説明

コーティングされた物品

コーティングされた物品は、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む被膜をその表面に有する支持体を含む。被膜は希釈剤中のコーティング組成物の分散物を支持体に適用するステップ及び希釈剤を蒸発させるためにコーティングされた支持体を続いて乾燥するステップにより形成され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面に防曇及びアンチグレア組成物を有するポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
窓、鏡、レンズ、ゴーグル、及び顔面マスクまたは保護具に用いられるガラスまたはプラスチックの材料は、高湿度及び高温度に曝された場合、または温度もしくは湿度の大きな差がある境界界面で用いられると曇りを生ずる。そのような条件に曝される物品には、医療、軍事、及び産業安全の用途において使用されるものが含まれる。曇りは表面で湿気が凝縮することにより起こる。例えば、安全保護具を着用している人からの呼気が曇りを生じさせ得る。この問題を減少または除去するためには、防曇被膜がしばしば必要となる。このようなものには、典型的には、表面から湿気を吸収及び放出することにより曇りを克服する親水性の材料が含まれる。こうした多くの用途において、被膜が実質的に透明であり、光の反射による過剰のグレアを発生しないことも重要でもある。したがって、アンチグレア特性が望ましい。アンチグレア特性はまた、光位相差板または偏光板などの、ある種の光学素子の製造においても価値があり、例えば、液晶ディスプレイなどの表示素子に使用し得る。
【0003】
アンチグレア及び防曇被膜は、単回使用の顔面マスクなどの使い捨て用品への使用に対しても必要となり得るが、このような用品は、典型的には、ポリマーフィルム支持体を基礎としている。このような用途及びその他の用途に対して、コストを最低に抑えることが望ましく、それゆえに、コストを抑えるためには、多くの場合にインラインの適用法が望ましい。しかしながら、適切な防曇及びアンチグレア特性を与え得る既存のアンチグレア及び防曇組成物は、しばしばインラインプロセスによっては容易には適用できない。こうした必要性に対処することが可能な、アンチグレア及び防曇被膜、及びそれを適用する方法に対する必要性が継続して存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1879号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第184458号明細書
【特許文献3】米国特許第4008203号明細書
【特許文献4】米国特許第5925428号明細書
【特許文献5】米国特許第5882798号明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0408197号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、その表面に防曇及びアンチグレア組成物を有するポリエステルフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、本発明は、第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面及び第2の面の少なくとも1つの面上に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカ(colloidal silica)と、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む被膜を有する、ポリエステルフィルム支持体を含む複合フィルムを提供する。
【0007】
他の態様では、本発明は、
a)第1の面及び第2の面を有する未配向または1軸配向のポリエステルフィルム支持体を用意するステップ、
b)前記第1の面及び第2の面の少なくとも1つの面上に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む被膜を形成するステップであって、前記少なくとも1つの面を、ポリマー、界面活性剤、コロイド状シリカ、及び架橋剤の水性希釈剤中の分散物に接触させるステップならびに次いで、水性希釈剤を蒸発させるステップを含む、形成するステップ、及び
c)ステップb)に続いて、未配向または1軸配向のポリエステルフィルム支持体を、それぞれ1軸または2軸に配向させるために延伸するステップ
を含む、複合フィルムを作製する方法を提供する。
【0008】
さらに他の態様では、本発明は、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む被膜をその表面上に有するポリマーまたはガラスの物品を提供する。
【0009】
なお他の態様では、本発明は、水性の希釈剤中に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む分散物を含む、物品をコーティングするための組成物を提供する。
【0010】
さらなる態様では、本発明は、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む被膜を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、その表面に防曇及びアンチグレア組成物を有するポリエステルフィルムを提供する。ポリエステルフィルムの目的とする用途に対応して、被膜はフィルムの片面または両面に適用され得る。両面がコーティングされる場合、典型的には同じ組成物が両面に使用されるが、異なるものを使用してもよい。
【0012】
以下にさらに詳細に述べるが、アンチグレア及び防曇コーティング組成物は、インラインまたはオフラインプロセスで適用することができ、ある実施形態では、前者が好ましい。しかし、本発明に至った研究において、防曇及びアンチグレア被膜を形成するための従来の処方は、インラインプロセスにおいて後続する延伸ステップの前で(例えば、延伸工程間の相、すなわち、第1の延伸ステップと第2の延伸ステップの間の期間において)の適用にはしばしば不適であることが明らかとなった。なぜなら、延伸の結果、被膜にクレーズ及び/またはクラックが生じるからである。このことは、アンチグレア性が低いなどの光学的特性の低下を起こす。本明細書に記載の組成物は、どちらのタイプのコーティングプロセスに対してもクラッキングやクレージングを起こさず使用することができ、それゆえ、防曇及びアンチグレア被膜技術における顕著な進歩を表している。さらに、得られた被膜は、きわめて薄くすることができ、さらなるコスト削減を可能とする。
【0013】
本発明のコーティング組成物の1つの特に有用な適用は、フィルム上への使用であるが、組成物はいかなる物品の表面へも適用し得る。ポリマーのまたはガラスの物品は、特に、それが透明であれば、特に有用である。ガラス物品の例としては、フィルム、シート/プレート、鏡、及び眼鏡またはその他の光学素子が含まれる。組成物の水性分散物、及び組成物から作製された乾燥フィルムはまた、支持体上の被膜の形態であるかどうかに関係なく、本発明の実施形態である。
【0014】
本発明のコーティングされたフィルムは、アンチグレア性及び高い光分散性を共に有し、さらに透過像の高視性を提供する。そのようなフィルムは、光学素子の部品として直接使用し得るし、またはそのような部品の一部を形成することも可能である。そのような部品の例としては、偏光板、光ガイド、及び光位相差板が含まれる。したがって、本発明によるフィルムは、例えば、光位相差板の少なくとも1つの光路の表面に、ラミネートするか、さもなくば、設置することもできる。フィルムは、タッチパネルディスプレイ素子、プラズマディスプレイ及び液晶ディスプレイなどの種々のディスプレイ素子に使用し得る。例えば、ディスプレイ素子は、フィルムがラミネートされている偏光板を組み込み得る。
【0015】
反射型の液晶ディスプレイのためには、フィルムをラミネートした偏光板を、反射器具からの前方への光路中に設置することができる。例えば、フィルムを反射器具とディスプレイユニットとの間にラミネートするかさもなくば配置することもできる。透過型の液晶ディスプレイのためには、光ガイド板及び光源(発光ダイオードなどの)を含むバックライト源を使用できる。アンチグレアフィルムは、光源の前で光路中に設置することができ、例えば、光ガイド板とディスプレイユニットとの間に設置するかまたはラミネートし得る。
【0016】
ここで、本発明を実施するために有用なコーティング組成物を、その調製に使用する成分に関して記述する。当業者は気づくであろうが、適用と乾燥の前または後のいずれかで、コーティング組成物の種々の成分間で種々の化学反応(例えば、架橋反応)が起こり得る。したがって、組成物を記述する場合、成分それ自体、及び反応が起こる場合、その反応の生成物の両者を指すことを意図している。最終的な被膜を、その調製に使用する成分に関して記述するが、被膜は、成分それ自体に加えて、またはそれに代わって、種々の成分の反応生成物を含み得ると理解されるべきである。「活性成分」という用語は、水またはその他の揮発性希釈剤以外のすべての成分を意味する。
【0017】
アンチグレア及び防曇コーティング組成物
本発明に記載のコーティング組成物は、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、架橋剤とを含む。
【0018】
適切な界面活性剤としては、陰イオン性、陽イオン性、及び非イオン性の界面活性剤が含まれる。界面活性剤の例としては、TEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤(Tego Chemie Service GmbH、Degussaの一部門、エッセン、ドイツ)、及びMASIL(登録商標)1066C、グラフトまたはペンダントのポリオキシアルキレン親水基を有するポリジメチルシロキサン主鎖の、櫛状または鋤状構造の高分子非イオン性シリコーン界面活性剤(PPG Industries, Inc.、ガルニー、イリノイ)が含まれる。他の適切な界面活性剤としては、DYNOL 604 2,5,8,ll-テトラメチル-6-ドデシン-5,8-ジオールエトキシレート(Air Product and Chemicals, Inc.、アレントン、ペンシルベニア)、BYK 302及び333ポリエーテルで修飾されたジメチルポリシロキサンコポリマー(BYK Additives & Instruments、46483 ヴェーゼル、ドイツ)、及びTWEEN(登録商標)20及び21ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(Uniqema、1000 UNIQEMA通、ニューカッスル、デラウエア)が含まれる。界面活性剤は、典型的には全活性成分の1〜60質量%の範囲で、より典型的には4〜15質量%の範囲で存在する。
【0019】
適切なコロイド状シリカとしては、陰イオン性、陽イオン性、及び非イオン性のコロイド状シリカが含まれる。コロイド状シリカの例としては、SNOWTEX-UP(登録商標)コロイド状シリカ(日産化学工業株式会社、東京、日本)及びSYTON(登録商標)HT-50コロイド状シリカスラリー(DA NanoMaterials LLC、タンパ、アリゾナ)が含まれる。他の適切なコロイド状シリカとしては、NALCO(登録商標)1030及び1034コロイド状シリカ(Nalco、ネイパービル、イリノイ)ならびにNEXSIL(商標)85K及び125Kコロイド状シリカ(Nyacol Nano Technologies, Inc.、アシュランド、マサチューセッツ)が含まれる。コロイド状シリカは、典型的には全活性成分の1.0〜12質量%の範囲で、より典型的には1.5〜2.5質量%の範囲で存在する。
【0020】
適切な架橋剤としては、水溶性チタン塩が含まれる。一例は、DuPont、ウィルミントン、デラウエアから入手できる、TYZOR(登録商標)LA酪酸、チタンキレート、アンモニウム塩、水系、ジヒドロキシビス[2-ヒドロキシプロパナート(2-)-O1, O2]チタネート(2-)、アンモニウム塩である。他の適切な塩としては、TYZOR(登録商標)CLAチタネート、23%の遊離イソプロパノールを含む、トリエタノールアミン及びアセチルアセトナートをキレート剤として有する反応性有機チタンキレート、TYZOR(登録商標)TEチタネート、ビス[[2,2',2"-ニトリロトリス[エタノラート]](l-)-N,O]ビス(2-2-プロパノラート)チタン、TYZOR(登録商標)131チタンオルソエステル錯体の混合物チタネート、及びTYZOR(登録商標)217乳酸ナトリウムジルコニウムが含まれるが、これらはいずれもDuPont、ウィルミントン、デラウエアから入手できる。
【0021】
他の適切な架橋剤としては、水溶性または水分散性の有機架橋剤が含まれる。そのような例としては、エポキシ樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、及びオキサゾリン官能性のポリマーが含まれる。エポキシ樹脂としては、以下の例があげられ得る。COATOSIL(登録商標)1770 2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、水性(Momentive Performance Materials、ウィルトン、コネチカット)、及びD.E.R.(商標)732液体エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとポリプロピレングリコールの反応生成物(Dow Chemical Company、ミッドランド、ミシガン)。メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の一例は、Cytec Industries, Inc.、ウエストペーターソン、ニュージャージーから、CYMEL(登録商標)350アルキル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂の名称で販売されている。オキサゾリン官能性樹脂の一例は、株式会社日本触媒、大阪、日本によって、EPOCROS(商標)WS-700オキサゾリン官能性水溶性コポリマーの名称で販売されている。イソシアネート官能性の樹脂のいくつかの例は、Rhodia Inc.、クランバリー、ニュージャージーからRHODOCOAT(商標)WAT 1脂肪族ポリイソシアネート及びRHODOCOAT(商標)WT1000メチルエチルケトオキシムでブロックされたヘキサメチレンジイソシアネートのホモポリマーの名称で販売されている。
【0022】
他の適切な水溶性または水分散性の有機架橋剤としては、スチレンマレイン酸無水物コポリマー部分モノエステルのアンモニア塩の水溶液が含まれる。例としては、SMA 1440Hスチレンマレイン酸無水物コポリマー溶液及びSMA 2625H、スチレンマレイン酸無水物コポリマー溶液を含み、共にSartomer Company、エクストン、ペンシルベニアから入手し得る。
【0023】
架橋剤は、典型的には全活性成分の2〜20質量%の範囲で、より典型的には5〜10質量%の範囲で存在するであろう。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態では、コーティング組成物は、アルミニウムを含まず、特に、アルミナ及びアルミナ三水和物などの不溶性の無機アルミニウム化合物を含まなくてもよい。発明者らは、そのような物質は、少なくともある場合には、本発明の目的を損なうクラックまたはクレイズを被膜に作るような組成物を与え得ることを見出した。
【0025】
本発明のいくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルセルロース及び/またはポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)は、界面活性剤と架橋剤(ある実施形態ではそれぞれがポリマーであり得るが)を除いては、組成物中に存在する唯一のポリマーである。ある実施形態では、以下のクラスのポリマー材料のいずれかまたはすべてが、ある状況下では望ましくなく、したがって組成物から除外され得る:ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、硫酸基を多重に有するポリマー、ポリエステル、アクリルアミド(コ)ポリマー、アクリレート(コ)ポリマー、N-ビニルピロリドン(コ)ポリマー、ビニルアルコール(コ)ポリマー、ポリウレタン、ポリ尿素、セルロースエステルまたはエーテル(ヒドロキシプロピルセルロース以外の)、及びゼラチン。
【0026】
上述したようなコーティング組成物は、典型的には、溶媒を含み得るが、揮発性希釈剤中の分散物として適用される。大部分の場合に、希釈剤は水性であり、本発明で使用される場合、希釈剤は、少なくとも50質量%の水であることを意味する。ある実施形態では、水性希釈剤は、少なくとも90質量%の水であり、多くの場合において、それは100質量%の水である。そのような分散物は、典型的には、全固体分を0.5〜15質量%の範囲、より典型的には2〜5質量%の範囲で有する。当業者には周知のように、「全固体分」は、存在する非揮発性物質の一部が室温で液体であり得るとしても、コーティング組成物中に存在する非揮発性物質の量を指す。
【0027】
分散されたコーティング組成物の粘度は、典型的には、グラビュー型のコーティング法では、1〜100Pasの範囲であるが、その他のコーティング法では100Pas以上であり得る。さらに、分散されたコーティング組成物が、粒子集合、凝集、結晶化またはその他の特性の劣化を起こすことなく、保存中に安定であり、コーティング技法の(高シアなどの)条件に対して安定でもあり得るように、機能性成分は互いに適合的であることが望ましい。
【0028】
複合フィルムの調製
いかなるポリマーも、典型的には、フィルムの形態で、本発明による支持体としての使用に適している。熱可塑性ポリマーが典型的に使用される。非制限的な例としては、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリメチルメタクリレートなどのポリアクリレート、ポリスチレンまたはアクリレートコポリマー、ナイロン、ポリブチレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、オレフィン性コポリマー、ポリカーボネート及びポリアクリロニトリルが含まれる。
【0029】
ポリマーフィルムはまた、ポリアリールエーテルまたはそのチオ類似体、特にポリアリールエーテルケトン、ポリアリールエーテルスルフォン、ポリアリールエーテルエーテルケトン、ポリアリールエーテルエーテルスルフォン、またはこれらのコポリマーもしくはチオ類似体を含む。これらのポリマーの例は、欧州特許出願公開第1879号明細書、欧州特許出願公開第184458号明細書及び米国特許第4008203号明細書に記載されている。ポリマーフィルムは、ポリ(アリレンスルフィド)、特に、ポリ-p-フェニレンスルフィドまたはそのコポリマーを含んでもよい。上述したポリマーのブレンドもまた使用され得る。
【0030】
適切な熱硬化性樹脂ポリマー材料はまた、本発明による支持体として使用できる。例としては、アクリル、ビニル、ビスマレイミド及び不飽和ポリエステルなどの付加重合樹脂、尿素、メラミンまたはフェノールとの縮合体などのホルムアルデヒドの縮合体樹脂、シアネート樹脂、機能化ポリエステル及びポリアミドまたはポリイミドを含む。
【0031】
支持体は、ある実施形態では、多層のフィルムであってもよい。例えば、フィルムは、ポリエチレンテレフタレートなどの基礎層及びその上に設けられたヒートシール可能な層を含んでもよい。そのようなヒートシール可能な層は、溶媒からのコーティングまたはその他のいかなる手段によって設けられてもよい。ある実施形態では、独立のオリフィスダイを通して、それぞれのフィルムを形成する層の同時共押出しを行い、その後、まだ溶融状態の層を一体化するステップによるか、好ましくは、それぞれのポリマーの溶融状態の流れが、最初に、ダイマニフォールドへ導かれるチャネル中で一体にされ、その後に、多層ポリマーフィルムを形成するように混合されることなく層流となる条件下で、ダイオリフィスから共に押し出される、単一チャネル共押出しするステップのいずれかにより共押出しによって実行され、それが本明細書で前記したように配向され熱硬化される。
【0032】
本発明のある実施形態では、支持体としては、1種または複数種のグリコールまたはジオール(エチレンもしくはプロピレングリコールまたはブタンジオールなどの)と1種または複数種の二価の酸またはそのエステル(典型的にはメチルエステル)とのポリ縮合反応から調製される結晶性ポリエステルが含まれる。適切な二価の酸としては、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、ジフェン酸及びセバシン酸が含まれる。本発明において有用なポリエステルフィルムの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、もしくはこれらの混合物、または上記のポリエステルのいずれか1種が存在するコポリエステルフィルムが含まれる。例えば、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(PETIP)コポリエステルのフィルムが、本発明に従って使用されてもよい。他の適切な例は、PETとPENのコポリエステルから作製されたフィルムである。典型的にはPETが使用される。
【0033】
ポリエステルフィルムの典型的な製造においては、ポリエステル樹脂が溶融され、回転している磨かれたキャストドラムの上に非晶質フィルムとして押し出され、ポリマーのキャストシートが形成される。その後、ポリマーのキャストシートは、ポリエチレンテレフタレートに対しては80〜100℃である、そのガラス転移温度のすぐ上の温度まで加熱され、一般に1方向またはそれ以上の方向に引き延ばされまたは延伸される。典型的には、押出しの方向(長手方向)及び押出し方向と直角の方向(横手方向)の2方向に延伸され、2軸に延伸されたフィルムが作製される。最初の延伸は、フィルムに強度と強靭さを与え、通常、フィルムの元の長さを約2.0〜約4.0倍に増加させる。続く延伸ステップもまた、それぞれフィルムのサイズを約2.0〜約4.0倍に増加させる。一般に、最初に長手方向に延伸し次いで横手方向に延伸することが好ましい。フィルムは、次いで、強度、強靭さ及び他の物理的特性を固定するために、一般に、ポリエチレンテレフタレートに対しては約190℃〜240℃の範囲の温度で、加熱硬化され、それからロールに巻き取る前に冷却する。
【0034】
本発明は、このプロセスに、フィルム支持体の片面または両面に防曇及びアンチグレア組成物を支持体にコーティングするステップを加える。ポリエステルの場合、このことを実行する適切な多くの方法が使用し得る。防曇組成物をコーティングするためのプロセスは、インラインまたはオフラインのいずれかで実施し得る。すべてのプロセスは、最終の冷却ステップを含むが、本明細書で用いる場合、「インライン」という用語は、最終の冷却ステップに先立ついかなる点において実行されるコーティングステップを指し、「オフライン」コーティングプロセスは、コーティングステップが後になって実行されるものである。本発明によるコーティングフィルムを作製するためにインラインコーティングプロセスを使用する非制限的な例を、PETを例示ポリエステルとして用いて、以下に示す。
【0035】
本発明の第1の実施形態として、PETを乾燥し、次いでフラットシートに溶融押出しし、冷却したロールまたはドラム上で冷却して支持体層を形成する。キャストされたフィルムの温度を、フィルムを熱ローラー(80℃〜85℃)上で通過させること及び赤外線ヒーターにより加熱することにより上げる。次いで、フィルムを長手方向に3.4:1の延伸比で延伸する。次いで、延伸されたフィルムを冷却ロール(15℃〜25℃)と接触させ、フィルムの温度を下げて、フィルムの結晶化と脆化を最小にする。フィルムはその後、防曇及びアンチグレアコーティング溶液を片面または両面にコーティングされる。ロールコーティング法の適切ないかなる方法、または他のコーティング法を用いてもよい。コーティングされたフィルムはテンター枠中で、約105℃で二面強制空気オーブン中で乾燥する。次いでフィルムは、110℃〜130℃で運転している2つのオーブン中で、3.0:1〜4.5:1の比で横方向に延伸される。延伸後、コーティングされたフィルムは、225℃と237℃の間で運転している3つの熱硬化オーブン中で、約8秒間で熱硬化する。最終の冷却ステップにおいて、約165℃で運転している空気オーブン中でフィルムの温度を下げる。
【0036】
本発明の他の実施形態では、第1の実施形態で記載したように、PETがフラットシートに溶融押出しされ、冷却ロールまたはドラム上で冷却し、熱ローラー上を通過させ及び赤外線ヒーターにより加熱される。フィルムは、次いで、片面または両面に防曇及びアンチグレアコーティング溶液をコーティングされ、次いでテンター枠中で、約105℃で二面強制空気オーブン中で乾燥する。次いで、フィルムは、110℃〜130℃で運転しているオーブン中で、2.0:1〜5.0:1の比で、長手方向及び横方向の両方向で延伸される。延伸後、コーティングされたフィルムは、第1の実施形態で記載したように、熱硬化され、冷却される。
【0037】
本発明のなお他の実施形態では、第1の実施形態のプロセスが、横手方向の延伸ステップなしでくり返され、それにより単軸延伸物品を製造する。
【0038】
なお他の実施形態では、横手方向の延伸ステップが、110℃〜130℃で運転している2つのオーブン中で、3.0:1〜4.5:1の延伸比で、第2の長手方向の延伸により置き換えられる以外は、第1の実施形態のプロセスを繰り返して、それにより1軸延伸物品を製造する。
【0039】
スプレイコーティング、ロールコーティング、スロットコーティング、メニスカスコーティング、浸漬コーティング、ワイヤーバーコーティング、エアナイフコーティング、カーテンコーティング、ドクターナイフコーティング、順及び逆グラビューコーティング等などの従来のコーティング法のいかなるものも、コーティング組成物を適用するのに使用し得る。コーティングは、典型的には、湿潤赤外線ゲージによって測定して、1.0〜30μの範囲、より典型的には、5〜20μの範囲の厚さを有する連続ウエットコーティングとして適用される。乾燥後、被膜は、典型的には、0.025〜1.5μの範囲、より典型的には、0.060〜0.16μの範囲の厚さを有する。
【0040】
本発明の他の実施形態では、当業界で公知の広範囲のコーティング方法のいかなるものを用いて、従来のオフラインコーティングプロセスを使用し得る。しかし、インラインコーティングを使用し得ることは、オフラインプロセス(そこでは、典型的には、ポリエステル支持体の製造が完成した後になってのみコーティングステップが実行できる)に対して経済及び効率の点で優位性を与える。なぜなら、オフラインプロセスは、有機溶媒を含み得るし、及び/または使用者が不便で高価な乾燥手順を使用することが必要となり得るからである。対照的に、製造者によるインラインコーティングは、顧客にすぐに使用できるフィルムを提供し、それにより、未コーティングのフィルムを送り出し、コーティングし次いで再巻き取りするための時間と装置を、顧客が用意する必要性を避けさせる。
【0041】
インラインプロセスが使用される場合、コーティング組成物は、典型的には、フィルムの最終延伸ステップの前に適用される。単軸延伸フィルムに対しては、コーティング組成物は、好ましくは、延伸後に適用される。2軸または1軸延伸フィルムに対しては、コーティング組成物は、典型的には、延伸工程間の段階で、すなわち、フィルムが一度は延伸されているが、第2の延伸の前に適用される。
【0042】
いくつかの実施形態では、支持体の片面または(より典型的には)両面に、フィルムの取り扱いを助けるために、例えば、巻き取り性を改善するために、及び「ブロッキング」を最小にしたり防止したりするために、粒子状の物質を含む「スリップ被膜」をコーティングしてもよい。そのような被膜は、例えば、フィルム延伸後で最終の巻き取り前にインラインで適用し得る。スリップ被膜は、支持体のどちらかの側に、または両側に適用してもよい。適切なスリップ被膜は、例えば、米国特許第5925428号明細書、及び米国特許第5882798号明細書に開示されているものなどの、ケイ酸カリウムを含んでもよい。これらの開示は、参照により本明細書に組み込む。代替として、スリップ被膜は、例えば、欧州特許出願公開第0408197号明細書に開示されているように、場合によっては、架橋剤をさらに含むアクリル系及び/またはメタクリル系ポリマー樹脂の非連続的な層を含んでもよい。
【0043】
(実施例)
用語集
以下の材料が実施例中で参照されるが、ここで明らかにしておく。
【0044】
AQUAZOL(登録商標)5ポリ-2-エチル-2-オキサゾリン(Polymer Chemistry Innovations, Inc.、ツーサン、アリゾナ)、10%溶液として使用。
【0045】
COATOSIL(登録商標)1770 2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、水性(Momentive Performance Materials、ウィルトン、コネチカット)、100%固体。
【0046】
CYMEL(登録商標)350アルキル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂(Cytec Industries, Inc.、ウエストペーターソン、ニュージャージー)、20%溶液として使用。
【0047】
D.E.R. (商標)732液体エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとポリプロピレングリコールの反応生成物(Dow Chemical Company、ミッドランド、ミシガン)、100%固体。
【0048】
DISPAL(登録商標)23N4-80ベーマイトアルミナ粉末(Sasol North America Inc.、ヒューストン、テキサス)、100%。
【0049】
DISPAL(登録商標)23N4-20ベーマイトアルミナゾル、20%溶液(Sasol North America Inc.、ヒューストン、テキサス)。
【0050】
EPOCROS(商標)WS-700オキサゾリン官能性水溶性コポリマー(株式会社日本触媒、大阪、日本)、25%溶液。
【0051】
KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース(Hercules Incorporated、ウィルミントン、デラウエア)、10%溶液として使用。
【0052】
MASIL(登録商標)1066Cグラフトまたはペンダントのポリオキシアルキレン親水基を有するポリジメチルシロキサン主鎖を有する、櫛状または鋤状構造の高分子非イオン性シリコーン界面活性剤(PPG Industries, Inc.、ガルニー、イリノイ)、100%固体。
【0053】
NATROSOL(登録商標)ヒドロキシエチルセルロース(Hercules Incorporated、ウィルミントン、デラウエア)、100%固体。
【0054】
SMA 1440H、スチレンマレイン酸無水物コポリマー溶液(Sartomer Company、エクストン、ペンシルベニア)34%溶液として使用。Mwが7000、Mnが2800、酸価が185、及びTgが60℃である、スチレンマレイン酸無水物コポリマー部分モノエステルのアンモニア塩の溶液である。
【0055】
SMA 2625H、スチレンマレイン酸無水物コポリマー溶液(Sartomer Company、エクストン、ペンシルベニア)25%溶液として使用。Mwが9000、Mnが3600、酸価が220、及びTgが110℃である、スチレンマレイン酸無水物コポリマー部分モノエステルのアンモニア塩の溶液である。
【0056】
SNOWTEX-UP(登録商標)コロイド状シリカ(日産化学工業株式会社、東京、日本)、20%分散物。
【0057】
SYTON(登録商標)HT-50コロイド状シリカスラリー(DA NanoMaterials LLC、タンパ、アリゾナ)、50%分散物。
【0058】
TEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤(Tego Chemie Service GmbH、Degussaの一部門、エッセン、ドイツ)、100%固体。
【0059】
TYZOR(登録商標)LA酪酸、チタンキレート、アンモニウム塩、水系チタネート(2-),ジヒドロキシビス[2-ヒドロキシプロパナート(2-)-O1, O2]、アンモニウム塩(DuPont、ウィルミントン、デラウエア)、50%溶液。
【0060】
サンプルの試験法
フィルムのアンチグレア性は、コロンビア、メリーランドのBYK Gardnerから入手できるXL 211 Hazeguard(商標)またはHazeguard(商標)Plusシステムで、ASTM法D1003-92を用いて、全光線透過度 (TLT)により測定した。より高いTLT値は、グレアがより少ないことを意味し、94を超える値は、良好なアンチグレア性として受け入れられる最低の値と考えられている。
【0061】
ヘイズは、あらゆる方向への光の分散により起こり、コントラスト喪失をもたらすが、同じく評価した。ASTM D 1003は、ヘイズを、透過に際して、平均として、照射光から角度2.5°以上離れて透過する光のパーセンテージとして定義する。ヘイズは、ASTM D 1003-61、procedure Aを用いて、BYK Gardnerの「Haze Gard Plus」装置(BYK-Gardner USA、コロンビア、メリーランド)を用いて測定した。
【0062】
フィルムの防曇特性は以下の方法で評価した。
【0063】
室温での試験
500Cの水60 mlを入れた4oz.のジャーの口の上にサンプルフィルムを置いた。全体を室温に保ちフィルムの表面が曇って見えるまでに要した時間を記録した。5分間までに曇りが発生しなかった場合、試験を中止した。
【0064】
冷蔵テスト
2〜5℃(35〜400F)の水60 mlを入れた4oz.のジャーの口の上にサンプルフィルムを置いた。2〜5℃に保った冷蔵庫の中にジャーを置いた。フィルムの表面が曇って見えるまでに要した時間ならびに次いで曇りが消えるまでの時間を記録した。最後に、最初の凝縮が現れる(水滴が見える)時間を記録した。フィルムをジャーの上に置いてから1分、2分、2時間、及び24時間後で、凝縮を評価した。室温及び冷蔵温度で曇りなしという記録は、1分、2分、2時間、及び24時間のいずれの評価においても曇りが見られなかったことを意味する。
【0065】
(実施例1)
被膜処方を作製するために、59.4質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 37.28質量部の10質量%の水性KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース溶液、
- 1.52質量部のEPOCROS(商標)WS-700オキサゾリン官能性水溶性コポリマー、
- 0.4質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 1.4質量部のSNOWTEX-UP(登録商標)コロイド状シリカ。
【0066】
コーティングしたフィルムを以下のようにして作製した。PETを乾燥し次いでフラットシートに溶融押出しし、冷却したロール上で冷却して支持体層を形成した。キャストされたフィルムの温度を、フィルムを熱ローラー(80℃〜85℃)上で通過させること及び赤外線ヒーターにより加熱することにより上げた。フィルムをそれから長手方向に、3.4:1の延伸比で延伸した。次いで、延伸されたフィルムを、冷却ロール(15℃〜25℃)と接触させ、フィルムの温度を下げてフィルムの結晶化と脆化を最小にする。フィルムはその後、防曇及びアンチグレアコーティング処方で両面にロールコーティングした。赤外線ゲージで測定した湿潤被膜厚さは7.4〜9.4μであった。コーティングされたフィルムはテンター枠中で、約105℃で二面強制空気オーブン中で乾燥した。次いでフィルムは、110℃〜130℃で運転している2つのオーブン中で、3.0:1〜4.5:1の比で横方向に延伸した。延伸後、コーティングされたフィルムは、225℃と237℃の間で運転している3つの熱硬化オーブン中で、約8秒間で熱硬化した。最終の冷却ステップにおいて、約165℃で運転している空気オーブン中でフィルムの温度を下げた。乾燥被膜厚さは、完成フィルム上で測定して、0.08〜0.1μであった。全光線透過度は96.4であり、優れたアンチグレア性を示しており、ヘイズ値は1.07であった。フィルムは、非常に良好な防曇性を示し、室温及び冷蔵温度でなんらの曇りも生じなかった。
【0067】
(実施例2)
実施例1と同様の方法を用いて、67.12質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 31.6質量部の10質量%の水性KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース溶液、
- 0.35質量部のD.E.R.(商標)732液体エポキシ樹脂、
- 0.4質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 0.52質量部のSYTON(登録商標)HT-50コロイド状シリカスラリー。
【0068】
被膜処方を実施例1におけるのと同じようにポリエチレンテレフタレート支持体に適用した。全光線透過度値は96.3であり、優れたアンチグレア性を示しており、ヘイズ値は1.37であった。フィルムは、非常に良好な防曇性を示し、室温及び冷蔵温度でなんらの曇りも生じなかった。
【0069】
(実施例3)
実施例1と同様の方法を用いて、60.56質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 37.28質量部の10質量%の水性KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース溶液、
- 0.38質量部のCOATOSIL(登録商標) 1770 2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、
- 0.4質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 1.4質量部のSNOWTEX-UP(登録商標)コロイド状シリカ。
【0070】
被膜処方を実施例1におけるのと同じようにポリエチレンテレフタレート支持体に適用した。全光線透過度値は96.2であり、優れたアンチグレア性を示しており、ヘイズ値は2.13であった。フィルムは、非常に良好な防曇性を示し、室温及び冷蔵温度でなんらの曇りも生じなかった。
【0071】
(実施例4)
実施例1と同様の方法を用いて、59.04質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 37.28質量部の10質量%の水性KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース溶液、
- 1.88質量部のCYMEL(登録商標)350アルキル化メラミン-ホルムアルデヒド樹脂、
- 0.4質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 1.4質量部のSNOWTEX-UP(登録商標)コロイド状シリカ。
【0072】
被膜処方を実施例1と同様にポリエチレンテレフタレート支持体に適用した。全光線透過度値は96.1であり、優れたアンチグレア性を示しており、ヘイズ値は4.07であった。フィルムは、非常に良好な防曇性を示し、室温及び冷蔵温度でなんらの曇りも生じなかった。
【0073】
(実施例5)
実施例1と同様の方法を用いて、60.16質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 37.28質量部の10質量%の水性KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース溶液、
- 0.76質量部のTYZOR(登録商標)LAチタンキレート、
- 0.4質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 1.4質量部のSNOWTEX-UP(登録商標)コロイド状シリカ。
【0074】
被膜処方を実施例1におけるのと同じようにポリエチレンテレフタレート支持体に適用した。全光線透過度値は96.2であり、優れたアンチグレア性を示しており、ヘイズ値は1.93であった。フィルムは、非常に良好な防曇性を示し、室温及び冷蔵温度でなんらの曇りも生じなかった。
【0075】
(比較例6)
実施例1と同様の方法を用いて、97.35質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 0.85質量部のNATROSOL(登録商標)ヒドロキシエチルセルロース、
- 1.70質量部のDISPAL(登録商標)23N4-80ベーマイトアルミナ粉末、
- 0.025質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 0.025質量部のMASIL(登録商標)1066C高分子非イオン性シリコーン界面活性剤。
【0076】
防曇被膜を、No. 24 Meyerロッドを用いて、ポリエーテルフィルム(ICI)に適用した。被膜は約150℃で約2分間オーブン中で乾燥した。全光線透過度値は、92.3であって、アンチグレアの要求を満たさず、ヘイズ値は3.11であった。フィルムは、非常によくない防曇性を示し、ただちに発生する曇りを示し、室温で消えることはなかった。
【0077】
(比較例7)
実施例1と同様の方法を用いて、83.6質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 12.8質量部の10質量%の水性KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース溶液、
- 3.2質量部のDISPAL(登録商標)23N4-20ベーマイトアルミナ粉末、20%、
- 0.4質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤。
【0078】
被膜処方を、ポリエチレンテレフタレートフィルムに、フィルムの製造中の延伸工程間のステージでコーティングした。全光線透過度値は91.1であり、アンチグレアの要求を満たさなかった。ヘイズ値は3.39であった。被膜はまた、横手方向の延伸の結果としてひび割れた破片に壊れ、それゆえポリエーテルフィルムへのインラインの適用には、適さなかった。
【0079】
(実施例8)
実施例1と同様の方法を用いて、66.12質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 31.52質量部のAQUAZOL(登録商標)5ポリ-2-エチル-2-オキサゾリン、
- 1.44質量部のEPOCROS(商標)WS-700オキサゾリン官能性水溶性コポリマー、
- 0.4質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 0.52質量部のSYTON(登録商標)HT-50コロイド状シリカスラリー。
【0080】
全光線透過度値は95.2であり、良好なアンチグレア性を示しており、ヘイズ値は2.23であった。フィルムは、非常に良好な防曇性を示し、室温及び冷蔵温度でなんらの曇りも生じなかった。
【0081】
(実施例9)
実施例1と同様の方法を用いて、60.92質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 37.28質量部の10質量%の水性KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース溶液、
- 0.4質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 1.4質量部のSNOWTEX-UP(登録商標)コロイド状シリカ。
【0082】
被膜処方を、ポリエチレンテレフタレートフィルムに、フィルムの製造中の延伸工程間のステージでコーティングした。全光線透過度値は95.0であり、アンチグレア性を示した。しかし、ヘイズ値は5.25%であり、きわめて高い。フィルムは、非常に良好な防曇性を示し、室温及び冷蔵温度でなんらの曇りも生じなかった。同じプロセスと条件下で、1.52部の架橋剤EPOCROS(商標)WS-700を有する処方をコーティングしたフィルムは(上記の実施例1の繰り返し)、全光線透過度値は95.5であり、優れたアンチグレア性を示したが、ヘイズ値はわずか0.87%であり、架橋剤のない場合に得られた5.25%の値よりもはるかにクリアであった。
【0083】
(実施例10)
実施例1と同様の方法を用いて、85.97質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 9.29質量部の22質量%の水性KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース溶液、
- 3.7質量部のSMA 1440Hスチレンマレイン酸無水物コポリマー溶液、
- 0.6質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 0.44質量部のSYTON(登録商標)HT-50コロイド状シリカスラリー。
【0084】
被膜処方を、ポリエチレンテレフタレート支持体に、実施例1におけるのと同じように適用した。全光線透過度値は96.2であり、優れたアンチグレア性を示しており、ヘイズ値は0.7であった。フィルムは、非常に良好な防曇性を示し、室温及び冷蔵温度でなんらの曇りも生じなかった。
【0085】
(実施例11)
実施例1と同様の方法を用いて、84.63質量部の水に、以下の成分を撹拌下に加えた。
- 9.29質量部の22質量%の水性KLUCEL(登録商標)Eヒドロキシプロピルセルロース溶液、
- 5.04質量部のSMA 2625Hスチレンマレイン酸無水物コポリマー溶液、
- 0.6質量部のTEGO-WET(登録商標)251ポリエーテル修飾ポリシロキサン界面活性剤、
- 0.44質量部のSYTON(登録商標)HT-50コロイド状シリカスラリー。
【0086】
被膜処方を、ポリエチレンテレフタレート支持体に、実施例1におけるのと同じように適用した。全光線透過度値は95.9であり、優れたアンチグレア性を示しており、ヘイズ値は1.1であった。フィルムは、非常に良好な防曇性を示し、室温及び冷蔵温度でなんらの曇りも生じなかった。
【0087】
本明細書において、本発明を特定の実施形態を参照して例示して記載してあるが、本発明が上述した詳細に限定されることを意図してはいない。むしろ、本発明から逸脱することなく、請求項に等価のものの精神及び範囲内の詳細において、種々の変更がなされ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及び第2の面を有し、前記第1の面及び第2の面の少なくとも1つの面上に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む被膜を有する、ポリエステルフィルム支持体を含む複合フィルム。
【請求項2】
被膜が第1の面及び第2の面の両面上に存在する、請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
ポリマーがヒドロキシプロピルセルロースである、請求項1または2に記載の複合フィルム。
【請求項4】
架橋剤がエポキシ樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項5】
架橋剤がメラミン-ホルムアルデヒド樹脂である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項6】
架橋剤がオキサゾリン官能性コポリマーである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項7】
架橋剤が水溶性チタン塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項8】
架橋剤がスチレンマレイン酸無水物コポリマー部分モノエステルのアンモニウム塩である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項9】
複合フィルムが光学素子の一部を形成する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項10】
a)第1の面及び第2の面を有する未配向または1軸配向のポリエステルフィルム支持体を用意するステップ、
b)前記第1の面及び第2の面の少なくとも1つの面上に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む被膜を形成するステップであって、前記少なくとも1つの面を、ポリマー、界面活性剤、コロイド状シリカ、及び架橋剤の水性希釈剤中の分散物に接触させるステップならびに次いで、水性希釈剤を蒸発させるステップを含む、形成するステップ、及び
c)ステップb)に続いて、未配向または1軸配向のポリエステルフィルム支持体を、それぞれ1軸または2軸に配向させるために延伸するステップ
を含む、複合フィルムを作製する方法。
【請求項11】
ステップc)の後に、
d)ポリエステル支持体を熱硬化させるステップ
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ステップa)における支持体が1軸配向である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
ステップb)が、第1の面及び第2の面の両方に被膜を形成するステップを含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ポリマーがヒドロキシプロピルセルロースである、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
架橋剤がエポキシ樹脂である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
架橋剤がメラミン-ホルムアルデヒド樹脂である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
架橋剤がオキサゾリン官能性ポリマーである、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
架橋剤が水溶性チタン塩である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
架橋剤がスチレンマレイン酸無水物コポリマー部分モノエステルのアンモニウム塩である、請求項10〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む被膜を、その表面上に有するポリマーまたはガラスの物品。
【請求項21】
水性の希釈剤中に、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む分散物を含む、物品をコーティングするための組成物。
【請求項22】
ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーと、界面活性剤と、コロイド状シリカと、水溶性チタン塩及び水溶性または水分散性有機架橋剤からなる群から選択される架橋剤とを含む被膜。

【公表番号】特表2011−502064(P2011−502064A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532195(P2010−532195)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/081529
【国際公開番号】WO2009/058821
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(505077426)デュポン・テイジン・フィルムズ・ユー・エス・リミテッド・パートナーシップ (9)
【Fターム(参考)】