説明

シロキサン系組成物およびその硬化物ならびにその用途

【課題】130℃以上の高温下に長時間、曝されても劣化しない、さらなる耐熱性を有する、耐熱性封止材用のシロキサン系組成物を提供する。
【解決手段】一般式(1)


(式中、Xは、一般式で表される特定の基。)で表されるシロキサン化合物(A)および金属化合物を含む組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シロキサン化合物を含むシロキサン系組成物およびその硬化物に関する。本発明のシロキサン系組成物およびそれを硬化させてなる硬化物は、耐熱性を要求される封止材または接着剤、特にパワー半導体用封止材、または、透明性を要求される光学部材用封止材、レンズ、光学用薄膜、特に、発光ダイオード(Light Emitting Diode;以下、LEDと略する。)または半導体レーザー用封止材に使用される。
【背景技術】
【0002】
半導体およびLED等の封止材には、動作中の半導体素子およびLEDの発熱に耐えるための耐熱性が要求される。また、LED等の光学部材用途の封止材には、耐熱性に加え透明性が要求される。これらの封止材としては、エポキシ樹脂またはシリコーンが用いられてきた。尚、本明細書において、シリコーンとは、シロキサン結合による主骨格を持つ高分子化合物を指す。
【0003】
しかしながら、従来のエポキシ樹脂やシリコーンによる封止材は、パワー半導体、または自動車のヘッドライトまたは液晶テレビのバックライトに使用される高輝度LEDまたは半導体レーザー等の高輝度発光素子の封止材に用いるには、耐熱性が不充分であり、封止材の劣化による電流のリーク、また封止材の黄変等の不具合が起きることが知られていた。炭化ケイ素(SiC)を用い耐電圧性が高い半導体であるパワー半導体または高輝度発光素子の発熱に耐える封止材が求められている。
【0004】
このような、封止材となる耐熱性樹脂には、ポリイミドが挙げられる。
【0005】
例えば、特許文献1には、強誘電性膜および表面保護膜を有する半導体素子と、樹脂からなる封止部材とを備え、表面保護膜はポリイミドからなることを特徴とする樹脂封止型半導体装置が開示されており、当該表面保護膜は、ポリイミド前駆体組成物膜を230℃〜300℃に加熱して硬化させるとき際される。しかしながら、半導体素子、発光素子を封止するためには、ポリイミド前駆体組成物は室温(20℃)付近において固体であるため、溶剤に溶かした状態で前記素子にコーティングする必要があり、無溶剤による封止材のポッティング加工ができない。尚、ポッティング加工とは、樹脂液およびシロキサン液等を基材表面に垂らし、加熱または紫外線照射で縮重合もしくは付加重合によって硬化させ、例えば、封止する加工である。
【0006】
また、このような無溶剤によるポッティング加工が可能で、且つ透明であり、耐熱性封止材の候補となる材料に、シルセスキオキサンが挙げられる。
【0007】
シルセスキオキサンは、アルキルトリアルコキシシラン等を加水分解し縮重合させてなるネットワーク状ポリシロキサンである。シルセスキオキサンにおいては、無機物であるシロキサン骨格の持つ高耐熱性とそれに結合する有機基の特性を生かした分子設計が可能であり、様々な用途に使用される。また、常温で液体のものもあり、ポッティング加工が可能である。
【0008】
シルセスキオキサンの合成方法は、例えば、特許文献2〜7および非特許文献1〜6に開示されている。特に、シルセスキオキサンの透明性に着目したLEDや半導体レーザー等の光学部材用の耐熱性封止材については、種々検討されており、例えば、特許文献2および非特許文献7に開示されている。
【0009】
また、特許文献8には白金系触媒である硬化反応触媒を含むケイ素含有硬化性組成物が開示されている。
【0010】
さらに、非特許文献8には、シロキシリチウム化合物の合成手法、非特許文献9にはジシロキサン化合物の合成方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−270611号公報
【特許文献2】特開2004−143449号公報
【特許文献3】特開2004−359933号公報
【特許文献4】特開2006−299150号公報
【特許文献5】特開2007−15991号公報
【特許文献6】特開2009−191024号公報
【特許文献7】特開2009−269820号公報
【特許文献8】特開2005−325174号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】I. Hasegawa et al., Chem. Lett., pp.1319(1988)、
【非特許文献2】V. Sudarsanan et al., J. Org. Chem., pp1892(2007)
【非特許文献3】M. A. Esteruelas, et al., Organometallics, pp3891(2004)
【非特許文献4】A. Mori et al., Chemistry Letters, pp107(1995)
【非特許文献5】J.Mater.Chem.,2007,17,3575−3580
【非特許文献6】Proc. of SPIE Vol. 6517 651729-9
【非特許文献7】「シルセスキオキサン材料の化学と応用展開」、シーエムシー出版、伊藤真樹氏監修、2007年第1刷発行
【非特許文献8】Polymer Bulletin,vol.37,pp705−710, 1996,K.Shintani
【非特許文献9】Daniel Bucca, Teddy M. KellerJournal of Polymer Science PartA, Polymer Chemistry, vol.35, p1033,1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前述の光学部材等に使用される耐熱性封止材には、LED、半導体レーザー等の高輝度素子発光素子の使用により、益々の高耐熱化が求められ、高温下においての変質および着色等の劣化のない長期耐久性が求められる。しかしながら、透明性を有し、且つ、130℃以上の高温下に長時間曝されても劣化しない汎用の封止材は未だ得られていない。
【0014】
本発明は従来のシルセスキオキサンに比べさらなる耐熱性を有する、60℃以下で液体であり、室温(20℃)でポッティング加工可能であり、長時間、130℃以上の高温下に曝されても劣化しない透明な封止材に使用するためのシロキサン系組成物およびその硬化物を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のシロキサン系組成物(以下、単に組成物ということがある。)は、必須の化合物として特定のシロキサン化合物(A)と、白金化合物、パラジウム化合物およびロジウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物とを用いる。
【0016】
本発明の組成物は、加熱することで、Si−H基とSi−CH=CH基等の結合反応が起こり、硬化が進行する。この際、反応を進行させ硬化物を得るために、組成物として前述の、白金化合物、パラジウム化合物およびロジウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を使用する。これら金属化合物の硬化触媒としての作用により、本発明の組成物は硬化し、透明、且つ130℃の環境下で長時間連続使用しても劣化することのない耐熱性に優れた硬化物が得られる。
【0017】
尚、本発明において、アルキル基は−CnH2n+1で表される基であり、アルキレン基は−C2n−で表される基であり、アルケニル基は−CH=CH−を有する基、アルキニル基は、−C≡C−を有する基、およびアリール基は芳香族炭化水素から誘導された基であり、基中に芳香族炭化水素を含む。
【0018】
即ち、本発明は、以下の発明1〜9を含む。
【0019】
[発明1]
一般式(1)
【化1】

【0020】
(式中、Xは、それぞれ独立に、一般式X1またはX2
【化2】

【0021】
で表される基であり、X1の個数αは1〜8の整数であり、X2の個数βは0〜7の整数であり、αとβとの和は8であり、
式X1およびX2中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、炭素原子が酸素原子または窒素原子に置換されていてもよく、
は、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基またはアリル基であり、mおよびnは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、3≦m+nである。)
で表されるシロキサン化合物(A)、ならびに白金化合物、パラジウム化合物およびロジウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含む、組成物。
【0022】
[発明2]
前記Rが、メチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、一般式(2)
【化3】

【0023】
(式中、tは1〜3の整数である。)
で表される基、
式(3)
【化4】

【0024】
で表される基、または、式(4)
【化5】

【0025】
(式中、uは1〜3の整数である。)
で表される基である、発明1の組成物。
【0026】
[発明3]
さらに、一般式(5)
【化6】

【0027】
(式中、Rは、エーテル結合、フェニレン基、または一般式(6)
【化7】

【0028】

(式中、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これらの炭化水素基の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、rは1〜100の整数である。)
で表されるシロキサン基であり、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、
10は、水素原子またはビニル基である。)
で表されるシロキサン化合物(B)、一般式(7)
【化8】

【0029】
(式中、R13は、それぞれ独立に、水素原子またはビニル基、R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これらの炭化水素基の水素原子はフッ素に置換されていてもよく、sは3〜7の整数である。)
で表されるシロキサン化合物(C)、およびエポキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、発明1または発明2の組成物。
【0030】
[発明4]
前記エポキシ化合物がグリシジル基を含み、数平均分子量が60以上、10000以下であり、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香環または複素環を含んでいてもよく、当該有機基中の水素原子の一部または全部が、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、アルキル基またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい、発明3の組成物。
【0031】
[発明5]
発明1〜4の組成物を硬化させてなる硬化物。
【0032】
[発明6]
発明1〜4の組成物を100℃以上、300℃以下に加熱することにより硬化させてなる、発明5に記載の硬化物。
【0033】
[発明7]
発明5または発明6の硬化物を含む、封止材。
【0034】
[発明8]
一般式(8)
【化9】

【0035】
(式中、Xはそれぞれ独立に、一般式X1またはX2
【化10】

【0036】
で表される基であり、X1の個数αは1〜8の整数であり、X2の個数βは0〜7の整数であり、αとβとの和は8であり、
式X1およびX2中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。R15は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、トリフルオロメチル基が置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基またはアリル基であり、mおよびnは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、3≦m+nである。)
で表されるシロキサン化合物。
【0037】
前記R15が、メチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、一般式(2)
【化11】

【0038】
(式中、tは1〜3の整数である。)
で表される基、
式(3)
【化12】

【0039】
で表される基、または、
式(4)
【化13】

【0040】
(式中、uは1〜3の整数である。)
で表される基である、発明8に記載のシロキサン化合物。
【発明の効果】
【0041】
本発明の組成物は、60℃以下で液体であり、例えば、室温(20℃)でポッティング加工が可能であり、150℃以上、250℃以下に加熱することで透明な硬化物が得られ、該硬化物は、140℃の高温化に長時間曝露しても、着色なく高い透明性を維持し、発泡およびクラックともに発生なく、高い耐熱性を有していた。
【発明を実施するための形態】
【0042】
1.シロキサン系組成物
最初に、本発明のシロキサン系組成物について説明する。
【0043】
本発明の組成物は、一般式(1)で表されるシロキサン化合物(A)と、白金化合物、パラジウム化合物およびロジウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物とを必須の化合物とする。さらに、一般式(2)で表されるシロキサン化合物(B)または一般式(4)で表されるシロキサン化合物(C)、エポキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が含まれていてもよい。
【0044】
具体的には、
発明1〜4に表される組成物である。
【0045】
[発明1]
一般式(1)
【化14】

【0046】
(式中、Xは、それぞれ独立に、一般式X1またはX2
【化15】

【0047】
で表される基であり、X1の個数αは1〜8の整数であり、X2の個数βは0〜7の整数であり、αとβとの和は8であり、
式X1およびX2中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキ
ル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、炭素原子が酸素原子または窒素原子に置換されていてもよく、
は、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基またはアリル基であり、mおよびnは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、3≦m+nである。)
で表されるシロキサン化合物(A)、ならびに白金化合物、パラジウム化合物およびロジウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含む、組成物。
【0048】
[発明2]
前記Rが、メチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、一般式(2)
【化16】

【0049】
(式中、tは1〜3の整数である。)
で表される基、または、式(3)
【化17】

【0050】
で表される基、または、式(4)
【化18】

【0051】
(式中、uは1〜3の整数である。)
で表される基である、発明1の組成物。
【0052】
[発明3]
さらに、一般式(5)
【化19】

【0053】
(式中、Rは、エーテル結合、フェニレン基、または一般式(6)
【化20】

【0054】
(式中、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これらの炭化水素基の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、rは1〜100の整数である。)
で表されるシロキサン基であり、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、
10は、水素原子またはビニル基である。)
で表されるシロキサン化合物(B)、一般式(7)
【化21】

【0055】
(式中、R13は、それぞれ独立に、水素原子またはビニル基、R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これらの炭化水素基の水素原子はフッ素に置換されていてもよく、sは3〜7の整数である。)
で表されるシロキサン化合物(C)、およびエポキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、発明1または発明2の組成物。
【0056】
[発明4]
前記エポキシ化合物がグリシジル基を含み、数平均分子量が60以上、10000以下であり、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香環または複素環を含んでいてもよく、当該有機基中の水素原子の一部または全部が、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、アルキル基またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい、発明3の組成物。
【0057】
白金化合物、パラジウム化合物およびロジウム化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の金属化合物、特に白金化合物は硬化触媒としての作用があり、硬度が物高い硬化が得られること、および組成物がポッティング加工の際に取り扱いやすいことから、組成物全体に対して1.0質量%以下が好ましく、より好ましくは、0.00001質量%以上、1.0質量%以下である。白金化合物の含有が0.00001質量%より少ないと硬化しなく、1.0質量%よりも多いと、組成物の安定性が乏しくなり、硬化反応を制御し難く、また硬化物中で着色成分となり、硬化物の透明性が損なわれる虞がある。さらに好ましくは、0.0001質量%以上、0.05質量%以下である。
【0058】
発明3に示したシロキサン化合物(B)およびシロキサン化合物(C)は、シロキサン化合物(A)の加熱硬化を促進させ、エポキシ化合物は、基材に対する密着性を高め、およびガスバリア性を高める効果があり、シロキサン化合物(A)に加えて、用いることが好ましい。
【0059】
シロキサン化合物(B)およびシロキサン化合物(C)は、それぞれ単独で使用しても、混合して使用してもよい。シロキサン化合物(A)対する質量%で表して、シロキサン化合物(B)、シロキサン化合物(C)またはエポキシ化合物を合わせて、1%以上、50%以下であることが好ましく、含有率が1%より少ないと、加熱したとしても硬化が促進されなく、50%より多いと、シロキサン化合物(A)含有が少なくて、硬化物に長時間、130℃以上の高温下に曝されても劣化しない耐熱性を得がたい。さらに好ましくは、2%以上、30%以下である。
【0060】
2.シロキサン化合物(A)
シロキサン化合物(A)は、
一般式(1)
【化22】

【0061】
式中、Xは、それぞれ独立に、一般式X1またはX2
【化23】

【0062】
で表される基であり、X1の個数αは1〜8の整数であり、X2の個数βは0〜7の整数であり、αとβとの和は8であり、
式X1およびX2中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、炭素原子が酸素原子または窒素原子に置換されていてもよく、
は、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基またはアリル基であり、mおよびnは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、3≦m+nである。)
で表される化合物である。
【0063】
ここで、シロキサン化合物(A)中のmは2または4であることが好ましい。mが2または4のシロキサン化合物(A)は合成しやすい。
【0064】
シロキサン化合物(A)は本発明の組成物を加熱硬化させた硬化物に、長時間、130℃以上の高温下に曝されても劣化しない耐熱性を与えるものである。
【0065】
また、シロキサン化合物(A)において、X1基中のRには、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、フェニル基、トルイル基、tert-ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、アントラセニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ジトリフルオロメチルフェニル基、モノフルオロフェニル基、ジフロロフェニル基、メトキシフェニル基、ベンゾシクロブテニル基、フェニルエチニレン基、フタルイミド基、ノルボルネンイミド基、カンファー基、アダマンチル基、シクロヘキシル基またはシクロペンチル基が挙げられる。
【0066】
本発明の発明1の組成物に用いられる一般式(1)で表されるシロキサン化合物(A)において、硬化物とした際の耐熱性より、Rとしては、フェニル基、ビフェニル基またはナフチル基が好ましく、特に好ましくは、式(2)で表される基または式(3)で表される基である。当該シロキサン化合物(A)を用いた発明2の組成物を用いることにより、当該組成物が硬化した硬化物は優れた耐熱性が得られた。
【0067】
3.シロキサン化合物(A)の合成
シロキサン化合物(A)の合成は、籠型シロキサン化合物である前躯体を合成した後に、シリル化、次いで、クロル化、最後に有機基を付加させることによって得られる。即ち、[前駆体の合成] → [前躯体のシリル化] → [シリル化前躯体のクロル化] → [有機基の付加]の順で行う。
【0068】
3.1 前駆体の合成
最初に、一般式(1)で表されるシロキサン化合物(A)の前駆体の合成について説明する。
【0069】
具体的には、以下の反応スキームに示すように、水酸化四級アンモニウムの水溶液に、テトラアルコキシシラン、例えば、テトラエトキシシラン(以下、TEOSと略することがある。)を加え、室温で攪拌することで、アンモニウム塩である前駆体が得られる。
【0070】
本反応により、シロキサン結合(−Si−O−)で結合し、ケイ素原子、8個、酸素原子、12個からなるかご型の骨格を有する前躯体が得られる(本反応は、前掲の非特許文献1に記載される。)
【化24】

【0071】
(RおよびRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。)
尚、水酸化四級アンモニウムを具体的に例示するならば、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウムまたはコリンが挙げられる。中で、固体として得られること、シロキサン化合物(A)を得るための次反応のシリル化における反応溶媒であるアルコールへの溶解性に優れることから、コリンを用いることが好ましい。
【0072】
3.2 シロキサン化合物(A)の合成例
本発明の組成物に使用するシロキサン化合物(A)の合成についての具体例を示すが、本発明のシロキサン化合物(A)は、以下に示したシロキサン化合物(A−1)〜(A−28)に限定されるものではない。
【0073】
3.2.1 シロキサン化合物(A−1)の合成
一般式(1)で表されるシロキサン化合物(A)の製造方法の一例として、一般式(1)で表されるシロキサン化合物(A)に含まれる下記のシロキサン化合物(A−1)の合成方法を、順を追って説明する。
【0074】
前述のように、一般式(1)で表されるシロキサン化合物(A)中のmは1〜4の整数であり、合成のし易さから、m=2または4である。因みに、シロキサン化合物(A−1)はmが2の場合である。
【0075】
シロキサン化合物の出発物質は、RおよびRがメチル基である前述の前躯体である。
【化25】

【0076】
<前躯体のシリル化>
前述の前駆体のシリル化は、前躯体とシリル化剤との反応により行う。シリル化剤にはハロゲン化ジアルキルシラン、例えばクロロジメチルシラン、ジシロキサン、例えばヘキサメチルジシロキサンが挙げられ、前躯体とクロロジメチルシランとの反応は、前掲の非特許文献1に記載され、ジシロキサンとの反応は、前掲の特許文献5に開示されている。
【0077】
具体的には、以下の反応スキームに示すように、前躯体、テトラメチルジビニルシランおよびテトラメチルシランのアルコール溶液を、有機塩基の存在下、反応させることで、前駆体をシリル化し、前躯体をシリル化したシリル化前躯体が得られる。尚、本反応においてアルコールは、メタノール、エタノールまたは2−プロパノール、有機塩基には、トリエチルアミンまたはピリジンを用いることが好ましい。また、本反応においてシリル化前躯体におけるX1とX2の比は、反応に用いるテトラメチルジビニルシランとテトラメチルシランの比によって調整可能である。
【化26】

【0078】
<シリル化前躯体のクロル化>
前記シリル化前駆体のクロル化は、シリル化前躯体をトリクロロイソシアヌル酸と反応、またはロジウム触媒の存在下でヘキサクロロシクロヘキサンと反応、または塩素ガスと反応させて行うことができる。例えば、公知文献(Journal of Organic Chemistry, vol.692, pp1892−1897(2007)、S.Varaprathら著)に記載のクロロ化手法は制限無く使用出来るが、中でも副生成物が少なく、経済性において実用的であることより、トリクロロイソシアヌル酸または塩素ガスと反応させることが好ましい。シリル化前駆体のトリクロロイソシアヌル酸との反応は、前掲の非特許文献2に、ロジウム触媒を用いたヘキサクロロシクロヘキサンとの反応は、前掲の非特許文献3に記載される。
【0079】
具体的には、以下のスキームに示すように、有機溶媒中でシリル化前躯体にトリクロロイソシアヌル酸を反応させることにより、クロル化前駆体を得ることができる。有機溶媒には、塩素系溶媒であるジクロロメタン、クロロホルムまたはジクロロエタン、あるいはテトラヒドロフランを用いることが好ましい。
【化27】

【0080】
<有機基の付加>
前記クロル化前駆体に、有機基を付加する方法について説明する。
【0081】
例えば、ハロゲン化ベンゼンに有機金属試薬を反応させ、金属原子とハロゲン原子を交換した後、前記クロル化前駆体と反応させることで、フェニル基を含有したシラノレート化合物を得ることができる。
【0082】
具体的には、以下の反応スキームに示すように、ブロモベンゼンに有機金属試薬としてのn−ブチルリチウムを反応させて、フェニルリチウムを得た後、さらにヘキサメチルシクロトリシロキサンと反応させて、フェニル基を含むシロキシリチウム化合物が得られる。
【化28】

【0083】
トリメチルシラノール、tert-ブチルジメチルシラノール等のアルキルシラノールを用いる場合は、シラノールとn−ブチルリチウム等の有機金属試薬などを作用させて一段階反応にてシロキシリチウム化合物を調整することが出来る。以下の反応式に示すように、トリメチルシラノールとn−ブチルリチウムを反応させることで、シロキシリチウム化合物が得られる。
【化29】

【0084】
次いで、以下の示すように、クロル化前駆体とフェニル基を含むシロキシリチウム化合物と反応させることで、一般式(1)で表されるシロキサン組成物(A)の一例である、前述のシロキサン化合物(A−1)を得ることができる。
【化30】

【0085】
3.2.2 シロキサン化合物(A)の合成
シロキサン化合物(A−1)以外のシロキサン化合物の合成について説明する。
【0086】
<前躯体の合成>
前記シロキサン化合物(A−1)における<前躯体の合成>の際に用いたジシロキサン化合物、即ち、テトラメチルジビニルシランおよびテトラメチルシランの混合物以外に、下記に示すジシロキサン化合物郡から選ばれる1種、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
例えば、1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラビニルジシロキサン、1,3−ビス((アクリロキシメチル)フェネチル)−テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(2−アミノエチルアミノメチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス((ビシクロヘプテニル)エチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−カルボキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(3−クロロイソブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(クロロメチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(シアノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(グリシドキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(ヒドロキシブチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(ヒドロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(メタクリルアミドプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロポキシープロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(3−メタクリロキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(メトキシトリエチレンオキシプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(ノナフルオロヘキシル)テトラメチルジシロキサン、ビス(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ビス(トリフルオロプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3−ジアリルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジクロロー1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、1,3−ジクロロテトラメチルジシロキサン、1,3−ジクロロテトラフェニルジシロキサン、1,3−ジエチルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジエチニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジメチルテトラメトキシジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジメチル−1,3−ジクロロジシロキサン、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニル−1,3−ジメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラエトキシジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラフェニルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサフェニルジシロキサン、ヘキサビニルジシロキサン、1,1,3,3−テトラシクロペンチルジクロロジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシー1,3−ジメチルジクロロシラン、1,3−テトラメチルー1,3−ジエトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニルジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラビニルヂメチルジシロキサン、1−アリル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、3−アミノプロピルペンタメチルジシロキサンおよびクロロメチルペンタメチルジシロキサンが挙げられる。
【0088】
これらジシロキサン化合物の中でも、得られるシロキサン化合物(A)の耐熱性を向上させるためにフェニル基を導入するのに、1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサンが好適に用いられ、当該ジシロキサン化合物を用いた場合、例えば、下記シロキサン化合物(A−2)が得られる。
【化31】

【0089】
<前躯体のシリル化>
また、前記シロキサン化合物(A−1)の合成における<前躯体のシリル化>におけるシリル化剤として具体的に挙げたクロロシラン化合物であるビニルジメチルクロロシランおよびジメチルクロロシラン以外に、シリル化剤には、トリメチルクロロシラン、メチルクロロシラン、シクロヘキセニルジメチルクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、ビニルジフェニルクロロシラン、ビニルメチルフェニルクロロシラン、メチルフェニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、グリシジルジメチルクロロシラン、メタクリルオキシジメチルクロロシランラン等が挙げられる。これらの中でも、硬化物膜に耐久性を与えるためには、シロキサン化合物(A)にアリル基を導入することが好ましく、アリルジメチルクロロシランが用いられ、下記のシロキサン化合物(A−3)が得られる。
【化32】

【0090】
<有機物の付加>
また、下記の反応式に示すように、前記シロキサン化合物(A−1)の合成における<有機基の付加>に示した手順で、各々のブロモ体を原料として、シロキシリチウム化合物へと誘導し、各々のシロキシリチウム化合物とクロロ化前駆体とを反応させることで、一般式(1)のX1におけるRとして、ビフェニル基(a)、ナフチル基(b)、式(2)で表される基(c)、(d)および(e)、式(XX)で表される基(f)、式(3)で表される基(g)を含むシロキサン化合物(A)が得られる。メチル基(h)またはtert−ブチル基(i)等のアルキル基を含むシロキサン化合物(A)については、アルキルシラノールとn−ブチルリチウム等の有機金属試薬などを作用させ、シロキシリチウム化合物へと誘導した後、前記と同様、クロロ化前駆体を作用させて合成する。これらシロキサン化合物(A)の合成法は、一般式(8)に示すシロキサン化合物にも適用し得る。
【化33】

【0091】
具体的には、以下の一般式(9)
【化34】

【0092】
(式(9中)、Xは、それぞれ独立に、X1または
一般式X2
【化35】

【0093】
で表される基であり、X1の個数αは1〜8の整数であり、X2の個数βは0〜7の整数であり、αとβとの和は8であり、
X2中、RまたはRは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0094】
は、それぞれ独立に水素原子もしくはビニル基であり、nは、それぞれ独立に、1〜4の整数である。)
において、X1が以下の式(i)〜(ix)
【化36】

【0095】
で表されるシロキサン化合物(A−4)〜(A−8)、およびシロキサン化合物(Aa−1)〜(Aa−4)が得られる。
【0096】
次いで、前述のシロキシリチウム化合物の合成過程について詳細に説明する。
【0097】
以下の反応式に示すように、一般式(1)で表されるシロキサン化合物(A)におけるX1中にRを導入するためのRのブロモ体(Br−R)を出発物質とし、Rのリチオ化体(Li−R)を得る。その後、モル数xのRのリチオ化体(Li−R)とモル数yの環状シロキサンを反応させることでシロキシリチウム化合物が得られる。
【化37】

【0098】
表1に示すように、モル比(x:y)、環状シロキサンのシロキサンユニット数wを制御することで、シロキシリチウム化合物のシロキサンのユニット数mを1または3に制御できる。このことは、前掲の非特許文献8に記載される。
【表1】

【0099】
のブロモ体(Br−R)のRの具体例としては、前記のとおり、フェニル基、トルイル基、tert-ブチルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、アントラセニル基、トリフルオロメチルフェニル基、ジトリフルオロメチルフェニル基、モノフルオロフェニル基、ジフロロフェニル基、メトキシフェニル基、ベンゾシクロブテニル基、フェニルエチニレン基、フタルイミド基、ノルボルネンイミド基、カンファー基、アダマンチル基、シクロヘキシル基またはシクロペンチル基が挙げられる。R、Rの具体例としては、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、イソプロピル基、フェニル基、2−フェニルプロピル基または3,3,3−トリフルオロプロピル基が挙げられる。
【0100】
前記のとおり、以下の式に示すアルキルシラノールとn−ブチルリチウムとの反応からシロキシリチウム化合物を合成することも可能である。官能基Qの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert-ブチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。R、Rの具体例としては、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、イソプロピル基、フェニル基、2−フェニルプロピル基または3,3,3−トリフルオロプロピル基が挙げられる。
【化38】

【0101】
4.金属化合物
次いで、本発明の組成物において必須である、金属化合物について説明する。
【0102】
金属化合物は硬度および耐熱性を有する硬化物を得るために、本発明の組成物において硬化触媒として作用する。
【0103】
金属化合物は、硬化反応を促進する触媒作用があるものであればよく、白金化合物、パラジウム化合物およびロジウム化合物からなる群から選ばれる。具体的には、白金−カルボニルビニルメチル錯体、白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体、または白金−オクチルアルデヒド錯体等の白金化合物、白金に換えて、パラジウムまたはロジウムを含有するパラジウム化合物、ロジウム化合物が挙げられ、これらを単独または二種以上を併用してもよい。本発明の組成物において、硬度および硬化後、硬化物の劣化が少ないおよび入手し易いことから、白金化合物を採用することが好ましい。
【0104】
5.シロキサン化合物(B)
本発明の組成物において、シロキサン化合物(A)に加えて使用される、発明3に示した前記シロキサン化合物(B)について、説明する。
【0105】
シロキサン化合物(B)は、本発明の組成物を加熱硬化させて硬化物とする際にシロキサン化合物(A)に加えて、硬化を促進させるものである。
【0106】
シロキサン化合物(B)は、
一般式(5)
【化39】

【0107】
(式中、Rは、エーテル結合、フェニレン基、または一般式(6)
【化40】

【0108】
(式中、R11、R12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これらの基の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、rは1〜100の整数である。)
で表されるシロキサン基であり、
、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、
10は、水素原子またはビニル基である。)
で表される化合物である。
【0109】
シロキサン化合物(B)は、−Si−H基または−Si−CH=CH基のどちらか一つを2つ以上、同一構造中に含有する化合物であることが好ましく、具体的に例示するならば、テトラメチルジシロキサン、1,4−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、1,2−ビス(ジメチルシリル)ベンゼン、ビス((p−ジメチルシリル)フェニル)エーテル、1,4−ビス(ビニルジメチルシリル)ベンゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン、トリス(ジメチルシロキシ)フェニルシラン、1,1,3,3−テトライソプロピルジシロキサン、テトラキス(ジメチルシリルオキシ)シランまたは1,5−ジメチル−2,5−ジシラヘキサンを挙げることができる。市販品では、ビニル末端ポリジメチルシロキサン(例えば、Gelest社製、製品名、DMS−Vシリーズ)、ジフェニルシロキサン変性ポリジメチルシロキサン(例えば、Gelest社製、製品名、PDVシリーズ)、トリフルオロプロピル変性ポリジメチルシロキサン(例えばGelest社製、製品名、製品名、FMV、EDVシリーズ)、ビニル変性ポリジメチルシロキサン(Gelest社製、製品名、VDT、VDS、VDV、VGM、VGP、VGF、VMSシリーズ)、Si−H末端ポリジメチルシロキサン(Gelest社製、製品名、DMS−Hシリーズ)、Si−H変性ポリジメチルシロキサン(Gelest社製、製品名、HMS、HESシリーズ)、フェニル変性ポリジメチルシロキサン(Gelest社製、製品名、HDP、HPMシリーズ)等を挙げることができる。これら化合物は単独で用いても、または二種以上混合して用いてもかまわない。
【0110】
6.シロキサン化合物(C)
本発明の組成物に使用されるシロキサン化合物(C)について、説明する。
【0111】
シロキサン化合物(C)は、本発明の組成物を加熱硬化させて硬化物とする際に、硬化を促進させる効果がある。
【0112】
シロキサン化合物(C)は、
一般式(7)
【化41】

【0113】
(式中、R13は、それぞれ独立に、水素原子またはビニル基、R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これらの炭化水素基の水素原子はフッ素に置換されていてもよく、sは3〜7の整数である。)
で表される化合物である。
【0114】
シロキサン化合物(C)は、−Si−H基または−Si−CH=CH基のどちらか一つを2つ以上、同一構造中に含有する化合物であることが好ましく、具体的に例示するならば、トリメチルシクロトリシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタシロキサン、シクロトリシロキサン、シクロテトラシロキサン、シクロペンタシロキサン、トリビニルトリメチルシクロトリシロキサン、テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタビニルペンタメチルシクロペンタシロキサン、トリフェニルシクロトリシロキサン、テトラフェニルシクロテトラシロキサン、ペンタフェニルシクロペンタシロキサン等をあげることができる。これら化合物は単独で用いても、または二種以上混合して用いてもかまわない。
【0115】
7.エポキシ化合物
本発明の組成物に使用されるエポキシ組成物について説明する。
【0116】
エポキシ化合物は、本発明の組成物において、硬化物とした際にガラス基板やシリコーン基板など種々の基材に対する密着性を高める効果、およびガスバリア性を高める効果を得るためのものである。
【0117】
エポキシ化合物としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂、フェノールアラルキル樹脂、クレゾールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、ビフェニル変性フェノールアラルキル樹脂、フェノールトリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂またはアミノトリアジン変性フェノール樹脂化合物を、エピクロロヒドリンと接触させることによりエポキシ変性させたエポキシ化合物が挙げられる。
【0118】
これらは、市販されており、ビスフェノールA型のエピクロン840(商品名、大日本インキ工業株式会社製)、ビスフェノールF型のアデカレジンEP−4901(商品名、旭電化工業株式会社製)、クレゾールノボラック型のエピクロンN−600シリーズ(商品名、大日本インキ工業株式会社製)、ジシクロペンタジエン型のエピクロンHP−7200シリーズ(商品名、大日本インキ工業株式会社製)、トリアジン型のTEPICシリーズ(商品名、日産化学工業株式会社製)、シアヌル酸型のDA−MGIC(商品名、四国化成工業株式会社製)が挙げられる。
【0119】
エポキシ化合物としては、好ましくはグリシジル基を含み、数平均分子量が60〜10000の化合物であり、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香環、複素環を含んでもよく、当該有機基中の水素原子の一部または全てが、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、アルキル基またはフルオロアルキル基で置換されていてもよいエポキシ化合物が挙げられる。
【0120】
一般式(7)で表されるエポキシ化合物は、以下のアルコールとエピクロロヒドリンから合成される。
【0121】
尚、前記アルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−アダマンタンジオール、カテコール、1,3−ベンゼンジオール、2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、2,2’−メチレンジフェノール、4,4’−メチレンジフェノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−ヘキサン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシピリジン、2,4−ジヒドロキシピリジン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,4−ジヒドロキシヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、1,1’−メチレンジ−2−ナフトール、4,4’、4−トリヒドロキシトリフェニルメタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタンまたはα,α,α’−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−エチル−4−イソプロピルベンゼンが挙げられる。
【0122】
尚、本発明の組成物において、前記エポキシ化合物とエポキシ樹脂用硬化剤を併用してもよい。当該硬化剤を例示するならば、アミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物、メルカプタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリスルフィド樹脂系化合物またはリン系化合物が挙げられる。具体的には、熱硬化剤であるジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリアルキレングリコールポリアミン、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、2−メチルイミダゾ−ル、トリフェニルフォスフィン、2−エチルー4−メチルイミダゾール、BF3−アミン錯体またはグアニジン誘導体、紫外線硬化剤であるジフェニルヨードニウムヘキサフロロフォスフェート、トリフェニルスルホニウムヘキサフロロホスフェートが挙げられる。
【0123】
8.添加物および充填剤
また、本発明の組成物を含む硬化物が本発明の目的とする性能を損なわない範囲で、本発明の組成物に、その他の各種樹脂、充填剤または添加剤等も加えてもよい。このような各種樹脂のとしては、ポリイミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂またはポリフェニレンスルフィド樹脂が挙げられる。添加剤としては、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、黄変防止剤等が挙げられる。
【0124】
また、本発明の組成物を含む硬化物が本発明の目的とする性能を損なわない範囲で、本発明の組成物のポッティング成型における粘度調整、また本発明の組成物を含む硬化物の耐熱性や透明性等の向上の目的で、本発明の目的とする性能を損なわない範囲で、無機微粒子を添加してもよい。このような無機微粒子としては、二酸化ケイ素微粒子、コロイダルシリカ、シリカフィラー、酸化アルミニウム、酸化亜鉛およびリン酸タングステンジルコニウム等が挙げられ、特に、二酸化ケイ素微粒子が好ましい。前記硬化物の透明性を損なわないために、これら無機微粒子の粒径は50μm以下が好ましい。これら無機微粒子には、商品名トスパール(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)、商品名ワッカーHDK(旭化成ワッカーシリコン株式会社製)、商品名アエロジル(日本アエロジル株式社製)、溶融シリカFB(電気化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0125】
.硬化物の製造方法
本発明の組成物は、加熱することで、Si−H基とSi−CH=CH基等の結合反応が起こり、硬化が進行する。反応を進行させるためには、組成物として前述の白金、パラジウムまたはロジウムの化合物を使用し、これら金属化合物の硬化触媒としての作用により、組成物を硬化させることで、130℃の環境下で使用しても劣化することのない硬化物が得られる。
【0126】
硬化は室温下、長時間置くことでも進行するが、硬化温度は100℃以上、300℃以下が好ましく、さらに好ましくは100℃以上、200℃以下である。硬化温度が100℃より低いと硬化物に硬さが得られにくい、温度を上げる程に硬化は進行するが、硬化温度が300℃より高いとクラックが入る虞があり実用的でない。硬化時間は0.5時間以上、10時間以下が好ましく、さらに好ましくは1時間以上、4時間以下である。硬化時間が0.5時間より短いと効果が完全に進行しない虞があり、10時間より長いことは、実用的でない。
【0127】
また、本発明の組成物は、室温(20℃)〜60℃で透明な液状であるため、半硬化状態でも良好な透明性を保持できることから、光反応性を有する触媒(以下、光反応触媒ということがある。)を添加することで、光硬化させるも可能である。
【0128】
本発明の組成物中のシロキサン化合物(A)、シロキサン化合物(B)、シロキサン化合物(C)のいずれかに光官能基を導入、また、これら組成物に加え、光反応性触媒で反応し得るモノマー、樹脂を導入してもよい。
【0129】
熱硬化と光硬化を併用することで、優れた耐熱性と高透明性を維持しつつ、耐候性、硬度、ガスバリア性、伸び、じん性等に優れた材料を得ることができる。
【0130】
本発明の組成物は、本発明の組成物の流動性に関しては、25℃下で、回転式粘度計で測定した粘度が50Pa・S以下であり、10Pa・S以下のものも得られる。室温(20℃)〜60℃の範囲で流動性が得られ、ポッティング加工等において扱いやすい。
【0131】
尚、本発明の組成物を硬化させてなる硬化体において、硬化が進行すれば、降下物の質量が5質量%減少する温度は300℃以上であり、350℃以上の硬化物も得られる。
【実施例】
【0132】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0133】
具体的には、前述のシロキサン化合物(A)の前躯体Aを合成し、前躯体Aから誘導されるシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)の合成し、次いでシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)から誘導される、シロキサン化合物(A)に属するシロキサン化合物(A−1)、(A−9)〜(A−28)の合成を行った。
【0134】
これらシロキサン化合物(A)に白金化合物を加えた組成物(1−1)〜(1−10)を調製した。次いで、シロキサン化合物(A)に、シロキサン化合物(B)および白金化合物を加えた組成物(2−1)〜(2−9)を調製した。次いで、シロキサン化合物(A)に、シロキサン化合物(B)とシロキサン化合物(C)と白金化合物を加えた組成物を加えた組成物(3−1)〜(3−15)を調製した。次いで、シロキサン化合物(A)に、シロキサン化合物(C)と白金化合物を加えた組成物を加えた組成物(4−1)〜(4−10)を調製した。これら、組成物を加熱して硬化物を得、その透明性および耐熱性を評価した。
【0135】
尚、本実施例で得られたシロキサン化合物、組成物、およびその硬化物の物性評価は、以下に示す方法でおこなった。
【0136】
<NMR(核磁気共鳴)測定>
共鳴周波数400MHzの核磁気共鳴装置(日本電子株式会社製)を使用し、1H−NMR、19F−NMR、29Si−NMRの測定を行った。
【0137】
<粘度測定>
回転粘度計(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ・インク製、品名、DV−II+PRO」と温度制御ユニット(ブルックフィールド・エンジニアリング・ラボラトリーズ・インク製、品名、THERMOSEL)を用い25℃における粘度を測定した。
【0138】
<光透過率>
紫外可視分光光度計(株式会社島津製作所製 型番 UV−3150)を使用し、測定した。
【0139】
[シロキサン化合物(A)の合成]
最初に、本発明の組成物に使用するシロキサン化合物(A)の合成について説明する。具体的には、前述のシロキサン化合物(A)の前躯体Aの合成、前躯体Aから誘導するシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)の合成、次いでシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)から誘導するシロキサン化合物(A−1)、(A−9)〜(A−28)の合成について、順を追って説明する。
【0140】
1 前駆体Aの合成
温度計および還流冷却器を備えた1Lの三口フラスコに、テトラエトキシシラン200g(960mmol)および50質量%の水酸化コリン水溶液233g(960mmol)を採取し、室温(20℃)で12時間攪拌した。攪拌終了後に、2−プロパノールを100g加え、さらに30分間攪拌した。3℃まで冷却し、析出した粗生成物を濾別して2プロパノールによる洗浄を行った後、乾燥し、白色粉末として、以下の式で表される前駆体Aとしてのオクタ(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム)シルセスキオキサン・36水和物、151gを、収率、62質量%で得た。
【0141】
以下に、オクタ(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム)シルセスキオキサンの構造式を示した。
【化42】

【0142】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重メタノール,基準物質:テトラメチルシラン);δ3.23(s,9H),3.48−3.51(m, 2H),4.02−4.05(m,2H),
2 シリル化前躯体の合成
次いで、前述の前躯体Aをシリル化剤を用いてシリル化し、シリル化前躯体を得た。シリル化剤を換えて、異なる種類のシリル化前躯体(S−1)〜(S−5)を合成した。
【0143】
2.1 前駆体A → シリル化前躯体(S−1)
前述の前躯体Aをシリル化し、シリル化前躯体(S−1)を得た。
【0144】
即ち、温度計、還流冷却器を備えた1L三口フラスコにトルエン350g、メタノール30g、シリル化剤としてのテトラメチルジシロキサン26.5g(198mmol)、テトラメチルジビニルジシロキサン23.9g(198mmol)を入れ、3℃まで冷却した。次いで、攪拌しながら69質量%、硝酸54.1gを30分間かけて滴下した。30分間攪拌後に、メタノール100gに前述のオクタ(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム)シルセスキオキサン・36水和物100g(49.3mmol)を溶解したメタノール溶液を入れ、攪拌しながら室温まで昇温し、室温で12時間攪拌し、シリル化反応を行った。攪拌終了後、水層を除去し、有機層を上水100gで3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム10gで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した後に減圧濃縮した。得られた粗生成物をメタノールで洗浄し、乾燥し、白色粉末として、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−1):テトラ(ヒドロジメチルシロキシ)テトラ(ビニルジメチルシロキシ)シルセスキオキサン、46.0g(45.0mmol)を得た。尚、収率は91質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。
【化43】

【0145】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.18−0.24(m, 12H),4.70−4.72(m,1H),5.75−5.81(m,1H),5.93−5.96(m,1H),5.97−6.15(m,1H),
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.9,−1.7,−108.7, −109.0
2.2 前駆体A → シリル化前駆体(S−2)
前述の前躯体Aをシリル化し、シリル化前躯体(S−2)を得た。
【0146】
即ち、シリル化剤に、テトラメチルジシロキサン19.9g(149mmol)およびテトラメチルジビニルジシロキサン30.6g(248mmol)を用い、前述のシリル化前躯体(S−1)を得る反応と同様の手順で操作を行い、前躯体Aをシリル化し、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−2):トリ(ヒドロジメチルシロキシ)ヘプタ(ビニルジメチルシロキシ)シルセスキオキサン、49.4g(43.0mmol)を得た。尚、収率は87質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。
【化44】

【0147】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.18−0.24(m, 36H),4.70−4.72(m,3H),5.75−5.81(m,5H),5.93−5.96(m,5H),5.97−6.15(m,5H),
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.9,−1.7,−108.7, −109.0
2.3 前駆体A → シリル化前駆体(S−3)
前述の前躯体Aをシリル化し、シリル化前駆体(S−3)を得た。
【0148】
即ち、シリル化剤に、テトラフェニルジシロキサン39.8g(297mmol)およびテトラメチルジビニルジシロキサン15.3g(99mmol)を用い、前述のシリル化前駆体(S−1)を得る反応と同様の手順で操作を行い、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−3):ヘプタ(ヒドロジフェニルシロキシ)トリ(ビニルジメチルシロキシ)シルセスキオキサン、36.3g(21.0mmol)を得た。尚、収率は43質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=5:3である。
【化45】

【0149】
2.4 前駆体A → シリル化前駆体(S−4)
前述の前駆体Aをシリル化し、シリル化前駆体(S−4)を得た。
【0150】
即ち、シリル化剤に、テトラメチルジシロキサン53.0g(396mmol)を用い、前述のシリル化前駆体(S−1)を得る反応と同様の手順で操作を行い、前駆体Aをシリル化し、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−4):オクタ(ヒドロジメチルシロキシ)シルセスキオキサン、43.8g(43.0mmol)を得た。尚、収率は87質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=8:0である。
【0151】
以下に、シリル化前駆体(S−4)の構造式を示す。
【化46】

【0152】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.25(s, 6H),4.70−4.72(m,1H),
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ―1.
3,−108.6
2.5 前駆体A → シリル化前駆体(S−5)
温度計、還流冷却器を備えた500mL三口フラスコにトルエン70g、メタノール6g、シリル化剤として、以下の式で表されるジシロキサン化合物38.7g(79.6mmol)を入れ、3℃まで冷却した。
【化47】

【0153】
尚、当該ジシロキサン化合物の合成は、前掲の非特許文献9の記載を参考にした。
【0154】
次いで、攪拌しつつ、濃度69質量%の硝酸11gを30分間かけて滴下した。30分間攪拌後に、メタノール20gにオクタ(2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム)シルセスキオキサン・36水和物20g(9.9mmol)を溶解したメタノール溶液を入れ、攪拌しながら室温まで昇温し、室温で12時間攪拌した。攪拌終了後、再度3℃まで冷却した後、テトラメチルジシロキサン5.32g(40mmol)を加え、攪拌しながら室温まで昇温し、室温で12時間攪拌した。水層を除去し、有機層を上水100gで三回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム10gで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した後に減圧濃縮した。得られた粗生成物をメタノールで洗浄し、乾燥し、白色粉末として、以下の式で表されるシリル化前駆体(S−5)、10.4g(5.0mmol)を得た。尚、収率は50質量%であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=6:2である。
【化48】

【0155】
3 シロキサン化合物(A)の合成
次いで、前記シリル化前駆体(S−1)〜(S−5)を用い、シロキサン化合物(A−1、(A−9)〜(A−28)を合成した。各々のシロキサン化合物の合成例を以下に示す。
【0156】
3.1 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−1)
温度計および還流冷却器を備えた300mLの三口フラスコに、テトラヒドロフランを50.0g、前記シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を入れ、攪拌しがながら−78℃に冷却した。次いで、内温が−78℃に達した後にトリクロロイソシアヌル酸、3.41g(15.0mmol)を加えた。添加終了後に−78℃で30分間攪拌した後に、攪拌しながら室温まで昇温した。析出した不溶物を濾別し、テトラヒドロフラン溶液を得た。
【0157】
次いで、温度計、還流冷却器を備えた1L三口フラスコに4−ブロモベンゼン、6.3g(40.0mmol)、ジエチルエーテル50gを入れ、攪拌しながら−78℃に冷却した。内温が−78℃に達した後に1.6mol/Lブチルリチウムヘキサン溶液28ml(45mmol)を30分間で滴下した。滴下終了後に30分間攪拌した後に、ヘキサメチルシクロトリシロキサン29.6g(133mmol)を加えた。攪拌しながら室温まで昇温し、室温で12時間攪拌した。
【0158】
次いで、3℃に冷却し、内温が3℃に達した後に、前記テトラヒドロフラン溶液を10分間で滴下した。滴下終了後に攪拌しつつ、室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。攪拌終了後にジイソプロピルエーテル、50g、純水、50gを加え30分間攪拌後、2層分離した。次いで、水層を除去し、有機層を蒸留水、50gで3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム、10gで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した後に、150℃/0.1mmHgで減圧濃縮し、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−1)11.5gを収率は82質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。シロキサン化合物(A−1)の粘度測定を行ったところ、粘度は900mPa・sであった。
【化49】

【0159】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ−0.04−0.47(m, 72H)5.66−6.24(m,12H),7.21―7.45(m,12H),7.47−7.69(m,8H)
3.2 シリル化前駆体(S−2) → シロキサン化合物(A−9)
シリル化前駆体(S−2)、11.5g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾシクロブテン5.49g(30.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様に、前述のシロキサン化合物(A−1)を得る反応と同様の手順で操作を行い、無色透明油状の以下の式で表されるシロキサン化合物(A−9)を 12.2gを収率は80質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化50】

【0160】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.05−0.07(m, 18H),0.13−0.15(m,30H),0.28−0.31(m,18H),3.15(s,12H),5.75−5.78(m,5H),5.88−5.93(m,5H),6.04−6.07(m,5H)7.01−7.03(m,3H),7.20―7.22(m,3H),7.36−7.38(m,3H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ―0.7,―1.0,―17.7,―109.0,−110.0
3.3 シリル化前駆体(S−1)→シロキサン化合物(A−10)
前記シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−フルオロブロモベンゼン5.22g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物A−10、8.07gを収率45質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1000mPa・sであった。
【化51】

【0161】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.07−0.35(m, 72H),5.75−6.08(m,12H),7.03(brs,8H),7.50(brs,8H)
19F NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ−112.2
3.4 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−11)
シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾトリフルオリド9.00g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−11) 8.55gを収率43質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1100mPa・sであった。
【化52】

【0162】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ−0.06−0.37(m, 72H),5.72−6.14(m,12H),7.57−7.66(m,16H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.93−1.70,―17.1,―109.3,−110.1
19F NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ−63.3
3.5 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−12)
シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに3−ブロモベンゾトリフルオリド9.00g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−12) 7.06gを収率35質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1100mPa・sであった。
【化53】

【0163】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.07−0.40(m, 72H),5.73−6.12(m,12H),7.46(m,4H),7.60(m,4H),7.76(m,8H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.7,―1.6,―17.2,―109.3,−110.2
19F NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);δ−63.1
3.6 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−13)
シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに3,5−ビス(トリフルオロメチル)ブロモベンゼン11.72g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−13)16.1gを収率83質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1000mPa・sであった。
【化54】

【0164】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ−0.06−0.05(m, 72H),5.58−6.21(m,12H),7.77−8.02(m,12H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ8.4,―1.6,―16.4,―109.2,−110.0
19F NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:トリクロロフルオロメタン);−63.3
3.7 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−14)
前記シリル化前駆体(S−1)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに3−トリフルオロメチルブロモベンゼン9.00g(40.0mmol)を用い、ヘキサメチルシクロトリシロキサンを9.8g(44mmol)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−14)18.7gを収率75質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は3100mPa・sであった。
【化55】

【0165】
3.8 シリル化前駆体(S−3) → シロキサン化合物(A−15)
シリル化前駆体(S−3)、17.3g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の量を2.79g(18.3mmol)に変更し、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモビフェニル13.99g(60.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−15) 25.2gを収率70質量%で得た。尚、であった。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=5:3である。粘度測定を行ったとこる、粘度は3800mPa・sであった。
【化56】

【0166】
シロキサン化合物(A−16)は以下のように合成する。具体的には市販のトリメチルシラノールとn−ブチルリチウム等の有機金属試薬などを作用させ、シロキシリチウム化合物を調整し、クロロ化前駆体を作用させる方法を用いた。
【0167】
3.9 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−16)
温度計および還流冷却器を備えた300mLの三口フラスコに、テトラヒドロフランを50.0g、前記シリル化前駆体(S−1)11.2g(10.0mmol)を入れ、攪拌しがながら−78℃に冷却した。次いで、内温が−78℃に達した後にトリクロロイソシアヌル酸、3.41g(15.0mmol)を加えた。添加終了後に−78℃で30分間攪拌した後に、攪拌しながら室温まで昇温した。析出した不溶物を濾別し、テトラヒドロフラン溶液を得た。
【0168】
次いで、温度計、還流冷却器を備えた1L三口フラスコにトリメチルシラノールg3.6g(40.0mmol)、ジエチルエーテル50gを入れ、攪拌しながら−78℃に冷却した。内温が−78℃に達した後に1.6mol/Lブチルリチウムヘキサン溶液25ml(40mmol)を30分間で滴下した。
【0169】
次いで、前記テトラヒドロフラン溶液を10分間で滴下した。滴下終了後に攪拌しつつ、室温まで昇温し、室温で2時間攪拌した。攪拌終了後にジイソプロピルエーテル、50g、純水、50gを加え30分間攪拌後、2層分離した。次いで、水層を除去し、有機層を蒸留水、50gで3回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウム、10gで乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した後に、150℃/0.1mmHgで減圧濃縮し、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−16)6.90gを収率は47%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。シロキサン化合物(A−16)の粘度測定を行ったところ、粘度は900mPa・sであった。
【化57】

【0170】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.09(brs,60H),0.20(brs,24H),5.76−6.16(m,12H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ15.5,7.7,―11.2,―101.9,−103.0
3.10 シリル化前駆体(S−1) → シロキサン化合物(A−17)
トリメチルシラノールの代わりにt−ブチルジメチルシラノール5.29g(40.0mmol)を用いた以外は、(A−16)の合成例と同様に、前述のシロキサン化合物(A−17)を得る反応と同様の手順で操作を行い、無色透明油状の以下の式で表されるシロキサン化合物(A−17)を 7.66gを収率は44%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は900mPa・sであった。
【化58】

【0171】
<NMR測定結果>
H NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ0.04−0.21(m,72H),0.86(s,36H),5.75−6.16(m,12H)
29Si NMR(溶媒:重クロロホルム,基準物質:テトラメチルシラン);δ11.0,0.3,―19.2,―109.2,−110.3
3.11シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−18)
シリル化前駆体(S−4)、11.2g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の量を2.79g(18.3mmol)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−18)、11.3gを収率82質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=5:3である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化59】

【0172】
3.12 シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−19)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾシクロブテン3.74g(44.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−19)、10.5gを収率は70質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1200mPa・sであった。
【化60】

【0173】
3.13 シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−20)
シリル化前駆体(S−4)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−フルオロブロモベンゼン5.22g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−20)、13.5gを収率80質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化61】

【0174】
3.14 シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−21)
シリル化前駆体(S−4)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾトリフルオリド9.00g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−21)、16.1gを収率85質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化62】

【0175】
3.15 シリル化前駆体(S−4) → シロキサン化合物(A−22)
シリル化前駆体(S−4)、11.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモベンゾトリフルオリド9.00g(40.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−22)、15.9gを収率84質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は800mPa・sであった。
【化63】

【0176】
3.16 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−23)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、4−ブロモベンゼンの代わりに3,5−ビス(トリフルオロメチル)ブロモベンゼン12.9g(44.0mmol)を用い、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−23)、13.2gを収率72質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は900mPa・sであった。
【化64】

【0177】
3.17 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−24)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の使用量を2.50g(11.0mmol)に変更、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの使用量を9.8g(44mmol)に変更、4−ブロモベンゼンの代わりに3ートリフルオロメチルブロモベンゼン7.42g(33.0mmol)を用いた以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−24)、14.9gを収率74質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。粘度測定を行ったとこる、粘度は2300mPa・sであった。
【化65】

【0178】
3.18 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−25)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の使用量を1.67g(7.3mmol)に変更、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの使用量を4.9g(22mmol)に変更、4−ブロモベンゼンの代わりに4−ブロモビフェニル5.13g(22.0mmol)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−25)、22.1gを収率70質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。粘度測定を行ったとこる、粘度は3900mPa・sであった。
【化66】

【0179】
3.19 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−26)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用いたこと以外は、A−16の合成例と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−26)、11.0gを収率80質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1200mPa・sであった。
【化67】

【0180】
3.20 シリル化前駆体(S−4)→シロキサン化合物(A−27)
シリル化前駆体(S−4)、10.2g(10.0mmol)を用い、トリメチルシラノールの代わりにt−ブチルジメチルシラノール5.29g(40.0mmol)を用いたこと以外は、A−16の合成例と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−27)、12.6gを収率82質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=4:4である。粘度測定を行ったとこる、粘度は1200mPa・sであった。
【化68】

【0181】
3.21 シリル化前駆体(S−5)→シロキサン化合物(A−28)
シリル化前駆体(S−1)の代わりにシリル化前駆体(S−5)、20.8g(10.0mmol)を用い、トリクロロイソシアヌル酸の使用量を1.67g(7.3mmol)に変更、ヘキサメチルシクロトリシロキサンの使用量を4.9g(22mmol)に変更、4−ブロモベンゼンの使用量を4−ブロモベンゼン、3.2g(20.0mmol)に変更した以外は、実施例1と同様の手順で操作を行い、無色透明な粘性物として、以下の式で表されるシロキサン化合物(A−28)、15.8gを収率71質量%で得た。X1とX2の比率は、各々の個数の平均値でX1:X2=3:5である。粘度測定を行ったとこる、粘度は3500mPa・sであった。
【化69】

【0182】
[硬化物の作製および透明性・耐熱性評価]
次いで、合成したシロキサン化合物(A−1)、(A−9)〜(A−28)に白金化合物1、2を加えた組成物、さらにシロキサン化合物(B−1)〜(B−5)またはシロキサン化合物(C−1)〜(C−4)を加えた組成物を調製し、加熱硬化させて硬化物を得た。
【0183】

用いた白金化合物1、2、シロキサン化合物(B−1)〜(B−5)またはシロキサン化合物(C−1)〜(C−4)について、表2に示す。
【表2】

【0184】
次いで、組成物の配合について、表3および表4の実施例1〜36に示す。
【表3】

【表4】

【0185】
表3および表4に示すように、組成物(1−1)〜(1−10)はシロキサン化合物(A)および白金化合物からなる組成物であり、組成物(2−1)〜(2−9)はシロキサン化合物(A)、シロキサン化合物(B)および白金化合物からなる組成物であり、組成物(3−1)〜(3−15)は、シロキサン化合物(A)、シロキサン化合物(B)、シロキサン化合物(C)および白金化合物からなる組成物であり、組成物(4−1)〜(4−10)は、シロキサン化合物(A)、シロキサン化合物(C)および白金化合物からなる組成物である。尚、配合比は( )内に質量部またはppmで示した。
【0186】
[実施例1〜22]
表3の実施例1〜43に示した配合の組成物を、信越化学工業株式会社より市販される品名SH9555のシリコーンからなる型に室温(20℃)流し込み、組成物1−1および2−2については、150℃の加熱炉内で1時間加熱後さらに250℃で1時間加熱することで硬化物を、他の組成物については、150℃の加熱炉内で1時間加熱することで、実施例1〜35の硬化物を得た。組成物はいずれも、室温で流動性があり、肩に流し込むことが容易であった。
【0187】
得られた実施例1〜43の硬化物は、いずれも発泡およびクラックが観察されず、ゲル特有の粘着性(タック性)もなく、透明性があり概観良好で扱いやすいものであった。
【0188】
次いで、表3に示した組成物1−1〜1−9、2−1〜2−15、および3−1〜3−10を、ガラス基板上に塗布し、組成物1−1および2−2については、150℃の加熱炉内で1時間加熱後さらに250℃で1時間加熱することで硬化物を、他の組成物については、150℃の加熱炉内で1時間加熱することで、実施例1〜43の硬化物膜を得た。
【0189】
実施例1〜43の硬化物膜について、成膜直後、および140℃で1000時間連続化熱後において、紫外可視分光装置を用いた透明性評価を行った。波長450nmの入射光に対する光透過率を測定したところ、膜厚2.5μm換算で、成膜直後、140℃で1000時間経過後ともに、透過率90%以上であり、連続加熱による透明性の劣化は認められなかった。また、発泡およびクラックに発生も認められなかった。
【0190】
[比較例1]
LED、フォトダイオード、光導波路接続部および各種太陽電池の封止材として、信越化学工業株式会社が製造販売する、無溶剤タイプ且つA液とB液からなる2液タイプの熱硬化型有機シリコーンレジンである、品番SCR−1011(A/B)をガラス基板上に塗布した後、150℃の加熱炉内で1時間加熱後させることで硬化物をガラス基板上に得た。しかしながら、当該硬化物膜は、塗布直後は前記光透過率が90%以上で透明であったが、140℃で1000時間、連続加熱したところ、黄色く着色し透明性が失われた。
【0191】
このように、本発明の組成物が硬化してなる硬化物膜は、成膜直後および140℃で1000時間加熱後も透明性を維持し、発泡およびクラックともに発生もなく、透明性および耐熱ともに優れることがわかった。尚、白金化合物1、2を組成物から除いた場合、組成物は加熱したとしても粘性物のままであり、タック性があり、硬化物が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、Xは、それぞれ独立に、一般式X1またはX2
【化2】

で表される基であり、X1の個数αは1〜8の整数であり、X2の個数βは0〜7の整数であり、αとβとの和は8であり、
式X1およびX2中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、炭素原子が酸素原子または窒素原子に置換されていてもよく、
は、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基またはアリル基であり、mおよびnは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、3≦m+nである。)
で表されるシロキサン化合物(A)、ならびに白金化合物、パラジウム化合物およびロジウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属化合物を含む、組成物。
【請求項2】
前記Rが、メチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、一般式(2)
【化3】

(式中、tは1〜3の整数である。)
で表される基、式(3)
【化4】


で表される基、または、式(4)
【化5】

(式中、uは1〜3の整数である。)
で表される基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
さらに、一般式(5)
【化6】

(式中、Rは、エーテル結合、フェニレン基、または一般式(6)
【化7】

(式中、R11およびR12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これらの炭化水素基の水素原子はフッ素原子に置換されていてもよく、rは1〜100の整数である。)
で表されるシロキサン基であり、
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基もしくはアルキニル基、または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、
10は、水素原子またはビニル基である。)
で表されるシロキサン化合物(B)、一般式(7)
【化8】

(式中、R13は、それぞれ独立に、水素原子またはビニル基、R14は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これらの炭化水素基の水素原子はフッ素に置換されていてもよく、sは3〜7の整数である。)
で表されるシロキサン化合物(C)、およびエポキシ化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1または請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記エポキシ化合物がグリシジル基を含み、数平均分子量が60以上、10000以下であり、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、芳香環または複素環を含んでいてもよく、当該有機基中の水素原子の一部または全部が、それぞれ独立に、フッ素原子、塩素原子、アルキル基またはフルオロアルキル基で置換されていてもよい、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の組成物を100℃以上、300℃以下に加熱することにより硬化させてなる、請求項5に記載の硬化物。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の硬化物を含む、封止材。
【請求項8】
一般式(8)
【化9】

(式中、Xはそれぞれ独立に、一般式X1またはX2
【化10】

で表される基であり、X1の個数αは1〜8の整数であり、X2の個数βは0〜7の整数であり、αとβとの和は8であり、
式X1およびX2中、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基または炭素数6〜8のアリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよい。R15は炭素数1〜18のアルキル基、アリール基であり、これら炭化水素基の水素原子がフッ素原子に置換されていてもよく、トリフルオロメチル基が置換されていてもよい。Rは、それぞれ独立に、水素原子、ビニル基またはアリル基であり、mおよびnは、それぞれ独立に、1〜4の整数であり、3≦m+nである。)
で表されるシロキサン化合物。
【請求項9】
前記R15が、メチル基、ターシャリーブチル基、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、一般式(2)
【化11】

(式中、tは1〜3の整数である。)
で表される基、
式(3)
【化12】

で表される基、
または、式(4)
【化13】

(式中、uは1〜3の整数である。)
で表される基である、請求項8に記載のシロキサン化合物。

【公開番号】特開2013−108063(P2013−108063A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−227933(P2012−227933)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】