説明

シクロメタル化四座配位Pt(II)錯体

【課題】OLEDデバイスに組み込むのに適した化合物を提供する。
【解決手段】式Iの新規な燐光四座配位白金(II)化合物を提供する。これらの化合物は、イソイミダゾール部分を含み、任意選択により、ねじれたアリール(twisted aryl)でさらに置換されていてもよい。これらの化合物はOLEDに有利に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2011年8月31日に出願された米国仮出願第61/529,634号に基づく優先権を主張し、その開示は、その全体を参照により本明細書に明示して援用する。
【0002】
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学・企業研究契約に関わる1つ以上の以下の団体:ミシガン大学評議員会、プリンストン大学、サザン・カリフォルニア大学、及びユニバーサル・ディスプレイ・コーポレーションにより、1つ以上の団体によって、1つ以上の団体のために、及び/又は1つ以上の団体と関係して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載された発明がなされた日及びそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0003】
本発明は、OLEDデバイスに組み込むのに適した化合物に関するものであり、特にその化合物には四座配位白金錯体が含まれる。
【背景技術】
【0004】
有機物質を用いるオプトエレクトロニクスデバイスは、多くの理由によりますます望ましいものとなってきている。そのようなデバイスを作るために用いられる多くの物質はかなり安価であり、そのため有機オプトエレクトロニクスデバイスは、無機デバイスに対してコスト上の優位性について潜在力をもっている。加えて、有機物質固有の特性、例えばそれらの柔軟性は、それらを柔軟な基材上への製作などの特定用途に非常に適したものにしうる。有機オプトエレクトロニクスデバイスの例には、有機発光デバイス(OLED)、有機光トランジスタ、有機光電池、及び有機光検出器が含まれる。OLEDについては、有機物質は、従来の物質に対して性能上優位性をもちうる。例えば、有機発光層が発光する波長は、一般に、適切なドーパントで容易に調節することができる。
【0005】
OLEDは、そのデバイスを横切って電圧を印加した場合に光を発する薄い有機膜(有機フィルム)を用いる。OLEDは、フラットパネルディスプレイ、照明、及びバックライトなどの用途で用いるためのますます興味ある技術となってきている。いくつかのOLEDの物質と構成が、米国特許第5,844,363号明細書、同6,303,238号明細書、及び同5,707,745号明細書に記載されており、これらの明細書はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0006】
燐光発光分子の一つの用途はフルカラーディスプレイである。そのようなディスプレイのための工業規格は、「飽和」色といわれる特定の色を発光するように適合された画素(ピクセル)を要求している。特に、これらの規格は、飽和の赤、緑、及び青の画素を必要としている。色はCIE座標を用いて測定でき、CIE座標は当分野で周知である。
【0007】
緑色発光分子の一例は、Ir(ppy)と表されるトリス(2-フェニルピリジン)イリジウムであり、これは以下の式Iの構造を有する。
【化1】

【0008】
この式及び本明細書の後の図で、窒素から金属(ここではIr)への供与結合は直線で表す。
【0009】
本明細書で用いるように、「有機」の用語は、有機オプトエレクトロニクスデバイスを製作するために用いることができるポリマー物質並びに小分子有機物質を包含する。「小分子(small molecule)」とは、ポリマーではない任意の有機物質をいい、「小分子」は、実際は非常に大きくてもよい。小分子はいくつかの状況では繰り返し単位を含んでもよい。例えば、置換基として長鎖アルキル基を用いることは、分子を「小分子」の群から排除しない。小分子は、例えばポリマー主鎖上のペンダント基として、あるいは主鎖の一部として、ポリマー中に組み込まれてもよい。小分子は、コア残基上に作り上げられた一連の化学的殻からなるデンドリマーのコア残基として働くこともできる。デンドリマーのコア残基は、蛍光性又は燐光性小分子発光体であることができる。デンドリマーは「小分子」であることができ、OLEDの分野で現在用いられている全てのデンドリマーは小分子であると考えられる。
【0010】
本明細書で用いるように「トップ」は、基材から最も遠くを意味する一方で、「ボトム」は基材に最も近いことを意味する。第一の層が第二の層の「上に配置される」と記載した場合は、第一の層は基材から、より遠くに配置される。第一の層が第二の層と「接触している」と特定されていない限り、第一の層と第二の層との間に別な層があってよい。例えば、カソードとアノードとの間に様々な有機層があったとしても、カソードはアノードの「上に配置される」と記載できる。
【0011】
本明細書で用いるように、「溶液処理(加工)可能」とは、溶液もしくは懸濁液の形態で、液体媒体中に溶解され、分散され、又は液体媒体中で輸送され、及び/又は液体媒体から堆積されうることを意味する。
【0012】
配位子が発光物質の光活性特性に直接寄与していると考えられる場合は、その配位子は「光活性」ということができる。配位子が発光物質の光活性特性に寄与していないと考えられる場合は、配位子は「補助」ということができるが、補助配位子は光活性配位子の特性を変えうる。
【0013】
本明細書で用いるように、かつ当業者によって一般に理解されているように、第一の「最高被占分子軌道」(HOMO)又は「最低空分子軌道」(LUMO)のエネルギー準位は、その第一のエネルギー準位が真空のエネルギー準位により近い場合には、第二のHOMO又はLUMOよりも「大きい」あるいは「高い」。イオン化ポテンシャル(IP)は真空準位に対して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつIPに対応する(より小さな負のIP)。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、より小さな絶対値をもつ電子親和力(EA)に対応する(より小さな負のEA)。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、物質のLUMOエネルギー準位はその同じ物質のHOMOエネルギー準位よりも高い。「より高い」HOMO又はLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMO又はLUMOエネルギー準位よりも、そのような図のトップのより近くに現れる。
【0014】
本明細書で用いるように、また当業者によって一般に理解されるように、第一の仕事関数は、その第一の仕事関数がより高い絶対値を有する場合には、第二の仕事関数よりも「大きい」あるいは「高い」。仕事関数は通常、真空準位に対して負の値として測定されるので、このことは「より高い」仕事関数は、より負であることを意味する。上(トップ)に真空準位をもつ従来のエネルギー準位図の上では、「より高い」仕事関数は真空準位から下向きの方向へさらに離れて図示される。したがって、HOMO及びLUMOエネルギー準位の定義は、仕事関数とは異なる慣例に従う。
【0015】
OLEDについてのさらなる詳細及び上述した定義は、米国特許第7,279,704号明細書に見ることができ、その全体を参照により本明細書に援用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,844,363号明細書
【特許文献2】米国特許第6,303,238号明細書
【特許文献3】米国特許第5,707,745号明細書
【特許文献4】米国特許第7,279,704号明細書
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998
【非特許文献2】Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
[本発明のまとめ]
イソイミダゾール配位子を含む四座配位白金(II)錯体を提供する。
これらの化合物は下記式を有する。
【化2】

A、B、及びCはそれぞれ独立に、5又は6員の炭素環又はヘテロ環である。L及びLは独立に、単結合、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択される。Lは、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択される。nは0又は1である。nは0又は1である。n+nは少なくとも1に等しい。Z及びZは独立に窒素原子又は炭素原子である。R、R、R、及びRは、モノ-、ジ-、トリ-、又はテトラ-置換を表すことができる。R、R′、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。Rは任意選択によりAと縮合していてもよい。Rは任意選択により環Bと縮合していてもよい。Rは任意選択により環Cと縮合していてもよい。R及びRは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。R及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。R及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。
【0019】
一つの側面では、Rは置換アリールである。好ましくは、Rは2,6−二置換アリールである。さらに好ましくは、Rは、
【化3】

である。
【0020】
R′及びR′は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。R′及びR′のうちの少なくとも1つは水素でも重水素でもない。Dは5員又は6員の炭素環又はヘテロ環であって、任意選択によりさらにR′で置換されていてもよく、R′は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
一つの側面では、R′及びR′のそれぞれが水素でも重水素でもない。別の側面では、R′及びR′のうちの少なくとも1つはアルキルである。なお別の側面では、R′及びR′のそれぞれがアルキルである。さらなる側面では、R′及びR′のうちの少なくとも1つは、少なくとも2つの炭素を含むアルキルである。別の側面では、R′及びR′のうちの少なくとも1つはアリールである。なお別の側面では、R′及びR′のそれぞれがアリールである。
【0022】
一つの側面では、上記化合物は中性電荷を有する。別の側面では、A、B、及びCのうちの2つがフェニルであり、A、B、及びCのうちの1つがピリジンである。
【0023】
一つの側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化4】

【0024】
別の側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化5】

【0025】
なお別の側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化6】

【0026】
さらなる側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化7】

【0027】
なお別の側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化8】

【0028】
なお別の側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化9】

【0029】
一つの側面では、L又はLは、O、S、CH、CR′、NR′、SiR′、又はBR′からなる群から選択される。R′はアルキル又はアリールである。別の側面では、Lは、O、S、CH、CR′、NR′、及びSiR′からなる群から選択される。R′は、アルキル又はアリールであり、且つ、R′は任意選択によりB又はCに結合していてもよい。
【0030】
一つの側面では、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素、重水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、分岐アルキル、ヘテロアリール、及び縮合アリールからなる群から選択される。
【0031】
四座配位白金(II)錯体の具体的な、非限定的例を提供する。一つの側面では、それら化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0032】
【化10】

【0033】
【化11】

【0034】
【化12】

【0035】
【化13】

【0036】
【化14】

【0037】
【化15】

【0038】
【化16】

【0039】
【化17】

【0040】
さらに、第一のデバイスを提供する。第一のデバイスは第一の有機発光デバイスを含む。さらに、この有機発光デバイスは、アノード、カソード、及びそのアノード及びカソードの間に配置された有機層を含む。この有機層は下記式を有する化合物を含む。
【化18】

【0041】
A、B、及びCはそれぞれ独立に、5又は6員の炭素環又はヘテロ環である。L及びLは独立に、単結合、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択される。Lは、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択される。nは0又は1である。nは0又は1である。n+nは少なくとも1に等しい。Z及びZは独立に窒素原子又は炭素原子である。R、R、R、及びRは、モノ-、ジ-、トリ-、又はテトラ-置換を表すことができる。R、R′、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。Rは任意選択によりAと縮合していてもよい。Rは任意選択により環Bと縮合していてもよい。Rは任意選択により環Cと縮合していてもよい。R及びRは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。R及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。R及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。
【0042】
式Iを有する化合物について上で論じた様々な具体的側面は、上記第一のデバイスに用いる式Iを有する化合物にも適用できる。特に、R、R、R、R、R5、R′、R′、R′、A、B、C、D、L、L、L、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、及び式Iを有する化合物のうち化合物1〜76の具体的側面は、第一のデバイスに用いる式Iを有する化合物にも適用できる。
【0043】
一つの側面では、Rは置換アリールである。好ましくは、Rは、
【化19】

である。
【0044】
R′及びR′は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。R′及びR′のうちの少なくとも1つは水素でも重水素でもない。Dは5員又は6員の炭素環又はヘテロ環であって、任意選択によりさらにR′で置換されていてもよく、R′は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0045】
一つの側面では、上記有機層は発光層であり、且つ上記化合物は発光ドーパントである。別の側面では、上記有機層はさらにホストを含む。
【0046】
一つの側面では、ホストは、トリフェニレンを有するベンゾ縮合チオフェン又はベンゾ縮合フランを含み、そのホスト中のいずれかの置換基が、C2n+1、OC2n+1、OAr、N(C2n+1、N(Ar)(Ar)、CH=CH−C2n+1、C≡CHC2n+1、Ar、Ar−Ar、C2n−Arからなる群から選択される非縮合置換基であるか又は非置換である。nは1〜10である。Ar及びArは独立に、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類縁体からなる群から選択される。好ましくは、ホストは下記式を有する。
【化20】

【0047】
別の側面では、上記ホストは下記のものからなる群から選択される。
【化21】

及びそれらの組み合わせ。
【0048】
なお別の側面では、ホストは金属錯体である。
【0049】
一つの側面では、上記有機層は発光層であり、上記化合物は非発光ドーパントである。
【0050】
一つの側面では、上記第一のデバイスは消費者製品である。別の側面では、上記第一のデバイスは有機発光デバイスである。なお別の側面では、上記第一のデバイスは発光パネルを含む。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は有機発光デバイスを示す。
【図2】図2は、別個の電子輸送層をもたない倒置型有機発光デバイスを示す。
【図3】図3は、四座配位Pt(II)錯体の一般的構造を示す。
【図4】図4は、四座配位Pt(II)錯体の構造例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
[詳細な説明]
一般に、OLEDは、アノードとカソードとの間に配置され且つそれらと電気的に接続された少なくとも1つの有機層を含む。電流が流された場合、有機層(1又は複数)にアノードは正孔を注入し、カソードは電子を注入する。注入された正孔と電子はそれぞれ反対に帯電した電極に向かって移動する。電子と正孔が同じ分子上に局在する場合、励起エネルギー状態を有する局在化された電子−正孔対である「励起子」が形成される。励起子が発光機構によって緩和するときに光が発せられる。いくつかの場合には、励起子はエキシマー又はエキシプレックス上に局在化されうる。非放射機構、例えば、熱緩和も起こりうるが、通常は好ましくないと考えられる。
【0053】
初期のOLEDは、一重項状態から光を発する(「蛍光」)発光性分子を用いており、例えば、米国特許第4,769,292号明細書(この全体を参照により援用する)に記載されているとおりである。蛍光発光は、一般に、10ナノ秒よりも短いタイムフレームで起こる。
【0054】
より最近、三重項状態から光を発する(「燐光」)発光物質を有するOLEDが実証されている。Baldoら,“Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices”, Nature, vol. 395, 151-154, 1998 (“Baldo-I”);
及び、Baldoら,“Very high-efficiency green organic light-emitting devices based on electrophosphorescence”, Appl. Phys. Lett., vol. 75, No. 3, 4-6 (1999) (“Baldo-II”)、これらを参照により全体を援用する。燐光は、米国特許第7,279,704号明細書の第5〜6欄に、より詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0055】
図1は有機発光デバイス100を示している。この図は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。デバイス100は、基板110、アノード115、正孔注入層120、正孔輸送層125、電子阻止層130、発光層135、正孔阻止層140、電子輸送層145、電子注入層150、保護層155、およびカソード160を含み得る。カソード160は、第一導電層162および第二導電層164を有する複合カソードである。デバイス100は、記載した層を順次、堆積させることによって作製できる。これらの様々な層の特性及び機能、並びに例示物質は、米国特許第7,279,704号明細書の第6〜10欄により詳細に記載されており、これを参照により援用する。
【0056】
これらの層のそれぞれについてのより多くの例が得られる。例えば、可撓性且つ透明な基材−アノードの組み合わせが米国特許第5,844,363号明細書に開示されており、参照により全体を援用する。p型ドープ正孔輸送層の例は、50:1のモル比で、F−TCNQでドープしたm−MTDATAであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。発光物質及びホスト物質の例は、Thompsonらの米国特許第6,303,238号明細書に開示されており、その全体を参照により援用する。n型ドープ電子輸送層の例は、1:1のモル比でLiでドープされたBPhenであり、これは米国特許出願公開第2003/0230980号公報に開示されているとおりであり、その全体を参照により援用する。米国特許第5,703,436号明細書及び同5,707,745号明細書(これらはその全体を参照により援用する)は、上に重ねられた透明な電気導電性のスパッタリングによって堆積されたITO層を有するMg:Agなどの金属の薄層を有する複合カソードを含めたカソードの例を開示している。阻止層の理論と使用は、米国特許第6,097,147号明細書及び米国特許出願公開第2003/0230980号公報に、より詳細に記載されており、その全体を参照により援用する。注入層の例は、米国特許出願公開第2004/0174116号公報に提供されており、その全体を参照により援用する。保護層の記載は米国特許出願公開第2004/0174116号公報にみられ、その全体を参照により援用する。
【0057】
図2は倒置型(inverted)OLED200を示している。このデバイスは、基板210、カソード215、発光層220、正孔輸送層225、およびアノード230を含む。デバイス200は記載した層を順に堆積させることによって製造できる。最も一般的なOLEDの構成はアノードの上方に配置されたカソードを有し、デバイス200はアノード230の下方に配置されたカソード215を有するので、デバイス200を「倒置型」OLEDとよぶことができる。デバイス100に関して記載したものと同様の物質を、デバイス200の対応する層に使用できる。図2は、デバイス100の構造からどのようにいくつかの層を省けるかの1つの例を提供している。
【0058】
図1および2に例示されている簡単な層状構造は非限定的な例として与えられており、本発明の実施形態は多様なその他の構造と関連して使用できることが理解される。記載されている具体的な物質および構造は事実上例示であり、その他の物質および構造も使用できる。設計、性能、およびコスト要因に基づいて、実用的なOLEDは様々なやり方で上記の記載された様々な層を組み合わせることによって実現でき、あるいは、いくつかの層は完全に省くことができる。具体的に記載されていない他の層を含むこともできる。具体的に記載したもの以外の物質を用いてもよい。本明細書に記載されている例の多くは単一の物質を含むものとして様々な層を記載しているが、物質の組合せ(例えばホストおよびドーパントの混合物、または、より一般的には混合物)を用いてもよいことが理解される。また、層は様々な副層(sublayer)を有してもよい。本明細書において様々な層に与えられている名称は、厳格に限定することを意図するものではない。例えば、デバイス200において、正孔輸送層225は正孔を輸送し且つ発光層220に正孔を注入するので、正孔輸送層として、あるいは正孔注入層として説明されうる。一実施形態において、OLEDは、カソードとアノードとの間に配置された「有機層」を有するものとして説明できる。この有機層は単一の層を含むか、または、例えば図1および2に関連して記載したように様々な有機物質の複数の層をさらに含むことができる。
【0059】
具体的には説明していない構造および物質、例えばFriendらの米国特許第5,247,190号(これはその全体を参照により援用する)に開示されているようなポリマー物質で構成されるOLED(PLED)、も使用することができる。さらなる例として、単一の有機層を有するOLEDを使用できる。OLEDは、例えば、Forrestらの米国特許第5,707,745号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているように積み重ねられてもよい。OLEDの構造は、図1および2に示されている簡単な層状構造から逸脱していてもよい。例えば、基板は、光取出し(out-coupling)を向上させるために、Forrestらの米国特許第6,091,195号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているメサ構造、および/またはBulovicらの米国特許第5,834,893号(これはその全体を参照により援用する)に記載されているピット構造などの、角度の付いた反射表面を含みうる。
【0060】
特に断らないかぎり、様々な実施形態の層のいずれも、何らかの適切な方法によって堆積されうる。有機層については、好ましい方法には、熱蒸着(thermal evaporation)、インクジェット(例えば、米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、有機気相成長(organic vapor phase deposition、OVPD)(例えば、Forrestらの米国特許第6,337,102号(その全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびに有機気相ジェットプリンティング(organic vapor jet printing、OVJP)による堆積(例えば、米国特許出願第10/233,470号(これはその全体を参照により援用する)に記載されている)が含まれる。他の適切な堆積方法には、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づく方法が含まれる。溶液に基づく方法は、好ましくは、窒素または不活性雰囲気中で実施される。その他の層については、好ましい方法には熱蒸着が含まれる。好ましいパターニング方法には、マスクを通しての蒸着、圧接(cold welding)(例えば、米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号(これらはその全体を参照により援用する)に記載されている)、ならびにインクジェットおよびOVJDなどの堆積方法のいくつかに関連するパターニングが含まれる。その他の方法も用いることができる。堆積される物質は、それらを特定の堆積方法に適合させるために改変されてもよい。例えば、分枝した又は分枝していない、好ましくは少なくとも3個の炭素を含むアルキルおよびアリール基などの置換基が、溶液加工性を高めるために、小分子に用いることができる。20個又はそれより多い炭素を有する置換基を用いてもよく、3〜20炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は対称構造を有するものよりも良好な溶液加工性を有しうるが、これは、非対称物質はより小さな再結晶化傾向を有しうるからである。デンドリマー置換基は、小分子が溶液加工を受ける能力を高めるために用いることができる。
【0061】
本発明の実施形態により製造されたデバイスは多様な消費者製品に組み込むことができ、これらの製品には、フラットパネルディスプレイ、コンピュータのモニタ、テレビ、広告板、室内もしくは屋外の照明灯および/または信号灯、ヘッドアップディスプレイ、完全に透明な(fully transparent)ディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、レーザープリンタ、電話機、携帯電話、携帯情報端末(personal digital assistant、PDA)、ラップトップコンピュータ、デジタルカメラ、カムコーダ、ビューファインダー、マイクロディスプレイ、乗り物、大面積壁面(large area wall)、映画館またはスタジアムのスクリーン、あるいは標識が含まれる。パッシブマトリクスおよびアクティブマトリクスを含めて、様々な制御機構を用いて、本発明にしたがって製造されたデバイスを制御できる。デバイスの多くは、18℃から30℃、より好ましくは室温(20〜25℃)などの、人にとって快適な温度範囲において使用することが意図されている。
【0062】
本明細書に記載した物質及び構造は、OLED以外のデバイスにおける用途を有しうる。例えば、その他のオプトエレクトロニクスデバイス、例えば、有機太陽電池及び有機光検出器は、これらの物質及び構造を用いることができる。より一般には、有機デバイス、例えば、有機トランジスタは、これらの物質及び構造を用いることができる。
【0063】
ハロ、ハロゲン、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、ヘテロ環基、アリール、芳香族基、及びヘテロアリールの用語は、当分野で公知であり、米国特許第7,279,704号明細書の第31〜32欄で定義されており、これを参照により援用する。
【0064】
[発明の説明]
四座配位Pt(II)錯体の新規な群を提供する(図3に示すとおりである)。これらの化合物はイミダゾール部分(残基)を含んでおり、且つ、炭素環及び/又はヘテロ環(すなわち、B及びC)の間に単結合以外の連結基を有する配位子を含む。これらの化合物は、OLEDに有利に用いることができる。
【0065】
実証された最初のPHOLEDは、白金錯体(すなわち、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィン白金(II)(PtOEP))を含んでいたが、白金錯体は、最新技術のPHOLEDにおいてはどのような実際の用途も見出していない。(Nature, 1998, 395, 151)。イリジウム錯体と比較して、白金(II)錯体は、一般に比較的長い励起状態寿命と、より低い量子収率を有している。さらに、白金(II)錯体は、平面四角形の形状をもち、これがしばしばエキシマーの形成を引き起こす。したがって、これらの錯体は、OLED中における高いドーピング濃度において、広がった発光スペクトルを有しうる。
【0066】
二座及び三座のPt(II)錯体が報告されているが、一般に、それらはOLEDにおいて限定的な利用しかされていない。これらの錯体は、しばしば乏しい熱安定性及びデバイス安定性しかもっておらず、そのためOLEDにおけるそれらの応用を限定している。
【0067】
四座配位Pt(II)錯体も文献に開示されているが、二座配位及び三座配位Pt(II)錯体と同様に、これらの四座配位Pt(II)錯体はOLEDにおける限定的な利用しかされてこなかった。本明細書で提供する新規な群の四座配位Pt(II)錯体は、B及びCの間に単結合ではない連結基を含む。この連結基は共役を切断し、より高い三重項エネルギーをもたらすことができる。したがって、本明細書で提供する化合物は、OLEDに有利に用いることができる。
【0068】
イソイミダゾール配位子を含む四座配位白金(II)錯体を提供する。これらの化合物は下記式を有する。
【化22】

【0069】
A、B、及びCはそれぞれ独立に、5又は6員の炭素環又はヘテロ環である。L及びLは独立に、単結合、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択される。Lは、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択される。nは0又は1である。nは0又は1である。n+nは少なくとも1に等しい。Z及びZは独立に窒素原子又は炭素原子である。R、R、R、及びRは、モノ-、ジ-、トリ-、又はテトラ-置換を表すことができる。R、R′、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。Rは任意選択によりAと縮合していてもよい。Rは任意選択により環Bと縮合していてもよい。Rは任意選択により環Cと縮合していてもよい。R及びRは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。R及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。R及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。
【0070】
一つの側面では、Rは置換アリールである。好ましくは、Rは、2,6−二置換アリールである。さらに好ましくは、R
【化23】

である。
【0071】
R′及びR′は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。R′及びR′のうちの少なくとも1つは水素でも重水素でもない。Dは5員又は6員の炭素環又はヘテロ環であって、任意選択によりさらにR′で置換されていてもよく、R′は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0072】
イソイミダゾールのN−1上にねじれたアリール(twisted aryl)を含むPt(II)四座配位化合物は、式Iを有する化合物の一つの亜属である。N−1が2,6−二置換アリール環に結合しているイソイミダゾール含有Pt(II)四座配位化合物である亜属の化合物は、昇華し、且つデバイス中でより高い効率で発光する新規な青色発光体を提供しうる。四座配位構造中にねじれたアリール部分を組み込むことによって、Pt(II)錯体は、より高い効率及びより長いデバイス寿命を示すことができる。理論に縛られないが、イソイミダゾール環の平面から外へアリール基をねじること、したがって、その共役を切断することは、いくつかの利点をもたらすことができると考えられる。それらの化合物は、より青い色をもたらしうる。さらに、それらの化合物は向上した昇華性と向上した効率を有することができ、なぜなら、ねじれたアリールをもつ化合物は、そのねじれたアリールをもたない化合物よりもずっと平面性が低いからである。特に、それらの化合物は、三重項−三重項消滅及び自己消光を受けにくくなることができ、なぜなら、それらはより多くの三次元性を有しているからである。イソイミダゾールのN−1上にねじれたアリールを有するいくつかの四座配位白金錯体を本明細書に開示しており、それには化合物1〜64、69、70、及び72〜76が含まれる。
【0073】
一つの側面では、R′及びR′のそれぞれが水素ではなく、重水素でもない。別の側面では、R′及びR′のうちの少なくとも1つはアルキルである。なお別の側面では、R′及びR′のそれぞれがアルキルである。さらなる側面では、R′及びR′のうちの少なくとも1つは、少なくとも2つの炭素を含むアルキルである。別の側面では、R′及びR′のうちの少なくとも1つはアリールである。なお別の側面では、R′及びR′のそれぞれがアリールである。
【0074】
一つの側面では、上記化合物は中性電荷を有する。別の側面では、A、B、及びCのうちの2つがフェニルであり、A、B、及びCのうちの1つがピリジンである。
【0075】
一つの側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化24】

【0076】
別の側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化25】

【0077】
なお別の側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化26】

【0078】
さらなる側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化27】

【0079】
別の側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化28】

【0080】
なお別の側面では、上記化合物は下記式を有する。
【化29】

【0081】
式II〜VIIは、式Iを有する化合物についての構造の好ましい部分集合を示している。これらの構造中のA、すなわちA環はフェニルであり、これは、C^イソイミダゾールシクロメタル化配位子に基づいた望ましい光物性とともに強い炭素−金属結合を形成することが知られている。この錯体の特性は、B及びC、すなわち、B環及びC環を、フェニル又は窒素ヘテロ環で置換することによってさらに調節することができる。好ましい窒素ヘテロ環には、その窒素原子を介して結合されたイミダゾール、又は中性の配位したカルベン及びピリジンが含まれる。理論に縛られないが、L架橋基がB及びC環の間の共役を切断し、それによって光物性が主にフェニル−イソイミダゾールシクロメタル化配位子によって定まることが可能になる。
【0082】
一つの側面では、L又はLは、O、S、CH、CR′、NR′、SiR′、又はBR′からなる群から選択される。R′はアルキル又はアリールである。別の側面では、Lは、O、S、CH、CR′、NR′、及びSiR′からなる群から選択される。R′は、アルキル又はアリールであり、且つ、R′は任意選択によりB又はCに結合していてもよい。
【0083】
一つの側面では、R、R、R、及びRはそれぞれ独立に、水素、重水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、分岐アルキル、ヘテロアリール、及び縮合アリールからなる群から選択される。
【0084】
四座配位白金(II)錯体の具体的な、非限定的例を提供する。一つの側面では、それら化合物は以下のものからなる群から選択される。
【0085】
【化30】

【0086】
【化31】

【0087】
【化32】

【0088】
【化33】

【0089】
【化34】

【0090】
【化35】

【0091】
【化36】

【0092】
【化37】

【0093】
【化38】

【0094】
さらに、第一のデバイスを提供する。第一のデバイスは第一の有機発光デバイスを含む。さらに、この有機発光デバイスは、アノード、カソード、及びそのアノード及びカソードの間に配置された有機層を含む。この有機層は下記式を有する化合物を含む。
【化39】

【0095】
A、B、及びCはそれぞれ独立に、5又は6員の炭素環又はヘテロ環である。L及びLは独立に、単結合、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択される。Lは、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択される。nは0又は1である。nは0又は1である。n+nは少なくとも1に等しい。Z及びZは独立に窒素原子又は炭素原子である。R、R、R、及びRは、モノ-、ジ-、トリ-、又はテトラ-置換を表すことができる。R、R′、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。Rは任意選択によりAと縮合していてもよい。Rは任意選択によりBと縮合していてもよい。Rは任意選択によりCと縮合していてもよい。R及びRは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。R及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。R及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。
【0096】
式Iを有する化合物について上で論じた様々な具体的側面は、上記第一のデバイスに用いる式Iを有する化合物にも適用できる。特に、R、R、R、R、R5、R′、R′、R′、A、B、C、D、L、L、L、式II、式III、式IV、式V、式VI、式VII、及び式Iを有する化合物のうち化合物1〜76の具体的側面は、第一のデバイスに用いる式Iを有する化合物にも適用できる。
【0097】
一つの側面では、Rは置換アリールである。好ましくは、Rは、
【化40】

である。
【0098】
R′及びR′は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。R′及びR′のうちの少なくとも1つは水素でも重水素でもない。Dは5員又は6員の炭素環又はヘテロ環であって、任意選択によりさらにR′で置換されていてもよく、R′は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0099】
一つの側面では、上記有機層は発光層であり、且つ上記化合物は発光ドーパントである。別の側面では、上記有機層はさらにホストを含む。
【0100】
一つの側面では、ホストは、トリフェニレンを有するベンゾ縮合チオフェン又はベンゾ縮合フランを含み、そのホスト中のいずれかの置換基が、独立に、C2n+1、OC2n+1、OAr、N(C2n+1、N(Ar)(Ar)、CH=CH−C2n+1、C≡CHC2n+1、Ar、Ar−Ar、C2n−Arからなる群から選択される非縮合置換基であるか又は非置換である。nは1〜10である。Ar及びArは独立に、ベンゼン、ビフェニル、ナフタレン、トリフェニレン、カルバゾール、及びそれらのヘテロ芳香族類縁体からなる群から選択される。好ましくは、ホストは下記式を有する。
【化41】

【0101】
別の側面では、上記ホストは下記のものからなる群から選択される。
【化42】

及びそれらの組み合わせ。
【0102】
なお別の側面では、ホストは金属錯体である。
【0103】
一つの側面では、上記有機層は発光層であり、上記化合物は非発光ドーパントである。
【0104】
一つの側面では、上記第一のデバイスは消費者製品である。別の側面では、上記第一のデバイスは有機発光デバイスである。なお別の側面では、上記第一のデバイスは発光パネルを含む。
【0105】
[その他の物質との組み合わせ]
有機発光デバイス中の具体的な層に有用として本明細書に記載した物質は、そのデバイス中に存在するその他の広範囲にわたる物質と組み合わせて用いることができる。例えば、本明細書に開示した発光ドーパントは、存在してもよい広い範囲のホスト、輸送層、阻止層、注入層、電極、及びその他の層と組み合わせて用いることができる。以下に記載乃至言及した物質は、本明細書に記載した化合物と組み合わせて有用でありうる物質の非制限的な例であり、当業者は組み合わせて有用でありうるその他の物質を特定するために文献を容易に参考にすることができる。
【0106】
〔HIL/HTL〕
【0107】
本発明に用いられる正孔注入/輸送物質は特に限定されず、その化合物が通常、正孔注入/輸送物質として用いられる限り任意の化合物を用いることができる。この物質の例には以下のものが含まれるがそれらに限定されない:
フタロシアニン又はポルフィリン誘導体;芳香族アミン誘導体;インドロカルバゾール誘導体;フルオロ炭化水素を含むポリマー;導電性ドーパントを伴うポリマー;導電性ポリマー、例えば、PEDOT/PSS;ホスホン酸及びシラン誘導体などの化合物から誘導される自己組織化モノマー;金属酸化物誘導体、例えば、MoO;p型半導体有機化合物、例えば、1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル;金属錯体、及び架橋性化合物。
【0108】
HIL又はHTLに用いられる芳香族アミン誘導体の例には以下の構造のものが含まれるがそれらに限定されない。
【化43】

【0109】
Ar〜Arのそれぞれは、芳香族炭化水素環式化合物からなる群、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン;芳香族ヘテロ環化合物からなる群、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソオキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン;及び、前記の芳香族炭化水素環式基及び前記の芳香族ヘテロ環式基から選択された同じ種類又は異なる種類の基である2〜10の環状構造単位からなり、互いに直接又は少なくとも1つの酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環式基を介して結合された基、から選択される。式中、各Arは、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基でさらに置換されている。
【0110】
一つの側面では、Ar〜Arは以下のものからなる群から独立に選択される。
【化44】

【0111】
kは1〜20の整数であり;X〜XはC(CHも含めて)又はNであり;Arは上で定義したものと同じ基を有する。
【0112】
HIL又はHTLに用いる金属錯体の例には以下の一般式のものが含まれるがそれらに限定されない。
【化45】

【0113】
Mは40より大きな原子量を有する金属であり;(Y−Y)は二座配位子であり、Y及びYは独立に、C、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数値であり;m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0114】
一つの側面では、(Y−Y)は2−フェニルピリジン誘導体である。
【0115】
別の側面では、(Y−Y)はカルベン配位子である。
【0116】
別の側面では、Mは、Ir、Pt、Os、及びZnから選択される。
【0117】
さらなる側面では、この金属錯体は、溶液中でFc/Fcカップルに対して約0.6V未満の最小酸化電位を有する。
【0118】
〔ホスト〕
【0119】
本発明の有機ELデバイスの発光層は、発光物質として少なくとも金属錯体を含むことが好ましく、その金属錯体をドーパント物質として用いるホスト物質を含んでいてもよい。ホスト物質の例は特に限定されず、ホストの三重項エネルギーがドーパントの三重項エネルギーよりも大きい限り、任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。
【0120】
ホストとして用いられる金属錯体の例は、以下の一般式を有することが好ましい。
【化46】

【0121】
Mは金属であり;(Y−Y)は二座配位子であって、Y及びYは独立にC、N、O、P、及びSから選択され;Lは補助配位子であり;mは1からその金属に結合しうる配位子の最大数までの整数値であり;且つ、m+nはその金属に結合しうる配位子の最大数である。
【0122】
一つの態様では、金属錯体は、
【化47】

である。
【0123】
(O−N)は二座配位子であり、金属をO及びN原子に配位させる。
【0124】
別の側面では、MはIr及びPtから選択される。
【0125】
さらなる側面では、(Y−Y)はカルベン配位子である。
【0126】
ホストとして用いられる有機化合物の例は、以下のものからなる群から選択される:芳香族炭化水素環状化合物、例えば、ベンゼン、ビフェニル、トリフェニル、トリフェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナレン、フェナントレン、フルオレン、ピレン、クリセン、ペリレン、アズレン;芳香族ヘテロ環状化合物からなる群、例えば、ジベンゾチオフェン、ジベンゾフラン、ジベンゾセレノフェン、フラン、チオフェン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾセレノフェン、カルバゾール、インドロカルバゾール、ピリジルインドール、ピロロジピリジン、ピラゾール、イミダゾール、トリアゾール、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、オキサトリアゾール、ジオキサゾール、チアジアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、オキサジン、オキサチアジン、オキサジアジン、インドール、ベンゾイミダゾール、インダゾール、インドキサジン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイソキサゾール、ベンゾチアゾール、キノリン、イソキノリン、シンノリン、キナゾリン、キノキサリン、ナフチリジン、フタラジン、プテリジン、キサンテン、アクリジン、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、ベンゾフロピリジン、フロジピリジン、ベンゾチエノピリジン、チエノジピリジン、ベンゾセレノフェノピリジン、及びセレノフェノジピリジン;並びに、前記の芳香族炭化水素環状基及び前記の芳香族ヘテロ環状基から選択される同じか又は異なる種類の基であり、且つ酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、リン原子、ホウ素原子、鎖構造単位、及び脂肪族環状基のうちの少なくとも1つを介して又は直接、互いに結合されている2〜10の環状構造単位からなる群。ここで各基は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される置換基でさらに置換されている。
【0127】
一つの側面では、ホスト化合物はその分子内に以下の基のうちの少なくとも1つを含む:
【化48】

【0128】
〜Rは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合には、それは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0129】
kは0〜20の整数である。
【0130】
〜XはC(CHも含めて)又はNから選択される。
【0131】
〔HBL〕
【0132】
正孔阻止層(HBL)は、発光層を離れる正孔及び/又は励起子の数を減らすために用いることができる。デバイスにおけるそのような阻止層の存在は、阻止層をもたない類似のデバイスと比較して実質的に高い効率をもたらしうる。また、阻止層は、OLEDの所望の領域に発光を閉じ込めるために用いることもできる。
【0133】
一つの側面では、HBLに用いられる化合物は、上述したホストして用いられるものと同じ分子を含む。
【0134】
別の側面では、HBLに用いられる化合物は、その分子中に以下の基のうち少なくとも1つを含む:
【化49】

【0135】
kは0〜20の整数であり;Lは補助配位子であり、mは1〜3の整数である。
【0136】
〔ETL〕
【0137】
電子輸送層(ETL)は、電子を輸送できる物質を含むことができる。電子輸送層はその本来的性質(非ドープ)であるか、あるいはドープされていてもよい。ドーピングは導電性を高めるために用いることができる。ETL物質の例は特に限定されず、それらが電子を輸送するために通常用いられる限り、任意の金属錯体又は有機化合物を用いることができる。
【0138】
一つの側面では、ETLに用いる化合物は、その分子内に以下の基のうち少なくとも1つを含む。
【化50】

【0139】
は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、それがアリール又はヘテロアリールである場合には、それは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0140】
Ar〜Arは上述したAr類と同様の定義を有する。
【0141】
kは0〜20の整数である。
【0142】
〜XはC(CHも含めて)又はNから選択される。
【0143】
別の側面では、ETLに用いられる金属錯体には以下の一般式のものが含まれるがこれらには限定されない。
【化51】

【0144】
(O−N)又は(N−N)は二座配位子であり、金属をO,N、又はN,N原子に配位させ;Lは補助配位子であり;mは、1からその金属に結合できる配位子の最大数までの整数値である。
【0145】
OLEDデバイスの各層に用いられる任意の上述した化合物においては、その水素原子は部分的に又は完全に重水素化されていることができる。
【0146】
本明細書に開示した物質に加えて、及び/又はそれと組み合わせて、多くの正孔注入物質、正孔輸送物質、ホスト物質、ドーパント物質、励起子/正孔阻止層物質、電子輸送及び電子注入物質をOLEDに用いてもよい。本明細書に開示した物質と組み合わせてOLEDに用いてもよい物質の非限定的な例を、以下の表4に列挙している。表4は、非限定的な物質群、各群についての錯体の非限定的な例、及びその物質を開示している参考文献を列挙している。
【0147】
【表1】

【0148】
【表2】

【0149】
【表3】

【0150】
【表4】

【0151】
【表5】

【0152】
【表6】

【0153】
【表7】

【0154】
【表8】

【0155】
【表9】

【0156】
【表10】

【0157】
【表11】

【0158】
【表12】

【0159】
【表13】

【0160】
【表14】

【0161】
【表15】

【0162】
【表16】

【0163】
【表17】

【0164】
【表18】

【0165】
【表19】

【0166】
【表20】

【0167】
【表21】

【0168】
【表22】

【0169】
【表23】

【実施例】
【0170】
[合成例]
【化52】

【0171】
2−(3−ヨードフェノキシ)ピリジンの合成
250mLの反応フラスコ中に、白色懸濁液を与える、DMF(120 mL)中の炭酸セシウム(29.34 g, 90 mmol)を仕込んだ。2−ヨードピリジン(6.4 ml, 60.2 mmol)、3−ヨードフェノール(13.2 g, 60.0 mmol)、及び銅粉末(0.369 g, 5.81 mmol)を添加した。これを115℃(オイル浴)で18時間撹拌した。その混合物を次にセライトを通して濾過し、ジクロロメタンで洗った。濾液を、飽和NaOH、次に10%LiCl水溶液、次に2回、水で洗った。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ヘキサン中50〜100%のDCMを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーにかけて13.54g(76%)の2−(3−ヨードフェノキシ)ピリジンを白色固体として得た。
【0172】
【化53】

【0173】
5−(3−メトキシフェニル)−1H−イミダゾールの合成
2−ブロモ−1−(3−メトキシフェニル)エタノン(25.0 g, 109 mmol)を250mLの丸底フラスコに入れた。反応混合物を100mLのホルムアミドで希釈した。これを165℃で2.5時間撹拌した。水及び酢酸エチル(それぞれ200 mL)を次に添加し、層分離した。水層をpH12に塩基性化して、酢酸エチル(200 mL)で抽出した。一緒にあわせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、酢酸エチル、次にDCM中5%メタノールを用いてシリカゲル上でクロマトグラフィーにかけて、14.8g(78%)の5−(3−メトキシフェニル)−1H−イミダゾールを得た。
【0174】
【化54】

【0175】
1−(2,6−ジメチルフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)−1H−イミダゾールの合成
5−(3−メトキシフェニル)−1H−イミダゾール(9.91 g, 56.9 mmol)及び2−ヨード−1,3−ジメチルベンゼン(11.0 g, 47.4 mmol)を、150mLのガラス耐圧フラスコに入れた。ヨウ化銅(I)(0.90 g, 4.74 mmol)を添加し、その反応混合物をDMF(47 mL)で希釈した。N,N−ジメチルエタン−1,2−ジアミン(2.0 mL, 18.96 mmol)及び炭酸セシウム(30.9 g, 95 mmol)を添加し、フラスコに窒素を流し(すなわち窒素をフラッシュし)、密封し、170℃に加熱されたオイル浴中に44時間置いた。酢酸エチルを添加し、未精製混合物をシリカゲルの詰め物を通して濾過した。濾液を水で洗い、有機層を濃縮し、酢酸エチルで溶出してシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、5.2gの生成物を得た。これを、DCM中の0〜7%酢酸エチルで溶出させるシリカゲル上での再度のクロマトグラフィーにかけて、4.1gの1−(2,6−ジメチルフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)−1H−イミダゾールを黄褐色固体として得た。
【0176】
【化55】

【0177】
3−(1−(2,6−ジメチルフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)フェノールの合成
1−(2,6−ジメチルフェニル)−4−(3−メトキシフェニル)−1H−イミダゾール(4.0 g, 14.4 mmol)を250mLの丸底フラスコに入れた。ピリジン塩酸塩(14.3 g)を添加し、反応混合物をオイル浴中200℃で5時間撹拌した。その混合物を次に130℃に冷やし、飽和炭酸水素ナトリウム溶液とともに水を添加した。未精製固体を濾過し、DCM中0〜5%メタノールで溶出させるシリカゲル上でのクロマトグラフィーにかけて、2.7gの生成物を得た。この物質をエーテル及びヘキサンで浸出させ、濾過して、2.5gの3−(1−(2,6−ジメチルフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)フェノールを白色粉末として得た。
【0178】
【化56】

【0179】
2−(3−(3−(1−(2,6−ジメチルフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)フェノキシ)フェノキシ)ピリジンの合成
3−(1−(2,6−ジメチルフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)フェノール(2.46 g, 9.31 mmol)、2−(3−ヨードフェノキシ)ピリジン(3.04 g, 10.24 mmol)、及びヨウ化銅(I)(0.532 g, 2.79 mmol)を、250mLの丸底フラスコに入れた。その反応混合物をDMSO(100 mL)で希釈し、ピコリン酸(1.7 g, 13.96 mmol)及びリン酸カリウム(6.9 g, 32.6 mmol)を添加した。そのフラスコを脱気し、窒素で2回戻し、その反応物を105℃の内温で24時間撹拌した。加熱を取り除き、混合物を酢酸エチルで希釈し、セライトを通して濾過した。濾液を水で3回洗った。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ヘキサン中25〜40%酢酸エチルで溶出させるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにかけて、3.9gの2−(3−(3−(1−(2,6−ジメチルフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)フェノキシ)フェノキシ)ピリジンを白色泡状物として得た。
【0180】
【化57】

【0181】
化合物1の合成
2−(3−(3−(1−(2,6−ジメチルフェニル)−1H−イミダゾール−4−イル)フェノキシ)フェノキシ)ピリジン(3.38 g, 7.80 mmol)及び四塩化白金酸カリウム(3.24 g, 7.80 mmol)を、500mLの丸底フラスコに入れた。その反応混合物を酢酸(150 mL)で希釈し、68時間加熱還流させた。反応混合物を常温まで冷やし、50mLの水を添加した。得られた固体を濾過し、水で洗った。未精製固体をDCMに溶かし、分液ロートに入れ、水で洗った。その有機層を乾燥させ、DCMで溶出させるシリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにかけて、黄色固体3.5gを得た。この固体をDCM/MeOHから再結晶して、2.5g(51%)の化合物1を黄色固体として得た。
【0182】
[デバイス例]
【0183】
全てのデバイス例は、高真空(<10−7Torr)熱蒸着(VTE)によって作製した。アノード電極は、800Åのインジウム錫オキシド(ITO)である。カソードは、10ÅのLiFとそれに続く1000ÅのAlからなる。全てのデバイスは、作製後直ちに窒素グローブボックス(<1ppmのHO及びO)中でエポキシ樹脂を用いてシールしたガラス蓋で密封し、吸湿剤をそのパッケージ内に組み込んだ。
【0184】
デバイス例の有機積層部はITO表面から順に、正孔注入層(HIL)として100ÅのLG101(LGケム社から購入した);正孔輸送層(HTL)として300ÅのNPD又はTAPC;発光層(EML)として、10%〜15%のPt(II)錯体でドープした300ÅのUGH2;阻止層(BL)として50Åの化合物B;そして、ETLとして400ÅのAlq又は3TPYMB、からなっていた。
【0185】
ここで用いるように、以下の化合物は下記の構造を有する。
【0186】
【化58】

【0187】
【化59】

【0188】
デバイス例は表2に詳細に説明し、対応するデバイスデータは表3にまとめている。
【0189】
【表24】

【0190】
【表25】

【0191】
デバイスデータは、式Iの化合物がOLEDに用いられて、青色発光をもたらす高い三重項発光体とすることができることを示している。代表的なデバイスにおいては、発光のλmaxは464〜466nmの範囲であり、0.179〜0.194の間のCIEのX座標及び0.22〜0.253の間のCIEのY座標をもつ。デバイス1(78nm)及びデバイス2(76nm)の半値全幅(FWHM)は、式Iの化合物を用いて狭い発光が達成できることを示している。
【0192】
TD−DFT計算(これは本発明の化合物と比較化合物の性質を予測している)を表4に示してある。各構造に対して、HOMO、LUMO、HOMO−LUMOエネルギーギャップ、及び三重項エネルギーを、B3LYP/cep−31g機能及び基本セットにて、ガウシアンソフトウェアパッケージを用いたTD−DFT計算を用いて計算した。
【0193】
【表26】

【表27】

【表28】

【0194】
表4は、架橋基としてLをもつ一連のイソイミダゾールPt化合物について、HOMOエネルギーレベル、LUMOエネルギーレベル、そのHOMO−LUMOエネルギーギャップ、及び予測される三重項エネルギーを示している。この表は、Lのところに単結合をもつ(すなわち、架橋基としてのLをもたない)対応するイソイミダゾールPt化合物のデータも含んでいる。一連の錯体については、Lは酸素架橋である。HOMO、LUMO、及びエネルギーギャップの値は、化合物1と比較例1について類似しているが、比較例1(L=O)の三重項エネルギーはより低い。比較化合物1、2、3、及び4については、その三重項エネルギーは、より低いエネルギーのシクロメタル化配位子によって決まっている。逆に、化合物1、2、3、及び4については、その酸素架橋が共役を乱し、その三重項エネルギーは、より高いエネルギーのイソイミダゾール配位子によって制御されている。したがって、上記データは、Lが高い三重項エネルギーをもたらすことができることを示している。
【0195】
表4からは、Lにおける置換がその化合物の特性を調節することができることもわかる。特に、Lは、それぞれ、化合物1及び2の酸素架橋又はアリール置換された窒素であり、これはそのHOMO及び三重項エネルギーに大きな影響を及ぼすが、そのLUMOエネルギーに対しては比較的小さな影響しかない。同じ効果は一連の化合物を通して測定されている。したがって、L架橋は、化合物のHOMOエネルギーを調節し、その発光をより有用な色に赤方遷移させるための有用な手段として機能することができる。アリールアミン架橋した構造、すなわち、化合物2及び4に見られる、より浅いHOMOエネルギーが、その分子がOLEDにおけるより良い正孔トラップであることを可能にすることができることにも注目される。理論に縛られないが、分子が良好な正孔トラップである場合には、それがより高いエレクトロルミネッセンス効率をもたらすことができると考えられる。
【0196】
本明細書に記載した様々な態様は例示の目的であり、本発明の範囲を限定することを意図していないことが理解される。例えば、本明細書に記載した多くの物質及び構造は、本発明の精神から離れることなく、その他の物質及び構造で置き換えることができる。特許請求の範囲に記載した本発明は、したがって、本明細書に記載した具体的な例及び好ましい態様からの変形を含むことができ、それは当業者には明らかである。本発明が何故機能するのかについての様々な理論は限定することを意図していないことが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式を有する化合物。
【化1】

式中、A、B、及びCはそれぞれ独立に、5又は6員の炭素環又はヘテロ環であり;
及びLは独立に、単結合、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択され;
は、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択され;
は0又は1であり;
は0又は1であり;
+nは少なくとも1に等しく;
及びZは独立に窒素原子又は炭素原子であり;
、R、R、及びRは、モノ-、ジ-、トリ-、又はテトラ-置換を表すことができ;
R、R′、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され;
は任意選択によりAと縮合していてもよく;
は任意選択によりBと縮合していてもよく;
は任意選択によりCと縮合していてもよく;
及びRは、任意選択により連結して環を形成していてもよく;
及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよく;且つ、
及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。
【請求項2】
が置換アリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
が2,6−二置換アリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が下記式で表される、請求項1に記載の化合物。
【化2】

式中、R′及びR′は独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され;
R′及びR′のうちの少なくとも1つは水素でも重水素でもなく;
Dは5員又は6員の炭素環又はヘテロ環であって、任意選択によりさらにR′で置換されていてもよく;
R′は、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【請求項5】
R′及びR′のうちの少なくとも1つはアルキルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
R′及びR′のそれぞれがアルキルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
R′及びR′のうちの少なくとも1つは、少なくとも2つの炭素を含むアルキルである、請求項4に記載の化合物。
【請求項8】
R′及びR′のうちの少なくとも1つがアリールである、請求項4に記載の化合物。
【請求項9】
R′及びR′のそれぞれがアリールである、請求項4に記載の化合物。
【請求項10】
下記式を有する、請求項1に記載の化合物。
【化3】

【請求項11】
下記式を有する、請求項1に記載の化合物。
【化4】

【請求項12】
下記式を有する、請求項1に記載の化合物。
【化5】

【請求項13】
下記式を有する、請求項1に記載の化合物。
【化6】

【請求項14】
下記式を有する、請求項1に記載の化合物。
【化7】

【請求項15】
下記式を有する、請求項1に記載の化合物。
【化8】

【請求項16】
又はLが、O、S、CH、CR′、NR′、SiR′、又はBR′からなる群から選択され;且つ、
R′がアルキル又はアリールである、請求項1に記載の化合物。
【請求項17】
が、O、S、CH、CR′、NR′、及びSiR′からなる群から選択され;
R′がアルキル又はアリールであり;且つ、
R′は任意選択によりB又はCに結合していてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項18】
、R、R、及びRがそれぞれ独立に、水素、重水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、分岐アルキル、ヘテロアリール、及び縮合アリールからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項19】
以下のものからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【請求項20】
第一の有機発光デバイスを含み、さらに、
アノード;
カソード;及び
前記アノード及びカソードの間に配置され、下記式を有する化合物を含む有機層、
を含む第一のデバイス。
【化20】

式中、A、B、及びCはそれぞれ独立に、5又は6員の炭素環又はヘテロ環であり;
及びLは独立に、単結合、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択され;
は、BR、NR、PR、O、S、Se、C=O、S=O、SO、CRR′、SiRR′、及びGeRR′からなる群から選択され;
は0又は1であり;
は0又は1であり;
+nは少なくとも1に等しく;
及びZは独立に窒素原子又は炭素原子であり;
、R、R、及びRは、モノ-、ジ-、トリ-、又はテトラ-置換を表すことができ;
R、R′、R、R、R、R、及びRは独立に、水素、重水素、ハライド、アルキル、シクロアルキル、ヘテロアルキル、アリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、シリル、アルケニル、シクロアルケニル、ヘテロアルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、カルボニル、カルボン酸、エステル、ニトリル、イソニトリル、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、ホスフィノ、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され;
は任意選択によりAと縮合していてもよく;
は任意選択によりBと縮合していてもよく;
は任意選択によりCと縮合していてもよく;
及びRは、任意選択により連結して環を形成していてもよく;
及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよく;且つ、
及びLは、任意選択により連結して環を形成していてもよい。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−53149(P2013−53149A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−189721(P2012−189721)
【出願日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【出願人】(503055897)ユニバーサル ディスプレイ コーポレイション (61)
【Fターム(参考)】