拌下110℃で2時間窒素バブリングした後、N−ブロモスクシンイミド2.5gを加えて2時間スラリー状態で反応を行った。反応液をグラスフィルターでろ過した後、減圧乾燥して75gの淡黄色変性ポリプロピレン粉末を得た。得られたパウダー中に含まれる臭素原子の含有量は、イオンクロマトグラフィー分析から0.34重量%であった。また、該ポリマーの分子量(PP換算)をGPCにより測定したところ、Mw=98,300、Mn=25,600、Mw/Mn=3.85であり、嵩比重は0.23/mlであった。
【0212】
(2)PP−ASの合成
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、上記(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粉末15g、スチレン160ml、アクリロニトリル40mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)189mg、PMDETA0.55mlを加え、90℃で6時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して27gのパウダーを得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、55/45(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察から、得られた粉末は不定形であり、コアシェル型粒子の生成は認められなかった。
[参考例5]
【0213】
PP−ASの合成
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン194ml、アクリロニトリル48mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)258mg、PMDETA0.75mlを加え、107℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して56.3gのパウダーを得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、44/56(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察から、得られた粉末は不定形であり、コアシェル型粒子の生成は認められなかった。
[参考例6]
【0214】
PP−ASの合成
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例40(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン194ml、アクリロニトリル48mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)258mg、PMDETA0.75mlを加え、107℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して68.4gのパウダーを得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、37/63(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察から、得られた粉末は不定形であり、コアシェル型粒子の生成は認められなかった。
[参考例7]
【0215】
PP−ASの合成
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン144ml、アクリロニトリル36ml、キシレン70mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)323mg、PMDETA0.94mlを加え、110℃で2.5時間溶液状態で重合を行った。反応液を冷却後、グラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して49gのパウダーを得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、51/49(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察から、得られた粉末は不定形であり、コアシェル型粒子の生成は認められなかった。
[参考例8]
【0216】
PP−ASの合成
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例40(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、スチレン144ml、アクリロニトリル36ml、キシレン70mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)323mg、PMDETA0.94mlを加え、110℃で2.5時間溶液状態で重合を行った。反応液を冷却後、グラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して49gのパウダーを得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、51/49(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察から、得られた粉末は不定形であり、コアシェル型粒子の生成は認められなかった。
[参考例9]
【0217】
PP−PMMAの合成
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例29(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、MMA49ml、キシレン326mlを入れ、攪拌下110℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)326mg、PMDETA0.95mlを加え、110℃で10分間溶液状態で重合を行った。反応液を冷却後、グラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して36.3gのパウダーを得た。H−NMR分析より、PP/PMMAの組成比は、69/31(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察から、得られた粉末は不定形であり、コアシェル型粒子の生成は認められなかった。
【実施例48】
【0218】
PP−ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)PNIPAAmコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積100mlのシュレンク管に、実施例35(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子5g、蒸留水50ml、N−イソプロピルアクリルアミド13gを入れ、攪拌下80℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)43mg、PMDETA0.13mlを加え、80℃で6時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥してパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/PNIPAAmの組成比は、46/54(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察により、得られた粒子はPPのコアとPNIPAAmのシェルからなるコアシェル型粒子であることを確認した。さらに、図7に示すように、透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、PP粒子表面が数μmの厚みのPNIPAAm層で覆われていることが判明した。さらに、得られた粒子を水に入れるとよくなじんで沈むことから、表面に親水性が付与されたことが確認された。
【実施例49】
【0219】
PP−PNIPAAmコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例35(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、蒸留水250ml、N−イソプロピルアクリルアミド66g、N,N'−メチレンビス(アクリルアミド)0.66gを入れ、攪拌下80℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)215mg、PMDETA0.63mlを加え、80℃で4時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して48.5gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。光学顕微鏡観察により、得られた粒子はPPのコアとPNIPAAmのシェルからなるコアシェル型粒子であることを確認した。さらに透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、PP粒子表面が数μmの厚みのPNIPAAm層で覆われていることが判明した。さらに、得られた粒子を水に入れるとよくなじんで沈むことから、表面に親水性が付与されたことが確認された。
【実施例50】
【0220】
(1)PP−PtBMAコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、実施例35(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子25g、蒸留水250ml、メタクリル酸t−ブチル95mlを入れ、攪拌下80℃で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)287mg、PMDETA0.84mlを加え、80℃で5時間45分重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して41.8gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/PtBMAの組成比は、60/40(重量%)であった。また、光学顕微鏡観察により、得られた粒子はPPのコアとPtBMAのシェルからなるコアシェル型粒子であることを確認した。
【0221】
(2)PP−PtBMAコアシェル型粒子の加水分解
充分に窒素置換した内容積500mlのガラス製反応器に、上記(1)で得たPP−PtBMAコアシェル型粒子20g、キシレン250mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、トリフルオロ酢酸/蒸留水(20.97ml/20ml)の混合液をピペットで滴下し、90℃で3時間加熱攪拌した。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンで洗浄した後減圧乾燥してパウダー(コアシェル型粒子)を得た。IR分析から、PtBMAに由来するカルボニル基の吸収が減少し、新たにポリメタクリル酸に由来するカルボニル基の吸収が観測された。従って、PtBMAの加水分解が進行したことを確認した。光学顕微鏡観察により、得られた粒子はPPのコアとPtBMAおよびポリメタクリル酸のシェルからなるコアシェル型粒子であった。加水分解前の粒子を水に入れても全くなじまずに水の上に浮かぶのに対し、加水分解後の粒子を水中に入れるとよくなじんで沈むことから、表面に親水性が付与されたことが分かった。
【実施例51】
【0222】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子15g、スチレン240ml、アクリロニトリル60mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)318mg、PMDETA0.92mlを加え、95℃で1時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して18.5gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、81/19(重量%)であった。透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、PP粒子表面がAS層で覆われていることが判明した。
【実施例52】
【0223】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子15g、スチレン240ml、アクリロニトリル60mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)318mg、PMDETA0.92mlを加え、95℃で3時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して25.7gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、58/42(重量%)であった。透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、PP粒子表面がAS層で覆われていることが判明した。
【実施例53】
【0224】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子15g、スチレン240ml、アクリロニトリル60mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)318mg、PMDETA0.92mlを加え、95℃で6時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して33.5gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、45/55(重量%)であった。透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、PP粒子表面がAS層で覆われていることが判明した。
【実施例54】
【0225】
PP−ASコアシェル型粒子の製造
充分に窒素置換した内容積500mLのガラス製反応器に、実施例32(1)で得た臭素変性ポリプロピレン粒子15g、スチレン240ml、アクリロニトリル60mlを入れ、攪拌下室温で2時間窒素バブリングを行った。このスラリーに、臭化銅(I)318mg、PMDETA0.92mlを加え、95℃で12時間重合を行った。反応液をグラスフィルターでろ過し、フィルター上のパウダーをアセトンおよびメタノールで洗浄した後減圧乾燥して51gのパウダー(コアシェル型粒子)を得た。H−NMR分析より、PP/ASの組成比は、30/70(重量%)であった。透過型電子顕微鏡(TEM)観察から、PP粒子表面がAS層で覆われていることが判明した。
【0226】
<PP−ASコアシェル型粒子の粒度分布測定>
MT3300EX II型粒度分析計(Microtrac社製)を用いて、メタノール中またはアセトン中でのハロゲン化PP粒子およびPP−ASコアシェル型粒子の粒度分布測定を行った。表1に各粒子の装置投入10分後に測定した平均粒子径を示した。AS含量の増加に伴い平均粒子径が段階的に大きくなっており、PP粒子をコアとしてASシェル層が厚くなることが観測された。
【0227】
また、実施例54に記載のコアシェル型粒子について、装置投入後の平均粒子径の経時変化を表2に示した。シェル層のASセグメントに対して貧溶媒であるメタノール中では投入後30分の間に平均粒子径の変化はほとんどないが、良溶媒であるアセトン中では投入後30分の間に平均粒子径は徐々に増加し、ASシェル層がアセトンにより膨潤していく様子が観測された。
【0228】
【表1】

【0229】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂微粒子が分散された溶媒中において、該樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン原子を結合させるとともに、ラジカル重合性単量体を表面グラフト重合させることにより形成された、グラフト重合体からなる被覆層を備えることを特徴とするコアシェル型粒子。
【請求項2】
表面グラフト重合は、原子移動ラジカル重合であることを特徴とする請求項1に記載のコアシェル型粒子。
【請求項3】
前記樹脂微粒子表面の樹脂と、前記グラフト重合体とが、炭素−炭素結合により化学的に結合していることを特徴とする請求項1または2に記載のコアシェル型粒子。
【請求項4】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、オレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【請求項5】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、下記(A1)〜(A5)よりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のコアシェル型粒子;
(A1)下記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体、
CH=CH−C2x+1 ・・・(1)
(式(1)において、xは0または正の整数である。)
(A2)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体
(A3)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体
(A4)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体
(A5)前記(A1)〜(A4)で表される重合体を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性したポリオレフィン
【化1】

(上記一般式(2)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表し、R15〜R18は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。)。
【請求項6】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、極性基を有さない炭化水素樹脂であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【請求項7】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、70℃以上の融点を有する結晶性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【請求項8】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂の数平均分子量が、5,000〜10,000,000であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【請求項9】
前記樹脂微粒子の平均粒子径が、0.1〜5000μmであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【請求項10】
前記樹脂微粒子の嵩比重が、0.20〜0.60g/cmであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【請求項11】
前記樹脂微粒子を10〜99重量%、前記グラフト重合体を1〜90重量%の量で含むことを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【請求項12】
前記グラフト重合体が、前記ラジカル重合性単量体に由来する構成単位を主として含む構成単位の連鎖構造を有し、数平均分子量が500〜1,000,000の範囲であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【請求項13】
前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸とその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、スチレンとその誘導体、(メタ)アクリルアミドとその誘導体、マレイン酸とその誘導体、マレイミドとその誘導体、ビニルエステル類、共役ジエン類およびハロゲン含有オレフィン類よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のコアシェル型粒子。
【請求項14】
前記樹脂微粒子が、下記(1)〜(3)をいずれも満たす超高分子量エチレン系重合体粒子であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載のコアシェル型粒子;
(1)デカリン中で測定された極限粘度[η]の値が10dl/g以上である。
(2)平均粒子径が0.1〜100μmの範囲内である。
(3)エチレンに由来する構成単位が95〜100mol%、炭素数3〜6の直鎖または分岐α―オレフィンから選ばれる1種以上のモノマー由来の構成単位が0〜5mol%である。
【請求項15】
樹脂微粒子が分散された溶媒中において該樹脂微粒子にハロゲン化剤を接触させ、該樹脂微粒子表面の樹脂にハロゲン原子を結合させる工程と、
前記ハロゲン原子が結合した前記樹脂微粒子表面にラジカル重合性単量体を接触させ、前記ハロゲン原子を重合開始基として前記ラジカル重合性単量体を表面グラフト重合させることにより、前記樹脂微粒子表面にグラフト重合体からなる被覆層を形成する工程と、
を含むコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項16】
前記被覆層を形成する前記工程において、
表面グラフト重合は、原子移動ラジカル重合であることを特徴とする請求項15に記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項17】
前記被覆層を形成する前記工程において、
前記樹脂微粒子表面の樹脂と、前記グラフト重合体とが、炭素−炭素結合により化学的に結合していることを特徴とする請求項15または16に記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項18】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、オレフィン系樹脂であることを特徴とする請求項15乃至17のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項19】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、下記(A1)〜(A5)よりなる群から1種以上選択されることを特徴とする請求項15乃至18のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法;
(A1)下記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物の単独重合体または共重合体、
CH=CH−C2x+1 ・・・(1)
(式(1)において、xは0または正の整数である。)
(A2)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と芳香環を有するモノオレフィン化合物との共重合体
(A3)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と下記一般式(2)で表される環状モノオレフィン化合物との共重合体
(A4)上記一般式(1)で表されるα−オレフィン化合物と不飽和カルボン酸またはその誘導体とのランダム共重合体
(A5)前記(A1)〜(A4)で表される重合体を、不飽和カルボン酸またはその誘導体により変性したポリオレフィン
【化2】

(上記一般式(2)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、qは0または1であり、R〜R18ならびにRおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子および炭化水素基よりなる群から選ばれる原子または基を表し、R15〜R18は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。)。
【請求項20】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、極性基を有さない炭化水素樹脂であることを特徴とする請求項15乃至19のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項21】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂が、70℃以上の融点を有する結晶性樹脂であることを特徴とする請求項15乃至20のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項22】
前記樹脂微粒子を構成する樹脂の数平均分子量が、5,000〜10,000,000であることを特徴とする請求項15乃至21のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項23】
前記樹脂微粒子の平均粒子径が、0.1〜5000μmであることを特徴とする請求項15乃至22のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項24】
前記樹脂微粒子の嵩比重が、0.20〜0.60g/cmであることを特徴とする請求項15乃至23のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項25】
前記グラフト重合体が、前記ラジカル重合性単量体に由来する構成単位を主として含む構成単位の連鎖構造を有し、数平均分子量が500〜1,000,000の範囲であることを特徴とする請求項15乃至24のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項26】
前記ラジカル重合性単量体が、(メタ)アクリル酸とその誘導体、(メタ)アクリロニトリル、スチレンとその誘導体、(メタ)アクリルアミドとその誘導体、マレイン酸とその誘導体、マレイミドとその誘導体、ビニルエステル類、共役ジエン類およびハロゲン含有オレフィン類よりなる群から選択されることを特徴とする請求項15乃至25のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項27】
前記樹脂微粒子が、下記(1)〜(3)をいずれも満たす超高分子量エチレン系重合体粒子であることを特徴とする請求項15乃至26のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法;
(1)デカリン中で測定された極限粘度[η]の値が10dl/g以上である。
(2)平均粒子径が0.1〜100μmの範囲内である。
(3)エチレンに由来する構成単位が95〜100mol%、炭素数3〜6の直鎖または分岐α―オレフィンから選ばれる1種以上のモノマー由来の構成単位が0〜5mol%である。
【請求項28】
前記樹脂にハロゲン原子を結合させる前記工程および前記被覆層を形成する前記工程は、
前記樹脂微粒子が前記溶媒に溶解しない温度条件下で行われることを特徴とする請求項15乃至27のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項29】
前記被覆層を形成する前記工程の後に、
前記被覆層を備える前記樹脂微粒子を洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項15乃至28のいずれかに記載のコアシェル型粒子の製造方法。
【請求項30】
請求項1乃至14のいずれかに記載のコアシェル型粒子を、前記樹脂微粒子を構成する前記樹脂を選択的に溶解する溶媒で抽出することにより、前記樹脂微粒子の少なくとも一部を得られた中空状コアシェル型粒子。
【請求項31】
請求項1乃至14のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含むフィルムまたはシート。
【請求項32】
請求項1乃至14のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含む樹脂添加剤。
【請求項33】
請求項1乃至14のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含むコーティング剤。
【請求項34】
請求項1乃至14のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含む分散剤。
【請求項35】
請求項1乃至14のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含む粉体塗装剤。
【請求項36】
請求項1乃至14のいずれかに記載のコアシェル型粒子を含む成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−241885(P2010−241885A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89779(P2009−89779)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】