コロイド状導電性ポリマーおよび炭素を含む組成物
本発明は、コロイド状導電性ポリマーと炭素との混合物を含んでなる、コーティングを生成できる組成物類、それらの製法、および種々の電子装置、電源などに使用される高容量電気二重層キャパシタにおけるそれらの使用に関するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(固有)導電性ポリマー(ICP)および炭素材料を含む導電性物質、それらの製法、および種々の電子装置や電源などに使われる高容量の電気二重層キャパシタへの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性物質は公知であり、多くの異なる形態や用途で使用されている。炭素をベースとする導電性物質は、異なる物理的および化学的形態、形状、並びに組成で提供されている。純粋またはほぼ純粋な炭素は、カーボンブラック(これも主として酸素をベースとする不純物を含む)、グラファイト(純粋炭素)、カーボンナノチューブ類およびフラーレン類などの形で提供される。導電性材料のもう一つのグループは、幾つかの重要な用途を有している(固有)導電性ポリマー(ICP)である。
【0003】
これら2つのグループの導電性材料は、少なくとも一つの共通の性質である導電性を有している。その他の特性は、これら材料群に相互に固有であることも、それぞれの群内で大きく変動することもあり得る。例えば、グラファイトの粒子サイズは、数ミクロンから数十ミクロンの範囲であるが、フラーレン類のそれはオングストロームの範囲である。カーボンブラックおよびカーボンナノチューブの比表面積は、約1000m2/gという大きい数値を示すが、グラファイトのそれは数m2/gの範囲である。導電性ポリマーの代表の一つであるポリアニリンは、豊富なレドックス化学作用を特徴とし、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)(PEDTとも呼ばれる)は、中程度または低い再現性のレドックス化学作用を有する。その一方でグラファイトまたはカーボンブラックは、可逆的レドックス化学作用を示さない。
【0004】
従来、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、またはそれらの誘導体類のような導電性ポリマーと、炭素材料(カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブおよびフラーレン)とを組み合わせることが試みられている。これらの材料の単純な混合物は、顕著なまたは再現性のある有益性を何ら与えず、そのため導電性ポリマーとカーボンブラックとの組合わせ、または導電性ポリマーとカーボンナノチューブとの組合わせに適した商業的または技術的用途、化学的プロセスが広く研究されることはなかった。例えば、エオニックス(Eeonyx)社は、表面にポリアニリンを重合させたカーボンブラックを開発製品として上市した(エオノマー(Eeonomer))。ドゥ(G.Du)、エプスタイン(A.Epstein)、ライマー(K.Reimer):1996年3月、米国物理学会ミーティング、M23部会、M23.09の発表を参照されたい。実験用化学物質の供給社であるアルドリッチ(Aldrich)は、このような化学的に製造された混合物をカタログ上で広告しているが、この種の製品が興味をそそるような利益を提供することはなかった。
【0005】
カーボンブラック/ポリアニリン混合物が興味深い技術的利益を与え得る分野の一つは、いわゆる“スーパーキャパシタ”(しばしば“二重層”、または“レドックスキャパシタ”とも呼ばれる)分野である。この分野には、炭素と導電性ポリマーとを混合したり、または混合物の形で提供したりするという刊行物が非常に多い。
【0006】
このために主に次の2種類の混合法が使用される:
カーボンブラックおよびポリアニリンの粉末をボールミル粉砕によって単純に混合する(米国特許出願公開2002/0114128)、またはJournal of Power Sources、11、2003、185−190、および Journal of the Electrochemical Society、148、10、2001、A1130−A1134に開示されているように、ポリアニリンまたはポリチオフェン誘導体をカーボンブラック粉末と混合する方法で単純に混合する。しかし特有の混合手段は開示されていない。
カーボンブラック表面上で、種々の導電性ポリマーを化学的または電気化学的に重合する。
【0007】
後者の方法は、特許および科学文献において広く研究されてきた。欧州特許出願1329918号では、炭素と、電気化学的に重合された導電性ポリマーであるポリアニリンまたはポリピロールとの負極複合体について報告されている。正極は鉛製である。上記導電性ポリマーの最適含有量は10−15重量%であることが判明した。この材料を使用して作られたキャパシタは、非分極性の鉛製正極と分極性の負極とを含む電極複合体を備えている。
【0008】
米国特許出願2002/0089807号には、高多孔性カーボンブラック材料上で化学的または電気化学的手段によって直接重合された固有導電性ポリマーが開示されている。ポリアクリロニトリルから作製された炭素エアロゲル上におけるポリアニリンの電気化学的重合がJournal of Applied Electrochemistry、33、465−473、2003に開示されている。この方法はJournal of Power Sources、117、273−282、2003、および文献10、Carbon、41、2865−2871、2003に開示された活性多孔性炭素上におけるポリアニリンの電気化学的重合に相当する。Conference Proceedings of ANTEC ’98、Vol2、1197ff,1998において、著者らは、白金集電支持体上の高表面積炭素フィルム上におけるポリエチレンジオキシチオフェンの重合を報告している。同じ出版物に、同じタイプの炭素フィルム上でヘキサフルオロ−イソプロパノール溶液からポリアニリンをキャストしたという報告がある。
【0009】
Electrochimica Acta Vol.41、No.1、21−26、1996では、対称性または非対称性電極構造における種々のレドックス・スーパーキャパシタが開示されている;ここではポリピロールまたはポリチオフェン誘導体のような導電性ポリマー類を用い、米国特許第5,527,640号明細書、1996年、に用いられた方法に相当する方法、すなわちポリチオフェン誘導体を炭素基質上で電気化学的手段によって重合する方法によって上記基質上で重合している。
【0010】
上述のように、カーボンブラック/導電性ポリマー混合物は、いわゆる“スーパーキャパシタ”に使用するために調製されることが多かった。このようなキャパシタ類は“二重層キャパシタ”、“電気化学的”または“電気二重層キャパシタ”または“レドックスキャパシタ”と呼ばれることも多く、“擬似容量キャパシタ”と呼ばれることもある。
【0011】
二重層キャパシタは、一般的に2つの電極(少なくともその1つは、約100〜1000m2/g、またはそれ以上の高比表面積を有する多孔質炭素材料を、集電板にコーティングして得られる)が互いに対向して配置されるとともに、これら電極間にセパレータが配置されたエネルギーデバイスである。電解質溶液の存在下で電極間に電圧が印加されると、少なくとも一方の電極上に電気二重層が生成し、そこからエネルギーが取り出され得る。電極材料として多孔質炭素材料を用いる種類の二重層キャパシタの構造は、米国特許第5,150,283号明細書および図面に開示されるように、一対の電気二重層電極(それぞれが集電板に結合した分極性電極を含む)が巻回されて容器に収容される型と、一対の電気二重層電極がラミネートされたボタン型とに分類される。
【0012】
巻回型は、例えば、厚さ20〜50μmのエッチドアルミニウム箔からなる集電板に、外部にエネルギーを取り出すためのリード線が取りつけられた構造を有している。このアルミニウム箔には、活性炭粉末と所望の結合剤および所望の導電材とを混合して調製された粉末混合物からなるペーストがコーティングされ、導電層が形成されている。主に活性炭からなる活性炭層からなる極性電極を、上記導電層上に形成することで電気二重層電極が得られる。このような一対の電気二重層電極は、それらの間にセパレータを挟んだ状態で互いに対向して配置され、巻回される。
【0013】
或いは、電気二重層電極は、上記活性炭層からなる分極性電極および上記セパレータに、その中に電解質が溶けた電解質溶液を真空下で十分含浸させるという方法で組み立てられる。電極群およびセパレータを、アルミニウムなどからなるケースに入れ、そのアルミニウムケースの開口部を、パッキングを用いて封止する。一般にこのアセンブリは円筒型である。
【0014】
一方、ボタン型は、電気二重層活性炭層からなる分極電極を、バルブ金属のディスク型シート上に形成し、電気二重層電極とした構造を有する。このような一対の電気二重層電極を、それらの間に絶縁性セパレータが存在する状態で互いに対向して配置し、このアセンブリを2部材からなる金属製容器内に収納する。上記2つの電気二重層電極は、上記金属製容器の底部および上蓋部の内側にそれぞれ結合したバルブ金属のディスク型シート(または箔)を備える。上記底部および上蓋部は互いに結合し、それらの円周端部分は絶縁性リングパッキングで密封され、容器内部は非水電解質溶液で満たされ、この溶液は上記電気二重層電極およびセパレータに十分供給される。非水電解質溶液としては、例えばテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートをプロピレンカーボネートに添加して調製した溶液が使用される。
【0015】
ここでは詳細を明らかにしないが、二重層キャパシタまたはレドックスキャパシタ(しばしば“スーパーキャパシタ”と呼ばれる)のその他の幾つかの構造も使用されている。
【0016】
電気化学的に活性な無機物質または有機(固有)導電性ポリマー類を、上述の多孔質炭素材料と組み合わせて、または多孔質炭素材料の代わりに、電極材料として使用し、上記の多孔質炭素材料を用いる一般的電気二重層キャパシタと同じ態様で電気二重層の形成に基づく蓄電を利用し、同時に両電極における酸化還元反応に伴う酸化還元電位による蓄電を利用することによって高容量を得る高容量電気化学キャパシタが提案された。
【0017】
例えば、電極活物質として酸化ルテニウムを使用する電気化学キャパシタ(Physics Letters,26A、p.209(1968))は、現在知られている無機酸化物を使用する電気化学キャパシタ類の中で、最も高い性能を有すると評価されており、エネルギー密度8.3Wh/kgおよび出力密度30kW/kgを有することが確認されている。
【0018】
近年、その他の無機酸化物の混合物系を電極材料として使用するキャパシタ類が研究されている(J.Power Sources、vol.29、p.355(1990))。
【0019】
上述の無機金属酸化物以外に、π−共役系有機物質の酸化還元特性を利用した(固有)導電性ポリマーを電極材料として使用する電気化学キャパシタ類も最近活発に研究されている。
【0020】
導電性ポリマーを用いる電気化学キャパシタ類は、多くの研究機関で研究されており、その特性については、例えば、電極材料としてポリピロールを使用すると静電容量86C/gおよびエネルギー密度11Wh/kgが得られ、ポリピロールとポリチオフェンとの混合物を使用すると、静電容量120C/gおよびエネルギー密度27Wh/kgが得られ、ポリ−3−(4−フルオロフェニル)チオフェンを用いると、静電容量52C/gおよびエネルギー密度39Wh/Kgが得られることが報告されている(J.Power Sources、vol.47、p.89(1994))。
【0021】
上記以外に、高容量キャパシタに適したインターカレーションを利用するタイプでは、概して層構造物質(TiS2、MoS2、CoO2、V6O13)が電極材料として使用される。この場合、デバイスは非対称電極で組み立てられることが多い(特表2002−525864号公報、特表2002−542582号公報)。
【0022】
さらに、上述の種々の電極材料から調製される複合材料は、電極材料として多孔性炭素材料だけを用いる一般的キャパシタ類に比較して、はるかに高い静電容量を獲得することがあると評価されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
熱心な研究にもかかわらず、炭素材料と(固有)導電性ポリマーとの混合物は工業的には利用されていない。この理由は、主に、上記混合物がナノスケールにおける均一性に乏しいこと、および上述した製法に起因し、諸特性の再現性が低いことにある。
【0024】
一方、分極性電極に多孔性炭素材料を用いる上述の一般的な電気二重層キャパシタは、速い充放電特性という利点はあるが、静電容量が限られる。例えば、特開2003−338437号公報に記載されているように、多孔性炭素材料を賦活して得られる活性炭(表面積:650m2/g)を用いるキャパシタは、静電容量18.3F/gであり、それは電気化学キャパシタ類のそれより低い。
【0025】
静電容量と、多孔性炭素材料の比表面積との関係について、比表面積が1500〜2600m2/gの範囲にある場合、約22F/ccの静電容量が得られる。しかし、比表面積がこの範囲より大きくなると、静電容量はもはや増加せず、減少する傾向がある(“電気二重層キャパシタおよび蓄電系(Electrical Double Layer Capacitors and Electric Power Storage Systems”、日刊工業新聞社、p.9)。
【0026】
上記の他に、多孔性炭素材料を用いる電極材料のその他の例が、特開2003−217982号公報、特開2003−81624号公報、特開2002−373835号公報などに開示されている。しかし、いずれの例も電気化学キャパシタに比較してより低い静電容量であり、このことは、特に自動車などに使用する場合に問題となる。
【0027】
さらに、電極に多孔性炭素材料のみを使用する場合、導電率を高める目的でアセチレンブラックなどをバインダーに加える必要があるが、そのような添加を行っても界面抵抗は非常に高く、これは重大な問題となる。
【0028】
一方、上述したように、導電性金属酸化物を用いる電気化学キャパシタがある。このような電気化学キャパシタは、上述した多孔性炭素材料を使用する場合に比べて極めて高い静電容量を有する。しかし、これら金属酸化物中の金属は一般に貴金属に属するため、上記電気化学キャパシタは、生産コストの点で不利である。例えば、1995年に米国のフロリダで行われた“二重層キャパシタおよび類似のエネルギー貯蔵デバイスに関する第五回国際セミナー”において、電極材料として酸化ルテニウムまたは酸化インジウムの薄膜を使用した擬似容量キャパシタ類は、水系で160F/ccの静電容量を有することが報告されている。
【0029】
さらに、導電性ポリマー材料を電極として用いる電気化学キャパシタ類は、上記の多孔性炭素材料を使用するキャパシタ類と比較して一般的に遙かに高い静電容量を示すが、それらの特性は、電極の製法によって変ることがある。例えば、特開平6−104141号公報および特開平6−104142号公報記載の電解重合法によって集電体上に導電性ポリマーを堆積させる場合、そのキャパシタは静電容量3.7Fおよび内部抵抗13.9Ωである。また、電解重合法による電極の製造では、その生産性において大きな問題を伴うのが一般的である。
【0030】
このため、炭素材料(主としてカーボンブラック)および固有導電性ポリマーを組み合わせて使用する多くの提案がなされている。上述のように、このような混合物の調製には2つの方法、すなわち粉末の乾式混合法(ボールミル粉砕によるなど)およびカーボンブラックの存在下における導電性ポリマーの重合のみが用いられている。
【0031】
化学酸化重合によって導電性ポリマーを合成し、この導電性ポリマーとその他の導電性無機材料とから複合材料を調製する方法は、一見すると、電極の形成としては、比較的簡単な方法であり、近年、この技術の実例が多数公表され、利用可能になっている。しかし、その再現性は低く、そのため、そのような複合材料は実際には使用されていない。また、スケールアップや、再生産工程の開発を試みる際に克服しなければならない問題も多い。
【0032】
例えば、特開2002−265598号公報では、電極材料として、有機導電性オリゴマーと無機材料との複合材料を使用することが開示されている。しかし、この場合、有機導電性オリゴマーが高い導電率を有することは期待できないため、内部抵抗を低減するために、無機材料には非常に高い導電率が要求される。
【0033】
さらに、導電性ポリマー材料を使用する場合と同様に、多孔性炭素材料中で導電性ポリマーを重合する方法(特開2001−210557号公報)では、高い導電率を有する導電性ポリマーを生産できず、キャパシタの内部抵抗の増加につながる。
【0034】
上述のように、これまでに電気化学的に活性な導電性ポリマーまたは無機酸化物を用いるキャパシタの実例が多数知られている。しかし、無機材料の使用は、生産コストの問題につながり、その一方で導電性ポリマーの使用は、導電率のコントロール、粒子サイズおよび再現性のコントロールの困難性を伴い、その結果それらのキャパシタは十分な性能を発揮できなくなる。
【0035】
したがって、本発明の目的は、再現性のある方法で製造することができ、特にスーパーキャパシタ類の製造に適した優れた性能を示す、炭素材料/導電性ポリマー混合物を作り出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0036】
非常に驚くべきことに、(固有)導電性ポリマー(類)と、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ類またはフラーレン類などの炭素材料との混合物は、上記の導電性ポリマー(類)がコロイド状で提供され、そのコロイド状の導電性ポリマーを上記炭素材料と混合する場合、再現性をもって製造できる。
【0037】
したがって、第1の態様では、本発明は、コーティングを形成できる組成物であって、コロイド状の導電性ポリマーと炭素との混合物を含んでなる組成物に関する。
【0038】
第2の態様では、本発明は第1の態様の組成物の製法に関する。この方法は、導電性ポリマーおよび炭素、並びに任意に添加剤を液体分散媒質に分散し、基質上に塗布後、任意にその分散液を乾燥させることを含む。
【0039】
第3の態様では、本発明は、第1の態様の組成物、または第2の態様の方法によって得られる基質上コーティングの形の組成物を含む複合材料に関する。
【0040】
第4の態様では、本発明は、第1の態様による組成物、または第3の態様による複合材料を含む電気または電子製品に関する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態は従属項に記載されている。
【発明の効果】
【0042】
上述のように、本発明は、それぞれ活性炭層に含まれる導電性ポリマーの固体電解質を含む1対の分極性電極が、それらの間にセパレータを介在した状態で互いに対向して配置された電気二重層キャパシタを提供する。特に、導電性ポリマーの粒子直径および導電率を高めることによって、低内部抵抗および高容量の電気二重層キャパシタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の炭素材料は、グラファイト、カーボンブラック、ナノチューブ類およびフラーレン類からなる群から選択されるのが好ましい。本発明の炭素材料は、必ずしも化学元素である炭素だけからなるものではなく、水素、酸素、窒素および硫黄のようなその他の元素も含んでいてもよいため、“炭素ベースの材料”とも言われる。例えば、カーボンブラックには、0.3〜1.3%H、0.1〜0.7%N、および0〜0.7%Sが含まれ得る。製法によって、カーボンブラック中の酸素含有量は、ファーネスおよび加熱型カーボンブラックでは0〜1.5%の量、ガスおよびチャンネル型カーボンブラックでは5%までの量、そして酸素で後処理したカーボンブラックでは15%までの量となり得る。その他に、縮合した芳香族炭化水素類が上記材料の表面に存在することもある。
【0044】
用語“(固有)導電性ポリマー”(ICP)とは、(ポリ)−共役結合π電子系(例えば二重結合、芳香族またはヘテロ芳香族環または三重結合)を有する有機ポリマー類を言う。これらは種々の状態で存在することができ、それぞれ異なる実験式であらわされ、酸化、還元、酸/アルカリ反応または錯体形成などの(電気)化学的反応によってほぼ可逆的に相互に変換できるのが一般的である。これらの反応は、文献中では“ドーピング”または“補償”として知られることもあり、またはバッテリーの電気化学的プロセスと類似の“充電”および“放電”とみなすこともできる。考えられる状態の少なくとも1つは、非常に良好な電気伝導体であり、例えば、1S/cm以上の導電率を有し(純粋型)、そのため固有導電性ポリマーと言い得る。ICPのこれらの形は、一般にはポリ−ラジカル−カチオン性またはアニオン性塩と考えられている。今日までに合成された本発明の目的に適する化学構造を有する(固有)導電性ポリマー類の一覧が、Synthetic Metals,Issues 17,18 and 19(1987)およびSynthetic Metals(in press),Proceedings of the ICSM’88(サンタフェ)に見いだされる。
【0045】
本発明の導電性ポリマーの化学的性質は特に制限されず、それらの例としては、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール、ポリピロール誘導体、ポリチアナフテン、ポリチアナフテン誘導体、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレン誘導体、ポリアセチレン、ポリアセチレン誘導体、ポリジアセチレン、ポリジアセチレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリナフタレン、およびポリナフタレン誘導体、ポリイソチアナフテン(PITN)、ポリヘテロアリーレンビニレン(ParV)、ここでヘテロアリーレン基は、例えば、チオフェン、フランまたはピロールである、ポリフェニレン−スルフィド(PPS)、ポリペリナフタレン(PPN)、ポリフタロシアニン(PPhc)など、およびそれらの誘導体類(例えば側鎖または基で置換されたモノマー類から形成される)、それらのコポリマー類およびそれらの物理的な混合物などがある。導電性ポリマーの重合方法は特に制限されず、使用できる方法としては、電気分解酸化重合、化学酸化重合および触媒重合などがある。上述の重合法によって得られるポリマーは中性で、それ自体は導電性ではない。したがって、上記ポリマーをp−ドーピングまたはn−ドーピングして導電性ポリマーに変換する。ドーピングに使用される物質としては特に制限はなく、一般的には、ルイス酸のような電子対を受容できる物質が使用される。例としては、塩酸、硫酸、パラスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸,アルキルベンゼンスルホン酸,ショウノウスルホン酸,アルキルスルホン酸,スルホサリチル酸などの有機スルホン酸誘導体、塩化鉄、塩化銅および硫酸鉄がある。
【0046】
本発明を実施するに際して、炭素ベース材料がどのような形で提供されるかは重要でない。コロイド型の導電性ポリマーは、(乾燥または湿潤した)粉末形で、多孔性フィルムもしくは複合体の形で、またはコロイド組成物の形で与えられる炭素ベース材料と混合することができる。炭素は、前処理(例えばボールミル粉砕)したり、水、有機溶媒もしくはその他の媒体に予め分散させたり、または繊維、ナノ繊維、フィルムまたは多孔質形態または膜に成形したりできる。コロイド状の導電性ポリマーは、炭素ベース材料に加えてもよいし、その逆でもよい。
【0047】
例えば、炭素粉末を導電性ポリマーのコロイド分散液に加えることができる。或いは、炭素基材を導電性ポリマーのコロイド分散液でコーティングすることで、導電性ポリマー分散液を炭素に加えることができる。
【0048】
コロイド状の導電性ポリマーは、一般に、公知、かつ、技術水準である種々の異なる方法で製造できる。例えば、欧州特許出願第0329768号公開公報、および独国特許出願第102004003784号を参照されたい。本発明では、500mmより小さいサイズを有するポリマー粒子がコロイド状と考えられる。粒子サイズは、走査または透過型電子顕微鏡によって、またはレーザードップラー法によって測定できる。上記ポリマーのもう一つの製法は、界面活性剤の存在下における重合であり、その結果、生成したポリマーは、反応媒体中でコロイド状のまま残存する。引き続いてコロイド分散液として使用するために、イオン交換および/または膜濾過によって上記分散液を精製してもよい。
【0049】
また別の方法は、導電性ポリマーを重合し、その後中和(補償)して非導電型にし、溶媒と混合し、微細なコロイド分散液(“溶液”と呼ばれることが多い)を生成する方法である。この導電性ポリマーの非導電型コロイド分散液は、炭素ベース材料と混合することができ、これによって生成した混合物は、ブレンンステッド酸、ルイス酸または酸化剤(ヨウ素、FeCl3など)のような適切な物質(“ドーパント”)を添加することで、導電性にすることができる。
【0050】
もう一つの好ましい方法は、導電性ポリマーを重合させ、それを反応媒質から沈殿させて濾過、洗浄し、その後に分散させるという方法である。この重合法は、欧州特許第0329768号公報に記載されている。この方法によって得られるポリマーは、オルメコン社(Ormecon GmbH)、ドイツ、から市販されている。特に、欧州特許第0329768号公報の実施例1および8ページ、7〜22行を参照されたい。
【0051】
最も好ましい方法は、2004年1月23日に出願された独国特許出願第102004003784号に記載された方法で作られる導電性ポリマー分散液を使用することである。特に、その中の請求項6および実施例1〜8を参照されたい。独国特許出願第102004003784号の方法では、多くの用途に有用な、100S/cm以上の導電率を有するコロイド状導電性ポリマーを作ることができる。上記方法では、欧州特許第0329768号公報の重合法によって導電性ポリマーを重合し、まず500nm未満の直径を有する一次粒子とする。生成した粉末は分散性である。1つの実施形態では、この粉末をその後、第一分散工程で分散し、続いてコンディショニング工程および第二分散工程を行う。最終的に、得られるコロイド分散液が、その後の操作および用途の要求(粘度、安定性、乾燥時間および温度など)に適うように、上記分散液を調製する。適切な分散手法は、独国特許出願第102004003784号に記載され、例えば、一般的なボールミル、遊星型ボールミル、ホモジナイザー、または超音波分散装置などが使用される。
【0052】
導電性ポリマーは、第二分散工程後(この結果、一般的には高粘性のペースト状になる)、または最終調製工程後(この結果、一般的にはより低い粘性を有する液体になる)に、炭素ベース材料と混合できる。
【0053】
本発明に好適に使用される炭素ベース材料は、カーボンナノチューブ類、ナノファイバー類、フラーレン類、カーボンブラックなどである。これらの材料は凝集する傾向があり、通常、液体またはコロイド分散液では容易に含浸されない。
【0054】
後に、炭素/導電性ポリマー混合物中で使用するのに好都合であるので、炭素ベース材料の表面は、コロイド状導電性ポリマーが接近可能でなければならない。このため、高多孔性構造、微細粉末またはコロイド状分散液状の炭素ベース材料を準備することが好ましい。乾燥粉末を使用する場合、その粉末をボールミル粉砕などによって前処理することが好ましい。ボールミル粉砕は、遊星型ミルまたは衛星型ボールミルで行うことができる。
【0055】
炭素ベース材料は、導電性ポリマーのコロイド状分散液の存在下、例えばボールミル中で分散することもできる。
【0056】
水または有機溶媒中(表面活性剤、界面活性剤およびその他の材料の使用下、または非使用下)で炭素ベース材料の分散液を作ることも好適である。このような分散液は、ボールミル、パールミル、超音波分散装置、2−または3−ロールミルまたはその他の技術水準の分散機で作ることができる。
【0057】
高度に分散した状態を実現するために、分散工程は、一般的なボールミル、遊星型ボールミル、ホモジナイザー、または超音波分散機を使用して行うことができる。遊星型ボールミルを使用する場合、撹拌は少なくとも30分間行うのが好ましい。長時間の撹拌は、溶媒温度の上昇などの処理上の問題につながる。そのため、1時間より長く撹拌する場合は冷却が必要である。
【0058】
調製前、調製中および調製後に、さらなる希釈や調整なしで導電性ポリマーコロイドと混合できる炭素ベース材料のペーストを作ることが好ましい。
【0059】
炭素と導電性ポリマーとの関係は多種多様である。例えば、導電性ポリマー対炭素の重量比は、1:50〜50:1、または1:50〜50:2の範囲とすることができる。
【0060】
炭素と導電性ポリマーとの最終混合物は、表面活性剤または安定剤およびその他の材料などの添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
コロイド状導電性ポリマーと組み合わせられる炭素ベース材料の選択は、入手可能性、価格および最終用途への適性によって制限されるに過ぎない。ある用途では活性カーボンブラックおよび導電性カーボンブラックのような、異種の炭素ベース材料の混合物が有利なこともある。
【0062】
導電性ポリマーについても同様である。本発明の方法または適用の要件には重要ではないが、入手可能性および価格は導電性ポリマー類の選択を制限するかも知れない。一般に、上述の導電性ポリマーの全ては、本発明の実施にとって有用である。ポリアニリン類およびポリチオフェン類およびそれらの誘導体類、特にポリアニリン、そのコポリマー類およびその誘導体類が好ましい。
【0063】
本発明の炭素/導電性ポリマーは、コンダクタ類、エネルギー貯蔵器類、センサ類、スイッチ類、コンデンサ類、キャパシタ類およびスーパーキャパシタ類、二重層キャパシタ類およびレドックスキャパシタ類に用いることができる。
【0064】
本発明の炭素/導電性ポリマー類を、キャパシタ中などで(電気)エネルギー貯蔵のために利用する場合、活性カーボンブラック、並びにポリアニリン類またはポリチオフェン類およびそれらの誘導体類が好ましい。なお、導電性カーボンブラックを追加的成分として使用してもよい。
【0065】
本発明の組成物の好ましい応用は、高容量キャパシタの電極材料としての使用である。このようなキャパシタ類は“スーパーキャパシタ”または“二重層キャパシタ”(“DLC”)と呼ばれることが多く、ときには(そのようなキャパシタの特定の型におけるある特殊のメカニズムに関連して)“レドックスキャパシタ”と呼ばれることもある。
以後、この出願では“DLC”と呼ぶ。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態は、多孔性炭素材料またはバルブ金属を含む高容量キャパシタ用電極用の材料の作製である。それら電極の少なくとも1つは、電気化学的な活物質を含む組成物から形成されている。驚くべきことに、炭素材料とコロイド状導電性ポリマーとを組み合わせることによって、上記多孔性炭素材料を強固に結合することができ、安定な電極または電極群を形成することができる。先行技術では、多孔性炭素材料を結合するための結合剤として、非導電性有機性結合剤が使用されているが、本発明の導電性材料では、結合剤を使用せずに電極を形成することが可能である。しかも、集電体に接着する接着力は、粒子直径を調節することによって十分確保される。さらに、性能値によると、電気二重層の形成により優れていることが示唆されており、電解液は、本発明の材料に容易に含浸できる。
【0067】
本発明の範囲には重要ではないが、通常、電極材料として使用するためには上記混合物は導電性ポリマーより多量の(活性)炭素を含む。
【0068】
導電性ポリマーの導電率は、特にキャパシタ類の等価抵抗の減少の一因となる。多孔性炭素材料を用いるキャパシタ電極の場合には、導電性付与物質としてアセチレンブラックなどを加えるのが一般的であるが、本発明の材料は、100S/cm以上の導電率を有する導電性ポリマーを用いることによって、上記導電性ポリマーそれ自体が導電性付与物質として作用し、導電性付与物質を特に加える必要がないという特徴を有する。導電性付与物質を加える必要がないため、実製品の静電容量を増大することができる。この場合、導電性ポリマーの導電率は、少なくとも100S/cm、好ましくは200S/cm以上、より好ましくは500S/cm以上である。作製されるキャパシタの内部抵抗に大きな影響を及ぼすので、導電率はできる限り高いことが望まれる。
【0069】
本発明のさらなる実施形態では、導電性ポリマーは、水または有機溶媒中で分散される。特に、条件で特定された組成物を、キャパシタ中の電解液が水である場合および上記電解液が有機溶媒である場合で別々に使用することができる。特に電解液が水である場合、有機溶媒に分散した導電性ポリマーを使用すると電極の安定性に有利である。
【0070】
本発明のその他の実施形態では、導電性ポリマー分散成分が20重量%以下の濃度の固形分を含むキャパシタ用電極組成物が提供される。特に、電極の形成時には、その固形分濃度が生産性およびコストに著しく影響を与える。また一方、導電性ポリマー分散成分中の固形分は、その分散液の安定性にも影響を与える。したがって、固形分濃度は、生産コストを考慮すると、20重量%以下であり、分散液の安定性をも考慮すると、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0071】
本発明のさらにその他の実施形態では、多孔性炭素材料の比表面積に焦点を当てるのが好ましい。少なくとも100m2/gの比表面積、好ましくは500m2/g、より好ましくは1000m2/gの比表面積を有する炭素材料を使用すると、十分な静電容量のDLCが得られる。そのような多孔性炭素材料が、導電性ポリマー分散成分中で分散される。
【0072】
使用される多孔性炭素材料の量は広く変動し得る。固体ポリアニリンの重量に対して少なくとも5重量%の多孔性炭素材料を加えることが必要である。
【0073】
添加量は、キャパシタの充放電速度と密接に関係する。急速充放電に適したデバイスの場合、多量の多孔性炭素材料を加えることが好ましく、緩慢な充放電に適したデバイスの場合、多量の導電性ポリマーを加えることが好ましい。このため、本発明でも、デバイスの要求に従って添加量を十分にコントロールできる。少なくとも、多孔性炭素材料のみを使用するキャパシタより大容量のキャパシタを得るためには、固形分に対して5重量%以上の導電性ポリマーを加える必要がある。十分な酸化還元性能を得るためには、固形分に対して好ましくは10重量%以上の量の導電性ポリマーを加える必要がある。
【0074】
本発明のさらにその他の実施形態では、それらの間にセパレータを備えた状態で互いに対向して配置される、DLC用の電極群に上記材料を用いる。ここで、これら2つの電極は両方とも同種の導電性ポリマーから構成される。この構造は、その生産性を考慮すると非常に安価なデバイスを与えるという利点を有する。
【0075】
本発明のさらにその他の実施形態では、DLC用の電極群に上記材料を用い、この際、それらの間にセパレータを備えた状態で互いに対向した配置された2つの電極の形成に用いられる組成物は、異種の導電性ポリマーを含んで構成される。この構成は、有機導電性ポリマーの多くが、正電圧および負電圧下において異なる活性を示すという考察に基づくものである。換言すれば、高容量デバイスを得る方法は、電圧掃引時に最高の電気活性を示す導電性ポリマー材料を使用することである。
【0076】
本発明のさらにその他の実施形態では、DLC用電極に上記材料を用い、この際2つの電極のうち一方は多孔性炭素材料を含んで構成され、他方は本発明の多孔性炭素材料/導電性ポリマー複合体を含んで構成される。この構造は驚くほどの高容量を示す。
【0077】
本発明のさらにその他の実施形態では、DLC用電極に上記材料を用い、この際2つの電極のうち一方は金属酸化物を含んで構成され、他方は本発明の多孔性炭素材料/導電性ポリマー混合物を含んで構成される。この構造は、金属酸化物電極の酸化還元特性を利用して高容量を得る場合に特に有効である。金属酸化物電極材料として特に好ましい例は、酸化ルテニウムおよび酸化インジウムである。
【0078】
さらに、本発明において、無機材料/導電性ポリマー複合体が、フィルムまたはその他の成形体に形成される場合、安定剤、光安定剤、充填剤、結合剤、導電率付与剤などを、必要に応じて加えてもよい。
【0079】
DLCの電極材料として炭素/コロイド状導電性ポリマー混合物を使用する効果は、非常に驚くべきである。DLCに用いられる(活性)カーボンブラックの存在下またはその表面上で導電性ポリマーを重合して作製される形式のキャパシタ類と比較して、本発明の混合物を使用して作製されるキャパシタ類は著しく良好な特性を発揮する。しかし、本発明の範囲は、本発明に従って作製されるDLCの特性によって制限されるものではないことに注意すべきである。すなわち、より低い性能を示すDLCも本発明の範囲内であると考えられる。
【0080】
静電容量は、例えば、50F/g以上から200F/g以上までの範囲であり、出力密度は、例えば、約1,000から数千W/kgの範囲であり、エネルギー密度は、例えば、約10〜100Wh/kg以上までの範囲である。
【0081】
図6および図11(ラゴン(Ragon)プロット)に見られるように、この一連の特性によって、本発明のDLCは、現在の技術水準下のDLCs(スーパーキャパシタ類)やリチウムイオン電池よりも著しく高い、現在の到達可能範囲を超えた出力およびエネルギー密度範囲を有する。
【0082】
この驚くべき効果のいくつかの理由は、この説明によって制限されるものではないが、(a)接着剤またはフィルム形成添加剤の必要が全くない(金属集電体の表面に接着性電極材層が形成されるため)、(b)より低い内部抵抗、および(c)レドックス反応が付加的に起こり得ることであり、これらすべてが一緒になって、利用可能表面(電荷キャリヤ−およびそれらの交換に利用できる)、電極材料上の電解質の湿潤性、およびエネルギー密度(重量あたりの電荷)を向上させることにあると思われる。
【実施例】
【0083】
[実施例1]多孔性炭素材料/導電性ポリマー複合体電極の製造
粉末状のヤシ殻活性炭(まだ活性化されてない)18gを導電性ポリマー分散液(ORMECON7301−026−002、キシレン中に導電性ポリアニリンを分散させたもの;固形分:2.2%)90.9gに分散させ、その混合物を遊星型ボールミルで60分間撹拌した。多孔性炭素材料/導電性ポリマーのスラリーに、キシレン57.3gをさらに加え、その混合物を撹拌モータによって30分間撹拌し、多孔性炭素材料/導電性ポリマー分散液を作った。
【0084】
キャパシタ用電極は、キャパシタに使用する電解質溶液に適合する集電板を必要とする。この実施例では、電解液として硫酸水溶液(1mol/l)を用いる場合には、電極として白金板を用い、電解液としてプロピレンカーボネートを用いる場合には、電極としてアルミニウムを用いた。上記キャパシタの実際の電極において、集電板として白金を用いる際には、白金板の表面を最初にヤスリがけし、それから上記のように調製した一定量の多孔性炭素材料/導電性ポリマーの分散液でコーティングした。その後、コーティングした白金板を100℃の高温槽内に1時間放置して有機溶媒を十分に除去した。このようにして形成した電極について、電極活物質を秤量し、キャパシタ用電極として直接使用した。
【0085】
テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの1mol/lプロピレンカーボネート溶液を、有機溶媒系電解液として使用する場合には、アルミニウム板を集電板として用いた。アルミニウム集電板をヤスリがけし、一定量の多孔性炭素材料/導電性ポリマー分散液を、集電板として白金板を使用する場合と同様なやり方でコーティングした。その後、100℃で24時間乾燥し、湿気を十分除去した。
【0086】
多孔性炭素材料/導電性ポリマー複合体電極を形成に用いた分散液の成分を以下の表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
[実施例2]キャパシタセルの製造
実施例1で作製した、密着した電極活物質を含む各電極板を打ち抜いて直径1cmの円板にし、2つの電極を作製する。ガラス繊維フィルターを直径1.5cmの円形に打ち抜き、セパレータとして使用する。さらに、水系の場合には硫酸の1M水溶液を電解液として使用する。有機溶媒系の場合にはテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの1Mプロピレンカーボネート溶液を電解液として使用する。
【0089】
キャパシタ特性の評価
測定器具:各キャパシタセルの内部抵抗は、ヒューレット・パッカード・ディベロップメント社(Hewlett−Packard・Development・Company,L.P.)製のインピーダンス分析器 YHP4192A を使用して測定した。充放電試験の測定は、トーヨーシステム社(TOYO System,Co.LTD)製の トーヨーシステムTOSCAT−3100U を使用して行った。
【0090】
実験例1に示す電極活物質を使用したキャパシタの充放電試験の結果を以下の表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
内部抵抗の測定結果を図1および図2に示す。測定は、実験2および実験5の分散成分を用いる電極を使用し、電解液として1M硫酸溶液を用いて形成されたキャパシタセルを使用して行われた。
【0093】
[比較例]
活性炭(比表面積1600cm2/g)60重量%、カーボンブラック30重量%、および結合剤であるテトラフルオロエチレン10重量%を含む電極材料混合物を調製した。フィルム形成のために、この混合物にメタノールを加えた。圧延法で電極シート(幅10mm、長さ10mm、厚み3mm)を作った。このシートを250℃で、それ以外は大気条件で乾燥した。
【0094】
その後、充放電試験を実施例2と同様の方法で行った。この場合、充電容量は約4.7F/gに過ぎなかった。
【0095】
[実施例3]
1)試剤および装置:
KABEBO LTD製のBELLFINE APを活性炭材料として使用した。
【0096】
D1005W(ポリアニリンの水分散液)および7201−026−001(ポリアニリンのキシレン分散液)(両方ともオルメコン社製(Ormecon GmbH)、アンメルスベク、ドイツ)をコロイド状導電性ポリマーとして使用した。
【0097】
充放電試験は、TOCAT−3100Uバッテリー試験ユニット(トーヨーシステムズ社)を使用して行った。インピーダンス特性は、4192ALFインピーダンス分析器(ヒューレット・パッカード)を用いて測定した。
【0098】
2)導電性ポリマーおよび活性炭の混合物の調製:
上記混合物は以下の方法により調製した。活性炭8.0gおよびORMECON7201−026−001(固形分:2.20%)90.9gを、衛星型ボールミルを用いて60分間混合した。この混合物を電極材料として使用した。電極フィルムを、アルミニウム板に、上記材料の200μm塗膜をコーティングして作製した。ウェット状態のフィルムを大気下、100℃で乾燥した。
【0099】
結果:
1.ポリアニリン有機(キシレン)分散液(7201−026−001)から得られた組成物
充放電試験は、7201−026−001とBELLFINE APとの混合物を含む薄いフィルムを用いて行われた。充放電特性は、0.5mA/cm2、1mA/cm2、および5mA/cm2で測定した。これらの条件下における初期容量を表3に示す。
【0100】
ICPベース−キャパシタの初期容量
【表3】
【0101】
出力密度およびエネルギー密度は共に優れていた。この静電容量は、BELLFINE炭素のみから作製されたキャパシタのそれより大きい。“BELLFINEのみ”のキャパシタでは、静電容量は約30F/gに過ぎない。サイクル試験の結果を図3、図4および図5に示す。
【0102】
4000サイクル試験後、静電容量は初期値の約1/3に減少した。4000サイクル後の静電容量を表4に示す。
【0103】
4000サイクル後のICPベース−キャパシタの静電容量
【表4】
【0104】
このサイクル試験データのラゴン−プロットを図6に示す。評価キャパシタの静電容量が、従来のものより高いことがわかる。特に、エネルギー密度はサイクル数の増加と共に減少する。しかし、出力密度は初期値に比較してほとんど変化していないことが明らかである。5mA/cm2条件の場合、約4500サイクル後には特性は速やかに悪化した。
【0105】
抵抗成分を理解するために、インピーダンス特性を測定した。インピーダンスの測定は、5Hzから13MHzまでの範囲で行った。しかしながら、イオン種の界面作用はこの周波数領域で見ることができない。最初に、抵抗成分をコ−ル−コ−ル・プロットによってチェックした。その後、最初の抵抗成分のコ−ル−コ−ル・プロットと4000サイクル後の抵抗成分のそれとを比較することで、各抵抗の変化を適合させた。このキャパシタの場合、等価回路は次のように描かれる;
【0106】
【化1】
【0107】
キャパシタの場合、R1は電極界面インピーダンスと直列する溶液抵抗であり、R2は可逆電位における電極過程のファラデー抵抗である。この数値は、導電性ポリマーの抵抗によって影響を受ける。コール−コール・プロットを図7に示す。
【0108】
R1およびR2の数値を表5に示す。
【0109】
導電性ポリマーおよび活性炭の混合物を電極として用いるキャパシタの抵抗
【表5】
【0110】
上記のデータから、R1はいずれの電流密度でも変化していないが、R2は4000サイクルで劇的に変化していることがわかる。この変化は、ドーパントの脱離、導電性ポリマーの酸化、ポリマーの分解など、導電性ポリマーの抵抗の変化が原因であると推定される。
【0111】
2.水分散ポリアニリン(D1005W)
D1005WとBELLFINE APとの混合物から作製されたAl板上の薄膜を使用して充放電試験を行った。充放電試験は、0.5mA/cm2、1mA/cm2、および5mA/cm2で行った。これらの条件における初期容量を表6に示す。
【0112】
ICPベースのキャパシタの初期容量
【表6】
【0113】
D1005Wを使用したキャパシタのエネルギー密度は、7201−026−001を用いたキャパシタのそれよりも小さかった。サイクル試験の結果を、図8、図9および図10に示す。
【0114】
1.0mA/cm2の場合に、静電容量の変化はサイクル試験では認められなかった。しかし、5.0mA/cm2の場合には静電容量の急速な低下が1000サイクルで認められた。4000サイクル後の静電容量のデータを表7に列挙する。
【0115】
4000サイクル後のICPベース−キャパシタの静電容量
【表7】
【0116】
サイクル試験のラゴン−プロットを図11に示す。
【0117】
このデータによれば、エネルギー密度はサイクル数の増加につれて減少することが明らかである。しかし、出力密度は初期値に比べてほとんど変化しない。電流密度1.0mA/cm2では、出力密度およびエネルギー密度は約4000サイクルで非常に安定していた。5.0mA/cm2では出力密度は約1000サイクル後に速やかに悪化した。
【0118】
抵抗成分を分析するために、インピーダンス分析器を用い、インピーダンス測定を行った。インピーダンス測定の結果を図12に示す。
【0119】
コール−コール・プロットからのR1およびR2値を表8に示す。
【0120】
電極として導電性ポリマーおよび活性炭混合物を使用したキャパシタの抵抗
【表8】
【0121】
このR2の抵抗成分は、7201−026−001ベースのキャパシタのR2のそれよりも大きい。理論的に裏付けられているわけではないが、D1005Wベースのキャパシタと7201−026−001ベースのキャパシタとの間のR2抵抗の差は、D1005Wおよび7201−026−001の間の導電率の差に起因すると考えられる。R1およびR2抵抗は両方とも4000サイクル後は劇的に増加した。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は比表面積1600m2/gの多孔性炭素材料を使用するキャパシタの内部抵抗(インピーダンス特性)を示す。
【図2】図2は比表面積1100m2/gの多孔性炭素材料を使用するキャパシタの内部抵抗(インピーダンス特性)を示す。
【図3】図3は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度0.5mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図4】図4は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度1.0mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図5】図5は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度5.0mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図6】図6は、サイクル試験データのラゴン−プロットを示す。
【図7】図7は、コール−コール・プロットを示す。
【図8】図8は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度0.5mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図9】図9は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度1.0mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図10】図10は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度5.0mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図11】図11は、サイクル試験のラゴン−プロットを示す。
【図12】図12は、導電性ポリマーと活性炭との混合物を電極として使用したキャパシタのコール−コール・プロットである
【技術分野】
【0001】
本発明は、(固有)導電性ポリマー(ICP)および炭素材料を含む導電性物質、それらの製法、および種々の電子装置や電源などに使われる高容量の電気二重層キャパシタへの使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電性物質は公知であり、多くの異なる形態や用途で使用されている。炭素をベースとする導電性物質は、異なる物理的および化学的形態、形状、並びに組成で提供されている。純粋またはほぼ純粋な炭素は、カーボンブラック(これも主として酸素をベースとする不純物を含む)、グラファイト(純粋炭素)、カーボンナノチューブ類およびフラーレン類などの形で提供される。導電性材料のもう一つのグループは、幾つかの重要な用途を有している(固有)導電性ポリマー(ICP)である。
【0003】
これら2つのグループの導電性材料は、少なくとも一つの共通の性質である導電性を有している。その他の特性は、これら材料群に相互に固有であることも、それぞれの群内で大きく変動することもあり得る。例えば、グラファイトの粒子サイズは、数ミクロンから数十ミクロンの範囲であるが、フラーレン類のそれはオングストロームの範囲である。カーボンブラックおよびカーボンナノチューブの比表面積は、約1000m2/gという大きい数値を示すが、グラファイトのそれは数m2/gの範囲である。導電性ポリマーの代表の一つであるポリアニリンは、豊富なレドックス化学作用を特徴とし、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)(PEDTとも呼ばれる)は、中程度または低い再現性のレドックス化学作用を有する。その一方でグラファイトまたはカーボンブラックは、可逆的レドックス化学作用を示さない。
【0004】
従来、ポリアニリン、ポリエチレンジオキシチオフェン、ポリピロール、またはそれらの誘導体類のような導電性ポリマーと、炭素材料(カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブおよびフラーレン)とを組み合わせることが試みられている。これらの材料の単純な混合物は、顕著なまたは再現性のある有益性を何ら与えず、そのため導電性ポリマーとカーボンブラックとの組合わせ、または導電性ポリマーとカーボンナノチューブとの組合わせに適した商業的または技術的用途、化学的プロセスが広く研究されることはなかった。例えば、エオニックス(Eeonyx)社は、表面にポリアニリンを重合させたカーボンブラックを開発製品として上市した(エオノマー(Eeonomer))。ドゥ(G.Du)、エプスタイン(A.Epstein)、ライマー(K.Reimer):1996年3月、米国物理学会ミーティング、M23部会、M23.09の発表を参照されたい。実験用化学物質の供給社であるアルドリッチ(Aldrich)は、このような化学的に製造された混合物をカタログ上で広告しているが、この種の製品が興味をそそるような利益を提供することはなかった。
【0005】
カーボンブラック/ポリアニリン混合物が興味深い技術的利益を与え得る分野の一つは、いわゆる“スーパーキャパシタ”(しばしば“二重層”、または“レドックスキャパシタ”とも呼ばれる)分野である。この分野には、炭素と導電性ポリマーとを混合したり、または混合物の形で提供したりするという刊行物が非常に多い。
【0006】
このために主に次の2種類の混合法が使用される:
カーボンブラックおよびポリアニリンの粉末をボールミル粉砕によって単純に混合する(米国特許出願公開2002/0114128)、またはJournal of Power Sources、11、2003、185−190、および Journal of the Electrochemical Society、148、10、2001、A1130−A1134に開示されているように、ポリアニリンまたはポリチオフェン誘導体をカーボンブラック粉末と混合する方法で単純に混合する。しかし特有の混合手段は開示されていない。
カーボンブラック表面上で、種々の導電性ポリマーを化学的または電気化学的に重合する。
【0007】
後者の方法は、特許および科学文献において広く研究されてきた。欧州特許出願1329918号では、炭素と、電気化学的に重合された導電性ポリマーであるポリアニリンまたはポリピロールとの負極複合体について報告されている。正極は鉛製である。上記導電性ポリマーの最適含有量は10−15重量%であることが判明した。この材料を使用して作られたキャパシタは、非分極性の鉛製正極と分極性の負極とを含む電極複合体を備えている。
【0008】
米国特許出願2002/0089807号には、高多孔性カーボンブラック材料上で化学的または電気化学的手段によって直接重合された固有導電性ポリマーが開示されている。ポリアクリロニトリルから作製された炭素エアロゲル上におけるポリアニリンの電気化学的重合がJournal of Applied Electrochemistry、33、465−473、2003に開示されている。この方法はJournal of Power Sources、117、273−282、2003、および文献10、Carbon、41、2865−2871、2003に開示された活性多孔性炭素上におけるポリアニリンの電気化学的重合に相当する。Conference Proceedings of ANTEC ’98、Vol2、1197ff,1998において、著者らは、白金集電支持体上の高表面積炭素フィルム上におけるポリエチレンジオキシチオフェンの重合を報告している。同じ出版物に、同じタイプの炭素フィルム上でヘキサフルオロ−イソプロパノール溶液からポリアニリンをキャストしたという報告がある。
【0009】
Electrochimica Acta Vol.41、No.1、21−26、1996では、対称性または非対称性電極構造における種々のレドックス・スーパーキャパシタが開示されている;ここではポリピロールまたはポリチオフェン誘導体のような導電性ポリマー類を用い、米国特許第5,527,640号明細書、1996年、に用いられた方法に相当する方法、すなわちポリチオフェン誘導体を炭素基質上で電気化学的手段によって重合する方法によって上記基質上で重合している。
【0010】
上述のように、カーボンブラック/導電性ポリマー混合物は、いわゆる“スーパーキャパシタ”に使用するために調製されることが多かった。このようなキャパシタ類は“二重層キャパシタ”、“電気化学的”または“電気二重層キャパシタ”または“レドックスキャパシタ”と呼ばれることも多く、“擬似容量キャパシタ”と呼ばれることもある。
【0011】
二重層キャパシタは、一般的に2つの電極(少なくともその1つは、約100〜1000m2/g、またはそれ以上の高比表面積を有する多孔質炭素材料を、集電板にコーティングして得られる)が互いに対向して配置されるとともに、これら電極間にセパレータが配置されたエネルギーデバイスである。電解質溶液の存在下で電極間に電圧が印加されると、少なくとも一方の電極上に電気二重層が生成し、そこからエネルギーが取り出され得る。電極材料として多孔質炭素材料を用いる種類の二重層キャパシタの構造は、米国特許第5,150,283号明細書および図面に開示されるように、一対の電気二重層電極(それぞれが集電板に結合した分極性電極を含む)が巻回されて容器に収容される型と、一対の電気二重層電極がラミネートされたボタン型とに分類される。
【0012】
巻回型は、例えば、厚さ20〜50μmのエッチドアルミニウム箔からなる集電板に、外部にエネルギーを取り出すためのリード線が取りつけられた構造を有している。このアルミニウム箔には、活性炭粉末と所望の結合剤および所望の導電材とを混合して調製された粉末混合物からなるペーストがコーティングされ、導電層が形成されている。主に活性炭からなる活性炭層からなる極性電極を、上記導電層上に形成することで電気二重層電極が得られる。このような一対の電気二重層電極は、それらの間にセパレータを挟んだ状態で互いに対向して配置され、巻回される。
【0013】
或いは、電気二重層電極は、上記活性炭層からなる分極性電極および上記セパレータに、その中に電解質が溶けた電解質溶液を真空下で十分含浸させるという方法で組み立てられる。電極群およびセパレータを、アルミニウムなどからなるケースに入れ、そのアルミニウムケースの開口部を、パッキングを用いて封止する。一般にこのアセンブリは円筒型である。
【0014】
一方、ボタン型は、電気二重層活性炭層からなる分極電極を、バルブ金属のディスク型シート上に形成し、電気二重層電極とした構造を有する。このような一対の電気二重層電極を、それらの間に絶縁性セパレータが存在する状態で互いに対向して配置し、このアセンブリを2部材からなる金属製容器内に収納する。上記2つの電気二重層電極は、上記金属製容器の底部および上蓋部の内側にそれぞれ結合したバルブ金属のディスク型シート(または箔)を備える。上記底部および上蓋部は互いに結合し、それらの円周端部分は絶縁性リングパッキングで密封され、容器内部は非水電解質溶液で満たされ、この溶液は上記電気二重層電極およびセパレータに十分供給される。非水電解質溶液としては、例えばテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートをプロピレンカーボネートに添加して調製した溶液が使用される。
【0015】
ここでは詳細を明らかにしないが、二重層キャパシタまたはレドックスキャパシタ(しばしば“スーパーキャパシタ”と呼ばれる)のその他の幾つかの構造も使用されている。
【0016】
電気化学的に活性な無機物質または有機(固有)導電性ポリマー類を、上述の多孔質炭素材料と組み合わせて、または多孔質炭素材料の代わりに、電極材料として使用し、上記の多孔質炭素材料を用いる一般的電気二重層キャパシタと同じ態様で電気二重層の形成に基づく蓄電を利用し、同時に両電極における酸化還元反応に伴う酸化還元電位による蓄電を利用することによって高容量を得る高容量電気化学キャパシタが提案された。
【0017】
例えば、電極活物質として酸化ルテニウムを使用する電気化学キャパシタ(Physics Letters,26A、p.209(1968))は、現在知られている無機酸化物を使用する電気化学キャパシタ類の中で、最も高い性能を有すると評価されており、エネルギー密度8.3Wh/kgおよび出力密度30kW/kgを有することが確認されている。
【0018】
近年、その他の無機酸化物の混合物系を電極材料として使用するキャパシタ類が研究されている(J.Power Sources、vol.29、p.355(1990))。
【0019】
上述の無機金属酸化物以外に、π−共役系有機物質の酸化還元特性を利用した(固有)導電性ポリマーを電極材料として使用する電気化学キャパシタ類も最近活発に研究されている。
【0020】
導電性ポリマーを用いる電気化学キャパシタ類は、多くの研究機関で研究されており、その特性については、例えば、電極材料としてポリピロールを使用すると静電容量86C/gおよびエネルギー密度11Wh/kgが得られ、ポリピロールとポリチオフェンとの混合物を使用すると、静電容量120C/gおよびエネルギー密度27Wh/kgが得られ、ポリ−3−(4−フルオロフェニル)チオフェンを用いると、静電容量52C/gおよびエネルギー密度39Wh/Kgが得られることが報告されている(J.Power Sources、vol.47、p.89(1994))。
【0021】
上記以外に、高容量キャパシタに適したインターカレーションを利用するタイプでは、概して層構造物質(TiS2、MoS2、CoO2、V6O13)が電極材料として使用される。この場合、デバイスは非対称電極で組み立てられることが多い(特表2002−525864号公報、特表2002−542582号公報)。
【0022】
さらに、上述の種々の電極材料から調製される複合材料は、電極材料として多孔性炭素材料だけを用いる一般的キャパシタ類に比較して、はるかに高い静電容量を獲得することがあると評価されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
熱心な研究にもかかわらず、炭素材料と(固有)導電性ポリマーとの混合物は工業的には利用されていない。この理由は、主に、上記混合物がナノスケールにおける均一性に乏しいこと、および上述した製法に起因し、諸特性の再現性が低いことにある。
【0024】
一方、分極性電極に多孔性炭素材料を用いる上述の一般的な電気二重層キャパシタは、速い充放電特性という利点はあるが、静電容量が限られる。例えば、特開2003−338437号公報に記載されているように、多孔性炭素材料を賦活して得られる活性炭(表面積:650m2/g)を用いるキャパシタは、静電容量18.3F/gであり、それは電気化学キャパシタ類のそれより低い。
【0025】
静電容量と、多孔性炭素材料の比表面積との関係について、比表面積が1500〜2600m2/gの範囲にある場合、約22F/ccの静電容量が得られる。しかし、比表面積がこの範囲より大きくなると、静電容量はもはや増加せず、減少する傾向がある(“電気二重層キャパシタおよび蓄電系(Electrical Double Layer Capacitors and Electric Power Storage Systems”、日刊工業新聞社、p.9)。
【0026】
上記の他に、多孔性炭素材料を用いる電極材料のその他の例が、特開2003−217982号公報、特開2003−81624号公報、特開2002−373835号公報などに開示されている。しかし、いずれの例も電気化学キャパシタに比較してより低い静電容量であり、このことは、特に自動車などに使用する場合に問題となる。
【0027】
さらに、電極に多孔性炭素材料のみを使用する場合、導電率を高める目的でアセチレンブラックなどをバインダーに加える必要があるが、そのような添加を行っても界面抵抗は非常に高く、これは重大な問題となる。
【0028】
一方、上述したように、導電性金属酸化物を用いる電気化学キャパシタがある。このような電気化学キャパシタは、上述した多孔性炭素材料を使用する場合に比べて極めて高い静電容量を有する。しかし、これら金属酸化物中の金属は一般に貴金属に属するため、上記電気化学キャパシタは、生産コストの点で不利である。例えば、1995年に米国のフロリダで行われた“二重層キャパシタおよび類似のエネルギー貯蔵デバイスに関する第五回国際セミナー”において、電極材料として酸化ルテニウムまたは酸化インジウムの薄膜を使用した擬似容量キャパシタ類は、水系で160F/ccの静電容量を有することが報告されている。
【0029】
さらに、導電性ポリマー材料を電極として用いる電気化学キャパシタ類は、上記の多孔性炭素材料を使用するキャパシタ類と比較して一般的に遙かに高い静電容量を示すが、それらの特性は、電極の製法によって変ることがある。例えば、特開平6−104141号公報および特開平6−104142号公報記載の電解重合法によって集電体上に導電性ポリマーを堆積させる場合、そのキャパシタは静電容量3.7Fおよび内部抵抗13.9Ωである。また、電解重合法による電極の製造では、その生産性において大きな問題を伴うのが一般的である。
【0030】
このため、炭素材料(主としてカーボンブラック)および固有導電性ポリマーを組み合わせて使用する多くの提案がなされている。上述のように、このような混合物の調製には2つの方法、すなわち粉末の乾式混合法(ボールミル粉砕によるなど)およびカーボンブラックの存在下における導電性ポリマーの重合のみが用いられている。
【0031】
化学酸化重合によって導電性ポリマーを合成し、この導電性ポリマーとその他の導電性無機材料とから複合材料を調製する方法は、一見すると、電極の形成としては、比較的簡単な方法であり、近年、この技術の実例が多数公表され、利用可能になっている。しかし、その再現性は低く、そのため、そのような複合材料は実際には使用されていない。また、スケールアップや、再生産工程の開発を試みる際に克服しなければならない問題も多い。
【0032】
例えば、特開2002−265598号公報では、電極材料として、有機導電性オリゴマーと無機材料との複合材料を使用することが開示されている。しかし、この場合、有機導電性オリゴマーが高い導電率を有することは期待できないため、内部抵抗を低減するために、無機材料には非常に高い導電率が要求される。
【0033】
さらに、導電性ポリマー材料を使用する場合と同様に、多孔性炭素材料中で導電性ポリマーを重合する方法(特開2001−210557号公報)では、高い導電率を有する導電性ポリマーを生産できず、キャパシタの内部抵抗の増加につながる。
【0034】
上述のように、これまでに電気化学的に活性な導電性ポリマーまたは無機酸化物を用いるキャパシタの実例が多数知られている。しかし、無機材料の使用は、生産コストの問題につながり、その一方で導電性ポリマーの使用は、導電率のコントロール、粒子サイズおよび再現性のコントロールの困難性を伴い、その結果それらのキャパシタは十分な性能を発揮できなくなる。
【0035】
したがって、本発明の目的は、再現性のある方法で製造することができ、特にスーパーキャパシタ類の製造に適した優れた性能を示す、炭素材料/導電性ポリマー混合物を作り出すことであった。
【課題を解決するための手段】
【0036】
非常に驚くべきことに、(固有)導電性ポリマー(類)と、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ類またはフラーレン類などの炭素材料との混合物は、上記の導電性ポリマー(類)がコロイド状で提供され、そのコロイド状の導電性ポリマーを上記炭素材料と混合する場合、再現性をもって製造できる。
【0037】
したがって、第1の態様では、本発明は、コーティングを形成できる組成物であって、コロイド状の導電性ポリマーと炭素との混合物を含んでなる組成物に関する。
【0038】
第2の態様では、本発明は第1の態様の組成物の製法に関する。この方法は、導電性ポリマーおよび炭素、並びに任意に添加剤を液体分散媒質に分散し、基質上に塗布後、任意にその分散液を乾燥させることを含む。
【0039】
第3の態様では、本発明は、第1の態様の組成物、または第2の態様の方法によって得られる基質上コーティングの形の組成物を含む複合材料に関する。
【0040】
第4の態様では、本発明は、第1の態様による組成物、または第3の態様による複合材料を含む電気または電子製品に関する。
【0041】
本発明の好ましい実施形態は従属項に記載されている。
【発明の効果】
【0042】
上述のように、本発明は、それぞれ活性炭層に含まれる導電性ポリマーの固体電解質を含む1対の分極性電極が、それらの間にセパレータを介在した状態で互いに対向して配置された電気二重層キャパシタを提供する。特に、導電性ポリマーの粒子直径および導電率を高めることによって、低内部抵抗および高容量の電気二重層キャパシタを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本発明の炭素材料は、グラファイト、カーボンブラック、ナノチューブ類およびフラーレン類からなる群から選択されるのが好ましい。本発明の炭素材料は、必ずしも化学元素である炭素だけからなるものではなく、水素、酸素、窒素および硫黄のようなその他の元素も含んでいてもよいため、“炭素ベースの材料”とも言われる。例えば、カーボンブラックには、0.3〜1.3%H、0.1〜0.7%N、および0〜0.7%Sが含まれ得る。製法によって、カーボンブラック中の酸素含有量は、ファーネスおよび加熱型カーボンブラックでは0〜1.5%の量、ガスおよびチャンネル型カーボンブラックでは5%までの量、そして酸素で後処理したカーボンブラックでは15%までの量となり得る。その他に、縮合した芳香族炭化水素類が上記材料の表面に存在することもある。
【0044】
用語“(固有)導電性ポリマー”(ICP)とは、(ポリ)−共役結合π電子系(例えば二重結合、芳香族またはヘテロ芳香族環または三重結合)を有する有機ポリマー類を言う。これらは種々の状態で存在することができ、それぞれ異なる実験式であらわされ、酸化、還元、酸/アルカリ反応または錯体形成などの(電気)化学的反応によってほぼ可逆的に相互に変換できるのが一般的である。これらの反応は、文献中では“ドーピング”または“補償”として知られることもあり、またはバッテリーの電気化学的プロセスと類似の“充電”および“放電”とみなすこともできる。考えられる状態の少なくとも1つは、非常に良好な電気伝導体であり、例えば、1S/cm以上の導電率を有し(純粋型)、そのため固有導電性ポリマーと言い得る。ICPのこれらの形は、一般にはポリ−ラジカル−カチオン性またはアニオン性塩と考えられている。今日までに合成された本発明の目的に適する化学構造を有する(固有)導電性ポリマー類の一覧が、Synthetic Metals,Issues 17,18 and 19(1987)およびSynthetic Metals(in press),Proceedings of the ICSM’88(サンタフェ)に見いだされる。
【0045】
本発明の導電性ポリマーの化学的性質は特に制限されず、それらの例としては、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン、ポリチオフェン誘導体、ポリピロール、ポリピロール誘導体、ポリチアナフテン、ポリチアナフテン誘導体、ポリパラフェニレン、ポリパラフェニレン誘導体、ポリアセチレン、ポリアセチレン誘導体、ポリジアセチレン、ポリジアセチレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリナフタレン、およびポリナフタレン誘導体、ポリイソチアナフテン(PITN)、ポリヘテロアリーレンビニレン(ParV)、ここでヘテロアリーレン基は、例えば、チオフェン、フランまたはピロールである、ポリフェニレン−スルフィド(PPS)、ポリペリナフタレン(PPN)、ポリフタロシアニン(PPhc)など、およびそれらの誘導体類(例えば側鎖または基で置換されたモノマー類から形成される)、それらのコポリマー類およびそれらの物理的な混合物などがある。導電性ポリマーの重合方法は特に制限されず、使用できる方法としては、電気分解酸化重合、化学酸化重合および触媒重合などがある。上述の重合法によって得られるポリマーは中性で、それ自体は導電性ではない。したがって、上記ポリマーをp−ドーピングまたはn−ドーピングして導電性ポリマーに変換する。ドーピングに使用される物質としては特に制限はなく、一般的には、ルイス酸のような電子対を受容できる物質が使用される。例としては、塩酸、硫酸、パラスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸,アルキルベンゼンスルホン酸,ショウノウスルホン酸,アルキルスルホン酸,スルホサリチル酸などの有機スルホン酸誘導体、塩化鉄、塩化銅および硫酸鉄がある。
【0046】
本発明を実施するに際して、炭素ベース材料がどのような形で提供されるかは重要でない。コロイド型の導電性ポリマーは、(乾燥または湿潤した)粉末形で、多孔性フィルムもしくは複合体の形で、またはコロイド組成物の形で与えられる炭素ベース材料と混合することができる。炭素は、前処理(例えばボールミル粉砕)したり、水、有機溶媒もしくはその他の媒体に予め分散させたり、または繊維、ナノ繊維、フィルムまたは多孔質形態または膜に成形したりできる。コロイド状の導電性ポリマーは、炭素ベース材料に加えてもよいし、その逆でもよい。
【0047】
例えば、炭素粉末を導電性ポリマーのコロイド分散液に加えることができる。或いは、炭素基材を導電性ポリマーのコロイド分散液でコーティングすることで、導電性ポリマー分散液を炭素に加えることができる。
【0048】
コロイド状の導電性ポリマーは、一般に、公知、かつ、技術水準である種々の異なる方法で製造できる。例えば、欧州特許出願第0329768号公開公報、および独国特許出願第102004003784号を参照されたい。本発明では、500mmより小さいサイズを有するポリマー粒子がコロイド状と考えられる。粒子サイズは、走査または透過型電子顕微鏡によって、またはレーザードップラー法によって測定できる。上記ポリマーのもう一つの製法は、界面活性剤の存在下における重合であり、その結果、生成したポリマーは、反応媒体中でコロイド状のまま残存する。引き続いてコロイド分散液として使用するために、イオン交換および/または膜濾過によって上記分散液を精製してもよい。
【0049】
また別の方法は、導電性ポリマーを重合し、その後中和(補償)して非導電型にし、溶媒と混合し、微細なコロイド分散液(“溶液”と呼ばれることが多い)を生成する方法である。この導電性ポリマーの非導電型コロイド分散液は、炭素ベース材料と混合することができ、これによって生成した混合物は、ブレンンステッド酸、ルイス酸または酸化剤(ヨウ素、FeCl3など)のような適切な物質(“ドーパント”)を添加することで、導電性にすることができる。
【0050】
もう一つの好ましい方法は、導電性ポリマーを重合させ、それを反応媒質から沈殿させて濾過、洗浄し、その後に分散させるという方法である。この重合法は、欧州特許第0329768号公報に記載されている。この方法によって得られるポリマーは、オルメコン社(Ormecon GmbH)、ドイツ、から市販されている。特に、欧州特許第0329768号公報の実施例1および8ページ、7〜22行を参照されたい。
【0051】
最も好ましい方法は、2004年1月23日に出願された独国特許出願第102004003784号に記載された方法で作られる導電性ポリマー分散液を使用することである。特に、その中の請求項6および実施例1〜8を参照されたい。独国特許出願第102004003784号の方法では、多くの用途に有用な、100S/cm以上の導電率を有するコロイド状導電性ポリマーを作ることができる。上記方法では、欧州特許第0329768号公報の重合法によって導電性ポリマーを重合し、まず500nm未満の直径を有する一次粒子とする。生成した粉末は分散性である。1つの実施形態では、この粉末をその後、第一分散工程で分散し、続いてコンディショニング工程および第二分散工程を行う。最終的に、得られるコロイド分散液が、その後の操作および用途の要求(粘度、安定性、乾燥時間および温度など)に適うように、上記分散液を調製する。適切な分散手法は、独国特許出願第102004003784号に記載され、例えば、一般的なボールミル、遊星型ボールミル、ホモジナイザー、または超音波分散装置などが使用される。
【0052】
導電性ポリマーは、第二分散工程後(この結果、一般的には高粘性のペースト状になる)、または最終調製工程後(この結果、一般的にはより低い粘性を有する液体になる)に、炭素ベース材料と混合できる。
【0053】
本発明に好適に使用される炭素ベース材料は、カーボンナノチューブ類、ナノファイバー類、フラーレン類、カーボンブラックなどである。これらの材料は凝集する傾向があり、通常、液体またはコロイド分散液では容易に含浸されない。
【0054】
後に、炭素/導電性ポリマー混合物中で使用するのに好都合であるので、炭素ベース材料の表面は、コロイド状導電性ポリマーが接近可能でなければならない。このため、高多孔性構造、微細粉末またはコロイド状分散液状の炭素ベース材料を準備することが好ましい。乾燥粉末を使用する場合、その粉末をボールミル粉砕などによって前処理することが好ましい。ボールミル粉砕は、遊星型ミルまたは衛星型ボールミルで行うことができる。
【0055】
炭素ベース材料は、導電性ポリマーのコロイド状分散液の存在下、例えばボールミル中で分散することもできる。
【0056】
水または有機溶媒中(表面活性剤、界面活性剤およびその他の材料の使用下、または非使用下)で炭素ベース材料の分散液を作ることも好適である。このような分散液は、ボールミル、パールミル、超音波分散装置、2−または3−ロールミルまたはその他の技術水準の分散機で作ることができる。
【0057】
高度に分散した状態を実現するために、分散工程は、一般的なボールミル、遊星型ボールミル、ホモジナイザー、または超音波分散機を使用して行うことができる。遊星型ボールミルを使用する場合、撹拌は少なくとも30分間行うのが好ましい。長時間の撹拌は、溶媒温度の上昇などの処理上の問題につながる。そのため、1時間より長く撹拌する場合は冷却が必要である。
【0058】
調製前、調製中および調製後に、さらなる希釈や調整なしで導電性ポリマーコロイドと混合できる炭素ベース材料のペーストを作ることが好ましい。
【0059】
炭素と導電性ポリマーとの関係は多種多様である。例えば、導電性ポリマー対炭素の重量比は、1:50〜50:1、または1:50〜50:2の範囲とすることができる。
【0060】
炭素と導電性ポリマーとの最終混合物は、表面活性剤または安定剤およびその他の材料などの添加剤を含んでいてもよい。
【0061】
コロイド状導電性ポリマーと組み合わせられる炭素ベース材料の選択は、入手可能性、価格および最終用途への適性によって制限されるに過ぎない。ある用途では活性カーボンブラックおよび導電性カーボンブラックのような、異種の炭素ベース材料の混合物が有利なこともある。
【0062】
導電性ポリマーについても同様である。本発明の方法または適用の要件には重要ではないが、入手可能性および価格は導電性ポリマー類の選択を制限するかも知れない。一般に、上述の導電性ポリマーの全ては、本発明の実施にとって有用である。ポリアニリン類およびポリチオフェン類およびそれらの誘導体類、特にポリアニリン、そのコポリマー類およびその誘導体類が好ましい。
【0063】
本発明の炭素/導電性ポリマーは、コンダクタ類、エネルギー貯蔵器類、センサ類、スイッチ類、コンデンサ類、キャパシタ類およびスーパーキャパシタ類、二重層キャパシタ類およびレドックスキャパシタ類に用いることができる。
【0064】
本発明の炭素/導電性ポリマー類を、キャパシタ中などで(電気)エネルギー貯蔵のために利用する場合、活性カーボンブラック、並びにポリアニリン類またはポリチオフェン類およびそれらの誘導体類が好ましい。なお、導電性カーボンブラックを追加的成分として使用してもよい。
【0065】
本発明の組成物の好ましい応用は、高容量キャパシタの電極材料としての使用である。このようなキャパシタ類は“スーパーキャパシタ”または“二重層キャパシタ”(“DLC”)と呼ばれることが多く、ときには(そのようなキャパシタの特定の型におけるある特殊のメカニズムに関連して)“レドックスキャパシタ”と呼ばれることもある。
以後、この出願では“DLC”と呼ぶ。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態は、多孔性炭素材料またはバルブ金属を含む高容量キャパシタ用電極用の材料の作製である。それら電極の少なくとも1つは、電気化学的な活物質を含む組成物から形成されている。驚くべきことに、炭素材料とコロイド状導電性ポリマーとを組み合わせることによって、上記多孔性炭素材料を強固に結合することができ、安定な電極または電極群を形成することができる。先行技術では、多孔性炭素材料を結合するための結合剤として、非導電性有機性結合剤が使用されているが、本発明の導電性材料では、結合剤を使用せずに電極を形成することが可能である。しかも、集電体に接着する接着力は、粒子直径を調節することによって十分確保される。さらに、性能値によると、電気二重層の形成により優れていることが示唆されており、電解液は、本発明の材料に容易に含浸できる。
【0067】
本発明の範囲には重要ではないが、通常、電極材料として使用するためには上記混合物は導電性ポリマーより多量の(活性)炭素を含む。
【0068】
導電性ポリマーの導電率は、特にキャパシタ類の等価抵抗の減少の一因となる。多孔性炭素材料を用いるキャパシタ電極の場合には、導電性付与物質としてアセチレンブラックなどを加えるのが一般的であるが、本発明の材料は、100S/cm以上の導電率を有する導電性ポリマーを用いることによって、上記導電性ポリマーそれ自体が導電性付与物質として作用し、導電性付与物質を特に加える必要がないという特徴を有する。導電性付与物質を加える必要がないため、実製品の静電容量を増大することができる。この場合、導電性ポリマーの導電率は、少なくとも100S/cm、好ましくは200S/cm以上、より好ましくは500S/cm以上である。作製されるキャパシタの内部抵抗に大きな影響を及ぼすので、導電率はできる限り高いことが望まれる。
【0069】
本発明のさらなる実施形態では、導電性ポリマーは、水または有機溶媒中で分散される。特に、条件で特定された組成物を、キャパシタ中の電解液が水である場合および上記電解液が有機溶媒である場合で別々に使用することができる。特に電解液が水である場合、有機溶媒に分散した導電性ポリマーを使用すると電極の安定性に有利である。
【0070】
本発明のその他の実施形態では、導電性ポリマー分散成分が20重量%以下の濃度の固形分を含むキャパシタ用電極組成物が提供される。特に、電極の形成時には、その固形分濃度が生産性およびコストに著しく影響を与える。また一方、導電性ポリマー分散成分中の固形分は、その分散液の安定性にも影響を与える。したがって、固形分濃度は、生産コストを考慮すると、20重量%以下であり、分散液の安定性をも考慮すると、10重量%以下、好ましくは5重量%以下である。
【0071】
本発明のさらにその他の実施形態では、多孔性炭素材料の比表面積に焦点を当てるのが好ましい。少なくとも100m2/gの比表面積、好ましくは500m2/g、より好ましくは1000m2/gの比表面積を有する炭素材料を使用すると、十分な静電容量のDLCが得られる。そのような多孔性炭素材料が、導電性ポリマー分散成分中で分散される。
【0072】
使用される多孔性炭素材料の量は広く変動し得る。固体ポリアニリンの重量に対して少なくとも5重量%の多孔性炭素材料を加えることが必要である。
【0073】
添加量は、キャパシタの充放電速度と密接に関係する。急速充放電に適したデバイスの場合、多量の多孔性炭素材料を加えることが好ましく、緩慢な充放電に適したデバイスの場合、多量の導電性ポリマーを加えることが好ましい。このため、本発明でも、デバイスの要求に従って添加量を十分にコントロールできる。少なくとも、多孔性炭素材料のみを使用するキャパシタより大容量のキャパシタを得るためには、固形分に対して5重量%以上の導電性ポリマーを加える必要がある。十分な酸化還元性能を得るためには、固形分に対して好ましくは10重量%以上の量の導電性ポリマーを加える必要がある。
【0074】
本発明のさらにその他の実施形態では、それらの間にセパレータを備えた状態で互いに対向して配置される、DLC用の電極群に上記材料を用いる。ここで、これら2つの電極は両方とも同種の導電性ポリマーから構成される。この構造は、その生産性を考慮すると非常に安価なデバイスを与えるという利点を有する。
【0075】
本発明のさらにその他の実施形態では、DLC用の電極群に上記材料を用い、この際、それらの間にセパレータを備えた状態で互いに対向した配置された2つの電極の形成に用いられる組成物は、異種の導電性ポリマーを含んで構成される。この構成は、有機導電性ポリマーの多くが、正電圧および負電圧下において異なる活性を示すという考察に基づくものである。換言すれば、高容量デバイスを得る方法は、電圧掃引時に最高の電気活性を示す導電性ポリマー材料を使用することである。
【0076】
本発明のさらにその他の実施形態では、DLC用電極に上記材料を用い、この際2つの電極のうち一方は多孔性炭素材料を含んで構成され、他方は本発明の多孔性炭素材料/導電性ポリマー複合体を含んで構成される。この構造は驚くほどの高容量を示す。
【0077】
本発明のさらにその他の実施形態では、DLC用電極に上記材料を用い、この際2つの電極のうち一方は金属酸化物を含んで構成され、他方は本発明の多孔性炭素材料/導電性ポリマー混合物を含んで構成される。この構造は、金属酸化物電極の酸化還元特性を利用して高容量を得る場合に特に有効である。金属酸化物電極材料として特に好ましい例は、酸化ルテニウムおよび酸化インジウムである。
【0078】
さらに、本発明において、無機材料/導電性ポリマー複合体が、フィルムまたはその他の成形体に形成される場合、安定剤、光安定剤、充填剤、結合剤、導電率付与剤などを、必要に応じて加えてもよい。
【0079】
DLCの電極材料として炭素/コロイド状導電性ポリマー混合物を使用する効果は、非常に驚くべきである。DLCに用いられる(活性)カーボンブラックの存在下またはその表面上で導電性ポリマーを重合して作製される形式のキャパシタ類と比較して、本発明の混合物を使用して作製されるキャパシタ類は著しく良好な特性を発揮する。しかし、本発明の範囲は、本発明に従って作製されるDLCの特性によって制限されるものではないことに注意すべきである。すなわち、より低い性能を示すDLCも本発明の範囲内であると考えられる。
【0080】
静電容量は、例えば、50F/g以上から200F/g以上までの範囲であり、出力密度は、例えば、約1,000から数千W/kgの範囲であり、エネルギー密度は、例えば、約10〜100Wh/kg以上までの範囲である。
【0081】
図6および図11(ラゴン(Ragon)プロット)に見られるように、この一連の特性によって、本発明のDLCは、現在の技術水準下のDLCs(スーパーキャパシタ類)やリチウムイオン電池よりも著しく高い、現在の到達可能範囲を超えた出力およびエネルギー密度範囲を有する。
【0082】
この驚くべき効果のいくつかの理由は、この説明によって制限されるものではないが、(a)接着剤またはフィルム形成添加剤の必要が全くない(金属集電体の表面に接着性電極材層が形成されるため)、(b)より低い内部抵抗、および(c)レドックス反応が付加的に起こり得ることであり、これらすべてが一緒になって、利用可能表面(電荷キャリヤ−およびそれらの交換に利用できる)、電極材料上の電解質の湿潤性、およびエネルギー密度(重量あたりの電荷)を向上させることにあると思われる。
【実施例】
【0083】
[実施例1]多孔性炭素材料/導電性ポリマー複合体電極の製造
粉末状のヤシ殻活性炭(まだ活性化されてない)18gを導電性ポリマー分散液(ORMECON7301−026−002、キシレン中に導電性ポリアニリンを分散させたもの;固形分:2.2%)90.9gに分散させ、その混合物を遊星型ボールミルで60分間撹拌した。多孔性炭素材料/導電性ポリマーのスラリーに、キシレン57.3gをさらに加え、その混合物を撹拌モータによって30分間撹拌し、多孔性炭素材料/導電性ポリマー分散液を作った。
【0084】
キャパシタ用電極は、キャパシタに使用する電解質溶液に適合する集電板を必要とする。この実施例では、電解液として硫酸水溶液(1mol/l)を用いる場合には、電極として白金板を用い、電解液としてプロピレンカーボネートを用いる場合には、電極としてアルミニウムを用いた。上記キャパシタの実際の電極において、集電板として白金を用いる際には、白金板の表面を最初にヤスリがけし、それから上記のように調製した一定量の多孔性炭素材料/導電性ポリマーの分散液でコーティングした。その後、コーティングした白金板を100℃の高温槽内に1時間放置して有機溶媒を十分に除去した。このようにして形成した電極について、電極活物質を秤量し、キャパシタ用電極として直接使用した。
【0085】
テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの1mol/lプロピレンカーボネート溶液を、有機溶媒系電解液として使用する場合には、アルミニウム板を集電板として用いた。アルミニウム集電板をヤスリがけし、一定量の多孔性炭素材料/導電性ポリマー分散液を、集電板として白金板を使用する場合と同様なやり方でコーティングした。その後、100℃で24時間乾燥し、湿気を十分除去した。
【0086】
多孔性炭素材料/導電性ポリマー複合体電極を形成に用いた分散液の成分を以下の表1に示す。
【0087】
【表1】
【0088】
[実施例2]キャパシタセルの製造
実施例1で作製した、密着した電極活物質を含む各電極板を打ち抜いて直径1cmの円板にし、2つの電極を作製する。ガラス繊維フィルターを直径1.5cmの円形に打ち抜き、セパレータとして使用する。さらに、水系の場合には硫酸の1M水溶液を電解液として使用する。有機溶媒系の場合にはテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの1Mプロピレンカーボネート溶液を電解液として使用する。
【0089】
キャパシタ特性の評価
測定器具:各キャパシタセルの内部抵抗は、ヒューレット・パッカード・ディベロップメント社(Hewlett−Packard・Development・Company,L.P.)製のインピーダンス分析器 YHP4192A を使用して測定した。充放電試験の測定は、トーヨーシステム社(TOYO System,Co.LTD)製の トーヨーシステムTOSCAT−3100U を使用して行った。
【0090】
実験例1に示す電極活物質を使用したキャパシタの充放電試験の結果を以下の表2に示す。
【0091】
【表2】
【0092】
内部抵抗の測定結果を図1および図2に示す。測定は、実験2および実験5の分散成分を用いる電極を使用し、電解液として1M硫酸溶液を用いて形成されたキャパシタセルを使用して行われた。
【0093】
[比較例]
活性炭(比表面積1600cm2/g)60重量%、カーボンブラック30重量%、および結合剤であるテトラフルオロエチレン10重量%を含む電極材料混合物を調製した。フィルム形成のために、この混合物にメタノールを加えた。圧延法で電極シート(幅10mm、長さ10mm、厚み3mm)を作った。このシートを250℃で、それ以外は大気条件で乾燥した。
【0094】
その後、充放電試験を実施例2と同様の方法で行った。この場合、充電容量は約4.7F/gに過ぎなかった。
【0095】
[実施例3]
1)試剤および装置:
KABEBO LTD製のBELLFINE APを活性炭材料として使用した。
【0096】
D1005W(ポリアニリンの水分散液)および7201−026−001(ポリアニリンのキシレン分散液)(両方ともオルメコン社製(Ormecon GmbH)、アンメルスベク、ドイツ)をコロイド状導電性ポリマーとして使用した。
【0097】
充放電試験は、TOCAT−3100Uバッテリー試験ユニット(トーヨーシステムズ社)を使用して行った。インピーダンス特性は、4192ALFインピーダンス分析器(ヒューレット・パッカード)を用いて測定した。
【0098】
2)導電性ポリマーおよび活性炭の混合物の調製:
上記混合物は以下の方法により調製した。活性炭8.0gおよびORMECON7201−026−001(固形分:2.20%)90.9gを、衛星型ボールミルを用いて60分間混合した。この混合物を電極材料として使用した。電極フィルムを、アルミニウム板に、上記材料の200μm塗膜をコーティングして作製した。ウェット状態のフィルムを大気下、100℃で乾燥した。
【0099】
結果:
1.ポリアニリン有機(キシレン)分散液(7201−026−001)から得られた組成物
充放電試験は、7201−026−001とBELLFINE APとの混合物を含む薄いフィルムを用いて行われた。充放電特性は、0.5mA/cm2、1mA/cm2、および5mA/cm2で測定した。これらの条件下における初期容量を表3に示す。
【0100】
ICPベース−キャパシタの初期容量
【表3】
【0101】
出力密度およびエネルギー密度は共に優れていた。この静電容量は、BELLFINE炭素のみから作製されたキャパシタのそれより大きい。“BELLFINEのみ”のキャパシタでは、静電容量は約30F/gに過ぎない。サイクル試験の結果を図3、図4および図5に示す。
【0102】
4000サイクル試験後、静電容量は初期値の約1/3に減少した。4000サイクル後の静電容量を表4に示す。
【0103】
4000サイクル後のICPベース−キャパシタの静電容量
【表4】
【0104】
このサイクル試験データのラゴン−プロットを図6に示す。評価キャパシタの静電容量が、従来のものより高いことがわかる。特に、エネルギー密度はサイクル数の増加と共に減少する。しかし、出力密度は初期値に比較してほとんど変化していないことが明らかである。5mA/cm2条件の場合、約4500サイクル後には特性は速やかに悪化した。
【0105】
抵抗成分を理解するために、インピーダンス特性を測定した。インピーダンスの測定は、5Hzから13MHzまでの範囲で行った。しかしながら、イオン種の界面作用はこの周波数領域で見ることができない。最初に、抵抗成分をコ−ル−コ−ル・プロットによってチェックした。その後、最初の抵抗成分のコ−ル−コ−ル・プロットと4000サイクル後の抵抗成分のそれとを比較することで、各抵抗の変化を適合させた。このキャパシタの場合、等価回路は次のように描かれる;
【0106】
【化1】
【0107】
キャパシタの場合、R1は電極界面インピーダンスと直列する溶液抵抗であり、R2は可逆電位における電極過程のファラデー抵抗である。この数値は、導電性ポリマーの抵抗によって影響を受ける。コール−コール・プロットを図7に示す。
【0108】
R1およびR2の数値を表5に示す。
【0109】
導電性ポリマーおよび活性炭の混合物を電極として用いるキャパシタの抵抗
【表5】
【0110】
上記のデータから、R1はいずれの電流密度でも変化していないが、R2は4000サイクルで劇的に変化していることがわかる。この変化は、ドーパントの脱離、導電性ポリマーの酸化、ポリマーの分解など、導電性ポリマーの抵抗の変化が原因であると推定される。
【0111】
2.水分散ポリアニリン(D1005W)
D1005WとBELLFINE APとの混合物から作製されたAl板上の薄膜を使用して充放電試験を行った。充放電試験は、0.5mA/cm2、1mA/cm2、および5mA/cm2で行った。これらの条件における初期容量を表6に示す。
【0112】
ICPベースのキャパシタの初期容量
【表6】
【0113】
D1005Wを使用したキャパシタのエネルギー密度は、7201−026−001を用いたキャパシタのそれよりも小さかった。サイクル試験の結果を、図8、図9および図10に示す。
【0114】
1.0mA/cm2の場合に、静電容量の変化はサイクル試験では認められなかった。しかし、5.0mA/cm2の場合には静電容量の急速な低下が1000サイクルで認められた。4000サイクル後の静電容量のデータを表7に列挙する。
【0115】
4000サイクル後のICPベース−キャパシタの静電容量
【表7】
【0116】
サイクル試験のラゴン−プロットを図11に示す。
【0117】
このデータによれば、エネルギー密度はサイクル数の増加につれて減少することが明らかである。しかし、出力密度は初期値に比べてほとんど変化しない。電流密度1.0mA/cm2では、出力密度およびエネルギー密度は約4000サイクルで非常に安定していた。5.0mA/cm2では出力密度は約1000サイクル後に速やかに悪化した。
【0118】
抵抗成分を分析するために、インピーダンス分析器を用い、インピーダンス測定を行った。インピーダンス測定の結果を図12に示す。
【0119】
コール−コール・プロットからのR1およびR2値を表8に示す。
【0120】
電極として導電性ポリマーおよび活性炭混合物を使用したキャパシタの抵抗
【表8】
【0121】
このR2の抵抗成分は、7201−026−001ベースのキャパシタのR2のそれよりも大きい。理論的に裏付けられているわけではないが、D1005Wベースのキャパシタと7201−026−001ベースのキャパシタとの間のR2抵抗の差は、D1005Wおよび7201−026−001の間の導電率の差に起因すると考えられる。R1およびR2抵抗は両方とも4000サイクル後は劇的に増加した。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】図1は比表面積1600m2/gの多孔性炭素材料を使用するキャパシタの内部抵抗(インピーダンス特性)を示す。
【図2】図2は比表面積1100m2/gの多孔性炭素材料を使用するキャパシタの内部抵抗(インピーダンス特性)を示す。
【図3】図3は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度0.5mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図4】図4は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度1.0mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図5】図5は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度5.0mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図6】図6は、サイクル試験データのラゴン−プロットを示す。
【図7】図7は、コール−コール・プロットを示す。
【図8】図8は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度0.5mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図9】図9は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度1.0mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図10】図10は、テトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートの0.01Mプロピレンカーボネート電解液を用い、電流密度5.0mAおよび電圧2.0Vにおけるキャパシタのサイクル試験結果を示す。
【図11】図11は、サイクル試験のラゴン−プロットを示す。
【図12】図12は、導電性ポリマーと活性炭との混合物を電極として使用したキャパシタのコール−コール・プロットである
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コロイド状導電性ポリマーと炭素とを含んでなる、コーティングを形成できる組成物。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、アニリン類、チオフェン類、ピロール類およびそれらの置換誘導体のポリマー類から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
2種類以上の異なる導電性ポリマーが存在する請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
BET法で測定した際に、前記炭素が100m2/gより大きい比表面積を有する先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項5】
前記炭素が、グラファイト、カーボンブラック、ナノチューブ類およびフラーレン類から選択される先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項6】
前記炭素が、活性カーボンブラックである請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記活性カーボンブラックが、750m2/gより大きい比表面積を有する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記導電性ポリマーの平均粒子サイズ(数平均)が、500nmより小さい先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項9】
前記導電性ポリマーの導電率が、10-5S/cmより大きい先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項10】
前記導電率が、10S/cmより大きい請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記導電率が、100S/cmより大きい請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記導電性ポリマー対炭素の重量比が、1:50〜50:1の範囲内にある先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、周囲条件下で蒸発可能な液体分散媒質を40〜99.5重量%濃度、およびその他の非蒸発性添加剤を0〜10重量%濃度で含み、前記導電性ポリマーおよび炭素成分が0.5〜60重量%濃度で存在し、全ての重量%が総組成物をベースにしている、先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項14】
前記液体分散媒質が、水および/または有機溶媒(類)を含む請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記導電性ポリマーおよび炭素、並びに任意の添加剤を前記液体分散媒質中に分散し、任意に、基質に塗布後、液体分散液を乾燥することを含む、先行請求項のいずれかの項に記載の組成物の製法。
【請求項16】
前記導電性ポリマーを第一の液体に分散し、これとは別に前記炭素を第二の液体に分散し、前記液体類は同じでも異なっていてもよく、それぞれの分散液をその後混合し、任意の添加剤を、前記個々の分散工程の前、最中または後に添加する請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記導電性ポリマーを液体に分散し、これとは別に前記炭素を液体の不在下で粉砕し、続いて、前記粉砕した乾燥炭素を前記導電性ポリマーの液体コロイド状分散液に加え、この分散液中に分散させる請求項15記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項15〜17のいずれかの項に記載の方法によって基質上コーティングの形で得られる組成物を含む複合材料。
【請求項19】
前記基質が金属類、半導体類、プラスチック、セラミックスおよび木材製品からなる群から選択される請求項18記載の複合材料。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項18もしくは19記載の複合材料を含む電気または電子製品。
【請求項21】
前記製品が、コンダクタ類、エネルギー貯蔵器類、センサ類、スイッチ類、コンデンサ類、キャパシタ類およびスーパーキャパシタ類、二重層キャパシタ類およびレドックスキャパシタ類からなる群から選択される請求項20記載の製品。
【請求項22】
前記製品が、電解質および一対の電極、並びにこれら電極間のセパレータを含むキャパシタであって、前記電極の少なくとも1つが請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項18もしくは19記載の複合材料を含む請求項21記載の製品。
【請求項23】
両電極が請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項18もしくは19記載の複合材料を含む請求項22記載のキャパシタ。
【請求項24】
一方の電極が、請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項17もしくは18記載の複合材料を含み、他方の電極が、従来のキャパシタ電極である請求項22記載のキャパシタ。
【請求項25】
前記他方の電極が、固有導電性ポリマーを含むが炭素を含まない組成物でコーティングされた集電体を含む請求項24記載のキャパシタ。
【請求項1】
コロイド状導電性ポリマーと炭素とを含んでなる、コーティングを形成できる組成物。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、アニリン類、チオフェン類、ピロール類およびそれらの置換誘導体のポリマー類から選択される請求項1記載の組成物。
【請求項3】
2種類以上の異なる導電性ポリマーが存在する請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
BET法で測定した際に、前記炭素が100m2/gより大きい比表面積を有する先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項5】
前記炭素が、グラファイト、カーボンブラック、ナノチューブ類およびフラーレン類から選択される先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項6】
前記炭素が、活性カーボンブラックである請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記活性カーボンブラックが、750m2/gより大きい比表面積を有する請求項6記載の組成物。
【請求項8】
前記導電性ポリマーの平均粒子サイズ(数平均)が、500nmより小さい先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項9】
前記導電性ポリマーの導電率が、10-5S/cmより大きい先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項10】
前記導電率が、10S/cmより大きい請求項9記載の組成物。
【請求項11】
前記導電率が、100S/cmより大きい請求項10記載の組成物。
【請求項12】
前記導電性ポリマー対炭素の重量比が、1:50〜50:1の範囲内にある先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項13】
さらに、周囲条件下で蒸発可能な液体分散媒質を40〜99.5重量%濃度、およびその他の非蒸発性添加剤を0〜10重量%濃度で含み、前記導電性ポリマーおよび炭素成分が0.5〜60重量%濃度で存在し、全ての重量%が総組成物をベースにしている、先行請求項のいずれかの項に記載の組成物。
【請求項14】
前記液体分散媒質が、水および/または有機溶媒(類)を含む請求項13記載の組成物。
【請求項15】
前記導電性ポリマーおよび炭素、並びに任意の添加剤を前記液体分散媒質中に分散し、任意に、基質に塗布後、液体分散液を乾燥することを含む、先行請求項のいずれかの項に記載の組成物の製法。
【請求項16】
前記導電性ポリマーを第一の液体に分散し、これとは別に前記炭素を第二の液体に分散し、前記液体類は同じでも異なっていてもよく、それぞれの分散液をその後混合し、任意の添加剤を、前記個々の分散工程の前、最中または後に添加する請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記導電性ポリマーを液体に分散し、これとは別に前記炭素を液体の不在下で粉砕し、続いて、前記粉砕した乾燥炭素を前記導電性ポリマーの液体コロイド状分散液に加え、この分散液中に分散させる請求項15記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項15〜17のいずれかの項に記載の方法によって基質上コーティングの形で得られる組成物を含む複合材料。
【請求項19】
前記基質が金属類、半導体類、プラスチック、セラミックスおよび木材製品からなる群から選択される請求項18記載の複合材料。
【請求項20】
請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項18もしくは19記載の複合材料を含む電気または電子製品。
【請求項21】
前記製品が、コンダクタ類、エネルギー貯蔵器類、センサ類、スイッチ類、コンデンサ類、キャパシタ類およびスーパーキャパシタ類、二重層キャパシタ類およびレドックスキャパシタ類からなる群から選択される請求項20記載の製品。
【請求項22】
前記製品が、電解質および一対の電極、並びにこれら電極間のセパレータを含むキャパシタであって、前記電極の少なくとも1つが請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項18もしくは19記載の複合材料を含む請求項21記載の製品。
【請求項23】
両電極が請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項18もしくは19記載の複合材料を含む請求項22記載のキャパシタ。
【請求項24】
一方の電極が、請求項1〜14のいずれかの項に記載の組成物、または請求項17もしくは18記載の複合材料を含み、他方の電極が、従来のキャパシタ電極である請求項22記載のキャパシタ。
【請求項25】
前記他方の電極が、固有導電性ポリマーを含むが炭素を含まない組成物でコーティングされた集電体を含む請求項24記載のキャパシタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−529586(P2007−529586A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503295(P2007−503295)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002889
【国際公開番号】WO2005/090446
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(504224957)オルメコン・ゲーエムベーハー (10)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002889
【国際公開番号】WO2005/090446
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(504224957)オルメコン・ゲーエムベーハー (10)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】
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