説明

ゴム組成物及び加硫ゴム成形体

【課題】優れた圧縮永久歪性を有するエピクロルヒドリン系重合体ゴム加硫物得るための組成物。
【解決手段】エピクロルヒドリン系重合体ゴム100重量部に、非鉛系受酸剤を0.5〜30重量部、ポリアミン系加硫剤を0.1〜10重量部を含有することを特徴とするゴム組成物。該組成物をを加硫して得られる成形体は圧縮永久歪性に優れ、コピー機、プリンター等の電子写真用プロセスに使用される半導電性ゴムローラーまたはゴムベルトに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの現像、帯電、転写などの半導電性ローラーまたはベルトに用いられる加硫用ゴム組成物、およびその組成物を加硫してなる加硫ゴム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの帯電、現像、転写において、コロナ放電に代表される非接触帯電方式、非接触転写方式から、ゴムローラーを用いた接触帯電法式、接触転写方式の採用が拡大されつつある。
【0003】
前記ゴムローラーは、画像形成時にローラーの両端部に荷重をかけて使用するため、長期に渡り荷重変形が繰り返され、ゴムのへたりが問題となる。ゴムのへたりが大きくなると、例えば、帯電ローラーでは、ローラーと感光体との接触幅(ニップ幅)がローラー端部と中央部とで異なり、これが著しい場合には、中央部分で感光体が帯電しないという不具合が生じる。従って、耐圧縮永久歪性に優れたゴム材料が必要とされている。
【0004】
ゴム材料に半導電領域の体積抵抗率を発現させる方法としては、カーボンブラックのような電子伝導性粒子を添加する方法があげられる。しかしながら、カーボンブラックにより導電性を発現させる場合は、わずかな添加量の差異やカーボンブラックの分散不良等により体積抵抗率が大きく変化してしまう問題がある。また、印加電圧により体積抵抗率の変動が大きいという問題も含んでいる。
【0005】
一方、エピクロルヒドリンゴムのようなイオン伝導性を有したゴム材料を用いることにより、前述したカーボンブラックのような電子伝導系の問題点は改善され、安定した半導電性領域の体積抵抗率を発揮できる。しかしながら、エピクロルヒドリンゴムの加硫剤および受酸剤として、従来よりエチレンチオウレアおよび鉛化合物が用いられてきたが、エチレンチオウレアは発がん性や催奇性の疑いのため、また鉛化合物は環境負荷物質であるために、近年ではその使用について縮小する傾向が見られてる。
【0006】
また、アリルグリシジルエーテルなどの二重結合を有したモノマーと共重合したエピクロルヒドリンゴム系重合体に対して、硫黄および有機促進剤を用いる加硫系が公知となっている。しかしながら、一般に硫黄および有機促進剤を用いる加硫系は、圧縮永久歪率が悪くなる傾向にあり、ローラーの変形による画像不良が起こりやすくなる問題を含んでいる。
【0007】
また、特開2005-299629(特許文献1)では、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)などの低透過樹脂層とエピクロルヒドリンゴムなどのゴム層とからなる自動車用燃料系ホースにおいて、ゴム層にアミン加硫剤を添加することにより、樹脂層とゴム層との接着力が増し、接着剤レスで燃料系ホースが製造できる方法が開示されている。しかしながら、該広報は、樹脂層とゴム層との接着力の増加を目的としたものであり、ゴム層において圧縮永久歪率等の諸物性の改善については何ら記載がなく、開示された内容からコピー機、プリンター等に使用される電子写真用プロセスの現像、帯電、転写などの半導電性ローラーまたはベルトに用いられるゴム材料として有用であることの示唆もなされていない。
【0008】
【特許文献1】特開平2005−299629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、エピクロルヒドリン系重合体ゴムの加硫物に優れた圧縮永久歪性を発現させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は種々研究の結果、エピクロルヒドリン系重合体ゴムに対して、ポリアミン系加硫剤を添加し、その組成物を加硫した加硫物が上述の目的を達成することを見出し本発明を完成したものである。
【0011】
項1:エピクロルヒドリン系重合体ゴム100重量部に、非鉛系受酸剤を0.5〜30重量部、ポリアミン系加硫剤を0.1〜10重量部を含有することを特徴とするゴム組成物。
【0012】
項2:エピクロルヒドリン系重合体ゴムが、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることを特徴とする項1に記載のゴム組成物。
【0013】
項3:ポリアミン系加硫剤が、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、クメンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする項1または2に記載のゴム組成物。
【0014】
項4:項1〜3に記載のゴム組成物を加硫してなる加硫ゴム成形体。
【0015】
項5: 項4に記載の加硫ゴム成形体であって、JIS K6262に記載の70℃×22時間における圧縮永久歪率が10%以下であることを特徴とする加硫ゴム成形体。
【0016】
項6:項4または5に記載の加硫ゴム成形体からなり、コピー機、プリンター等の電子写真用プロセスに使用される半導電性ゴムローラーまたはゴムベルト。
【0017】
以下、本発明の構成につき詳細に説明する。
本発明におけるエピクロルヒドリン系重合体ゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体が挙げられる。なかでも、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が好適である。
【0018】
エピクロルヒドリン系ゴムの成分組成は、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体では、エピクロルヒドリン成分が5mol%〜80mol%、エチレンオキサイド成分が20mol%〜95mol%、好ましくはエピクロルヒドリン成分が30mol%〜60mol%、エチレンオキサイド成分が40mol%〜70mol%であり、またエピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体では、エピクロルヒドリン成分が85mol%〜99mol%、アリルグリシジルエーテル成分が1mol%〜15mol%、好ましくはエピクロルヒドリン成分が90mol%〜98mol%、アリルグリシジルエーテル成分が2mol%〜10mol%であり、またエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体では、エピクロルヒドリン成分が5mol%〜75mol%、エチレンオキサイド成分が20mol%〜90mol%、アリルグリシジルエーテル成分が1mol%〜10mol%、好ましくはエピクロルヒドリン成分が10mol%〜65mol%、エチレンオキサイド成分が30mol%〜85mol%、アリルグリシジルエーテル成分が2mol%〜8mol%であるものが用いられる。
【0019】
上記、重合体ゴムの製造方法としては公知の重合法を採用できる。特に本出願人の米国特許第3,773,694号明細書に記載の有機錫−リン酸エステル縮合物を重合触媒とする方法は、重合物が高収率で得られるので好ましい。即ち、上記触媒の存在下で脂肪族又は芳香族炭化水素を溶媒として重合温度10〜70℃で5〜15時間重合させることにより、重合収率90%以上で製品を得ることができる。これらの共重合体ゴムの分子量範囲は100℃におけるムーニー粘度表示で30〜200のものが好ましく用いられる。
【0020】
本発明において、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン、ポリウレタンゴムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ゴムをエピクロルヒドリン系重合体ゴムと共にゴム成分として用いてもよい。これらのゴムは、エピクロルヒドリン系重合体ゴムのようにゴム自身が半導電性を有したポリマー材料ではないか、もしくはその効果が小さいゴム材料であるが、ブレンドすることにより加工性の更なる改良や低コスト化が図れる利点がある。
【0021】
本発明におけるエピクロルヒドリン系重合体ゴムとクロロプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、塩素化ポリエチレン、クロルスルホン化ポリエチレン、ポリウレタンゴムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体ゴムとの配合比率は目的とするゴム物性によって選択可能であるが、エピクロルヒドリン系重合体ゴムが20重量部以下では、体積抵抗率の上昇が顕著になり好ましくない。好ましくはエピクロルヒドリン系重合体ゴムが50重量部以上である。
【0022】
また、本発明の加硫用ゴム組成物において用いられる非鉛系受酸剤としては、周期表第II族金属酸化物、水酸化物、炭酸塩、カルボン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、亜リン酸塩、周期表IV族金属の酸化物、塩基性炭酸塩、塩基性カルボン酸塩、塩基性亜リン酸塩、塩基性亜硫酸塩等、および下記一般式(I)で示される合成ハイドロタルサイト、および一般式(II)で示されるLi-Al系包接化合物が挙げられる。

MgZny AlZ (OH)2(x+y)+3Z-2CO3・wH2O (I)
(xとyは0〜10の実数、ただしx+y=1〜10、zは1〜5の実数、wは0〜10の実数を表す)

〔Al2 Li(OH)6n X・mH2O (II)
(式中Xは、無機または有機のアニオンであり、nはアニオンXの価数であり、mは3以下の数)
【0023】
受酸剤の具体的な例としては、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酸化亜鉛、フタル酸カルシウム、亜リン酸カルシウム、酸化錫、塩基性亜リン酸錫をあげることができる。さらに、合成ハイドロタルサイトにおいては、例えば、
Mgx Aly (OH)2x+3y-2CO3・wH2O (III)
(但しxは1〜10、yは1〜10、wは正の実数を表す)
であってよく、ハイドロタルサイト類を例示すれば、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.5Al(OH)13CO、MgAl(OH)12CO・3.5HO、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)10CO・1.7HO等を挙げることができる。さらに、Li-Al系包接化合物のアニオン種としては、炭酸、硫酸、過塩素酸、リン酸のオキシ酸、酢酸、プロピオン酸、アジピン酸、安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、p-オキシ安息香酸、サリチル酸、ピクリン酸等の一種または二種以上の組み合わせが挙げられる。これらの受酸剤は単独であるいは2種以上併用して用いられ、その配合量は、ゴム成分100重量部に対して0.5〜30重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0024】
本発明におけるポリアミン系加硫剤としては、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、クメンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメートがあげられる。
【0025】
本発明に用いられるポリアミン系加硫剤の配合割合は、ゴム成分100重量部に対して、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部が用いられる。この範囲未満の配合量では架橋が不十分となり、一方この範囲を超えると得られた加硫物が剛直になりすぎて実用的なゴム物性が得られないからである。
【0026】
また、エピクロルヒドリン系重合体ゴムの公知の加硫剤を、本発明で用いられるポリアミン系加硫剤との組み合わせで用いても良い。
【0027】
エピクロルヒドリン系重合体ゴムの加硫剤としては、例えば、チオウレア類、チアジアゾール類、メルカプトトリアジン類、ピラジン類、キノキサリン類、有機過酸化物、硫黄、モルホリンポリスルフィド類、チオラムポリスルフィド類等が挙げられる。これらの加硫剤は単独であるいは2種以上併用して用いられる。
【0028】
これらの加硫剤を例示すれば、チオウレア類としては、エチレンチオウレア、1,3−ジエチルチオウレア、1,3−ジブチルチオウレア、トリメチルチオウレア等があげられる。
【0029】
チアジアゾール類としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール―5―チオベンゾエート等があげられる。
【0030】
メルカプトトリアジン類としては、2,4,6−トリメルカプト−1,3,5−トリアジン、1−メトキシ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ヘキシルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジエチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−シクロヘキサンアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、1−ジブチルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン、2−アニリノ−4,6−ジメルカプトトリアジン、1−フェニルアミノ−3,5−ジメルカプトトリアジン等があげられる。
【0031】
ピラジン類としては、2,3-ジメルカプトピラジン誘導体等があげられ、2,3-ジメルカプトピラジン誘導体を例示すると、ピラジン-2,3-ジチオカーボネート、5-メチル-2,3-ジメルカプトピラジン、5-エチルピラジン-2,3-ジチオカーボネート、5,6-ジメチル-2,3-ジメルカプトピラジン、5,6-ジメチルピラジン-2,3-ジチオカーボネート等があげられる。
【0032】
キノキサリン類としては、2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体等があげられ、2,3-ジメルカプトキノキサリン誘導体を例示すると、キノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-メチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、6-エチル-2,3-ジメルカプトキノキサリン、6-イソプロピルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート、5,8-ジメチルキノキサリン-2,3-ジチオカーボネート等があげられる。
【0033】
有機過酸化物としては、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、p−メンタンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、
tert−ブチルパーオキサイド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート等があげられる。
【0034】
モルホリンポリスルフィド類としては、モルホリンジスルフィド等があげられる。
【0035】
チオラムポリスルフィド類としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’−ジメチル−N,N’−ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタンメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド等をあげられる。
【0036】
また、これらの加硫剤と共に用いられる公知の加硫促進剤、遅延剤を本発明の加硫用ゴム組成物においてそのまま用いることができる。加硫促進剤としては、塩基性シリカ、グアニジン系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、チウラム系促進剤、ジチオカルバミン酸系促進剤、1、8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7及びその弱酸塩、1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)ノネン−5、6−ジブチルアミノ1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7及びその弱酸塩、第4級アンモニウム化合物等を挙げることができ、遅延剤としてはN−シクロヘキサンチオフタルイミド、酸性シリカ等を挙げることができる。
【0037】
これら加硫促進剤を例示すれば、グアニジン系促進剤の例としては、ジフェニルグアニジン、ジトリルグアニジン等が挙げられる。
【0038】
チアゾール系促進剤の例としては、2―メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド、2―メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩等が挙げられる。
【0039】
スルフェンアミド系加硫促進剤の具体例としては、N−エチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N−ジ−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、などが挙げられる。
【0040】
チウラム系加硫促進剤の具体例としては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0041】
ジチオカルバミン酸系促進剤の例としては、ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルカルバミン酸銅等が挙げられる。
【0042】
これら加硫促進剤、遅延剤は、無機充填剤、オイル、ポリマー等に予備分散させた形で使用しても良い。また、これらの加硫促進剤は単独で用いてもよいし、2種類以上の組み合わせで用いてもよい。促進剤または遅延剤の配合量は、ゴム成分100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0043】
また、本発明の加硫ゴム用組成物は、当該技術分野で通常使用される他の添加剤、例えば滑剤、老化防止剤、充填剤、補強剤、可塑剤、加工助剤、顔料、発泡剤等を任意に配合できる。
【0044】
更に本発明の特性が失われない範囲で、当該技術分野で通常行われている樹脂等とのブレンドを行うことも可能である。本発明に用いられる樹脂を例示すれば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、PUR(ポリウレタン)樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)樹脂、EVA(エチレン/酢酸ビニル)樹脂、AS(スチレン/アクリロニトリル)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂等が挙げられる。
【0045】
更に、本発明の加硫ゴム用組成物において、導電付与剤として、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩などの金属塩、カチオン種が一般式(IV)で表され、
【化1】

(式中、R3、R4、R5およびR6はそれぞれ同一でも異なっていてもよく、炭素原子数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基あるいは主鎖がポリオキシエチレン鎖もしくはポリオキシプロピレン鎖で、末端にアルキル基、アルケニル基、アリール基、シクロアルキル基、アルコキシ基、水酸基を有する基である。)
アニオン種が過塩素酸イオンのような無機酸イオン、または、塩化物イオンのようなハロゲンイオンなどを有した第四級アンモニウム塩などを任意に添加してよい。
【0046】
これら導電付与剤となる塩において、カチオン種としては、例えば、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Baや遷移金属であるFe、Ni、Cu、Zn及びAg金属の陽イオンや、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチル2−(2−メトキシプロキシ)エチルアンモニウム、ジメチルドデシル2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアンモニウム、ジメチルオクタデシル2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルアンモニウム等の第四級アンモニウムイオン、テトラメチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム等のホスホニウムイオンが挙げられる。また、アニオン種としては、例えば、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、酢酸イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、チオシアン酸イオン、テトラフルオロホウ素酸イオン、硝酸イオン、AsF6−、PF6−、ステアリルスルホン酸イオン、オクチルスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン等が挙げられ、これら任意の組み合わせから選ばれた化合物が導電付与剤として挙げられる。
【0047】
導電付与剤の量は、ゴム成分100重量部に対して0〜10重量部、例えば0〜5重量部である。
【0048】
本発明の組成物の配合方法としては、従来ポリマー加工の分野において利用されている任意の手段、例えばミキシングロール、バンバリーミキサー、各種ニーダー類等を利用することができる。
【0049】
本発明の組成物は、通常100〜250℃に加熱することで加硫物とすることができる。加硫時間は温度によって異なるが、0.5〜300分の間で行われるのが普通である。加硫成型の方法としては、金型による圧縮成型、射出成型、スチーム缶、エアーバス、赤外線、あるいはマイクロウェーブによる加熱等任意の方法を用いることができる。
【発明の効果】
【0050】
本発明の目的は、エピクロルヒドリン系重合体ゴム加硫成形体に優れた圧縮永久歪性を発現させることを目的とするものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。但し、本発明はその要旨を逸脱しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0052】
120℃に設定した容量1リットルのニーダー中でエピクロルヒドリン系重合体ゴム100重量部を1分間素練りした後、表1に示したA練り配合剤を表1に示した配合量で投入した。これらを3分間混練した後、ニーダーより取り出し、70℃に設定した7インチロールでシート化してゴムシート(以下、「A練りシート」とする。)を作製した。
【0053】
次いで、70℃に温度設定した7インチロールを用い、前記A練りシートに、表1に示した配合割合のB練り配合剤を加え、約5分間混練することにより、ゴムシート(以下、「B練りシート」とする。)を作製した。
【0054】
なお、実施例2及び比較例1〜2については、上記実施例1と同様の方法で、表1の配合に従いゴムシートを作製した。
【0055】
圧縮永久歪試験
JIS K 6262に準拠して測定した。すなわち、前記B練りシートを試験片作製用金型を用いて170℃で20分間プレス加硫し、円柱状加硫ゴム試験片(厚さ約12.5mm×直径約29mm)を得た。得られた加硫ゴム試験片を用いて、測定した結果を表2に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
各実施例と比較例との比較により、ポリアミン系加硫剤を用いることにより、その加硫物は優れた圧縮永久歪率を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、エピクロルヒドリン系重合体ゴムに、非鉛系受酸剤、ポリアミン系加硫剤を用いることにより、その加硫物は優れた圧縮永久歪性を示す。従って、その加硫ゴム成形体は、半導電性ローラー、ベルト、ドラム等のOA機器用途として極めて有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピクロルヒドリン系重合体ゴム100重量部に、非鉛系受酸剤を0.5〜30重量部、ポリアミン系加硫剤を0.1〜10重量部を含有することを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
エピクロルヒドリン系重合体ゴムが、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であることを特徴とする請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
ポリアミン系加硫剤が、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンテトラミン、p−フェニレンジアミン、クメンジアミン、エチレンジアミンカーバメート、ヘキサメチレンジアミンカーバメートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のゴム組成物を加硫してなる加硫ゴム成形体。
【請求項5】
請求項4に記載の加硫ゴム成形体であって、JIS K6262に記載の70℃×22時間における圧縮永久歪率が10%以下であることを特徴とする加硫ゴム成形体。
【請求項6】
請求項4または5に記載の加硫ゴム成形体からなり、コピー機、プリンター等の電子写真用プロセスに使用される半導電性ゴムローラーまたはゴムベルト。

【公開番号】特開2008−7597(P2008−7597A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178051(P2006−178051)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】