説明

コンタクトレンズ

【課題】明るい環境においてはピンホール効果により焦点深度を改善できるとともに、暗い環境においては十分に採光可能として視界を遮らないコンタクトレンズを提供する。
【解決手段】周辺環境の明るさに応じて光透過率が次第に変化するリング状調光部を中央部に有し、リング状調光部は、明るい環境において光透過率が低くなり、暗い環境において光透過率が高くなるコンタクトレンズとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ピンホール効果により眼の焦点深度を改善するとともに、周辺環境の明るさに応じて眼に入射する光量を調整することが可能なコンタクトレンズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼が受光した光は、角膜や水晶体を通過する際に屈折し、網膜上で焦点を結ぶことにより、鮮明な像として脳に認識される。
【0003】
しかしながら、屈折異常等により受光した光を網膜上で正しく結像させることができなくなると、脳が認識する像がぼやけてしまい、いわゆる近視や遠視の状態となる。
【0004】
従来、このような近視や遠視を矯正するために、メガネやコンタクトレンズが用いられている。メガネやコンタクトレンズは、レンズの働きにより、受光した光が網膜上で結像できるように調整するものである。
【0005】
また、他の視力矯正手段として、ピンホール効果を利用したコンタクトレンズが提案されている。このようなピンホール効果を利用したコンタクトレンズは、レンズ中央にピンホールを形成して眼に入射する光量を絞ることにより、光の焦点深度を広くし、光が網膜上で結像し易くするものである。
【0006】
例えば、図4に示すような近視の眼の場合、眼に入射して角膜150や水晶体151で屈折する光Lの焦点深度F1が網膜152上に位置しないため、ぼやけた像として脳に認識される。
【0007】
そこで、特許文献1においては、図5に示すように、光を透過しないリング状の非透光部102を設け、光が透過可能な範囲を中央の光透過部103のみに制限したコンタクトレンズ101が提案されている。このようなコンタクトレンズ101を眼に装着することにより、光Lの焦点深度F2を広げて網膜152上に位置させることを可能としている。その結果、脳はより鮮明な像を認識することが可能となる。この時、光透過部103がピンホールとして機能している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実用新案登録第3168294号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このようなピンホールを設けたコンタクトレンズは、明るい環境で使用する場合は問題無いが、瞳孔が開くような暗い環境で使用した場合、本来は眼に入るべき光も非透光部によって遮られるため、必然的に視界が暗くなってしまう。
【0010】
暗い環境でも十分な光量がピンホールを通過できるようにするためにはピンホールの直径を大きくする必要があるが、その場合、ピンホールによる焦点深度の改善効果が損なわれてしまう。
【0011】
そこで本発明は、明るい環境においてはピンホール効果により焦点深度を改善できるとともに、暗い環境においては十分に採光可能として視界を遮らないコンタクトレンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るコンタクトレンズは、周辺環境の明るさに応じて光透過率が次第に変化するリング状調光部を中央部に有し、リング状調光部は、明るい環境において光透過率が低くなり、暗い環境において光透過率が高くなることとした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、周辺環境の明るさに応じて光透過率が次第に変化するリング状調光部を中央部に有し、リング状調光部は、明るい環境において光透過率が低くなり、暗い環境において光透過率が高くなることとしたことにより、明るい環境においてはピンホール効果により眼の焦点深度を改善できるとともに、暗い環境においては十分に採光可能として視界が暗くならないコンタクトレンズを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るコンタクトレンズの正面図である。
【図2】本発明に係るコンタクトレンズの明るい環境における使用状態を示した説明図である。
【図3】本発明に係るコンタクトレンズの暗い環境における使用状態を示した説明図である。
【図4】近視の眼における焦点深度を示した説明図である。
【図5】ピンホール効果を有する従来のコンタクトレンズによる焦点深度の変化を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
本発明によるコンタクトレンズ1は正面視円形の略ドーム形の形状をしており、図1に示すように、透光性の外周部2と、透光性の円形中央部3と、外周部2と円形中央部3との間に形成したリング状調光部4とを有している。
【0017】
リング状調光部4は、周辺環境の明るさに応じて光透過率が変化する調光可能な性質を有している。具体的には、リング状調光部4は、明るい環境において光透過率が低くなり光の透過を遮るとともに、暗い環境において光透過率が高くなり光を透過可能とする性質を有している。
【0018】
本発明においては、例えば、光感受性のフォトクロミック化合物やハロゲン化銀等を、コンタクトレンズの素材自体に含ませたり、あるいは、コンタクトレンズの表面にコーティングすることにより、リング状調光部4を調光可能とすることができる。
【0019】
円形中央部3の直径は、良好なピンホール効果を得るためにできるだけ小さくすることが望ましいが、少なくとも、視野が暗くなり過ぎない程度の十分な光量が眼に入射可能な大きさとすることが望ましい。
【0020】
リング状調光部4の外周の直径は、暗い環境における瞳孔の直径よりも大きく形成することにより、良好なピンホール効果を得ることができる。
【0021】
なお、本発明によるコンタクトレンズ1は、従来のコンタクトレンズのようにレンズ状に形成してもよいし、明るい環境においてピンホール効果を得ることのみを目的としてレンズ状に形成しなくても良い。
【0022】
図2および図3は、本発明によるコンタクトレンズ1を装着した眼を示した説明図である。
【0023】
周辺環境が明るい場合はリング状調光部4の光透過率が低くなり、図2に示すように、瞳孔153に入射する光Lは円形中央部3を通過するものに制限される。その結果、光の焦点深度が広くなるため、網膜152上で焦点を結びやすくなり、視界が鮮明となる。
【0024】
周辺環境が暗くなるにつれ、図3に示すように、リング状調光部4の光透過率は次第に上昇するとともに、瞳孔153は開いた状態となる。その結果、暗い環境においても十分な光量が瞳孔153を通して入射可能となり、視界が暗くなることを防止することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 コンタクトレンズ
2 外周部
3 円形中央部
4 リング状調光部
F1、F2 焦点深度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺環境の明るさに応じて光透過率が次第に変化するリング状調光部を中央部に有し、当該リング状調光部は、明るい環境において光透過率が低くなり、暗い環境において光透過率が高くなることを特徴とするコンタクトレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109102(P2013−109102A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253083(P2011−253083)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(511183744)
【Fターム(参考)】