コンクリート構造物の劣化診断方法
【課題】コンクリート構造物の表面及び内部における泥濘化、ポーラス化などの劣化状況を面的に客観的に把握できるようにする。
【解決手段】送信アンテナから電磁波を放射すると共に反射波を受信アンテナで受信する電磁波レーダを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して平面座標位置に対応した反射波データを記録し、各反射波データについて、(1)コンクリート表面近傍からの直接波を抽出して振幅最大値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波振幅の減衰度が大きい表面劣化箇所を2次元的に把握する表面解析、(2)コンクリート内部からの散乱波の振幅値のRMS値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波散乱度の大きい内部劣化箇所を2次元的に把握する内部解析、を行い、上記(1)及び(2)の結果を組み合わせて、表面及び内部のコンクリートの劣化状況を診断する。
【解決手段】送信アンテナから電磁波を放射すると共に反射波を受信アンテナで受信する電磁波レーダを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して平面座標位置に対応した反射波データを記録し、各反射波データについて、(1)コンクリート表面近傍からの直接波を抽出して振幅最大値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波振幅の減衰度が大きい表面劣化箇所を2次元的に把握する表面解析、(2)コンクリート内部からの散乱波の振幅値のRMS値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波散乱度の大きい内部劣化箇所を2次元的に把握する内部解析、を行い、上記(1)及び(2)の結果を組み合わせて、表面及び内部のコンクリートの劣化状況を診断する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波レーダを用いるコンクリート構造物の劣化診断方法に関し、更に詳しく述べると、反射波形の解析により表面及び内部の劣化状況を同時に且つ面的に把握できるようにしたコンクリート構造物の劣化診断方法に関するものである。この技術は、例えば経年変化が進んだ導水路トンネルなどの覆工コンクリートの劣化診断に有用である。
【背景技術】
【0002】
導水路トンネルなどでは、通常、覆工にコンクリートが用いられている。長期間にわたり使用が続くと、経年変化が著しい箇所においては変質・劣化が生じてくる。即ち、覆工コンクリート表面での泥濘化、覆工内部におけるポーラス化などである。このような変質・劣化は強度不足の大きな要因となる。劣化箇所を的確に把握できれば、営繕工事を進める上で極めて有利であり、維持管理計画に貢献できる可能性が高い。
【0003】
従来、このようなコンクリート劣化状況の調査では、表面の変色部や変状部を目視観察し、その変色部や変状部の分布を面的に把握する方法が採用されている。また、コンクリート内部の劣化については、打音法や赤外線法による検査が行われることが多い。しかし通常行われている打音法は、測定者が音を聞き分けて判定するため、打音検査の判定結果に客観性が乏しい場合があり、測定が非効率であるばかりでなく、記録が残らないという問題がある。また赤外線法は、加熱源が必要になり測定装置が大掛かりになる他、深度10cm〜20cm以深では検出困難である。
【0004】
ところで周知のように、地下構造を調査する機器として電磁波レーダ(地中レーダ)がある。この電磁波レーダは、測線沿いの連続測定を効率的に行うことが可能なため、構造物全体を検査するのに適しており、しかも探査可能深度も深く、定量的な解析が可能なため、地中探査のみならず、コンクリート構造物の調査にも応用されている。しかし従来の使用方法は、単一測線での測定データを用いてトンネル覆工厚・背面空洞及び鉄筋のかぶりと位置、あるいは支保工の深度と位置などを求める場合がほとんどである。
【0005】
ところが最近、電磁波の振幅・反射率からコンクリートの内部欠陥を検出することが試みられている(特許文献1参照)。これは、内部欠陥の性状の相違により、その内部欠陥の境界(健全部と欠陥部との境界)での反射率が異なり、結果として反射波振幅の減衰度合いが異なることを利用するものである。内部欠陥の境界からの反射波に関する時間−振幅関係からコンクリート内部に隠れている空洞、ジャンカ、低強度コンクリートのような欠陥の種別と深さ又は厚みなどを判定する。
【0006】
しかし、この技術は、健全部と内部欠陥との境界での反射波の振幅と位置を検出する方法であるから、内部欠陥の境界が明確でないと検出が難しい。また内部欠陥の分布状況を2次元的あるいは3次元的に捉えようとするものではない。
【特許文献1】特開2005−43197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、コンクリート構造物の表面及び内部における泥濘化やポーラス化などの劣化状況を面的に客観的に把握できるようにすることである。本発明が解決しようとする他の課題は、一般に暗く狭い環境での作業になるトンネル覆工コンクリートなどの劣化状況の調査を効率よく実施できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、送信アンテナから電磁波を放射すると共に反射波を受信アンテナで受信する電磁波レーダを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して平面座標位置に対応した反射波データを記録し、各反射波データについて、
(1)コンクリート表面近傍からの直接波を抽出して振幅最大値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波振幅の減衰度が大きい表面劣化箇所を2次元的に把握する表面解析、
(2)コンクリート内部からの散乱波の振幅値のRMS値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波散乱度の大きい内部劣化箇所を2次元的に把握する内部解析、
を行い、上記(1)及び(2)の結果を組み合わせて、表面及び内部のコンクリートの劣化状況を面的に把握可能としたことを特徴とするコンクリート構造物の劣化診断方法である。なお、RMSは振幅の2乗和の平均の平方根であり、一種の波形エネルギーを表している。これは、受振波形の数が多いほど、あるいは振幅が大きいほど、大きな値になる。
【0009】
表面解析では、反射波データで、コンクリート表面から直接波が終了する深度までの範囲の時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値の絶対値の最大値を求め、その最大値をその波形の直接波減衰度の代表値とする。また内部解析では、反射波データで散乱波を含むように時間軸に沿って時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とするのがよい。ここで内部解析において、反射波データで散乱波を含むと考えられる範囲内で、時間軸に沿って時間窓を複数設定し、各時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値を、その時間窓での電磁波散乱度の代表値とすると、深度方向にも連続した3次元データを作成することができる。
【0010】
本発明による劣化診断方法が有効なコンクリート構造物として、代表的な例にはトンネル覆工がある。その場合、内部解析では、反射波データで、直接波が終了する深度から覆工背面深度まで、もしくは直接波が終了する深度から電磁波周波数により決まる最大探査深度まで、のいずれか狭い範囲を計算範囲に設定し、その計算範囲に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とするのがよい。
【0011】
本発明では、中心周波数の異なる電磁波を送受する送信アンテナと受信アンテナの対を複数並設した複合アンテナ・システムを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して、中心周波数の異なる電磁波の平面座標位置に対応した反射波データを同時に記録するように構成するのが好ましい。具体的には、例えば中心周波数が数百MHz〜千数百MHzの範囲内で異なる高低2種類のアンテナを並設したデュアル・アンテナ・システムを使用し、中心周波数が低い方の(典型的には400MHz用)アンテナの反射データから覆工厚を読み取り、中心周波数が高い方の(典型的には900MHz用又は1500MHz用)アンテナで覆工内部のRMS値を求める。これによって覆工コンクリート内部の劣化を診断することができる。更に、上記の覆工厚と、中心周波数が低い方の(典型的には400MHz用)アンテナで求めた覆工背面のRMS値を加味し総合的に判断することでトンネルの健全度を評価することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリート構造物の劣化診断方法は、電磁波の反射波データのうち、直接波の振幅最大値を求め平面分布図を作成して、電磁波振幅の減衰度が大きい箇所を2次元的に把握することで表面劣化の解析ができ、また散乱波の振幅値のRMS値を求め平面分布図を作成して、電磁波散乱度の大きい箇所を2次元的に把握することで内部劣化の解析ができる。これらによって、コンクリート構造物の表面及び内部の泥濘化やポーラス化などによる劣化状況を同時に客観的に把握することができ、それら劣化状況の面的な分布を取得することができる。
【0013】
特にトンネル覆工の場合、一般に暗く狭い環境での作業になるが、デュアル・アンテナ・システムを備えている小型の電磁波レーダを走査するだけで実施できる本発明方法は、覆工厚や支保部材の配置などの大まかな状況と詳細な内部劣化状況の両方を、同時に同一測線上で把握できるため、極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明方法をトンネル覆工コンクリートの劣化診断に適用した場合を例にとって、図1により説明する。図1のAに示すように、トンネル覆工のコンクリート壁面10の表面上で上下方向の測線12(点線矢印で示す)を多数本、所定の間隔で平行に設定する。ここでは測線を上下方向に設定しているが、現場状況によっては水平方向に設定してもよいことは言うまでもない。そして、電磁波レーダ14を、面的に設定した前記測線12に沿って白抜き矢印方向に移動し順次走査する。送信アンテナTと受信アンテナRを測線に沿って配置して、送信アンテナTから電磁波を放射すると共に反射波を受信アンテナRで受信し、受信した反射波データ(往復伝播時間に対する反射波振幅)を、その測定点での平面座標位置と共に記録する。これを繰り返すことによって、調査が必要なコンクリート壁面全体にわたって、平面座標位置と反射波データの組を多数取得する面的な測定を行う。
【0015】
取得した各反射波データについて、(1)表面解析を行う。まず、反射波データのなかからコンクリート表面近傍からの直接波を抽出する。そして、抽出した直接波の振幅最大値を求める。この作業を、面的に測定した全ての反射波データについて行う。平面座標位置と対応させることで、抽出した振幅最大値の平面分布図を作成し、図1のBに示すように、平面的に見た状態での直接波振幅の小さい箇所(電磁波振幅の減衰度が大きい箇所)を抽出する。減衰度が小さい領域が健全部20であり、減衰度が大きい領域が表面劣化部22となる。
【0016】
また各反射波データについて、(2)内部解析を行う。まず、反射波データのなかからコンクリート内部からの散乱波を抽出する。そして、それらのRMS値を求める。この作業を、面的に測定した全ての反射波データについて行う。平面座標位置と対応させることで、RMS値の平面分布図を作成し、図1のCに示すように、平面的に透視した状態での散乱波RMS値の大きい箇所(電磁波散乱度の大きい箇所)を抽出する。散乱度が小さい領域が健全部20であり、散乱度が大きい領域が内部劣化部24となる。
【0017】
そこで、上記(1)の表面解析及び(2)の内部解析の結果を組み合わせることで、図1のDに示すように、平面的に透視した状態でコンクリートの表面及び内部における劣化状況が面的に把握可能となる。これによって、健全部20、表面劣化部22、内部劣化部24、表面及び内部劣化部26の面的な領域を特定することができる。
【0018】
なお、上記の(1)及び(2)は便宜上付した符号であり、処理の順序を示すものではない。(1)の表面解析を先に行ってもよいし、(2)の内部解析を先に行ってもよい。勿論、(1)と(2)の解析を同時並行して処理してもよい。
【0019】
次に、測定点での電磁波反射の挙動の例を図2により説明する。送信アンテナからコンクリート壁面10に向けて電磁波が放射される。そして放射された電磁波は、一部が表面近傍を送信アンテナから受信アンテナへと伝播し、直接波として受信される。図2のAに示すように、コンクリート表面近傍が健全であれば、表面近傍を伝播する直接波の振幅は大きい。また放射電磁波は、透過波として覆工コンクリート内を進む。透過波は、覆工コンクリート内での状況に応じて反射・散乱を生じ、それらも受信アンテナで受信される。覆工コンクリートの内部も健全であれば、内部での散乱は少ない。
【0020】
図2のBに示すように、もしコンクリート壁面に泥濘化などによる表面劣化部22があれば、表面劣化部の導電率が比較的大きくなり、電磁波の吸収が大きくなるために、直接波の振幅が小さくなる(減衰度が大きくなる)。直接波の減衰度によって、目視などに頼ることなく表面劣化部22の検知を行うことができる。また、図2のCに示すように、コンクリートにポーラス化などによる内部劣化部24があれば、ある幅をもって反射面が多数存在していることになるから、内部劣化部24を通った波は乱反射する。コンクリート内部で乱反射した反射波(散乱波)の振幅値のRMS値で代表させることで、内部劣化部24の検知を行うことができる。
【0021】
図3は、反射波データの一例を示している。これは往復伝播時間に対する振幅の変化を表す波形イメージである。直接波は、表面近傍(例えば表面〜5cm程度の深さまで)での反射であり、往復伝播時間の短い領域で生じることから、その往復伝播時間の範囲を規定することで特定できる。この直接波の減衰度(振幅最大値の減衰の度合い)は、表面部の情報を含んでいる。散乱波は、内部(例えば表面下5cm〜覆工厚内)で生じることから、往復伝播時間がある程度長い領域で生じる。電磁波の伝播速度は既知であるし、覆工厚が分かっていれば、散乱波が生じていると考えられる範囲は往復伝播時間の範囲として特定できる。その散乱波振幅のRMS値を散乱度とすると、その散乱度は内部情報を含んでいる。
【0022】
図4は、劣化部が存在する場合の電磁波レーダによる反射波形イメージを示している。Aは表面が劣化している場合の例である。破線は、表面及び内部共に健全な場合であり、減衰度は小さく、散乱度も小さい。それに対して実線は、表面のみ劣化し内部は健全な場合であり、減衰度は大きく、散乱度は小さい。直接波で比較すると、泥濘化などの表面劣化要因で、劣化部での振幅最大値は健全な場合の振幅最大値よりも小さくなる(減衰度が大きくなる)。減衰度が大きいほど、表面劣化が進んでいることを表している。Bは内部のみ劣化している場合の例である。破線は、表面及び内部共に健全な場合であり、減衰度は小さく、散乱度も小さい。それに対して実線は、表面は健全で内部のみが劣化している場合であり、減衰度は小さいが、散乱度は大きい。散乱波は、ポーラス化(多孔質化)などの内部劣化要因で、振幅値が全体的に大きくなる(散乱度が大きくなる)。散乱度が大きいほど、内部劣化が進んでいることを表している。
【0023】
このようなことから、直接波の減衰度と散乱波の散乱度を平面座標位置に対応させることで、図1のDに示すように、劣化部を面的に診断・評価することができる。なお、健全と劣化の判定の閾値をどのレベルに設定するかは、電磁波測定の結果と壁面の目視観察結果(変色部や変状部)、穿孔によるサンプル採取の調査結果などとの対比に基づき決定すればよい。図1のDでは、健全か劣化かというように2値的な判定を行っているが、減衰度・散乱度によって劣化を複数の度合で判定し、コンターマップを描かせることも可能である。
【0024】
実際の電磁波レーダによる反射波の測定データは、時間軸に関して連続的な振幅測定値ではなく、微小時間間隔毎にサンプリングした離散的な振幅測定値である。微小時間間隔毎にサンプリングしたN個の測定時点(測定順序:i=1〜N)での振幅測定値Xi が、メモリに記憶される。従って、それらの離散的な振幅測定値をプロットして順次結ぶと、図5に示すような反射波形が得られる。
【0025】
表面解析(直接波振幅解析)では、電磁波レーダの測定波形データより、コンクリート表面から直接波が終了する深度までの範囲の時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値の絶対値の最大値を、その波形の直接波減衰度の代表値とする。各々の波形には平面座標位置が設定されており、これらの代表値の平面分布図を作成することでコンクリート表面からの反射波(直接波)振幅の減衰度が大きい領域を検出する。
【0026】
具体的には次のようにする。離散値である電磁波レーダ波形記録による振幅測定値Xi (i=1,2,…,N)から、直接波のみを含む範囲と考えられる時間窓WD を、測定順序iにより次のように設定する。
WD :nd1≦i≦nd2
そして、ある測定波形における直接波の減衰度を示す代表値Aを次のように求める。
A=max|Xi |
但し、i∈WD
各々の波形についてAの値を求め、各波形の平面座標位置と合わせることで、減衰度Aの平面分布図を作成する。
【0027】
内部解析(散乱波振幅解析)では、電磁波レーダの測定波形データより反射波データで散乱波を含むように時間軸に沿って時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とする。各々の波形には平面座標位置が設定されており、これらの代表値の平面分布図を作成することでコンクリート内部での電磁波の散乱度が大きい領域を検出する。
【0028】
具体的には次のようにする。離散値である電磁波レーダ波形記録による振幅測定値Xi (i=1,2,…,N)から、散乱波を含む範囲と考えられる時間窓WS を、測定順序iにより次のように設定する。
WS :ns1≦i≦ns2
そして、ある測定波形における電磁波の散乱度を示す代表値Sを次のように求める。
S=(Σ(Xi2)/ND )1/2
但し、i∈WS
ND =ns2−ns1+1
各々の波形についてSの値を求め、各波形の平面座標位置と合わせることで、散乱度Sの平面分布図を作成する。
【0029】
このようにして、減衰度A及び散乱度Sの平面分布図を作成し、それらを総合することによって、表面劣化部及び内部劣化部を特定することができる。本発明方法により特定した劣化部は、コンクリート表面の変色部や変状部とよく対応していることが確認された。
【0030】
なお、上記の説明では、散乱波振幅解析において時間窓WS を1箇所のみ設定しているが、時間窓を時間軸にとって複数設定することもできる。つまり、反射波データで散乱波を含むと考えられる範囲内で、時間軸に沿って時間窓を複数設定し、各時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値を、その時間窓での電磁波散乱度の代表値とする。このようにすると、深度方向で連続した3次元データの作成・図示も可能となる。
【実施例】
【0031】
図6は、本発明方法による導水路トンネルの覆工コンクリートの劣化調査状況を示す説明図である。導水路トンネル30内で電磁波レーダ32を走行させる。電磁波レーダ32には、中心周波数の異なる2種類のアンテナ34a、34bを並設したデュアル・アンテナ・システムが搭載されている。両方のアンテナ34a、34bは、それぞれ送信アンテナと受信アンテナの対からなる。アンテナ34a、34bを、覆工面に(例えばアーチ部を対象に50cm程度の間隔で)設定した多数本の探査測線(点線で示す)に沿って、覆工面に密着させながら走査し、その走査を繰り返して覆工コンクリートのほぼ全面にわたって、周波数の異なる電磁波の平面座標位置に対応した反射波データを同時に記録するような調査を行う。特に、導水路トンネルの場合は、暗く狭いことの他、長期間にわたる流水の侵食などにより床面が平坦ではなくなっていることが多いので、中心周波数の異なる複数のアンテナを別々に走査したのでは、同じ測線上の測定データを得ることは困難であるが、デュアル・アンテナ・システムにすると、測定作業が半減するばかりでなく、異なるアンテナを同じ測線上で走査させ、同じ測線上での測定データを得ることができる利点がある。
【0032】
導水路トンネルの場合には、施工年代が古いこともあり、地山の掘削状況により覆工厚が数cmから60cm程度まで大きく変化することが予想される。電磁波レーダの周波数と探査深度と分解能は、おおよそ次のようである。
・周波数400MHzでは、探査深度は80〜100cm以内、分解能は10cm程度
・周波数900MHzでは、探査深度は50cm以内、分解能は5cm程度
・周波数1500MHzでは、探査深度は30cm以内、分解能は2〜3cm程度
つまり、周波数が高い方が分解能に優れており、覆工コンクリート内部の電磁波散乱の様子の把握には適している。逆に周波数が低い方は電磁波がより深くまで透過するので、覆工厚の把握には適している。従って、覆工厚が大きく変化する場合には、単一のアンテナでは対応できない場合が生じる。また、支保工の深度(即ち覆工厚)と間隔によっては、それらにより電磁波が反射されて、より深部の記録が得られない場合がある。周波数の高いアンテナほど影響を受け難い。これらに対応するためには、複数の周波数のアンテナで同時測定を行うことが有効である。使用する電磁波の周波数は任意であってよいが、デュアル・アンテナ・システムとしては、例えば通常の地中レーダで用いられている400MHz用と1500MHz用の2種類とするのがよい。
【0033】
上記のように、特に古い導水路トンネルでは覆工厚に大きなばらつきがあるので、それらに対応できるようにするための内部解析におけるRMS値の計算範囲の設定の仕方を図7及び図8に示す。図7のA〜Cは、1500MHz用アンテナでの覆工中のRMS値の計算範囲を示し、図8のA〜Bは、400MHz用アンテナでの覆工背面中のRMS値の計算範囲を示している。前者では、反射波データで、直接波が終了する深度から覆工背面深度まで、もしくは直接波が終了する深度から電磁波周波数により決まる最大探査深度まで、のいずれか狭い範囲を計算範囲に設定し、その計算範囲に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とする。具体的には、例えば1500MHz用アンテナの最大探査深度を25cmとすると、覆工厚が25cmを超える場合には直接波が終了する深度から25cmまでを計算範囲として覆工厚中のRMS値を計算する。後者では、反射波データで覆工背面反射波が終了する深度から電磁波周波数により決まる最大探査深度までを計算範囲に設定し、その計算範囲に含まれる波形振幅値のRMS値を求める。具体的には、400MHz用アンテナの最大探査深度を80cmとすると、覆工背面反射波が終了する深度から80cmまでを計算範囲として覆工背面のRMS値を計算する。
【0034】
このようにして、400MHz用アンテナの反射データから覆工厚を読み取り、1500MHz用アンテナで覆工内部のRMS値を求め、400MHz用アンテナで覆工背面のRMS値を求めることで導水路トンネルの健全度を評価することができる。覆工コンクリートが劣化した場合、電磁波レーダの記録上には次のような現れ方をする。
・コンクリートが泥濘化すると、この部分の導電率が大きくなることから、電磁波の減衰が大きくなる。従って、記録上は振幅が小さくなる。
・コンクリート部分のセメント分が抜けてポーラスな状態になると、この部分での電磁波の散乱が生じるので、反射波が乱れた部分となる。
いずれの場合にも、送信アンテナと受信アンテナの間を伝播する直接波部分や散乱波部分の振幅が周囲に対し変化するものと考えられるので、測線沿いの反射波データを連続的に把握することにより、コンクリートの劣化状況を評価することができることになる。
【0035】
1500MHzの電磁波レーダで測定した覆工コンクリートについて、複数の箇所でボーリングコアを採取し、一軸圧縮試験を行った。その結果を図9に示す。コンクリート中の平均RMS値に対する一軸圧縮強度は、RMS値が低いほど圧縮強度が高く、逆にRMS値が高いほど圧縮強度が低くなる傾向があり、ほぼリニアの関係となっていることが分かる。因みに、周波数1500MHzにおける関係式は、図中に示したようになる。このことから、RMS値によってコンクリートの劣化を評価しようとする本発明方法は、十分な技術的裏付けがあることが分かる。
【0036】
400MHzの電磁波レーダで測定した覆工背面について、複数の箇所でボーリングコアを採取し、コアの性状を観察した。その結果を図10に示す。覆工背面の性状は、RMS値が低いと柱状であるのに対して、RMS値が高いと土砂状または空隙が多い状況となっている。その境界は、RMS値で約24程度である。このことから、RMS値によって覆工背面の状況も評価できることが分かる。
【0037】
実際の測定結果の一例を図11に示す。これらの測定データは、縦方向については導水路トンネルの一方の側壁部からアーチ部、他方の側壁部に至るように展開し、横方向については導水路トンネルの長手方向に向かって、覆工内部のRMS値の分布、覆工背面のRMS値の分布、及び覆工厚の分布をコンターマップで示したものである。まず、覆工内部のRMS値の分布から、コンクリート内部の劣化の程度を評価することができる。これは一軸圧縮強度の分布と見なすこともできる。また、覆工背面のRMS値の分布から、覆工背面が土砂状あるいは空隙の多い状況になっているか否かがわかる。更には、覆工厚の分布も把握できる。従って、これらの情報を総合することで、トンネルの健全性を全範囲にわたり評価することができる。
【0038】
なお、上記の例では、アンテナ周波数として400MHzと1500MHzを用いているが、状況によっては、例えば400MHzと900MHzのアンテナを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るトンネル覆工コンクリートの劣化診断方法を示す説明図。
【図2】電磁波反射の挙動の例を示す説明図。
【図3】反射波データによる波形イメージを示す説明図。
【図4】劣化部が存在する場合の電磁波レーダによる反射波形イメージ。
【図5】解析のための反射波形データの説明図。
【図6】本発明方法による導水路トンネルの覆工コンクリートの劣化調査状況を示す説明図。
【図7】1500MHz用アンテナでの覆工中RMS値の計算範囲を示す説明図。
【図8】400MHz用アンテナでの覆工中RMS値の計算範囲を示す説明図。
【図9】コンクリート中の平均RMS値と一軸圧縮強度の関係を示すグラフ。
【図10】覆工背面の状況と平均RMS値の関係を示すグラフ。
【図11】実際の測定結果の一例を示すコンターマップ。
【符号の説明】
【0040】
10 コンクリート壁面
12 測線
14 電磁波レーダ
20 健全部
22 表面劣化部
24 内部劣化部
26 表面及び内部劣化部
30 導水路トンネル
32 電磁波レーダ
34a、34b アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波レーダを用いるコンクリート構造物の劣化診断方法に関し、更に詳しく述べると、反射波形の解析により表面及び内部の劣化状況を同時に且つ面的に把握できるようにしたコンクリート構造物の劣化診断方法に関するものである。この技術は、例えば経年変化が進んだ導水路トンネルなどの覆工コンクリートの劣化診断に有用である。
【背景技術】
【0002】
導水路トンネルなどでは、通常、覆工にコンクリートが用いられている。長期間にわたり使用が続くと、経年変化が著しい箇所においては変質・劣化が生じてくる。即ち、覆工コンクリート表面での泥濘化、覆工内部におけるポーラス化などである。このような変質・劣化は強度不足の大きな要因となる。劣化箇所を的確に把握できれば、営繕工事を進める上で極めて有利であり、維持管理計画に貢献できる可能性が高い。
【0003】
従来、このようなコンクリート劣化状況の調査では、表面の変色部や変状部を目視観察し、その変色部や変状部の分布を面的に把握する方法が採用されている。また、コンクリート内部の劣化については、打音法や赤外線法による検査が行われることが多い。しかし通常行われている打音法は、測定者が音を聞き分けて判定するため、打音検査の判定結果に客観性が乏しい場合があり、測定が非効率であるばかりでなく、記録が残らないという問題がある。また赤外線法は、加熱源が必要になり測定装置が大掛かりになる他、深度10cm〜20cm以深では検出困難である。
【0004】
ところで周知のように、地下構造を調査する機器として電磁波レーダ(地中レーダ)がある。この電磁波レーダは、測線沿いの連続測定を効率的に行うことが可能なため、構造物全体を検査するのに適しており、しかも探査可能深度も深く、定量的な解析が可能なため、地中探査のみならず、コンクリート構造物の調査にも応用されている。しかし従来の使用方法は、単一測線での測定データを用いてトンネル覆工厚・背面空洞及び鉄筋のかぶりと位置、あるいは支保工の深度と位置などを求める場合がほとんどである。
【0005】
ところが最近、電磁波の振幅・反射率からコンクリートの内部欠陥を検出することが試みられている(特許文献1参照)。これは、内部欠陥の性状の相違により、その内部欠陥の境界(健全部と欠陥部との境界)での反射率が異なり、結果として反射波振幅の減衰度合いが異なることを利用するものである。内部欠陥の境界からの反射波に関する時間−振幅関係からコンクリート内部に隠れている空洞、ジャンカ、低強度コンクリートのような欠陥の種別と深さ又は厚みなどを判定する。
【0006】
しかし、この技術は、健全部と内部欠陥との境界での反射波の振幅と位置を検出する方法であるから、内部欠陥の境界が明確でないと検出が難しい。また内部欠陥の分布状況を2次元的あるいは3次元的に捉えようとするものではない。
【特許文献1】特開2005−43197号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、コンクリート構造物の表面及び内部における泥濘化やポーラス化などの劣化状況を面的に客観的に把握できるようにすることである。本発明が解決しようとする他の課題は、一般に暗く狭い環境での作業になるトンネル覆工コンクリートなどの劣化状況の調査を効率よく実施できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、送信アンテナから電磁波を放射すると共に反射波を受信アンテナで受信する電磁波レーダを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して平面座標位置に対応した反射波データを記録し、各反射波データについて、
(1)コンクリート表面近傍からの直接波を抽出して振幅最大値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波振幅の減衰度が大きい表面劣化箇所を2次元的に把握する表面解析、
(2)コンクリート内部からの散乱波の振幅値のRMS値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波散乱度の大きい内部劣化箇所を2次元的に把握する内部解析、
を行い、上記(1)及び(2)の結果を組み合わせて、表面及び内部のコンクリートの劣化状況を面的に把握可能としたことを特徴とするコンクリート構造物の劣化診断方法である。なお、RMSは振幅の2乗和の平均の平方根であり、一種の波形エネルギーを表している。これは、受振波形の数が多いほど、あるいは振幅が大きいほど、大きな値になる。
【0009】
表面解析では、反射波データで、コンクリート表面から直接波が終了する深度までの範囲の時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値の絶対値の最大値を求め、その最大値をその波形の直接波減衰度の代表値とする。また内部解析では、反射波データで散乱波を含むように時間軸に沿って時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とするのがよい。ここで内部解析において、反射波データで散乱波を含むと考えられる範囲内で、時間軸に沿って時間窓を複数設定し、各時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値を、その時間窓での電磁波散乱度の代表値とすると、深度方向にも連続した3次元データを作成することができる。
【0010】
本発明による劣化診断方法が有効なコンクリート構造物として、代表的な例にはトンネル覆工がある。その場合、内部解析では、反射波データで、直接波が終了する深度から覆工背面深度まで、もしくは直接波が終了する深度から電磁波周波数により決まる最大探査深度まで、のいずれか狭い範囲を計算範囲に設定し、その計算範囲に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とするのがよい。
【0011】
本発明では、中心周波数の異なる電磁波を送受する送信アンテナと受信アンテナの対を複数並設した複合アンテナ・システムを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して、中心周波数の異なる電磁波の平面座標位置に対応した反射波データを同時に記録するように構成するのが好ましい。具体的には、例えば中心周波数が数百MHz〜千数百MHzの範囲内で異なる高低2種類のアンテナを並設したデュアル・アンテナ・システムを使用し、中心周波数が低い方の(典型的には400MHz用)アンテナの反射データから覆工厚を読み取り、中心周波数が高い方の(典型的には900MHz用又は1500MHz用)アンテナで覆工内部のRMS値を求める。これによって覆工コンクリート内部の劣化を診断することができる。更に、上記の覆工厚と、中心周波数が低い方の(典型的には400MHz用)アンテナで求めた覆工背面のRMS値を加味し総合的に判断することでトンネルの健全度を評価することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るコンクリート構造物の劣化診断方法は、電磁波の反射波データのうち、直接波の振幅最大値を求め平面分布図を作成して、電磁波振幅の減衰度が大きい箇所を2次元的に把握することで表面劣化の解析ができ、また散乱波の振幅値のRMS値を求め平面分布図を作成して、電磁波散乱度の大きい箇所を2次元的に把握することで内部劣化の解析ができる。これらによって、コンクリート構造物の表面及び内部の泥濘化やポーラス化などによる劣化状況を同時に客観的に把握することができ、それら劣化状況の面的な分布を取得することができる。
【0013】
特にトンネル覆工の場合、一般に暗く狭い環境での作業になるが、デュアル・アンテナ・システムを備えている小型の電磁波レーダを走査するだけで実施できる本発明方法は、覆工厚や支保部材の配置などの大まかな状況と詳細な内部劣化状況の両方を、同時に同一測線上で把握できるため、極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明方法をトンネル覆工コンクリートの劣化診断に適用した場合を例にとって、図1により説明する。図1のAに示すように、トンネル覆工のコンクリート壁面10の表面上で上下方向の測線12(点線矢印で示す)を多数本、所定の間隔で平行に設定する。ここでは測線を上下方向に設定しているが、現場状況によっては水平方向に設定してもよいことは言うまでもない。そして、電磁波レーダ14を、面的に設定した前記測線12に沿って白抜き矢印方向に移動し順次走査する。送信アンテナTと受信アンテナRを測線に沿って配置して、送信アンテナTから電磁波を放射すると共に反射波を受信アンテナRで受信し、受信した反射波データ(往復伝播時間に対する反射波振幅)を、その測定点での平面座標位置と共に記録する。これを繰り返すことによって、調査が必要なコンクリート壁面全体にわたって、平面座標位置と反射波データの組を多数取得する面的な測定を行う。
【0015】
取得した各反射波データについて、(1)表面解析を行う。まず、反射波データのなかからコンクリート表面近傍からの直接波を抽出する。そして、抽出した直接波の振幅最大値を求める。この作業を、面的に測定した全ての反射波データについて行う。平面座標位置と対応させることで、抽出した振幅最大値の平面分布図を作成し、図1のBに示すように、平面的に見た状態での直接波振幅の小さい箇所(電磁波振幅の減衰度が大きい箇所)を抽出する。減衰度が小さい領域が健全部20であり、減衰度が大きい領域が表面劣化部22となる。
【0016】
また各反射波データについて、(2)内部解析を行う。まず、反射波データのなかからコンクリート内部からの散乱波を抽出する。そして、それらのRMS値を求める。この作業を、面的に測定した全ての反射波データについて行う。平面座標位置と対応させることで、RMS値の平面分布図を作成し、図1のCに示すように、平面的に透視した状態での散乱波RMS値の大きい箇所(電磁波散乱度の大きい箇所)を抽出する。散乱度が小さい領域が健全部20であり、散乱度が大きい領域が内部劣化部24となる。
【0017】
そこで、上記(1)の表面解析及び(2)の内部解析の結果を組み合わせることで、図1のDに示すように、平面的に透視した状態でコンクリートの表面及び内部における劣化状況が面的に把握可能となる。これによって、健全部20、表面劣化部22、内部劣化部24、表面及び内部劣化部26の面的な領域を特定することができる。
【0018】
なお、上記の(1)及び(2)は便宜上付した符号であり、処理の順序を示すものではない。(1)の表面解析を先に行ってもよいし、(2)の内部解析を先に行ってもよい。勿論、(1)と(2)の解析を同時並行して処理してもよい。
【0019】
次に、測定点での電磁波反射の挙動の例を図2により説明する。送信アンテナからコンクリート壁面10に向けて電磁波が放射される。そして放射された電磁波は、一部が表面近傍を送信アンテナから受信アンテナへと伝播し、直接波として受信される。図2のAに示すように、コンクリート表面近傍が健全であれば、表面近傍を伝播する直接波の振幅は大きい。また放射電磁波は、透過波として覆工コンクリート内を進む。透過波は、覆工コンクリート内での状況に応じて反射・散乱を生じ、それらも受信アンテナで受信される。覆工コンクリートの内部も健全であれば、内部での散乱は少ない。
【0020】
図2のBに示すように、もしコンクリート壁面に泥濘化などによる表面劣化部22があれば、表面劣化部の導電率が比較的大きくなり、電磁波の吸収が大きくなるために、直接波の振幅が小さくなる(減衰度が大きくなる)。直接波の減衰度によって、目視などに頼ることなく表面劣化部22の検知を行うことができる。また、図2のCに示すように、コンクリートにポーラス化などによる内部劣化部24があれば、ある幅をもって反射面が多数存在していることになるから、内部劣化部24を通った波は乱反射する。コンクリート内部で乱反射した反射波(散乱波)の振幅値のRMS値で代表させることで、内部劣化部24の検知を行うことができる。
【0021】
図3は、反射波データの一例を示している。これは往復伝播時間に対する振幅の変化を表す波形イメージである。直接波は、表面近傍(例えば表面〜5cm程度の深さまで)での反射であり、往復伝播時間の短い領域で生じることから、その往復伝播時間の範囲を規定することで特定できる。この直接波の減衰度(振幅最大値の減衰の度合い)は、表面部の情報を含んでいる。散乱波は、内部(例えば表面下5cm〜覆工厚内)で生じることから、往復伝播時間がある程度長い領域で生じる。電磁波の伝播速度は既知であるし、覆工厚が分かっていれば、散乱波が生じていると考えられる範囲は往復伝播時間の範囲として特定できる。その散乱波振幅のRMS値を散乱度とすると、その散乱度は内部情報を含んでいる。
【0022】
図4は、劣化部が存在する場合の電磁波レーダによる反射波形イメージを示している。Aは表面が劣化している場合の例である。破線は、表面及び内部共に健全な場合であり、減衰度は小さく、散乱度も小さい。それに対して実線は、表面のみ劣化し内部は健全な場合であり、減衰度は大きく、散乱度は小さい。直接波で比較すると、泥濘化などの表面劣化要因で、劣化部での振幅最大値は健全な場合の振幅最大値よりも小さくなる(減衰度が大きくなる)。減衰度が大きいほど、表面劣化が進んでいることを表している。Bは内部のみ劣化している場合の例である。破線は、表面及び内部共に健全な場合であり、減衰度は小さく、散乱度も小さい。それに対して実線は、表面は健全で内部のみが劣化している場合であり、減衰度は小さいが、散乱度は大きい。散乱波は、ポーラス化(多孔質化)などの内部劣化要因で、振幅値が全体的に大きくなる(散乱度が大きくなる)。散乱度が大きいほど、内部劣化が進んでいることを表している。
【0023】
このようなことから、直接波の減衰度と散乱波の散乱度を平面座標位置に対応させることで、図1のDに示すように、劣化部を面的に診断・評価することができる。なお、健全と劣化の判定の閾値をどのレベルに設定するかは、電磁波測定の結果と壁面の目視観察結果(変色部や変状部)、穿孔によるサンプル採取の調査結果などとの対比に基づき決定すればよい。図1のDでは、健全か劣化かというように2値的な判定を行っているが、減衰度・散乱度によって劣化を複数の度合で判定し、コンターマップを描かせることも可能である。
【0024】
実際の電磁波レーダによる反射波の測定データは、時間軸に関して連続的な振幅測定値ではなく、微小時間間隔毎にサンプリングした離散的な振幅測定値である。微小時間間隔毎にサンプリングしたN個の測定時点(測定順序:i=1〜N)での振幅測定値Xi が、メモリに記憶される。従って、それらの離散的な振幅測定値をプロットして順次結ぶと、図5に示すような反射波形が得られる。
【0025】
表面解析(直接波振幅解析)では、電磁波レーダの測定波形データより、コンクリート表面から直接波が終了する深度までの範囲の時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値の絶対値の最大値を、その波形の直接波減衰度の代表値とする。各々の波形には平面座標位置が設定されており、これらの代表値の平面分布図を作成することでコンクリート表面からの反射波(直接波)振幅の減衰度が大きい領域を検出する。
【0026】
具体的には次のようにする。離散値である電磁波レーダ波形記録による振幅測定値Xi (i=1,2,…,N)から、直接波のみを含む範囲と考えられる時間窓WD を、測定順序iにより次のように設定する。
WD :nd1≦i≦nd2
そして、ある測定波形における直接波の減衰度を示す代表値Aを次のように求める。
A=max|Xi |
但し、i∈WD
各々の波形についてAの値を求め、各波形の平面座標位置と合わせることで、減衰度Aの平面分布図を作成する。
【0027】
内部解析(散乱波振幅解析)では、電磁波レーダの測定波形データより反射波データで散乱波を含むように時間軸に沿って時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とする。各々の波形には平面座標位置が設定されており、これらの代表値の平面分布図を作成することでコンクリート内部での電磁波の散乱度が大きい領域を検出する。
【0028】
具体的には次のようにする。離散値である電磁波レーダ波形記録による振幅測定値Xi (i=1,2,…,N)から、散乱波を含む範囲と考えられる時間窓WS を、測定順序iにより次のように設定する。
WS :ns1≦i≦ns2
そして、ある測定波形における電磁波の散乱度を示す代表値Sを次のように求める。
S=(Σ(Xi2)/ND )1/2
但し、i∈WS
ND =ns2−ns1+1
各々の波形についてSの値を求め、各波形の平面座標位置と合わせることで、散乱度Sの平面分布図を作成する。
【0029】
このようにして、減衰度A及び散乱度Sの平面分布図を作成し、それらを総合することによって、表面劣化部及び内部劣化部を特定することができる。本発明方法により特定した劣化部は、コンクリート表面の変色部や変状部とよく対応していることが確認された。
【0030】
なお、上記の説明では、散乱波振幅解析において時間窓WS を1箇所のみ設定しているが、時間窓を時間軸にとって複数設定することもできる。つまり、反射波データで散乱波を含むと考えられる範囲内で、時間軸に沿って時間窓を複数設定し、各時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値を、その時間窓での電磁波散乱度の代表値とする。このようにすると、深度方向で連続した3次元データの作成・図示も可能となる。
【実施例】
【0031】
図6は、本発明方法による導水路トンネルの覆工コンクリートの劣化調査状況を示す説明図である。導水路トンネル30内で電磁波レーダ32を走行させる。電磁波レーダ32には、中心周波数の異なる2種類のアンテナ34a、34bを並設したデュアル・アンテナ・システムが搭載されている。両方のアンテナ34a、34bは、それぞれ送信アンテナと受信アンテナの対からなる。アンテナ34a、34bを、覆工面に(例えばアーチ部を対象に50cm程度の間隔で)設定した多数本の探査測線(点線で示す)に沿って、覆工面に密着させながら走査し、その走査を繰り返して覆工コンクリートのほぼ全面にわたって、周波数の異なる電磁波の平面座標位置に対応した反射波データを同時に記録するような調査を行う。特に、導水路トンネルの場合は、暗く狭いことの他、長期間にわたる流水の侵食などにより床面が平坦ではなくなっていることが多いので、中心周波数の異なる複数のアンテナを別々に走査したのでは、同じ測線上の測定データを得ることは困難であるが、デュアル・アンテナ・システムにすると、測定作業が半減するばかりでなく、異なるアンテナを同じ測線上で走査させ、同じ測線上での測定データを得ることができる利点がある。
【0032】
導水路トンネルの場合には、施工年代が古いこともあり、地山の掘削状況により覆工厚が数cmから60cm程度まで大きく変化することが予想される。電磁波レーダの周波数と探査深度と分解能は、おおよそ次のようである。
・周波数400MHzでは、探査深度は80〜100cm以内、分解能は10cm程度
・周波数900MHzでは、探査深度は50cm以内、分解能は5cm程度
・周波数1500MHzでは、探査深度は30cm以内、分解能は2〜3cm程度
つまり、周波数が高い方が分解能に優れており、覆工コンクリート内部の電磁波散乱の様子の把握には適している。逆に周波数が低い方は電磁波がより深くまで透過するので、覆工厚の把握には適している。従って、覆工厚が大きく変化する場合には、単一のアンテナでは対応できない場合が生じる。また、支保工の深度(即ち覆工厚)と間隔によっては、それらにより電磁波が反射されて、より深部の記録が得られない場合がある。周波数の高いアンテナほど影響を受け難い。これらに対応するためには、複数の周波数のアンテナで同時測定を行うことが有効である。使用する電磁波の周波数は任意であってよいが、デュアル・アンテナ・システムとしては、例えば通常の地中レーダで用いられている400MHz用と1500MHz用の2種類とするのがよい。
【0033】
上記のように、特に古い導水路トンネルでは覆工厚に大きなばらつきがあるので、それらに対応できるようにするための内部解析におけるRMS値の計算範囲の設定の仕方を図7及び図8に示す。図7のA〜Cは、1500MHz用アンテナでの覆工中のRMS値の計算範囲を示し、図8のA〜Bは、400MHz用アンテナでの覆工背面中のRMS値の計算範囲を示している。前者では、反射波データで、直接波が終了する深度から覆工背面深度まで、もしくは直接波が終了する深度から電磁波周波数により決まる最大探査深度まで、のいずれか狭い範囲を計算範囲に設定し、その計算範囲に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とする。具体的には、例えば1500MHz用アンテナの最大探査深度を25cmとすると、覆工厚が25cmを超える場合には直接波が終了する深度から25cmまでを計算範囲として覆工厚中のRMS値を計算する。後者では、反射波データで覆工背面反射波が終了する深度から電磁波周波数により決まる最大探査深度までを計算範囲に設定し、その計算範囲に含まれる波形振幅値のRMS値を求める。具体的には、400MHz用アンテナの最大探査深度を80cmとすると、覆工背面反射波が終了する深度から80cmまでを計算範囲として覆工背面のRMS値を計算する。
【0034】
このようにして、400MHz用アンテナの反射データから覆工厚を読み取り、1500MHz用アンテナで覆工内部のRMS値を求め、400MHz用アンテナで覆工背面のRMS値を求めることで導水路トンネルの健全度を評価することができる。覆工コンクリートが劣化した場合、電磁波レーダの記録上には次のような現れ方をする。
・コンクリートが泥濘化すると、この部分の導電率が大きくなることから、電磁波の減衰が大きくなる。従って、記録上は振幅が小さくなる。
・コンクリート部分のセメント分が抜けてポーラスな状態になると、この部分での電磁波の散乱が生じるので、反射波が乱れた部分となる。
いずれの場合にも、送信アンテナと受信アンテナの間を伝播する直接波部分や散乱波部分の振幅が周囲に対し変化するものと考えられるので、測線沿いの反射波データを連続的に把握することにより、コンクリートの劣化状況を評価することができることになる。
【0035】
1500MHzの電磁波レーダで測定した覆工コンクリートについて、複数の箇所でボーリングコアを採取し、一軸圧縮試験を行った。その結果を図9に示す。コンクリート中の平均RMS値に対する一軸圧縮強度は、RMS値が低いほど圧縮強度が高く、逆にRMS値が高いほど圧縮強度が低くなる傾向があり、ほぼリニアの関係となっていることが分かる。因みに、周波数1500MHzにおける関係式は、図中に示したようになる。このことから、RMS値によってコンクリートの劣化を評価しようとする本発明方法は、十分な技術的裏付けがあることが分かる。
【0036】
400MHzの電磁波レーダで測定した覆工背面について、複数の箇所でボーリングコアを採取し、コアの性状を観察した。その結果を図10に示す。覆工背面の性状は、RMS値が低いと柱状であるのに対して、RMS値が高いと土砂状または空隙が多い状況となっている。その境界は、RMS値で約24程度である。このことから、RMS値によって覆工背面の状況も評価できることが分かる。
【0037】
実際の測定結果の一例を図11に示す。これらの測定データは、縦方向については導水路トンネルの一方の側壁部からアーチ部、他方の側壁部に至るように展開し、横方向については導水路トンネルの長手方向に向かって、覆工内部のRMS値の分布、覆工背面のRMS値の分布、及び覆工厚の分布をコンターマップで示したものである。まず、覆工内部のRMS値の分布から、コンクリート内部の劣化の程度を評価することができる。これは一軸圧縮強度の分布と見なすこともできる。また、覆工背面のRMS値の分布から、覆工背面が土砂状あるいは空隙の多い状況になっているか否かがわかる。更には、覆工厚の分布も把握できる。従って、これらの情報を総合することで、トンネルの健全性を全範囲にわたり評価することができる。
【0038】
なお、上記の例では、アンテナ周波数として400MHzと1500MHzを用いているが、状況によっては、例えば400MHzと900MHzのアンテナを用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るトンネル覆工コンクリートの劣化診断方法を示す説明図。
【図2】電磁波反射の挙動の例を示す説明図。
【図3】反射波データによる波形イメージを示す説明図。
【図4】劣化部が存在する場合の電磁波レーダによる反射波形イメージ。
【図5】解析のための反射波形データの説明図。
【図6】本発明方法による導水路トンネルの覆工コンクリートの劣化調査状況を示す説明図。
【図7】1500MHz用アンテナでの覆工中RMS値の計算範囲を示す説明図。
【図8】400MHz用アンテナでの覆工中RMS値の計算範囲を示す説明図。
【図9】コンクリート中の平均RMS値と一軸圧縮強度の関係を示すグラフ。
【図10】覆工背面の状況と平均RMS値の関係を示すグラフ。
【図11】実際の測定結果の一例を示すコンターマップ。
【符号の説明】
【0040】
10 コンクリート壁面
12 測線
14 電磁波レーダ
20 健全部
22 表面劣化部
24 内部劣化部
26 表面及び内部劣化部
30 導水路トンネル
32 電磁波レーダ
34a、34b アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信アンテナから電磁波を放射すると共に反射波を受信アンテナで受信する電磁波レーダを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して平面座標位置に対応した反射波データを記録し、各反射波データについて、
(1)コンクリート表面近傍からの直接波を抽出して振幅最大値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波振幅の減衰度が大きい表面劣化箇所を2次元的に把握する表面解析、
(2)コンクリート内部からの散乱波の振幅値のRMS値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波散乱度の大きい内部劣化箇所を2次元的に把握する内部解析、
を行い、上記(1)及び(2)の結果を組み合わせて、表面及び内部のコンクリートの劣化状況を面的に把握可能としたことを特徴とするコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項2】
表面解析では、反射波データで、コンクリート表面から直接波が終了する深度までの範囲の時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値の絶対値の最大値を求め、その最大値をその波形の直接波減衰度の代表値とする請求項1記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項3】
内部解析では、反射波データで散乱波を含むように時間軸に沿って時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とする請求項1又は2記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項4】
内部解析では、反射波データで散乱波を含むと考えられる範囲内で、時間軸に沿って時間窓を複数設定し、各時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値を、その時間窓での電磁波散乱度の代表値とすることで、深度方向にも連続した3次元データを作成する請求項1又は2記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項5】
コンクリート構造物がトンネル覆工であって、内部解析では、反射波データで、直接波が終了する深度から覆工背面深度まで、もしくは直接波が終了する深度から電磁波周波数により決まる最大探査深度まで、のいずれか狭い範囲を計算範囲に設定し、その計算範囲に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とする請求項1又は2記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項6】
中心周波数の異なる電磁波を送受する送信アンテナと受信アンテナの対を複数並設した複合アンテナ・システムを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して、中心周波数の異なる電磁波の平面座標位置に対応した反射波データを同時に記録する請求項5記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項7】
コンクリート構造物がトンネル覆工であって、中心周波数が異なる高低2種類のアンテナを並設したデュアル・アンテナ・システムを使用し、中心周波数が低い方のアンテナの反射データから覆工厚を読み取り、中心周波数が高い方のアンテナで覆工内部のRMS値を求める請求項6記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項1】
送信アンテナから電磁波を放射すると共に反射波を受信アンテナで受信する電磁波レーダを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して平面座標位置に対応した反射波データを記録し、各反射波データについて、
(1)コンクリート表面近傍からの直接波を抽出して振幅最大値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波振幅の減衰度が大きい表面劣化箇所を2次元的に把握する表面解析、
(2)コンクリート内部からの散乱波の振幅値のRMS値を求め、その平面分布図を作成することで電磁波散乱度の大きい内部劣化箇所を2次元的に把握する内部解析、
を行い、上記(1)及び(2)の結果を組み合わせて、表面及び内部のコンクリートの劣化状況を面的に把握可能としたことを特徴とするコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項2】
表面解析では、反射波データで、コンクリート表面から直接波が終了する深度までの範囲の時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値の絶対値の最大値を求め、その最大値をその波形の直接波減衰度の代表値とする請求項1記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項3】
内部解析では、反射波データで散乱波を含むように時間軸に沿って時間窓を設定し、その時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とする請求項1又は2記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項4】
内部解析では、反射波データで散乱波を含むと考えられる範囲内で、時間軸に沿って時間窓を複数設定し、各時間窓に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値を、その時間窓での電磁波散乱度の代表値とすることで、深度方向にも連続した3次元データを作成する請求項1又は2記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項5】
コンクリート構造物がトンネル覆工であって、内部解析では、反射波データで、直接波が終了する深度から覆工背面深度まで、もしくは直接波が終了する深度から電磁波周波数により決まる最大探査深度まで、のいずれか狭い範囲を計算範囲に設定し、その計算範囲に含まれる波形振幅値のRMS値を求め、そのRMS値をその波形の電磁波散乱度の代表値とする請求項1又は2記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項6】
中心周波数の異なる電磁波を送受する送信アンテナと受信アンテナの対を複数並設した複合アンテナ・システムを、コンクリート構造物の表面上で面的に設定した多数本の測線に沿って走査して、中心周波数の異なる電磁波の平面座標位置に対応した反射波データを同時に記録する請求項5記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【請求項7】
コンクリート構造物がトンネル覆工であって、中心周波数が異なる高低2種類のアンテナを並設したデュアル・アンテナ・システムを使用し、中心周波数が低い方のアンテナの反射データから覆工厚を読み取り、中心周波数が高い方のアンテナで覆工内部のRMS値を求める請求項6記載のコンクリート構造物の劣化診断方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−76386(P2008−76386A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−213603(P2007−213603)
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000121844)応用地質株式会社 (36)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月20日(2007.8.20)
【出願人】(000121844)応用地質株式会社 (36)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】
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