説明

コンベヤベルトの製造方法

【課題】コンベヤベルトの反りを防止する。
【解決手段】未加硫コンベヤベルト成形体4の表裏面にそれぞれタフタ6A,6B(拘束部材)を貼付して一体化し、その状態で上下一対の熱盤2,3で未加硫コンベヤベルト4を挟んで加圧加熱することにより加硫する。加硫終了後、加硫済みコンベヤベルト成形体5からタフタ6A,6Bを剥離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベヤベルトの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンベヤベルトは、帆布やスチールコードなどからなる芯体層の表裏両面に、未加硫ゴムシートを積層して未加硫コンベヤベルト成形体を作り、この未加硫コンベヤベルト成形体の一部を加硫機の熱盤に仕込み、一定時間プレスして熱と圧力とを加えて加硫した後、形成されたコンベヤベルトを脱型して加硫機から取り出すとともに、その後ろに続く未加硫コンベヤベルト成形体の他部を加硫機に挿入して熱盤に仕込み、加硫を行う工程を繰り返し行うことで、未加硫コンベヤベルト成形体が部分的に順次加硫され、コンベヤベルト成形体が加硫成形され、所定幅となるように両側縁が切断され、エンドレスに接続されてコンベヤベルトが製造される。なお、未加硫ベルト成形体は、表面カバーゴム層、芯体層(例えば帆布層、スチールコード層)および裏面カバーゴム層の積層構造となっており、必要に応じて側面カバーゴム層が設けられている。
【0003】
そのようなコンベヤベルトの製造過程において、表面カバーゴム層と裏面カバーゴム層との厚み差や材質差によってベルトにいわゆる反りが生ずることが確認されている。つまり、例えば、図5に示すように、コンベヤベルト101において、芯体層102の上側に設けられる表面カバーゴム層103の厚さが5mm、裏面カバーゴム層104の厚さが1.5mmの場合には、表裏面カバーゴム層103,104の厚み差により、熱収縮差が生じ、厚い側(この場合は表面カバーゴム層側)に反る(図5の矢符参照)。また、表裏面カバーゴム層の厚さが同じであっても、表裏面カバーゴム層のゴム種が異なりそれらの間で熱収縮率に大きさな差がある場合には、表面側と裏面側の熱収縮差により反りが生ずる。なお、図5において,105,106は側面カバーゴム層である。
【0004】
このような反りがコンベヤベルトに発生する場合には、加硫終了後の冷却時に、水をかけて冷却すると、その冷却水が、反りによって形成される凹み部に溜まり、その冷却水が溜まった部分とその他の部分との冷却効率が異なることになり、ベルト性能を全体に亘って均一に確保することが困難になる。
【0005】
また、そのような反りの1つとして、例えばコンベヤベルトの側縁部においていわゆる耳反りが形成されていると、ベルトコンベヤに設けた場合に、リターン側でリターンローラからコンベヤベルトが浮き上がり、走行安定性が阻害される。つまり、ベルトが蛇行することがある。また、ベルトコンベヤにおいて光電管を用いて運搬物の有無を検出している場合には、そのような耳反りがあると、その耳反り部が前記光電管を遮り、誤動作を発生させるおそれがある。さらに、横方向から運搬物をスライドして積載するフラットタイプのベルトコンベヤの場合には、そのような耳反りがコンベヤベルトに形成されていると、同じ高さの横方向からスライドして積載される運搬物が耳反り部に当たり、運搬物をコンベヤベルト上にスムーズに積載することができない。
【0006】
そこで、そのような、耳反りを含むすべての反りを防止するために、補強層の上方に上面カバーゴム層を有し、補強層と下面カバーゴム層との間に中間ゴム層を有するコンベヤベルトにおいて、前記中間ゴム層を上面カバーゴム層よりも収縮率の大きいゴムによって形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2009−29556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載のものでは、補強層の上方に上面カバーゴム層を有し、補強層と下面カバーゴム層との間に中間ゴム層を有するコンベヤベルトであることを前提とするものであり、そのような構造ではないコンベヤベルトには適用することができない。つまり、補強層と下面カバーゴム層との間に、そのような中間ゴム層を有さないコンベヤベルトには適用することができない。
【0009】
この発明は、ベルト構造に関わりなく、コンベヤベルトの反りの発生を防止できるコンベヤベルトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、未加硫コンベヤベルト成形体を一組の熱盤で加圧することにより加硫し、表裏面カバーゴム層の間に芯体層が挟持されてなるコンベヤベルトを形成するコンベヤベルトの製造方法であって、前記未加硫コンベヤベルト成形体の表裏面それぞれに、耐熱性を有すると共に前記未加硫コンベヤベルト成形体の表裏面に一体化して前記表裏面を拘束する拘束部材を貼り付ける工程と、未加硫コンベヤベルト成形体の表裏面に前記拘束部材をそれぞれ貼付した状態で加硫する工程と、その加硫後、加硫済みコンベヤベルト成形体の表裏面から前記拘束部材をそれぞれ剥離する工程とを有することを特徴とする。ここで、「耐熱性」とは、加硫工程(加硫温度、加硫時間など)に耐える程度の耐熱性である。「前記加硫済みコンベヤベルト成形体の表裏面に一体化して前記表裏面を拘束する」とは、前記ゴムに一体化されることで前記ゴムの熱収縮などの熱変形を抑制することを意味し、拘束部材が、例えばコンベヤベルト成形体の表裏面を形成するゴムよりも熱膨張率が小さいという性質を有すれば実現できる。
【0011】
このようにすれば、加硫後に、温度の低下に伴い加硫済みのコンベヤベルト成形体はベルト表裏面の熱収縮差により反りが生じようとするが、ベルト表裏面に拘束部材を貼付して一体化しているので、ベルト表面側及び裏面側が拘束部材によって拘束され、加硫後にコンベヤベルト成形体に反りが生ずるのが抑制される。よって、表裏面カバーゴム層の厚さやそれらのゴム種にかかわりなく、ベルト表裏面に拘束部材を貼付して一体化することで、反りの発生が抑制される。
【0012】
請求項2に記載のように、前記拘束部材は、さらに、空気透過性を有し、前記未加硫コンベヤベルト成形体に貼付される側が均一な表面性状を有し、かつ前記加硫済みコンベヤベルト成形体の表裏面からの剥離が容易なものであることが望ましい。ここで、「剥離が容易」とは、治具などの特別な道具を用いることなく、作業者が、熟練者でなくても、手作業で、加硫済みコンベヤベルト成形体から剥がせることを意味する。
【0013】
このようにすれば、加硫時には、拘束部材がベルト表裏面に貼付されているので、拘束部材が加硫時の熱盤とコンベヤベルト成形体との間でのエアを逃す機能を発揮するようになり、また、加硫後に、拘束部材を剥離するので、表面性状の均一化が図れ、外観が向上する。
【0014】
請求項3に記載のように、前記拘束部材を剥がす工程は、加硫後、所定温度に冷却されるまでの冷却期間を経て剥離することが望ましい。
【0015】
このようにすれば、反りを抑制する上では、できるだけベルト表面温度が低下した後に剥がすことが望ましいが、生産効率の点からはできるだけ早く剥がすことが望ましいので、前記冷却期間を調整することで、これらの両立が図れる。
【0016】
請求項4に記載のように、前記拘束部材を剥がす工程において、加硫後、ベルト表面温度を所定温度以下に冷却するのは、強制冷却手段を用いて行われ、前記加硫と前記強制冷却手段による冷却とが同期していることが望ましい。ここで、強制冷却手段は、扇風機、冷却水などの空冷式あるいは水冷式冷却手段を意味する。また、「同期している」とは、コンベヤベルト成形体を加硫に要する時間と、その加硫終了後前記強冷冷却手段により加硫済みのコンベヤベルト成形体のベルト表面温度が所定温度以下に冷却するのに要する時間とがほぼ等しくなっていることを意味する。
このようにすれば、強制冷却手段を用いて、前記加硫と前記強制冷却手段による冷却とが同期させ、加硫に要する時間と、前記強冷冷却手段によりベルト表面温度が所定温度以下に冷却されるのに要する時間とがほぼ等しくなるので、待機時間が少なくなり、効率よく製造を行うことができる。
【0017】
請求項5に記載のように、前記拘束部材は、天然繊維・化学繊維・金属繊維のいずれかからなる織物又は編物、或いはこれらの繊維を混用した織物又は編物であって、表面の凹凸を削減する表面加工が施されていることが望ましい。ここで、「表面の凹凸を削減する表面加工」とは、(i)カレンダー処理やプレス処理などの目つぶし処理、(ii)ディップ処理やコーター処理を施し、拘束部材の表面に、シリコン樹脂(ポリシロキサン)、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、PVA(洗濯のり)を単体あるいは混合してコーティングすることなどが相当する。(i)(ii)の処理を組み合わせてもよい。このような処理は、すべて織り組織の凹凸を少なくして剥離しやすくするためである。
【0018】
このようにすれば、拘束部材は、表面の凹凸を削減する表面加工が施されているので、アンカー効果による密着が防止され、冷却してからの、拘束部材の剥離が容易となる。
【0019】
請求項6に記載のように、前記表裏面カバーゴム層は同一ゴム種で、前記表裏面カバーゴム層のうち一方のゴム層の厚さが他方のゴム層の厚さの2.5倍以上である場合に、特に有効である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、上記のように、未加硫コンベヤベルト成形体の表裏面に、耐熱性を有すると共に前記未加硫コンベヤベルト成形体の表裏面に一体化して、前記表裏面の熱収縮を抑制する機能を発揮する拘束部材を貼付して一体化して加硫し、加硫後剥離するようにしているので、コンベヤベルト成形体の表裏面をそれらに貼付されている拘束部材によって拘束することができ、加硫後にコンベヤベルト成形体に反りが生ずるのを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るコンベヤベルトの製造過程における加硫工程を示す概念図である。
【図2】本発明に係るコンベヤベルトの幅方向断面図である。
【図3】反り量とゴム厚さとの関係を示す図である。
【図4】タフタ剥離時のベルト表面温度と、残留ソリ量との関係を示す図である。
【図5】コンベヤベルトの反りの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の特徴点である、未加硫コンベヤベルト成形体を加硫してコンベヤベルトを形成する加硫工程を中心に、コンベヤベルトの製造方法について図面に沿って説明する。
【0023】
図1に示すように、加硫工程で用いられる加硫機1は、上下一対の熱盤(金型)2,3を備え、上下の熱盤2,3の間に未加硫コンベヤベルト成形体4を仕込んでプレスし、熱と圧力とを一定時間加えて加硫することにより、所望の幅と厚みを有する加硫済みコンベヤベルト5を形成する。加硫条件(加硫温度、加硫圧力、加硫時間など)としては周知の条件が採用されるが、未加硫コンベヤベルト成形体に応じて適宜変更される。なお、未加硫コンベヤベルト成形体4は、図1において加硫機1に左側から挿入されている部分である。
【0024】
未加硫コンベヤベルト成形体4は、加硫機1に挿入されるに先立って、そのベルト表裏面(コンベヤベルトの表面)にそれぞれ対応する各面に拘束部材(この実施の形態ではタフタ6A,6B)が貼付される。前記拘束部材は、耐熱性を有すると共に前記未加硫コンベヤベルト成形体4の表裏面に一体化して前記表裏面を拘束するもので、この拘束により未加硫コンベヤベルト成形体4や加硫済みコンベヤベルト成形体5の熱収縮を抑制する機能を発揮する。よって、この熱収縮がなくなる状態で、加硫済みコンベヤベルト成形体5の表裏面から剥離することが望ましい。
さらに、拘束部材は、空気透過性を有し、未加硫コンベヤベルト成形体4に貼付される側が均一な表面性状を有し、かつ加硫済みコンベヤベルト成形体5の表裏面からの剥離が容易なものであることが望ましい。そのような拘束部材としては、天然繊維・化学繊維・金属繊維のいずれかからなる織物又は編物、或いはこれらの繊維を混用した織物又は編物があるが、これらの条件を満たすものとして、この実施の形態ではタフタ6A,6Bを拘束部材として採用し、剥離が容易となるように、表面の凹凸を削減する表面加工を施している。ここで、 前記織物又は編物の素材となる天然繊維、化学繊維、金属繊維は、当然ながら加硫温度に対して耐熱性を有するものとする。例えば、天然繊維としては、綿、麻、レーヨン、化学繊維としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド、ビニロン、金属繊維としては、ステンレス、鋼、チタン、アルミ。そして、前記織物の場合、これらの繊維からなるモノフィラメントやマルチフィラメントを、平織、綾織、朱子織などの織り方で織って製作することができる。そして、前記織物又は編み物の1つがタフタである。なお、タフタとは、(i)たて糸にもろより本練糸、よこ糸に片より本練糸を使用した密度のち密な平織物、あるいは(ii)無より又は甘よりの化学繊維フィラメント糸を用いた密度のややち密な平織物をいう(JIS L 0206:1999 用語番号1253)。
【0025】
このタフタ6A,6Bを貼付した未加硫コンベヤベルト成形体4を加硫機1に挿入し、上下の熱盤2,3間に仕込みを行う。この際、タフタ6A,6Bによって未加硫コンベヤベルト成形体4が加硫機1の熱盤2,3にくっつかなくなるため、作業がしやすく、位置決めなどの調整も容易に行うことができる。
【0026】
仕込み後、一定時間プレスして未加硫コンベヤベルト成形体4に熱と圧力とを加えて加硫を行う。加硫中、未加硫コンベヤベルト成形体4と熱盤2,3との間に存在する空気や加硫時に発生するガスなどがタフタ6A,6Bを通じて排出されるため、形成される加硫済みコンベヤベルト5にはエア穴(クレータ)による欠陥が生じにくい。
【0027】
加硫終了後、形成された加硫済みコンベヤベルト5を脱型し、未加硫コンベヤベルト成形体4を挿入した方と反対方向に送って加硫機1から取り出すとともに、次に続く未加硫コンベヤベルト成形体4をタフタ6A,6Bを貼付して加硫機1に挿入し、熱盤2,3間に仕込む。なお、形成された加硫済みコンベヤベルト5を脱型する際には、タフタ6A,6Bの雛型性によって熱盤2,3から容易に取り外すことができる。一方、次に続く未加硫コンベヤベルト成形体4の仕込を行なう際には、熱盤2,3の長さ方向端部では、未加硫コンベヤベルト成形体4に対して十分な熱と圧力とを加えることができず加硫が不完全になることから、この部分を再加硫するために、加硫が不完全になっている部分が熱盤2,3内に収まるように行なう。
【0028】
脱型して加硫機1から取り出したコンベヤベルト5は、一定の冷却時間経過後、表裏面のタフタ6A,6Bを巻取装置7の巻き取りロール7A,7Bで巻取りながら剥離し、巻取ドラム8に順次巻取る。ここで、前記一定の冷却期間を確保するために、加硫機1と巻取装置7との間隔が調整される。この場合、加硫後、扇風機、冷却水などの強制冷却手段を用いて強制冷却することとすれば、加硫機1と巻取装置7との間隔を短くすることができ、コンパクト化に有利となる。特に、加硫済みの成形体を前記強制冷却手段により冷却している間に、前記加硫済みの成形体に続く次の部分を加硫するようにして、前記次に続く部分の加硫が終了するときに前記加硫済みの成形体の表面温度が所定温度にまで低下するようにして、加硫機1による加硫と、前記強制冷却手段による強制冷却とを同期させるようにすれば、加硫機1を停止させる待機時間を少なくして、効率よく製造を行うことができる。
【0029】
このようにして未加硫コンベヤベルト成形体4を順次、部分的に加硫して、最終的に加硫済みコンベヤベルト5を製造する。
【0030】
未加硫コンベヤベルト成形体4は、周知のように、次のように成形する。
【0031】
ロール状に巻かれた帯状の帆布を端から順次引き出しつつ接着用のゴムを塗布または浸潤、或いはRFL(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス)処理を行ったのち、再びロール状に巻き直す。そして、この接着性を高める処理を行った帆布を、前記ロールから引き出しながら、前記帆布の表裏面それぞれに、未加硫ゴムシートを積層するとともに、幅方向両端に未加硫耳ゴム材料を取り付け、両耳部の余剰部分をカットすることによって、所定の幅と厚みとを備えた未加硫コンベヤベルト成形体4を得る。こうして形成された未加硫コンベヤベルト成形体4を順次巻き取り装置の巻き取りドラムに巻き取る。
【0032】
未加硫コンベヤベルト成形体4は、図2に示すように、ベルト長手方向に沿って延びる単数又は複数の帆布11aを有する芯体層11と、芯体層11の表裏面に積層されゴム種が同一である表裏面カバーゴム層12,13と、側面カバーゴム層14,15とで構成されている。未加硫コンベヤベルト成形体4の表裏面カバーゴム層12,13の表面上に、タフタ6A,6Bが貼付される。通常、表裏面カバーゴム層12,13の厚さは、表面カバーゴム層12を裏面カバーゴム層13に比べて厚くしている。
【0033】
ここで、芯体層11の帆布11aには、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、綿繊維、これらを混用した帆布などが用いられている。また、カバーゴム層12,13のゴム材料としては、天然ゴム、BR(ポリプタジエンゴム)、SBR(スチレンーブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリルーブタジエンゴム)、EPDM(エチレンープロピレンージエンゴム)や、これらの混合材料などが用いられる。特に、粘弾性特性のロスファクターが小さく、かつ摩擦係数の小さい)ものが、ベルトコンベヤのキャリアローラを乗り越える時の走行抵抗を軽減できるので好ましい。なお、カバーゴム層12,13には、ベルト剛性を高めたり、亀裂の発生を防止したりするために補強帆布を有する補強層を設けることもできる。
【0034】
続いて、上記製造方法によって製造されたコンベヤベルト5について行った試験およびその結果について説明する。ここで、コンベヤベルト(試験体)についての試験条件は、ベルトサイズ:幅600mm×長さ300mm、面圧:25kgf/cm2、ゴム種:JIS−Sカバーゴム準拠、帆布種:EP−100×2プライ、拘束部材:タフタ T6000HS(泉社)である。
(表裏面カバーゴム層の厚さの比と反り量との関係)
タフタを設けない場合、タフタを表裏両面に設けた場合、タフタをゴム厚が厚い面側に設けた場合、タフタをゴム厚が薄い面側に設けた場合について、試験を行ったところ、図3に示すように、表裏面カバーゴム層の厚さの差が小さくなるほど、反り量が小さくなり、ゴム層の厚さの差に大きく影響を受けることがわかる。それと共に、タフタを設けることで反りを抑制する効果が認められ、表裏両面にタフタを設けた場合に、反り抑制の効果が最も大きいことがわかる。
(タフタ剥離時のベルト表面温度と反りの関係)
表面カバーゴム層と裏面カバーゴム層との厚さの比を、5.0:1.5,5.0:2.0、5.0:3.0,5.0:6.0の4タイプについて、試験を行ったところ、図4に示すように、ベルト表面温度が低くなってから、剥離した方が残存ソリ量が小さくなり、反り抑制効果が大きいことがわかる。ゴム層の厚さの差が大きいほど、効果が顕著であり、ゴム層の厚さの比が、5.0:1.5,5.0:2.0である場合つまり一方のゴム層の厚さが他方のゴム層の厚さの2.5倍以上である場合に特に反り抑制効果が顕著であることがわかる。その一方、タフタを設けることで、ゴム層の厚さの差が小さくても、反り抑制効果を損なうことがないこともわかる。
【0035】
よって、表裏面カバーゴム層の厚さや表裏面カバーゴム層のゴム種にかかわりなく、ベルト表裏面にタフタを貼付して一体化して加硫し、ベルト表面温度が60℃程度(望ましくは50℃程度、さらに望ましくは40℃程度)まで低下してから剥離するようにすれば、反りの発生が抑制される、といえる。
【0036】
以上に説明したコンベヤベルトの製造方法のように、タフタ6A,6Bを未加硫コンベヤベルト成形体4の表裏面に貼付した状態で、加硫機1にて加硫することで、加硫済みコンベヤベルト成形体5の表裏面の熱収縮差により反りが生じようとするのが抑制される。
【0037】
それに加えて、タフタ6A,6Bは、離型性を有し、それぞれ未加硫コンベヤベルト成形体4と加硫機の熱盤2,3との間に介在することになるので、従来必要とされたタルクなどの打ち粉やシリコンなどの雛型剤が不要になり、打ち粉や雛型剤が飛散して製造現場の作業環境を悪くすることもなく、これらの居着きによる熱盤2,3表面の汚染を回避することができる。これにより、従来1回につき5時間〜10時間を要する熱盤清掃を月に3回〜4回行う必要があったが、これが不要になるため大幅な効率改善を図ることができる。また、仮に熱盤表面に汚れが存在していたとしても、加硫後のコンベヤベルト成形体5はタフタ6A,6Bで保護されているため、汚れがベルト表裏面に転写されることがない。
【0038】
そして、加硫後のコンベヤベルト成形体5は、表裏面にエア穴(クレータ)などの欠陥がなく、かつタフタ6A,6Bの、模様などの表面性状が一様に転写された均一面になっているため、見栄えが良く外観的に優れ、また、走行中の蛇行や、プーリやローラ等を通過する際の異音の発生も抑えることができる。さらに、表裏面は均一な面になっているため、ベルトコンベヤのプーリ等を通過する際に生じる曲げ変形によるクラックが発生しにくくなる。
【0039】
なお、コンベヤベルトの製造方法において、加硫機の熱盤は上下一対としているが、生産性を上げるため、上下の熱盤の間に別の熱盤を追加して上下二段で加硫を行なうこともできるし、タフタ6A,6Bを再利用することで製造コストの低減を図ることもできる。
【0040】
前記実施の形態のほか、本発明は、次のように変更して実施することができる。
【0041】
(i)空気透過性を有する拘束部材としては、耐熱性を有すると共に未加硫コンベヤベルト成形体の表裏面に一体化して前記表裏面を拘束し、前記表裏面の熱収縮を抑制する機能を発揮するものであればよく、前述したタフタなどの織物又は編物のほか、サテン不織布、金属製織物などを用いることも可能である。
【0042】
(ii)側面カバーゴム層を備えていないコンベヤベルトとすることも可能である。
【0043】
(iii)芯体層としては、帆布に代えて、スチールコードを有するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 加硫機
2 熱盤
3 熱盤
4 未加硫コンベヤベルト成形体
5 加硫済みコンベヤベルト
6A,6B タフタ(拘束部材)
11 芯体層
12 表面カバーゴム層
13 裏面カバーゴム層
14,15 側面カバーゴム層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫コンベヤベルト成形体を一組の熱盤で加圧することにより加硫し、表裏面カバーゴム層の間に芯体層が挟持されてなるコンベヤベルトを形成するコンベヤベルトの製造方法であって、
前記未加硫コンベヤベルト成形体の表裏面それぞれに、耐熱性を有すると共に前記未加硫コンベヤベルト成形体の表裏面に一体化して前記表裏面を拘束する拘束部材を貼り付ける工程と、
未加硫コンベヤベルト成形体の表裏面に前記拘束部材をそれぞれ貼付した状態で加硫する工程と、
その加硫後、加硫済みコンベヤベルト成形体の表裏面から前記拘束部材をそれぞれ剥離する工程とを有することを特徴とするコンベヤベルトの製造方法。
【請求項2】
前記拘束部材は、さらに、空気透過性を有し、前記未加硫コンベヤベルト成形体に貼付される側が均一な表面性状を有し、かつ前記加硫済みコンベヤベルト成形体の表裏面からの剥離が容易なものであることを特徴とする請求項1記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項3】
前記拘束部材を剥がす工程は、加硫後、ベルト表面温度が所定温度以下に冷却されてから前記拘束部材を剥離することを特徴とする請求項1または2記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項4】
前記拘束部材を剥がす工程において、加硫後、ベルト表面温度を所定温度以下に冷却するのは、強制冷却手段を用いて行われ、前記加硫と前記強制冷却手段による冷却とが同期していることを特徴とする請求項3記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項5】
前記拘束部材は、天然繊維・化学繊維・金属繊維のいずれかからなる織物又は編物、或いはこれらの繊維を混用した織物又は編物であって、表面の凹凸を削減する表面加工が施されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のコンベヤベルトの製造方法。
【請求項6】
前記表裏面カバーゴム層は同一ゴム種で、前記表裏面カバーゴム層のうち一方のゴム層の厚さが他方のゴム層の厚さの2.5倍以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載のコンベヤベルトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−63402(P2011−63402A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−216762(P2009−216762)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】