説明

コイルハウジング用樹脂組成物

【課題】流動直角方向の線膨張係数が小さく、断線の少ないコイルハウジング用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B)扁平断面ガラス繊維20〜100重量部、(C)難燃剤10〜50重量部および(D)難燃助剤1〜30重量部を配合してなることを特徴とするコイルハウジング用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性、高温時の低線膨張性に優れた、扁平断面ガラス繊維を含有するコイルハウジング用樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、引張、曲げの強度、弾性率などの機械的物性に優れ、しかも耐熱性、耐薬品性が良好であることから、電気電子部品、自動車用部品、建材部品、機械部品等に広く利用されている。中でもガラス繊維強化ポリアミド樹脂は、耐熱性、耐油性、強靭性に優れた特徴を有し、携帯電話やパソコン筐体等の電子機器部品の素材として広く使用されている。
【0003】
近年では、携帯電話やパソコン筐体等の成形品は、薄肉化、小型化、軽量化が求められる。このため、製品筐体の成形材料にも、高剛性、高靭性、さらに成形品の低ソリ性が不可欠とされている。これに対し、ポリアミド樹脂に扁平断面ガラス繊維を混合する検討がなされてきた。例えば、成形後の寸法変化が小さい樹脂組成物として、ポリアミド樹脂、無機充填剤、酸変性したポリオレフィン樹脂、臭素化ポリスチレン樹脂および三酸化アンチモンを配合してなるポリアミド樹脂組成物について、無機充填剤として断面が扁平形状であるガラス繊維等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、成形体の反りを低下する樹脂組成物として、ポリアミド樹脂、難燃剤、ガラス繊維および難燃助剤を含む難燃性ポリアミド組成物について、ガラス繊維の断面の異形比が3より大きいことが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
一方、コイルボビン等の電気・電子部品に好適な樹脂組成物として、ポリアミド樹脂、臭素系難燃剤、難燃助剤、酸変性エラストマーおよび流動性改良剤からなる難燃性ポリアミド樹脂組成物が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−168559号公報
【特許文献2】国際公開第2008/062755号
【特許文献3】特開平10−219103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
樹脂製ボビンに巻かれた銅線が樹脂で覆われた絶縁部材を金属製容器に収納したコイルハウジングでは、樹脂の流動直角方向の線膨張係数を低減することが求められる。特に車両用空調機のコンプレッサーに連結しているコイルハウジングでは、温度変化により樹脂製ボビンと銅線を覆う樹脂が膨張し、銅線が断線しやすい傾向がある。効率化を目的に銅線をボビンに密着するように巻くと、銅線に応力がかかった状態で巻かれることから、樹脂の膨張により、さらに断線しやすい。このため、上記特許文献3に開示された技術をコイルハウジングに適用しても、樹脂組成物の流動直角方向の線膨張係数が大きく、断線が生じやすい課題があった。
【0007】
本発明は、コイルハウジングの断線を抑制することができる、流動直角方向の線膨張係数を低減したコイルハウジング用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するために鋭意検討した結果、次のような手段を採用するものである。
(1)(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B)扁平断面ガラス繊維20〜100重量部、(C)難燃剤10〜50重量部および(D)難燃助剤1〜30重量部を配合してなることを特徴とするコイルハウジング用樹脂組成物、
(2)(B)扁平断面ガラス繊維の扁平率が2〜10であることを特徴とする(1)記載のコイルハウジング用樹脂組成物、
(3)(A)ポリアミド樹脂がポリカプロアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマーおよびポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミドコポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)または(2)記載のコイルハウジング用樹脂組成物、
(4)(C)難燃剤が臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、ジエチルホスフィン酸金属塩およびポリリン酸メラミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか記載のコイルハウジング用樹脂組成物
(5)(D)難燃助剤が三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛およびリン酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか記載のコイルハウジング用樹脂組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、−30℃〜140℃の温度範囲の使用環境において、流動直角方向の線膨張係数が小さく、コイルハウジングの断線を低減することができるコイルハウジング用樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のコイルハウジング用樹脂組成物は、(A)ポリアミド樹脂、(B)扁平断面ガラス繊維、(C)難燃剤および(D)難燃助剤を配合してなる。コイルハウジングとは、樹脂製ボビンなどのボビンに巻かれた銅線(巻線)と、巻線を覆う樹脂などの絶縁部材とを、金属製等の容器に収容した構造を指す。本発明のコイルハウジング用樹脂組成物は、特にコイルハウジングのボビンや絶縁部材として好ましく用いられる。
【0011】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂としては、例えば、環状ラクタムの開環重合物、アミノカルボン酸の重縮合物、二塩基酸とジアミンとの重縮合物などが挙げられる。具体的には、ポリカプロアミド(ナイロン6)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ナイロン56)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ナイロン612)、ポリウンデカンアミド(ナイロン11)、ポリドデカンアミド(ナイロン12)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー(ナイロン6/66)、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/6I)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミドコポリマー(ナイロン6T/610)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー(ナイロン6T/12)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ナイロン66/6T/6I)、ポリキシレンアジパミド(ナイロンXD6)、ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー(ナイロン6T/5MT)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)およびこれらの共重合体を挙げることができる。これらを2種以上用いてもよい。特に本発明に好適な(A)ポリアミド樹脂としてはナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン66/6T、ナイロン6T/610を挙げることができる。ナイロン66またはナイロン66/6Tがより好ましい。
【0012】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂は、溶媒として96%硫酸を使用したISO307に準拠して測定した粘度数が、90ml〜200ml/gの範囲であることが好ましく、流動性や成形品の機械特性を向上させることができる。100〜150ml/gがより好ましい。
【0013】
本発明に用いられる(A)ポリアミド樹脂の重合方法は特に限定されず、溶融重合、界面重合、溶液重合、塊状重合、固相重合、およびこれらの方法を組み合わせた方法を利用することができる。通常、溶融重合が好ましく用いられる。
【0014】
本発明に用いられる(B)扁平断面ガラス繊維は、扁平率が2以上であることが好ましく、樹脂組成物から成形品の靱性および寸法精度が向上する。このため、コイルハウジングにおける断線をより低減することができる。一方、10以下が好ましく、樹脂組成物から得られる成形品の機械強度が向上する。6以下がより好ましい。なお、扁平率は、ガラス繊維の断面を顕微鏡で400倍に拡大して観察し、10サンプルについて長径(最長径)と短径(最短径)の長さを測定し、長径の長さを短径の長さで除することにより求めることができる。(B)扁平断面ガラス繊維の長径は10〜50μmであることが好ましく、15〜35μmであることがさらに好ましい。
【0015】
(B)扁平断面ガラス繊維の繊維長に特に制限はないが、製造上の利便性の観点から、平均繊維長が1〜6mmであることが好ましい。(B)扁平断面ガラス繊維の形態は、混合時の利便性の観点などから、チョップドストランドの形態のものを好適に用いることができる。
【0016】
また、(B)扁平断面ガラス繊維は、公知のカップリング剤(例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など)、その他の表面処理剤を用いて、表面処理されていることが好ましく、(A)ポリアミド樹脂との親和性を高めて密着性を向上させ、成形品の機械強度をより向上させることができる。カップリング剤または表面処理剤の含有量は、(B)扁平断面ガラス繊維100重量部に対して0.1〜2重量部が好ましい。0.1重量部以上とすることにより、機械強度の向上効果が十分に奏される。一方、2重量部以下とすることにより、成形加工時ガスの発生を抑制することができる。また、(B)扁平断面ガラス繊維は、エチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で被膜あるいは集束されていてもよく、(A)ポリアミド樹脂と(B)扁平断面ガラス繊維を溶融混練する際の作業性を向上させることができる。
【0017】
本発明において、(B)扁平断面ガラス繊維の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して20〜100重量部である。(B)扁平断面ガラス繊維の配合量が20重量部未満であると、コイルハウジング用途に必要な機械強度が得られない。また、流動直角方向における線膨張係数低減効果が十分に奏されないことから、コイルハウジングにおける断線が生じやすい。40重量部以上が好ましい。一方、100重量部を超えると成形加工時の表面外観が悪化する。80重量部以下が好ましい。
【0018】
本発明に用いられる(C)難燃剤としては、例えば、臭素化合物や含臭素ポリマーなどのハロゲン系難燃剤、ホスフィン酸金属塩やトリアジン類などの非ハロゲン系難燃剤などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
【0019】
ハロゲン系難燃剤としては、芳香族臭素置換体、脂肪族臭素置換体等を挙げることができる。具体的には、テトラブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル等のジフェニルエーテルの臭素化合物や、トリフェニレンオキサイドの臭素化物、テトラブロモビスフェノールA、トリブロモフェノール、トリス(トリブロモフェニル)ホスファイト、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモシクロオクタン、テトラブロモ無水フタル酸とジアミンのイミド縮合物、ペンタブロモトルエン、ヘキサブロモベンゼン、トリス(トリブロモフェノキシ)シアヌレート、1,2−ビス(ペンタブロモフェノキシ)エタン等や、テトラブロモビスフェノールA、ジグリシジルエーテルのポリマーやトリブロモフェノールの付加物、テトラブロモビスフェノールAのポリカーボネート、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル等の含臭素ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、臭素化ポリスチレンまたは臭素化ポリフェニレンエーテルが好ましく、臭素化ポリフェニレンエーテルがより好ましい。
【0020】
ホスフィン酸金属塩としては、具体的には、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸カルシウム、メチル−n−プロピルホスフィン酸アルミニウム、メタンビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、メタンビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、ベンゼン−1,4−ビス(メチルホスフィン酸)カルシウム、ベンゼン−1,4−ビス(メチルホスフィン酸)アルミニウム、メチルフェニルホスフィン酸カルシウム、メチルフェニルホスフィン酸アルミニウム、ジフェニルホスフィン酸カルシウム、ジフェニルホスフィン酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、ジエチルホスフィン酸金属塩が好ましく、ジエチルホスフィン酸アルミニウムがより好ましい。
【0021】
トリアジン類の塩としては、例えば、シアヌル酸メラミン・メラム・メレム複塩、リン酸メラミン類(ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩など)、硫酸メラミン類(硫酸メラミン、硫酸ジメラミン、ピロ硫酸ジメラムなど)、スルホン酸メラミン類(メタンスルホン酸メラミン、メタンスルホン酸メラム、メタンスルホン酸メレム、メタンスルホン酸メラミン・メラム・メレム複塩、トルエンスルホン酸メラミン、トルエンスルホン酸メラム、トルエンスルホン酸メラミン・メラム・メレム複塩など)などが挙げられる。これらの中でも、ポリリン酸メラミンが好ましい。
【0022】
本発明において、(C)難燃剤の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して10〜50重量部である。(C)難燃剤の配合量が10重量部未満では難燃性が不十分となる。20重量部以上が好ましい。一方、50重量部を超えるとコイルハウジング用途に必要な機械特性が低下する。40重量部以下が好ましい。
【0023】
本発明に用いられる(D)難燃助剤としては、例えば、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、リン酸亜鉛およびモリブデン酸カルシウム亜鉛などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、三酸化アンチモンまたはホウ酸亜鉛が好ましい。
【0024】
本発明において、(D)難燃助剤の配合量は、(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して1〜30重量部である。(D)難燃助剤の配合量が1重量部未満では難燃性が不十分となる。2重量部以上が好ましい。一方、30重量部を超えるとコイルハウジング用途に必要な機械特性が低下する。15重量部以下が好ましい。
【0025】
本発明における樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、長期耐熱性を向上させるために銅化合物を含有することが好ましい。銅化合物の具体的な例としては、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、ヨウ化第一銅、ヨウ化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅、リン酸銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、サリチル酸第二銅、ステアリン酸第二銅、安息香酸第二銅および前記無機ハロゲン化銅とキシリレンジアミン、2−メルカプトベンズイミダゾール、ベンズイミダゾールなどの銅化合物などが挙げられる。なかでも1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第一銅、ヨウ化第一銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、臭化ナトリウムおよびヨウ化ナトリウムを挙げることができ、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
【0026】
また、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を含有してもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤および滑剤(モンタン酸およびその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素およびポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートなどの非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、他の重合体等を挙げることができる。
【0027】
本発明のコイルハウジング用樹脂組成物を得る方法としては、前記各成分を溶融混練する方法を挙げることができる。たとえば、2軸押出機のメインフィーダーから(A)ポリアミド樹脂、(C)難燃剤および(D)難燃助剤を供給し、サイドフィーダーから(B)扁平断面ガラス繊維を供給し、溶融混練する方法が挙げられる。
【0028】
また、本発明のポリアミド樹脂組成物を成形する方法は特に制限されず、射出成形、射出圧縮成形、プレス成形、押出成形など公知の方法を用いることができるが、形状自由度、生産性の点で射出成形、射出圧縮成形が好ましい。
【実施例】
【0029】
実施例・比較例における各特性の評価は以下の方法により行った。
【0030】
(1)引張強度、引張伸び
試験片:ISO294−1に準処し、厚さ4mmの多目的試験片を成形した。
試験条件:ISO527に準処し、測定を行った。引張速度50mm/分、標点間距離115mm。
試験雰囲気:気温23℃、湿度50%RH。
【0031】
(2)曲げ強度、曲げ弾性率
試験片:ISO294−1に準処し、厚さ4mmの多目的試験片を成形した。
試験条件:ISO178に準処し、測定を行った。降伏速度2mm/分、スパン間距離64mm。
試験雰囲気:気温23℃、湿度50%RH。
【0032】
(3)ノッチ付シャルピー衝撃強度
試験片:ISO294−1に準処し、厚さ4mmの多目的試験片を成形した。この多目的試験片の中央部分より、80mm×10mm×4mmの試験片を切削加工し、得られた試験片を、JISK7144に準処しノッチ加工することで衝撃試験片を得た。
試験条件:ISO179に準処し、測定を行った。
試験雰囲気:気温23℃、−30℃、湿度50%RH。
【0033】
(4)難燃性
試験片:長さ125mm、幅12.7mm、厚さ0.4mmの試験片を射出成形した。
試験条件:UL(米国Under WriterLaboratories Incで定められた規格)の方法に従って測定した。
【0034】
(5)線膨張係数
試験片:80mm×80mm×3mmの角板(フィルムゲート)を射出成形し、得られた角板の中央部から、流動方向(MD)12mm、流動直角方向(TD)5mmの試験片(12mm×5mm×3mm)を切り出した。
試験条件:−30℃から140℃まで、5℃/分の速度で昇温し、その寸法変化から線膨張係数を求めた。
【0035】
(6)断線試験
試験片:内径50mm、幅15mm、肉厚2mmのボビンに銅線(φ0.5mm)を30周巻いたものを、断面コの字形状した2重リング形状の鉄製容器(コの字断面の内寸:15mm×15mm、肉厚:1mm)の内部に収納した。その上から、各実施例および比較例で得られた樹脂組成物をオーバーモールドして充填した。
試験条件:−30℃(1時間)〜140℃(1時間)のヒートサイクル試験を100サイクル実施後、1mAの電流を流し、テスターを用いて断線の有無を評価した。
【0036】
(7)成形品の表面外観
試験片:80mm×80mm×3mmの角板(フィルムゲート)の試験片を射出成形し、その表面を目視にて評価した。ガラス繊維の浮きが観察されたものは不良と判断し、ガラス繊維の浮きが認められないものは良好と判断した。
【0037】
実施例・比較例において用いた材料を以下に示す。
<ポリアミド樹脂>
A1 ポリアミド66樹脂:融点265℃、粘度数138ml/g
A2 ポリアミド6T/66(80/20重量%)樹脂:融点265℃、粘度数120ml/g
<扁平断面ガラス繊維>
B1 扁平断面ガラス繊維:日東紡績株式会社製 CSG3PA−820S(扁平率4、長径28μm、短径7μm、繊維長3mm、表面処理シランカップリング剤)
<円形断面ガラス繊維>
B2 円形断面ガラス繊維:日本電気硝子株式会社製 T275H(断面の直径10.5μm、繊維長3mm、表面処理シランカップリング剤)
<難燃剤>
C1 臭素化ポリフェニレンエーテル:第一工業製薬社製 ピロガードSR460−B
C2 ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ポリリン酸メラミン、ホウ酸亜鉛:
クラリアントジャパン社製 OP1312
<難燃助剤>
D1 三酸化アンチモン:日本精鉱社製 PATOX−MK
<銅化合物>
E1 ヨウ化第一銅:日本化学産業株式会社製 ヨウ化第一銅。
【0038】
実施例1〜4、比較例1〜4
Werner−Pfleiderer社製二軸押出機ZSK−57を用いて、表1に示す組成でメインフィーダーから(A)ポリアミド樹脂、(C)難燃剤および(D)難燃助剤を供給し、サイドフィーダーからガラス繊維を供給し、樹脂溶融温度を290℃とし、スクリュー回転を200rpmとして溶融混練後ペレット化した。得られた樹脂組成物のペレットを80℃、12時間の条件で真空乾燥した。乾燥したペレットを用いて、日精樹脂工業(株)社製の射出成形機NEX1000を用いて、シリンダー温度290℃、金型温度80℃の条件で成形し、前記(1)〜(7)に示す各試験片を得た。前記(1)〜(7)に示す方法で各特性を評価した結果は表1に示すとおりであった。
【0039】
【表1】

【0040】
実施例1〜4および比較例1〜4の結果より、本発明のコイルハウジング用樹脂組成物は、流動直角方向の線膨張係数が小さく、コイルハウジングにおける断線の少ないものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミド樹脂100重量部に対して、(B)扁平断面ガラス繊維20〜100重量部、(C)難燃剤10〜50重量部および(D)難燃助剤1〜30重量部を配合してなることを特徴とするコイルハウジング用樹脂組成物。
【請求項2】
(B)扁平断面ガラス繊維の扁平率が2〜10であることを特徴とする請求項1記載のコイルハウジング用樹脂組成物。
【請求項3】
(A)ポリアミド樹脂がポリカプロアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマーおよびポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンセバカミドコポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2記載のコイルハウジング用樹脂組成物。
【請求項4】
(C)難燃剤が臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリスチレン、ジエチルホスフィン酸金属塩およびポリリン酸メラミンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載のコイルハウジング用樹脂組成物。
【請求項5】
(D)難燃助剤が三酸化アンチモン、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛およびリン酸亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のコイルハウジング用樹脂組成物。

【公開番号】特開2012−211270(P2012−211270A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78005(P2011−78005)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】