説明

コンナルス抽出物を配合した皮膚外用化粧料

【課題】抗酸化、抗糖化性に基づく皮膚外用抗老化剤及び美白剤の提供
【解決手段】マメモドキ科コンナルス(学名Connarus Ruber)の抽出物に含まれる抗酸化、抗糖化性を有する有効成分により皮膚の抗老化及び美白を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マメモドキ科コンナルス(学名Connarus Ruber)の抽出物を含有する皮膚外用剤、詳しくは抗酸化性または/及び抗糖化性に基づく抗老化剤、並びに皮膚外用美白剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
<抗酸化>
一般に、皮膚は外部に曝されており、酸素などの外気成分や紫外線などを原因として、皮膚の老化に伴うシワ、クスミ、キメの消失、弾力性の低下が生じることが知られている。 また、皮膚細胞に発生するROS(活性酸素種)について、特にフリーラジカル型活性酸素は脂質などの酸化を受け易い基質と連鎖的な酸化反応を誘発する結果、皮膚組織にダメージを与えることも知られている。
【0003】
特に紫外線に起因するROSによって、皮脂及び脂質の過酸化、タンパク変性、酵素機能阻害、DNA傷害などを引き起こした結果、皮膚の炎症を起こしたり、またその状態が継続することによって、皮膚の老化を加速したり、種々の皮膚疾患、皮膚ガンの原因になっていると考えられている。
【0004】
このような活性酸素による不具合対応について、例えば、ビタミンCやビタミンEなどの、フリーラジカル補足型抗酸性物質、BHTやBHAなどの合成抗酸化性物質の使用が知られている。例えば、特許文献1には、ボダイジュ花、シャクヤク花、テルミナリア アルジュナの抽出物を有効成分とするコラーゲン産生促進用、ヒアルロニダーゼ阻害用、スーパーオキサイド消去用および/またはDPPHラジカル消去用の組成物が開示されている。
【0005】
<抗糖化>
生体内におけるタンパク質の糖化反応(ブドウ糖などの還元糖の間のメイラード反応)において、糖尿病などで高血糖状態が続いたり、加齢により分解反応が進行し難くなると、糖化産物の生成に傾き、タンパク質の機能が損なわれたり、糖化産物が蓄積したりする。
【0006】
この糖化産物は最終的には終末糖化産物(アドバンスド・グリケーション・エンド・プロダクツ(AGEs))となるが、AGEsの生成は不可逆反応である。生成したAGEsは代謝によって体外へ排出されるが、加齢に伴い、代謝速度は遅くなりAGEsが生体内の各組織に蓄積する。AGEsは、生体内の各組織に蓄積したり、AGEsの受容体と結合することにより、種々の症状を引き起こすが、代表的なものは、皮膚(表皮、真皮)においてAGEsが生成し蓄積した場合の、肌全体の衰え(例えば、肌の張りや弾力の低下、シワ、タルミ、黄ぐすみのような皮膚の色味の変化、透明感の低下、シミ等)の一因になることが挙げられる。
【0007】
また、糖尿病患者では、高血糖により生じたAGEsが白内障、動脈硬化、腎機能障害などの合併症を引き起こすことが知られており、対応として、生成したAGEsを体外へ排出し易い形にしなければならない。
【0008】
従来から、化粧料組成物や食品組成物の有効成分とするため、AGEsの生成を抑制する成分や、AGEsを分解する成分の探索が行われている。例えば、特許文献2には、ブドレジャアキシラリス葉抽出物を有効成分として含有する抗糖化剤、抗老化剤、皮膚コラーゲンの損傷抑制剤、又は肌の張り若しくは弾力の低下、又は皮膚のしわ、の抑制、予防、又は改善剤が開示されている。
【0009】
特許文献3には、皮膚表面上の炭水化物、二糖類及び1,4多糖類が、それらの構成成分である糖類に容易に代謝されないように、α-グルコシダーゼを阻害する成分で皮膚を処置し、皮膚表面上のAGEsの形成に寄与する単糖類を減少させAGEs生成を抑制することを目的としたαグルコシダーゼ阻害剤が開示されている。
【0010】
これは、グルコースのような単糖類は皮膚表面上で遊離アミノ基と反応して、反応のカスケードを開始する特定の中間体を形成し、それらが最終的にはコラーゲンなどの皮膚のタンパク質の不可逆的架橋をもたらすことが以前から知られており、皮膚及び身体組織内におけるグルコースの存在の増大によって皮膚内にAGEが形成されるので、コラーゲンが架橋され、加齢に伴う皮膚の皺及び老化を進めることになることから、これを阻害することにより、予防または改善するというものである。
【0011】
なお、カルボキシメチルアルギニン(CMA)はコラーゲンに特異的に蓄積するAGEs構造体の一種であるが、皮膚コラーゲンのAGEs化がしわ、たるみ、くすみといった皮膚老化症状の主たる原因であると考えられており、特許文献4にはCMAの生成抑制剤が、コラーゲンのAGEs化を抑制し、皮膚及び血管等、生体蛋白の変性を抑制することができるとの記載があり、皮膚老化の指標の一つとして有用であることが記載されている。
【0012】
<美白>
紫外線に起因して、その刺激により皮膚色素細胞内におけるメラニン生成が亢進し、メラニンが表皮に過剰に沈着することによって生じるシミ、ソバカスなどの色素沈着が生じることが知られているが、メラニンは、表皮色素細胞内で生合成された酵素であるチロシナーゼの働きによって、チロシン、ドーパ、ドーパキノン、5,6−ヒドロキシインドフェノールと数段階の中間体を経て生成されるものと考えられており、この生成過程の抑制や生成したメラニンの淡色化という手段によって、シミ、ソバカス、皮膚色素沈着症を予防、治療または改善するする方法が一般的に知られている。例えば、チロシナーゼ活性抑制効果を有する生薬である籐茶抽出物、ヤナギタケ抽出物等の使用、L−アスコルビン酸の大量投与、グルタチオン等の皮下注射、コウジ酸、システイン、ハイドロキシキノン等の皮膚への塗布などが挙げられる。
【0013】
例えば、特許文献5には、ノウゼンカズラ科マンソア属(Mansoa属;Pseudocalymma属)の植物の抽出物を有効成分とする抗酸化剤、抗老化剤、美白剤が、特許文献6には、コウヤマキ(Sciadopitys verticillata)抽出物を有効成分とする抗酸化性、抗糖化性、美白能力を有する皮膚外用剤が開示されている。
【0014】
その他に色素沈着予防及び改善のために、マキ科ダクリジウム ビフォルメ(Dacridium biforme)の水溶性溶媒などの抽出物を配合した化粧品が知られている。
【0015】
以上のように、皮膚に対する多種多様な傷害の有効な対抗策が検討されているが、安全面への配慮から天然系物質、特に植物抽出物についての検討が長年続けられているものの、植物種が異なるだけではなく抽出部位や抽出方法の違いでその効果も異なり予想がつかないために困難を極めているのが現状である。例えば、特許文献7には、コストゥス・スピカトゥス(Costus
spicatus)、コストゥス・スピラリス(Costus spiralis)、アニバ(Aniba)属植物、ミルキア(Myrcia)属植物、ポトモルフェ(Pothomorphe)属植物、ミラルイラ(Miraruira)属植物、ケノポディウム・アンブロシオイデス(Chenopodium
ambrosioides)、ポリガラ・スペクタビリス(Polygala spectabilis)、アラビダエア(Arrabidaea)属植物の抽出物の外用剤(化粧品を含む)への配合が開示されている。
【0016】
一方、コンナルス(Connarus ruber)は薬用資源の宝庫として知られるアマゾン熱帯雨林に自生するマメモドキ科の植物で、その乾燥樹皮抽出物は糖尿病に効果があるとされ、現地では日常生活で飲用されている。そのため、生体への有用性が期待されるものの、コンナルス抽出物の生理活性としては、変異原性抑制作用が共同研究者より報告されているが、その他の有効性については未だ不明な点が多い。
【0017】
発明者らは、コンナルスの未知の有用性に着目し、その効果について探索と研究を進め、非特許文献1及び2のようにコンナルス樹皮エキスの変異原性抑制物質の探索研究を進めていたが、驚くべきことに、近年、注目される皮膚トラブルの要因である活性酸素、糖化、メラニンの過剰産生について、優れた治療、改善、防止という効果があることを見出し、さらには、非特許文献3に記載されている皮膚外用剤の各種剤形での使用について、より最適な条件を見出すことに成功し、発明を完成した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2011−042644号公報
【特許文献2】特開2011−102270号公報
【特許文献3】特表2010−539174号公報
【特許文献4】特開2009−096731号公報
【特許文献5】特開2011−148708号公報
【特許文献6】特開2008−074748号公報
【特許文献7】特開2001−122763号公報
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】日本薬学会年会要旨集(131巻2号224頁,2011)
【非特許文献2】日本生薬学会年会講演要旨集(56巻96頁,2009)
【非特許文献3】「化粧品分野における公知技術集2010年版」(日本化粧品工業連合会 特許委員会 編)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
シワ、クスミ、キメの消失、弾力性の低下、シミ、ソバカスなど皮膚の多種多様な障害に対して広範囲に対応し、予防、治療または改善することのできる天然抽出物系の薬剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の課題を解決するために、この発明では、コンナルス(学名Connarus Ruber)の極性溶媒抽出物を抗老化剤、美白剤とし、並びに当該薬剤を含有する化粧品としたものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、コンナルス(学名Connarus Ruber)の抽出物を含有する皮膚外用抗皮膚老化剤または/及び皮膚外用美白剤としたので、当該抽出物が有する優れたDPPHラジカル消去活性、Lysozyme、架橋反応抑制メラニン産生抑制によって、抗老化剤または/及び美白剤として単独で、または原料成分として配合することにより化粧品等に応用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明の抗酸化剤、美白剤、抗老化剤または抗炎症剤などの皮膚外用剤は、マメモドキ科マメモドキ属コンナルス(学名Connarus Ruber)の抽出物を有効成分として含有するものである。
ここで、コンナルスの抽出物には、抽出液、この抽出液の希釈液もしくは濃縮液、抽出液を乾燥して得られる乾燥物、若しくは粗抽出物または精製物並びに超臨界抽出物若しくは亜臨界抽出物のいずれかが含まれてもよい。
【0024】
上記抽出原料として使用し得るコンナルスの抽出部位としては、特に制限されることなく、例えば、地上部、根部又はこれらの混合部を使用することができるが、これらのうち地上部を用いるのが生産効率を高めるためにも好ましい。上記地上部としては、葉部、枝部、樹皮部、茎部、果実部等を用いるのが好ましく、特に樹皮部を用いるのが好ましい。
【0025】
コンナルスの有効成分に含有される活性酸素抑制物質、ラジカル消去物質、脂質酸化抑制物質、チロシナーゼ活性抑制物質、メラニン生成抑制物質、エラスターゼ活性抑制物質又はβ−ヘキソサミニダーゼ活性抑制作用物質の詳細な化学物質名は不明である。
【0026】
しかしながら、植物からの抽出操作に一般に用いられる水、水性溶媒または親水性有機溶媒を用いた抽出方法によって、コンナルスの有効成分を得ることができ、これに活性酸素消去作用、ラジカル消去作用、脂質酸化抑制作用、チロシナーゼ活性抑制作用、メラニン生成抑制作用、エラスターゼ活性抑制作用又はβ−ヘキソサミニダーゼ活性抑制作用を有することが確認できる。例えば、コンナルスを乾燥させた後、そのまま又は粗破砕機を用いて粉砕し、抽出溶媒による抽出に供することにより、上記作用を有する抽出物を得ることができる。乾燥は天日で行っても良いし、通常使用される乾燥機を用いて行っても良い。また、ヘキサン等の非極性溶媒によって脱脂等の前処理を施してから抽出原料として使用しても良い。脱脂等の前処理を行うことにより溶媒による抽出を効率よく行うことができる。
【0027】
抽出溶媒としては、極性溶媒を用いるのが好ましく、例えば水、水性溶媒、親水性有機溶媒等が挙げられ、これらを単独又は2種以上組み合わせて、室温又は溶媒の沸点以下の温度で抽出することが好ましい。抽出溶媒として使用し得る水は、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他にも、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、濾過、イオン交換、浸透圧調整、緩衝化等が含まれる。従って、この発明において抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水、超臨界水、亜臨界水等も含まれる。また、水性溶媒とは、このような水に親水性有機溶媒以外の物質(たとえば食塩など水溶性塩類など)が、抽出溶媒としての性質を失わない濃度で溶解している水溶液をいう。
【0028】
抽出溶媒として使用することのできる親水性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級脂肪族アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコール等が挙げられる。
【0029】
上記した2種以上の極性溶媒の混合液を抽出溶媒として使用する場合、その混合比は、適宜調整することができる。例えば、水と親水性有機溶媒である低級脂肪族アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族アルコール1〜90質量部を混合することが好ましく、水と低級脂肪族ケトンとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して低級脂肪族ケトン1〜40質量部を混合することが好ましく、水と多価アルコールとの混合液を使用する場合には、水10質量部に対して多価アルコール1〜
90質量部を混合することが好ましい。
【0030】
抽出処理は、抽出原料に含まれる可溶性成分を抽出溶媒に溶出させ得る限り特に限定はされず、常法に従って行うことができる。例えば、抽出原料の5〜15倍量(質量比)の抽出溶媒に、抽出原料を浸漬し、常温、還流加熱、超臨界又は亜臨界下で可溶性成分を抽出させた後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。
【0031】
得られた抽出液は、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を施してもよく、それぞれ抽出液の濃縮液、乾燥物、これらの粗精製物または精製物を得る。精製は、例えば、活性炭処理、吸着樹脂処理、イオン交換樹脂処理等により行うことができる。得られた抽出液はそのままでも抗酸化剤の有効成分として使用することができるが、濃縮液又は乾燥物としてもよい。
【0032】
ここで、コンナルスの有効成分の有する抗酸化作用について、より具体的な作用例を挙げると、例えば活性酸素消去作用、ラジカル消去作用及び/又は脂質酸化抑制作用であり、特にこれらに限定されるものではない。ここで、「活性酸素」には、スーパーオキサイド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素又は過酸化脂質等が含まれる。また、「ラジカル」とは、不対電子を1つ又はそれ以上有する分子又は原子を意味し、スーパーオキサイド、ヒドロキシラジカル、DPPH等が含まれる。
【0033】
さらに、コンナルスの有効成分が有する美白作用について、そのより具体的な作用は、例えば、チロシナーゼ活性抑制作用及び/又はメラニン生成抑制作用であるが、特にこれらの具体的作用に限定されるものではない。さらにまた、コンナルスの有効成分が有する抗老化作用について、より具体的な作用は、例えば、エラスターゼ活性抑制作用であるが、特にこれらの具体的作用に限定されるものではない。また、コンナルスの有効成分が有する抗炎症作用について、より具体的な作用を挙げると、例えばβ−ヘキソサミニダーゼ活性抑制作用であるが、特にこれらの具体的作用に限定されるものではない。
【0034】
なお、上記コンナルスの有効成分が有する活性酸素消去作用、ラジカル消去作用、脂質酸化抑制作用、チロシナーゼ活性抑制作用、メラニン生成抑制作用、エラスターゼ活性抑制作用又はβ−ヘキソサミニダーゼ活性抑制作用を利用し、活性酸素消去剤、ラジカル消去剤、脂質酸化抑制剤、チロシナーゼ活性抑制剤、メラニン生成抑制剤、エラスターゼ活性抑制剤又は抗炎症剤として使用してもよい。この発明の抗酸化剤
、美白剤、抗老化剤又は抗炎症剤は、上記コンナルスの有効成分のみからなるものであってもよいし、上記有効成分から製剤化したものであってもよい。
【0035】
上記コンナルスの有効成分は、デキストリン、シクロデキストリン等の薬学的に許容し得るキャリアーその他任意の助剤を用いて、常法に従い、粉末状、顆粒状、液状等の任意の剤形に製剤化して提供することができ、他の組成物(例えば、後述する皮膚化粧料等)に配合して使用することができるほか、軟膏剤、外用液剤、貼付剤等として使用することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯臭剤等を用いることができる。
【0036】
この発明の抗酸化剤は、コンナルスの有効成分が有する活性酸素消去作用、ラジカル消去作用及び/又は脂質酸化抑制作用を通じて、過剰に産生された活性酸素や生体内ラジカルを消去することができる。その結果、シワ、キメの消失、皮膚の弾力低下等の皮膚の老化を予防、治療又は改善することができる。ただし、この発明の抗酸化剤
はこれらの用途以外にも、活性酸素消去作用、ラジカル消去作用及び/又は脂質酸化抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0037】
また、この発明の美白剤は、コンナルスの有効成分が有するチロシナーゼ活性抑制作用及び/又はメラニン生成抑制作用を通じて、皮膚の黒化やシミ等を予防、治療又は改善することができる。ただし、この発明の美白剤はこれらの用途以外にも、チロシナーゼ活性抑制作用及び/又はメラニン生成抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0038】
さらに、この発明の抗老化剤は、コンナルスの有効成分が有するエラスターゼ活性抑制作用を通じて、線維芽細胞由来のエラスターゼが必要以上にエラスチンを分解することを抑制することができる。その結果、シワ、キメの消失、皮膚の弾力低下等の皮膚の老化を予防、治療又は改善することができる。ただし、この発明の抗老化剤はこれらの用途以外にも、エラスターゼ活性抑制作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0039】
さらに、この発明の抗炎症剤は、コンナルスの有効成分が有するβ−ヘキソサミニダーゼ活性抑制作用を通じて、ヒスタミンと共に放出されるβ−ヘキソサミニダーゼの活性を抑制することができる。その結果、ヒスタミン遊離を阻害又は抑制する物質によりアレルギー性疾患等を予防・改善することができる。
ただし、この発明の抗炎症剤はこれらの用途以外にも、抗炎症作用を発揮することに意義のあるすべての用途に用いることができる。
【0040】
〔皮膚化粧料〕
上記コンナルスからの抽出物は、皮膚に適用した場合の使用感と安全性に優れているため、皮膚化粧料に配合するのに好適である。この場合、コンナルスの抽出物をそのまま配合してもよいし、当該抽出物から製剤化した抗酸化剤
、美白剤、抗老化剤又は抗炎症剤を配合してもよい。
【0041】
上記コンナルスの抽出物を配合し得る皮膚化粧料としては、特に限定されるものではなく、例えば乳液、石鹸、洗顔料、入浴剤、クリーム、化粧水、オーデコロン、髭剃り用クリーム、髭剃り用ローション、化粧油、日焼け止めローション、おしろいパウダー、ファンデーション、香水、パック、爪クリーム、エナメル、エナメル除去液、眉墨、ほお紅、アイクリーム、アイシャドー、マスカラ、アイライナー口紅、リップクリーム、シャンプー、リンス、染毛料、分散液、洗浄料等が挙げられる。
【0042】
上記コンナルスの抽出物を皮膚化粧料に配合する場合、その配合量は、皮膚化粧料の種類等によって所期した作用が充分に得られるように適宜調整することができるが、有効成分として効率よく作用する好適な配合率は、標準的な抽出物(乾燥物)に換算して約0.0001〜10質量%であり、特に好適な配合率は、標準的な抽出物(乾燥物)に換算して約0.001〜1質量%である。
【0043】
また、この発明の皮膚外用剤には、上記必須成分のほかこの発明の効果を損なわない範囲内であれば、化粧品、医薬部外品などの皮膚外用剤に配合される成分、油分、高級アルコール、脂肪酸、紫外線吸収剤、粉体、顔料、界面活性剤、多価アルコール、糖、多糖、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、高分子化合物、生理活性成分、溶媒、酸化防止剤、香料、防腐剤等を配合することができる。この場合、例えこの発明の一部の機能を損なう影響があったとしても、その他の機能に影響がない、または軽微な影響に留まるのであれば、発明の効果を本質的に損なうものとはいえない点に留意する必要がある。
【0044】
上記溶媒としては、水、エタノール、低級アルコール、エーテル類、LPG、フルオロカーボン、N−メチルピロリドン、フルオロアルコール、揮発性直鎖状シリコーン、次世代フロン等が挙げられる。
【0045】
なお、この発明の抗酸化剤、美白剤、抗老化剤、抗炎症剤及び化粧料等の皮膚外用剤は、ヒトに対して適用される他、ヒト以外の動物(愛玩動物、家畜など)に対しても適用できる。
【実施例1】
【0046】
以下に、コンナルス抽出物及びそれを含有する皮膚外用剤の製造例、各種試験例などを説明する。
<製造例1>
乾燥コンナルス樹皮1kgを50%1,3−ブチレングリコールに常温で24時間浸漬した後、ろ過し、抽出物を得た。
【0047】
<ラジカル消去作用試験(抗酸化効果確認試験)>
紫外線やストレスなどにより生体内に発生した活性酸素種(ROS)は、DNAの酸化傷害やタンパク質の変性等を誘発し、シワやしみの要因の一つと考えられている。そのため、酸化の抑制は抗老化素材として有用である。
【0048】
コンナルス抽出物を用い、520nmに極大吸収を持つ安定なラジカル物質である1−ジフェニル-2-ピクリル-ヒドラジル(1,1-diphenyl-2-picryl-hydrazyl:以下、DPPH)がコンナルス抽出物に含まれる抗酸化物質により還元されることで生じる520nmにおける吸光度の減少を捕らえて抗酸化能を評価した。
【0049】
コンナルス抽出物はエタノールに希釈し、試料とした。試料を96穴プレートに入れ、1.5×10−4 mol/LのDPPH溶液を加えて25℃、30分間反応させ、520nmの吸光度を測定した。その結果を下記の式に示すDPPHラジカル消去率として示した。
DPPHラジカル消去率(%)={1−(A−B)/(C−D)}×100
(式中、A、B、C、Dは以下の測定値を示す。A:各濃度の試料溶液における反応溶液の吸光度、B:各濃度の試料溶液における調整溶液の吸光度、C:試料無添加における反応溶液の吸光度、D:試料無添加における調整溶液の吸光度)
【0050】
【表1】

コンナルス抽出物がDPPHラジカル消去作用を有するものとして知られるアスコルビン酸と比較しても優れていることを確認した。
【0051】
<架橋反応抑制試験(抗糖化効果試験)>
糖化は糖とタンパク質などによる非酵素的な反応であり、最終的に終末糖化産物(AGEs)を形成することが知られている。特に糖化に伴うコラーゲンの架橋化は皮膚弾力性の低下を生じさせるなど、近年、皮膚における糖化ストレスの亢進が老化に大きく影響することが示唆されている。そのため、糖化の抑制は抗老化素材として期待できる。
【0052】
20 mM D−リボースと25mg/mlのリゾチームにコンナルス抽出物を混合し、37℃にて7日間静置した。その後、反応液にサンプルバッファーを加え電気泳動を行い、クマシーブリリアントブルー染色によりバンドを可視化した。生成されるリゾチーム二量体のバンドサイズを糖化の指標として評価を行った。
【0053】
【表2】

コンナルス抽出物がリゾチーム架橋化抑制による抗糖化作用を有することで知られるアミノグアニジンよりも著しく優れていることを確認した。
【0054】
<メラニン産生抑制作用試験(美白効果確認試験)>
紫外線などにより過剰に産生されるメラニンは肌のくすみの原因となる。そのため、メラニン生成の産生作用は美白剤として期待できる。
【0055】
B16マウスメラノーマ細胞を10%FBS含有MEM培地中で培養したものを使用した。なおこの培養は全て37℃、5%CO2存在下条件で行なった。コンナルス抽出物は10%FBS含有MEM培地にて希釈し、試料とした。詳細には、1.5×105 のB16マウスメラノーマ細胞を、35mmプラスティックシャーレに播種し、24時間培養した。その後、新鮮な培地に交換し、試験試料を添加した。試料添加48時間後、培地を除去し、細胞を0.85N水酸化カリウム溶液で溶解させ、420nmにおける吸光度を測定した。また、試料無添加の細胞のメラニン生成率を100%として試料添加時のメラニン生成率を算出した。
【0056】
【表3】

コンナルス抽出物が、メラニン産生抑制作用を有することで知られるアルブチンよりも著しく優れていることを確認した。
【実施例2】
【0057】
この発明の実施形態として調剤することのできた皮膚外用剤(化粧料)の処方例を以下に列挙するが、これら以外にも、例えば非特許文献3で紹介されている処方例においても容易に調剤することができる。なお、成分に続いて示す配合割合は、全て重量%である。
【0058】
[処方例1;化粧水]
セチルアルコール 5
グリセリン 2
1,3−ブチレングリコール 5
トリメチルグリシン 1
ポリアスパラギン酸ナトリウム 0.1
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル 0.25
α−トコフェロール
2−L−アスコルビン酸リン酸ジエステルカリウム 0.1
HEDTA3ナトリウム 0.1
コウヤマキ抽出液(試料2)0.1
ヘキサメタリン酸ナトリウム 0.003
カルボキシビニルポリマー 0.05
水酸化カリウム 0.025
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
香料 適量
【0059】
[処方例2;化粧水]
グリセリン 2.5
1,3−ブチレングリコール 4
エリスリトール 1.5
ポリオキシエチレンメチルグルコシド 1
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.5
コウヤマキ抽出液(試料2) 0.1
クエン酸 0.02
クエン酸ナトリウム 0.08
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
香料 適量
【0060】
[処方例3;乳液]
ジメチルポリシロキサン 2.5
デカメチルシクロペンタシロキサン 23
ドデカメチルシクロヘキサシロキサン 15
ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体 1.5
トリメチルシロキシケイ酸 1
1,3−ブチレングリコール 5
スクワラン 1.5
タルク 6
グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
コウヤマキ抽出液(試料2) 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
エデト酸三ナトリウム 0.05
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 5
シリコーン被覆微粒子酸化チタン 4
ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 0.5
球状ポリエチレン末 3
フェノキシエタノール 適量
精製水 残余
香料 適量
【0061】
[処方例4;クリーム]
流動パラフィン 9
ワセリン 2
ジメチルポリシロキサン 2
ステアリルアルコール 4
ベヘニルアルコール 2
グリセリン 5
ジプロピレングリコール 4
キシリトール 1
テトラ2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリット 4
親油型モノステアリン酸グリセリン 2
モノイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル 2
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1
クエン酸 0.05
クエン酸ナトリウム 0.05
水酸化ナトリウム 0.015
油溶性甘草エキス 0.1
酢酸トコフェロール 0.1
コウヤマキ抽出液(試料2) 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
フェノキシエタノール 適量
エデト酸三ナトリウム 0.05
ポリビニルアルコール 0.5
ヒドロキシエチルセルロース 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.05
精製水 残余
香料 適量
【0062】
[処方例5;ジェル]
グリセリン 2
1,3−ブチレングリコール 4
水酸化ナトリウム 0.2
エデト酸三ナトリウム 0.05
コウヤマキ抽出液(試料2) 0.1
カルボキシビニルポリマー 0.25
パラオキシ安息香酸エステル 適量
精製水 残余
【0063】
[処方例6;乳化型ファンデーション]
ベヘニルアルコール 0.5
ジプロピレングリコール 6
ステアリン酸 1.5
モノステアリン酸グリセリン 1
水酸化ナトリウム 0.15
トリエタノールアミン 0.6
酢酸トコフェロール 0.1
パラオキシ安息香酸エステル 適量
黄酸化鉄 1
ジメチルポリシロキサン(6cs) 2
ジメチルポリシロキサン(100cs) 5
ステアリルアルコール 1.5
イソステアリン酸 1.5
ベヘニン酸 0.5
2−エチルヘキサン酸セチル 10
モノステアリン酸ポリオキシエチレングリセリン 1
酸化チタン 3
表面処理酸化チタン 10
ポリアクリル酸アルキル被覆雲母チタン 0.5
黒酸化鉄 適量
無水ケイ酸 6
パラメトキシ桂皮酸2−エチルヘキシル 2
ベンガラ 適量
群青 適量
法定色素 適量
キサンタンガム 0.1
ベントナイト 1
カルボキシメチルセルロース 0.1
コウヤマキ抽出液(試料2) 0.1
精製水 残余
香料 適量
【0064】
[処方例7;固形ファンデーション]
タルク 43
カオリン 15
セリサイト 10
亜鉛 7
酸化チタン 4
黄酸化鉄 3
黒酸化鉄 適量
ベンガラ 適量
スクワラン 8
イソステアリン酸 4
モノオレイン酸POEソルビタン 3
オクタン酸イソセチル 2
コウヤマキ抽出液(試料2) 0.5
パラオキシ安息香酸エステル 適量
香料 適量
【産業上の利用可能性】
【0065】
効果・安全性の高い、主に抗酸化・抗糖化・美白機能を有する化粧品等の配合原料または薬剤そのものを提供することが出来る。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンナルス(Connarus Ruber)の抽出物を含有する皮膚外用抗皮膚老化剤
【請求項2】
抗皮膚老化性の有効成分が、抗酸化性または/及び抗糖化性に基づく有効成分である請求項1に記載の皮膚外用抗皮膚老化剤
【請求項3】
コンナルス(Connarus Ruber)の抽出物を含有する皮膚外用美白剤
【請求項4】
請求項1から2のいずれかに記載の皮膚外用抗皮膚老化剤を含有する外用化粧料
【請求項5】
請求項3に記載の外用美白剤を含有する外用化粧料
































【公開番号】特開2013−107859(P2013−107859A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255721(P2011−255721)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2011年9月1日に日本生薬学会が発行した刊行物である「日本生薬学会 第58回年会 講演要旨集」307頁(2P−47)にて発表。
【出願人】(593084649)日本コルマー株式会社 (12)
【Fターム(参考)】