説明

サンプル保管用シート

【課題】印刷外観・印刷耐久性に優れ、サンプルに含まれる液体成分の含浸による印刷面の汚染がなく、サンプリング時のサンプルの滑り落ちがなく、構成・製法が簡素で、かつ、サンプル挿入時の袋の開口が容易でサンプリング作業の容易性が向上した、トレーサビリティシステムに好適なサンプル保管用袋の提供。
【解決手段】ポリオレフィンを主成分とするシートA(1)と、シートB(2)との積層体の外周端部(3)を、袋の開口部(4)となる未接合部を一部に残して、接合してなる袋状のサンプル保管用シートであって、前記シートA(1)およびシートB(2)の少なくとも一方に、開口部の外周(5)と交差し、かつ袋の外側に向かって凸となる山折りの折り目(6)が設けられている、サンプル保管用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレーサビリティシステムに用いることができるサンプル保管用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
食品の安全性や品質を管理するため、食品の生産、流通等の履歴を追跡できるシステム、いわゆるトレーサビリティシステムが用いられる。狂牛病対策に用いられるトレーサビリティシステムとしては、牛肉の流通前に肉片サンプルを由来動物の識別番号等を付して保管し、事後に該サンプルをDNA鑑定の照合用に用いて同一性を確認することで、牛肉の生産、流通等の履歴を追跡できるシステムが例示される。
【0003】
肉片サンプルの保管のためのサンプルホルダーとしては、特許文献1に、紙である基礎シートの上に透明なポリプロピレン膜であるカバーシートがヒンジ動作で固定され、該カバーシートの基礎シートに対向する面に粘着剤を介して裏貼シートが取り外し可能に固定された構成のものが開示されている。該サンプルホルダーは、使用に際して、カバーシートの裏貼シートを剥がして粘着剤を露出し、サンプルを置いた基礎シート上にカバーシートを接着してサンプルを閉じ込めるものである。また、該サンプルホルダーは、基礎シートのサンプルを置く面と反対の面に、サンプルを識別するためのバーコード等が印刷される。
【0004】
しかし、上記特許文献1記載のサンプルホルダーは、バーコード等を印刷する基礎シートが紙であるため印刷外観が悪いという問題があり、紙にワックス系インクで印刷した場合は印刷面を擦ると印刷情報が消えてしまい、印刷耐久性が悪いという問題がある。また、肉片サンプル等のような肉汁、血液等の液体成分を含むサンプルの場合、紙である基礎シートにサンプルを置くと基礎シートの反対の面である印刷面に液体成分が含浸し、外観が悪く、かつ印刷情報が読み難くなるという問題がある。さらに、非粘着の基礎シートにサンプルを置くので、サンプルが滑り易く、カバーシートを接着してサンプルを閉じ込めるまで基礎シート上にサンプルを保持することが難しく、サンプリング作業が困難であるという問題がある。またさらに、構成及び製法が複雑で、コスト高となる問題がある。
本発明者らは、上記従来のサンプルホルダーの問題点を解消するために、ポリオレフィンを主成分とするシートを用いた特定の構造を有する袋状のサンプル保管用シートを提案している(特願2003−431584号、特願2003−431587号)。
本発明者らは、サンプリング作業の容易性をより向上させるためサンプルを挿入する際の袋の開口を容易にすることに着目した。
【特許文献1】特表2003−508770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、トレーサビリティシステムに用いることができるサンプル保管用シートであって、上記従来の問題点が改善され、しかも、サンプルを挿入する際の袋の開口が容易であり、その結果サンプリング作業の容易性が向上したサンプル保管用シートの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、以下の構成を採用した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]ポリオレフィンを主成分とするシートAと、シートBとの積層体の外周端部を、袋の開口部となる未接合部を一部に残して、接合してなる袋状のサンプル保管用シートであって、
前記シートAおよびシートBの少なくとも一方に、開口部の外周と交差し、かつ袋の外側に向かって凸となる山折りの折り目が設けられている、サンプル保管用シート。
[2]上記シートAおよびシートBの少なくとも一方に設けられている山折りの折り目が、開口部の外周上の2点を起点とし、かつ袋の底部の1点に至る2本の線分である、上記[1]記載のサンプル保管用シート。
[3]上記シートAおよびシートBのうち山折りの折り目が設けられているシートに、さらに、開口部の外周と交差し、かつ袋の内側に向かって凸となる谷折りの折り目が設けられている、上記[1]記載のサンプル保管用シート。
[4]谷折りの折り目が、開口部の外周上の2点を起点とし、かつ袋の底部の1点に至る2本の線分であり、かつ山折りの折り目が、開口部の外周上の前記谷折りの折り目の2点の起点の間の点を起点とし、かつ前記袋の底部の1点に至る1本の線分である、上記[3]記載のサンプル保管用シート。
【0007】
本明細書中、シートAとはポリオレフィンを主成分とするシートを意味し、シートBとは特に断らない場合には、材質が限定されないシートを意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サンプルを挿入する際の袋の開口が容易であり、その結果サンプリング作業の容易性が向上した、トレーサビリティシステムに用いることができるサンプル保管用シートを提供することができる。加えて、本発明のサンプル保管用シートは、印刷面の印刷外観及び印刷耐久性に優れ、サンプルに含まれる液体成分の含浸による印刷面の汚染がなく、サンプリングの際にサンプルがシートから滑り落ちるような欠点がなく、構成及び製法が簡素である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を図を参照してより詳細に説明する。
図1〜5はそれぞれ本発明のサンプル保管用シートの一例を示す斜視図である。
本発明のサンプル保管用シートは、図1〜5に示されるように、ポリオレフィンを主成分とするシートA(1)と、シートB(2)との積層体の外周端部(3)を、袋の開口部(4)となる未接合部を一部に残して、接合してなる袋状のサンプル保管用シートであって、前記シートA(1)およびシートB(2)の少なくとも一方に、開口部の外周(5)と交差し、かつ袋の外側に向かって凸となる山折りの折り目(6)が設けられていることを特徴としている。
【0010】
本発明のサンプル保管用シートは、シートAおよびシートBの少なくとも一方に設けられている、上記山折りの折り目が、サンプルを袋に挿入する際の袋の開口を容易にするため、容易にサンプリング作業を行うことができる。
また、本発明のサンプル保管用シートは、シートAがポリオレフィンを主成分とするシートであることから、該シートの外面を印刷面とすることで、従来の紙を用いることによる印刷外観及び印刷耐久性が悪いという問題、及びサンプルに含まれる液体成分の含浸による印刷面が汚染するという問題を解消でき、しかも、袋状のサンプル保管用シートであるので従来のようにサンプルが閉じ込めるまでに滑り落ちることがなく容易にサンプリング作業を行うことができる。
【0011】
本発明のサンプル保管用シートにおいて、山折りの折り目は、シートAおよびシートBの少なくとも一方に設けられていればよく、例えば、図2に構成の一例を示すように、シートA(1)に山折りの折り目(6)が設けられており、シートB(2)には折り目が設けられていないものであってもよい。袋の開口の容易性の点からは、シートAおよびシートBの両方に山折りの折り目が設けられていることが好ましい。
山折りの折り目の線分の長さは、開口部の外周と交差する点(例えば図1のCで示す)を起点とし、袋の外縁まで延長した線分全体であってもよいが、少なくとも当該線分の70%程度以上であればよく、必ずしも線分全体でなくてもよい。
また、山折りの折り目の本数は、一枚のシート(シートA又はシートB)当たり通常1〜5本、好ましくは1〜3本である。
また、山折りの折り目が開口部の外周と交差する角度(図1中のθ1)は、特に限定されないが、通常60〜120°、好ましくは75〜105°、特に好ましくは90°である。
山折りの折り目が開口部の外周と交差する位置は、特に限定されないが、例えば、シートA、シートBのそれぞれについて、山折りの折り目が1本の場合は、図1に構成の一例を示すように、開口部の外周を構成するシートAの辺(5a)、開口部の外周を構成するシートBの辺(5b)をそれぞれ略2等分する位置で交差するのが好ましく、山折りの折り目が2本の場合は、図3に構成の一例を示すように、開口部の外周を構成するシートAの辺(5a)、開口部の外周を構成するシートBの辺(5b)をそれぞれ略3等分する2点の位置で交差するのが好ましい。
【0012】
本発明のサンプル保管用シートにおいて、シートAおよびシートBの少なくとも一方に設けられている山折りの折り目は、図4に構成の一例を示すように、開口部の外周(5)上の2点(図4中、符号Cで示す。)を起点とし、かつ袋の底部(8)の1点(図4中、符号Dで示す。)に至る2本の線分であることが好ましい。
【0013】
本発明のサンプル保管用シートにおいて、シートAおよびシートBのうち山折りの折り目が設けられているシートに、さらに、例えば図5のように、開口部の外周(5)と交差し、かつ袋の内側に向かって凸となる谷折りの折り目(7)が設けられていてもよい。
【0014】
谷折りの折り目の線分の長さは、開口部の外周と交差する点(例えば図5のEで示す)を起点とし、袋の外縁まで延長した線分全体であってもよいが、少なくとも当該線分の70%程度以上であればよく、必ずしも線分全体でなくてもよい。
谷折りの折り目の本数は、一枚のシート(シートA又はシートB)当たり通常2本である。
谷折りの折り目が開口部の外周と交差する角度(図5中のθ2)は、特に限定されないが、通常30〜90°、好ましくは45〜75°である。
谷折りの折り目が開口部の外周と交差する位置は、特に限定されないが、例えば、谷折りの折り目の本数が2本である場合、図5に一例を示すように2本の谷折りの折り目(7)が開口部の外周(5)と交差する2点(図5のEで示す)が、山折りの折り目(6)が開口部の外周(5)と交差する点(図5のCで示す)を挟んで位置することが好ましい。特に、谷折りの折り目は、例えば図5に示すように、開口部の外周を構成するシートAの辺(5a)、開口部の外周を構成するシートBの辺(5b)の、それぞれ両端部(図5中、符号Eで示す。)で交差することが好ましい。なお、図5のサンプル保管用シートは、シートAとシートBの両方に設けられている谷折りの折り目は図5に現れていない。
【0015】
本発明のサンプル保管用シートにおいて、図5に構成の一例を示すように、谷折りの折り目(7)が、開口部の外周(5)上の2点(図5のEで示す)を起点とし、かつ袋の底部(8)の1点(図5のDで示す)に至る2本の線分であり、かつ山折りの折り目(6)が、開口部の外周(5)上の前記谷折りの折り目(7)の2点の起点(図5のEで示す)の間の点(図5のCで示す)を起点とし、かつ前記袋の底部(8)の1点(図5のDで示す)に至る1本の線分であることが好ましい。
【0016】
本発明のサンプル保管用シートは、例えば、シートAおよびシートBの少なくとも一方に、前述の山折りの折り目、所望により前述の谷折りの折り目を、手によるシートの折り曲げにより、または、公知のプラスチックシート用の折り目線付与装置を用いて付与し、該シートAと、シートBとを積層し、積層体の外周端部を袋の開口部となる未接合部を一部に残して、接着剤、ヒートシール等により接合して製造することができる。なお、山折りまたは谷折りの折り目は、シートAとシートBを接合して袋状にした後に設けてもよい。
【0017】
本発明において、シートAとシートBを接合する方法は特に限定されないが、例えば、接着剤による接合やヒートシールによる接合等が挙げられる。
本発明において、接合に用いる接着剤は、特に限定されず、種々の接着剤が使用可能であり、例えば、アクリル系、エポキシ系、合成ゴム系、ウレタン系、天然ゴム系、EVA系、メラミン系、ポリアミド系等の接着剤が挙げられる。中でも、EVA系接着剤のごときホットメルト系接着剤、アクリル系接着剤やゴム系接着剤のごとき感圧性接着剤が好ましい。
【0018】
本発明において、ポリオレフィンを主成分とするシートAとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、これらの積層フィルム(例えば、ポリエチレンフィルム/接着剤層/ポリプロピレンフィルム/接着剤層/ポリエチレンフィルムの積層構造からなる積層フィルム等)、ポリエチレンフィルムと紙をラミネートしたもの、ポリエチレンフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)をラミネートしたもの、ポリエチレンフィルムとPETフィルムと紙をラミネートしたもの等のポリオレフィンフィルムを少なくとも含む積層シート等が挙げられる。このうち、ポリエチレンフィルムとPETフィルムと紙をラミネートした積層フィルムは、強度、加工性の点で特に好ましいものである。また、後述のポリオレフィンを主成分とするインクの転写性の観点からは、ポリエチレンフィルム、表層がポリエチレンの積層フィルム(例えば、ポリエチレンフィルム/接着剤層/ポリプロピレンフィルム/接着剤層/ポリエチレンフィルムの積層構造からなる積層フィルム等)等が好ましい。本発明において、シートAの厚みは、好ましくは50〜200μm、より好ましくは80〜150μmであり、シートの厚みが200μmを超えると、袋が必要以上にかさばったり、密封(シール)後に、開封しずらくなる傾向となる。また、シートの厚みが50μm未満の場合、袋の開口部がスムーズに開きにくくなったり、袋が破損しやすい傾向となる。原料であるポリオレフィンの粘度平均分子量は、好ましくは5000〜600万、より好ましくは10,000〜150万である。粘度平均分子量が600万を超えると、フィルム化自体が困難であり、また、後述のポリオレフィンを主成分とするインクの定着性が低下する傾向となる。粘度平均分子量が5000未満であると、フィルム自体の耐熱性や強度が不足する。シートAは、本発明の効果を阻害しない限り他の添加物、例えば、顔料、補強基材、酸化防止剤、老化防止剤等を含有してもよい。シートAに含有してもよい添加物の含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して、通常50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
【0019】
本発明において、シートBは、特に限定されず、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、これらの積層フィルム(例えば、ポリエチレンフィルム/接着剤層/ポリプロピレンフィルム/接着剤層/ポリエチレンフィルムの積層構造からなる積層フィルム等)、ポリエチレンフィルムとPETフィルムとを接着剤を介して積層した積層フィルム(ポリエチレンフィルムとPETフィルムを貼り合せたもの)、紙、紙とポリエチレンフィルムを貼り合せたもの等が挙げられる。シートAとシートBとをヒートシールにより接合する場合は、シートBは上記シートAにヒートシール可能なシートを用いる。ヒートシール可能なシートとしては、例えば、シートAについて例示したものと同様のものを用いることができ、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、これらの積層フィルム(例えば、ポリエチレンフィルム/接着剤層/ポリプロピレンフィルム/接着剤層/ポリエチレンフィルムの積層構造からなる積層フィルム等)、ポリエチレンフィルムと紙をラミネートしたもの、ポリエチレンフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)をラミネートしたもの、ポリエチレンフィルムとPETフィルムと紙をラミネートしたもの等のポリオレフィンフィルムを少なくとも含む積層シート等が挙げられる。シートBの厚みは、特に限定はされないが、シートAと同様の理由から、前述のシートAの好適厚みと同様の厚みにするのが好ましい。
【0020】
本発明において、シートAとシートBは、1枚のポリオレフィンを主成分とするシートの折り返しによるものであってもよく、該ポリオレフィンを主成分とするシートとしては、例えば、前述のシートAについて例示したものと同様のものが挙げられる。
【0021】
本発明において、シートA及びシートBは、それぞれ、中実のシートでも多孔質のシートでもよいが、少なくとも一方のシートが多孔質シート(好適にはシートA及びシートBの少なくとも一方がポリオレフィン(例えば、ポリエチレン等)を主成分とする多孔質シート)であると、袋に入れたサンプルに含まれる液体成分中の水分を外に逃がすことができる点で有利である。すなわち、サンプルを閉じ込めたサンプル保管用シートごと、加熱処理(例えば50〜100℃、5分〜24時間)に付すことにより、シート面を通してサンプルに含まれる液体成分中の水分を外に逃がすことができる。本明細書において「多孔質シート」とは、シートの表面から裏面まで貫通する連通孔を有するシートであり、例えば、ポリオレフィンを主成分とする多孔質シートの場合、その透気度(試験方法:JIS−P−8117)は、10〜100,000sec/100ccが好ましく、50〜10,000sec/100ccがより好ましい。ポリオレフィンを主成分とする多孔質シートの原料であるポリオレフィンの粘度平均分子量は、好ましくは5000〜600万であり、より好ましくは10,000〜200万である。
【0022】
シートA及び/又はシートBに用いられるポリオレフィンを主成分とする多孔質シートとしては、例えば、特開昭63−17941号公報、特開昭63−295649号公報等に記載のポリオレフィンを主成分とする多孔質フィルムや市販品(ブレスロン、日東電工(株)社製)等が挙げられる。
【0023】
本発明において、シートAは、印刷情報の視認性やバーコードの読み取り性の観点から、白色であることが好ましい。白色であるシートAは、例えば、白色顔料(例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、天然クレー、炭酸マグネシウム等)を含有させて製造できる。白色顔料の含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して、通常1〜50重量部、好ましくは5〜30重量部である。
【0024】
本発明のサンプル保管用シートは、シートAの袋の外面となる面に好適に印字、バーコード、図柄等の印刷をすることができる。シートAはポリオレフィンを主成分とするシートであるので、本発明のサンプル保管用シートは、印刷面の印刷外観及び印刷耐久性に優れ、サンプルに含まれる液体成分の含浸による印刷面の汚染がない。印刷に用いるインクは、シートAとの密着性の観点から、ポリオレフィンを主成分とするインクが好ましい。ポリオレフィンを主成分とするインクとしては、ポリエチレンインク、ポリプロピレンインク等が挙げられ、転写性の観点から、ポリエチレンインクが好ましい。
シートAがポリエチレンフィルムまたは表層がポリエチレン層からなる積層フィルムであって、印刷に用いるインクがポリエチレンインクである場合、転写性、密着性、印刷の耐久性等において特に好ましい結果が得られる。
【0025】
上記のポリオレフィンを主成分とするインクは、ポリオレフィンと1種又は2種以上の着色剤とを含有する。原料であるポリオレフィンの粘度平均分子量は、通常5000〜30万であり、好ましくは20万以下である。着色剤としては、例えば有機系又は無機系の顔料、カーボン、金属粉末等の適宜なものを用いることができる。着色剤の含有量は、ポリオレフィン100重量部に対して、通常50〜500重量部、好ましくは100〜300重量部である。インクは、本発明の効果を阻害しない限り他の添加物、例えば溶媒、紫外線吸収剤、分散剤、界面活性剤等を含有していてもよい。
【0026】
ポリオレフィンを主成分とするインクは、自体公知の方法で製造することができ、例えば、1種又は2種以上の着色剤とポリオレフィンをロールミル等の適宜な混練機にて加熱混合するか、必要に応じてポリオレフィン溶解性の溶媒を用いて例えばロールミルやポットミル等の適宜な混練機で混合してペースト状等の流動物として製造することができる。
【0027】
本発明のサンプル保管用シートの、シートAの袋の外面となる面の印刷は、例えば、熱転写印刷、グラビア印刷、凸版印刷、スクリーン印刷、ドットインパクト等が挙げられ、現場発行とポリオレフィン同士の強固な熱融着により印刷の耐久性が得られることから、熱転写印刷が好ましい。
【0028】
本発明において、「サンプル保管用シート」とは、単一のサンプル保管用シートを意味するだけでなく、複数のサンプル保管用シートが連続的に繋がって、各隣り合うサンプル保管用シートの間にミシン目線が設けられた、サンプル保管用シートの連続体も包含する。該連続体では、実際にサンプルを収容する作業の前までは、複数の保管用シートが繋がっているので取り扱いが煩雑にならない。また、該連続体であれば、実際にサンプルを収容する際、サンプル数に応じて、各隣り合うサンプル保管用シートの間のミシン目線を指先等で切断することで必要数の保管用シートを切り出し、サンプルの保管作業を行うことができる。従って、完成したサンプル保管品及び未使用のサンプル保管用シートの管理を容易に行える。なお、当該連続体に設けるミシン目線は、サンプル保管用シートを貫通して設けられることが好ましく、また、分離を容易にするため、ミシン目線の端部に、切り込みを設けてもよい。
【0029】
本発明のサンプル保管用シートの外形は特に限定されず、例えば、方形(正方形又は長方形)等が挙げられる。本発明のサンプル保管用シートのサイズは、サンプルを閉じ込めることができ、また、表面に印刷するのに適したサイズであれば特に限定されないが、例えば一辺が20〜500mm、好ましくは一辺が50〜200mmのサイズが挙げられる。
【0030】
本発明のサンプル保管用シートに適用するサンプルは、特に限定されず、例えば食品サンプル(例えば牛肉、ブタ肉、鳥肉、加工品、野菜等)、動植物の研究用サンプル等が挙げられる。本発明のサンプル保管用シートは、サンプルを挿入する際の袋の開口が容易であるため容易にサンプリング作業を行うことができ、印刷面の印刷外観及び印刷耐久性に優れ、サンプルに含まれる液体成分の含浸による印刷面の汚染がなく、サンプリングの際にサンプルがシートから滑り落ちるような欠点がなく、かつ、構成及び製法が簡素であるので、トレーサビリティシステムにおける上記のようなサンプルの保管に好適に用いることができる。
【0031】
本発明のサンプル保管用シートによれば、例えば、その開口部からサンプルを挿入後、開口部を接着剤、ヒートシール等により封鎖することで、サンプルを保管する。サンプル保管用袋に閉じ込めたサンプルは、サンプルの分析等の際に、袋を破る等して取り出すことができる。
【実施例】
【0032】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものではない。
実施例1
厚さ100μmの粘度平均分子量が約50万の高密度ポリエチレン製シートからなるシートA(1)と、坪量約90g/mの上質紙に厚さ30μmの粘度平均分子量が約10万の低密度ポリエチレン層を押出しラミネートして得られたシートからなるシートB(2)を用意し、図1示すように、袋の開口部の外周を構成するシートA(1)の辺およびシートB(2)の辺(5a、5b)を略2等分する点を起点とし、かつ袋の底部(8)となる辺を略2等分する点に至る1本の線分であって、袋の外側に向かって凸となる山折りの折り目(6)を、シートを手で折り曲げることにより設けた。そして、該折り目を付したシートA(1)とシートB(2)とを積層し、該積層体の外周端部(3)を袋の開口部(4)となる未接合部を一部に残してヒートシールにより接合して袋状とすることで、図1に示す外観の本発明のサンプル保管用シートを製造した。
【0033】
実施例2
図2示すように、厚さ10μmの粘度平均分子量が約10万の低密度ポリエチレンフィルム/厚さ10μmのポリオレフィン系接着剤層/厚さ70μmのポリプロピレンフィルム/厚さ10μmのポリオレフィン系接着剤層/厚さ10μmの粘度平均分子量が約10万の低密度ポリエチレンフィルムの積層構造のシートからなるシートA(1)に対し、袋の開口部の外周を構成する該シートAの辺(5a)を略2等分する点を起点とし、かつ袋の底部(8)となる辺を略2等分する点に至る1本の線分であって、袋の外側に向かって凸となる山折りの折り目(6)を、シートを手で折り曲げることで形成した。該折り目を付したシートA(1)と、実施例1と同じシートB(2)を積層し、該積層体の外周端部(3)を袋の開口部(4)となる未接合部を一部に残してヒートシールにより接合して袋状とすることにより、図2に示す外観の本発明のサンプル保管用シートを製造した。
【0034】
実施例3
実施例1と同じシートA(1)及びシートB(2)を用意し、これらのシートに、図3に示すように、袋の開口部の外周を構成するシートAの辺およびシートBの辺(5a、5b)を略3等分する2点を起点とし、かつ袋の底部(8)となる辺を略3等分する2点に至る2本の平行な線分であって、袋の外側に向かって凸となる山折りの折り目(6)を、シートを手で折り曲げることで設けた。該折り目を付したシートA(1)とシートB(2)とを、図3に示すように、積層し、該積層体の外周端部(3)を袋の開口部(4)となる未接合部を一部に残してヒートシールにより接合して袋状として、本発明のサンプル保管用シートを製造した。
【0035】
実施例4
実施例2と同じシートA(1)及びシートB(2)を用意し、これらのシートに、図4に示すように、袋の開口部の外周を構成するシートAの辺およびシートBの辺(5a、5b)を略3等分する2点(図4のCで示す)を起点とし、かつ袋の底部(8)となる辺を略2等分する点(図4のDで示す)に至る2本の線分であって、袋の外側に向かって凸となる山折りの折り目(6)を、シートを手で折り曲げることで設けた。該折り目を付したシートA(1)及びシートB(2)を積層し、該積層体の外周端部(3)を袋の開口部(4)となる未接合部を一部に残してヒートシールにより接合して袋状とすることにより、図4に示す外観の本発明のサンプル保管用シートを製造した。
【0036】
実施例5
実施例1と同じシートA(1)及びシートB(2)を用意し、これらのシートに、図5に示すように、袋の開口部の外周を構成するシートAの辺およびシートBの辺(5a、5b)の両端部(図5のEで示す)を起点とし、かつ袋の底部(8)となる辺を略2等分する点(図5のDで示す)に至る2本の線分であって、袋の内側に向かって凸となる谷折りの折り目(7)を、シートを手で折り曲げることで設けた。なお、シートBの谷折りの折り目は図5に現れていない。さらに、該谷折りの折り目を付したシートA(1)とシートB(2)に、それぞれ、前記谷折りの折り目の2点の起点(図5のEで示す)の間の点であって、袋の開口部の外周を構成するシートAの辺およびシートBの辺(5a、5b)を略2等分する点(図5のCで示す)を起点とし、かつ前記袋の底部(8)の1点(図5のDで示す)に至る1本の線分であって、袋の外側に向かって凸となる山折りの折り目(6)を、シートを手で折り曲げることで設けた。該谷折りおよび山折りの折り目加工を付したシートA(1)とシートB(2)とを、図5に示すように積層し、該積層体の外周端部(3)を袋の開口部(4)となる未接合部を一部に残してヒートシールにより接合して袋状として、本発明のサンプル保管用シートを製造した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明のサンプル保管用シートの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、本発明のサンプル保管用シートの一例を示す斜視図である。
【図3】図3は、本発明のサンプル保管用シートの一例を示す斜視図である。
【図4】図4は、本発明のサンプル保管用シートの一例を示す斜視図である。
【図5】図5は、本発明のサンプル保管用シートの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 シートA
2 シートB
3 外周端部
4 開口部
5 開口部の外周
5a 開口部の外周を構成するシートAの辺
5b 開口部の外周を構成するシートBの辺
6 山折りの折り目
7 谷折りの折り目
8 袋の底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを主成分とするシートAと、シートBとの積層体の外周端部を、袋の開口部となる未接合部を一部に残して、接合してなる袋状のサンプル保管用シートであって、
前記シートAおよびシートBの少なくとも一方に、開口部の外周と交差し、かつ袋の外側に向かって凸となる山折りの折り目が設けられている、サンプル保管用シート。
【請求項2】
上記シートAおよびシートBの少なくとも一方に設けられている山折りの折り目が、開口部の外周上の2点を起点とし、かつ袋の底部の1点に至る2本の線分である、請求項1記載のサンプル保管用シート。
【請求項3】
上記シートAおよびシートBのうち山折りの折り目が設けられているシートに、さらに、開口部の外周と交差し、かつ袋の内側に向かって凸となる谷折りの折り目が設けられている、請求項1記載のサンプル保管用シート。
【請求項4】
谷折りの折り目が、開口部の外周上の2点を起点とし、かつ袋の底部の1点に至る2本の線分であり、かつ山折りの折り目が、開口部の外周上の前記谷折りの折り目の2点の起点の間の点を起点とし、かつ前記袋の底部の1点に至る1本の線分である、請求項3記載のサンプル保管用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−317415(P2006−317415A)
【公開日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143253(P2005−143253)
【出願日】平成17年5月16日(2005.5.16)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】