説明

シュート

【課題】 落下する粉体又は粒状体を受け止めて下方へ導くためのシュートにおいて、単純な構成であり、かつ製造費用が嵩むことなく、その内周面に対する粉体又は粒状体の付着を低減することが可能であり、さらに動力を不要とする。
【解決手段】 弾性及び可撓性を有する複数の短冊状板材110を周方向に連続させると共に、全体として上方から下方へ向かって縮径するように配置する。また、複数の短冊状板材110の外周面を囲うように、収縮性を有するリング部材120を取り付ける。また、各短冊状板材110の内面には、摩擦係数の小さいフッ素樹脂からなる滑り部材111を貼り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、落下する粉体又は粒状体を受け止めてベルトコンベア等へ導くためのシュートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加水されたベントナイト混合土のように、付着性が高い材料を落下させる装置に取り付けられたシュートにおいて、材料がシュートの内壁面に付着することを防止するためには、シュートの縮径角度を急傾斜にしたり、シュートの内壁面に、材料の付着を防止する部材を貼り付けたりすることが考えられる。
【0003】
しかし、シュートの縮径角度を急傾斜にし過ぎると、材料の落下速度を減速することができず、シュートの役目の一つである速度低減効果が小さくなるという不都合がある。また、シュートの内壁面に、材料の付着を防止する部材を貼り付けただけでは、付着防止効果を十分に発揮できない場合もあった。
【0004】
従来、シュートの内部で物品が架橋状態となるのを防止することにより、上方から落下する物品を下方に確実に案内するためのシュートが提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載された技術は、筒状部材を複数の分割部材で構成し、これらの分割部材を互いに近接離反させることで、物品落下経路の断面形状を変更するようになっている。この際、押圧部材により筒状部材を側方から押圧することにより、筒状部材の断面形状を変化させて、筒状部材の内部に物品が滞留することを防止している。また、分割部材は、隣接する側部同士がオーバーラップする状態を維持しながら近接離反して、内部の物品が不用意に外部にこぼれ出ない構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−284145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来のシュートは、加水されたベントナイト混合土のように、付着性が高い材料を通過させると、シュートの内壁面に材料が付着し、材料が円滑に落下しなかったり、最悪の場合には、シュートに材料が詰まったりする。この点、特許文献1に記載されたシュートでは、シュートの断面形状を押し圧部材により変化させて、落下する物品の滞留を防止するようになっており、押し圧部材(形状変更手段)が必須の構成要件となっている。すなわち、特許文献1に記載されたシュートは、構造が複雑であり、製造費用が嵩むという問題があった。さらに、押し圧部材を動作させるための動力が必要であるという問題もあった。
【0007】
本発明は、上述した事情に鑑み提案されたもので、落下する粉体又は粒状体を受け止めて下方へ導くためのシュートにおいて、単純な構成であり、かつ製造費用が嵩むことなく、その内周面に対する粉体又は粒状体の付着を低減することが可能であり、さらに動力が不要なシュートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のシュートは、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明のシュートは、落下する粉体又は粒状体を受け止めて下方へ導くための装置であって、弾性及び可撓性を有する複数の短冊状板材を周方向に連続させると共に、全体として上方から下方へ向かって縮径するように配置したことを特徴とするものである。このような構成からなるシュートでは、落下する粉体又は粒状体がシュート内壁面に衝突すると、その衝撃により複数の短冊状板材が振動し、粉体又は粒状体の付着を防止する。
【0009】
また、上述した構成に加えて、複数の短冊状板材の外周面を囲うように、収縮性を有するリング部材を取り付けることが好ましい。このような構成からなるシュートでは、落下する粉体又は粒状体がシュートの内壁面に衝突して、短冊状板材が外側へ向かって押された場合に、リング部材により短冊状板材が広がることを防止する。
【0010】
また、上述した構成に加えて、複数の短冊状板材は、その内面に摩擦係数の小さいフッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)からなる滑り部材を貼り付けることが好ましい。このような構成からなるシュートでは、滑り部材により、シュートの内壁面に粉体又は粒状体が付着することなく円滑に流下する。
【発明の効果】
【0011】
本発明シュートによれば、落下する粉体又は粒状体がシュート内壁面に衝突すると、その衝撃により複数の短冊状板材が振動するため、シュート内壁面に衝突した粉体又は粒状体は、振動する短冊状板材により振り落とされ、シュート内壁面に対する粉体又は粒状体の付着を効果的に防止することができる。さらに、材料の落下エネルギーをシュートの構成部材(短冊状板材)の振動エネルギーに変換して利用することにより、シュートを振動させるための動力が不要となる。
【0012】
また、落下した材料の衝撃により短冊状板材を振動させ、内壁面への材料の付着防止効果を高めたことで、シュートの縮径角度の適用範囲が拡大(緩傾斜側へ拡大)するので、シュート高さの抑制が可能となり、少ないスペースでシュートを設置することが可能となる。
【0013】
また、リング部材により、短冊状板材が外側へ向かって広がることを抑制するため、隣り合う短冊状板材の隙間が広がることがなく、粉体又は粒状体がシュート外部へ飛散することを防止することができる。
【0014】
また、短冊状板材の内壁面に摩擦係数の小さいフッ素樹脂からなる滑り部材を貼り付けた場合には、シュート内壁面に対する粉体又は粒状体の付着をさらに効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るシュートの斜視図。
【図2】シュートを構成するリング部材の斜視図
【図3】シュートを構成する短冊状板材の断面図。
【図4】本発明の実施形態に係るシュートを適用した加水装置の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係るシュートの実施形態を説明する。図1〜図3は本発明の実施形態に係るシュートを示すもので、図1はシュートの斜視図、図2はリング部材の斜視図、図3は短冊状板材の断面図である。また、図4は、本発明の実施形態に係るシュートを適用した加水装置の構成を示す模式図である。
【0017】
<シュートの概要>
本発明の実施形態に係るシュートは、落下する粉体又は粒状体を受け止めて下方へ導くための装置であり、例えば、図4に示すように、ベントナイト混合土の加水装置200に適用して、落下する加水後のベントナイト混合土を受け止めて排出させるために使用することができる。なお、以下の説明では、粉体の代表例としてベントナイトについて説明するが、本発明を適用する粉体はこれに限られるものではなく、セメントのように、他の粉体にも適用することができる。なお、本発明が対象とする粉体とは、粒径がおよそ1mm未満程度の固体粒子のことである。また、本発明が対象とする粒状体とは、粒径がおよそ1mm〜20mm程度の固体粒子である。
【0018】
本発明の実施形態に係るシュート100は、図1に示すように、弾性及び可撓性を有する複数の短冊状板材110を周方向に連続させると共に、全体として上方から下方へ向かって縮径するように配置している。短冊状板材110は、例えば、ゴム製板により形成される。また、図1に示すように、複数の短冊状板材110の外周面を囲うように、収縮性を有するリング部材120を取り付けてある。このリング部材120は、図1及び図2に示すように、二分割された金属製の板材121をスプリング122により接続して、全体としてリング状となっている。また、図3に示すように、各短冊状板材110の内面側には、摩擦係数の小さいフッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン)からなる滑り部材111が貼り付けられている。
【0019】
本実施形態のシュート100では、加水後のベントナイト混合土がシュート100の内壁面に衝突すると、その衝撃により複数の短冊状板材110が振動し、ベントナイト混合土を振り落として付着を防止する。また、落下するベントナイト混合土がシュート100の内壁面に衝突して、短冊状板材110が外側へ向かって押された場合には、リング部材120が短冊状板材110を外周面から押さえつけるので、短冊状板材110が広がることがない。さらに、短冊状板材110の内面側には滑り部材111が貼り付けてあるため、シュート100の内壁面にベントナイト混合土が付着することなく円滑に流下する。
【0020】
<加水装置>
加水装置200は、図4に示すように、混合物を定量的に供給する混合物供給部210と、混合物を自由落下させる落下部220と、自由落下する混合物に対して微粒子状の水を噴射(噴霧)する噴射部230とを備えることにより、混合物に加水を行うための装置である。
【0021】
この加水装置200は、図4に示すように、略円筒形状の落下部220を備えており、この落下部220の上方に混合物供給部210を配置している。本実施形態の混合物供給部210は、ホッパー211と、スクリューコンベア212及び攪拌翼213等を有する定量供給装置214とを備えており、混合装置(図示せず)により空練りされたベントナイト混合土300をホッパー211に蓄え、このベントナイト混合土300を定量供給装置214により、落下部220内に定量的に落下させる。落下部220には、ホッパー211の直下に位置するように拡散装置221が設けられており、この拡散装置221により、ベントナイト混合土300が同心円状に広がって、落下部220内を鉛直に落下する。
【0022】
落下部220には、同心円状に広がって自由落下するベントナイト混合土300の内側及び外側に位置するように、かつ、落下部220の高さ方向に沿って、複数の噴射ノズル231を有する噴射部230が設けられており、この噴射部230から、自由落下するベントナイト混合土300に対して微粒子状の水を噴射(噴霧)することにより、ベントナイト混合土300と水とを接触させる。この際、自由落下中のベントナイト混合土300が水の噴射圧によって飛散しないように、噴射ノズル231は、同心円の内外からベントナイト混合土300を挟み込む位置に配置して加水を行う。これにより、落下部220内を自由落下するベントナイト混合土300が、所望の状態となるまで加水される。
【0023】
<混合物供給部>
混合物供給部210は、図4に示すように、落下部220の上部に設けられたホッパー211と、ホッパー211の下部に設けられた定量供給装置214とからなる。ホッパー211は、ベントナイト混合土300を貯留できればどのような形状であってもよいが、本実施形態では、下向きに縮径した円錐状となっており、下端部に排出口が設けられている。なお、ホッパー211の形状や容量は、加水処理を行うベントナイト混合土300の処理量等、処理現場の状況に応じて適宜変更することができる。
【0024】
<定量供給装置>
定量供給装置214は、図4に示すように、ホッパー211の下部に設けられたスクリューコンベア212と、スクリューコンベア212の回転軸を回転駆動するためのモータ(図示せず)とを備えており、さらに、ホッパー211内に貯留したベントナイト混合土300を攪拌するための攪拌翼213を備えることが好ましい。攪拌翼213は、攪拌回転軸に取り付けられたレイキからなり、ホッパー211の排出口付近のベントナイト混合土300を攪拌して、スクリューコンベア212に対してベントナイト混合土300を安定供給するための部材である。
【0025】
この定量供給装置214では、スクリューコンベア212を等速回転させることにより、ホッパー211内に貯留されたベントナイト混合土300が、排出口から定量的に排出される。なお、定量供給装置214は、スクリューコンベア212及びその付属機器に限定されるものではなく、ベントナイト混合土300を定量供給できる装置であれば、ピストン式、ダイヤフラム式、プランジャ式、スネーク式等、どのような構造であってもよい。
【0026】
<落下部>
落下部220は、図4に示すように、架台上に載置された円筒状の部材であり、ベントナイト混合土300を自由落下させる間に、所定量の加水を行うことができる高さを有している。落下部220の形状、径及び高さは、加水処理を行うベントナイト混合土300の処理量等、処理現場の状況に応じて適宜変更することができる。
【0027】
<拡散装置>
拡散装置221は、図4に示すように、下向きに拡径したコーン状の部材であり、混合物供給部210の直下に設けられた円筒状の拡散部223内に収容されている。混合物供給部210から供給されるベントナイト混合土300は拡散装置221により同心円状に広がり、落下部220内を自由落下する。また、拡散装置221の下部には、拡散装置221と一体となって、ベントナイト混合土300を同心円状に広げるために、円筒状のスカート部222が設けられている。すなわち、ホッパー211の排出口から落下するベントナイト混合土300は、コーン状の拡散装置221により同心円状に広げられるが、この際、ベントナイト混合土300が拡散部の内壁に衝突して跳ね返り、拡散装置221の径よりも内側へ広がることを防止するために、緩衝部として機能するスカート部222が設けられている。
【0028】
なお、拡散装置221は、上述した形状に限定されるものではなく、落下するベントナイト混合土300を拡散できればどのような形状であってもよく、落下部220の形状等に応じて適宜な形状とすることができる。また、スカート部222は、メンテナンス等を容易にするため、拡散装置221に対して着脱可能とすることが好ましい。
【0029】
<噴射ノズル>
噴射ノズル231は、図4に示すように、同心円状に広がって自由落下するベントナイト混合土300の内側及び外側に位置するようにして、落下部220の周方向及び高さ方向に沿って複数配置されている。各噴射ノズル231には、給水配管240の一端が接続されており、給水配管240の他端は圧縮ポンプ270に接続されている。そして、水タンクに貯留した水を圧縮ポンプ270により所定圧力に圧縮し、給水配管240を介して噴射ノズル231に供給することにより、噴射ノズル231から微粒子状(霧状)の水が噴出する。なお、本実施形態の噴射ノズル231から噴射する水粒子の径は、約10〜400μmである。また、噴射する水の圧力は、約0.05〜1.0MPaである。
【0030】
この噴射ノズル231を有する噴霧部230は、落下部220の略中心部と外周部の内外2系統に分かれており、落下部220の高さ方向(上下方向)に多段に配置されている。内側系統の噴射部230は、高さ方向に複数段(例えば4〜8段)となっており、各段の噴射部230には、落下部220の中心から外側に向かって同心円状で等間隔に複数箇所(例えば4〜8カ所)の噴射ノズル231が取り付けられている。
【0031】
一方、外側系統の各噴射部230は、内側系統の各噴射部230にそれぞれ対向する位置に配置されている。すなわち、外側系統の各噴射ノズル231を有する噴射部230は、高さ方向に複数段(例えば4〜8段)の給水配管240に取り付けられている。各段の給水配管240には、落下部220の外側から中心に向かって同心円状で等間隔に複数箇所(例えば4〜8カ所)の噴射ノズル231が取り付けられている。なお、噴射ノズル231の向きは、自由落下するベントナイト混合土300を拡散させないために略水平方向とすることが好ましいが、ベントナイト混合土300に対して満遍なく加水を行うために、下向きあるいは上向きに設置する場合もある。
【0032】
また、本実施形態では、詳細には図示しないが、複数の噴射部230にそれぞれ対応して、各噴射部230と同等の噴射を行う複数のダミー噴射部250と、噴射部230とダミー噴射部250とを切り換えるための三方弁260とを備えている。なお、ダミー噴射部250は、噴射部230とほぼ同様の構成となっている。
【0033】
そして、各段の噴射部230毎に、噴射部230から水を噴射するか否かを調整することにより、加水量を調整することができる。具体的には、各噴射部230及び各ダミー噴射部250の給水配管240に設けた三方弁260を切り換えることにより、使用する噴射部230の段数を調整すればよい。三方弁260を切り換えることにより、各段の噴射部230及びこれに対応した各段のダミー噴射部250のいずれか一方から水が噴射される。このように、噴射部230における水の流れをダミー噴射部250に切り換えることにより、水頭バランスが変化しないので、各噴射部230における圧力変動及び流量変動を抑制することができる。
【0034】
本実施形態の噴射部230は、給水配管240と噴射ノズル231との間に、水を貯留して噴射ノズル231から噴射される水圧及び水量を均一にするために、円筒状の水貯留部(図示せず)を備えている。この水貯留部に貯留している水を、各噴射ノズル231から直接噴射(噴霧)するため、各噴射ノズル231にかかる流体圧や流量が均等となり、かつ容量の大きな水貯留部を用いることにより、給水配管240の屈曲などによる水流の乱れ(乱流状態)や、水頭損失などが生じにくい。
【0035】
なお、本発明のシュート100は、上述したベントナイト混合土300の加水装置200だけではなく、落下する粉体又は粒状体を受け止めて下方へ導くための装置であれば、どのような装置に対しても適用することができる。すなわち、本実施形態の加水装置200は落下する粉体又は粒状体に対して加水を行うための装置であるが、落下する粉体又は粒状体に対して水以外の流体を加える装置に対しても、本発明のシュート100を適用することができる。例えば、本発明のシュート100は、セメント又はセメント混合物に対して、コンクリート混和剤(空気連行剤、減水剤、凝結・硬化調節剤、増粘剤、発泡剤・起泡剤等の溶液)等を混入する装置に対して適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
100 シュート
110 短冊状板材
111 滑り部材
120 リング部材
121 板材
122 スプリング
200 加水装置
210 混合物供給部
211 ホッパー
212 スクリューコンベア
213 攪拌翼
214 定量供給装置
220 落下部
221 拡散装置
222 スカート部
223 拡散部
230 噴射部
231 噴射ノズル
240 給水配管
250 ダミー噴射部
260 三方弁
270 圧縮ポンプ
300 ベントナイト混合土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下する粉体又は粒状体を受け止めて下方へ導くためのシュートであって、
弾性及び可撓性を有する複数の短冊状板材を周方向に連続させると共に、全体として上方から下方へ向かって縮径するように配置したことを特徴とするシュート。
【請求項2】
前記複数の短冊状板材の外周面を囲うように、収縮性を有するリング部材を取り付けたことを特徴とする請求項1に記載のシュート。
【請求項3】
前記複数の短冊状板材は、その内面に摩擦係数の小さいフッ素樹脂からなる滑り部材を貼り付けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシュート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−86890(P2013−86890A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226399(P2011−226399)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【Fターム(参考)】