説明

シリコ−ン重合体およびペ−スト状シリコ−ン組成物

【目的】 本発明はシリコ−ン油に対し膨潤性を有し、シリコ−ン油の増粘剤として有用とされるシリコ−ン重合体、およびこれを用いたペ−スト状シリコ−ン組成物の提供を目的とするものである。
【構成】 本発明のシリコ−ン重合体は、一般式 R1aR2bHcSiO(4-a-b-c)/2または一般式 R1gHfSiO(4-g-f)/2 で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、一般式CmH2m-1O(C2H4O)h(C3H6O)iCmH2m-1 で示されるポリオキシアルキレンまたは一般式 R1jR4kSiO(4-j-k)/2 で示されるオルガノポリシロキサンとの合計量100 重量部を、25℃における粘度が100cS 以下である低粘度シリコ−ン油および/または多価アルコ−ル3〜200 重量部の存在下で付加重合させてなることを特徴とするものであり、このペ−スト状シリコ−ン組成物はこのシリコ−ン重合体とシリコ−ン油を剪断力下で混練処理してなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシリコ−ン重合体、特にはシリコ−ン油に対し膨潤性であるシリコ−ン重合体およびこれを用いて製造した水を安定に、かつ均一に分散させることのできるペ−スト状シリコ−ン組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シリコ−ン油はその安全性から医療、化粧品を初めする各種の分野において各種組成物の基油として用いられており、これらのシリコ−ン油は通常25℃における粘度が100cS 以上の比較的高粘度のものとされているが、最近は特に医療、化粧品の分野で100cS 以下の低粘度のシリコ−ン油がそのすぐれた伸展性、さっぱり感、および高い安全性から注目されており、その使用が検討されている。
【0003】しかし、この低粘度のシリコ−ン油を基油として例えばペ−スト状あるいはグリ−ス状のシリコ−ン組成物を調製する場合には、増粘剤の添加量を増加させる必要があるために、滑らかで均一な組成物が得られ難く、また得られる組成物から低粘度のシリコ−ン油が分離、排出され易いために安定性の低いものになるという問題が起こっている。
【0004】そのため、この低粘度のシリコ−ン油についてはその増粘剤としてデキストリンの脂肪酸エステルを使用する方法(特開昭62-121764 号、特開昭62-143970 号、特開昭62-143971 号、特開昭63-159489 号公報参照)、蔗糖の脂肪酸エステルを使用する方法(特開昭63-235366 号公報参照)、トリメチルシリル化ポリビニルアルコ−ルやトリメチルシリル化多糖類を使用する方法(特開昭62-240335 号公報参照)、脂肪酸エステル基含有セルロ−スエ−テルとするもの(特開昭63-260955 号公報参照)などのような有機系材料や、有機変性粘土鉱物とするもの(特開昭62-45656号、特開昭62-54759号、特開昭63-72779号公報参照)などの無機系材料を使用することが提案されているが、これらの有機系、無機系材料を増粘剤として用いると低粘度シリコ−ン油が本来有するさっぱり感、高伸展性などの特性が減退するという問題が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、これについては最近、特定のシリコ−ン重合体を増粘剤とし、低粘度のシリコ−ン油と剪断力下で処理することにより、均一なペ−スト状組成物を得る方法が提案されている(特開平2-43263号公報参照)が、これはシリコ−ン油に対してすぐれた増粘効果を与えるものの、水を配合した場合には均一に分散しないという欠点があり、医療、化粧品の分野では水分が必要成分として配合される処方が多いことから、界面活性剤が使用されるのであるが、この場合にはシリコ−ン油と水を均一に、かつ安定な状態で分散させることが難しいし、界面活性剤は皮膚に対して刺激性を有するものが多いので、この使用も好ましいものではない。
【0006】また、これについてはポリオキシアルキレン基を有する特定のシリコ−ン重合体を増粘剤とすることで低粘度のシリコ−ン油を水と均一に分散させる方法も提案されている(特願平3−56033 号明細書参照)が、このシリコ−ン重合体は増粘性が十分ではないので、より増粘性の高いものが望まれている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような不利、欠点を解決したシリコ−ン重合体に関するものであり、これは一般式R1aR2bHcSiO(4-a-b)/2・・・・・(1){ここにR1は同種または異種の炭素数1〜18の非置換または置換のアルキル基、アリ−ル基、アラルキル基またはハロゲン化炭化水素基、R2は一般式CnH2nO(C2H4O)d(C3H6O)eR3[ここにR3は水素原子または炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基もしくは-(CO)-R5(R5は炭素数1〜5の飽和脂肪族炭化水素基)で示される基、d は2〜200 の整数、e は0〜200 の整数、d+e は3〜200 の整数、n は2〜6]で示されるポリオキシアルキレン基、a は1.0 ≦a ≦2.5 bは0.001 ≦b ≦1.0 、c は 0.001≦c ≦1.0 }で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサン、および/または一般式R1fHgSiO(4-f-g)/2・・・・・(2)(ここにR1は上記と同じ、f は1.0 ≦f ≦3.0 gは0.001 ≦g ≦1.5)で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサンと、一般式CmH2m-1O(C2H4O)h(C3H6O)iCmH2m-1・・・・・(A)(ここにh は2〜200 の整数、i は0〜200 の整数、h+i は3〜200 の整数、mは2〜6)で示されるポリオキシアルキレンおよび/または一般式R1jR4KSiO(4-j-K)/2 ・・・・・(B)(ここに R1 は前記に同じ、R4は末端に脂肪族不飽和基を有する炭素数2〜10の1価炭化水素基、j は1.0 ≦j ≦3.0 kは0.001 ≦k ≦1.5)で示されるオルガノポリシロキサンとの組合せにおいて、前記一般式(1) および/または一般式(A)で示される成分を必須成分とする合計量100重量部の組成物を、25℃における粘度が100cS 以下である低粘度のシリコ−ン油および/または多価アルコ−ル3〜200 重量部の存在下で付加重合させてなることを特徴とするものである。
【0008】すなわち、本発明者らはシリコ−ン油に対して膨潤性であり、均一なペ−スト状組成物を与えるシリコ−ン重合体を開発すべく種々検討した結果、分子中にポリオキシアルキレン基を含有するオルガノハイドロジエンポリシロキサンと分子中に脂肪族不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンとの混合物またはオルガノハイドロジエンポリシロキサンと分子中に脂肪族不飽和基(CmH2m-1基) を有するポリオキシアルキレンとの混合物を25℃における粘度が100cS 以下であるシリコ−ン油および/または多価アルコ−ルの存在下で付加重合させると、得られる重合体がシリコ−ン油に対して膨潤性を有するものとなり、シリコ−ン油に対する増粘剤として作動すること、またこれをシリコ−ン油と共に剪断力下で混練処理するとペ−スト状の均一なシリコ−ン組成物の得られることを見出し、ここに使用するオルガノハイドロジエンポリシロキサン、ポリオキシアルキレン、オルガノポリシロキサンの種類、使用量などについての研究を進めて本発明を完成させた。
【0009】
【作用】本発明は新規なシリコ−ン重合体およびこれを用いて得られるペ−スト状シリコ−ン組成物に関するものであり、これはポリオキシアルキレン基を含有するオルガノハイドロジエンポリシロキサンと脂肪族不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンとの混合物またはオルガノハイドロジエンポリシロキサンと脂肪族不飽和基を含有するポリオキシアルキレンとの混合物を25℃における粘度が100cS以下である低粘度シリコ−ン油および/または多価アルコ−ルの存在下で付加重合させてなるシリコ−ン重合体およびこの重合体をシリコ−ン油と剪断力下で混練処理してなるペ−スト状シリコ−ン組成物を要旨とするものである。
【0010】本発明のシリコ−ン重合体はオルガノハイドロジエンポリシロキサンと脂肪族不飽和基含有化合物とを25℃における粘度が100cS 以下であるシリコ−ン油および/または多価アルコ−ルの存在下で付加重合させたものであるが、これはこのオルガノハイドロジエンポリシロキサンまたは脂肪族不飽和基を含有する化合物のいずれかがポリオキシアルキレン基を含有することが必須要件とされるものである。
【0011】したがって、オルガノハイドロジエンポリシロキサンと脂肪族不飽和基含有化合物との組合せについては、まずポリオキシアルキレン基を含有する一般式R1aR2bHcSiO(4-a-b-c)/2 ・・・・・・・・(1)で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサンで、R1がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、フェニル基、トリル基などのアリ−ル基、ベンジル基、フェネチル基などのアラルキル基、またはこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部をハロゲン原子で置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基などから選択される、同一または異種の炭素数1〜18の非置換または置換のアルキル基、アリ−ル基、アラルキル基またはハロゲン化炭化水素基、R2が一般式CnH2nO(C2H4O)d(C3H6O)e-R3・・・・・・(3)で示され、R3が水素原子またはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基、もしくは式 -(CO)-R5 で示され、R5が炭素数1〜5の飽和脂肪族炭化水素基であり、d が2〜200 の整数、e が0〜200 の整数、d+eは3〜200の整数、n が2〜6であるポリオキシアルキレン基であるものとされる。更に、得られた重合物をシリコーン油と剪断力下で混練処理して得られたペースト状組成物に水を十分に分散させるためにはd/e ≧1であることが望ましい。
【0012】なお、このa b c 値のa について1.0 未満では得られた重合体がシリコ−ン油に対して十分に膨潤せず、2.5 より大きいと得られる重合体をシリコ−ン油と剪断力下で混練処理して得られるペ−スト状組成物に水分を十分に分散させることができないので1.0 ≦a ≦2.5 、好ましくは1.0 〜2.0 とすることが必要であり、b については0.001 未満では得られる重合体をシリコ−ン油と剪断力下で混練処理して得たペ−スト状組成物に水が十分に分散せず、1.0 より大きいと得られる重合体のシリコ−ン油への膨潤性が十分でなくなるので0.001 ≦b ≦1.0好ましくは0.005 〜1.0 とされるし、C については0.001 未満では付加重合により得られる重合体に3次元構造体の形成が困難となり、シリコ−ン油の増粘性に乏しいものとなり、1.0 より大きいと付加重合により形成される3次元構造体の架橋密度が高くなりすぎ、シリコ−ン油を安定に保持することができないので、0.001 ≦c ≦1.0 、好ましくは0.005 〜1.0 とされるものである。
【0013】しかして、このオルガノハイドロジエンポリシロキサンと組合わされるものは一般式R1jR4kSiO(4-j-k)/2・・・・(B)で示され、R1は前記と同じ、R4は末端にビニル基、アリル基などのような脂肪族不飽和基を有する炭素数が2〜10の1価炭化水素基 j は1.0 未満では付加重合により形成される3次元構造体の架橋密度が高くなりすぎてシリコ−ン油を安定に保持する重合体が得られず、3.0 より大きいと付加重合により得られる重合体中における3次元構造体の形成が不充分となり、シリコ−ン油の増粘性の乏しいものとなるので、1.0 ≦d ≦3.0好ましくは 1.0〜2.5 とされ、k については0.001 未満であると目的とする重合体中における3次元構造体の形成が困難となってシリコ−ン油の増粘性の乏しいものとなり、1.5 より大きいと付加重合により形成される3次元構造体の架橋密度が高くなりすぎて、シリコ−ン油を安定に保持することができる重合体を得ることができなくなるので0.001 ≦k ≦1.5 、好ましくは0.005 〜1.0 とされる脂肪族不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンとされるが、この一般式(1)で示されるオルガノハイドロポリシロキサンと一般式(B) で示されるオルガノポリシロキサンとの混合物は以下混合物−I と略記される。
【0014】また、このオルガノポリシロキサンと脂肪族不飽和基含有化合物との組合せについては、一般式R1fHgSiO(4-f-g)/2 ・・・・(2)で示され、R1が前記と同じで、f は1.0 未満では得られた重合体がシリコ−ン油への膨潤性が十分に得られず、3.0 より大きいと付加重合により得られる重合体中に3次元構造を形成することが困難となり、シリコ−ン油の増粘性が乏しいものとなるので1.0 ≦f ≦3.0 、好ましくは 1.0〜2.5 とされ、g は0.001 未満であると付加重合により得られる重合体中に3次元構造を形成することが困難となり、シリコ−ン油の増粘性が乏しいものとなり、1.5 より大きいと付加重合により形成される3次元構造の架橋密度が高くなりすぎて得られる重合体がシリコ−ン油を安定に保持しなくなるので0.001 ≦g ≦1.5 、好ましくは0.005 〜1.0 であるオルガノハイドロジエンシロキサンと一般式CmH2m-1(C2H4O)h(C3H6O)iCmH2m-1・・・・・(A)で示され、h は2〜200 好ましくは5〜100 、iは0〜200好ましくは0〜100 であり、得られる重合体に水を十分に分散させるためにはh/i ≧1であることが望ましく、m は2〜6、好ましくは3〜6であるポリオキシアルキレンとの混合物(以下混合物-II と略記する)が例示される。
【0015】本発明のシリコ−ン重合体は上記した混合物−I または-II を25℃における粘度が100cS 以下の低粘度シリコ−ン油および/または多価アルコ−ルの存在下で付加重合させることによって得ることができるが、ここに使用される25℃における粘度が100cS 以下であるシリコ−ン油としては直鎖状または分枝状メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、エチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのような環状ジメチルポリシロキサンなどがあげられるが、これらは25℃における粘度が100cS 以下のものであればその粘度は特に限定されず、これは好ましくは粘度が50cS以下のものとすることがよいが、これらは単独で用いても2種以上の混合物であってもよい。
【0016】また、ここに使用される多価アルコ−ルとしてはエチレングリコ−ル、1,3−ブチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、ジプロピレングリコ−ル、グリセリン、ジグリセリンなどが例示されるが、これらは単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0017】また、この混合物−I または−IIの付加重合は上記したように粘度が100cS 以下の低粘度シリコ−ン油および/または多価アルコ−ルの存在下で行なわれるのであるが、ここに使用される低粘度シリコ−ン油および/または多価アルコ−ルの量は上記した混合物−I または−IIの100 重量部に対して3重量部未満では十分な増粘性を有するシリコ−ン重合体が得られず200 重量部より多くするとその付加重合反応が阻害され反応率が低下し、この場合も十分な増粘性をもつ重合体が得られなくなるので、これは3〜200 重量部とすることが必要とされる。
【0018】なお、この混合物−I または−IIの付加重合は、例えば塩化白金酸、アルコ−ル変性塩化白金酸または塩化白金酸−ビニルシロキサン錯体などのような公知の白金化合物触媒またはロジウム化合物触媒の存在下に、室温または50〜150 ℃の加温下に反応させて行なえばよい。この場合には必要に応じ有機溶剤を使用してもよく、これにはメタノ−ル、エタノ−ル、2−プロパノ−ル、ブタノ−ルなどの脂肪族アルコ−ル、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、フッ化塩化炭素水素などのハロゲン化炭素水素が例示されるが、このシリコ−ン重合体が医療、化粧品用に用いられることからはエタノ−ルとすることが好ましい。
【0019】付加重合の際に低粘度シリコーン油および/または多価アルコールを存在させておくと、これらの低粘度シリコーン油および/または多価アルコールを含有したまま重合体が得られる。すると、この重合体はシリコーン油に対して、より高い膨潤性を有するようになり、特にすぐれた増粘性を示すようになる。
【0020】また、このようにして得られたシリコ−ン重合体100 重量部にシリコ−ン油10〜1,000 重量部、好ましくは20〜500 重量部を分散混合したのち、剪断力下で混練処理するとペ−スト状の均一なシリコ−ン組成物を得ることができるが、この組成物はシリコ−ン油と比重差のある粉体や顔料などを沈降させずに安定に分散させることができるし、界面活性剤を使用しなくても容易に水を分散させることができるので、このものは化粧品用、医薬部外用などのクリ−ムおよびケ−キ状成形物などの配合基材として有用とされる。
【0021】なお、このシリコ−ン油は直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、これにはメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、エチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンのような環状のジメチルポリシロキサンなどが例示され、これらは単独でも2種以上の混合物であってもよいが、これは10重量部未満では均一なペ−スト状物が得られず、1,000重量部より多くすると十分な増粘性が獲得できないので10〜1,000 重量部とすることが必要とされる。
【0022】このようにして得られたペ−スト状シリコ−ン組成物は外観が滑らかな均一なものとなるが、剪断力を加えないか、これが不充分である場合にはシリコ−ン油による膨潤が不十分となるために両成分が混和せず、したがって組成物は不均一で感触および外観に滑らかさのないものとなる。なお、この剪断力下での混練処理は例えば三本ロ−ルミル、二本ロ−ルミル、サイドグラインダ−、コロイドミル、ガウリンホモシナイザ−などを用いて行なえばよいが、三本ロ−ルミルによる方法がこの好しいものとされる。
【0023】つぎに本発明で使用されるオルガノハイドロジエンポリシロキサンの合成例、本発明の実施例、比較例をあげる。
合成例反応器中に平均組成式が式
【化1】


で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサン68.0gエタノ−ル100.0g 平均組成式がCH2=CHCH2O(C2H4O)10CH3で示されるポリオキシアルキレン32.0g および塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、内温を70〜80℃に維持して2時間撹拌したのち、減圧下で溶媒を除去したところ、平均組成式が
【化2】


で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサンが得られた。
【0024】実施例1反応器中に平均組成式が式
【化3】


で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサン100g、エタノ−ル103.0g、平均組成式が CH2=CHCH2O(C2H4O)10CH2CH=CH2で示されるポリオキシアルキレン23.6g 、25℃における粘度が6cSであるジメチルポリシロキサン82.4g および塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、内温を70〜80℃に維持して2時間撹拌したのち、減圧下で溶媒を除去したところ、シリコ−ン重合体が得られた。
【0025】ついで、このシリコ−ン重合体100 重量部に25℃における粘度が6cSであるジメチルポリシロキサンン100 重量部を分散混合したのち、三本ロ−ルにより剪断力下で十分混練し、膨潤させてシリコ−ン組成物を作製したところ、このものは滑らかな感触を有し、粘度が82,800cPである均一なペ−スト状組成物であり、このシリコ−ン組成物50重量部と水50重量部との混合物は撹拌するだけで容易に水が分散し、均一なクリ−ム状組成物となった。
【0026】なお、比較のために上記と同様に配合した分散混合物を、三本ロ−ルの代わりにプラネタリ−ミキサ−を用いて室温下に2時間撹拌を行なったところ、この場合には重合体が均一に膨潤せず、滑らかな感触のペ−スト状組成物は得られなかったし、このものは水を加えても殆んど水が分散せず、油層と水層が2層に分離した。したがって、以上の結果から本発明の重合体は十分な剪断力を加えることにより初めてシリコ−ン油に均一に膨潤して高い増粘性を示し、滑らかな感触のペ−スト状組成物となるが、剪断力が加わらない条件ではそのようなペ−スト状組成物とならないことが明らかである。
【0027】比較例1反応器中に実施例1で使用したオルガノハイドロジエンポリシロキサン100g、エタノ−ル62.0g実施例1で使用したポリオキシアルキレン23.6g と塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、実施例1と同様に処理して重合体を作り、この重合体30重量部に25℃における粘度が6cSであるジメチルポリシロキサン70重量部を分散混合し、実施例1と同じように最終組成物中に含まれる架橋重合体含有量が等しくなるように配合し、三本ロ−ルミルにより剪断力下に十分混練してシリコ−ン組成物を作ったところ、このものは滑らかな感触を有するものであったが粘度は12,000cPと実施例1のものにくらべて粘度の低いものであり、この重合体は増粘性の乏しいものであることが確認された。
【0028】実施例2反応器中に平均組成式が式
【化4】


で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサン100g、エタノ−ル95.0g実施例1で使用したポリオキシアルキレン13.5g25℃における粘度が5cSであるジメチルポリシロキサン75.7g および塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、実施例1と同様に処理して重合体を作った。
【0029】つぎにこの重合体100 重量部とオクタメチルシクロテトラシロキサン200 重量部とを分散混合したのち、三本ロ−ルミルにより剪断力下に十分混練して膨潤されたシリコ−ン組成物を作製したところ、このものは滑らかな感触を有する、粘度が44,000cPの均一なペ−スト状組成物であり、このシリコ−ン組成物50重量部と水50重量部との混合物は撹拌するだけで容易に水が分散し、均一なクリ−ム状組成物となった。
【0030】比較例2反応器中に実施例2で使用したオルガノハイドロジエンポリシロキサン100g、エタノ−ル57.0g 、実施例1で使用したポリオキシアルキレン13.5g および塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、実施例1と同ように処理して重合体を作り、この重合体20重量部とオクタメチルシクロテトラシロキサン80重量部とを分散混合し、最終組成物中に含まれる架橋重合体含有量が等しくなるように配合し、三本ロ−ルミルにより剪断力下に十分混練してシリコ−ン組成物を作ったところ、このものは滑らかな感触を有するものであったが粘度は22,800cPで実施例2のものにくらべて粘度の低いものであることから、この重合体は増粘性の乏しいものであることが確認された。
【0031】実施例3反応器中に平均組成式が式
【化5】


で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサン100g エタノ−ル74.0g平均組成式が式 CH2=CHCH2O(C2H4O)30CH2CH=CH2で示されるポリオキシアルキレン18.5g 、25℃における粘度が6cSであるジメチルポリシロキサン29.6g および塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、実施例1と同様に処理して重合体を作った。
【0032】ついで、この重合体100 重量部とフェニルトリス(トリメチルシロキシ)シラン200 重量部とを分散混合したのち、三本ロ−ルミルにより剪断力下に十分混練して膨潤させたシリコ−ン組成物を作成したところ、このものは滑らかな感触を有する粘度が25,500cPの均一なペ−スト状組成物であり、このシリコ−ン組成物50重量部と水50重量部との混合物は撹拌するだけで容易に水が分散して均一なクリ−ム状組成物となった。
【0033】比較例3反応器中に実施例3で使用したオルガノハイドロジエンポリシロキサン100gエタノ−ル59.0g実施例3で使用したポリオキシアルキレン18.5g および塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、実施例1と同じように処理して重合体を作り、この重合体20重量部とフェニルトリス(トリメチルシロキサン)シラン80重量部とを分散混合し、最終組成物中に含まれる架橋重合体含有量が等しくなるように配合し、三本ロ−ルミルにより剪断力下に十分混練してシリコ−ン組成物を作ったところ、このものは滑らかな感触を有するものであったが粘度が8,000cP で実施例3のものに比べて粘度の低いものであることから、この重合体は増粘性の乏しいものであることが確認された。
【0034】実施例4反応器中に前記した合成例で得たオルガノハイドロジエンポリシロキサン100g エタノ−ル72.0g平均組成式が式
【化6】


で示されるジメチルビニルシリル基で末端が封鎖されたジメチルポリシロキサン28.9g25℃における粘度が30cSであるジメチルポリシロキサン14.3g および塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、実施例1と同様に処理して重合体を作った。
【0035】ついでこの重合体100 重量部と25℃における粘度が6cSであるジメチルポリシロキサン350 重量部とを分散混合したのち、三本ロ−ルミルにより剪断力下に十分混練してシリコ−ン組成物を作ったところ、このものは滑らかな感触を有する粘度が48,000cPの均一なペ−スト状組成物であり、このシリコ−ン組成物50重量部と水50重量部との混合物は撹拌するだけで水が容易に分散し、均一クリ−ム状組成物となった。
【0036】比較例4実施例4における重合体形成時にジメチルポリシロキサンを添加しないで重合して得た重合体100 重量部に粘度が6cSであるジメチルポリシロキサン350 重量部を分散混合したものを、プラネタリ−ミキサ−を用いて室温下に2時間撹拌したところ、この場合には重合体が均一に膨潤せず、滑らかな感触をもつペ−スト状組成物は得られず、これはまた水を加えても殆んど分散せず、油層と水層が2層に分離した。
【0037】実施例5反応器中に平均組成式が式
【化7】


で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサン100g、エタノ−ル103.0g、平均組成式が CH2=CHCH2O(C2H4O)10CH2CH=CH2で示されるポリオキシアルキレン23.6g 、1,3 −ブチレングリコール82.4g および塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、内温を70〜80℃に維持して2時間撹拌したのち、減圧下で溶媒を除去したところ、シリコ−ン重合体が得られた。
【0038】ついで、このシリコ−ン重合体100 重量部に25℃における粘度が50cSであるジメチルポリシロキサン100 重量部を分散混合したのち、三本ロ−ルにより剪断力下で十分混練し、膨潤させてシリコ−ン組成物を作製したところ、このものは滑らかな感触を有し、粘度が65,000cPである均一なペ−スト状組成物であり、このシリコ−ン組成物50重量部と水50重量部との混合物は撹拌するだけで容易に水が分散し、均一なクリ−ム状組成物となった。
【0039】なお、比較のために上記と同様に配合した分散混合物を、三本ロ−ルの代わりにプラネタリ−ミキサ−を用いて室温下に2時間撹拌を行なったところ、この場合には重合体が均一に膨潤せず、滑らかな感触のペ−スト状組成物は得られなかったし、このものは水を加えても殆んど水が分散せず、油層と水層が2層に分離した。したがって、以上の結果から本発明の重合体は十分な剪断力を加えることにより初めてシリコ−ン油に均一に膨潤して高い増粘性を示し、滑らかな感触のペ−スト状組成物となるが、剪断力が加わらない条件ではそのようなペ−スト状組成物とならないことが明らかである。
【0040】比較例5反応器中に実施例5で使用したオルガノハイドロジエンポリシロキサン100g、エタノ−ル62.0g実施例1で使用したポリオキシアルキレン23.6g と塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、実施例1と同様に処理して重合体を作り、この重合体30重量部に25℃における粘度が50cSであるジメチルポリシロキサン70重量部を分散混合し、実施例5と同じように最終組成物中に含まれる架橋重合体含有量が等しくなるように配合し、三本ロ−ルミルにより剪断力下に十分混練してシリコ−ン組成物を作ったところ、このものは滑らかな感触を有するものであったが粘度は 4,000cPと実施例1のものにくらべて粘度の低いものであり、この重合体は増粘性の乏しいものであることが確認された。
【0041】実施例6反応器中に平均組成式が
【化8】


で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサン100g、エタノ−ル160g、平均組成式が CH2=CHCH2O(C2H4O)30-(C3H6O)10-CH2CH=CH2で示されるポリオキシアルキレン34.7g 、エチレングリコール20g 、25℃における粘度が10cSであるジメチルポリシロキサン13.7g と塩化白金酸3重量%のエタノール溶液0.3gを仕込み、実施例1と同様に処理して重合体を作った。
【0042】次にこの重合体100 重量部とデカメチルシクロペンタシロキサン300 重量部とを分散混合したのち、三本ロールミルにより剪断力下に十分混練して膨潤されたシリコーン組成物を作製したところ、このものは滑らかな感触を有する粘度が52,000cPの均一なペースト状組成物であり、このシリコーン組成物50重量部と水50重量部との混合物は撹拌するだけで容易に水が分散し、均一なクリーム状組成物となった。
【0043】比較例6反応器中に実施例6で使用したオルガノハイドロジエンポリシロキサン100gエタノ−ル130g 実施例6で使用したポリオキシアルキレン34.7g および塩化白金酸3重量%のエタノ−ル溶液0.3gを仕込み、実施例1と同じように処理して重合体を作り、この重合体20重量部とデカメチルシクロペンタシロキサン80重量部とを分散混合し、最終組成物中に含まれる架橋重合体含有量が等しくなるように配合し、三本ロ−ルミルにより剪断力下に十分混練してシリコ−ン組成物を作ったところ、このものは滑らかな感触を有するものであったが粘度が5,500cP で実施例3のものに比べて粘度の低いものであることから、この重合体は増粘性の乏しいものであることが確認された。
【0044】
【発明の効果】本発明はシリコ−ン重合体およびペ−スト状シリコ−ン組成物に関するものであり、これは前記したようにポリオキシアルキレン基を含まないオルガノハイドロジエンポリシロキサンと脂肪族不飽和基を含有するポリオキシアルキレンとの混合物、またはポリオキシアルキレン基を含むオルガノハイドロジエンポリシロキサンと脂肪族不飽和基を含有するオルガノポリシロキサンとの混合物を、25℃における粘度が100 cS以下のシリコ−ン油および/または多価アルコールの存在下で付加重合してなることを特徴とするシリコ−ン重合体、およびこれとシリコ−ン油とを剪断力下で混練してなるペ−スト状シリコ−ン組成物を要旨とするものである。
【0045】そして、このようにして作られたシリコ−ン重合体はシリコ−ン油に対して良好な膨潤性を示すし、シリコ−ン油に対する増粘剤として作動するものであり、このペ−スト状シリコ−ン組成物はシリコ−ン油と比重差のある粉体や顔料を沈降せずに安定に分散させることができ、界面活性剤を使用しなくても容易に水に分散させることができるので、化粧品用、医薬部外用のクリ−ムやケ−キ状成形物の配合基材として有用とされるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】一般式R1aR2bHcSiO(4-a-b-c)/2・・・・・(1){ここにR1は同種または異種の炭素数1〜18の非置換または置換のアルキル基、アリ−ル基、アラルキル基またはハロゲン化炭化水素基、R2は一般式CnH2nO(C2H4O)d(C3H6O)eR3[ここにR3は水素原子または炭素数1〜10の飽和脂肪族炭化水素基もしくは-(CO)-R5(R5 は炭素数1〜5の飽和脂肪族炭化水素基)で示される基、d は2〜200 の整数、e は0〜200 の整数、d+e は3〜200 の整数、n は2〜6]で示されるポリオキシアルキレン基、a は1.0 ≦a ≦2.5 bは0.001 ≦b ≦1.0 、c は0.001 ≦c ≦1.0 }で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサン、および/または一般式R1fHgSiO(4-f-g)/2・・・・・(2)(ここにR1は上記と同じ、f は1.0 ≦f ≦3.0g は0.001 ≦g ≦1.5)で示されるオルガノハイドロジエンポリシロキサンと、一般式CmH2m-1O(C2H4O)h(C3H6O)iCmH2m-1・・・・・(A)(ここにh は2〜200 の整数、i は0〜200 の整数、h+i は3〜200 の整数、mは2〜6)で示されるポリオキシアルキレンおよび/または一般式R1jR4KSiO(4-j-K)/2 ・・・・・(B)(ここに R1 は前記に同じ、R4は末端に脂肪族不飽和基を有する炭素数2〜10の1価炭化水素基、j は1.0 ≦j ≦3.0 kは0.001 ≦k ≦1.5)で示されるオルガノポリシロキサンとの組合せにおいて、前記一般式(1) および/または一般式(A)で示される成分を必須成分とする合計量100重量部の組成物を、25℃における粘度が100cS 以下である低粘度のシリコ−ン油および/または多価アルコ−ル3〜200 重量部の存在下で付加重合させてなることを特徴とするシリコ−ン重合体。
【請求項2】オルガノハイドロジエンポリシロキサンが、一般式 R1fHgSiO(4-f-g)/2( R1f gは前記に同じ)で示されるものであり、一般式CmH2m-1O(C2H4O)h(C3H6O)iCmH2m-1(h imは前記に同じ)で示されるポリオキシアルキレンにおけるm が3〜6である請求項1に記載したシリコ−ン重合体。
【請求項3】請求項1に記載したシリコ−ン重合体100 重量部とシリコ−ン油10〜1,000 重量部とを剪断力下で混練処理してなる水分散性を有するペ−スト状シリコ−ン組成物。

【公開番号】特開平5−140320
【公開日】平成5年(1993)6月8日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−332641
【出願日】平成3年(1991)11月21日
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)