説明

サラシア属植物の抽出物とフラボノイドを含有する食品

【課題】少量の摂取で、糖吸収抑制と脂肪吸収抑制の両方の効果を有する食品を提供すること。
【解決手段】スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が300μg/ml以下であるサラシア属植物の抽出物とフラボノイドを含有することを特徴とする食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が300μg/ml以下であるサラシア属植物の抽出物およびフラボノイドを含有する食品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、高カロリー食の摂取および過食、または運動不足が原因となる肥満や、血糖値が高めの、いわゆる糖尿病予備軍と呼ばれる人が増えてきている。この予防として、糖吸収抑制や脂肪吸収抑制を目的としたサプリメントが発売されている。また、高血糖抑制や抗糖尿病予防のために、α−グルコシダーゼの作用を阻害し、デンプンやオリゴ糖からブドウ糖の生成を抑制するα−グルコシダーゼ阻害剤も発売されている。
【0003】
肥満の予防のためには、摂取カロリーの規制による過食予防や、定常的な運動によるカロリー消費が必要であるが、毎日の実践は現実的に困難である。また、α−グルコシダーゼ阻害剤は、糖尿病の治療薬としてのほか、過食や運動不足による肥満の解消およびダイエットにも有効である。しかしながら、これらの薬剤(例えば、アカルボース(バイエル社製、商品名Gulcobay(グルコバイ))およびボグリボース(武田薬品社製、商品名ベイスン)等)は入手が困難であり、また、服用した場合に、多糖類の体内への吸収は抑制できるが、ブドウ糖などの単糖類の吸収は抑制できないため、顕著な糖吸収抑制効果は期待できない。また、服用後に、種々の副作用の問題が生じることがある。このため、食物として摂取できる、安全でかつ安価な天然起源の組成物の開発が要望されていた。
【0004】
このような肥満や糖吸収抑制の要求を満足する有効な天然物として、サラシア属植物が存在する。サラシア属植物の根や幹はインドやスリランカの伝統医学アーユルヴェーダにおいて天然薬物として利用されてきた。スリランカではサラシア・レティキュラータの根皮がリュウマチ、淋病、皮膚病の治療に有効であるとともに、初期糖尿病の治療に用いられると伝承されている。インドではサラシア・オブロンガの根が同様の治療に用いられるほか、サラシア・キネンシスも糖尿病の治療に用いるとされている(非特許文献1)。
【0005】
このようにサラシア属植物には糖尿病の予防や初期治療に有効であることが伝承されている。近年ではサラシア属植物に血糖値上昇抑制作用があり、その作用メカニズムがα−グルコシダーゼ活性阻害に基づく糖吸収抑制作用によるものであることが報告されている(非特許文献1)。
【0006】
また、サラシア属抽出成分に含まれ、α−グルコシダーゼ活性阻害作用を有する化合物の特許(特許文献1〜3)や、α−グルコシダーゼ活性阻害作用を基にした抗糖尿病剤としての応用例や特許が見られる(特許文献4〜5)。
【0007】
市販されているサラシアエキス末を用いたサプリメントは、スクラーゼ阻害活性が250μg/ml以下と規格化されているものがほとんどであり、実際にスクラーゼ阻害活性を測定すると、350μg/ml程度のものが多く、有効な量を摂取するためには、錠剤数を増やす必要があった。
【0008】
一錠あたりのサラシアエキス末の配合量を増やし、錠剤数を減らす目的で、サラシアエキス末の高濃度化が望まれていた。
【0009】
また、本発明で用いるフラボノイドを含む茶抽出物中には、ポリフェノール類の一種であるカテキン類が多く含まれることが知られている。このカテキン類には、抗酸化作用、殺菌作用、抗ガン作用、高血圧低下作用、血糖値抑制作用等の多くの生理作用が報告されており、さらには、近年、脂肪燃焼による体脂肪の低減効果についての有効性が報告されている(非特許文献2,3)。
【0010】
高濃度カテキンの長期摂取により、体重や体脂肪(腹部全脂肪面積、内臓脂肪面積)に低減効果が見られることが報告されている。これは、肝臓の細胞中の脂肪燃焼酵素が、高濃度のカテキンにより活性化され、脂質代謝を活発にしてエネルギー消費量を増加させ、体脂肪低減につながると考えられている(非特許文献4-7)。
【0011】
カテキンの摂取は、緑茶等のお茶を飲むことで可能であるが、一杯あたりの含有量が少ないため、所定量の摂取には、茶抽出エキス末を錠剤またはカプセル剤で摂取することが必要であった。
また、茶抽出物中には、カテキン類としてカテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンガレートが含まれ、含有量の多い順に、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、ガロカテキンである。
【0012】
また、本発明で用いるフラボノイドは、概ねフラボノール類、イソフラボン類およびカテキン類に分けられる。このうちの、フラボノール類はポリフェノール類の総称であり、その中でも、特にレスベラトロールには、抗酸化作用、殺菌作用、抗ガン作用、免疫作用、脂肪燃焼等の多くの生理作用が報告されており、さらには、脂肪燃焼に有効なことが確認されている。また、レスベラトロールを添加した高カロリー食を摂取したマウスの延命効果の有効性が報告されている。(非特許文献8,9)
【0013】
レスベラトロールの摂取は、ブドウ抽出物の飲食、または、赤ワイン等を飲むことで可能であるが、一回あたりの含有量が少ないため、所定量の摂取には、多量の赤ワインを飲酒するか、錠剤またはカプセル形態で摂取することが必要であった。
また、ポリフェノール類の中でも、特にケルセチンには、ビタミンCの吸収サポート、抗酸化作用、免疫作用等の生理作用が報告されており、さらには、脂肪吸収抑制に有効なことが確認されている(特許文献6、7)
【0014】
ケルセチンの摂取は、タマネギを食することで可能であるが、通常は外皮までは食用としないので、一回あたりの含有量が非常に少ない。所定量の摂取には、外皮を含んだタマネギを食するか、抽出エキス末を、錠剤またはカプセル形態で摂取することが必要であった。
【0015】
最近、多くの抗肥満および食後血糖値上昇抑制食品が発売されており、糖吸収抑制および脂肪吸収抑制および脂肪燃焼に関しては、多くの特許が出願されている(特許文献5、8-12)。しかしながら、少量の摂取で、糖および脂肪吸収抑制および脂肪燃焼の両方の効果を有する食品はほとんどない。
【0016】
【非特許文献1】FOOD Style 21、第6巻、第5号、第72〜78頁
【特許文献1】特許第3030008号公報
【特許文献2】特開2004−323420
【特許文献3】特開2000−86653
【特許文献4】特開平9−301882号公報
【特許文献5】特許第3261090号公報
【特許文献6】特表2001-524119
【特許文献7】WO01/076580
【特許文献8】特開2005-295991
【特許文献9】特開2006-160710
【特許文献10】特開2006-280236
【特許文献11】特開2007-131620
【非特許文献2】Shimotoyodome A.,et al.,Med.Sci.Sport Exerc.,37,1884-1892,2005
【非特許文献3】Murase T.,et al., Int. J.Obes. Relat. Metab. Disord, 30,561-568,2006
【非特許文献4】Tsuchida T.,Itakura H.,Nakamura H.,Prog. Med.,22,2189-2203,2002
【非特許文献5】Hackett A.M.,et al.,Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet, 8,35-42,1983
【非特許文献6】Murase T.,et al.,Int. J. Obes. Relat. Metab. Disord, 26,1459-1464,2002
【非特許文献7】Ota N.,et al.,J.Health.Sci.,51,233-236,2005
【非特許文献8】Science.275,218(1997)
【非特許文献9】Nature.Nov.16th.(2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このようにサラシア属植物を用いた食品は糖尿病予防など有効な効能を持つが、一粒あたりのスクラーゼ阻害活性が低い(IC50値が大きい)と、摂取必要量が多くなり、摂取者には負担となる。また、カテキン、レスベラトロールの摂取は、緑茶等のお茶、ブドウ抽出物の飲食、または、赤ワイン等を飲むことで可能であるが、一回あたりの含有量が少ないため、所定量の摂取には、多量のお茶、赤ワインを飲酒するか、錠剤またはカプセル形態で摂取することが必要であった。また、同様にケルセチンの摂取は、タマネギの飲食、または、抽出エキス末等を飲むことで可能であるが、一回あたりの含有量が少ないため、所定量の摂取には、多量のタマネギを食するか、抽出エキス末を錠剤またはカプセル形態で摂取することが必要であった。
本発明は、少量の摂取で、糖および脂肪吸収抑制と脂肪燃焼の両方の効果を有する食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が300μg/ml以下であるサラシア属植物の抽出物およびフラボノイドを併用することにより、少量の摂取で、糖吸収が抑制され、脂肪燃焼が活発になり、高カロリー食の摂取および過食、または運動不足が原因となる肥満や、血糖値の上昇抑制を防ぐことができるという注目すべき知見を得て、前記技術的課題を克服した。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1]
スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が300μg/ml以下であるサラシア属植物の抽出物と、カテキン類、フラボノール類、及びイソフラボン類から選択される少なくとも2種を含むフラボノイドと、を含有し、枇杷葉およびキノコキトサン複合多糖体成分を含有しない錠剤またはカプセルの形態である食品。
[2]
カテキン類が茶由来物である[1]に記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
[3]
カテキン類が、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンガレートの中から選ばれる少なくとも一種である[1]又は[2]に記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
[4]
フラボノール類が、ブドウ由来物、ブドウエキス、及びブドウ酒濃縮物の中から選ばれる少なくとも一種である[1]〜[3]のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
[5]
フラボノール類が、レスベラトロールである[1]〜[4]のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
[6]
カテキン類が茶由来物であり、かつフラボノール類がブドウ由来物である[1]〜[5]のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
[7]
フラボノール類が、タマネギ由来物である[1]〜[6]のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
[8]
フラボノール類が、ケルセチンである[1]〜[7]のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
[9]
さらにクロム酵母を含有する[1]〜[8]のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
尚、本発明は上記[1]〜[9]項に係る発明であるが、以下、その他についても参考のため記載した。
1)スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が300μg/ml以下であるサラシア属植物の抽出物とフラボノイドを含有することを特徴とする食品。
2)フラボノイドとして、カテキン類、フラボノール類、及びイソフラボン類から選択されるものを含有することを特徴とする上記1)に記載の食品。
3)カテキン類を成分として含む、茶由来物を含有することを特徴とする上記1)または2)に記載の食品。
4)カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンガレートの中から選ばれる少なくとも一種のカテキン類を含有することを特徴とする上記1)〜3)のいずれかに記載の食品。
5)エピガロカテキンガレートを含有することを特徴とする上記1)〜4)のいずれかに記載の食品。
6)茶抽出物を、0.1〜40質量%含有することを特徴とする上記1)〜5)のいずれかに記載の食品。
7)フラボノール類を成分として含む、ブドウ由来物を含有することを特徴とする上記1)〜6)のいずれかに記載の食品。
8)フラボノール類を成分として含む、ブドウエキスまたはブドウ酒濃縮物を含有することを特徴とする上記1)〜7)のいずれかに記載の食品。
9)レスベラトロールを含有することを特徴とする上記1)〜8)のいずれかに記載の食品。
10)ブドウ抽出物を、0.1〜30質量%含有することを特徴とする上記1)〜9)のいずれかに記載の食品。
11)レスベラトロールを、0.001〜5.0質量%含有することを特徴とする上記1)〜10)のいずれかに記載の食品。
12)フラボノール類を成分として含む、タマネギ由来物を含有することを特徴とする上記1)〜11)のいずれかに記載の食品。
13)ケルセチンを含有することを特徴とする上記1)〜12)のいずれかに記載の食品。
14)ケルセチンを、0.001〜15質量%含有することを特徴とする上記13)のいずれかに記載の食品。
15)クロム酵母を、クロム換算で0.0001〜0.100質量%含有することを特徴とする上記1)〜14)のいずれかに記載の食品。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が300μg/ml以下であるサラシア属植物の抽出物およびフラボノイドを含有する錠剤またはカプセル形態の食品により、摂取者の負担にならない少量での摂取により、効率の良い、糖吸収抑制および脂肪燃焼を実現するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明によれば、スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が300μg/ml以下と酵素活性阻害力の高いサラシア属植物の抽出物と茶抽出物を含有する錠剤またはカプセルを使用することにより、食品として摂取する場合、少量で効果を得られ、摂取者の負担軽減となる。また、本発明のサラシア属植物の抽出物とフラボノイドを含有する錠剤またはカプセルの摂取により、肥満防止および食後血糖値上昇抑制が可能なだけではなく、脂肪代謝促進や脂肪蓄積が軽減され、また、殺菌作用や免疫作用により腸内環境の改善効果も期待できる。
【0021】
本発明のサラシア属植物とは、主としてスリランカやインドに自生するニシキギ科の植物で、より具体的にはサラシア・レティキュラータ、サラシア・オブロンガ、サラシア・プリノイデス、サラシア・キネンシスから選ばれる1種類以上の植物が用いられる。地上部(葉、樹皮、木部等)および地下部(根皮)ともに利用することができる。現地では、根皮が特に糖尿病の治療に有効とされているが、全草に活性が認められる。上記サラシア属植物は、その乾燥粉末、またはその乾燥粉末からの抽出物として使用でき、通常、それらからの抽出物の乾燥粉末の形態で保管され得る。
【0022】
本発明において、サラシア属植物の抽出物は、抽出後の濾液のままで、または濃縮もしくは希釈した状態またはその乾燥粉末の形態で、あるいはそれらの混合物のいずれの形態であってもよい。
前記抽出物の乾燥エキス末は、使用時において、そのまま、あるいは適当な溶媒に溶解して使用することができる。前記溶媒は、抽出時に用いることができる溶媒であって、調製後の薬剤または食品中に残留した場合に人体に悪影響を及ぼさないものであればよく、通常、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90%、好ましくは40〜70%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0023】
本発明ではサラシア属植物の抽出エキス末の経時による変色を改善するため、炭酸カルシウムまたは二酸化ケイ素を錠剤またはカプセル剤にした際の質量の1%以上の量を含有することが好ましい。更に食品あるいは食品添加物として利用可能な低吸湿原料、吸湿剤を用いることができる。好ましくは低吸湿性原料としてセルロース、結晶セルロース、粉末セルロース、微結晶セルロース、乳糖、オリゴ糖、糖アルコール、トレハロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムなどが用いられる。吸湿剤としてはケイ酸塩類、炭酸マグネシウム、フェロシアン化物、多糖類などが用いられる。より好ましくは低吸湿性原料として結晶セルロース、微結晶セルロース、乳糖が用いられる。
【0024】
本発明の粉末、固形剤または液剤に成型するのに必要な化合物、などを適宜包含していて良い。そのような化合物の例としては、エリスリトール、マルチトール、ヒドロキシプロピルセルロース、カオリン、タルクなどが挙げられる。本発明において、錠剤または液剤とするための製剤化、カプセル剤とするためのカプセル内包物の顆粒化、カプセル化、カプセル素材等は公知手段や公知素材が適用できる。
【0025】
本発明の食品は、スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)が300μg/ml以下である。阻害活性がこれより小さくなると消化管からのブドウ糖吸収抑制作用が弱くなり、所定の効果を得るためには摂取する錠数を多くしなければならない。スクラーゼ50%阻害濃度は250μg/ml以下が好ましく、200μg/ml以下が更に好ましい。
スクラーゼ50%阻害濃度(IC50値)は以下の方法で測定する。
【0026】
[実験法1] スクラーゼIC50値の測定
サンプル溶液の準備:チューブに2mg(サラシア属植物の抽出物の乾燥エキス末)のサンプルを量り取り、水2mLを加えてよく懸濁し、1mg/mL濃度のサンプル溶液を作成する。これをそれぞれ0、50、100、250、500μg/mLとなるように水で希釈する。
【0027】
基質液の準備:0.2Mマレイン酸バッファー(pH6.0)にスクロース濃度100mMとなるようにスクロースを溶解し、これを基質液とする。
【0028】
粗酵素液の準備:10mLの生理食塩水に1gのintestinal acetone powder rat(SIGMA社製)を懸濁した後、遠心分離(3,000rpm,4℃,5min)した。得られた上清を分離し、粗酵素液とする。
【0029】
前述の各濃度のサンプル溶液500μLに対し、基質液400μLを添加し、水浴中37℃にて5分間予備加温した。ここにそれぞれ、粗酵素液を100μL添加し、37 ℃にて60分間反応させた。反応終了後、95℃にて2分間加温することで酵素を失活させて反応を停止させた。生成したグルコース濃度を市販のキット・ムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ法(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業(株))を使用して定量を行う。
【0030】
ブランクの準備:前述の各濃度のサンプル溶液250μLに対し、基質液200μL、粗酵素液50μLを添加し、直ちに95℃にて2分間加温することで酵素を熱失活させ、ブランクデータとする。
【0031】
得られた値より検量線を作成し、酵素活性を50%阻害する濃度(IC50値)を求める。
なお、サンプルが液状の場合は、濃度既知の場合は、粉体換算して、未知の場合は、乾固して粉状にして上記実験法1を準用する。本発明において、サンプルが液状の場合のスクラーゼIC50値は、サラシア属植物の抽出物の乾燥エキス末濃度が500μg/mL以上である液状サンプルに対して測定することを意味する。
【0032】
本発明のフラボノイドは、植物の全器官に存在する色素成分の総称であり、主に果実や野菜に含まれ、特に、緑葉や白色野菜、柑橘類の皮の中に配糖体の形で存在する。
本発明において、フラボノイドとは、植物に広く含まれる色素成分の総称で、特に、野菜や果実に多く含まれるフラバン誘導体を意味する。
【0033】
フラボノイドとしては、フラボノール類、イソフラボン類およびカテキン類が好ましい。フラボノール類は、ポリフェノール類として知られている。
フラボノイドは体内に摂取される物質であるが、一般に吸収しにくい。しかしながら、フラボノイドは少量でも有効であり、強力な抗酸化物質であるため、発ガン物質の活性を抑制したり、血行促進作用や抗血栓作用があることが知られている。
【0034】
本発明において、フラボノイドは茶、ブドウ、タマネギなどの各由来物から得ることができる。ここで、由来物とは、生体の少なくとも一部から抽出されるものを意味する。抽出には、例えば、上記サラシア属植物の抽出物を調製する方法が適用され、抽出物の形態も上記と同様のものが可能であり、例えば、抽出後の濾液のままで、または濃縮もしくは希釈した状態またはその乾燥粉末の形態で、あるいはそれらの混合物のいずれの形態であってもよい。
カテキン類を含む茶抽出物は、ツバキ科の常緑樹である茶の木より作製する。茶の木は、インドやスリランカ、東南アジアで栽培されているアッサミカと中国や日本で栽培されているカメリア・シネンシスのどちらも用いられる。抽出には、通常、好ましくは水、アルコール、含水アルコールを用いる。より好ましくは、抽出溶媒として熱水もしくはエタノールあるいは含水エタノールを用いる。前記含水アルコールのアルコール濃度は、30〜90%、好ましくは40〜70%の濃度のものを使用すればよい。乾燥方法は噴霧乾燥、凍結乾燥などが挙げられるが、これに限られるものではない。
【0035】
茶抽出物中には、ポリフェノールやカテキン類などの抗酸化物質を含有する。カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンガレートが含まれていることが好ましく、特に、エピガロカテキンガレートを含有することが好ましい。
本発明の食品は、該茶抽出物を、0.1〜40質量%含有することが好ましく、0.5〜35質量%含有することが更に好ましく、1.0〜30質量%含有することが特に好ましい。
【0036】
また、フラボノイドのひとつであるフラボノール類には、活性酸素を除去し、動脈硬化の抑制や血流改善等の抗酸化作用を示す。フラボノール類の中でも、ポリフェノールのひとつであるレスベラトロールが抗酸化物質として着目されている。レスベラトロールは、スチルベン骨格から構成されており、ブドウの果皮に多く含まれ、そのため、ブドウから作られる赤ワインにも含有されている。
本発明は、該フラボノール類を成分として含む、ブドウエキスまたはブドウ酒濃縮物を含有することが好ましい。
本発明の食品は、ブドウ抽出物を、0.1〜30質量%含有することが好ましく、0.1〜10質量%を含有することが更に好ましい。
【0037】
レスベラトロールは、脂肪を燃焼させる働きがあり、血管系の疾患である動脈硬化防止や、抗ガン作用、また、DNAの細胞分裂による短化を防ぎ、カロリー制限をしたのと同様の細胞延命効果があり、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0038】
本発明の食品におけるレスベラトロールの含有量は、0.0001〜5.00質量%が好ましく、更には、0.001〜2.00質量%が好ましい。
【0039】
また、フラボノール類の中でも、ポリフェノールであるケルセチンが抗酸化物質として着目されている。ケルセチンは、フラバン構造を有しており、タマネギの外皮に多く含まれる。
【0040】
ケルセチンは、ビタミンCの吸収サポート、抗酸化作用、免疫作用等の生理作用が報告されており、さらには、脂肪吸収抑制に有効であることがわかっており、生活習慣病予防素材として優れた効果を持つことがわかっている。
【0041】
本発明の食品におけるケルセチンの含有量は、0.001〜15質量%が好ましく、更には、0.05〜10質量%が好ましく、更には、0.1〜5.0質量%が好ましい。
【0042】
本発明の食品には、クロムを含有することができる。クロムは血糖値の上昇を調整するホルモンであるインスリンの働きを活性化し、糖質の代謝を良くし、脂肪の蓄積を抑制する。また、糖尿病を予防し、血液中の中性脂肪やコレステロールの値を正常にすることが知られている。
【0043】
クロムは、通常、クロム酵母の形で摂取するが、単独で摂取するよりも、糖吸収抑制作用および脂肪燃焼作用がある素材と併用することで、より大きな効果を生み出すことが可能である。
【0044】
本発明の食品は、クロム酵母を、クロム換算で0.0001〜0.100質量%含有することが好ましく、0.001〜0.050質量%含有することが更に好ましく、0.001〜0.025質量%含有することが特に好ましい。
【実施例】
【0045】
以下に実施例を用いて本発明について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例4、6、9、10は、参考例4、6、9、10とそれぞれ読み替えるものとする。
【0046】
(サラシア属植物抽出物の作製)
サラシア・レチキュラータとサラシア・オブロンガの根及び幹の部分を粉砕後、熱水抽出工程を経て得られた液をスプレー乾燥し、サラシアエキス末を得た。このサラシアエキス末を用いて [実験法1]記載の方法でスクラーゼIC50値を測定したところ78μg/mlであった。
【0047】
(茶抽出物の作製)
日本産の茶の葉の部分を摘み取り、乾燥、粉砕後、熱水抽出工程を経て得られた液をスプレー乾燥し、茶抽出物を得た。
【0048】
(ブドウ抽出物の作製)
ブドウ科の果実の部分を摘み取り、果皮および種子を分離し、含水エタノール抽出工程を経て得られた液をスプレー乾燥し、レスベラトロールを含有するブドウ由来物を得た。
【0049】
(タマネギ外皮抽出物の作製)
タマネギの外皮の部分を集め、含水エタノール抽出工程を経て得られた液をスプレー乾燥し、ケルセチンを含有するタマネギ由来抽出エキス末を得た。
【0050】
(実施例1〜11、比較例1〜6)
(サラシアエキス末、および茶抽出物、ブドウ抽出物、タマネギ外皮抽出物を使用した錠剤の作成)
表1に示す配合により、錠剤101〜111(実施例)及び錠剤111〜117(比較例)を作成しシェラックコーティングを施したサプリメントを作成した。
【0051】
(錠剤の保存後の変色)
上記作製した錠剤を30℃75%で1週間保存し、錠剤表面の変色を調べたところ、比較例1、3、及び6は変色が大きかったが、他の例では変色はほとんど見られなかった。
【0052】
(摂取後の体重変化および体脂肪率変化)
上記作製したサプリメントを、1日4錠ずつ、4週間摂取し、摂取前後の体重および体脂肪率並びにコレステロール値の変化を測定した。また、食後の血糖値の変化についても測定した。
その結果も表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
本発明の食品は、肥満、食後血糖値の上昇および脂肪抑制に有効なものであることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクラーゼの50%阻害濃度(IC50値)が300μg/ml以下であるサラシア属植物の抽出物と、カテキン類、フラボノール類、及びイソフラボン類から選択される少なくとも2種を含むフラボノイドと、を含有し、枇杷葉およびキノコキトサン複合多糖体成分を含有しない錠剤またはカプセルの形態である食品。
【請求項2】
カテキン類が茶由来物である請求項1に記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
【請求項3】
カテキン類が、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレートまたはエピガロカテキンガレートの中から選ばれる少なくとも一種である請求項1又は2に記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
【請求項4】
フラボノール類が、ブドウ由来物、ブドウエキス、及びブドウ酒濃縮物の中から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
【請求項5】
フラボノール類が、レスベラトロールである請求項1〜4のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
【請求項6】
カテキン類が茶由来物であり、かつフラボノール類がブドウ由来物である請求項1〜5のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
【請求項7】
フラボノール類が、タマネギ由来物である請求項1〜6のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
【請求項8】
フラボノール類が、ケルセチンである請求項1〜7のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。
【請求項9】
さらにクロム酵母を含有する請求項1〜8のいずれかに記載の錠剤またはカプセルの形態である食品。

【公開番号】特開2013−27403(P2013−27403A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235012(P2012−235012)
【出願日】平成24年10月24日(2012.10.24)
【分割の表示】特願2007−256732(P2007−256732)の分割
【原出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】