説明

シリコーンゴム組成物

【目的】 本発明は複写機あるいはLBPのトナーの現像部に用いられる現像用ロール、トナー搬送用ロールなどの製造に好適とされるシリコーンゴム組成物の提供を目的とするものである。
【構成】 本発明のシリコーンゴム組成物は、ジオルガノポリシロキサン、補強性シリカ充填剤、カーボンブラックおよび非アシル系有機過酸化物とからなる有機過酸化物反応型の半導電性のシリコーンゴム組成物に、平均粒径が1〜500μmの球状粒子を添加してなることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシリコーンゴム組成物、特には複写機あるいはレーザー・ビーム・プリンター(LBP)のトナーの現像部分に用いられる現像用ロール、トナー搬送用ロールなどの製造に好適とされるシリコーンゴム組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子写真用複写機の複写機、LBPのトナーの現像部分に用いられている現像用ロールやトナー搬送用ロールは、耐熱性、耐寒性、低圧縮永久歪特性がすぐれていることからシリコーンゴムで製造されているが、このシリコーンゴムで作られたロールはこのロールの表面状態の凹凸の度合および/または電気的搬送力でトナーを搬送し、搬送したトナーを感光ドラム(OPC)に転写するという機構であるために、ロール表面の凹凸の度合いの微妙な違いによってトナーの搬送力に差が生ずるという問題点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】そのため、このロールについてはロール表面の表面粗さ、凹凸の形状などを研削などの手段でコントロールすることが行なわれているのであるが、この研削などでロール表面の粗さ、凹凸の形状が研削の際の条件調整で微妙にコントロールされたとしても、このようにして得られたロールには長時間使用するとロール表面が摩耗し、ロールの表面状態(表面粗さ)、凹凸の形状が経時的に変化するためにその能力が低下するという欠点がある。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明はこのような問題点、欠点を解決することができるシリコーンゴム組成物に関するものであり、これはジオルガノポリシロキサン、補強性シリカ充填剤、カーボンブラックおよび非アシル系有機過酸化物とからなる有機過酸化物反応型の半導電性のシリコーンゴム組成物に、平均粒径が1〜500 μmの球状粒子を添加してなることを特徴とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明者らは長時間使用後も経時的変化の生じないシリコーンゴムロールを開発すべく種々検討した結果、これについてはこのゴムロールを製造するためのシリコーンゴム組成物を従来公知の有機過酸化物反応型のものとするが、これに平均粒径が1〜500 μmの球状粒子を添加すればこれによってこのシリコーンゴム組成物から作られるロールの表面粗さ、凹凸の形状などがコントロールされるし、これは長時間使用後も経時変化しないということを見出し、したがってこれによればこれが現像用ロールトナー搬送用ロールとして長期間使用することができるようになるということを確認し、ここに使用される球状粒子の種類、添加量などについての研究を進めて本発明を完成させた。以下にこれをさらに詳述する。
【0006】
【作用】本発明はシリコーンゴム組成物、特には現像用ロール、トナー搬送用ロールなどを製造するためのシリコーンゴム組成物に関するもので、これはジオルガノポリシロキサン、補強性シリカ充填剤、カーボンブラックおよび非アシル系有機過酸化物とからなる有機過酸化物反応型の半導電性のシリコーンゴム組成物に、平均粒径が1〜500 μmの球状粒子を添加してなることを特徴とするものであるが、このシリコーンゴム組成物を使用してロールを製造すると、このロールには適宜な表面粗さと凹凸が与えられ、これは長時間使用しても経時変化しないので、長期間使用することができるという有利性が与えられる。
【0007】本発明のシリコーンゴム組成物としては一般にロールなどの成形は圧縮成形、射出成形、トランスファー成形などの方法で加圧下に成形されることが多く、これらの成形法を用いた場合、球状粒子が得られた成形品から脱落すると、脱落した箇所からトナーが入り込み、印字の品位を大きく低下させることがあるが、この成形が充分な加圧下で行なわれると、この組成物中に含まれている球状粒子とゴム組成物との密着力が大きくなり、これによって経時変化による球状粒子のゴム組成物からの脱落などの問題が解決されるというメリットがあるので、これには有機過酸化物反応型のものが使用される。
【0008】したがって、この第1成分はジオルガノポリシロキサンとされるが、これは常温でゴム状である、好ましくは1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有するジオルガノポリシロキサンとされ、これには例えばジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・メチルアリルシロキサン共重合体などが例示されるが、これらは分子鎖末端がシラノール基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基で封鎖されたものとされる。
【0009】また、ここに使用される第2成分としての補強シリカ充填剤はこのシリコーンゴムの物性値を改善するために添加されるものであり、これにはヒュームドシリカ、湿式シリカなどが例示されるが、これらはその表面をシラン、シロキサンなどで処理して疎水化したものであってもよい。なお、この添加量は上記したジオルガノシロキサン 100重量部に対して20〜60重量部の範囲とすればよい。
【0010】つぎに、ここに使用される第3成分としてのカーボンブラックは本発明のシリコーンゴム組成物を半導電性のものとするための導電性付与剤とされるものであり、これはどのような種類、粒径のものであってもよく、半導電性の抵抗領域が103 Ωcm〜 109Ωcmであることが望ましいのであるが、前記した第1成分としてのオルガノポリシロキサンに対し2重量%未満では導電性の高いカーボンブラックを用いたとしてもこの抵抗領域とすることが難しいし、バインダー中にカーボンブラックが均一に分散し難く、その結果抵抗ムラを生ずるという不利が生じ、75重量%を越えると組成物の加工性、一般物性が低下するので、この添加量は2〜75重量%の範囲、好ましくは5〜50重量%とすることがよい。
【0011】また、ここに使用される第4成分としての非アシル系の有機過酸化物はこのシリコーンゴム組成物を硬化させるための硬化剤である。しかし、これはベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドのようなアシル系のものとすると、シリコーンゴム組成物中のカーボンブラックによって加硫阻害のひき起こされるおそれがあるので、非アシル系のものとすることが必要であり、これにはジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキセンなどが例示される。なお、このものは活性化エネルギーが 33kcal/モル以上のものとすることがよいが、この添加量は第1成分としてのジメチルシロキサンに対し、 0.2〜5.0 重量%の範囲とすればよい。
【0012】なお、このシリコーンゴム組成物に導電性繊維、導電性金属または金属酸化物、耐熱性向上剤、顔料などの補助資材の所定量を添加することは任意とされる。
【0013】本発明のシリコーンゴム組成物は上記のシリコーンゴム組成物に球状粒子を添加したものであるが、この球状粒子はその平均粒径が1μm未満のものであると、これが不均一分散になり易く、したがって均一な凹凸状態を有するロール表面が得られ難いし、またロール表面の凹凸が小さくなりすぎるために、トナーの搬送量、搬送力が小さくなり、結果的に印字をした際の画像の濃度が薄くなってしまうし、これが平均粒径 500μmを越えるものであると、逆にロール表面の凹凸が大きくなり過ぎるために、トナーの搬送量、搬送力が大きくなって結果的に印字をした際の画像濃度が濃くなってしまうという問題があるので、これは平均粒径が1〜500 μmのものとすることが必要とされるが、この平均粒径の好ましい範囲は1〜100 μmのものとされる。
【0014】また、この球状粒子としては球状を有するものであれば何でもよく、これには球状シリカ、球状シリコーンゴムボール、球状カーボンまたはこれらで中空構造をもつものが例示されるが、現像部のロールが感光ドラム(OPC)に接触する用途に使用されるものであるときには、この球状粒子がOPCを傷つけないようにするためにこれは硬い粒子とするよりはシリコーンゴムボールまたは中空を有する粒子とすることがよい。
【0015】なお、この球状粒子の添加量は上記した有機過酸化物反応型のシリコーンゴム組成物 100重量部に対し、5重量部未満では粒状粒子の分散密度が低すぎてトナーの搬送力が弱くなりやすく、200 重量部より多くすると加工性がわるくなりやすいし、一般物性も低下しがちなので5〜200 重量部の範囲とすればよいが、この好ましい範囲は5〜100 重量部とされる。
【0016】この球状粒子を添加したシリコーンゴム組成物は圧縮成形、射出成形、トランスファー成形などの加圧下での成形で成形体とすればよいが、このものは必要に応じ 150〜 250℃で1〜24時間の熱気加硫で二次加熱して有機過酸化物の分解残渣や低分子量シロキサンを除去することがよい。なお、このシリコーンゴム組成物はこの球状粒子が平均粒径1〜500 μmのもので、適度の硬度をもつものであることから、これを添加したシリコーンゴム組成物からロールを製造すると、このロールがその表面に適度の表面粗さと凹凸をもつものとなるので複写機の現像用ロール、トナー搬送用ロールとして有用とされ、これは長時間使用しても経時変化を起こさないという有利性が与えられる。
【0017】
【実施例】つぎに本発明の実施例、比較例をあげる。
実施例有機過酸化物反応型のシリコーンゴムコンパウンド・KE−78VBS[信越化学工業(株)製商品名]100 重量部に、カーボンブラック・サーマルブラック[旭カーボン(株)製商品名]40重量部、フュームドシリカ系充填剤・アエロジル200[日本アエロジル(株)製商品名]25重量部、平均粒径が20μmである球状粒子・シリコーンゴムボール[信越化学工業(株)製商品名]20重量部を添加し、加圧ニーダーで混練してシリコーンゴム組成物を調製した。なお、ここに使用したシリコーンゴムボールは低温硬化性の付加反応型シリコーンゴム・KE−106 LTV[信越化学工業(株)製商品名]100 重量部に硬化触媒C−RG[同社製商品名]10重量部を添加し、これを高さ20cmの97℃に保持された水を満たした液槽中に1滴づつ滴下し、加硫硬化させたものである。
【0018】ついで、このシリコーンゴム組成物に2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン 1.5重量部を添加したのち、これをステンレスまたは鉄製のシャフトと共に円筒型のキャビティに注入して直径20mmφのロールを作り、ギャーオーブン中で 200℃で2時間後熱処理を行ない、円筒研削盤で表1に示した研削条件で外径18.0mmまで研削したところ、表1に示したような表面粗さをもつロールが得られたので、これを用いて印字試験を行なったところ、これらはいずれも初期の適正な画像を与えたし、これについて13,000枚の通紙テストを行なったところ、これには画像の品位に大きな差は生じなかった。
【0019】
【表1】


【0020】比較例上記の実施例における粒状粒子・シリコーンゴムボールの添加をしないほかは実施例と同様に処理してシリコーンゴム組成物を調製し、これから実施例と同様の方法でロールを作り、同様に後熱処理したのち、円筒研削盤で表2に示した研削条件で外径18.0mmまで研削したところ、表2に示したような表面粗さをもつロールが得られたので、これを用いて印字試験を行なったところ、条件1、3のものは初期の段階で印字の際ににじみが発生し、条件2、4のものは印字試験では初期の段階では適正な画像を与えたが通紙テストでは 3,000枚で画像にじみが発生して画像の品位が著しく低下した。
【0021】
【表2】


【0022】
【発明の効果】本発明はシリコーンゴム組成物、特には複写機あるいはLBPのトナーの現像部分に用いられる現像用ロール、トナー搬送用ロールなどの製造に好適とされるシリコーンゴム組成物に関するものであり、これは前記したようにジオルガノポリシロキサン、補強性シリカ充填剤、カーボンブラックおよび非アシル系有機過酸化物とからなる有機過酸化物反応型の半導電性のシリコーンゴム組成物に、平均粒径が1〜500 μmの球状粒子を添加してなることを特徴とするものであるが、このようにして作られたシリコーンゴム組成物からシリコーンゴムロールを製造すると、このロールは適度の表面粗さと凹凸をもつものとなるので、複写機の現像用ロール、トナー搬送用ロールとして有用とされるほか、これは長時間使用しても経時変化を起こさないという有利性が与えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】ジオルガノポリシロキサン、補強性シリカ充填剤、カーボンブラックおよび非アシル系有機過酸化物とからなる有機過酸化物反応型の半導電性のシリコーンゴム組成物に、平均粒径が1〜500 μmの球状粒子を添加してなることを特徴とするシリコーンゴム組成物。