説明

ゴム弾性スポンジの製造方法

【課題】 しっとりとした感触のするスポンジの製造方法を提供する。
【解決手段】 油脂類を含むゴム弾性スポンジの製造方法であって、高分子エラストマー又はゴムと、油脂類の混合物を発泡成形し、平均気泡径を200μm以下とする。これにより、しっとり感のあるスポンジが得られ、人肌と接する用途であるクッション材、洗い具、化粧用具に、優れた使い心地を提供でき、しかもさらさら感から吸い付くような粘着感まで適度なしっとり感を調整することができ、用途に応じた最適なスポンジを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム弾性を持つスポンジ及びその製造方法についてであり、特にしっとりとした感触のするスポンジの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム弾性を持つスポンジは、ポリウレタンなどの高分子エラストマーやゴムなどを材料として発泡成形したもので、洗い具、化粧用具、塗布具、拭き具、クッション材、搬送用部材、パッキン材などいろいろな分野で使用されている。なかでも、人肌と接する洗い具、化粧用具、塗布具、拭き具、クッション材の用途では、しっとりとしたソフトな感触のするスポンジが要求されている。この要求に対して、気泡径を200μm以下の細かい気泡として表面のざらつきを押さえたり、見かけ比重を0.10g/cm以下としてふっくらとさせ、見かけのゴム硬度を低く押さえたり、また、使用する樹脂そのものを軟質にすることにより対応してきている。
【0003】
しかしながら、気泡径を細かくすると、確かにざらつきは無くなりすべすべ感はするのだが、同時にかさかさ感が出てしまう。また、見かけ比重を下げることは、ふっくらとなりソフト感は出るが、しっとり感は出てこなく、逆に底付き感が出てしまい好ましくない。また、見かけ比重を下げることは、機械的強度が低下する、発泡成形がむずかしく、成型時に収縮変形し内部亀裂が生じる、といった問題がある。さらに、気泡を細かにすることと、見かけ比重を低くすることは相反する設計事項で、これらを同時に達成することはひじょうに難しいことである。さらに、使用する樹脂そのものを柔軟とすることも行われるが、スポンジは柔軟となるが、ゴム弾性が劣りぐにゃついた粘着感が出てしまう。また、このような樹脂は機械的強度が低いものである。このように、いずれの方法によってもしっとりした感触は出せないでいた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、しっとりとした感触のするスポンジの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究検討した結果、油脂類をスポンジに含ませることによりしっとり感が出せることを見い出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明のスポンジの製造方法は、ゴム弾性を持つスポンジに油脂類を含ませたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は以上のように構成されるため、しっとり感のあるスポンジが得られ、人肌と接する用途であるクッション材、洗い具、化粧用具に、優れた使い心地を提供でき、しかもさらさら感から吸い付くような粘着感まで適度なしっとり感を調整することができ、用途に応じた最適なスポンジを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のしっとり感とは、かさかさした滑り易さからすべすへ感となり、しっとり感を経てべたつき感、粘着感へ変化する一連の触感のうちのしっとり感であり、人肌に触れるがごとき感触である。
【0008】
本発明のスポンジの製造方法は、スポンジに油脂類を含むことによりしっとり感を出している。本発明で使用する油脂類とは、天然または人工に得られる脂肪酸エステル類、ラノリン、動物性の毛より抽出される油脂、スクワラン、スクワレン(スキュワラン、スキュワレン深海鮫の肝臓より抽出した油脂で、人工物も知られている)、ビサボロール、ロウなどであり、1種または2種以上を混合して使用することができる。これらの使用量は、原料樹脂100重量部に対して、0.5〜20重量部、好ましくは1.0〜10重量部である。これより少なければ、しっとり感が達成できなく、これより多くても粘着感が出て好ましくない。また、これより多くても発泡成形時に泡の崩壊が起こり均一なスポンジが得られない。また、油脂類はポリオキシエチレンアルキルエーテルなどの非イオン性界面活性剤を併用して使用することが好ましく、発泡成形時の泡の崩壊が起こりにくくなる。非イオン性界面活性剤は使用する原料樹脂100重量部に対して0.5重量部から20重量部使用することが好ましい。
【0009】
本発明で製造されるスポンジは、ポリウレタンなどの高分子エラストマーまたはゴムを原料にして発泡成形をした、ゴム弾性を持っているスポンジで、連続気泡または独立気泡のスポンジである。上記高分子エラストマーとしては、ポリウレタン、ポリエチレン系エラストマー、ビニル系エラストマーなどが使用でき、好ましくはポリウレタンである。高分子エラストマーは、樹脂単独で使用することができ、また、エマルジョンとして使用することもできる。また、ポリウレタンのように樹脂原料であるポリオール類とイソシアネート類を使用することもできる。上記ゴムにはNR、DPNR、NBR、IR、BR、SBR、CR、EPDM、シリコンゴム、アクリルゴムなどであり、1種または2種以上を混合して使用することができる。ゴムはラテックスとして使用することができ、また、樹脂単独で使用することもできる。
【0010】
本発明で製造されるスポンジは原料樹脂と油脂類と各種助剤の混合物を発泡成形することによって製造することができる。発泡成形の方法としては、各種の発泡成形方法が使用できる。ガスの発生によって発泡する方法としては、原料樹脂に発泡剤を混合し、加熱などの方法でガスを発生させ発泡成形することができる。また、原料樹脂に水溶性の塩類を混合して成形し、これを水中で溶解抽出させ空孔とすることによって製造ことができる。また、原料樹脂を水溶性の溶剤に溶解しておき、この樹脂溶液を水中に導入し溶剤を抽出して空孔を作ることにより製造ができる。また、原料樹脂をエマルジョンまたはラテックスとしてこれに空気などを撹拌混合し起泡して成型することができる。また、樹脂がポリウレタンであれば、樹脂原料であるポリオール類に油脂類と各種助剤、発泡剤を混合し、これとイソシアネート類を反応して樹脂の生成と同時にガスを発生させ発泡成形することができる。
【0011】
油脂類の混合方法としては、樹脂または樹脂原料に油脂を溶解、分散させる方法が用いられる。また、油脂類の水分散体を作成しておき、これを原料エマルジョンやラテックスに混合することもできる。
【0012】
本発明で製造されたスポンジはあらかじめ作成したスポンジに上記油脂類を付着させて製造することもできる。この場合、油脂類は水分散体としておき、これをスポンジに含ませ、乾燥することによって製造することができる。
【0013】
本発明で製造されたスポンジがしっとり感を持つ理由としては、スポンジの骨格を形成する樹脂の表面に油脂類がブリードして、薄い皮膜を形成ししっとり感を出しているもので、スポンジの摩擦係数を0.2から0.5とする働きがあると考えている。
【0014】
本発明で製造されるスポンジは、平均気泡径を200μm以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは150μm以下とすることが好ましい。平均気泡径を小さくすることにより、しっとり感がより強調される。これは、気泡骨格を形成する樹脂部が微細になり、単位面積当たりに多数の骨格が出来、その各々が油脂類で被覆されているために増幅される効果であると考えている。この場合には、油脂類の使用量を原料樹脂100重量部に対して、0.5重量部まで減らして使用することができる。気泡径を上記の範囲とするには、発泡剤を微細とする、起泡時のミキサーの回転数を上げる、見かけ比重を上げるなどの手段で調整することができる。
【0015】
実施例1
ポリウレタンスポンジの原料として、つぎの2液を用意した。ポリオールとして、平均分子量2000の2官能のポリエーテルポリオール(旭電化社製P−2000)60%と平均分子量3000の3官能のポリエーテルポリオール(旭電化社製 G−3000B)40%の混合物の100重量部を計量した。ここに、起泡剤として水1.0重量部、触媒としてトリエチレンジアミン0.1重量部とN−エチルモルホリン0.5重量部と1,2−ジメチルイミダゾール0.2重量部、整泡剤としてSZ−1127を1.0重量部とL−580を1.0重量部(いずれも日本ユニカー社製シリコン系界面活性剤)、紫外線吸収剤としてチヌビン328(チバガイギー社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤)0.5重量部、酸化防止剤としてAO−70(旭電化社製フェノール系抗酸化剤)0.5重量部、油脂類としてスクアラン(クラレ社製、SQUALANE−N)5.0重量部、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(花王社製、エマルゲン106)2.5重量部をそれぞれ混合し、ポリオール成分とした。イソシアネートとして、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートと2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートとの1/1混合物を30重量部用意した。このポリオール成分とイソシアネートを温度40℃として、上記割合で10秒間調理用ジューサーミキサーにて高速撹拌混合した。混合直後より発泡が始まり、混合液は混合後直ぐに直径11cmの円柱状金型に注入し、30秒後に金型を密閉した。その後、60℃にて1時間静置した後、金型よりスポンジを取り出し、厚さ2mmにスライスした。スポンジは連続気泡構造で、ゴム弾性があった。感触はしっとりとしており、乳児の肌を触れるような触感であった。見かけ比重は0.124g/cm、平均気泡径は130μmであり、平滑なアルミニウムに対する摩擦係数は0.33であった。これを袋状に成形し軸木に取り付け化粧用アイシャドウアプリケーターとして化粧に使用したところ、指先を使っているような、しっとりした使用感があった。また、化粧効果もすぐれ、化粧料がむらなく塗ることができた。
【0016】
実施例2、3
実施例1と同様にして作成したが、スクランの使用量をそれぞれ、1.0重量部、10重量部とした。
【0017】
比較例1
実施例1と同様にして作成したが、油脂類は使用しないで作成した。スポンジは実施例1と同様きめ細かであり、すべすべ感があるが、同時にかさかさ感があった。
【0018】
実施例1乃至3と比較例1の結果を表1に示す。
【表1】

【0019】
実施例4
実施例1と同様にして作成したが、油脂類としてラノリン5.0重量部を使用して作成した。作成したスポンジはしっとり感があった。
【0020】
実施例5
NBRラテツクス(日本ゼオン社製LX−531)の固形分100重量部あたりにつぎの配合剤(不揮発分重量部)と空気をオークスミキサーにて撹拌混合し、起泡させた。発泡物は直径60mmのアルミニウム製の円柱状の型に流し込んだ。発泡物が固化後、蒸気釜にて100℃1時間加硫を行った。発泡物はゴム弾性のある連続気泡のスポンジとなっていた。型より取り出し、水にて洗浄し、乾燥した。これを厚さ8mmに断裁し、周囲をグラインダーにて研磨し曲面とした。円盤状のスポンジとした。このスポンジの配合を表2に示す。
【0021】
【表2】

【0022】
スポンジは、見かけ比重0.132g/cm、平均気泡径が180μmであった。ゴムにもかかわらずしっとり感があった。これを化粧用ファンデーション用パフとして化粧に使用したところ、指先を使っているような、しっとりした使用感があった。また、化粧効果も優れ、化粧料がむらなく塗ることができた。
【0023】
比較例2
実施例5と同様に作成したが、スクワランとポリオキシエチレンラウリルエーテルは使用しなかった。出来上がったスポンジは見かけ比重0.132g/cm、平均気泡径が175μmであったが、しっとり感はなく、通常のゴムスポンジのべたつくような粘着感があった。
【0024】
実施例6
比較例2で作成したスポンジに、スクアランの水分散物(スクワラン濃度5%)を含浸させ、100%絞り率となるよう手にて絞りした。その後室温にて2日間乾燥後、さらに60℃の電気乾燥箱にて2時間乾燥した。スポンジは材料スポンジに比べて格段にしっとり感があった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂類を含むゴム弾性スポンジの製造方法であって、
高分子エラストマー若しくはゴム、又はこれらの原料と、油脂類との混合物を発泡成形し、
平均気泡径を200μm以下とすることを特徴とするゴム弾性スポンジの製造方法。
【請求項2】
前記高分子エラストマーの原料がポリオール類又はイソシアネート類であり、
前記混合物を、前記高分子エラストマーの生成と同時に発泡成形することを特徴とする請求項1に記載のゴム弾性スポンジの製造方法。
【請求項3】
前記高分子エラストマー又はゴムが、エマルジョン又はラテックスであることを特徴とする請求項1に記載のゴム弾性スポンジの製造方法。
【請求項4】
前記混合物に、非イオン性界面活性剤が含まれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のゴム弾性スポンジの製造方法。
【請求項5】
油脂類を含むゴム弾性スポンジの製造方法であって、
発泡成形した高分子エラストマー又はゴムに油脂類を付着させ、
平均気泡径を200μm以下とすることを特徴とするゴム弾性スポンジの製造方法。
【請求項6】
前記油脂類は水分散体であることを特徴とする請求項5に記載のゴム弾性スポンジの製造方法。

【公開番号】特開2008−24953(P2008−24953A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268482(P2007−268482)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【分割の表示】特願2000−246047(P2000−246047)の分割
【原出願日】平成12年7月10日(2000.7.10)
【出願人】(392003018)雪ヶ谷化学工業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】