説明

コイン検出器およびコイン処理装置

【課題】組付けが容易であり、各検出コイルの位置調整を簡単にできるコイン検出器を提案すること。
【解決手段】コイン検出器20は、コイル回路基板21と、3個の検出コイル22〜24と、面外方向の変形可能なコイル支持シート30を備え、ユニット化されている。コイル支持シート30はコイル回路基板21の基板表面21aに接着固定された基板取り付け部分31と、ここから分離した状態で延びている3枚の分離片32〜34を備え、各分離片32〜34の先端側のコイル取り付け部分32b〜34bの表面に各検出コイル22〜24が固定されている。分離片32〜34の連結部分32a〜34aに形成されているミシン目32c〜34cに沿って分離片32〜34を折り曲げることにより各検出コイル22〜24の高さ位置を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技台用両替機、自動販売機などに搭載されるコイン処理装置に関し、特に、そのコイン通路を通過するコインの真偽、種類などを検出するためのコイン検出器の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コイン処理装置に組み込まれるコイン検出器としては、機械式に比べて検出精度が高い検出コイル(誘導コイル)を備えた電子式のものが一般に用いられている。このようなコイン検出器では、コイン処理装置のコイン通路に取り付けたコイン検出用の検出コイルを励磁してコイン通路部分に電磁場を形成し、ここを通過するコインと電磁場の相互作用によって生ずる電気的変化量を検出し、これに基づき、通過したコインの真偽、種類などを検出している。一般に3個の検出コイルが配置され、それぞれを異なる周波数で励磁して、通過するコインの外径、材質、厚さを検出するようにしている。
【0003】
これらの検出コイルを個別にコイン処理装置のコイン通路の側板部分に取り付け、各検出コイルのリード線をコイル回路基板の側の接続端子(ランド)にハンダ付けする作業は煩雑である。スペーサを用いて高さを合わせた状態で検出コイルをコイル回路基板に予め搭載してユニット化しておき、このコイル回路基板をコイン通路の側板部分に取り付けるようにすれば、コイン検出器の組付け、配線作業が容易になる。特許文献1には、基板に検出コイルを予め取り付けてユニット化した構成が開示されている。
【0004】
しかし、この場合には、コイル回路基板に対する各検出センサの取り付け誤差が、コイン検出器をコイン通路の側板部分に取り付けた場合における検出コイルと通過コインの位置関係誤差となって現れ、検出精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、検出コイルをフレキシブルプリント配線基板(FPC)に搭載し、当該FPCを撓めることにより、各検出コイルを、通過コインに対して適切な位置関係となるように取り付けるようにすればよい。このようにすれば、FPCに形成されている配線を利用して検出コイルをコイル回路基板の側の回路に接続できるので、リード端子を引き出してコイル回路基板に形成した対応する端子部分にハンダ付けする結線作業が不要となり、また、各検出コイルを通過コインに対して精度良く位置決めできる。特許文献2にはかかる構成のセンサユニットが開示されている。
【特許文献1】特開2002−319052号公報
【特許文献2】特開2002−83336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、FPCは一般的な回路基板に比べて高価であり、コイン検出器のコスト高を招いてしまう。また、FPCに搭載されている検出コイルの位置調整のために繰り返しFPCを折り曲げるなどの操作を行うと、プリント配線部分が断線、剥離するなどの危険性もある。
【0007】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、コスト高を招くことなく、しかも、断線などの弊害を伴うことなく各検出コイルの位置調整を行うことのできるコイン検出器、および当該コイン検出器が組み込まれたコイン処理装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のコイン検出器は、コインを検出するための検出コイルと、コイル回路基板と、前記コイル回路基板に固定されている基板取り付け部分、前記検出コイルが取り付けられているコイル取り付け部分、および、これら基板取り付け部分およびコイル取り付け部分の間に位置している面外方向に変形可能な連結部分を備えたコイル支持シートとを有していることを特徴としている。
【0009】
本発明では、面外方向に変形可能な連結部分を備えたコイル支持シートを用いて、検出コイルの位置調整が可能な構成としてある。コイル支持シートは、面外方向に変形させることのできる素材であればよく、検出コイルとコイル回路基板の側の回路とを結線するためのプリンタ配線部分を表面に形成しておく必要もない。よって、コイル支持シートは安価な素材によって安価に製造できるので、コイル検出器のコスト高を招くことがない。また、プリント配線部分の切断などを気にすることなく、コイル支持シートを撓め、あるいは折り曲げて、そこに取り付けられている検出コイルの位置を調整できる。
【0010】
ここで、前記コイル支持シートの前記連結部分を簡単に面外方向に変形させることができるようにするためには、当該連結部分に面外方向に折り曲げ可能なミシン目、あるいは薄肉の折り目を付けておけばよい。
【0011】
また、コイン検出器は一般には複数の検出コイルを備えており、この場合、前記コイル支持シートは、前記基板取り付け部分と、当該基板取り付け部分から分離した状態で延びている前記検出コイルの個数に対応する数の分離片とを備え、各分離片には前記連結部分および前記コイル取り付け部分が形成されている構成とすればよい。
【0012】
次に、本発明のコイン処理装置は、コイン通路と、前記コイン通路を通過するコインを検出するためのコイン検出器とを有し、コイン検出器として上記構成のものを採用したことを特徴としている。
【0013】
ここで、前記コイン通路の側面部分に、前記コイン検出ユニットの前記コイル回路基板を固定するための基板固定部と、前記検出コイルを装着するためのコイル装着部を形成し、前記コイン検出器の前記コイル回路基板を前記基板固定部に取り付けた後に、前記コイル支持シートの前記連結部を面外方向に変形させて、各検出コイルを前記コイル装着部に対して位置決めして固定すればよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコイン検出器は、面外方向に変形可能な連結部分を備えたコイル支持シートによって、検出コイルが位置調整可能な状態でコイル回路基板に連結されてユニット化されている。
【0015】
したがって、各検出コイルおよびコイル回路基板を個別にコイン処理装置のコイン通路に取り付けて、これらの間を結線する作業が不要であり、また、コイル支持シートの連結部分を面外方向に変形させることにより、各検出コイルの位置を、コイン通路を通過するコインに対して適切な位置関係となるように調整して取り付けることができ、検出精度も維持される。
【0016】
また、本発明によれば、FPCなどの高価なシートを用いる必要がないのでコイン検出器のコスト高を招くことがない。さらには、コイル支持シートの連結部分を繰り返し折り撓めても断線などの弊害が発生しないので、各検出コイルの位置調整も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、図面を参照して、本発明を適用したコイン処理装置の実施の形態を説明する。
【0018】
図1は本実施の形態に係るコイン処理装置の概略構成を示す説明図であり、(a)は前面側から見た場合のものであり、(b)は背面側から見た場合のものである。コイン処理装置1は、例えば500円硬貨を選別するためのものであり、偏平な直方体形状をした装置ケース2の上端面に形成した投入口3から受け入れられたコインC1を内部のコイン通路4に通し、当該コイン通路4の途中に配置されているコイン検出器20によって投入コインの真偽を判別するようになっている。投入コインC1が真のコインC2である場合には、コイン検出器20の下流側のコイン通路部分に配置されている振り分け機構5により、当該コインC1が装置ケース2の下端面に形成したコイン落下口6から不図示のコイン金庫に向けて送り出される。投入コインC1が偽物のコインC3の場合には、当該コインC1は、振り分け機構5によって装置ケース2の下端面に形成したコイン排出・返却口7に導かれ、そこから排出されるようになっている。
【0019】
装置ケース2は、相互に重ね合わせた前面板(図示せず)と背面板8から構成されており、これらの間にコイン通路4が形成されている。コイン通路4における投入口3に連続して横方に緩い角度で傾斜している通路部分を規定している背面板8の背面側に、コイン検出器20が取り付けられている。
【0020】
図2(a)はコイン処理装置1に取り付ける前のコイン検出器20を示す平面図であり、図2(b)はその側面図であり、図2(c)〜図2(e)はそのA−A線、B−B線およびC−C線で切断した部分の断面図である。
【0021】
これらの図に示すように、コイン検出器20は、細長い長方形のコイル回路基板21と、3個の検出コイル(誘導コイル)22〜24と、これらの検出コイル22〜24が取り付けられているコイル支持シート30を備えている。検出コイルの個数は用途に応じて異なり、1個の場合、2個あるいは4個以上の場合もある。
【0022】
コイル回路基板21はガラス入りエポキシ樹脂を基材に銅等の導体で回路構成した基板であり、その長辺方向の一方の端部表面には結線用の接続端子25が形成されており、ここには、外部配線用の配線基板26(例えばFPC又はフレキシブルフラットケーブル(FFC))が接続されている。また、コイル回路基板21の一方の長辺縁の中央部分には、その基板表面21aの側にコイル支持シート30が接着固定されている。
【0023】
コイル支持シート30は面外方向に折り曲げ可能な可撓性のある薄いプラスチックシートであり、コイル回路基板21に接着固定されている細長い長方形の基板取り付け部分31を備えており、この基板取り付け部分31の長辺縁からは、相互に分離された状態で所定幅の3枚の分離片32〜34が延びている。各分離片32〜34は、基板取り付け部分31に連続している連結部分32a〜34aと、これらの先端側に形成されているコイル取り付け部分32b〜34bとを備えている。また、各分離片32〜34における連結部分32a〜34aには、それらの幅方向に折り曲げ用のミシン目32c〜34cが付いている。ミシン目の代わりに、薄肉状の折り目線でもよい。また、複数本の折り目を付けても良い。
【0024】
最も幅の広い分離片32のコイル取り付け部分32bの表面には、外径および厚さが最も大きな検出コイル22が垂直な姿勢で接着固定されている。同様に、最も幅が狭い分離片33のコイル取り付け部分33bの表面には、外径および厚さが最も小さな検出コイル23が垂直な姿勢で接着固定され、残りの分離片34のコイル取り付け部分34bには、検出コイル24が垂直な姿勢で接着固定されている。また、各検出コイル22〜24の各コイル巻き線のリード端子はそれぞれ、対応するコイル回路基板21上の端子部分に結線されている。
【0025】
このように、本例のコイン検出器20は、予め、コイル回路基板21に、コイル支持シート30を介して検出コイル22〜24が取り付けられ、各検出コイル22〜24のリード端子も結線されてユニット化されている。また、コイル支持シート30は平面状のものであり、したがって、図2(c)〜(e)から分かるように、大きさの異なる各検出コイル22〜24の先端面の高さ位置がコイル回路基板21に対して、相互に異なった状態となっている。
【0026】
次に、図3も参照して、コイン検出器20をコイン処理装置1の背面板8の背面側の部位に取り付ける手順を説明する。
【0027】
図3(a)はコイン処理装置1の背面板8の背面側に取り付けられた状態のコイン検出器20の平面図であり、図3(b)はその側面図であり、図3(c)ないし図3(e)は(a)のA−A線、B−B線およびC−C線で切断した部分の断面図である。また、図3(f)はそのコイル部分の接着固定状態を示す断面図である。
【0028】
まず、コイン処理装置1の背面板8の背面には、図1(b)、図3(b)に示すように、コイン検出器20のコイル回路基板21を固定するための基板固定部41と、各検出コイル22〜24のコイル装着部42〜44とが設けられている。コイル回路基板21は、基板固定部41に対して基板表面21aが反対側を向いた状態で固定される。コイル装着部42〜44は、各検出コイル22〜24を装着するために背面板8に形成された凹部であり、これらの凹部は同一深さであり、これらの凹部に検出コイル22〜24を装着することにより各検出コイル22〜24は、コイン通路4を通過するコインC1に対して一定の位置関係となる。
【0029】
コイン検出器20の取り付けに際しては、図3(c)〜(e)に示すように、各検出コイル22〜24を支持しているコイル支持シート30の分離片32〜34を、コイル回路基板21の縁に沿った根元の位置で折り曲げると共に、各ミシン目32c〜34cに沿って折り曲げることにより、各検出コイル22〜24の基板表面21aからの高さを揃える。本例では、分離片32の根元を基板の縁に沿って基板表面側に折り曲げると共に、ミシン目32cを直角に折り曲げ、分離片33および34の根元を基板の縁に沿って基板表面とは反対側に折り曲げると共に、各ミシン目33c、34cを直角に折り曲げて、これらの検出コイルの高さを揃えている。
【0030】
この後は、コイン検出器20のコイル回路基板21を背面板8の基板固定部41に固定する。次に、各検出コイル22〜24を対応するコイル装着部42〜44に装着して、各検出コイル22〜24を位置決めする。図3(b)にはこの状態が示されている。次に、図3(f)に示すように、各検出コイル22〜24を包み込む状態で接着剤45によって各検出コイル22〜24をコイル装着部42〜44に固定する。
【0031】
このように、本例のコイン検出器20は、面外方向に変形可能な連結部分32a〜34aを備えたコイル支持シート30によって、検出コイル22〜24が位置調整可能な状態でコイル回路基板21に連結され、各検出コイル22〜24とコイル回路基板21の側との結線も行われた状態でユニット化されている。
【0032】
したがって、各検出コイル22〜24およびコイル回路基板21を個別にコイン処理装置1の背面板8に取り付けて、これらの間を結線する作業が不要なので、組付け作業が容易である。また、コイル支持シート30の分離片32〜34をミシン目32c〜34cに沿って面外方向に折り曲げることにより、各検出コイル22〜24の位置を、コイン通路4を通過するコインC1に対して適切な位置関係となるように調整して取り付け作業も簡単にできる。
【0033】
特に、本例では、FPCなどの高価なシートを用いる必要がなく、折り曲げ可能な安価な素材からなるコイル支持シート30を用いれば良いので、コイン検出器20を安価に製造できる。また、検出コイル22〜24の位置調整のために、コイル支持シート30の連結部分32a〜34aを繰り返し折り曲げても、FPCとは異なり断線のおそれも無いので、各検出コイルの位置調整も容易であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を適用したコイン処理装置の内部構成を示す説明図である。
【図2】(a)は図1のコイン処理装置に取り付ける前のコイン検出器を示す平面図であり、(b)はその側面図であり、(c)〜(e)はそのA−A線、B−B線およびC−C線で切断した部分の断面図である。
【図3】(a)はコイン処理装置の背面板の背面側に取り付けられた状態のコイン検出器の平面図であり、(b)はその側面図であり、(c)ないし(e)は(a)のA−A線、B−B線およびC−C線で切断した部分の断面図であり、(f)はそのコイル部分の接着固定状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
1 コイン処理装置
2 装置ケース
3 投入口
4 コイン通路
5 振り分け機構
6 コイン落下口
7 コイン排出・返却口
8 背面板
20 コイン検出器
21 コイル回路基板
21a 基板表面
22〜24 検出コイル
30 コイル支持シート
31 基板取り付け部分
32〜34 分離片
32a〜34a 連結部分
32b〜34b コイル取り付け部分
32c〜34c ミシン目
41 基板固定部
42〜44 コイル装着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コインを検出するための検出コイルと、
コイル回路基板と、
前記コイル回路基板に固定されている基板取り付け部分、前記検出コイルが取り付けられているコイル取り付け部分、および、これら基板取り付け部分およびコイル取り付け部分の間に位置している面外方向に変形可能な連結部分を備えたコイル支持シートとを有していることを特徴とするコイン検出器。
【請求項2】
請求項1において、
前記コイル支持シートの前記連結部分には、当該連結部分を面外方向に折り曲げ可能なミシン目、あるいは薄肉の折り目が付けられていることを特徴とするコイン検出器。
【請求項3】
請求項2において、
複数の前記検出コイルを備え、
前記コイル支持シートは、前記基板取り付け部分と、当該基板取り付け部分から分離した状態で延びている前記検出コイルの個数に対応する枚数の分離片とを備えており、
各分離片には前記連結部分および前記コイル取り付け部分が形成されていることを特徴とするコイン検出器。
【請求項4】
コイン通路と、
前記コイン通路を通過するコインを検出するためのコイン検出器とを有し、
前記コイン検出器は請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載のコイン検出器であることを特徴とするコイン処理装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記コイン通路の側面部分には、前記コイン検出器の前記コイル回路基板を固定するための基板固定部と、前記検出コイルを装着するためのコイル装着部とが形成されており、
前記コイル支持シートの前記連結部分を面外方向に変形させて、前記検出コイルを前記コイル装着部に対して位置決め固定することを特徴とするコイン処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−156998(P2007−156998A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354039(P2005−354039)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000128946)マミヤ・オーピー株式会社 (122)
【Fターム(参考)】