説明

コンクリート構造物及びその製造方法

【課題】コンクリート構造物を構成するコンクリート製基部にひび割れが発生した際に、ひび割れの検知を容易に行うことができるコンクリート構造物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のコンクリート構造物1は、コンクリートからなる基部2と、この基部2の表面側に形成された第1層4と、第1層4の表面側に形成された第2層6とを備え、第1層4は、高分子及び蛍光増白剤を含み、第2層6は、高分子及び紫外線吸収剤を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物及びその製造方法に関し、更に詳しくは、コンクリート構造物を構成するコンクリートにひび割れが発生した際に、ひび割れの検知を容易に行うことができるコンクリート構造物及びその製造方法並びにコンクリートのひび割れ検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物は、建物、トンネル等の壁面、橋梁、橋脚、橋台、桟橋、ボックスカルバート、パラペット、高欄、床版下面、バルコニー、煙突、コンクリートポール、タンク、法枠、堤防等に広く用いられている。コンクリート構造物は、経年変化で、劣化するものであり、耐久性等の観点から、近年のコンクリート構造物の表面は、下塗層、上塗層等の保護層が形成されたものとなっている(特許文献1参照)。
コンクリート構造物の典型的な劣化現象は、内部応力等によるひび割れであり、このひび割れの早期発見及び補修により、コンクリート構造物の強度低下又は破壊を抑制して延命化が図られている。
【0003】
一方、ひび割れに起因する破壊が生じる前に、異常な応力を感知して、それ自体が発光する、所謂、自己診断機能を有するコンクリートが開発された(特許文献2参照)。このコンクリートは、無機母体材料(ゲーレナイト)中に、機械的エネルギーによって励起された電子が基底状態に戻る場合に発光する希土類又は遷移金属の1種類以上からなる発光中心(Ce)をドープしてなる応力発光材料を含有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−14537号公報
【特許文献2】特開2003−137632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、コンクリート構造物の表面には、耐久性等を向上させるための膜が形成されている一方、この膜が、ひび割れの発生と同時に破断しない場合があり、ひび割れ部の正確な位置の確認が困難となることがある。
本発明の目的は、コンクリート構造物を構成するコンクリート製基部にひび割れが発生した際に、ひび割れの検知を容易に行うことができるコンクリート構造物及びその製造方法並びにコンクリートのひび割れ検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、コンクリート製基部の表面に少なくとも2つの機能層を形成させたコンクリート構造物であって、コンクリート製基部にひび割れが発生した際に、ひび割れ部を被覆する、表面側の機能層を紫外線の透過性が高まるようにするとともに、内側の機能層を紫外線の受光により発光するようにしたコンクリート構造物を見出した。
本発明は以下のとおりである。
1.コンクリートからなる基部と、この基部の表面側に形成された第1層と、この第1層の表面側に形成された第2層とを備え、上記第1層は、高分子及び蛍光増白剤を含み、上記第2層は、高分子及び紫外線吸収剤を含むことを特徴とするコンクリート構造物。
2.JIS A 6021に準じて測定される上記第1層を構成する膜の引張破断伸びが、上記第2層を構成する膜の引張破断伸びより50%以上高い上記1に記載のコンクリート構造物。
3.上記第1層を構成する膜の引張破断伸びが100%〜2,000%であり、上記第2層を構成する膜の引張破断伸びが10%〜200%である上記2に記載のコンクリート構造物。
4.上記第1層に含まれる高分子が、アクリルウレタン樹脂及びその架橋物、アクリルシリコーン樹脂及びその架橋物、ポリアクリレート及びその架橋物、並びに、ポリウレタン樹脂及びその架橋物、から選ばれた少なくとも1種である上記1乃至3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
5.上記第2層に含まれる高分子が、アクリルウレタン樹脂及びその架橋物、アクリルシリコーン樹脂及びその架橋物、含フッ素樹脂、並びに、エポキシ硬化物、から選ばれた少なくとも1種である上記1乃至4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
6.上記基部及び上記第1層の間に、下塗層を備える上記1乃至5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
7.上記第1層及び上記第2層の間に、他の層を備える上記1乃至6のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
8.上記1に記載のコンクリート構造物を製造する方法であって、蛍光増白剤を含む第1層形成用組成物を、コンクリートからなる基部の表面側に塗布した後、乾燥して第1層を形成する工程、及び、紫外線吸収剤を含む第2層形成用組成物を、上記第1層の表面側に塗布した後、乾燥して第2層を形成する工程、を備えることを特徴とするコンクリート構造物の製造方法。
9.上記第1層形成用組成物が、アクリルウレタン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物、アクリルシリコーン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルシリコーン樹脂形成用組成物、ポリアクリレートを含有する組成物、架橋ポリアクリレート形成用組成物、ポリウレタン樹脂を含有する組成物、又は、架橋ポリウレタン樹脂形成用組成物である上記8に記載のコンクリート構造物の製造方法。
10.上記第2層形成用組成物が、アクリルウレタン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物、アクリルシリコーン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルシリコーン樹脂形成用組成物、含フッ素樹脂を含有する組成物、又は、エポキシ硬化物形成用組成物である上記8又は9に記載のコンクリート構造物の製造方法。
11.上記1乃至7のいずれか一項に記載のコンクリート構造物における基部のひび割れを検知する方法であって、上記ひび割れを有する上記コンクリート構造物の表面に紫外線を照射し、この紫外線を、ひび割れにより破断形成された第2層の亀裂空間部、又は、ひび割れにより延伸形成された第2層の薄肉部を透過させて、ひび割れ部の表面側に配されている第1層に到達させてこの第1層における紫外線受光部に含まれる蛍光増白剤を発光させることを特徴とする、コンクリートのひび割れ検知方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコンクリート構造物によれば、コンクリート製基部にひび割れが発生した際に、ひび割れの検知を容易に行うことができる。
上記第1層を構成する膜の引張破断伸びが、上記第2層を構成する膜の引張破断伸びより50%以上高い場合には、コンクリート製基部にひび割れが発生した際に、ひび割れ部の表面側被覆部において、第1層よりも第2層の方が破断しやすくなる傾向にある。従って、ひび割れ部の表面側を被覆する第2層が破断又は薄肉化し、これにより、それぞれ、局部的な、亀裂空間部又は薄肉部が形成される。これらの部分は、内部(コンクリート製基部)に不具合のない正常な第2層と比較すると、紫外線吸収剤の濃度が低いので、コンクリート構造物における表面(第2層側表面)に紫外線を照射すると、紫外線が透過しやすくなり、第1層に、高い照射量でもって、到達させることができる。紫外線が、第1層に到達すると蛍光増白剤が発光するのであるが、ひび割れ部の表面側を被覆する第1層のひび割れ被覆部においてその発光強度が高くなるので、ひび割れの位置を容易に確認することができる。ひび割れ部を被覆する第2層が、局部的に薄肉化している場合には、外観上、内部に不具合がないと判断されることがあるが、紫外線を照射して、薄肉部を透過させて得られる発光強度は、薄肉部以外の部分(ひび割れのない部分)における発光強度よりも高くなる。従って、コンクリート構造物の表面外観によらず、紫外線を照射することにより、ひび割れを検知することができ、ひび割れの見落としを低減することができる。
また、本発明のコンクリート構造物の製造方法によれば、コンクリートからなる基部の表面における第1層及び第2層を、効率よく形成することができる。
更に、本発明のコンクリートのひび割れ検知方法によれば、ひび割れを有するコンクリート製基部におけるひび割れの位置の確認を円滑に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明のコンクリート構造物の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明のコンクリート構造物の他の例を示す概略断面図である。
【図3】本発明のコンクリート構造物の他の例を示す概略断面図である。
【図4】本発明のコンクリート構造物におけるコンクリート製基部にひび割れが発生した際に、第1層及び第2層に発生した現象の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明のコンクリート構造物におけるコンクリート製基部にひび割れが発生した際に、第1層及び第2層に発生した現象の他の例を示す概略断面図である。
【図6】実施例におけるコンクリート構造物の評価方法を示す概略図であり、(A)は、溝を有するスレート板を示す断面図、(B)は、実施例により形成された積層体を示す断面図、(C)は、スレート板が溝に沿って半分に割られたことを示す断面図、(D)は、(C)の状態で引張試験に供されて、皮膜が延伸されていることを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを、「(共)重合体」は、単独重合体及び共重合体を意味する。
【0010】
本発明のコンクリート構造物は、コンクリートからなる基部(以下、「コンクリート製基部」ともいう。)と、このコンクリート製基部の表面側に形成された第1層と、第1層の表面側に形成された第2層とを備え、第1層は、高分子(以下、「第1高分子」という。)及び蛍光増白剤を含み、第2層は、高分子(以下、「第2高分子」という。)及び紫外線吸収剤を含むことを特徴とする。本発明のコンクリート構造物は、好ましくは、建物、トンネル等の壁面、橋梁、橋脚、橋台、桟橋、ボックスカルバート、パラペット、高欄、床版下面、バルコニー、煙突、コンクリートポール、タンク、法枠、堤防等において、コンクリート製基部の表面側に、第1層及び第2層を含む機能層を備える構造物である。
このように、本発明のコンクリート構造物は、コンクリート製基部の表面に、特定の第1層及び第2層を備える。従って、コンクリート構造物において、内部応力等によりコンクリート製基部にひび割れが発生した際に、コンクリート構造物の最表面の変化の有無に関わらず、即ち、外観上、正常な表面であると判断された場合であっても、紫外線を照射することにより、ひび割れの位置を確認することができる。この原理を簡単に説明する。コンクリート製基部にひび割れが発生すると、ひび割れ部の表面側被覆部において、第1層及び第2層が延伸されて薄肉化し、好ましい態様においては、第2層のみが破断する。ひび割れにより、ひび割れ部を被覆する第1層は破断されずに延伸し、第2層は局部的に、破断して亀裂空間部を形成、又は、薄肉化して薄肉部を形成すると、亀裂空間部又は薄肉部において紫外線吸収剤が皆無又は低濃度化するため、これらの部分において紫外線が透過しやすくなる。そして、ひび割れ部を被覆する第1層のひび割れ被覆部に到達した紫外線により蛍光増白剤を発光させることができる。内部側にひび割れを有さないコンクリート構造物における第1層及び第2層は、いずれも、ひび割れによる厚さの変化の度合いが小さいので、紫外線を照射しても、第2層に含まれる紫外線吸収剤によって、第1層からの蛍光増白剤に由来する発光の強度が低くなる。このようにして、紫外線の照射により高い発光強度を示す部分の内部側に、コンクリート製基部のひび割れが存在することを容易に確認することができる。
【0011】
本発明のコンクリート構造物において、第1層及び第2層は、図1及び図2に示すように、これらの層が隣り合う構成であってよいし、図3に示すように、第1層4及び第2層6の間に他の層(中間層)を備える構成であってもよい。また、図2に示すように、コンクリート製基部2及び第1層4の間に他の層(下塗層)3を備える構成であってもよい。更に、図示していないが、第2層6の表面側に他の層(上塗層)を備える構成であってもよい。
【0012】
図1は、コンクリート製基部2と、このコンクリート製基部2の表面に形成された第1層4と、第1層4の表面に形成された第2層6とを備えるコンクリート構造物1である。
図2は、コンクリート製基部2と、このコンクリート製基部2の表面に形成された他の層(下塗層)3と、他の層(下塗層)3の表面に形成された第1層4と、第1層4の表面に形成された第2層6とを備えるコンクリート構造物1である。この図2において、他の層(下塗層)3が1層型であるものとしたが、これに限定されず、いずれも連続する、2層型、3層型等、多層型であってもよい。
また、図3は、コンクリート製基部2と、このコンクリート製基部2の表面に形成された第1層4と、第1層4の表面に形成された他の層(中間層)5と、他の層(中間層)5の表面に形成された第2層6とを備えるコンクリート構造物1である。この図3において、他の層(中間層)5が1層型であるものとしたが、これに限定されず、いずれも連続する、2層型、3層型等、多層型であってもよい。
尚、図示していないが、本発明のコンクリート構造物1は、コンクリート製基部2と、このコンクリート製基部2の表面に形成された他の層(下塗層)3と、他の層(下塗層)3の表面に形成された第1層4と、第1層4の表面に形成された他の層(中間層)5と、他の層(中間層)5の表面に形成された第2層6とを備える態様とすることもできる。
また、本発明のコンクリート構造物1が上塗層を備える場合、1層型であってよいし、いずれも連続する、2層型、3層型等、多層型であってもよい。
【0013】
上記コンクリート製基部2は、通常、セメント系無機物質と、骨材と、ポゾラン物質と、増粘剤と、減水剤と、骨材と、水とを含有し、必要に応じて、繊維状補強剤、有機系結合剤等を含有するセメント組成物を打設し、養生して得られた、コンクリートからなる部分である。このセメント組成物を構成する成分について、後述する。
【0014】
上記第1層4は、第1高分子及び蛍光増白剤を含む層であり、充填材;可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤、防腐剤、防かび剤、難燃剤、消泡剤、成膜助剤、分散剤、沈降防止剤等の添加剤;網状補強材等を含有してもよい層である。そして、この第1層4において、蛍光増白剤は、第1高分子を母相として、分散している。また、充填材、添加剤等を含む場合にも、これらは、第1高分子を母相として、分散している。
【0015】
上記第1高分子は、柔軟性に優れた皮膜を形成するものであり、具体的には、本発明のコンクリート構造物において、コンクリート製基部にひび割れが発生した際に、ひび割れを被覆する部分において、延伸するが破断しない第1層を与える高分子である。この第1高分子としては、アクリルウレタン樹脂及びその架橋物、アクリルシリコーン樹脂及びその架橋物、ポリアクリレート及びその架橋物、ポリウレタン樹脂及びその架橋物等が挙げられる。これらの成分は、単独で含まれてよいし、2種以上の組み合わせで含まれてもよい。
【0016】
アクリルウレタン樹脂としては、エステル部が炭素原子数1〜18、好ましくは4〜10の炭化水素基を有し、この炭化水素基に含まれる1つの水素原子がヒドロキシル基に置換されてなる、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物とイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとを反応させて得られた樹脂等が挙げられる。
また、アクリルウレタン樹脂の架橋物(以下、「架橋アクリルウレタン樹脂」ともいう。)としては、上記アクリルウレタン樹脂とポリイソシアネートとを反応させてなる反応生成物;アクリルポリオールとポリイソシアネートとを反応させてなる樹脂;等が挙げられる。
【0017】
アクリルポリオールとしては、ヒドロキシル基を有するアクリル系単量体を単独で、あるいは、このアクリル系単量体と不飽和炭素−炭素結合を有する他の重合性単量体とをラジカル重合させて得られたアクリルポリオールを用いることができ、その他、ポリエステル変性アクリルポリオール等を用いることができる。
また、ポリイソシアネートとしては、2つ以上のイソシアネート基を有するものであれば、特に限定されず、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチル−ペンタン−1,5−ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が挙げられる。これらの化合物のヌレート体及びビウレット体を用いることもできる。
【0018】
アクリルシリコーン樹脂としては、 アルコキシシリル基を側鎖に有する(メタ)アクリル系単量体をラジカル重合させて得られた(共)重合体;アルコキシシリル基を側鎖に有する(メタ)アクリル系単量体と不飽和炭素−炭素結合を有する他の重合性単量体とをラジカル重合させて得られた共重合体;これらの(共)重合体のうち一方の存在下、不飽和炭素−炭素結合を有する重合性単量体をラジカル重合させて得られた(メタ)アクリル・シリコーングラフト樹脂;(メタ)アクリル系単量体に由来する構造単位を含む(共)重合体とポリオルガノシロキサンとを反応させて得られたブロック重合体又はグラフト重合体;等が挙げられる。
尚、上記不飽和炭素−炭素結合を有する他の重合性単量体は、ラジカル重合性を有する不飽和化合物であれば、特に限定されない。例えば、芳香族ビニル化合物、アミノ基を有するビニル化合物、アミド基を有するビニル化合物、アルコキシル基を有するビニル化合物、共役ジエン化合物、マレイミド系化合物、ビニルエステル化合物、ビニルエーテル化合物、グリシジル基を有するビニル化合物、不飽和ジカルボン酸のモノアルキルエステル、不飽和ジカルボン酸のジアルキルエステル等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
また、アクリルシリコーン樹脂の架橋物(以下、「架橋アクリルシリコーン樹脂」ともいう。)としては、上記アクリルシリコーン樹脂とポリイソシアネートとが反応して得られた反応生成物等が挙げられる。
【0020】
ポリアクリレートとしては、エステル部が炭素原子数1〜18、好ましくは4〜10の炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステル化合物を重合させて得られた(共)重合体;エステル部が炭素原子数1〜18の炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステル化合物と、不飽和炭素−炭素結合を有する他の重合性単量体とを重合させて得られた共重合体;等が挙げられる。不飽和炭素−炭素結合を有する他の重合性単量体は、上記アクリルシリコーン樹脂の形成に用いられる単量体として例示した化合物を使用することができる。他の重合性単量体としては、芳香族ビニル化合物、アミド基を有するビニル化合物等が好ましい。
【0021】
また、ポリアクリレートの架橋物(以下、「架橋ポリアクリレート」ともいう。)としては、上記した、エステル部が炭素原子数1〜18、好ましくは4〜10の炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステル化合物と、グリシジル基を有する(メタ)アクリレートとを重合させて得られた共重合体と、ヒドロキシル基又はアミノ基を有する化合物とを反応させて得られた反応生成物;上記した、エステル部が炭素原子数1〜18、好ましくは4〜10の炭化水素基を含む(メタ)アクリル酸エステル化合物と、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート等)とを重合させて得られた共重合体と、グリシジル基を有する化合物とを反応させて得られた反応生成物;多官能(メタ)アクリレートを含む単量体を重合させて得られた、不飽和炭素−炭素結合を有する(共)重合体;等が挙げられる。
上記のヒドロキシル基、グリシジル基又はアミノ基を有する化合物としては、グリオキサール、エチレングリコール、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ジ)グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、エピクロロヒドリン、エチレンジアミン等が挙げられる。
【0022】
ポリウレタン樹脂としては、分子鎖中に2つ以上のウレタン結合を有するものであれば、特に限定されず、不飽和炭素−炭素結合を有するポリオールを含むポリオールと、ポリイソシアネートと、必要に応じて使用する、鎖長延長剤とを反応させることにより得られたポリウレタン樹脂等が挙げられる。
【0023】
不飽和炭素−炭素結合を有するポリオールは、少なくとも1つの重合性不飽和炭素−炭素結合と2つ以上のヒドロキシル基とを有するものであり、その具体例としては、ヒドロキシル基含有ポリブタジエン、ヒドロキシル基含有ポリペンタジエン、ヒドロキシル基含有ポリヘキサジエン、ヒドロキシル基含有ポリブタジエン・ポリイソプレン等のヒドロキシル基含有ジエン系重合体等が挙げられる。このヒドロキシル基含有ジエン系重合体におけるヒドロキシル基の位置は、特に限定されない。従って、分子鎖主鎖の両末端にヒドロキシル基を有するジエン系重合体、分子鎖側鎖末端及び分子鎖主鎖末端の両方にヒドロキシル基を有するジエン系重合体等を用いることができる。
【0024】
ポリイソシアネートは、上記例示した化合物を用いることができる。
鎖長延長剤としては、低分子量ポリオール、低分子量ポリアミン等が挙げられる。
上記低分子量ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロパンジオール(1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール等)、ジプロピレングリコール、ブタンジオール(1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール等)、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、1,6−シクロへキサンジメチロール、アニリン系ジオール、ビスフェノールA系ジオール等のジオール;グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等のトリオール;ペンタエリスリトール、ソルビトール等のテトラオール又はヘキサオール等が挙げられる。また、上記低分子量ポリアミンとしては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ピペラジン等の脂環式ポリアミン;芳香族ポリアミン等が挙げられる。
【0025】
ポリウレタン樹脂の架橋物(以下、「架橋ポリウレタン」ともいう。)としては、上記したポリウレタン樹脂において、ポリオールに由来する不飽和炭素−炭素結合部分を利用して形成された架橋構造を有するものとすることができる。このような架橋構造は、例えば、ラジカル重合開始剤、有機硫黄化合物等の使用により形成されたものとすることができる。架橋構造の具体例としては、有機過酸化物、アゾ化合物等のラジカル重合開始剤の存在下、ポリウレタン樹脂どうしを反応させて、ポリオールに由来する不飽和炭素−炭素結合部分どうしを直接結合させた架橋構造;有機過酸化物、有機硫黄化合物等の架橋剤の存在下、ポリウレタン樹脂どうしを反応させて、ポリオールに由来する不飽和炭素−炭素結合部分どうしを、有機硫黄化合物等の架橋剤に由来する構造部を介して架橋された架橋構造;等が挙げられる。
【0026】
また、架橋ポリウレタンとしては、イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を用いて得られたものであってもよい。
イソシアネート基末端ウレタンプレポリマーとしては、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られたものを用いることができる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1−トリメチロールプロパン等の低分子ポリオールの1種又は2種以上と、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸等の低分子カルボン酸やオリゴマー酸の1種又は2種以上との縮合重合体や、プロピオンラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン等の開環重合体等のポリエステルエーテルポリオール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレントリオール、ポリグリセリン、ポリトリメチロールプロパン、ポリヘキサントリオール、ポリブタンジオール、ポリジヒドロキシフェニルメタン、ポリジヒドロキシフェニルプロパン、ポリオキシテトラメチレンオキサイド等のポリエーテルポリオール;ポリマーポリオール;ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;等が挙げられる。
ポリイソシアネートは、上記例示した化合物を用いることができる。
【0027】
架橋ポリウレタンの形成に用いられる硬化剤としては、アミノ基を2つ以上有するポリアミン、ヒドロキシル基を2つ以上有するポリオール、ポリメルカプタン類、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0028】
上記ポリアミンのうち、アミノ基を2つ有するアミン化合物としては、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,16−ヘキサデカンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5−ジアミノ−2−メチルペンタン、イソホロンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1−シクロヘキシルアミノ−3−アミノプロパン、3−アミノメチル−3,3,5−トリメチル−シクロヘキシルアミン、ノルボルナン骨格のジメチレンアミン、メタキシリレンジアミン(MXDA)等の脂肪族ジアミン;3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MOCA)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,3−トリレンジアミン、2,4−トリレンジアミン、2,5−トリレンジアミン、2,6−トリレンジアミン、3,4−トリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0029】
また、上記ポリアミンのうち、アミノ基を3つ以上有するアミン化合物としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等が挙げられる。
尚、上記ポリアミンとして、上記例示した化合物におけるアミノ基を、ケトンでブロックしたケチミンや、アルデヒドでブロックしたアルジミンを使用することができる。
【0030】
上記ポリオールは、上記例示した化合物を用いることができる。
【0031】
上記ポリメルカプタン類としては、ポリメルカプトカルボン酸アミド等が挙げられる。
【0032】
上記第1層4は、図1及び図3に示すように、コンクリート製基部2の表面に形成されていてよいし、図2に示すように、このコンクリート製基部2の表面に形成された下塗層3(後述)の表面に形成されていてもよい。本発明においては、これらのいずれの場合においても、下地追従性、耐久性等の観点から、第1高分子は、ポリウレタン樹脂及びポリアクリレートが好ましく、ポリアクリレートが特に好ましい。
尚、上記第1層4を、防水層として作用させる場合には、第1高分子は、ポリアクリレートであることが好ましい。
【0033】
上記蛍光増白剤は、紫外線を吸収し可視光線に変換する作用を有する成分である。
上記蛍光増白剤としては、スチルベン類、ベンズイミダゾール類、ベンズオキサゾール類、ナフタルイミド類、ベンゾチアゾール類、ナフトチアゾール類、ジベンゾチオフェン−5,5−ジオキシド類、ローダミン類、クマリン類、オキサジン類、ビフェニル類、メチンシアニン類、ピラゾリン類、ベンジジン類、カルボスチリル類等が挙げられる。これらの化合物は、単独で含まれてよいし、2種以上の組み合わせで含まれてもよい。
【0034】
上記スチルベン類としては、4,4’−ビス(トリアゾール−2−イル)スチルベン誘導体、ビス(トリアジニルアミノスチルベン)ジスルホン酸誘導体等が挙げられる。
上記ビフェニル類としては、4,4’−ビス(2−スルホスチリル)ビフェニル塩、4,4’−ビス(4−クロロ−3−スルホスチリル)ビフェニル塩等が挙げられる。
上記ナフトチアゾール類としては、2−(スチリルフェニル)ナフトチアゾール誘導体等が挙げられる。
【0035】
上記第1層4に含まれる蛍光増白剤の含有割合は、第1高分子100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜1.0質量部、更に好ましくは0.1〜0.5質量部である。蛍光増白剤の含有量が0.01〜3質量部であると、本発明のコンクリート構造物における上記の作用が十分に発揮される。即ち、紫外線が、上記化合物からなる蛍光増白剤を含む第1層に到達すると、400〜450nmの波長を有する可視光を、十分な輝度をもって発するので、コンクリート製基部2における異常を容易に検知することができる。
【0036】
上記第1層4には、上記のように、充填材を含んでもよく、これにより、得られる皮膜を強靱にし、皮膜表面の粘着性を低減し、コンクリート構造物を完成させるまでの作業性を向上させることができる。充填材の含有量は、コンクリート製基部又は下塗層と、第1層との接着性、及び、引張破断伸びの観点から、第1高分子100質量部に対して、好ましくは30〜300質量部、より好ましくは50〜150質量部程度である。充填材としては、硅砂、タルク、炭酸カルシウム、カオリン、石膏、珪藻土、酸化チタン、並びに、各種ポルトランドセメント、高炉セメント及びアルミナセメント等のセメント類が挙げられる。これらの充填材は、単独で含まれてよいし、2種以上の組み合わせで含まれてもよい。
【0037】
上記第1層4の厚さは、ひび割れによる下地追従性、及び、耐久性の観点から、好ましくは50〜3,000μm、より好ましくは100〜2,000μm、更に好ましくは500〜1,500μmである。
【0038】
上記第1層4を構成する膜の引張破断伸びは、後述する第2層6を構成する膜の引張破断伸びより高く、好ましくは100%〜2,000%、より好ましくは200%〜1,000%、更に好ましくは200%〜500%である。尚、この引張破断伸びは、上記好ましい厚さを有する膜を用いた、JIS A 6021に準ずる測定値である。
【0039】
次に、上記第2層6は、第2高分子及び紫外線吸収剤を含む層であり、充填材;可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、撥水剤、撥油剤、着色剤、防腐剤、防かび剤、難燃剤、消泡剤、成膜助剤、分散剤、沈降防止剤等の添加剤;網状補強材等を含有してもよい層である。そして、この第2層6において、紫外線吸収剤は、第2高分子を母相として、分散している。また、充填材、添加剤等を含む場合にも、これらは、第2高分子を母相として、分散している。
【0040】
上記第2高分子は、柔軟性を有する一方、ある程度以上の引っ張りにより破断する皮膜を形成するものであり、具体的には、本発明のコンクリート構造物において、コンクリート製基部にひび割れが発生した際に、ひび割れ部、及び、第1層におけるひび割れ被覆部、の両方を被覆する部分において、破断又は延伸する第2層を与える高分子である。この第2高分子としては、アクリルウレタン樹脂及びその架橋物、アクリルシリコーン樹脂及びその架橋物、含フッ素樹脂、エポキシ硬化物等が挙げられる。これらの成分は、単独で含まれてよいし、2種以上の組み合わせで含まれてもよい。
【0041】
上記第2高分子が、アクリルウレタン樹脂及びその架橋物、又は、アクリルシリコーン樹脂及びその架橋物である場合、上記第1高分子として示した、アクリルウレタン樹脂及びその架橋物、又は、アクリルシリコーン樹脂及びその架橋物を適用することができる。
【0042】
含フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フルオロエチレン・ビニルエーテル(ビニルエステル)共重合体、PTFEの一部のフッ素原子が官能基によって置換されてなる樹脂(変性PTFE)等が挙げられる。
【0043】
エポキシ硬化物は、2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を硬化剤により硬化させたものである。
エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族系エポキシ樹脂、フェノール類のジグリシジルエーテル化物、アルコール類のジグリシジルエーテル化物等が挙げられる。
また、硬化剤としては、多官能フェノール類、アミン類、イミダゾール類、酸無水物、含リン化合物等が挙げられる。これらのうち、多官能フェノール類としては、単環二官能フェノールであるヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、多環二官能フェノールであるビスフェノールA、ビスフェノールF、ナフタレンジオール類、ビフェノール類、及び、これらのハロゲン化物、アルキル基置換体等が挙げられる。更に、これらのフェノール類とアルデヒド類との重縮合物であるノボラック、レゾールを用いることができる。アミン類としては、脂肪族又は芳香族の第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、第四級アンモニウム塩及び脂肪族環状アミン類、グアニジン類、尿素誘導体等が挙げられる。
【0044】
上記第2層6は、図1及び図2に示すように、第1層4の表面に形成されていてよいし、図3に示すように、他の層(中間層)5の表面に形成されていてもよい。本発明においては、これらのいずれの場合においても、下塗層を形成した場合の下塗層又は第1層との接着性、耐候性等の観点から、第2高分子は、アクリルウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂及び含フッ素樹脂が好ましく、アクリルシリコーン樹脂が特に好ましい。
【0045】
上記紫外線吸収剤は、250〜400nmの範囲、好ましくは300〜400nmの範囲の波長域において吸収極大を有する化合物である。
上記紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール類、ベンゾフェノン類、トリアジン類、ベンゾオキサジノン類、サリチル酸フェニルエステル類、ヒンダードアミン類、インドール類、アゾメチン類等が挙げられる。これらの化合物は、単独で含まれてよいし、2種以上の組み合わせで含まれてもよい。
【0046】
上記ベンゾトリアゾール類としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロイルオキシエトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5’−アクリロイルオキシエトキシ−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−1,4−ジヒドロキシベンゼン〕、2,2’−メチレンビス〔6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(ヒドロキシメチル)フェノール〕、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(2−ヒドロキシエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル]−6−(tert−ブチル)フェノール、2,4−ジ−tert−ブチル−6−(5−クロロベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール等が挙げられる。
【0047】
上記ベンゾフェノン類としては、2−ヒドロキシ−4−(2’−メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2’−アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノントリヒドレ−ト、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシロキシベンゾフェノン、ナトリウム2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジベンゾイルレゾルシノ−ル、4,6−ジベンゾイルレゾルシノ−ル、ヒドロキシドデシルベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0048】
上記トリアジン類としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール等が挙げられる。
【0049】
上記ベンゾオキサジノン類としては、2,2’−p−フェニレンビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(6−メチル−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(6−クロロ−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(6−メトキシ−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−p−フェニレンビス(6−ヒドロキシ−4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(ナフタレン−2,6−ジイル)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(ナフタレン−1,4−ジイル)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(チオフェン−2,5−ジイル)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(フラン−2,5−ジイル)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(ピロール−2,5−ジイル)ビス(4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等が挙げられる。
【0050】
上記サリチル酸フェニルエステル類としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0051】
上記ヒンダートアミン類としては、グリセロールエステル系化合物、α,β−不飽和カルボン酸エステル系化合物、カルボン酸エステル系化合物、ジカルボン酸エステル系化合物等が挙げられる。具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[{3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドリキシフェニル}メチル]ブチルマロネート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアサスピロ[4,5]デカン−2,4−ジオン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]イミノ]]、ポリ[6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]−ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ビペリジル)イミノ]]、2−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6,−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4,−ブタンテトラカルボキシレート、1,2,3,4−ブタンテトラカルボシ酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとトリデシルアルコールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β,β−テトラメチル−3,9−(2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)ジエタノールとの縮合物、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンダメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ジブチルアミン・1,3,5−トリアジン・N,N−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミン・N−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−メタクリレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−メタクリレート等が挙げられる。
【0052】
上記インドール類としては、5−インドールオール、4−アミノインドール、4−メトキシインドール、4−ヒドロキシ−5−メトキシインドール、6−ヒドロキシ−7−メトキシインドール、5−ヒドロキシ−6−メトキシインドール、5−ヒドロキシインドール、4−ヒドロキシインドール等が挙げられる。
【0053】
上記アゾメチン類としては、3−[(フェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−メチルフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(4’−プロピルフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−メトキシフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−エトキシフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(3’−クロロフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン、3−[(2’,4’−ジメチルフェニルイミノ)メチル]−2,4−ジヒドロキシキノリン等が挙げられる。
【0054】
上記第2層6に含まれる紫外線吸収剤の含有割合は、第2高分子100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは1〜3質量部、更に好ましくは1〜2質量部である。紫外線吸収剤の含有量が0.5〜5質量部であると、本発明のコンクリート構造物における上記の作用が十分に発揮される。即ち、コンクリート製基部にひび割れが発生した際に、第2層6が延伸し、薄肉化した場合、薄肉部における紫外線吸収剤の濃度が低下するので、この薄肉部における紫外線の透過性を向上させることができる。そして、透過した紫外線を第1層へ到達させることができ、第1層に含まれる蛍光増白剤の発光を得ることができる。
【0055】
上記第2層6には、上記のように、充填材を含んでもよい。充填材は、上記第1層4に含有させることができる充填材として例示した成分を使用することができる。
【0056】
上記第2層6の厚さは、下塗層を形成した場合の下塗層又は第1層との接着性、耐候性の観点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは30〜200μm、更に好ましくは60〜150μmである。
【0057】
上記第2層6を構成する膜の引張破断伸びは、上記第1層4を構成する膜の引張破断伸びより低く、好ましくは10%〜200%、より好ましくは10%〜150%、更に好ましくは30%〜100%である。尚、この引張破断伸びは、上記好ましい厚さを有する膜を用いた、JIS A 6021に準ずる測定値である。
【0058】
本発明のコンクリート構造物1は、上記のように、下塗層3又は中間層5を備えることができる(図2及び図3参照)。また、第2層の表面に、更に、上塗層を備えることができる(図示せず)。これら下塗層3、中間層5及び上塗層の好ましい組成等は、後述されるが、下塗層3を構成する膜の引張破断伸び、第1層4を構成する膜の引張破断伸び、中間層5を構成する膜の引張破断伸び、第2層6を構成する膜の引張破断伸び、及び、上塗層を構成する膜の引張破断伸びが、順次、低くなることが好ましい。特に、隣り合う2つの層を構成する各膜の引張破断伸びの差が好ましくは50%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは150%以上であると、本発明の効果が十分に発揮される。尚、隣り合う2つの層を構成する各膜の引張破断伸びが同じであってもよいが、この場合、隣り合う3つの層を構成する各膜の引張破断伸びは同じではない。即ち、図示していない、コンクリート製基部2、下塗層3、第1層4、中間層5及び第2層6からなるコンクリート構造物1において、例えば、下塗層3、第1層4及び中間層5を構成する各膜の引張破断伸びを同じとすることはないし、第1層4、中間層5及び第2層6を構成する各膜の引張破断伸びを同じとすることもない。尚、下塗層3は、後述するように、コンクリート製基部2の表面の平滑性等を向上させるものであるが、下塗層3の構成成分が、凹部に滲み込むことが多いので、実質的に、下塗層3を構成する膜の引張破断伸びを無視することができる。
【0059】
上記下塗層3は、従来、コンクリートからなる基部の最表面に、「プライマー層」等として形成されている高分子皮膜からなるものとすることができる。セメント組成物を用いて得られたコンクリート製基部2の最表面には、通常、凹部、凸部、溝部等が形成されているので、上記コンクリート製基部2の表面の平滑性を向上させ、また、コンクリートに影響を及ぼす炭酸ガス、塩化物イオン、水等の侵入を抑制するために、コンクリート製基部2の表面に、下塗層3を備えることができる(図2参照)。この下塗層3は、例えば、酢酸ビニル等を用いてなるビニルエステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリレート又はその架橋物、アクリルシリコーン樹脂又はその架橋物、ポリウレタン樹脂又はその架橋物、スチレン・アクリル酸エステル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体又はその架橋物、エポキシ硬化物等の少なくとも1種を母相とする高分子皮膜である。
また、この下塗層3は、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、防かび剤、難燃剤、防錆剤等の添加剤等を含有してもよい。
【0060】
上記中間層5は、例えば、上記第1層及び第2層の間の接着性向上、一面側から他面側への断面方向の紫外線透過性向上、第1層の保護等を目的として形成される層である。この中間層5は、上記第1層に含まれる第1高分子として例示した成分、上記第2層に含まれる第2高分子として例示した成分等から選ばれた少なくとも1種の高分子を母相とする高分子皮膜からなるものとすることができる。尚、この中間層5は、蛍光増白剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤(顔料)、防腐剤、防かび剤、難燃剤、分散剤、沈降防止剤、消泡剤等の添加剤;網状補強材等を含有してもよいが、紫外線吸収剤を含まないことが好ましい。
【0061】
上記上塗層は、従来、コンクリート構造物の最表面に、「トップコート層」等として形成されている高分子皮膜からなるものとすることができ、通常、上記第1層及び第2層の保護、耐変退色性、耐候性、耐汚染性等の付与を目的として形成される層である。この上塗層は、上記第2層に含まれる第2高分子として例示した成分、ポリエステル樹脂、ポリアクリレート等から選ばれた少なくとも1種の高分子を母相とする高分子皮膜からなるものとすることができる。尚、この上塗層は、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤(顔料)、防腐剤、防かび剤、難燃剤、分散剤、沈降防止剤等の添加剤;網状補強材等を含有してもよいが、蛍光増白剤を含むことはない。
【0062】
本発明のコンクリート構造物1が下塗層3を備える場合、この下塗層3の厚さの上限は、通常、200μmである。
【0063】
本発明のコンクリート構造物1が中間層5を備える場合、この中間層5の厚さは、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜100μm、更に好ましくは20〜50μmである。尚、上記好ましい厚さは、中間層5が1層型である場合は、その厚さを、連続した多層型である場合は、その合計の厚さを、それぞれ、意味する。
【0064】
また、本発明のコンクリート構造物1が上塗層を備える場合、この上塗層の厚さは、好ましくは10〜500μm、より好ましくは50〜300μm、更に好ましくは80〜200μmである。尚、上記好ましい厚さは、上塗層が1層型である場合は、その厚さを、連続した多層型である場合は、その合計の厚さを、それぞれ、意味する。
【0065】
上記中間層5を構成する膜の引張破断伸びは、上記第1層4を構成する膜の引張破断伸びより低いかあるいは上記第2層6を構成する膜の引張破断伸びと同じであり、好ましくは10%〜200%、より好ましくは10%〜150%、更に好ましくは10%〜100%である。尚、この引張破断伸びは、上記好ましい厚さを有する膜を用いた、JIS A 6021に準ずる測定値である。
【0066】
上記上塗層を構成する膜の引張破断伸びは、上記第2層6を構成する膜の引張破断伸びと同じかあるいはそれより低く、好ましくは10%〜200%、より好ましくは10%〜150%、更に好ましくは30%〜100%である。尚、この引張破断伸びは、上記好ましい厚さを有する膜を用いた、JIS A 6021に準ずる測定値である。
【0067】
本発明のコンクリート構造物を構成する第1層及び第2層は、いずれも、下地追従性に優れるので、コンクリート製基部2の表面に形成された下塗層又は第1層から、第2層又は上塗層を有する場合の上塗層、に至るまでの接着性に優れ、これらの一体化物としての形状安定性にも優れる。従って、本発明において好ましい態様である、第1層4を構成する膜の引張破断伸び、中間層5を構成する膜の引張破断伸び、第2層6を構成する膜の引張破断伸び、及び、上塗層を構成する膜の引張破断伸びが、順次、低くなる多層型皮膜を有する場合、コンクリート製基部2にひび割れが発生すると、ひび割れ部の被覆部表面側において、上塗層側から、亀裂又は薄肉化する。内部にひび割れを有さないところでは、皮膜が損傷しないので、第2層、又は、第2層及び上塗層、のみにおいて、亀裂空間部又は薄肉部における紫外線吸収剤の濃度が低下し、紫外線の透過率を向上させることができる。
【0068】
ここで、コンクリート製基部2を構成するコンクリートの原料(セメント系無機物質、骨材、ポゾラン物質、増粘剤、減水剤)について、説明する。
【0069】
上記セメント系無機物質としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント、超速硬セメント等が挙げられる。
【0070】
上記骨材としては、川砂、珪砂、砕砂等の細骨材、川砂利、砕石等の粗骨材等が挙げられる。
上記ポゾラン物質は、セメント組成物にチキソトロピー性を付与するために用いられるものであり、フュームドシリカ(溶融シリカ)、フライアッシュ、天然ポゾラン等を用いることができる。
【0071】
上記増粘剤は、セメント組成物に粘性を付与するために用いられるものであり、セルロース系増粘剤、ポリアクリルアミド等のアクリル系増粘剤等を用いることができる。
【0072】
上記減水剤は、作業性を改善するために用いられるものであり、ポリカルボン酸系減水剤、メラミン系減水剤、ナフタレン系減水剤、リグニン系減水剤、スルホン酸塩系減水剤等を用いることができる。
【0073】
上記のように、セメント組成物は、繊維状補強剤、有機系結合剤等を含有することができる。
上記繊維状補強剤は、コンクリートの機械的強度を向上させ、ひび割れの抑制、靱性の改善を図るために用いられるものであり、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維;ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維、フッ素繊維、アラミド繊維等の合成繊維;等が挙げられる。
また、上記有機系結合剤としては、ポリアクリレート、(メタ)アクリル・スチレン系共重合体、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)系共重合体、酢酸ビニル等のビニルエステルを用いてなる(共)重合体、エチレン・ビニルアルコール(EVA)系共重合体等が挙げられる。
【0074】
上記コンクリート製基部2を形成する場合には、セメント組成物の流し込み等による打設を行い、その後、養生する方法が採用される。
【0075】
本発明のコンクリート構造物を製造する方法は、蛍光増白剤を含む第1層形成用組成物を、コンクリート製基部の表面側に塗布した後、乾燥して第1層を形成する工程(以下、「第1層形成工程」という。)、及び、紫外線吸収剤を含む第2層形成用組成物を、上記第1層の表面側に塗布した後、乾燥して第2層を形成する工程(以下、「第2層形成工程」という。)、を備えることを特徴とする。
本発明のコンクリート構造物が、下塗層、中間層、上塗層等を備える場合には、それぞれ、下塗層を形成する工程(以下、「下塗層形成工程」という。)、中間層を形成する工程(以下、「中間層形成工程」という。)、上塗層を形成する工程(以下、「上塗層形成工程」という。)等を備えることができる。
【0076】
第1層形成工程は、蛍光増白剤を含む第1層形成用組成物を、コンクリート製基部の表面側に塗布した後、乾燥して第1層を形成する工程である。
上記のように、第1層は、第1高分子を含む層であることから、第1層形成用組成物は、上記第1高分子、又は、この第1高分子を形成する成分(以下、「第1高分子形成用材料」という。)を含有する。
【0077】
上記第1層形成用組成物は、好ましくは、アクリルウレタン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物、アクリルシリコーン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルシリコーン樹脂形成用組成物、ポリアクリレートを含有する組成物、架橋ポリアクリレート形成用組成物、ポリウレタン樹脂を含有する組成物、又は、架橋ポリウレタン樹脂形成用組成物である。
上記第1層形成用組成物は、水系組成物及び溶剤系組成物のいずれでもよいが、施工者への安全性、環境への対応の観点から、水系組成物を用いることが好ましい。
【0078】
上記第1層形成用組成物がアクリルウレタン樹脂を含有する組成物である場合、上記例示したアクリルウレタン樹脂を含有する組成物;ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及びイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する組成物;等を用いることができる。
また、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物としては、上記アクリルウレタン樹脂と上記ポリイソシアネートとを含有する組成物、上記アクリルポリオールと上記ポリイソシアネートとを含有する組成物等を用いることができる。
【0079】
上記第1層形成用組成物がアクリルシリコーン樹脂を含有する組成物である場合、上記例示したアクリルシリコーン樹脂を含有する組成物等を用いることができる。
また、架橋アクリルシリコーン樹脂形成用組成物としては、上記アクリルシリコーン樹脂と上記ポリイソシアネートとを含有する組成物等を用いることができる。
【0080】
上記第1層形成用組成物がポリアクリレートを含有する組成物である場合、上記例示したポリアクリレートを含有する組成物を用いることができる。
また、架橋ポリアクリレート形成用組成物としては、グリシジル(メタ)アクリレート等に由来する構造単位を有する上記ポリアクリレートと、ヒドロキシル基又はアミノ基を有する化合物(高分子でもよい)とを含有する組成物;ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレート等に由来する構造単位を有する上記ポリアクリレートと、グリシジル基を有する化合物(高分子でもよい)とを含有する組成物;多官能(メタ)アクリレート及び重合開始剤を含有する組成物等を用いることができる。
【0081】
上記第1層形成用組成物がポリウレタン樹脂を含有する組成物である場合、上記例示したポリウレタン樹脂を含有する組成物;不飽和炭素−炭素結合を有するポリオールを含むポリオール及びポリイソシアネートを含有する組成物;不飽和炭素−炭素結合を有するポリオールを含むポリオール、ポリイソシアネート及び鎖長延長剤を含有する組成物;等を用いることができる。
【0082】
また、架橋ポリウレタン樹脂形成用組成物としては、上記例示したポリウレタン樹脂及びラジカル重合開始剤(有機過酸化物、アゾ化合物等)を含有する組成物;上記例示したポリウレタン樹脂及び架橋剤(有機過酸化物、有機硫黄化合物等)を含有する組成物;イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含有する組成物;等が挙げられる。
【0083】
上記第1層形成用組成物に配合される蛍光増白剤は、上記例示した蛍光増白剤を用いることができ、市販品を用いることができる。蛍光増白剤がビス(トリアジニルアミノスチルベン)ジスルホン酸誘導体である場合、例えば、住友化学社製「ホワイテックスSA」及び「ホワイテックスSKC」(以上、商品名)等を用いることができる。また、蛍光増白剤がベンゾオキサジノン類である場合、例えば、BASF・ジャパン社製「チノパールOB」(商品名)等を用いることができる。配合に際して、例えば、均一粒径の粉末等としたものが用いられる。
【0084】
上記第1層形成用組成物に含まれる蛍光増白剤の含有量は、この第1層形成用組成物に含まれる第1高分子形成用材料の合計100質量部に対して、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜1.0質量部、更に好ましくは0.1〜0.5質量部である。蛍光増白剤の含有量が0.01〜3質量部であると、本発明のコンクリート構造物における上記の作用が十分に発揮される。
【0085】
上記第1層形成用組成物は、充填材;可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、着色剤、防腐剤、防かび剤、難燃剤、消泡剤、成膜助剤、分散剤、沈降防止剤等の添加剤を含有してもよい。
上記第1層形成用組成物が、充填材を含有する場合、その含有量は、第1高分子形成用材料の合計100質量部に対して、好ましくは30〜300質量部、より好ましくは50〜150質量部程度である。
【0086】
上記第1層形成用組成物の粘度は、塗布方法により、適宜、選択されるが、JIS K7117−1に準じて測定される方法における粘度は、好ましくは3,000〜70,000mPa・s、より好ましくは5,000〜50,000mPa・sである。
【0087】
上記第1層形成用組成物の塗布は、コンクリート製基部の表面側に行うものであり、コンクリート製基部の表面に対して行うものであってよいし、予め、下塗層形成工程によって、コンクリート製基部の表面に形成された、下塗層(プライマー層)の表面に対して行うものであってもよい。
上記第1層形成用組成物の塗布方法としては、ローラー、レーキ、コテ、スプレー等を使用する方法が挙げられる。被塗布面に対して、複数回塗工を行ってもよい。
塗膜の厚さは、第1層形成用組成物の構成、塗布方法等により、適宜、選択され、通常、0.2〜2mmである。
【0088】
その後、上記第1層形成用組成物からなる塗膜の乾燥が行われ、第1高分子及び蛍光増白剤を含む皮膜が得られる。乾燥温度は、一般に、第1高分子形成用材料の種類等により選択され、5℃〜50℃である。
尚、上記のように、第1層は、網状補強材を含む層とすることができる。この網状補強材を含む第1層の製造方法としては、ガラス繊維、高分子(ポリエステル、ポリアミド、ビニロン、フェノール、ポリオレフィン、アラミド等)等からなる網状補強材を、被塗布面に敷設した後、第1層形成用組成物を塗布し、乾燥する方法;第1層形成用組成物を塗布後、その乾燥前に網状補強材を設置し、重力によって塗膜内部に位置させ、乾燥する方法;第1層形成用組成物を塗布後、その乾燥前に網状補強材を設置し、再度、第1層形成用組成物を塗布し、乾燥する方法;等が挙げられる。
【0089】
次に、第2層形成工程は、紫外線吸収剤を含む第2層形成用組成物を、上記第1層の表面側に塗布した後、乾燥して第2層を形成する工程である。
上記のように、第2層は、第2高分子を含む層であることから、第2層形成用組成物は、上記第2高分子、又は、この第2高分子を形成する成分を含有する。
【0090】
上記第2層形成用組成物は、好ましくは、アクリルウレタン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物、アクリルシリコーン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルシリコーン樹脂形成用組成物、含フッ素樹脂を含有する組成物、又は、エポキシ硬化物形成用組成物である。
上記第2層形成用組成物は、水系組成物、溶剤系組成物及び無溶剤系組成物のいずれでもよいが、施工者への安全性、環境への対応の観点から、水系組成物を用いることが好ましい。
【0091】
上記第2層形成用組成物がアクリルウレタン樹脂を含有する組成物である場合、上記例示したアクリルウレタン樹脂を含有する組成物;ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル化合物及びイソシアネート基末端ウレタンプレポリマーを含有する組成物;等を用いることができる。
また、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物としては、上記アクリルウレタン樹脂と上記ポリイソシアネートとを含有する組成物、上記アクリルポリオールと上記ポリイソシアネートとを含有する組成物等を用いることができる。
【0092】
上記第2層形成用組成物が含フッ素樹脂を含有する組成物である場合、上記例示した含フッ素樹脂を含有する組成物等を用いることができる。
【0093】
上記第2層形成用組成物がエポキシ硬化物形成用組成物である場合、上記例示したエポキシ化合物及び硬化剤を含有する組成物等を用いることができる。
【0094】
上記第2層形成用組成物に配合される紫外線吸収剤は、上記例示した紫外線吸収剤を用いることができ、市販品を用いることができる。例えば、ADEKA社の製品では、「アデカスタブ」の商品グレード「LA−52」、「LA−57」、「LA−62」、「LA−67」、「LA−63」、「LA−68LD」、「LA−77Y」、「LA−77G」、「LA−82」、「LA−87」、「LA−402XP」、「LA−502XP」、「LA−601」及び「LA−602」が例示される。また、チバ・ジャパン社の製品では、「TINUVIN PS」、「TINUVIN 99−2」、「TINUVIN 109」、「TINUVIN 384−2」、「TINUVIN 900」、「TINUVIN 928」、「TINUVIN 1130」、「TINUVIN 5236」、「TINUVIN 400」、「TINUVIN 405」、「TINUVIN 460」、「TINUVIN 477DW」、「TINUVIN 479」、「TINUVIN 111FDL」、「TINUVIN 123」、「TINUVIN 144」、「TINUVIN 152」、「TINUVIN 292」、「TINUVIN 5100」、「TINUVIN 5050」、「TINUVIN 5060」、「TINUVIN 5151」、「LIGNOSTAB 1198」、「TINUVIN P/FL」、「TINUVIN 234」、「TINUVIN 326/FL」、「TINUVIN 328」、「TINUVIN 329/FL」、「TINUVIN 213」、「TINUVIN 571」、「TINUVIN 1577FF」、「CHIMASSORB 81/FL」、「TINUVIN 120」、「CHIMASSORB 119FL」、「CHIMASSORB 2020FDL」、「CHIMASSORB 944FDL」、「TINUVIN 622LD」、「TINUVIN 144」、「TINUVIN 765」、「TINUVIN 770DF」、「TINUVIN 111FDL」、「TINUVIN 783FDL」、「TINUVIN 791FB」、「TINUVIN 850FF」、「TINUVIN 855FF」、「TINUVIN 494AR」、「TINUVIN NOR 371FF」及び「TINUVIN B75」が例示される。配合に際して、例えば、均一粒径の粉末等としたものが用いられる。
【0095】
上記第2層形成用組成物に含まれる紫外線吸収剤の含有量は、この第1層形成用組成物に含まれる第2高分子形成用材料の合計100質量部に対して、好ましくは0.5〜5質量部、より好ましくは1.0〜3.0質量部、更に好ましくは1.0〜2.0質量部である。蛍光増白剤の含有量が0.5〜5質量部であると、本発明のコンクリート構造物における上記の作用が十分に発揮される。
【0096】
上記第2層形成用組成物は、充填材;可塑剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、撥水剤、撥油剤、着色剤、防腐剤、防かび剤、難燃剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤等の添加剤を含有してもよい。
上記第2層形成用組成物が、充填材を含有する場合、その含有量は、得られる第2層の引張破断伸び、第1層等との接着性等の観点から、適宜、選択されるが、第2高分子形成用材料の合計100質量部に対して、通常、50〜300質量部である。
【0097】
上記第2層形成用組成物の粘度は、塗布方法により、適宜、選択されるが、JIS K 7117−1に準じて測定される方法における粘度は、好ましくは3,000〜70,000mPa・s、より好ましくは5,000〜50,000mPa・sである。
【0098】
上記第2層形成用組成物の塗布は、第1層の表面に対して行うものであってよいし、予め、中間層形成工程によって、第1層の表面に形成された、中間層の表面に対して行うものであってもよい。
上記第2層形成用組成物の塗布方法としては、ローラー、レーキ、コテ、スプレー等を使用する方法が挙げられる。被塗布面に対して、複数回塗工を行ってもよい。
塗膜の厚さは、第2層形成用組成物の構成、塗布方法等により、適宜、選択され、通常、0.05〜0.2mmである。
【0099】
その後、上記第2層形成用組成物からなる塗膜の乾燥が行われ、第2高分子及び蛍光増白剤を含む皮膜が得られる。乾燥温度は、一般に、第2高分子形成用材料の種類等により選択され、5℃〜50℃である。
【0100】
本発明の製造方法が、下塗層形成工程を備える場合、下塗層形成用組成物としては、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリアクリレート、アクリルシリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン・アクリル酸エステル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体等から選ばれた少なくとも1種を含有する組成物;不飽和炭素−炭素結合を有するポリオールを含むポリオール及びポリイソシアネートを含有する組成物;不飽和炭素−炭素結合を有するポリオールを含むポリオール、ポリイソシアネート及び鎖長延長剤を含有する組成物;ポリウレタン樹脂及びラジカル重合開始剤(有機過酸化物、アゾ化合物等)を含有する組成物;ポリウレタン樹脂及び架橋剤(有機過酸化物、有機硫黄化合物等)を含有する組成物;イソシアネート基末端ウレタンプレポリマー及び硬化剤を含有する組成物;エポキシ化合物及び硬化剤を含有する組成物;等が挙げられる。
また、この下塗層形成用組成物は、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、防腐剤、防かび剤、難燃剤、防錆剤等の添加剤等を含有してもよい。
【0101】
本発明の製造方法が、中間層形成工程を備える場合、中間層形成用組成物は、好ましくは、アクリルウレタン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物、アクリルシリコーン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルシリコーン樹脂形成用組成物、含フッ素樹脂を含有する組成物、又は、エポキシ硬化物形成用組成物である。
【0102】
本発明の製造方法が、上塗層形成工程を備える場合、上塗層形成用組成物は、好ましくは、アクリルウレタン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物、アクリルシリコーン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルシリコーン樹脂形成用組成物、含フッ素樹脂を含有する組成物、ポリアクリレートを含有する組成物、ポリエステル樹脂を含有する組成物、又は、エポキシ硬化物形成用組成物である。
【0103】
本発明において、第1高分子形成用材料及び第2高分子形成用材料を同一とした、第1層形成用組成物及び第2層形成用組成物を用いることができる。本発明において、好ましい態様、即ち、JIS A 6021に準じて測定される引張破断伸びを「第1層>第2層」とするためには、各塗膜に含まれる第1高分子形成用材料及び第2高分子形成用材料の含有量を、「第1高分子形成用材料>第2高分子形成用材料」となるように、塗工すること(塗工量の調整等);各組成物が、充填材、添加剤等を含有する場合に、これらの各配合量を変化させること;等が好ましい。
本発明の製造方法が、下塗層形成工程、中間層形成工程、又は、上塗層形成工程を備える場合も同様である。
【0104】
本発明におけるコンクリートのひび割れ検知方法は、ひび割れを有するコンクリート構造物の表面に紫外線を照射し、この紫外線を、ひび割れにより破断形成された第2層の亀裂空間部、又は、ひび割れにより延伸形成された第2層の薄肉部を透過させて、ひび割れ部の表面側に配されている第1層に到達させてこの第1層における紫外線受光部に含まれる蛍光増白剤を発光させることを特徴とする。
【0105】
図4及び図5は、本発明において、好ましい態様である、第1層を構成する膜の引張破断伸びが、第2層を構成する膜の引張破断伸びより高い場合に、コンクリート製基部2にひび割れが発生した際の破断面である。
【0106】
図4は、第1層4が破断されずに延伸されて薄肉化したひび割れ被覆部45を形成する一方、第2層6が破断されて、亀裂空間部8を形成していることを示す。内部にひび割れを有さないところでは、皮膜が損傷しないので、コンクリート製基部2の表面に配された第1層及び第2層の構造は、保持されている。
【0107】
また、図5は、第1層4が破断されずに延伸されて薄肉化したひび割れ被覆部45を形成する一方、第2層6も破断されずに延伸されて薄肉部65を形成していることを示す。この図5では、第1層4及び第2層6の接着性に優れることを示したところ、第2層6の表面に凹部が形成されている。内部にひび割れを有さないところでは、皮膜が損傷しないので、コンクリート製基部2の表面に配された第1層及び第2層の構造は、保持されている。図示していないが、ひび割れの発生により、ひび割れ被覆部45及び薄肉部65が剥離した場合には、これらの間に空間が形成されるが、この場合も、内部にひび割れを有さないところでは、皮膜が損傷しないので、コンクリート製基部2の表面に配された第1層及び第2層の構造は、保持されている。
【0108】
図4及び図5に示されるいずれの場合も、図面の上方から紫外線を照射すると、紫外線を、亀裂空間部8(図4)、又は、延伸されて薄肉化した薄肉部65(図5)、を透過させて、薄肉化した第1層のひび割れ被覆部45に到達させてこのひび割れ被覆部45(紫外線受光部)に含まれる蛍光増白剤を発光させる。紫外線が、亀裂空間部8及び薄肉部65が形成されていない、正常な第2層に照射された場合、含まれる紫外線吸収剤により、第1層に到達しにくいが、亀裂空間部8又は薄肉部65において、紫外線吸収剤が皆無又は低濃度化していることから、選択的に、紫外線の透過率が高く、ひび割れ被覆部45(紫外線受光部)において高い発光強度を得ることができるので、ひび割れ部9の位置を正確に検知することができる。
尚、図4においては、亀裂空間部8を目視観察することができる場合があるが、検査環境は、明所から暗所まで多様であるので、紫外線を用いることは、見落としの低減につながる。
【実施例】
【0109】
以下に、実施例を挙げ、本発明を更に詳細に説明するが、本発明の主旨を超えない限り、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
以下の実施例においては、図6(A)に示すような、下方側の表面に中心から半分にするための切り込みを有するスレート板10(縦40mm、横120mm、厚さ5mm。JSCE K532−1999「表面被覆材のひび割れ追従性試験方法」に準拠)の表面に、下塗層、第1層及び第2層を、順次、形成させた試験片(図6(B)参照)を製造し、評価に供した。
【0110】
1.原料
1−1.下塗層形成用組成物
東亞合成社製2液反応硬化形水系エポキシ樹脂エマルション「アロンブルコートP−300」(商品名)を使用した。
【0111】
1−2.第1層形成用組成物
表1に示す3種類の組成物(A、B及びC)を使用した。いずれも、2−エチルヘキシルアクリレートを主成分とする単量体を乳化重合して、ポリアクリレートを合成した後、BASF・ジャパン社製蛍光増白剤「チノパールOB」(商品名)等の配合物とともに混合して調製された水系組成物である。
【表1】

【0112】
1−3.第2層形成用組成物
以下に示す3種類の組成物(X、Y及びZ)を使用した。
X:東亞合成社製水性アクリルシリコーン樹脂塗料「アロンブルコートT−1000」(商品名)に紫外線吸収剤を配合したもの
アクリルシリコーン樹脂60質量部と、二酸化チタン25質量部と、酸化第二鉄10質量部と、カーボンブラック5質量部と、BASF・ジャパン社製紫外線吸収剤「TINUVIN 460」(商品名)1質量部とを含有するエマルション組成物である。
Y:亜細亜工業社製溶剤系フッ素樹脂塗料「ネオペイントフロントップ#9000AB」(商品名、固形分濃度66質量%)100質量部と、上記紫外線吸収剤「TINUVIN 460」2質量部とを含有する組成物である。
Z:東亞合成社製2液型アクリルシリコーン樹脂塗料「アロンブルコートT−370」(商品名)に紫外線吸収剤を配合したもの
主剤(アクリルシリコーン樹脂35質量%と、キシレン6質量%と、エチルベンゼン三質量%と、ホワイトスピリット20質量%と、二酸化チタン20質量%と、酸化第二鉄16質量%とからなる)100質量部、及び、硬化剤(ポリイソシアネート15質量%と、キシレン3質量%と、トリメチルベンゼン7質量%とからなる)25質量部、並びに、BASF・ジャパン社製紫外線吸収剤「TINUVIN PS」(商品名)1質量部とを含有する組成物である。
【0113】
2.評価
実施例1
スレート板の表面に、下塗層形成用組成物をローラーにより塗工し(塗工量0.1kg/m)、25℃で乾燥して、厚さ10μmの皮膜(下塗層)を形成した。その後、第1層形成用組成物(A)をローラーにより塗工し(塗工量2.0kg/m)、25℃で乾燥して、厚さ730μmの皮膜(第1層)を形成した。次いで、第2層形成用組成物(X)をローラーにより塗工し(塗工量0.2kg/m)、25℃で乾燥して、厚さ60μmの皮膜(第2層)を形成し、図6(B)に示す試験片を得た。尚、第1層のみからなる皮膜の引張破断伸び(JIS A 6021)は、450%であり、第2層のみからなる皮膜の引張破断伸び(JIS A 6021)は、150%であった。
その後、上記皮膜が積層されたスレート板10に衝撃を与え、その切り込みを利用して半分(スレート板10a及び10b)にした(図6(C)参照)。これを、引張試験用の試験体として用いた。具体的には、スレート板10a及び10bの各端部を保持した状態で、引張試験機により、速度1mm/分の速度で引っ張り、同時に、スレート板10a及び10bの界面あたりの積層皮膜に紫外線(波長360nm)を照射し続けて、引張により薄肉化する積層皮膜からの蛍光を目視観察した。尚、紫外線の照射は、京セラ製紫外線照射器「UV−400」(商品名)を用いて行い、出力は1,200mW/cm、試験体との距離は約30cmとした。
引張試験の開始とともに、スレート板10a及び10bの間隔が広がり、積層皮膜は延伸され(図6(D)参照)、30秒後から蛍光が観察された。そして、約60秒後に第2層が破断されると(図示せず)、紫外線が、むき出しとなった第1層の表面に照射されたので、蛍光強度が更に高くなった。
【0114】
実施例2
スレート板の表面に、下塗層形成用組成物をローラーにより塗工し(塗工量0.1kg/m)、25℃で乾燥して、厚さ10μmの皮膜(下塗層)を形成した。その後、第1層形成用組成物(B)をローラーにより塗工し(塗工量2kg/m)、25℃で乾燥して、厚さ730μmの皮膜(第1層)を形成した。次いで、第2層形成用組成物(Y)をローラーにより塗工し(塗工量0.2kg/m)、25℃で乾燥して、厚さ150μmの皮膜(第2層)を形成し、図6(B)に示す試験片を得た。尚、第1層のみからなる皮膜の引張破断伸び(JIS A 6021)は、450%であり、第2層のみからなる皮膜の引張破断伸び(JIS A 6021)は、70%であった。
その後、実施例1と同様にして、引張試験を行ったところ、引張試験の開始とともに、スレート板10a及び10bの間隔が広がり、積層皮膜は延伸され、10秒後から蛍光が観察された。そして、約30秒後に第2層が破断されると、紫外線が、むき出しとなった第1層の表面に照射されたので、蛍光強度が更に高くなった。
【0115】
実施例3
スレート板の表面に、下塗層形成用組成物をローラーにより塗工し(塗工量0.1kg/m)、25℃で乾燥して、厚さ10μmの皮膜(下塗層)を形成した。その後、第1層形成用組成物(C)をローラーにより塗工し(塗工量3.0kg/m)、25℃で乾燥して、厚さ1,200μmの皮膜(第1層)を形成した。次いで、第2層形成用組成物(Z)をローラーにより塗工し(塗工量0.3kg/m)、25℃で乾燥して、厚さ100μmの皮膜(第2層)を形成し、図6(B)に示す試験片を得た。尚、第1層のみからなる皮膜の引張破断伸び(JIS A 6021)は、210%であり、第2層のみからなる皮膜の引張破断伸び(JIS A 6021)は、60%であった。
その後、実施例1と同様にして、引張試験を行ったところ、引張試験の開始とともに、スレート板10a及び10bの間隔が広がり、積層皮膜は延伸され、10秒後から蛍光が観察された。そして、約40秒後に第2層が破断されると、紫外線が、むき出しとなった第1層の表面に照射されたので、蛍光強度が更に高くなった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明によれば、コンクリート構造物のコンクリート製基部におけるひび割れの位置を、紫外線ランプを照射することにより、正確に検知することができる。特に、コンクリート製基部の表面に、皮膜を備えているにも関わらず、外観上、正常な表面であると判断された場合であっても、紫外線を照射することで、蛍光増白剤に基づく発光により、ひび割れの位置を、検知することができる。従って、本発明のコンクリート構造物は、建物、トンネル等の壁面、橋梁、橋脚、橋台、桟橋、ボックスカルバート、パラペット、高欄、床版下面、バルコニー、煙突、コンクリートポール、タンク、法枠、堤防等において、コンクリート製基部の表面側に、第1層及び第2層を含む機能層を備える構造物として好適である。
【符号の説明】
【0117】
1:コンクリート構造物
2:コンクリート製基部
3:下塗層(プライマー層)
4:第1層
6:第2層
8:亀裂空間部
9:ひび割れ部
10,10a及び10b:スレート板
45:ひび割れ被覆部
65:薄肉部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートからなる基部と、該基部の表面側に形成された第1層と、該第1層の表面側に形成された第2層とを備え、
上記第1層は、高分子及び蛍光増白剤を含み、上記第2層は、高分子及び紫外線吸収剤を含むことを特徴とするコンクリート構造物。
【請求項2】
JIS A 6021に準じて測定される上記第1層を構成する膜の引張破断伸びが、上記第2層を構成する膜の引張破断伸びより50%以上高い請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
上記第1層を構成する膜の引張破断伸びが100%〜2,000%であり、上記第2層を構成する膜の引張破断伸びが10%〜200%である請求項2に記載のコンクリート構造物。
【請求項4】
上記第1層に含まれる高分子が、アクリルウレタン樹脂及びその架橋物、アクリルシリコーン樹脂及びその架橋物、ポリアクリレート及びその架橋物、並びに、ポリウレタン樹脂及びその架橋物、から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
【請求項5】
上記第2層に含まれる高分子が、アクリルウレタン樹脂及びその架橋物、アクリルシリコーン樹脂及びその架橋物、含フッ素樹脂、並びに、エポキシ硬化物、から選ばれた少なくとも1種である請求項1乃至4のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
上記基部及び上記第1層の間に、下塗層を備える請求項1乃至5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
上記第1層及び上記第2層の間に、他の層を備える請求項1乃至6のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
【請求項8】
請求項1に記載のコンクリート構造物を製造する方法であって、
蛍光増白剤を含む第1層形成用組成物を、コンクリートからなる基部の表面側に塗布した後、乾燥して第1層を形成する工程、
及び、
紫外線吸収剤を含む第2層形成用組成物を、上記第1層の表面側に塗布した後、乾燥して第2層を形成する工程、
を備えることを特徴とするコンクリート構造物の製造方法。
【請求項9】
上記第1層形成用組成物が、アクリルウレタン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物、アクリルシリコーン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルシリコーン樹脂形成用組成物、ポリアクリレートを含有する組成物、架橋ポリアクリレート形成用組成物、ポリウレタン樹脂を含有する組成物、又は、架橋ポリウレタン樹脂形成用組成物である請求項8に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項10】
上記第2層形成用組成物が、アクリルウレタン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルウレタン樹脂形成用組成物、アクリルシリコーン樹脂を含有する組成物、架橋アクリルシリコーン樹脂形成用組成物、含フッ素樹脂を含有する組成物、又は、エポキシ硬化物形成用組成物である請求項8又は9に記載のコンクリート構造物の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のコンクリート構造物における基部のひび割れを検知する方法であって、上記ひび割れを有する上記コンクリート構造物の表面に紫外線を照射し、該紫外線を、上記ひび割れにより破断形成された第2層の亀裂空間部、又は、該ひび割れにより延伸形成された第2層の薄肉部を透過させて、ひび割れ部の表面側に配されている第1層に到達させて上記第1層における紫外線受光部に含まれる蛍光増白剤を発光させることを特徴とする、コンクリートのひび割れ検知方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−88405(P2013−88405A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232209(P2011−232209)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】