説明

コアシェル粒子の製造方法

【課題】簡便・確実な、所望の組成からなりかつシェルの膜厚の十分に厚い、コアシェル粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】(1)コアを結晶性無機物質シェルの原料の溶液に分散した分散液を霧化し(霧化工程)、(2)前記霧化された分散液を乾燥することによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルの原料を被覆し(乾燥工程)、(3)前記結晶性無機物質シェルの原料の分解温度以上の温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に無機物質仮シェルを形成し(第1の熱処理工程)、(4)前記結晶性無機物質仮シェルが結晶化あるいは結晶性良化する温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルを形成する(第2の熱処理工程)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアシェル粒子の製造方法、特に蛍光体粒子であるコアシェル粒子の製造方法、さらにはエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子であるコアシェル粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学的もしくは物理的に不安定な物質を保護したり、物質に特別な機能を持たせたりすることを目的として、核となる物質(コアと呼ぶ)を殻となる物質(シェルと呼ぶ)によって被覆するという技術が知られている。また、そのようにして製造された粒子のことを一般にコアシェル粒子と呼ぶ。
【0003】
コアシェル粒子の用途としては、写真感光材料におけるハロゲン化銀粒子や、熱硬化性樹脂におけるシリコンエラストマー微粒子など、多くのものが知られているが、近年、蛍光体粒子、特にはエレクトロルミネッセンス素子におけるエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子としての用途が注目されて来ている。
【0004】
エレクトロルミネッセンス素子は、自己発光する面光源として、別途の光源が不要な新たな表示素子等としての利用が期待されているものである。従来のエレクトロルミネッセンス素子には、「分散型」と「薄膜型」の2つのタイプが存在する。そこでまず、非特許文献1等に記載されている、従来の分散型と薄膜型のエレクトロルミネッセンス素子のそれぞれの基本的な構造、発光機構および特長について、以下に概略的に説明する。
【0005】
分散型エレクトロルミネッセンス素子は、典型的には、図5に示す素子60のように、ガラスやポリエチレンテレフタレート(PET)シート等の透明基板62の上に、透明導電膜の塗布により透明電極64が形成されて、その上に、蛍光体粒子66aが誘電体バインダー66b中に遊離分散されてなる発光層66、絶縁層68および背面電極70が積層された構造を有する。さらに、表面保護層等の追加の層が設けられる場合もある。透明電極64と背面電極70との間に交流電圧を印加すると、発光層66内部の蛍光体粒子66aが電界発光を示し、その光が透明電極64および透明基板62を介して取り出される。
【0006】
絶縁層68は、電流経路を遮断し、各蛍光体粒子66aに安定した高電界を印加するためのものであるが、上記の蛍光体粒子66a同士の遊離分散が完全に実現されており、発光層66内の電流経路が遮断されている場合には、絶縁層68を設けなくてもよい。
【0007】
分散型エレクトロルミネッセンス素子の蛍光体粒子としては、付活剤が蛍光体母材に添加された粒子が用いられる。その代表的なものは、青緑色の発光を示すZnS:Cu、Clであり、その他、所望の発光色に応じて、ZnS:Cu、Al(緑色)やZnS:Cu、Cl、Mn(橙黄色)等が使用される。ここで、下記の発光機構等から、付活剤は銅を含んだものである必要があると言われており、実用化されたものはZnSのみである。分散型エレクトロルミネッセンス素子の蛍光体粒子では、20μm前後の粒子径が最適であると考えられている。粒子径が小さくなると発光輝度が著しく低下する。
【0008】
分散型エレクトロルミネッセンス素子の発光は、付活剤として添加された元素が、ドナーおよびアクセプタとして作用し、再結合が起こることによるものである。たとえば、上記のZnS:Cu、Clの場合には、Clがドナー、Cuがアクセプタとして作用する。
【0009】
また、この発光は、蛍光体粒子全体で一様に起こるのではなく、CuSの針状結晶がZnS粒子の格子欠陥に沿って析出しており、その先端部分で局在的に起こるものと考えられている。
【0010】
薄膜型エレクトロルミネッセンス素子は、典型的には、図6に示す素子80のように、分散型と同様に透明基板82の上に、透明電極84が形成され、その上に、第1の絶縁層86a、真空蒸着やスパッタリング等の手法により薄膜状に形成された蛍光体の発光層88、第2の絶縁層86bおよび背面電極90が積層された構造を有する。さらに、表面保護層や、発光層と絶縁層間のバッファ層等の、追加の層が設けられる場合もある。一般的には、発光層88以外の各層も、真空蒸着等の薄膜形成技術により形成されることが多い。図6の素子80は説明のため図5の素子60とほぼ同様の厚さに描かれているが、実際には、薄膜型エレクトロルミネッセンス素子の厚さは、分散型エレクトロルミネッセンス素子の1/100程度である。しかし、最近では印刷技術を用いて高誘電率の厚膜絶縁層を設け、全体の膜厚が上記分散型素子の1/数程度のものも知られている。透明電極84と背面電極90との間に交流電圧を印加すると、発光層88が電界発光を示し、その光が透明電極84および透明基板82を介して取り出される。発光層88に用いられる代表的な蛍光体材料は、発光中心となるMnを母材ZnS中にドープしたZnS:Mnであり、これは橙黄色の発光を示す。また、近年青色発光を示すBaAl:Euが開発され、注目を集めている。薄膜型の場合も、複数の色に対応する異なる種類の発光中心をドープした発光部分を2次元状に配した「デュアル・パターン方式」や「トリプル・パターン方式」と呼ばれる構成を採用したり、複数の色に対応する上記の図6に示す構造を多重に重ね合わせたりすることにより、カラーディスプレイ等への応用が可能である。
【0011】
分散型エレクトロルミネッセンス素子がドナー−アクセプタ間の再結合により発光するのに対し、薄膜型エレクトロルミネッセンス素子の発光は、母材中を走るホットエレクトロンによる発光中心の衝突励起によるものであるとされている。このホットエレクトロンは、電圧印加時に、発光層88と絶縁層86aおよび86bとの界面および/または発光層88内のトラップ等から、発光層88中に注入された電子が、高電界下で加速されたものである。
【0012】
分散型と薄膜型のエレクトロルミネッセンス素子を比較すると、それぞれに長所および短所がある。分散型の長所としては、製造工程を、真空蒸着等を含まない簡略なものとすることができるので、製造コストが安く、素子の大型化が容易であり、また、可撓性を有するフレキシブルな素子も製作できる点等が挙げられる。短所は、薄膜型に比べて輝度が低いこと、色の多様性が少ないこと、分散される蛍光体粒子の粒子径が大きく、高精細ディスプレイ等の用途には向かないこと等である。一方、薄膜型の長所は、分散型より輝度が高く明るいこと、色を決定する発光中心のバリエーションが多いため多様な色を表現できること、高精細表示が可能であること等が挙げられる。短所は、製造工程が複雑でコストが高いこと等である。また、薄膜型では、発光した光の大部分が発光層と絶縁層の界面で全反射されるため、光の取出効率が非常に低く、5から10%程度しかない点も問題とされている。
【0013】
一方、特許文献1および2等において、図5に示した構造と同様の分散型様の構造を採りながら、発光層中に分散される蛍光体粒子として、従来は薄膜型素子の発光層に使用されていた蛍光体材料を粒子形状にしたものを使用したエレクトロルミネッセンス素子も提案されている。さらに特許文献1では、蛍光体のみからなる粒子に代えて、誘電体コアを覆う蛍光体シェルを設けたコアシェル粒子や、さらにその蛍光体シェルを覆う誘電体被覆層を設けた粒子を用い、蛍光体シェルの材料として従来の薄膜型素子の発光層に使用されていた蛍光体を用いた、分散型様の構造を有するエレクトロルミネッセンス素子も提案されている。これらの特許文献1および2に記載されているようなエレクトロルミネッセンス素子では、発光層中の蛍光体部分とその周囲の誘電体との界面および/または蛍光体部分内のトラップ等から、蛍光体部分内部に電子が注入され、その電子が加速されてホットエレクトロンとなり蛍光体部分内の発光中心を励起し、従来の薄膜型素子に類似の発光機構が実現されると考えられる。基本的な構造自体は従来の分散型素子と同様であるので、製造コストは低く抑えることができる。
【0014】
従来型の銅を含む蛍光体を用いたものと、上記の薄膜型素子の発光層に使用されていた蛍光体を用いたものとのいずれかを問わず、分散型様の構造を有するエレクトロルミネッセンス素子において高い発光効率を得るためおよび/または低い印加電圧で発光を開始させるためには、素子に印加した電圧が、発光層中の蛍光体粒子に効率的に印加される必要がある。そのための手段として、たとえば上記の特許文献2に記載されたエレクトロルミネッセンス素子では、発光層中のバインダーにBaTiO等の高誘電率の誘電体を使用し、その中に蛍光体粒子を分散させている。
【0015】
ところで、コアシェル粒子の製造方法としては、上記特許文献1および2の他にも様々なものが提案されている。特許文献3においては、蛍光体構成元素の化合物と、蛍光体でない無機物質を混合して焼成することにより当該無機物質からなるコアに当該蛍光体からなるシェルを被覆せしめるコアシェル粒子の製造方法であって、水中にて当該無機物質粒子表面に蛍光体構成元素の化合物を沈殿させ、しかる後に乾燥・焼成させるものが開示されている。また、特許文献4においては、コア粒子構成元素の原料溶液にシェルになるナノ粒子を分散した噴霧熱分解法を用いることを特徴とするコアシェル粒子の製造方法が開示されている。ここでは、噴霧液は、超音波噴霧によって霧化されている。
【特許文献1】国際公開第02/080626号パンフレット
【特許文献2】特許公開2000−195674号公報
【特許文献3】特許公開2002−180041号公報
【特許文献4】特許公開平成9−309768号公報
【非特許文献1】猪口敏夫著、「エレクトロルミネセントディスプレイ」、初版、産業図書株式会社、平成3年7月25日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のコアシェル粒子においては、製造された粒子のコアおよびシェルの組成が、それぞれの用途が要求する機能にかんがみて所望のものとなっていることが重要である。また、用途により異なるが、一般に、特にシェルが蛍光体の場合は要求される輝度の関係から、シェルの膜厚を厚くすることが重要である。
【0017】
特許文献3においては、元素により沈殿速度が異なることから、複合組成の化合物においては組成の制御が難しい。また、酸化物以外の組成(硫化物、窒化物)の合成が困難である。さらには、厚膜シェル(100nm以上)を得ることが難しい。
【0018】
特許文献4においては、コアも噴霧熱分解で生ずることから、シェル原料がコア液滴の中に入り、コアシェル構造が所望通りにならないことがある。シェルとなるべきナノ粒子が必ず表面へ析出するように制御するには様々なパラメータについて検討する必要があると考えられ、所望の形状・組成のコアシェル粒子を得ることは容易ではない。
【0019】
したがって、本発明の目的は、簡便・確実な、所望の組成からなりかつシェルの膜厚の十分に厚い、コアシェル粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の発明者は、コア粒子をシェル原料を含む液とともに霧化して、乾燥、熱処理の工程に付することにより、液相中の溶質や粒子の均一性が霧滴それぞれの中の溶質や粒子の均一性に引き継がれることにより結果物の組成の均一性に優れるという噴霧熱分解法の長所を確保しながらも、従来技術における、容易に所望のコアシェル構造を得ることができないという欠点を克服することができることを見出し、本発明に到達した。
【0021】
本発明に係る第1のコアシェル粒子の製造方法は、
(1)コアを結晶性無機物質シェルの原料の溶液に分散した分散液を霧化する霧化工程と、
(2)前記霧化された分散液を乾燥することによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルの原料を被覆する乾燥工程と、
(3)前記結晶性無機物質シェルの原料の分解温度以上の温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に無機物質仮シェルを形成する第1の熱処理工程と、
(4)前記結晶性無機物質仮シェルが結晶化する温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルを形成する第2の熱処理工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0022】
本発明に係る第2のコアシェル粒子の製造方法は、
(1)コア、結晶性無機物質シェルと同一の構成金属元素を有しコアより十分小さい微粒子、および分散剤を分散した分散液を霧化する霧化工程と、
(2)前記霧化された分散液を乾燥することによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルの原料の微粒子を被覆する乾燥工程と、
(3)前記結晶性無機物質シェルの原料の微粒子同士が融着する温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に無機物質仮シェルを形成する第1の熱処理工程と、
(4)前記無機物質仮シェルが結晶化する温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルを形成する第2の熱処理工程と、
を有することを特徴とするものである。
【0023】
本発明の第1および第2のコアシェル粒子の製造方法において、前記乾燥工程と前記第1の熱処理工程とは、同一の熱処理装置により行なうことができる。また、前記乾燥工程および/または前記第1の熱処理工程と、前記第2の熱処理工程とは、同一の熱処理装置により行なうことができる。
【0024】
本発明の第1および第2のコアシェル粒子の製造方法において、該結晶性無機物質シェルは蛍光体とすることができる。また、該蛍光体はエレクトロルミネッセンス蛍光体とすることができ、特にZnS:MnまたはZnSiO:Mnとすることができる。
【0025】
本発明の第1および第2のコアシェル粒子の製造方法において、該コアは誘電率の大きな誘電体とすることができる。ここで、誘電率の大きな誘電体とは、少なくとも比誘電率100程度のものをいう。また、該誘電体はBaTiOとすることができる。
【0026】
また、上記シェルとコアとの物質の組み合わせについては適宜選択することができる。
【0027】
ここで、本発明において「コアシェル粒子」とは、粒子の全体を指し、エレクトロルミネッセンス素子に使用される場合にあっては、発光層中に分散される各粒子の全体を指すものとする。すなわち、実際にエレクトロルミネッセンスによる発光が生じるのは、粒子中の蛍光体部分であるが、本発明においては、コアや、あれば誘電体被覆層やバッファ層等を含めた粒子全体を、「コアシェル粒子」と呼ぶものとする。
【0028】
また、上記の本発明のコアシェル粒子の製造方法によって製造されるエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子は、コアと、そのコアの外側に設けられた蛍光体シェルとを含むものであるが、これも必要最低限の構成を示したものである。たとえば、コアと蛍光体シェルとの間にバッファ層等の追加の層が設けられていてもよいし、蛍光体シェルの外側に、追加の誘電体被覆層と蛍光体シェルとの組や、表面保護層等が設けられていてもよい。
【0029】
また、本発明においては、コアシェル粒子、コア粒子、シェル原料粒子等の粒径は、直径をもって定義する。
【0030】
本発明に係るコアシェル粒子の製造方法において、当該微粒子が「前記コアより十分小さい」とは、当該微粒子の粒径が当該コアの粒径の5分の1以下であることをいう。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る第1のコアシェル粒子の製造方法においては、コアを結晶性無機物質シェル原料溶液に分散した分散液を霧化する工程が設けられた上で乾燥・熱処理の処理を行なうこととしたため、コアが噴霧熱分解の過程で生成する場合のようにコアがうまくできずシェル原料が真中に存在する粒子を生ずる心配がない。したがって、確実・容易に所望の形状のコアシェル粒子を得ることができる。さらに、噴霧熱分解においては、コアの周囲にはコアの径に比して厚い分散液の膜を付着させることができ、熱処理後も結果として膜厚の厚いコアシェル粒子が得られる。
【0032】
また、霧化時にはコア以外の構成物質はすべて溶液化されているため、コア表面へ均一にシェル原料が分布することとなり、シェルの組成が均一なコアシェル粒子を得ることができる。
【0033】
本発明に係る第2のコアシェル粒子の製造方法においては、コアと結晶性無機物質シェルと同一の構成金属元素を有する微粒子とを共に分散した分散液を霧化する工程が設けられた上で乾燥・熱処理の処理を行なうこととしたため、コアが噴霧熱分解の過程で作成する場合のようにコアがうまくできずシェル原料が真中に存在する粒子を生ずる心配がない。したがって、確実・容易に所望の形状のコアシェル粒子を得ることができる。さらに、噴霧熱分解においては、コアの周囲にはコアの径に比して厚い分散液の膜を付着させることができ、熱処理後も結果として膜厚の厚いコアシェル粒子が得られる。
【0034】
また、コアのみならずシェル原料も粒子の形で霧化されるため、従来技術のように、液相中の、目的元素のカウンターアニオン等がコアシェル粒子内に残るという心配がなく、容易に所望の組成のコアシェル粒子を得ることができる。
本発明の第1および第2のコアシェル粒子の製造方法において、前記乾燥工程と前記第1の熱処理工程とを、同一の熱処理装置により行なうこととした場合には、上記と同様の効果を奏しつつ、少ない工程数で簡便にコアシェル粒子を得ることができる。また、前記乾燥工程および/または前記第1の熱処理工程と、前記第2の熱処理工程とを、同一の熱処理装置により行なうこととした場合にも、上記と同様の効果を奏しつつ、少ない工程数で簡便にコアシェル粒子を得ることができる。
【0035】
本発明の第1および第2のコアシェル粒子の製造方法において、該結晶性無機物質シェルを蛍光体とした場合には、上記と同様の効果を奏しつつ、ディスプレイ等に用い得るコアシェル粒子を簡便・確実に得ることができる。また、該蛍光体をエレクトロルミネッセンス蛍光体とした場合には、上記と同様の効果を奏しつつ、エレクトロルミネッセンス素子に用い得るコアシェル粒子を簡便・確実に得ることができる。
【0036】
本発明の第1および第2のコアシェル粒子の製造方法において、該コアを高誘電体とした場合には、上記と同様の効果を奏しつつ、上記と同様の効果を奏しつつ、エレクトロルミネッセンス素子等に用い得るコアシェル粒子を簡便・確実に得ることができる。
【0037】
また、上記シェルとコアとの物質の組み合わせについて適宜選択することにより、エレクトロルミネッセンス素子にさらに好適に用い得るコアシェル粒子を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、本発明の第1のコアシェル粒子の製造方法について、詳細に説明する。
【0039】
[シェル原料溶液へのコア分散工程]
分散液の作成に当たり、目的とする結晶性無機物質シェルの原料となる化合物、コア粒子、ならびに分散溶媒を用意する。
【0040】
本発明に用い得るシェルの材料としては、分散溶媒に可溶のものであって、焼成により互いに化合して単相の結晶性を示す無機物が挙げられる。エレクトロルミネッセンス発光素子の製造方法にあっては、目的とするエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子の蛍光体シェル化合物種によって適宜選択し得る。例えば、蛍光体中の金属元素の原料としては当該元素の硝酸塩、酢酸塩あるいは塩化物を、硫黄源としてはチオ尿素やチオアセトアミドなどのイオウ化合物を、ケイ素源としては含ケイ素有機化合物を、それぞれ用い得る。
【0041】
コア粒子と、シェル原料の重量比は、目的とするコアシェル粒子の所望の膜厚および所望の組成に応じて、適宜計算すればよい。
【0042】
分散溶媒は、上記から分かるようにシェル材料を溶解し得るものであり、例としては、水、エタノールが挙げられる。
【0043】
目的とする結晶性無機物質シェルの原料となる化合物の、分散液中の均一分散性を確保するために、分散液に分散剤を加えてもよい。分散剤としては、ヒドロキシセルロース等が用い得る。分散剤は、コアシェル粒子が実際に機能を発揮する際は不要であり、後述する加熱工程によって分解または燃焼させる。
【0044】
本発明の第1のコアシェル粒子の製造方法が目的とするエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子の蛍光体シェル化合物種としては、従来の分散型エレクトロルミネッセンス素子で用いられているZnS:Cu、Cl等の銅を含む蛍光体や、ZnS:Mnのように、従来は薄膜型エレクトロルミネッセンス素子で用いられていたホットエレクトロンにより励起される発光中心を含んだ蛍光体などが挙げられる。後者を用いた場合は、発光機構自体は従来の薄膜型素子に類似のものとなる上、蛍光体被覆層の形状効果や発光層全体の光散乱効果のために全反射条件が成り立たなくなり、従来の薄膜型素子に比べて発光層からの光の取出効率が向上するため、従来の分散型素子ならびに薄膜型素子に比べて高い輝度が得られるという利点がある。ZnS:Mn以外のそのような蛍光体の例としては、以下の表に示すものが挙げられる。
【表1】

【0045】
本発明に用い得るコアの材料としては、コアシェル粒子の用途に応じて選択し得るが、特にエレクトロルミネッセンス発光素子のためには、BaTiO、SrTiO、HfO、SiO、TiO、Al、Y、Ta、BaTa、Sr(Zr、Ti)O、PbTiO、Si、ZnS、ZrO、PbNbO、Pb(Zr、Ti)O等が使用可能である。ただし、蛍光体シェルに効率的に電界を印加するためには誘電率の大きな材料が好ましい。誘電体被覆層を設ける場合には、誘電体被覆層と誘電体コアに同一の材料を用いてもよいが、誘電体被覆層による遮蔽効果を低く抑えて蛍光体シェルに効率的に電界を印加するためには、誘電体コアの方により比誘電率の高い材料を使用することが好ましい。
【0046】
また、誘電体コアのコア径は、0.05μm以上5μm以下であることが好ましく、0.1μm以上3.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0047】
これは、誘電体コアのコア径が小さすぎると、蛍光体被覆層に電界を集中するために蛍光体被覆層を過度に薄くしなくてはならない等の問題が生じ、逆に誘電体コアのコア径が大きすぎると、発光粒子全体の大きさが大きくなり発光層16の平滑性を損ねる等の問題が生じるためである。一方、無機物質シェル原料の微粒子の大きさは、1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。
【0048】
なお、シェルが蛍光体でないが、本発明に係る製造方法により作成できるコアシェル粒子としては、コンデンサー内に充填される充填粒子であって、コアがSrTiOやBaTiOであり、シェルがCuO、MnOであるもの、が挙げられる。
【0049】
シェル原料溶液へのコアの分散は、超音波振動装置や、マグネチックスターラーなどによって均一に分散させる。
【0050】
[分散液霧化工程]
上記分散液を、スプレーにより霧化する。本発明においては、比較的粒径の大きいコアも共に霧化する必要があるから、霧化する力の大きなスプレーを用いることが望ましい。例えば、霧化される液と共に空気等の気体を積極的に吸入して霧化する2流体スプレーなどが挙げられる。
【0051】
本発明においては、上記工程を経ることによって、コアの周りに無機物質シェル原料溶液が厚く付着した霧滴を容易に得ることができる。
【0052】
図1に2流体スプレーの概要を示す。2流体スプレー100は、液体供給部102と気体供給部104を有している。液体供給部からは霧化されるべき液体106が、気体供給部からは、例えば圧縮空気108が供給される。図にある通り、霧化されるべき液体が圧縮空気と激しく衝突する構造となっているので、霧化する力が比較的大きいものとなっている。
【0053】
[乾燥工程]
この後、上記霧化された粒子を、乾燥室に導入して、コアの周りに付着させている結晶性無機物質シェル原料溶液の溶媒部分を揮発させる。
【0054】
乾燥室としては、特別な構成のものは必要なく、公知の乾燥室を用い得る。
【0055】
乾燥時間、温度範囲はコアの大きさや乾燥室のガス流量に伴う粒子の落下時間、シェル原料および溶媒の種類等によって適宜定め得るが、乾燥時間は1秒〜1時間程度、温度範囲は、30℃〜300℃までが好ましい。
【0056】
乾燥時の雰囲気としては通常の空気の他、減圧したり、窒素ガス、Arガス等で置換したものを用いても良い。
【0057】
上記のように溶媒が取り除かれ、コアの周囲に結晶性無機物質シェル原料が被覆されたものは、例えば乾燥室に設けられたフィルター部によって回収される。
【0058】
[第1の熱処理工程]
回収された粒子は、さらに、結晶性無機物質シェルの原料を分解するために、例えば450℃から1000℃の温度によって、加熱される。
【0059】
第1の熱処理工程に用い得る装置としては、上記の原料分解温度に耐えうる熱処理装置が必要である。例えば、ルツボを備えた電気炉が用いられ得る。この際、目的とする無機物質シェルが硫化物からなる場合は、還元性雰囲気、不活性ガス雰囲気(HSあるいはCSなどのイオウ系ガスを含有しても良い)または真空雰囲気を用い、大気中でルツボを備えた電気炉で焼成する場合においてはその硫化物に近い組成を有する粒子からなるダミー粒子を充填してから焼成することが望ましい。
【0060】
熱処理時間としては、上記のごとくフィルターによって回収されたものを別途熱処理する場合であれば、目的に応じて、10分から数日かけて行ない得る。好ましくは、20分〜24時間である。
【0061】
上記第1の熱処理工程を経ることにより、前記コアの表面に無機物質仮シェルが形成された粒子が得られる。
【0062】
得られた被熱処理物には、必要に応じて、ほぐし、篩分け処理などを施してもよい。
【0063】
なお、前記乾燥工程において用いた乾燥室が、上記の原料分解温度に耐え得るものであれば、前記乾燥工程と第1の熱処理工程を同一の熱処理装置により行ってもよい。例えば、石英製管状炉が用いられ得る。この場合は、霧化された粒子が落下しない時間内(多くは数秒〜数分)に、熱処理を行い、乾燥と、第1の熱処理すなわち原料分解と、を行なうことが好ましい。これにより、工程数を削減することができる。また、低い温度から段階的に高い温度へ昇温し、乾燥の次に第1の熱処理へと順次行なうことがさらに好ましい。これにより、より緻密な無機物質仮シェルを簡便に形成することができる。
【0064】
上記の段階的な昇温を行うことのできる加熱装置としては、図2に挙げる石英製管状炉がある。石英製管状炉120は、1000℃の温度に耐えうるよう石英で構成された加熱通路122を有している。原料供給口124を通って供給された霧滴は、加熱装置126aおよび126bによってそれぞれ所定の温度に加熱されている加熱領域128aおよび128bを順番に通過し、順次それぞれの温度まで加熱される。加熱装置128aおよび128bは、加熱領域128aおよび128bの温度を独立に制御できるよう設計されている。このようにして加熱された霧滴は、排気口130の手前に設けられたカートリッジフィルタ132により回収される。
【0065】
[第2の熱処理工程]
上記により得られた粒子表面に形成されているのは、非晶質または結晶性の低い無機物質仮シェルであり、未だコアシェル粒子としての機能を果たし得る構造になっていない。したがって、これをさらに第2の熱処理工程に付することにより、無機物質仮シェルを結晶化あるいは結晶性を向上し、コアシェル粒子としての機能を果たすようにさせる。
【0066】
結晶化あるいは結晶性の向上に際しては、目的の結晶性無機物質シェルの組成や結晶種にもよるが、例えば600℃から1600℃の温度で熱処理する。
【0067】
熱処理装置としても、この温度に耐え得る熱処理装置が必要とされる。例えば、ルツボを備えた電気炉が用いられ得る。この際、目的とする無機物質シェルが硫化物からなる場合は、還元性雰囲気、不活性ガス雰囲気(HS,CSなどのイオウ系ガスを含有しても良い)、または真空雰囲気を用い、大気中でルツボを備えた電気炉で焼成する場合においてはその硫化物に近い組成を有する粒子からなるダミー粒子を充填してから焼成することが望ましい。
【0068】
熱処理時間としては、上記のごとくフィルターによって回収されたものを別途熱処理する場合であれば、目的に応じて、10分から数日かけて行ない得る。好ましくは、20分〜24時間である。
【0069】
上記第2の熱処理工程を経ることにより、前記コアの表面に結晶性無機物質シェルが形成されたコアシェル粒子が得られる。シェルの膜厚は、一般には1nm乃至10μmの範囲にあり、好ましくは10nm乃至5μmの範囲にある。
【0070】
得られたコアシェル粒子には、必要に応じて、ほぐし、篩分け処理などを施してもよい。
【0071】
なお、前記乾燥工程において用いた乾燥室および/または第1の熱処理工程において用いた熱処理装置が、上記結晶化あるいは結晶性向上の温度に耐え得るものであれば、前記乾燥工程および/または第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを同一の熱処理装置により行ってもよい。例えばアルミナ製管状炉を用い得る。乾燥工程から第2の熱処理工程までを同時に行なう場合は、霧化された粒子が落下しない時間内(多くは数秒〜数分)に、熱処理を行い、乾燥、第1の熱処理すなわち原料分解、および第2の熱処理すなわち結晶化、を同時に行なうことが好ましい。これにより、工程数を削減することができる。また、低い温度から段階的に高い温度へ昇温し、乾燥、第1の熱処理、第2の熱処理へと順次行なうことがさらに好ましい。これにより、より緻密なシェルを有するコアシェル粒子を簡便に作成することができる。
【0072】
上記の段階的な昇温を行うことのできる加熱装置としては、図3に挙げるアルミナ製管状炉がある。アルミナ製管状炉140は、1600℃の温度に耐えうるようアルミナで構成された加熱通路142を有している。原料供給口144を通って供給された霧滴は、加熱装置146a、146bおよび146cによってそれぞれ所定の温度に加熱されている加熱領域148a、148bおよび148cを順番に通過し、順次それぞれの温度まで加熱される。加熱装置148a、148bおよび148cは、加熱領域148a、148bおよび148cの温度を独立に制御できるよう設計されている。このようにして加熱された霧滴は、排気口150の手前に設けられたカートリッジフィルタ152により回収される。
【0073】
次に、本発明の第2のコアシェル粒子の製造方法について、詳細に説明する。
【0074】
[分散液へのコアおよびシェル原料微粒子の分散工程]
分散液の作成に当たり、目的とする結晶性無機物質シェルの微粒子、左化合物の分散液中の均一分散性を確保するための分散剤、コア粒子、ならびに分散溶媒を用意する。本発明の第1のコアシェル粒子製造方法に用いられる分散溶媒に可溶のシェルの原料となる化合物を併用しても良い。
【0075】
本発明に用い得るシェル原料微粒子としては、分散溶媒に可溶のものである必要はないが、固相反応により結晶性を示す無機物からなっている必要がある。特にエレクトロルミネッセンス発光素子のためには、本発明の第1のコアシェル粒子の製造方法において目的とする、エレクトロルミネッセンス蛍光体粒子の蛍光体シェル化合物種として挙げたものが用いられ得る。すなわち、ZnS:Cu、Cl等の銅を含む蛍光体またはZnS:Mn並びに表1で挙げられているホットエレクトロンにより励起される発光中心を含んだ蛍光体であって、すでに粒子形状となっているものが、好適に用いられる。
【0076】
上記シェル原料微粒子は、市販のものがあればそれを用いても良いし、粒子径の大きいものがあればこれを粉砕して用いても良い。上記シェル原料微粒子の大きさは、1nm以上0.1μm以下であることが好ましい。被覆の効率の都合上、シェル原料微粒子の粒径はコアの粒径の5分の1以下であるが、好ましくは20分の1以下である。
【0077】
コア粒子と、シェル原料微粒子の重量比は、目的とするコアシェル粒子の所望の膜厚に応じて、適宜計算すればよい。
【0078】
分散溶媒としては、例としては、水、エタノールが挙げられる。
【0079】
目的とする結晶性無機物質シェルの原料となる化合物の、分散液中の均一分散性を確保するために、分散液に分散剤を加えてもよい。分散剤としては、ヒドロキシセルロース等を用い得る。分散剤は、コアシェル粒子が実際に機能を発揮する際は不要であり、後述する加熱工程によって分解または燃焼させる。
【0080】
なお、シェルが蛍光体でないが、本発明に係る製造方法により作成できるコアシェル粒子としては、コンデンサー内に充填される充填粒子であって、コアがSrTiOやBaTiOであり、シェルがCuO、MnOであるもの、が挙げられる。
【0081】
分散溶媒へのコアおよびシェル原料微粒子の分散は、超音波分散装置、ホモジナイザー、マグネチックスターラーなどによって均一に分散させる。
【0082】
[分散液の霧化工程]
上記分散液を、スプレーノズルにより霧化する。本発明においては、比較的粒径の大きいコア並びにシェル原料微粒子を共に霧化する必要があるから、霧化する力の大きなスプレーノズルを用いることが望ましい。例えば、霧化される液と共に空気等の気体を積極的に吸入して霧化する2流体スプレーノズルなどが挙げられる。
【0083】
本発明においては、上記工程を経ることによって、コアの周りにシェル原料微粒子を含む溶液が厚く付着した霧滴を容易に得ることができる。
【0084】
[乾燥工程]
この後、上記霧化された粒子を、乾燥室に導入して、コアの周りに付着させているシェル原料微粒子含有溶液の溶媒部分を揮発させる。
【0085】
乾燥室としては、特別な構成のものは必要なく、公知の乾燥室を用い得る。
【0086】
乾燥時間、温度範囲はコアの大きさや乾燥室のガス流量に伴う粒子の落下時間、シェル原料および溶媒の種類等によって適宜定め得るが、乾燥時間は1秒〜1時間程度、温度範囲は、30℃〜300℃までが好ましい。
【0087】
乾燥時の雰囲気としては通常の空気の他、減圧したり、窒素ガス、Arガス等で置換したものを用いても良い。
【0088】
上記のように溶媒が取り除かれ、コアの周囲にシェル原料微粒子が被覆されたものは、例えば乾燥室に設けられたフィルター部によって回収される。
【0089】
[第1の熱処理工程]
回収された粒子は、さらに、結晶性無機物質シェルの原料の微粒子同士を融着させるために、例えば450℃から1000℃の温度によって、加熱される。
【0090】
第1の熱処理工程に用い得る装置としては、上記の微粒子融着温度に耐えうる熱処理装置が必要である。例えば、ルツボを備えた電気炉が用いられ得る。この際、目的とする無機物質シェルが硫化物からなる場合は、還元性雰囲気、不活性ガス雰囲気(HSあるいはCSなどのイオウ系ガスを含有しても良い)または真空雰囲気を用い、大気中でルツボを備えた電気炉で焼成する場合においてはその硫化物に近い組成を有する粒子からなるダミー粒子を充填してから焼成することが望ましい。
【0091】
熱処理時間としては、上記のごとくフィルターによって回収されたものを別途熱処理する場合であれば、目的に応じて、10分から数日かけて行ない得る。好ましくは、20分〜24時間である。
【0092】
上記第1の熱処理工程を経ることにより、前記コアの表面に付着したシェル原料微粒子からなる無機物質仮シェルを有する粒子が得られる。
【0093】
得られた被熱処理物には、必要に応じて、ほぐし、篩分け処理などを施してもよい。
【0094】
なお、前記乾燥工程において用いた乾燥室が、上記の微粒子融着温度に耐え得るものであれば、前記乾燥工程と第1の熱処理工程を同一工程として行ってもよい。例えば、石英製管状炉が用いられ得る。この場合は、霧化された粒子が落下しない時間内(多くは数秒〜数分)に、熱処理を行い、乾燥と、第1の熱処理すなわち微粒子融着と、を同時に行なうことが好ましい。これにより、工程数を削減することができる。また、低い温度から段階的に高い温度へ昇温し、乾燥の次に第1の熱処理へと順次行なうことがさらに好ましい。これにより、より緻密な無機物質仮シェルを簡便に形成することができる。
【0095】
[第2の熱処理工程]
上記により得られた粒子表面に形成されているのは、非晶質または結晶性の低い無機物質仮シェルであり、未だコアシェル粒子としての機能を果たし得る構造になっていない。したがって、これをさらに第2の熱処理工程に付することにより、無機物質仮シェルを結晶化あるいは結晶性を向上し、コアシェル粒子としての機能を果たすようにさせる。
【0096】
結晶化あるいは結晶性の向上に際しては、目的の結晶性無機物質シェルの組成や結晶種にもよるが、例えば600℃から1600℃の温度で熱処理する。
【0097】
熱処理装置としても、この温度に耐え得る熱処理装置が必要とされる。例えばルツボを備えた電気炉が用い得る。この際、目的とする無機物質シェルが硫化物からなる場合は、還元性雰囲気、不活性ガス雰囲気(HSあるいはCSなどのイオウ系ガスを含有しても良い)または真空雰囲気を用い、大気中でルツボを備えた電気炉で焼成する場合においてはその硫化物に近い組成を有する粒子からなるダミー粒子を充填してから焼成することが望ましい。
【0098】
熱処理時間としては、上記のごとくフィルターによって回収されたものを別途熱処理する場合であれば、目的に応じて、10分から数日かけて行ない得る。好ましくは、20分〜24時間である。
【0099】
上記第2の熱処理工程を経ることにより、前記コアの表面に結晶性無機物質シェルが形成されたコアシェル粒子が得られる。シェルの膜厚は、一般には1nm乃至10μmの範囲にあり、好ましくは10nm乃至5μmの範囲にある。
【0100】
得られたコアシェル粒子には、必要に応じて、ほぐし、篩分け処理などを施してもよい。
【0101】
なお、前記乾燥工程において用いた乾燥室および/または第1の熱処理工程において用いた熱処理装置が、上記結晶化あるいは結晶性向上の温度に耐え得るものであれば、前記乾燥工程および/または第1の熱処理工程と第2の熱処理工程とを同一の熱処理装置により行ってもよい。例えばアルミナ製管状炉を用い得る。乾燥工程から第2の熱処理工程までを同時に行なう場合は、霧化された粒子が落下しない時間内(多くは数秒〜数分)に、熱処理を行い、乾燥、第1の熱処理すなわち微粒子融着、および第2の熱処理すなわち結晶化あるいは結晶性向上、を同時に行なうことが好ましい。これにより、工程数を削減することができる。また、低い温度から段階的に高い温度へ昇温し、乾燥、第1の熱処理、第2の熱処理へと順次行なうことがさらに好ましい。これにより、より緻密なシェルを有するコアシェル粒子を簡便に作成することができる。
【0102】
ここで、本発明のコアシェル粒子の製造方法により得られたコアシェル粒子をエレクトロルミネッセンス発光素子に用いる際の構成を説明する。
【0103】
エレクトロルミネッセンス蛍光体粒子を使用した素子は、実際には、たとえば図4に示す素子20のような、基板22、透明電極24、発光層26、絶縁層28、背面電極30および表面保護層32からなる構造とすることができる。その作製は、たとえば以下の方法により行なうことができる。まず、PETシートを基板22とし、その上に、ITO(酸化インジウムスズ)を蒸着して透明電極24を形成する。次に、誘電体バインダーの材料であるシアノエチルセルロースを、溶媒のN、N'−ジメチルホルムアミドに、体積比にして(シアノエチルセルロース):(N、N'−ジメチルホルムアミド)=3:7で混合したシアノエチルセルロース溶液中に、本発明のコアシェル粒子の製造方法により得られたエレクトロルミネッセンス蛍光体粒子を分散させる。この分散液を透明電極24上に塗布し乾燥させ、発光層26を形成する。続いて、発光層26の形成に用いたのと同様のシアノエチルセルロース溶液中に、平均粒径0.2μmのBaTiO粒子を分散させた分散液を、発光層26上に塗布し乾燥させ、平均層厚5μmの絶縁層28を形成する。最後に、絶縁層28上にアルミニウムを蒸着して背面電極30とし、その上にPETシートをラミネートして表面保護層32を形成する。
【0104】
このようにエレクトロルミネッセンス発光素子を作成することにより、誘電体コアと誘電体バインダーに挟まれた蛍光体シェルの部分に電界が集中し、単に同量の蛍光体粒子を分散した場合に比べ、同一印加電圧であっても高い輝度を実現することができる。
【0105】
以下に、本発明のコアシェル粒子の製造方法の具体例を記載する。
【実施例1】
【0106】
Zn(NO・6HO(178.49g)、チオ尿素(91.35g)、Mn(NO・6HO(5.17g)、ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0107】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、200℃の乾燥室にて揮発成分を留去した後に、ZnS:Mn原料成分をBaTiO表面に被覆した粒子をフィルター部にて回収した。
【0108】
上記粒子を、ZnSダミー粒子を充填したルツボに移した。これを電気炉に入れて、600℃、24時間の条件で加熱することで原料分解処理を行なった。引き続いて、900℃、2時間の条件でZnS:Mnの結晶化を行なうことにより、BaTiO/ZnS:Mnコアシェル粒子を形成した。
【0109】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、585nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例2】
【0110】
Zn(NO・6HO(178.49g)、テトラエチルオルソシリケート(Si(OC、以下TEOSと記す)(66.49mL)、Mn(CHCOO)・4HO(3.68g)、適量の硝酸、ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0111】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、200℃の乾燥室にて揮発成分を留去した後に、ZnSiO:Mn原料成分をBaTiO表面に被覆した粒子をフィルター部にて回収した。
【0112】
上記粒子を、大気下、600℃、24時間の条件で加熱することで原料分解処理を行なった後に、Ar雰囲気下、1300℃、2時間の条件でZnSiO:Mnの結晶化を行なうことにより、BaTiO/ZnSiO:Mnコアシェル粒子を形成した。
【0113】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、525nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例3】
【0114】
Zn(NO・6HO(178.49g)、チオ尿素(91.35g)、Mn(NO・6HO(5.17g)、ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0115】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、生じた霧滴をキャリアーガス(N、40L/min)を用いて、200℃〜1000℃へと段階的に昇温出来る石英製管状炉に導入し、該管状炉内において、乾燥・原料分解を行い、BaTiOコア表面にZnS:Mn仮シェルが被覆された粒子を形成し、フィルター部にて回収した。
【0116】
該粒子を、ZnSダミー粒子を充填したルツボに移した。これを電気炉に入れて、900℃、2時間の条件でZnS:Mnの結晶化を行なうことにより、BaTiO/ZnS:Mnコアシェル粒子を形成した。
【0117】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、585nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例4】
【0118】
Zn(NO・6HO(178.49g)、TEOS(66.49mL)、Mn(CHCOO)・4HO(3.68g)、適量の硝酸、ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0119】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、生じた霧滴をキャリアーガス(N、40L/min)を用いて、200℃〜1000℃へと段階的に昇温出来る石英製管状炉に導入し、該管状炉内において、乾燥・原料分解を行い、BaTiOコア表面にZnSiO:Mn仮シェルが被覆された粒子を形成し、フィルター部にて回収した。
【0120】
該粒子に対し、Ar雰囲気下、1300℃、2時間の条件でZnSiO:Mnの結晶化を行なうことにより、BaTiO/ZnSiO:Mnコアシェル粒子を形成した。
【0121】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、525nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例5】
【0122】
Zn(NO・6HO(178.49g)、チオ尿素(91.35g)、Mn(NO・6HO(5.17g)、ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0123】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、生じた霧滴をキャリアーガス(N、40L/min)を用いて、200℃〜1200℃へと段階的に昇温出来るアルミナ製管状炉に導入し、該管状炉内において、乾燥・原料分解・ZnS:Mnの結晶化を行い、 BaTiO/ZnS:Mnコアシェル粒子をフィルター部にて回収した。
【0124】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、585nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例6】
【0125】
Zn(NO・6HO(178.49g)、TEOS(66.49mL)、Mn(CHCOO)・4HO(3.68g)、適量の硝酸、ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0126】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、生じた霧滴をキャリアーガス(N、40L/min)を用いて、200℃〜1400℃へと段階的に昇温出来るアルミナ製管状炉に導入し、該管状炉内において、乾燥・原料分解・ZnSiO:Mnの結晶化を行い、BaTiO/ZnSiO:Mnコアシェル粒子をフィルター部にて回収した。
【0127】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、525nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例7】
【0128】
ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径4nmのZnS:Mn(58.47g)微粒子、及び平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0129】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、200℃の乾燥室にて揮発成分を留去した後に、ZnS:Mn粒子をBaTiO表面に被覆した粒子をフィルター部にて回収した。
【0130】
上記粒子を、ZnSダミー粒子を充填したルツボに移した。これを電気炉に入れて、600℃、24時間の条件で加熱することで微粒子融着処理を行なった後に、ZnSダミー粒子を充填したルツボに移した。これを電気炉に入れて、900℃、2時間の条件でZnS:Mnの結晶性良化を行なうことにより、BaTiO/ZnS:Mnコアシェル粒子を形成した。
【0131】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、585nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例8】
【0132】
ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径50nmのZnSiO:Mn微粒子(66.86g)、及び平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0133】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、200℃の乾燥室にて揮発成分を留去した後に、ZnSiO:Mn粒子をBaTiO表面に被覆した粒子をフィルター部にて回収した。
【0134】
上記粒子を、大気下、600℃、24時間の条件で加熱することで微粒子融着処理を行なった後に、Ar雰囲気下、1300℃、2時間の条件でZnSiO:Mnの結晶性良化を行なうことにより、BaTiO/ZnSiO:Mnコアシェル粒子を形成した。
【0135】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、525nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例9】
【0136】
ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径4nmのZnS:Mn微粒子(58.47g)及び平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0137】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、生じた霧滴をキャリアーガス(N、40L/min)を用いて、200℃〜1000℃へと段階的に昇温出来る石英製管状炉に導入し、該管状炉内において、乾燥・微粒子融着を行い、BaTiOコア表面にZnS:Mn仮シェルが被覆された粒子を形成し、フィルター部にて回収した。
【0138】
該粒子を、ZnSダミー粒子を充填したルツボに移した。これを電気炉に入れて、900℃、2時間の条件でZnS:Mnの結晶性良化を行なうことにより、 BaTiO/ZnS:Mnコアシェル粒子を形成した。
【0139】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、585nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例10】
【0140】
ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径50nmのZnSiO:Mn微粒子(66.86g)、及び平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0141】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、生じた霧滴をキャリアーガス(N、40L/min)を用いて、200℃〜1000℃へと段階的に昇温出来る石英製管状炉に導入し、該管状炉内において、乾燥・微粒子融着を行い、 BaTiOコア表面にZnSiO:Mn仮シェルが被覆された粒子を形成し、フィルター部にて回収した。
【0142】
該粒子に対し、1300℃、2時間の条件でZnSiO:Mnの結晶性良化を行なうことにより、BaTiO/ZnSiO:Mnコアシェル粒子を形成した。
【0143】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、525nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例11】
【0144】
ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径4nmのZnS:Mn微粒子(58.47g)及び平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0145】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、生じた霧滴をキャリアーガス(N、40L/min)を用いて、200℃〜1200℃へと段階的に昇温出来るアルミナ製管状炉に導入し、該管状炉内において、乾燥・微粒子融着・ZnS:Mnの結晶性良化を行い、BaTiO/ZnS:Mnコアシェル粒子をフィルター部にて回収した。
【0146】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、585nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【実施例12】
【0147】
ヒドロキシプロピルセルロース(20.00g)を溶解した水溶液中(2.00L)に、平均粒径50nmのZnSiO:Mn微粒子(66.86g)、及び平均粒径2.0μmのBaTiO粒子(72.44g)を分散して、出発原料液とした。
【0148】
上記原料液を、原液注入ポンプを用いて霧化室に導入して(20mL/min)、2流体スプレーノズル(スプレーイングノズル社製)にて霧化し、生じた霧滴をキャリアーガス(N、40L/min)を用いて、200℃〜1400℃へと段階的に昇温出来るアルミナ製管状炉に導入し、該管状炉内において、乾燥・微粒子融着・ZnSiO:Mnの結晶性良化を行い、BaTiO/ZnSiO:Mnコアシェル粒子をフィルター部にて回収した。
【0149】
形成された粒子は平均膜厚200nmの結晶性のシェルを有していた。また、上記コアシェル粒子を用いてエレクトロルミネッセンス素子を作成したところ、525nmを中心としたエレクトロルミネッセンス発光スペクトルを観測した。
【0150】
以上、本発明の実施形態について詳細に述べたが、これらの実施形態は例示的なものに過ぎず、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲のみによって定められるべきものであることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】2流体スプレーの図
【図2】段階的昇温が可能な石英製管状炉の図
【図3】段階的昇温が可能なアルミナ製管状炉の図
【図4】本発明に係る第1のエレクトロルミネッセンス素子の実際の構造の例を示す断面図
【図5】従来の分散型エレクトロルミネッセンス素子の基本的な構造を示す断面図
【図6】従来の薄膜型エレクトロルミネッセンス素子の基本的な構造を示す断面図
【符号の説明】
【0152】
20、60、80 エレクトロルミネッセンス素子
22、62、82 基板
24、64、84 透明電極
26、66、88 発光層
66a 蛍光体粒子
66b バインダー
28、68、86a、86b 絶縁層
30、70、90 背面電極
32 表面保護層
100 2流体スプレー
102 液体供給部
104 気体供給部
120 石英製管状炉
122 石英製加熱通路
140 アルミナ製管状炉
142 アルミナ製加熱通路
124、144 原料供給口
126a、126b、146a、146b、146c 加熱装置
128a、128b、148a、148b、148c 加熱領域
130、150 排気口
132、152 カートリッジフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともコアと結晶性無機物質シェルとからなるコアシェル粒子の製造方法であって、
前記コアを前記結晶性無機物質シェルの原料の溶液に分散した分散液を霧化する霧化工程と、
前記霧化された分散液を乾燥することによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルの原料を被覆する乾燥工程と、
前記前記結晶性無機物質シェルの原料の分解温度以上の温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に無機物質仮シェルを形成する第1の熱処理工程と、
前記無機物質仮シェルが結晶化する温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルを形成する第2の熱処理工程と、
を有することを特徴とする、コアシェル粒子の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥工程と前記第1の熱処理工程とを、同一の熱処理装置により行なうことを特徴とする請求項1に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項3】
前記乾燥工程および/または前記第1の熱処理工程と、前記第2の熱処理工程とを、同一の熱処理装置により行なうことを特徴とする請求項1に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項4】
少なくともコアと結晶性無機物質シェルとからなるコアシェル粒子の製造方法であって、
前記コアおよび前記結晶性無機物質シェルと同一の構成金属元素を有しコアより十分小さい微粒子を分散した分散液を霧化する霧化工程と、
前記霧化された分散液を乾燥することによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルの原料の微粒子を被覆する乾燥工程と、
前記結晶性無機物質シェルの原料の微粒子同士が融着する温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に無機物質仮シェルを形成する第1の熱処理工程と、
前記無機物質仮シェルが結晶化する温度で熱処理を行なうことによって、前記コアの表面に前記結晶性無機物質シェルを形成する第2の熱処理工程と、
を有することを特徴とする、コアシェル粒子の製造方法。
【請求項5】
前記乾燥工程と前記第1の熱処理工程とを、同一の熱処理装置により行なうことを特徴とする請求項4に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項6】
前記乾燥工程および/または前記第1の熱処理工程と、前記第2の熱処理工程とを、同一の熱処理装置により行なうことを特徴とする請求項4に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項7】
前記結晶性無機物質シェルが蛍光体であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれかに記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項8】
前記蛍光体がエレクトロルミネッセンス蛍光体であることを特徴とする請求項7に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項9】
前記エレクトロルミネッセンス蛍光体がZnS:Mnであることを特徴とする請求項8に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項10】
前記エレクトロルミネッセンス蛍光体がZnSiO:Mnであることを特徴とする請求項8に記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項11】
前記コアが誘電率の大きな誘電体であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載のコアシェル粒子の製造方法。
【請求項12】
前記誘電体がBaTiOであることを特徴とする請求項11に記載のコアシェル粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−232919(P2006−232919A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47329(P2005−47329)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】