コンバイン
【課題】搬送経路で穀稈が詰まった場合には、停止操作手段によってフィードチェーンの駆動を早急に停止させたい場合でも、惰性によって、エンジン停止後の所定時間、フィードチェーンが搬送作動し続け、フィードチェーンを緊急停止できないという課題があった。
【解決手段】前処理部4と、フィードチェーン9と、穀稈の詰りを検出する詰り検出手段66,67,68,69と、エンジンの駆動停止操作を行う停止操作手段22と、エンジン停止手段76と、穀稈の詰り又は停止操作手段22の操作が検出された場合にエンジンを停止させる制御部60とを備えたコンバインにおいて、油圧式無段階変速装置43をニュートラル状態にすることによりフィードチェーンを駆動停止させる駆動停止手段74を設け、前記制御部60は、前記停止操作手段22が操作された場合には、エンジンを停止させ且つ駆動停止手段74によってフィードチェーン9を駆動停止させる。
【解決手段】前処理部4と、フィードチェーン9と、穀稈の詰りを検出する詰り検出手段66,67,68,69と、エンジンの駆動停止操作を行う停止操作手段22と、エンジン停止手段76と、穀稈の詰り又は停止操作手段22の操作が検出された場合にエンジンを停止させる制御部60とを備えたコンバインにおいて、油圧式無段階変速装置43をニュートラル状態にすることによりフィードチェーンを駆動停止させる駆動停止手段74を設け、前記制御部60は、前記停止操作手段22が操作された場合には、エンジンを停止させ且つ駆動停止手段74によってフィードチェーン9を駆動停止させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
エンジンの駆動を停止する操作具を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
穀稈を刈取って後方搬送する前処理部と、前処理部からの穀稈を受取って脱穀部に沿って後方搬送するフィードチェーンと、搬送中の穀稈の詰りを検出する詰り検出手段と、エンジンの駆動停止操作を行う停止操作手段と、エンジンを停止させるエンジン停止手段と、制御部とを備え、該制御部は、詰り検出手段によって穀稈の詰りが検出された場合又は停止操作手段による上記駆動停止操作が検出された場合、前記エンジン停止手段を介してエンジンを停止させる特許文献1に記載のコンバインが従来公知である。
【0003】
該構成のコンバインによれば、詰り検出手段により搬送中の穀稈に詰まりが生じたことが検出された場合には、エンジン停止手段によってエンジンが停止され、穀稈の搬送及び機体の走行が停止される。このため、穀稈の詰りが助長されるのが防止されるとともに、穀稈の搬送が停止されたまま機体が走行して、圃場の穀稈の押倒すような事態も防止できる。また、停止操作手段を手動操作することによりエンジンの駆動を停止させることができるため、手扱ぎ作業時にトラブルがあった場合には、該停止操作手段によりフィードチェーンの駆動を停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4057340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献のコンバインでは、停止操作手段によってフィードチェーンの駆動を早急に停止させたい場合でも、惰性によって、エンジン停止後の所定時間、フィードチェーンが搬送作動し続け、フィードチェーンを緊急停止できないという問題があった。
【0006】
本発明は、場合によっては即座にフィードチェーンを駆動停止させるとともに、その他の場合には、エンジン動力を伝動する各部材に必要以上に負担をかけないように、緩やかに駆動停止させるコンバインを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、穀稈を刈取って後方搬送する前処理部4と、前処理部4からの穀稈を受取って脱穀部8に沿って後方搬送するフィードチェーン9と、搬送中の穀稈の詰りを検出する詰り検出手段66,67,68,69と、エンジンの駆動停止操作を行う停止操作手段22と、エンジンを停止させるエンジン停止手段76と、制御部60とを備え、該制御部60は、詰り検出手段66,67,68,69によって穀稈の詰りが検出された場合又は停止操作手段22による上記駆動停止操作が検出された場合、前記エンジン停止手段76を介してエンジンを停止させるコンバインにおいて、エンジンからの動力を前記フィードチェーン9に変速伝動する油圧式無段階変速装置43と、該油圧式無段階変速装置43をニュートラル状態にすることによりフィードチェーンを駆動停止させる駆動停止手段74とを設け、前記制御部60は、前記詰り検出手段66,67,68,69により穀稈の詰りが検出された場合には、前記エンジン停止手段76によってエンジンを停止させる一方で、前記停止操作手段22による駆動停止操作が検出された場合には、前記エンジン停止手段76によりエンジンを停止させ且つ駆動停止手段74によってフィードチェーン9を駆動停止させることを特徴としている。
【0008】
第2に、前記油圧式無段階変速装置43によって変速された動力を前記前処理部4に伝動させる伝動機構を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、緊急性の高い場合は、停止操作手段による駆動停止操作を行うことによって、油圧式無段階変速装置をニュートラル状態に切換え、その制動力によって速やかにフィードチェーンの駆動を停止できる一方で、詰り検出手段によって穀稈の詰りが検出された場合には、エンジンを停止させ、緩やかに穀稈搬送部等の駆動を停止させることが可能になり、状況に応じた適切な手段によって、フィードチェーンの駆動を効率的に停止させることが可能になる。
【0010】
また、前記油圧式無段階変速装置によって変速された動力を前記前処理部に伝動させる伝動機構を設ければ、前処理部による圃場の穀稈の刈取速度とフィードチェーンによる穀稈の搬送速度とを連動させることができるとともに、刈取走行中に詰りが発生した場合には、エンジン停止によって前処理部及びフィードチェーンの駆動停止を行うことにより、緩やかにコンバインの走行駆動を停止させた際に、前処理部及びフィードチェーンの駆動も連動して緩やかに停止するため、エンジンが停止した際に圃場の穀稈を押倒すことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用したコンバインの左側面図である。
【図2】本発明を適用したコンバインの平面図である。
【図3】本コンバインの動力系統図である。
【図4】操縦部を示した要部平面図である。
【図5】主変速レバーを示す要部斜視図である。
【図6】制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】各作業モードの穀稈搬送速度と車速との関係を示したグラフである。
【図8】制御部のメインルーチンの処理フロー図である。
【図9】クラッチ制御のサブルーチンの処理フロー図である。
【図10】作業モード制御のサブルーチンの処理フロー図である。
【図11】緊急停止制御のサブルーチンの処理フロー図である。
【図12】本コンバインの別実施例1を示した動力系統図である。
【図13】本コンバインの別実施例2を示した動力系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1及び図2は、本発明を適用したコンバインの左側面図及び平面図であり、図3は、本コンバインの動力系統図である。本コンバインは、進行方向右(右)側に操縦部2を有するとともに、左右一対のクローラ式走行装置1,1によって支持される走行機体3と、前記走行機体3の前方に配置された前処理部4とから構成されており、該前処理部4は走行機体3に対して昇降自在に連結されている。
【0013】
本コンバインの前進時、前処理部4の刈刃6によって刈取られた圃場の穀稈は、前処理部4の前処理搬送装置7によって走行機体3左部の脱穀装置8側まで搬送され、フィードチェーン9の前端側まで搬送される。該フィードチェーン9は、受け取った穀稈を脱穀装置8(脱穀部)に沿って後方搬送する。穀稈は、この後方搬送過程で、脱穀装置8内の扱胴(図示しない)及び処理胴(図示しない)によって脱穀処理されて排藁となり、排藁搬送体12によって走行機体3の後端部まで搬送される一方で、扱降ろされた処理物は脱穀装置8内の選別部(図示しない)に落下供給される。
【0014】
選別部に供給された処理物は、唐箕ファン13を用いて発生させる選別風による風選等によって、一番物と、二番物と、排藁等とに選別される。一番物は、籾等の穀粒として、走行機体3の右側半部の後側に設定されたグレンタンク14に搬送され、二番物は、再び選別部内に還元され、藁屑は、選別風によって走行機体3の後端部から機外に排出される。一方、排藁搬送体12によって、走行機体3の後部まで搬送された排藁は、そのまま、又は、後処理部16によって切断処理された後、機外に排出される。
【0015】
グレンタンク14内の穀粒は、全体が水平旋回及び上下揺動するように基端側が走行機体3の後端部右側の支持されたオーガ17を介して機外に排出される。ちなみに、該オーガ17は、内部に縦ラセン18aが収納された上下方向の縦ラセン筒18と、内部に横ラセン19aが収納された前後方向の横ラセン筒19とを備えて構成されており、これらのラセン18a,19aによって穀粒の搬送が行われる。
【0016】
なお、走行機体3の左側部には手扱ぎスイッチ21が設けられており、該手扱ぎスイッチ21により手扱ぎモードに切換えることができる。該手扱ぎモードでは、前処理部4の駆動を停止させた状態で脱穀装置8側のフィードチェーン9、脱穀装置8内、及び排藁搬送体12等を駆動させることにより、作業者は、走行機体3の側方から穀稈を手作業でフィードチェーン9に流すことによって脱穀作業を行う手扱ぎ作業ができる。
【0017】
さらに、上記手扱ぎスイッチ21の近傍の側面視左側には、緊急停止スイッチ22(停止操作手段)が設けられており(図2参照)、上記の手扱ぎ作業等によってフィードチェーン9等が駆動している際に、該緊急停止スイッチ22が押操作されると、フィードチェーン9の駆動が即座に停止するとともに、エンジン20の駆動も停止する。上記の手扱ぎスイッチ21及び緊急停止スイッチ22の詳細については後述する。
【0018】
次に、図3に基づいて本コンバインの伝動構成について説明する。本コンバインは、図3に示すように、エンジン20の動力によって各部が駆動される。エンジン20で発生させた回転動力は、出力軸23に出力され、該出力軸23には、作業プーリ24と、走行プーリ26と、排出プーリ27とが一体回転するように設けられている。
【0019】
前記走行プーリ26に伝動された動力は、走行HST28側にベルト伝動され、無段階に変速伝動された後、走行トランスミッション29を介して、左右の各クローラ式走行装置1,1に伝動される。このとき、出力軸23から走行トランスミッション29側に動力伝動するベルトには、エンジン20の動力を断続させる走行クラッチ30が設けられている。
【0020】
前記排出プーリ27に伝動された動力は、上述のグレンタンク14内の排出ラセンや、オーガ17内の縦ラセン18a及び横ラセン19a等に伝動され、穀粒が機外に排出されるようにグレンタンク14及びオーガ17等を駆動させることができる。ちなみに、この複数の排出ラセンへのベルト伝動は、テンションプーリ等からなる排出クラッチ31によって、断続される。
【0021】
前記作業プーリ24に伝動された動力は、作業伝動軸32にベルト伝動され、この作業伝動軸32の動力によって、前処理部4、フィードチェーン9、脱穀装置8内、及び後処理部16が駆動される。具体的には、作業プーリ24と、作業伝動軸32と一体回転する作業伝動プーリ33とに掛け回された作業伝動ベルト34によって、エンジン20の動力が作業伝動軸32に伝動される。この作業伝動ベルト34には、作業伝動ベルト34のテンションを調整するテンションプーリから構成されて作業伝動軸32へのエンジン20の動力を断続させる作業クラッチ36が設けられている。該作業クラッチ36は、作業クラッチ切換手段である作業クラッチモータ37によって断続操作され、この作業クラッチモータ37はマイコン等から構成される後述の制御部60によって駆動が制御される。
【0022】
前記作業伝動軸32には脱穀プーリ38と、選別プーリ39と、搬送プーリ41とが一体回転するように設けられている。これにより、作業伝動軸32に伝動された動力は、脱穀プーリ38を介して、脱穀装置内(図示しない扱胴、処理胴等)及び排藁搬送体12側に伝動され、選別プーリ39を介して、選別部及び後処理部16側に伝動され、作業伝動軸32の駆動によって、唐箕ファン13も駆動するように構成されている。
【0023】
また、作業伝動軸32に伝動された動力のうち、特に、上記搬送プーリ41に伝動された動力は、搬送伝動軸42にベルト伝動され、搬送伝動軸42に伝動された動力が搬送HST43(油圧式無段階変速装置)に入力されることによって、エンジン20の動力がフィードチェーン9及び前処理部4側へ変速伝動される。具体的には、搬送HST43により無段階に変速伝動された動力は、動力伝動ボックスである搬送カウンタ44を介して、フィードチェーン駆動軸46と、刈取伝動軸47とにそれぞれ伝動される。
【0024】
フィードチェーン駆動軸46に伝動された動力は、フィードチェーン9に伝動されるため、搬送HST43で変速伝動された動力に応じてフィードチェーン9が駆動する。
【0025】
刈取伝動軸47に伝動された動力は、刈取駆動軸48にベルト伝動され、前処理部4(刈刃6、前処理搬送装置7等)を駆動させ、穀稈の刈取作業及び搬送作業を行う。具体的には、刈取伝動軸47と一体回転する刈取伝動プーリ49と、刈取駆動軸48と一体回転する刈取駆動プーリ51とに掛け回される刈取伝動ベルト52によって、刈取駆動軸48にエンジン動力が伝動される。この刈取伝動ベルト52には、刈取伝動ベルト52のテンションを調整するテンションプーリより構成されて前処理部4側への動力伝動を断続させる刈取クラッチ53が設けられている。該刈取クラッチ53は、刈取クラッチ切換手段である刈取クラッチモータ54によって断続操作され、この刈取クラッチモータ54は後述の制御部60によって駆動が制御される。
【0026】
本コンバインの上述の伝動構成により、作業クラッチ36は、前処理部4、フィードチェーン9、脱穀装置8及び後処理部16へのエンジン動力の伝動を断続させ、作業クラッチ36の伝動下流側に設けた刈取クラッチ53は、前処理部4へのエンジン動力の伝動を断続させる。また、搬送HST43は、後述の制御部60により、エンジン20からの動力を車速に連動して変速させているため、車速が遅くなると、前処理部4の刈取速度及びフィードチェーン9の搬送速度が連動して遅くなり、車速が速くなると、これに連動して前処理部4の刈取速度及びフィードチェーン9の搬送速度が速くなるように制御されている。
【0027】
図4は、操縦部を示した要部平面図である。前記操縦部2は、オペレータが着座する座席56と、座席56の側方(図示する例では左側)に配置された主変速操作具である主変速レバー57と、主変速レバー57の左右外側に設けた副変速レバー58と、副変速レバー58の後方に配置されたエンジン20の回転数を調整するコントロールレバー59と、主変速レバー57の後方側に設けた作業クラッチ36及び刈取クラッチ53の断続を操作するシーソースイッチ61を備えている。
【0028】
該シーソースイッチ61は中立位置に付勢されるように構成されており、左右にそれぞれオルタネイトスイッチであるクラッチ入スイッチ61a(図示する例では左側)とクラッチ切スイッチ61b(図示する例では右側)とが設けられている。これにより、クラッチ入スイッチ61aを操作すると作業クラッチ36又は刈取クラッチ53が入操作され、クラッチ切スイッチ61bを操作すると作業クラッチ36又は刈取クラッチ53が切操作される。詳細については後述する。
【0029】
前記主変速レバー57は、ニュートラル位置で左右揺動可能に構成されており、主変速レバー57をニュートラル位置から右側へ傾けた状態で前方へ揺動操作することによって、走行機体3を前進走行させ、主変速レバー57をニュートラル位置から左側に傾けた状態で後方へ揺動操作することによって、走行機体3を後進走行させることができ、いずれの場合も、主変速レバー57の揺動操作量に応じて前進及び後進側へ増速される。
【0030】
図5は、主変速レバーを示す要部斜視図である。主変速レバー67には、オペレータが座席左方側の主変速レバー57の上端側のグリップを握った際に親指が位置するグリップの右側面側には、前処理部4及び脱穀装置8を一定速度で駆動させる強制掻込モードへ切換えるための強制掻込スイッチ62が配置され、主変速レバー57の後面側には、前処理部4及び脱穀装置8の駆動速度を通常より速くすることができる倒伏モードに切換えるための倒伏スイッチ63が設けられている。
【0031】
次に、図6乃至9に基づき、制御部の構成を説明する。
図6は、制御部の構成を示すブロック図である。
【0032】
コンバインに搭載された制御部60の入力側には、走行機体3の車速を検出する車速センサ64と、上述の強制掻込スイッチ62と、倒伏スイッチ63と、手扱ぎスイッチ21と、緊急停止スイッチ22と、前処理部4における搬送穀稈の詰りを検出する前処理詰りセンサ66と、フィードチェーン9で搬送中の穀稈が詰まったことを検出するフィードチェーン詰りセンサ67と、排藁搬送体12で搬送中の穀稈が詰まったことを検出する排藁詰りセンサ68と、グレンタンク14内の籾が満杯になったことを検出する籾満杯センサ69と、搬送HST43のトラニオン軸の角度を検出する搬送HSTセンサ71と、作業クラッチ36の入切を検出する作業クラッチ検出センサ72と、刈取クラッチ53の入切を検出する刈取クラッチ検出センサ73と、上述のシーソースイッチ61であるクラッチ入スイッチ61aと、クラッチ切スイッチ61bとが接続されている。
【0033】
一方、制御部60の出力側には、搬送HST43のトラニオン軸の角度を調整して変速伝動させる搬送HST変速モータ74(駆動停止手段)と、エンジン20への燃料供給を断絶させてエンジン20の駆動を停止させる燃料カットソレノイド76(エンジン停止手段)と、上述の作業クラッチ切換手段37と、刈取クラッチ切換手段54とが接続されている。
【0034】
図7は、各作業モードの穀稈搬送速度と車速との関係を示したグラフである。制御部60は、図7で示されるように、4つの作業モードに切換えることができる。具体的には、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53を接続し、車速センサ64で検出された車体の走行速度及び穀稈の搬送速度(搬送HSTの駆動速度)を連動させる標準モードと、車体の走行速度及び穀稈の搬送速度の連動を保ちつつ上記標準モードの状態よりも搬送HST43で高速に変速して前処理部及びフィードチェーン9側に伝動した倒伏モードと、車速に関係なく(停止時であっても)前処理部4及びフィードチェーン9を一定速度で駆動させる強制掻込モードと、車速に関係なく前処理部4の駆動を停止させた状態でフィードチェーン9を一定速度で駆動させる手扱ぎモードとに切換えることができる。このとき、強制掻込モード及び手扱ぎモード時の穀稈の搬送速度、すなわちフィードチェーン9の駆動速度は同じに設定されている。
【0035】
また、制御部60は、前処理詰りセンサ66、フィードチェーン詰りセンサ67、及び排藁詰りセンサ68によって、前処理部4、フィードチェーン9、あるいは排藁搬送体12において穀稈が詰まっていることが検出された場合、若しくはモミ満杯センサ69によりグレンタンク内がモミで満杯になったことを検出した場合には、燃料カットソレノイド76によりエンジン20の駆動を停止させることができるように構成されている。これにより、搬送経路に穀稈が詰まった状態で刈取・脱穀作業を継続することによる故障を回避することができる他、グレンタンクが満杯の状態で刈取作業を継続してグレンタンク内から籾が溢れ出ることを防止できる。
【0036】
さらに、制御部60は、上述の各詰りセンサ66,67,68,69によってエンジンの駆動が停止するだけでなく、特に、作業者が手扱ぎモードによって、機体側方から手扱ぎ作業を行う際に、フィードチェーン9の始端部近傍に配置された緊急停止スイッチ22を押操作することにより、搬送HST43をニュートラル位置に操作して、その搬送HST43による制動力によってフィードチェーン9の駆動を緊急停止させるとともに、エンジン20の駆動を停止させることができるように構成されている。すなわち、搬送HST43をニュートラル位置に操作することにより、エンジン停止後の惰性力が搬送HST43からフィードチェーン9側に伝達されなくなると共に、搬送HST43の油圧モータがブレーキの役をすることによって、フィードチェーン9を即座に駆動停止させることができる。
【0037】
したがって、手扱ぎ作業中に不注意等によって衣服がフィードチェーン9に挟まれた場合であっても、緊急停止スイッチ22を押操作することによって、搬送HST43のブレーキ作用によってフィードチェーン9の駆動が直ちに停止するため、万が一の場合であっても安全性が保たれる。なお、該緊急停止スイッチ22は、手扱ぎモードに限らず、何れの作業モード中であっても実行することができる。
【0038】
このため、本コンバインの制御部60は、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53の入切を行うクラッチ制御と、各作業モードに切換えることにより搬送HST43による変速伝動を制御する作業モード制御の他に、駆動中のフィードチェーン9を緊急停止するとともにエンジン20の駆動を停止させる緊急停止制御を実行する。該制御のフローについて以下、説明する。
【0039】
次に、図8乃至10に基づいて、クラッチ制御と、脱穀モード制御と、緊急停止制御とから構成される制御部の処理フローについて説明する。
図8は、制御部のメインルーチンの処理フロー図である。制御部60は、同図に示す通り、処理が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、上記作業クラッチ36及び刈取クラッチ53の入切が行われるクラッチ制御のサブルーチンを実行し、該サブルーチンの処理が終了すると、ステップS2に進む。ステップS2では、脱穀作業時の脱穀モードを変更する脱穀モード制御のサブルーチンを実行し、該サブルーチンの処理が終了すると、ステップS3に進む。ステップS3では、所定の状態時にエンジン等を緊急停止させる緊急停止制御のサブルーチンを実行し、該サブルーチンの処理が終了すると、ステップS1に処理を戻す。
【0040】
図9は、クラッチ制御のサブルーチンの処理フロー図である。制御部60は、クラッチ制御が開始されると、ステップS11に進む。ステップS11では、手扱ぎスイッチ21のON・OFFを検知し、手扱ぎスイッチ21がONの場合には、ステップS12に進み、作業クラッチ36が入操作されるとともに刈取クラッチ53が切操作される。ステップS12の後はリターンする。一方、ステップS11において手扱ぎスイッチ21がOFF状態であった場合には、ステップS13に進む。
【0041】
ステップS13では、クラッチ入スイッチ61aのON・OFFを検知し、クラッチ入スイッチ61aがOFFの場合には、ステップS14に進み、クラッチ切スイッチ61bのON・OFFを検知する。ステップS14でクラッチ切スイッチ61bがOFF状態であった場合には、リターンする。一方、ステップS14においてクラッチ切スイッチ61bがONの場合には、ステップS15に進む。
【0042】
ステップS15では、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に接続されているか否かが判定され、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が何れも接続されている場合は、ステップS16に進み、作業クラッチ36の接続を保ちつつ刈取クラッチ53を切操作する。ステップS16の後はリターンする。一方、ステップS15において作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に接続された状態以外の場合は、ステップS17に進む。
【0043】
ステップS17では、作業クラッチ36が接続状態で且つ刈取クラッチ53が切断状態であるか否かが判定され、該状態が検出された場合は、ステップS18に進み、作業クラッチ36を切操作して、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53を共に切断状態にする。ステップS18の後はリターンする。一方、ステップS17において作業クラッチ36が接続状態で且つ刈取クラッチ53が切断状態を検出しなかった場合、すなわち、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に切断された状態の場合には、そのままリターンする。
【0044】
また、ステップS13においてクラッチ入スイッチ61aのONが検知された場合には、ステップS19に進む。ステップS19では、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が何れも切断された状態であるか否かが判定され、該状態が検出された場合は、ステップS20に進み、作業クラッチ36を入操作して、作業クラッチ36は接続されつつ刈取クラッチ53は切断された状態にする。ステップS20の後はリターンする。一方、ステップS19において作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に切断された状態以外の場合は、ステップS21に進む。
【0045】
ステップS21では、作業クラッチ36が接続状態で且つ刈取クラッチ53が切断状態であるか否かが判定され、該状態が検出された場合は、ステップS22に進み、刈取クラッチ53を入操作して、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53を共に接続状態にする。ステップS22の後はリターンする。一方、ステップS21において作業クラッチ36が接続状態で且つ刈取クラッチ53が切断状態を検出しなかった場合、すなわち、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に接続された状態の場合には、そのままリターンする。
【0046】
図10は、脱穀モード制御のサブルーチンの処理フロー図である。制御部60は、作業モード制御が開始されると、ステップS31に進む。ステップS31では、作業クラッチ36の入切が検知され、作業クラッチ36の接続状態が検出された場合はステップS32に進む。一方、ステップS31において作業クラッチ36が切断状態であった場合は、前処理部4、脱穀装置8、及びフィードチェーン9等が駆動していない状態であるため、そのままリターンする。
【0047】
ステップS32では、刈取クラッチ36のON・OFFが検知され、刈取クラッチ36の切断状態が検出された場合は、ステップS33に進み、上述の手扱ぎモードに切換えられ、車速に関わらず搬送HST43の駆動速度が一定に保ちつつ、前処理部4の駆動を停止させた状態でフィードチェーン9及び脱穀装置8側を駆動させる。ステップS33の後はリターンする。一方、ステップS32において刈取クラッチ36が接続状態であった場合は、ステップS34に進む。
【0048】
ステップS34では、強制掻込スイッチ62のON・OFFが検知され、強制掻込スイッチ62のON状態が検出された場合は、ステップS35に進み、上述の強制掻込モードに切換えられ、車速に関わらず搬送HST43の駆動速度が一定に保ちつつ、前処理部4、脱穀装置8、及びフィードチェーン9を駆動させる。ステップS35の後はリターンする。一方、ステップS34において強制掻込スイッチ62がOFF状態であった場合は、ステップS36に進む。
【0049】
ステップS36では、倒伏スイッチ63のON・OFFが検知され、倒伏スイッチ63のOFF状態が検出された場合は、ステップS38に進み、上述の標準モードに切換えられ、搬送HST43を車速に連動させつつ、前処理部4、脱穀装置8、及びフィードチェーン9を駆動させることができる。ステップS38の後はリターンする。
【0050】
一方、ステップS36において倒伏スイッチ63がON状態であった場合は、ステップS37に進み、上述の倒伏モードに切換えられ、標準モードのときと比較して、搬送HST43の駆動速度を高速に変速することができる。ステップS37の後はリターンする。
【0051】
図11は、緊急停止制御のサブルーチンの処理フロー図である。制御部60は、緊急停止制御が開始されると、ステップS41に進む。ステップS41では、緊急停止スイッチ22のON・OFFが検知され、緊急停止スイッチ22がOFF状態であった場合はステップS42に進む。
【0052】
ステップS42では、前処理詰りセンサ66のON・OFFが検知され、前処理詰りセンサ66のONが検知されて前処理部4で穀稈が詰まっていることが検出された場合は、ステップS43に進み、燃料カットソレノイド76により燃料供給を停止することによりエンジン20の駆動を停止させる。ステップS43の後はリターンする。一方、ステップS42において前処理詰りセンサ66がOFF状態であった場合は、ステップS44に進む。
【0053】
ステップS44では、フィードチェーン詰りセンサ67のON・OFFが検知され、フィードチェーン詰りセンサ67のONが検知されてフィードチェーン9で穀稈が詰まっていることが検出された場合は、ステップS43に進み、エンジン20の駆動を停止させる。ステップS43の後はリターンする。一方、ステップS44においてフィードチェーン詰りセンサ67がOFF状態であった場合は、ステップS45に進む。
【0054】
ステップS45では、排藁詰りセンサ68のON・OFFが検知され、排藁詰りセンサ68のON状態が検知されて排藁搬送体12で穀稈が詰まっていることが検出された場合は、ステップS43に進み、エンジン20の駆動を停止させる。ステップS43の後はリターンする。一方、ステップS45において排藁詰りセンサ68がOFF状態であった場合は、ステップS46に進む。
【0055】
ステップS46では、籾満杯センサ69のON・OFFが検知され、籾満杯センサ69のONが検知されてグレンタンク14内の籾の量が基準値を超えていることが検出された場合は、ステップS43に進み、エンジン20の駆動を停止させる。ステップS43の後はリターンする。一方、ステップS46において籾満杯センサ69のOFF状態であった場合は、そのままリターンする。
【0056】
また、ステップS41において緊急停止スイッチ22のONが検出された場合は、ステップS47に進み、搬送HST変速モータ74により搬送HST43のトラニオン軸がニュートラル位置に操作され、ステップS48に進む。ステップS48では、燃料カットソレノイド76によりエンジン20の駆動が停止され、その後リターンする。
【0057】
すなわち、緊急停止制御において、比較的に緊急性の低い、前処理詰りセンサ66、フィードチェーン詰りセンサ67、又は排藁詰りセンサ68により、穀稈の搬送経路中で穀稈が詰ったことが検出された場合、あるいは籾満杯センサ69により、グレンタンク14内の穀粒が所定量を超えた場合には、エンジン20への燃料供給を停止することにより、伝動系統に負担をかけずに緩やかに前処理部4、脱穀装置8、及びフィードチェーン9等の駆動を停止させる一方で、上記と比して緊急性の高い、緊急停止スイッチ22のONが検出された場合には、エンジン20を停止させるとともに、搬送HSTをニュートラルに操作することにより、フィードチェーン9及び前処理部4の駆動を即座に停止させることができるため、状況に応じて適切な手段によって、フィードチェーン9等の駆動を効率的に停止させることが可能になる。
【0058】
次に、図12に基づき、本発明の別実施例1について、本実施例と異なる点を説明する。図12は、本コンバインの別実施例1を示した動力系統図である。図より、前処理部に動力を伝動する刈取伝動軸47は、走行HST28を介して変速された動力が伝動されるように構成されている。
【0059】
当該構成により、緊急停止スイッチ22を押操作した際に、搬送HST43をニュートラルに操作されることにより緊急停止する駆動系が、特に手扱ぎ作業時に止めたい箇所であるフィードチェーン9のみになるため、駆動系への負担を最小限に抑えることができる。
【0060】
次に、図13に基づき、本発明の別実施例2について、本実施例と異なる点を説明する。図13は、本コンバインの別実施例2を示した動力系統図である。図より、排藁搬送体12の動力がフィードチェーン9の後端側から伝動されるように構成されている。
【0061】
当該構成により、緊急停止スイッチ22を押操作した際に、搬送HST43をニュートラルに操作されることにより、前処理部4及びフィードチェーン9とともに、排藁搬送体12も緊急停止するため、作業者が不測に排藁搬送体12に衣服等が巻き込まれた場合であっても、即座にその駆動を停止させることができる。
【符号の説明】
【0062】
4 前処理部
8 脱穀装置(脱穀部)
9 フィードチェーン
22 緊急停止スイッチ(停止操作手段)
43 搬送HST(油圧式無段階変速装置)
60 制御部
66 前処理詰りセンサ(詰り検出手段)
67 フィードチェーン詰りセンサ(詰り検出手段)
68 排藁詰りセンサ(詰り検出手段)
69 籾満杯センサ(詰り検出手段)
74 搬送HST変速モータ(駆動停止手段)
76 燃料カットソレノイド(エンジン停止手段)
【技術分野】
【0001】
エンジンの駆動を停止する操作具を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
穀稈を刈取って後方搬送する前処理部と、前処理部からの穀稈を受取って脱穀部に沿って後方搬送するフィードチェーンと、搬送中の穀稈の詰りを検出する詰り検出手段と、エンジンの駆動停止操作を行う停止操作手段と、エンジンを停止させるエンジン停止手段と、制御部とを備え、該制御部は、詰り検出手段によって穀稈の詰りが検出された場合又は停止操作手段による上記駆動停止操作が検出された場合、前記エンジン停止手段を介してエンジンを停止させる特許文献1に記載のコンバインが従来公知である。
【0003】
該構成のコンバインによれば、詰り検出手段により搬送中の穀稈に詰まりが生じたことが検出された場合には、エンジン停止手段によってエンジンが停止され、穀稈の搬送及び機体の走行が停止される。このため、穀稈の詰りが助長されるのが防止されるとともに、穀稈の搬送が停止されたまま機体が走行して、圃場の穀稈の押倒すような事態も防止できる。また、停止操作手段を手動操作することによりエンジンの駆動を停止させることができるため、手扱ぎ作業時にトラブルがあった場合には、該停止操作手段によりフィードチェーンの駆動を停止させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4057340号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記文献のコンバインでは、停止操作手段によってフィードチェーンの駆動を早急に停止させたい場合でも、惰性によって、エンジン停止後の所定時間、フィードチェーンが搬送作動し続け、フィードチェーンを緊急停止できないという問題があった。
【0006】
本発明は、場合によっては即座にフィードチェーンを駆動停止させるとともに、その他の場合には、エンジン動力を伝動する各部材に必要以上に負担をかけないように、緩やかに駆動停止させるコンバインを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、穀稈を刈取って後方搬送する前処理部4と、前処理部4からの穀稈を受取って脱穀部8に沿って後方搬送するフィードチェーン9と、搬送中の穀稈の詰りを検出する詰り検出手段66,67,68,69と、エンジンの駆動停止操作を行う停止操作手段22と、エンジンを停止させるエンジン停止手段76と、制御部60とを備え、該制御部60は、詰り検出手段66,67,68,69によって穀稈の詰りが検出された場合又は停止操作手段22による上記駆動停止操作が検出された場合、前記エンジン停止手段76を介してエンジンを停止させるコンバインにおいて、エンジンからの動力を前記フィードチェーン9に変速伝動する油圧式無段階変速装置43と、該油圧式無段階変速装置43をニュートラル状態にすることによりフィードチェーンを駆動停止させる駆動停止手段74とを設け、前記制御部60は、前記詰り検出手段66,67,68,69により穀稈の詰りが検出された場合には、前記エンジン停止手段76によってエンジンを停止させる一方で、前記停止操作手段22による駆動停止操作が検出された場合には、前記エンジン停止手段76によりエンジンを停止させ且つ駆動停止手段74によってフィードチェーン9を駆動停止させることを特徴としている。
【0008】
第2に、前記油圧式無段階変速装置43によって変速された動力を前記前処理部4に伝動させる伝動機構を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、緊急性の高い場合は、停止操作手段による駆動停止操作を行うことによって、油圧式無段階変速装置をニュートラル状態に切換え、その制動力によって速やかにフィードチェーンの駆動を停止できる一方で、詰り検出手段によって穀稈の詰りが検出された場合には、エンジンを停止させ、緩やかに穀稈搬送部等の駆動を停止させることが可能になり、状況に応じた適切な手段によって、フィードチェーンの駆動を効率的に停止させることが可能になる。
【0010】
また、前記油圧式無段階変速装置によって変速された動力を前記前処理部に伝動させる伝動機構を設ければ、前処理部による圃場の穀稈の刈取速度とフィードチェーンによる穀稈の搬送速度とを連動させることができるとともに、刈取走行中に詰りが発生した場合には、エンジン停止によって前処理部及びフィードチェーンの駆動停止を行うことにより、緩やかにコンバインの走行駆動を停止させた際に、前処理部及びフィードチェーンの駆動も連動して緩やかに停止するため、エンジンが停止した際に圃場の穀稈を押倒すことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用したコンバインの左側面図である。
【図2】本発明を適用したコンバインの平面図である。
【図3】本コンバインの動力系統図である。
【図4】操縦部を示した要部平面図である。
【図5】主変速レバーを示す要部斜視図である。
【図6】制御部の構成を示すブロック図である。
【図7】各作業モードの穀稈搬送速度と車速との関係を示したグラフである。
【図8】制御部のメインルーチンの処理フロー図である。
【図9】クラッチ制御のサブルーチンの処理フロー図である。
【図10】作業モード制御のサブルーチンの処理フロー図である。
【図11】緊急停止制御のサブルーチンの処理フロー図である。
【図12】本コンバインの別実施例1を示した動力系統図である。
【図13】本コンバインの別実施例2を示した動力系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1及び図2は、本発明を適用したコンバインの左側面図及び平面図であり、図3は、本コンバインの動力系統図である。本コンバインは、進行方向右(右)側に操縦部2を有するとともに、左右一対のクローラ式走行装置1,1によって支持される走行機体3と、前記走行機体3の前方に配置された前処理部4とから構成されており、該前処理部4は走行機体3に対して昇降自在に連結されている。
【0013】
本コンバインの前進時、前処理部4の刈刃6によって刈取られた圃場の穀稈は、前処理部4の前処理搬送装置7によって走行機体3左部の脱穀装置8側まで搬送され、フィードチェーン9の前端側まで搬送される。該フィードチェーン9は、受け取った穀稈を脱穀装置8(脱穀部)に沿って後方搬送する。穀稈は、この後方搬送過程で、脱穀装置8内の扱胴(図示しない)及び処理胴(図示しない)によって脱穀処理されて排藁となり、排藁搬送体12によって走行機体3の後端部まで搬送される一方で、扱降ろされた処理物は脱穀装置8内の選別部(図示しない)に落下供給される。
【0014】
選別部に供給された処理物は、唐箕ファン13を用いて発生させる選別風による風選等によって、一番物と、二番物と、排藁等とに選別される。一番物は、籾等の穀粒として、走行機体3の右側半部の後側に設定されたグレンタンク14に搬送され、二番物は、再び選別部内に還元され、藁屑は、選別風によって走行機体3の後端部から機外に排出される。一方、排藁搬送体12によって、走行機体3の後部まで搬送された排藁は、そのまま、又は、後処理部16によって切断処理された後、機外に排出される。
【0015】
グレンタンク14内の穀粒は、全体が水平旋回及び上下揺動するように基端側が走行機体3の後端部右側の支持されたオーガ17を介して機外に排出される。ちなみに、該オーガ17は、内部に縦ラセン18aが収納された上下方向の縦ラセン筒18と、内部に横ラセン19aが収納された前後方向の横ラセン筒19とを備えて構成されており、これらのラセン18a,19aによって穀粒の搬送が行われる。
【0016】
なお、走行機体3の左側部には手扱ぎスイッチ21が設けられており、該手扱ぎスイッチ21により手扱ぎモードに切換えることができる。該手扱ぎモードでは、前処理部4の駆動を停止させた状態で脱穀装置8側のフィードチェーン9、脱穀装置8内、及び排藁搬送体12等を駆動させることにより、作業者は、走行機体3の側方から穀稈を手作業でフィードチェーン9に流すことによって脱穀作業を行う手扱ぎ作業ができる。
【0017】
さらに、上記手扱ぎスイッチ21の近傍の側面視左側には、緊急停止スイッチ22(停止操作手段)が設けられており(図2参照)、上記の手扱ぎ作業等によってフィードチェーン9等が駆動している際に、該緊急停止スイッチ22が押操作されると、フィードチェーン9の駆動が即座に停止するとともに、エンジン20の駆動も停止する。上記の手扱ぎスイッチ21及び緊急停止スイッチ22の詳細については後述する。
【0018】
次に、図3に基づいて本コンバインの伝動構成について説明する。本コンバインは、図3に示すように、エンジン20の動力によって各部が駆動される。エンジン20で発生させた回転動力は、出力軸23に出力され、該出力軸23には、作業プーリ24と、走行プーリ26と、排出プーリ27とが一体回転するように設けられている。
【0019】
前記走行プーリ26に伝動された動力は、走行HST28側にベルト伝動され、無段階に変速伝動された後、走行トランスミッション29を介して、左右の各クローラ式走行装置1,1に伝動される。このとき、出力軸23から走行トランスミッション29側に動力伝動するベルトには、エンジン20の動力を断続させる走行クラッチ30が設けられている。
【0020】
前記排出プーリ27に伝動された動力は、上述のグレンタンク14内の排出ラセンや、オーガ17内の縦ラセン18a及び横ラセン19a等に伝動され、穀粒が機外に排出されるようにグレンタンク14及びオーガ17等を駆動させることができる。ちなみに、この複数の排出ラセンへのベルト伝動は、テンションプーリ等からなる排出クラッチ31によって、断続される。
【0021】
前記作業プーリ24に伝動された動力は、作業伝動軸32にベルト伝動され、この作業伝動軸32の動力によって、前処理部4、フィードチェーン9、脱穀装置8内、及び後処理部16が駆動される。具体的には、作業プーリ24と、作業伝動軸32と一体回転する作業伝動プーリ33とに掛け回された作業伝動ベルト34によって、エンジン20の動力が作業伝動軸32に伝動される。この作業伝動ベルト34には、作業伝動ベルト34のテンションを調整するテンションプーリから構成されて作業伝動軸32へのエンジン20の動力を断続させる作業クラッチ36が設けられている。該作業クラッチ36は、作業クラッチ切換手段である作業クラッチモータ37によって断続操作され、この作業クラッチモータ37はマイコン等から構成される後述の制御部60によって駆動が制御される。
【0022】
前記作業伝動軸32には脱穀プーリ38と、選別プーリ39と、搬送プーリ41とが一体回転するように設けられている。これにより、作業伝動軸32に伝動された動力は、脱穀プーリ38を介して、脱穀装置内(図示しない扱胴、処理胴等)及び排藁搬送体12側に伝動され、選別プーリ39を介して、選別部及び後処理部16側に伝動され、作業伝動軸32の駆動によって、唐箕ファン13も駆動するように構成されている。
【0023】
また、作業伝動軸32に伝動された動力のうち、特に、上記搬送プーリ41に伝動された動力は、搬送伝動軸42にベルト伝動され、搬送伝動軸42に伝動された動力が搬送HST43(油圧式無段階変速装置)に入力されることによって、エンジン20の動力がフィードチェーン9及び前処理部4側へ変速伝動される。具体的には、搬送HST43により無段階に変速伝動された動力は、動力伝動ボックスである搬送カウンタ44を介して、フィードチェーン駆動軸46と、刈取伝動軸47とにそれぞれ伝動される。
【0024】
フィードチェーン駆動軸46に伝動された動力は、フィードチェーン9に伝動されるため、搬送HST43で変速伝動された動力に応じてフィードチェーン9が駆動する。
【0025】
刈取伝動軸47に伝動された動力は、刈取駆動軸48にベルト伝動され、前処理部4(刈刃6、前処理搬送装置7等)を駆動させ、穀稈の刈取作業及び搬送作業を行う。具体的には、刈取伝動軸47と一体回転する刈取伝動プーリ49と、刈取駆動軸48と一体回転する刈取駆動プーリ51とに掛け回される刈取伝動ベルト52によって、刈取駆動軸48にエンジン動力が伝動される。この刈取伝動ベルト52には、刈取伝動ベルト52のテンションを調整するテンションプーリより構成されて前処理部4側への動力伝動を断続させる刈取クラッチ53が設けられている。該刈取クラッチ53は、刈取クラッチ切換手段である刈取クラッチモータ54によって断続操作され、この刈取クラッチモータ54は後述の制御部60によって駆動が制御される。
【0026】
本コンバインの上述の伝動構成により、作業クラッチ36は、前処理部4、フィードチェーン9、脱穀装置8及び後処理部16へのエンジン動力の伝動を断続させ、作業クラッチ36の伝動下流側に設けた刈取クラッチ53は、前処理部4へのエンジン動力の伝動を断続させる。また、搬送HST43は、後述の制御部60により、エンジン20からの動力を車速に連動して変速させているため、車速が遅くなると、前処理部4の刈取速度及びフィードチェーン9の搬送速度が連動して遅くなり、車速が速くなると、これに連動して前処理部4の刈取速度及びフィードチェーン9の搬送速度が速くなるように制御されている。
【0027】
図4は、操縦部を示した要部平面図である。前記操縦部2は、オペレータが着座する座席56と、座席56の側方(図示する例では左側)に配置された主変速操作具である主変速レバー57と、主変速レバー57の左右外側に設けた副変速レバー58と、副変速レバー58の後方に配置されたエンジン20の回転数を調整するコントロールレバー59と、主変速レバー57の後方側に設けた作業クラッチ36及び刈取クラッチ53の断続を操作するシーソースイッチ61を備えている。
【0028】
該シーソースイッチ61は中立位置に付勢されるように構成されており、左右にそれぞれオルタネイトスイッチであるクラッチ入スイッチ61a(図示する例では左側)とクラッチ切スイッチ61b(図示する例では右側)とが設けられている。これにより、クラッチ入スイッチ61aを操作すると作業クラッチ36又は刈取クラッチ53が入操作され、クラッチ切スイッチ61bを操作すると作業クラッチ36又は刈取クラッチ53が切操作される。詳細については後述する。
【0029】
前記主変速レバー57は、ニュートラル位置で左右揺動可能に構成されており、主変速レバー57をニュートラル位置から右側へ傾けた状態で前方へ揺動操作することによって、走行機体3を前進走行させ、主変速レバー57をニュートラル位置から左側に傾けた状態で後方へ揺動操作することによって、走行機体3を後進走行させることができ、いずれの場合も、主変速レバー57の揺動操作量に応じて前進及び後進側へ増速される。
【0030】
図5は、主変速レバーを示す要部斜視図である。主変速レバー67には、オペレータが座席左方側の主変速レバー57の上端側のグリップを握った際に親指が位置するグリップの右側面側には、前処理部4及び脱穀装置8を一定速度で駆動させる強制掻込モードへ切換えるための強制掻込スイッチ62が配置され、主変速レバー57の後面側には、前処理部4及び脱穀装置8の駆動速度を通常より速くすることができる倒伏モードに切換えるための倒伏スイッチ63が設けられている。
【0031】
次に、図6乃至9に基づき、制御部の構成を説明する。
図6は、制御部の構成を示すブロック図である。
【0032】
コンバインに搭載された制御部60の入力側には、走行機体3の車速を検出する車速センサ64と、上述の強制掻込スイッチ62と、倒伏スイッチ63と、手扱ぎスイッチ21と、緊急停止スイッチ22と、前処理部4における搬送穀稈の詰りを検出する前処理詰りセンサ66と、フィードチェーン9で搬送中の穀稈が詰まったことを検出するフィードチェーン詰りセンサ67と、排藁搬送体12で搬送中の穀稈が詰まったことを検出する排藁詰りセンサ68と、グレンタンク14内の籾が満杯になったことを検出する籾満杯センサ69と、搬送HST43のトラニオン軸の角度を検出する搬送HSTセンサ71と、作業クラッチ36の入切を検出する作業クラッチ検出センサ72と、刈取クラッチ53の入切を検出する刈取クラッチ検出センサ73と、上述のシーソースイッチ61であるクラッチ入スイッチ61aと、クラッチ切スイッチ61bとが接続されている。
【0033】
一方、制御部60の出力側には、搬送HST43のトラニオン軸の角度を調整して変速伝動させる搬送HST変速モータ74(駆動停止手段)と、エンジン20への燃料供給を断絶させてエンジン20の駆動を停止させる燃料カットソレノイド76(エンジン停止手段)と、上述の作業クラッチ切換手段37と、刈取クラッチ切換手段54とが接続されている。
【0034】
図7は、各作業モードの穀稈搬送速度と車速との関係を示したグラフである。制御部60は、図7で示されるように、4つの作業モードに切換えることができる。具体的には、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53を接続し、車速センサ64で検出された車体の走行速度及び穀稈の搬送速度(搬送HSTの駆動速度)を連動させる標準モードと、車体の走行速度及び穀稈の搬送速度の連動を保ちつつ上記標準モードの状態よりも搬送HST43で高速に変速して前処理部及びフィードチェーン9側に伝動した倒伏モードと、車速に関係なく(停止時であっても)前処理部4及びフィードチェーン9を一定速度で駆動させる強制掻込モードと、車速に関係なく前処理部4の駆動を停止させた状態でフィードチェーン9を一定速度で駆動させる手扱ぎモードとに切換えることができる。このとき、強制掻込モード及び手扱ぎモード時の穀稈の搬送速度、すなわちフィードチェーン9の駆動速度は同じに設定されている。
【0035】
また、制御部60は、前処理詰りセンサ66、フィードチェーン詰りセンサ67、及び排藁詰りセンサ68によって、前処理部4、フィードチェーン9、あるいは排藁搬送体12において穀稈が詰まっていることが検出された場合、若しくはモミ満杯センサ69によりグレンタンク内がモミで満杯になったことを検出した場合には、燃料カットソレノイド76によりエンジン20の駆動を停止させることができるように構成されている。これにより、搬送経路に穀稈が詰まった状態で刈取・脱穀作業を継続することによる故障を回避することができる他、グレンタンクが満杯の状態で刈取作業を継続してグレンタンク内から籾が溢れ出ることを防止できる。
【0036】
さらに、制御部60は、上述の各詰りセンサ66,67,68,69によってエンジンの駆動が停止するだけでなく、特に、作業者が手扱ぎモードによって、機体側方から手扱ぎ作業を行う際に、フィードチェーン9の始端部近傍に配置された緊急停止スイッチ22を押操作することにより、搬送HST43をニュートラル位置に操作して、その搬送HST43による制動力によってフィードチェーン9の駆動を緊急停止させるとともに、エンジン20の駆動を停止させることができるように構成されている。すなわち、搬送HST43をニュートラル位置に操作することにより、エンジン停止後の惰性力が搬送HST43からフィードチェーン9側に伝達されなくなると共に、搬送HST43の油圧モータがブレーキの役をすることによって、フィードチェーン9を即座に駆動停止させることができる。
【0037】
したがって、手扱ぎ作業中に不注意等によって衣服がフィードチェーン9に挟まれた場合であっても、緊急停止スイッチ22を押操作することによって、搬送HST43のブレーキ作用によってフィードチェーン9の駆動が直ちに停止するため、万が一の場合であっても安全性が保たれる。なお、該緊急停止スイッチ22は、手扱ぎモードに限らず、何れの作業モード中であっても実行することができる。
【0038】
このため、本コンバインの制御部60は、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53の入切を行うクラッチ制御と、各作業モードに切換えることにより搬送HST43による変速伝動を制御する作業モード制御の他に、駆動中のフィードチェーン9を緊急停止するとともにエンジン20の駆動を停止させる緊急停止制御を実行する。該制御のフローについて以下、説明する。
【0039】
次に、図8乃至10に基づいて、クラッチ制御と、脱穀モード制御と、緊急停止制御とから構成される制御部の処理フローについて説明する。
図8は、制御部のメインルーチンの処理フロー図である。制御部60は、同図に示す通り、処理が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、上記作業クラッチ36及び刈取クラッチ53の入切が行われるクラッチ制御のサブルーチンを実行し、該サブルーチンの処理が終了すると、ステップS2に進む。ステップS2では、脱穀作業時の脱穀モードを変更する脱穀モード制御のサブルーチンを実行し、該サブルーチンの処理が終了すると、ステップS3に進む。ステップS3では、所定の状態時にエンジン等を緊急停止させる緊急停止制御のサブルーチンを実行し、該サブルーチンの処理が終了すると、ステップS1に処理を戻す。
【0040】
図9は、クラッチ制御のサブルーチンの処理フロー図である。制御部60は、クラッチ制御が開始されると、ステップS11に進む。ステップS11では、手扱ぎスイッチ21のON・OFFを検知し、手扱ぎスイッチ21がONの場合には、ステップS12に進み、作業クラッチ36が入操作されるとともに刈取クラッチ53が切操作される。ステップS12の後はリターンする。一方、ステップS11において手扱ぎスイッチ21がOFF状態であった場合には、ステップS13に進む。
【0041】
ステップS13では、クラッチ入スイッチ61aのON・OFFを検知し、クラッチ入スイッチ61aがOFFの場合には、ステップS14に進み、クラッチ切スイッチ61bのON・OFFを検知する。ステップS14でクラッチ切スイッチ61bがOFF状態であった場合には、リターンする。一方、ステップS14においてクラッチ切スイッチ61bがONの場合には、ステップS15に進む。
【0042】
ステップS15では、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に接続されているか否かが判定され、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が何れも接続されている場合は、ステップS16に進み、作業クラッチ36の接続を保ちつつ刈取クラッチ53を切操作する。ステップS16の後はリターンする。一方、ステップS15において作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に接続された状態以外の場合は、ステップS17に進む。
【0043】
ステップS17では、作業クラッチ36が接続状態で且つ刈取クラッチ53が切断状態であるか否かが判定され、該状態が検出された場合は、ステップS18に進み、作業クラッチ36を切操作して、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53を共に切断状態にする。ステップS18の後はリターンする。一方、ステップS17において作業クラッチ36が接続状態で且つ刈取クラッチ53が切断状態を検出しなかった場合、すなわち、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に切断された状態の場合には、そのままリターンする。
【0044】
また、ステップS13においてクラッチ入スイッチ61aのONが検知された場合には、ステップS19に進む。ステップS19では、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が何れも切断された状態であるか否かが判定され、該状態が検出された場合は、ステップS20に進み、作業クラッチ36を入操作して、作業クラッチ36は接続されつつ刈取クラッチ53は切断された状態にする。ステップS20の後はリターンする。一方、ステップS19において作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に切断された状態以外の場合は、ステップS21に進む。
【0045】
ステップS21では、作業クラッチ36が接続状態で且つ刈取クラッチ53が切断状態であるか否かが判定され、該状態が検出された場合は、ステップS22に進み、刈取クラッチ53を入操作して、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53を共に接続状態にする。ステップS22の後はリターンする。一方、ステップS21において作業クラッチ36が接続状態で且つ刈取クラッチ53が切断状態を検出しなかった場合、すなわち、作業クラッチ36及び刈取クラッチ53が共に接続された状態の場合には、そのままリターンする。
【0046】
図10は、脱穀モード制御のサブルーチンの処理フロー図である。制御部60は、作業モード制御が開始されると、ステップS31に進む。ステップS31では、作業クラッチ36の入切が検知され、作業クラッチ36の接続状態が検出された場合はステップS32に進む。一方、ステップS31において作業クラッチ36が切断状態であった場合は、前処理部4、脱穀装置8、及びフィードチェーン9等が駆動していない状態であるため、そのままリターンする。
【0047】
ステップS32では、刈取クラッチ36のON・OFFが検知され、刈取クラッチ36の切断状態が検出された場合は、ステップS33に進み、上述の手扱ぎモードに切換えられ、車速に関わらず搬送HST43の駆動速度が一定に保ちつつ、前処理部4の駆動を停止させた状態でフィードチェーン9及び脱穀装置8側を駆動させる。ステップS33の後はリターンする。一方、ステップS32において刈取クラッチ36が接続状態であった場合は、ステップS34に進む。
【0048】
ステップS34では、強制掻込スイッチ62のON・OFFが検知され、強制掻込スイッチ62のON状態が検出された場合は、ステップS35に進み、上述の強制掻込モードに切換えられ、車速に関わらず搬送HST43の駆動速度が一定に保ちつつ、前処理部4、脱穀装置8、及びフィードチェーン9を駆動させる。ステップS35の後はリターンする。一方、ステップS34において強制掻込スイッチ62がOFF状態であった場合は、ステップS36に進む。
【0049】
ステップS36では、倒伏スイッチ63のON・OFFが検知され、倒伏スイッチ63のOFF状態が検出された場合は、ステップS38に進み、上述の標準モードに切換えられ、搬送HST43を車速に連動させつつ、前処理部4、脱穀装置8、及びフィードチェーン9を駆動させることができる。ステップS38の後はリターンする。
【0050】
一方、ステップS36において倒伏スイッチ63がON状態であった場合は、ステップS37に進み、上述の倒伏モードに切換えられ、標準モードのときと比較して、搬送HST43の駆動速度を高速に変速することができる。ステップS37の後はリターンする。
【0051】
図11は、緊急停止制御のサブルーチンの処理フロー図である。制御部60は、緊急停止制御が開始されると、ステップS41に進む。ステップS41では、緊急停止スイッチ22のON・OFFが検知され、緊急停止スイッチ22がOFF状態であった場合はステップS42に進む。
【0052】
ステップS42では、前処理詰りセンサ66のON・OFFが検知され、前処理詰りセンサ66のONが検知されて前処理部4で穀稈が詰まっていることが検出された場合は、ステップS43に進み、燃料カットソレノイド76により燃料供給を停止することによりエンジン20の駆動を停止させる。ステップS43の後はリターンする。一方、ステップS42において前処理詰りセンサ66がOFF状態であった場合は、ステップS44に進む。
【0053】
ステップS44では、フィードチェーン詰りセンサ67のON・OFFが検知され、フィードチェーン詰りセンサ67のONが検知されてフィードチェーン9で穀稈が詰まっていることが検出された場合は、ステップS43に進み、エンジン20の駆動を停止させる。ステップS43の後はリターンする。一方、ステップS44においてフィードチェーン詰りセンサ67がOFF状態であった場合は、ステップS45に進む。
【0054】
ステップS45では、排藁詰りセンサ68のON・OFFが検知され、排藁詰りセンサ68のON状態が検知されて排藁搬送体12で穀稈が詰まっていることが検出された場合は、ステップS43に進み、エンジン20の駆動を停止させる。ステップS43の後はリターンする。一方、ステップS45において排藁詰りセンサ68がOFF状態であった場合は、ステップS46に進む。
【0055】
ステップS46では、籾満杯センサ69のON・OFFが検知され、籾満杯センサ69のONが検知されてグレンタンク14内の籾の量が基準値を超えていることが検出された場合は、ステップS43に進み、エンジン20の駆動を停止させる。ステップS43の後はリターンする。一方、ステップS46において籾満杯センサ69のOFF状態であった場合は、そのままリターンする。
【0056】
また、ステップS41において緊急停止スイッチ22のONが検出された場合は、ステップS47に進み、搬送HST変速モータ74により搬送HST43のトラニオン軸がニュートラル位置に操作され、ステップS48に進む。ステップS48では、燃料カットソレノイド76によりエンジン20の駆動が停止され、その後リターンする。
【0057】
すなわち、緊急停止制御において、比較的に緊急性の低い、前処理詰りセンサ66、フィードチェーン詰りセンサ67、又は排藁詰りセンサ68により、穀稈の搬送経路中で穀稈が詰ったことが検出された場合、あるいは籾満杯センサ69により、グレンタンク14内の穀粒が所定量を超えた場合には、エンジン20への燃料供給を停止することにより、伝動系統に負担をかけずに緩やかに前処理部4、脱穀装置8、及びフィードチェーン9等の駆動を停止させる一方で、上記と比して緊急性の高い、緊急停止スイッチ22のONが検出された場合には、エンジン20を停止させるとともに、搬送HSTをニュートラルに操作することにより、フィードチェーン9及び前処理部4の駆動を即座に停止させることができるため、状況に応じて適切な手段によって、フィードチェーン9等の駆動を効率的に停止させることが可能になる。
【0058】
次に、図12に基づき、本発明の別実施例1について、本実施例と異なる点を説明する。図12は、本コンバインの別実施例1を示した動力系統図である。図より、前処理部に動力を伝動する刈取伝動軸47は、走行HST28を介して変速された動力が伝動されるように構成されている。
【0059】
当該構成により、緊急停止スイッチ22を押操作した際に、搬送HST43をニュートラルに操作されることにより緊急停止する駆動系が、特に手扱ぎ作業時に止めたい箇所であるフィードチェーン9のみになるため、駆動系への負担を最小限に抑えることができる。
【0060】
次に、図13に基づき、本発明の別実施例2について、本実施例と異なる点を説明する。図13は、本コンバインの別実施例2を示した動力系統図である。図より、排藁搬送体12の動力がフィードチェーン9の後端側から伝動されるように構成されている。
【0061】
当該構成により、緊急停止スイッチ22を押操作した際に、搬送HST43をニュートラルに操作されることにより、前処理部4及びフィードチェーン9とともに、排藁搬送体12も緊急停止するため、作業者が不測に排藁搬送体12に衣服等が巻き込まれた場合であっても、即座にその駆動を停止させることができる。
【符号の説明】
【0062】
4 前処理部
8 脱穀装置(脱穀部)
9 フィードチェーン
22 緊急停止スイッチ(停止操作手段)
43 搬送HST(油圧式無段階変速装置)
60 制御部
66 前処理詰りセンサ(詰り検出手段)
67 フィードチェーン詰りセンサ(詰り検出手段)
68 排藁詰りセンサ(詰り検出手段)
69 籾満杯センサ(詰り検出手段)
74 搬送HST変速モータ(駆動停止手段)
76 燃料カットソレノイド(エンジン停止手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀稈を刈取って後方搬送する前処理部(4)と、前処理部(4)からの穀稈を受取って脱穀部(8)に沿って後方搬送するフィードチェーン(9)と、搬送中の穀稈の詰りを検出する詰り検出手段(66,67,68,69)と、エンジンの駆動停止操作を行う停止操作手段(22)と、エンジンを停止させるエンジン停止手段(76)と、制御部(60)とを備え、該制御部(60)は、詰り検出手段(66,67,68,69)によって穀稈の詰りが検出された場合又は停止操作手段(22)による上記駆動停止操作が検出された場合、前記エンジン停止手段(76)を介してエンジンを停止させるコンバインにおいて、エンジンからの動力を前記フィードチェーン(9)に変速伝動する油圧式無段階変速装置(43)と、該油圧式無段階変速装置(43)をニュートラル状態にすることによりフィードチェーンを駆動停止させる駆動停止手段(74)とを設け、前記制御部(60)は、前記詰り検出手段(66,67,68,69)により穀稈の詰りが検出された場合には、前記エンジン停止手段(76)によってエンジンを停止させる一方で、前記停止操作手段(22)による駆動停止操作が検出された場合には、前記エンジン停止手段(76)によりエンジンを停止させ且つ駆動停止手段(74)によってフィードチェーン(9)を駆動停止させるコンバイン。
【請求項2】
前記油圧式無段階変速装置(43)によって変速された動力を前記前処理部(4)に伝動させる伝動機構を設けた請求項1記載のコンバイン。
【請求項1】
穀稈を刈取って後方搬送する前処理部(4)と、前処理部(4)からの穀稈を受取って脱穀部(8)に沿って後方搬送するフィードチェーン(9)と、搬送中の穀稈の詰りを検出する詰り検出手段(66,67,68,69)と、エンジンの駆動停止操作を行う停止操作手段(22)と、エンジンを停止させるエンジン停止手段(76)と、制御部(60)とを備え、該制御部(60)は、詰り検出手段(66,67,68,69)によって穀稈の詰りが検出された場合又は停止操作手段(22)による上記駆動停止操作が検出された場合、前記エンジン停止手段(76)を介してエンジンを停止させるコンバインにおいて、エンジンからの動力を前記フィードチェーン(9)に変速伝動する油圧式無段階変速装置(43)と、該油圧式無段階変速装置(43)をニュートラル状態にすることによりフィードチェーンを駆動停止させる駆動停止手段(74)とを設け、前記制御部(60)は、前記詰り検出手段(66,67,68,69)により穀稈の詰りが検出された場合には、前記エンジン停止手段(76)によってエンジンを停止させる一方で、前記停止操作手段(22)による駆動停止操作が検出された場合には、前記エンジン停止手段(76)によりエンジンを停止させ且つ駆動停止手段(74)によってフィードチェーン(9)を駆動停止させるコンバイン。
【請求項2】
前記油圧式無段階変速装置(43)によって変速された動力を前記前処理部(4)に伝動させる伝動機構を設けた請求項1記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−244957(P2012−244957A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120332(P2011−120332)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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