説明

ジアリール置換アルカン

本発明は5−リポキシゲナーゼ活性化蛋白質阻害剤である式(II):


の化合物を提供する。式(II)の化合物は抗アテローム硬化性剤、抗喘息剤、抗アレルギー剤、抗炎症剤及び細胞保護剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は5−リポキシゲナーゼ活性化蛋白質(FLAP)を阻害する化合物、前記化合物を含有する組成物、並びにアテローム性動脈硬化症と関連疾患及び症状の治療及び予防のためにこのような化合物を使用する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロイコトリエン生合成の阻害は長年にわたって活発な医薬研究分野である。ロイコトリエンは5−リポキシゲナーゼによるアラキドン酸の酸化により誘導される強力な収縮及び炎症メディエーターである。
【0003】
ある種のロイコトリエン生合成阻害剤は5−リポキシゲナーゼ(5−LO)の阻害により作用することが知られている。一般に、5−LO阻害剤はアレルギー性鼻炎、喘息及び炎症症状(例えば関節炎)の治療用として検討されてきた。5−LO阻害剤の1例は喘息治療用に指定されている市販薬ジロートンである。更に最近では、5−LOがアテローム発生プロセスの要因であるらしいという報告もある。Mehrabian,M.ら,Circulation Research,2002 Jul 26,91(2):120−126参照。
【0004】
5−LO阻害剤とは異なる新規類のロイコトリエン生合成阻害剤(現在ではFLAP阻害剤と言われる。)がMiller,D.K.ら,“Identification and isolation of a membrane protein necessary for leukotriene production,”Nature,vol.343,No.6255,pp.278−281(18 Jan 1990)に記載されている。Dixon,R.A.ら,“Requirement of a 5−lipoxygenase−activating protein for leukotriene synthesis,”Nature, vol 343,no.6255,pp.282−4(18 Jan 1990)も参照。5−LO阻害剤化合物を使用して核内膜18,000ダルトン蛋白質5−リポキシゲナーゼ活性化蛋白質(FLAP)が単離同定された。これらの化合物は細胞内ロイコトリエンの形成を阻害するが、可溶性5−LO活性には直接作用しない。細胞内では、サイトゾルホスホリパーゼ2の作用により膜リン脂質からアラキドン酸が放出される。このアラキドン酸はFLAPにより核膜結合5−リポキシゲナーゼに転送される。細胞内のFLAPの存在はロイコトリエン合成に不可欠である。更に、Helgadottir,A.ら,Nature Genetics,vol 36,no.3(March 2004)pp.233−239に記載されている報告によると、5−リポキシゲナーゼ活性化蛋白質をコードする遺伝子はヒトに心筋梗塞と脳卒中の危険をもたらすと考えられている。
【0005】
アテローム性動脈硬化症とその後のアテローム硬化性疾患イベントの治療及び予防における治療薬の進歩は目覚ましく、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤で改善が得られているが、更に治療選択肢を広げる必要があることは明白である。本発明はアテローム性動脈硬化症及び関連症状の治療又は予防用化合物、組成物及び方法を提供することによりこのような必要に対処するものである。
【発明の開示】
【0006】
(発明の概要)
本発明はFLAP阻害剤である構造式II:
【0007】
【化11】

の化合物(例えば構造式Iの化合物)、その製造方法、並びに哺乳動物、特にヒトでこれらの化合物を使用するための方法及び医薬製剤に関する。従って、本発明は構造式IIの化合物とその医薬的に許容可能な塩を提供する。式IIに含まれる化合物の医薬的に許容可能なエステル及び溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。本発明はアテローム発生を遅延又は停止させるための本明細書に記載する化合物の使用も含む。従って、本発明の1つの目的は臨床症状が顕在化してからアテローム硬化性疾患の進行を停止又は遅延させることを含むアテローム性動脈硬化症の治療方法として、このような治療を必要とする患者に治療有効量の式IIの化合物を投与することを含む方法を提供することである。別の目的は、アテローム性動脈硬化症及びアテローム硬化性疾患イベントの発症の危険の予防又は低減方法として、アテローム性動脈硬化症を発症する危険又はアテローム硬化性疾患イベントを発症する危険のある患者に予防有効量の式IIの化合物を投与することを含む方法を提供することである。
【0008】
式IIの化合物は抗喘息剤、抗アレルギー剤、抗炎症剤及び細胞保護剤としても有用である。これらの化合物は更に狭心症、脳痙攣、糸球体腎炎、肝炎、内毒素血症、ブドウ膜炎及び同種移植拒絶反応の治療にも有用である。本発明は上記治療を必要とする患者に治療有効量の式IIの化合物を投与することを含む治療方法を提供する。
【0009】
別の目的は式IIのFLAP阻害剤と他の抗アテローム性動脈硬化薬を含む他の治療有効物質との併用を提供することである。これら及び他の目的は本明細書の記載から明白に理解されよう。
【0010】
(発明の詳細な記述)
本発明は構造式II:
【0011】
【化12】

により表される化合物とその医薬的に許容可能な塩を提供し、
式中、
qは0及び1から選択される整数であり;

(a)N、S及びOから選択される2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環;
(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環;
(c)1個の硫黄と2から4個の窒素から選択される3から5個のヘテロ原子を含み、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換された8員の芳香族又は部分不飽和オルト縮合二環系;
(d)3から4個の窒素原子を含み、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換された9員の芳香族又は部分不飽和オルト縮合二環系;
(e)−C1−6アルキル、−C2−6アルケニル及び−C2−6アルキニル(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは場合によりR12で置換され、及び場合によりR13で置換されている。);
(f)フルオロ、−NH、−OH及び場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−3アルキルから構成される群から選択される1から3個の置換基で場合により置換された−C3−6シクロアルキル;
(g)−O−R6a;並びに
(h)−H、−OH、−CN、−CO、−C(O)NR、−NR、−NRSO、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−S(O)及び−S(O)NR
から構成される群から選択され;
pは0、1及び2から選択される整数であり;
は(a)場合により−OH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基(例えば1から3個のフルオロ)で置換された−C1−6アルキル、(b)場合により1から3個のフルオロで置換された−C3−6シクロアルキル、並びに
【0012】
【化13】

から構成される群から選択され;
nは0、1、2及び3から選択される整数であり;
は−H、−F、−OH及び場合により1から5個のフルオロで置換された−C1−3アルキル(例えば−CF)から構成される群から選択されるか;あるいは
とRは一緒になって炭素原子数3から8の単環又は二環系を表し、前記系は場合によりC1−3アルキル、OC1−3アルキル、F、OH、モノ、ジ又はトリフルオロC1−3アルキル並びにモノ、ジ及びトリフルオロC1−3アルコキシから選択される1から2個の基で置換されており;
Xは−O−、−S−及び−C(R14−から構成される群から選択され;
は−H、−C1−6アルキル及び−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択され;
は−H、−F及び−CHから構成される群から選択され;
は(a)場合により−OH、−NH、−CN、−O−C1−4アルキル及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基(例えば1から3個のフルオロ)で置換された−C1−6アルキル、(b)−C1−6アルキル−R10、(c)場合により−OH、−NH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−OC1−6アルキル、(d)場合によりメチル、−OH、−NH、−CF及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、(e)−NR、(f)−SO1−3アルキル、(g)−CO−R、(h)−OH、(i)=O(オキソ)、(j)−SH、(k)=S、(l)−SMe、(m)−Cl、(n)−CF、(o)−CN並びに(p)R10から構成される群から選択され;
6aは(1)場合によりR12及びR13から構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(2)−C1−6アルキル−R10、並びに(c)場合によりR12及びR13から構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択され;
は(a)−H、(b)場合により−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(c)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、(d)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−COC1−6アルキル、(e)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−COC3−6シクロアルキル、並びに(f)1個のNを含み、環の炭素原子を介して−NRの窒素と結合しており、場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された4から6員の飽和複素環から構成される群から選択され;
は(a)−H、(b)場合により−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、並びに(c)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択されるか;あるいは
とRは一緒になって−(CH3−5−を表し、RとRが結合している窒素と結合して4から6員の環を形成し、前記環は場合により−CH、−CF、−F及び−OHから構成される群から選択される置換基で置換されており;
は−H、−OH、−C1−3アルキル及び−Fから構成される群から選択され;
10は(a)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたアゼチジニル、(b)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたピロリジニル、(c)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたピペリジニル、並びに(d)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたモルホリニルから構成される群から選択される複素環であり;
Yは(a)1から4個のNと0から1個のSから選択される1から4個のヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、(b)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、(c)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された9員の二環式芳香族又は部分不飽和複素環、及び(d)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された10員の二環式芳香族又は部分不飽和複素環から構成される群から選択され;
11は−F、−NH、−OH、−OC3−4シクロアルキル、場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−3アルキル、及び場合によりフェニル又は1から3個のフルオロで置換された−OC1−3アルキルから構成される群から選択され;
12は−CO、−C(O)NR、−N(R、−NRSO、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−S(O)NR、−S(O)、−F、−CF、フェニル、Hetcy及びZから構成される群から選択され;
13は−OH、−NH及び−Fから構成される群から選択され;
14は−H及び場合により1から3個のフルオロ基で置換された−C1−4アルキルから構成される群から選択され;
各R
a)−H、
b)各々場合により−OH、−OC1−4アルキル、−CN、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)及び−CFから構成される群から選択される1から2個の置換基で置換されており、場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−4アルキル、−C2−4アルケニル及び−C2−4アルキニル、
c)Hetcy及びHetcy−C1−4アルキル−[Hetcy部分は場合により−F、−OH、−COH、−C1−4アルキル、−CO1−4アルキル、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、オキソ、−C(O)NHC1−4アルキル及び−C(O)N(C1−4アルキル)から構成される群から選択される1から2個の置換基で炭素上で置換されており、窒素が、存在する場合、場合により−C1−4アルキル及び−C1−4アシルから選択される基で置換されており、Hetcy−C1−4アルキル−のアルキル部分は場合により−OH、−CN、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)及び1から3個のフルオロから構成される群から選択されるメンバーで置換されている。]、並びに
d)Z及びZ−C1−4アルキル−[Z−C1−4アルキル−のアルキル部分は場合により−OH、−CN、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)及び1から3個のフルオロから構成される群から選択される置換基で置換されている。]
から構成される群から独立して選択され;
各Rは−Hと、場合によりNH、−OH、−F、−CN及び−CFから構成される群から選択される1から2個のメンバーで置換された−C1−3アルキルから構成される群から独立して選択され;
、R及びRは−H、−F、−Cl、−OH、−CN、場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−4アルキル、及び場合により1から3個のフルオロで置換された−OC1−4アルキルから各々独立して選択され;
Hetcyはアゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、β−ラクタミル、δ−ラクタミル、γ−ラクタミル及びテトラヒドロピラニルから構成される群から選択され;

a)Z
b)1個の硫黄と2から4個の窒素から選択される3から5個のヘテロ原子を含み、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換されたC1−4アルキルから選択される基で置換された8員の芳香族又は部分不飽和オルト縮合二環系、並びに
c)3から4個の窒素原子を含み、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換されたC1−4アルキルから選択される基で置換された9員の芳香族又は部分不飽和オルト縮合二環系
から構成される群から選択され;

a)2から4個の窒素原子を含み、環の1個の窒素が場合により−C1−4アルキルと、−NH、−OH、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換されており、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、
b)1個の酸素又は1個の硫黄と1から2個の窒素から選択される2から3個のヘテロ原子を含み、環の1個の窒素が場合によりC1−4アルキルと、−NH、−OH、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換されたC1−4アルキルから選択される基で置換されており、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換されたC1−4アルキルから選択される基で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、並びに
c)1から2個の窒素原子を含み、環の1個の窒素が場合により−C1−4アルキルと、−NH、−OH、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換されており、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環から構成される群から選択される。
【0013】
本発明の一実施形態では、qが1である式IIの化合物を提供する。qが1であり、XがO又はSである式IIの化合物がこの実施形態に含まれる。
【0014】
本発明は更に構造式I:
【0015】
【化14】

により表される式IIの化合物とその医薬的に許容可能な塩を提供し、
式中、
は(a)N、S及びOから選択される2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、並びに(c)−O−R6aから構成される群から選択され;
は(a)場合により−OH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(b)場合により1から3個のフルオロで置換された−C3−6シクロアルキル、並びに
【0016】
【化15】

から構成される群から選択され;
nは0、1、2及び3から選択される整数であり;
は−H、−F、−OH及び場合により1から5個のフルオロで置換された−C1−3アルキル(例えば−CF)から構成される群から選択され;
は−H、−C1−4アルキル及び−C3−4シクロアルキルから構成される群から選択され;
は−H及び−CHから構成される群から選択され;
は(a)場合により−OH、−NH及び1から3個のフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(b)−C1−3アルキル−R10、(c)場合により−OH、−NH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−OC1−6アルキル、(d)場合によりメチル、−OH、−NH、−CF及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、(e)−NR、(f)−SO1−3アルキル、(g)−CO−R、(h)オキソ並びに(i)−CNから構成される群から選択され;
6aは(a)場合により−OH、−NH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(b)−C1−3アルキル−R10、並びに(c)場合により−OH、−NH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択され;
は(a)−H、(b)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(c)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、(d)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−COC1−6アルキル、(e)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−COC3−6シクロアルキル、並びに(f)1個のNを含み、環の炭素原子を介して−NRの窒素と結合しており、場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された4から6員の飽和複素環から構成される群から選択され;
は(a)−H、(b)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、並びに(c)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択され;
は−H、−C1−3アルキル及び−Fから構成される群から選択され;
10は(a)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたアゼチジニル、(b)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたピロリジニル、(c)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたピペリジニル、並びに(d)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたモルホリニルから構成される群から選択され;
Yは(a)1から4個のNと0から1個のSから選択される1から4個のヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、(b)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、及び(c)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された10員の二環式芳香族又は部分不飽和複素環から構成される群から選択され;
11は−F、−NH、−OH、−OC3−4シクロアルキル、場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−3アルキル、及び場合によりフェニル又は1から3個のフルオロで置換された−OC1−3アルキルから構成される群から選択される。
【0017】
本発明の別の実施形態では、構造式Ia:
【0018】
【化16】

[式中、変項(R、Y等)は式Iに定義した通りである。]をもつ式Iの化合物とその医薬的に許容可能な塩を提供する。
【0019】
式I及びIaにより定義される各実施形態には、R
(a)2から4個のN、0から1個のO及び0から1個のSから選択される合計2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、
(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、
(c)場合によりR12(特にR12はHetcy及びZから選択される。)で置換され、場合によりR13(特にR13は−OH及び−NHから選択される。)で置換された−C1−4アルキル、
(d)−CO1−6アルキル、
(e)−C(O)NR
(f)−CN、並びに
(g)場合によりR12(特にR12はHetcy及びZから選択される。)で置換され、場合によりR13(特にR13は−OH及び−NHから選択される。)で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択される第1分類の化合物が含まれる。
【0020】
第1分類のサブ分類には、Rが(a)2から4個のN、0から1個のO及び0から1個のSから選択される合計2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、並びに(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環から構成される群から選択される化合物が含まれる。各第1分類のサブ分類には、RがN及びOから選択される2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環から選択される化合物が含まれる。各第1分類の別のサブ分類には、Rが2から4個のN、0から1個のO及び0から1個のSから選択される2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環から選択され、特にR
【0021】
【化17】

から選択され、場合によりRで置換されている化合物が含まれる。
【0022】
各第1分類の別のサブ分類には、Rが1から2個のNヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環から選択され、特にR
【0023】
【化18】

から選択され、場合によりRで置換されている化合物が含まれる。
【0024】
qが1である式IIと式I及びIaにより定義される各実施形態並びに各第1分類とそのサブ分類には、Rが、存在する場合、(a)−CR(Rは−H、−C1−3アルキル及び−Fから選択され、Rは−H、−C1−3アルキル及び−Fから選択され、Rは−H、−C1−3アルキル、−F、−NH及び−OHから選択されるか、あるいはRとRは一緒になってそれらが結合している炭素と共にシクロプロピル環を形成する。)、(b)−CH−R10、(c)場合により1から3個のフルオロで置換された−OCH、(d)−NR、(e)−SOCH及び(f)オキソから構成される群から選択される第2分類の化合物が含まれる。
【0025】
各第2分類の化合物のサブ分類には、Rが−C(CHOH、
【0026】
【化19】

−CH、−CF及び−CH−R10から構成される群から選択される化合物が含まれる。特にR10
【0027】
【化20】

から選択され、Rは−F及び−OHから選択され、Rは−H、−F及び−OHから選択される。
【0028】
式I及びIaにより定義される各実施形態並びに上記に定義した各第1分類及び第2分類とそのサブ分類には、Yが(a)1から2個のNと0から1個のSから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、及び(b)1から2個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環から選択される第3分類の化合物が含まれる。各第3分類の化合物のサブ分類には、Yが
【0029】
【化21】

から選択される化合物が含まれる。
【0030】
各第3分類の化合物の別のサブ分類には、Yが1から2個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族複素環である化合物が含まれる。特に、Yは
【0031】
【化22】

から選択することができる。
【0032】
各第3分類の化合物の更に別のサブ分類には、Yが1個のNと1個のSを含む5員の芳香族又は部分不飽和複素環であり、特に
【0033】
【化23】

から選択される化合物が含まれる。
【0034】
式I及びIaにより定義される各実施形態並びに上記に定義した各第1分類、第2分類及び第3分類とそのサブ分類には、R11が−F又は不在である(即ちYが置換されていない)第4分類の化合物が含まれる。
【0035】
qが1である式IIと式Iの各々により定義される実施形態並びに各第1分類、第2分類、第3分類及び第4分類とその任意各サブ分類には、Rがi−プロピル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、
【0036】
【化24】

から構成される群から選択される第5分類の化合物が含まれる。各第5分類の化合物のサブ分類には、Rがi−プロピル及びt−ブチルから選択される化合物が含まれる。
【0037】
qが1である式IIと式Iの各々により定義される実施形態並びに各第1分類、第2分類、第3分類、第4分類及び第5分類とその任意各サブ分類には、Rが−H及び−CHから構成される群から選択される第6分類の化合物が含まれる。特に、Rが−HであるときにはRはt−ブチルであり、Rが−CHであるときにはRはi−プロピルである。
【0038】
qが1である式IIと式Iの各々により定義される実施形態並びに各第1分類、第2分類、第3分類、第4分類、第5分類及び第6分類とその任意各サブ分類には、Rが−H、−CH及び−CHCHから構成される群から選択される第7分類の化合物が含まれる。
【0039】
qが1である式IIと式Iの各々により定義される実施形態並びに各第1分類、第2分類、第3分類、第4分類、第5分類、第6分類及び第7分類とそのサブ分類には、Rが−Hである第8分類の化合物が含まれる。
【0040】
本発明の別の実施形態では、qが0である式IIの化合物を提供する。本発明は更に構造式IIa:
【0041】
【化25】

[式中、変項(R、Y等)は式IIに定義した通りである。]により表される式IIの化合物とその医薬的に許容可能な塩を提供する。
【0042】
本発明の別の実施形態では、構造式IIb:
【0043】
【化26】

[式中、変項(R、Y等)は式IIに定義した通りである。]をもつ式IIaの化合物とその医薬的に許容可能な塩を提供する。
【0044】
qが0である式IIと式IIa及びIIbにより定義される各実施形態には、Yが1から2個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族である第9分類の化合物が含まれる。各第9分類の第1のサブ分類には、Yが
【0045】
【化27】

から選択される化合物が含まれる。各第9分類の第2のサブ分類では、Yは
【0046】
【化28】

から選択される。
【0047】
式II、IIa及びIIbにより定義される各実施形態並びに各第9分類とそのサブ分類には、R11が、存在する場合、−NHと、場合によりフェニル又は1から3個のフルオロで置換された−OC1−3アルキルから構成される群から選択される第10分類の化合物が含まれる。
【0048】
qが0である式IIと式IIaにより定義される実施形態並びに各第9分類及び第10分類とその任意各サブ分類には、Rがi−プロピル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、
【0049】
【化29】

から構成される群から選択される第11分類の化合物が含まれる。各第11分類の化合物のサブ分類には、Rがi−プロピル及びt−ブチルから選択される化合物が含まれる。
【0050】
qが0である式IIと式IIaにより定義される実施形態並びに各第9分類、第10分類及び第11分類とその任意各サブ分類には、Rが−H及び−CHから構成される群から選択される第12分類の化合物が含まれる。別のそのサブ分類には、Rがt−ブチルであるときにRが−Hであり、Rがi−プロピルであるときにRが−CHである化合物が含まれる。
【0051】
式IIにより定義される実施形態と、R、R及びRが存在する他の任意実施形態には、R、R及びRが各々−Hである第13分類の化合物が含まれる。
【0052】
式II、式IIa及びIIbにより定義される各実施形態と、前記式に関連する各第9分類から第13分類及びサブ分類には、R
(a)2から4個のN、0から1個のO及び0から1個のSから選択される合計2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、
(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、
(c)場合によりR12(特にR12はHetcy及びZから選択される。)で置換され、場合によりR13(特にR13は−OH及び−NHから選択される。)で置換された−C1−4アルキル、
(d)−OR6a(R6aは場合によりR13で置換された−C1−4アルキルであり、特にR13は1から5個のフルオロある。)、
(e)−CO1−6アルキル、
(f)−C(O)NR
(g)−CN、並びに
(h)場合によりR12(特にR12はHetcy及びZから選択される。)で置換され、場合によりR13(特にR13は−OH及び−NHから選択される。)で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択される第14分類の化合物が含まれる。
【0053】
各第14分類の第1のサブ分類には、Rが2から4個のN、0から1個のO及び0から1個のSから選択される合計2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環であり、特にR
【0054】
【化30】

から選択され、場合によりRで置換されている化合物が含まれる。
【0055】
各第14分類の第2のサブ分類には、Rが1から2個のNヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環であり、特にR
【0056】
【化31】

から選択され、場合によりRで置換されている化合物が含まれる。
【0057】
各第14分類の第3のサブ分類には、Rが(a)−C(CHOH、(b)−C(CHNH、(c)場合により−OH及び−NHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、(d)場合により1から3個のフルオロで置換された−OCH、(e)−CN、(f)−CO1−6アルキル、並びに(g)−C(O)NR[式中、Rは−Hであり、Rは(i)−H、(ii)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(iii)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、並びに(f)1個のNを含み、環の炭素原子を介して−NRの窒素と結合しており、場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された4から6員の飽和複素環から選択される。]から選択される化合物が含まれる。
【0058】
qが0である式IIと式IIa及びIIbにより定義される各実施形態並びに前記式のいずれかに関連する各第9分類から第14分類及びサブ分類には、Rが、存在する場合、
(a)−CR(式中、Rは−H、−C1−3アルキル及び−Fから選択され、Rは−H、−C1−3アルキル及び−Fから選択され、Rは−H、−C1−3アルキル、−OC1−3アルキル、−F、−NH及び−OHから選択されるか、あるいはRとRは一緒になってそれらが結合している炭素と共に下記構造:
【0059】
【化32】

をもつシクロプロピル環を形成する。)、
(b)−C1−3アルキル−R10
(c)−R10
(d)場合により1から5個のフルオロで置換された−OC1−4アルキル、
(e)−NR
(f)−SOCH
(g)オキソ及び
(h)−CO1−6から構成される群から選択される第15分類の化合物が含まれる。
【0060】
各第15分類の化合物のサブ分類には、Rが−C(CHOH、−C(CHNH、CHOH、
【0061】
【化33】

−CH、−CF、−CH−R10、−C(CH)−R10、−C(CH−R10、−SOCH及び−NR(式中、Rは−H及び−C1−3アルキルから選択され、Rは−H、−C1−3アルキル、並びに1個のNを含み、環の炭素原子を介して−NRの窒素と結合しており、場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された4から6員の飽和複素環から選択される。)から構成される群から選択される化合物が含まれる。
【0062】
式II、式IIa及びIIbにより定義される各実施形態と、式II、式IIa及びIIbのいずれかに関連する各第9分類から第15分類及びサブ分類には、R10
【0063】
【化34】

から選択され、場合により−OH及びフルオロから独立して選択される1から2個の置換基で置換されている第16分類の化合物が含まれる。
【0064】
式II、式IIa及びIIbにより定義される各実施形態と、式II、式IIa及びIIbのいずれかに関連する各第9分類から第16分類及びサブ分類には、R12が、存在する場合Hetcyである第17分類の化合物が含まれる。その別のサブ分類にはR12が不在である化合物が含まれる。
【0065】
式II、式IIa及びIIbにより定義される各実施形態と、式II、式IIa及びIIbのいずれかに関連する各第9分類から第17分類及びサブ分類には、R13が、存在する場合−OHである第18分類の化合物が含まれる。その別のサブ分類では、R12は不在であり、R13は−OH又は不在である。
【0066】
式I及びIIaと全分類及びそのサブ分類の化合物を含む式IIの化合物において、Rがi−プロピルであり、Rがメチルであるときには、(S)−エナンチオマーが好ましい。同様に、式Ia及びIIbと全分類及びそのサブ分類の(S)−エナンチオマーも好ましい。
【0067】
【化35】

【0068】
「アルキル」なる用語は直鎖でも分岐鎖でもその組合せでもよい指定炭素原子数の炭素鎖を意味する。アルキル基の例としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル(i−プロピル)、ブチル、sec−及びtert−ブチル(s−ブチル、t−ブチル)、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。「シクロアルキル」とは指定炭素原子数の環状アルキル環を意味する。シクロアルキルの例としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシルが挙げられる。シクロアルキル環は安定な構造を形成する利用可能な任意炭素(例えば分子の残余との結合点として機能する環炭素)を置換されていてもよい。シクロアルキルはシクロプロピル又はシクロブチルが好ましく、−CH3又は−CF3で置換されている場合には、置換基は分子の残余との結合点として機能する環炭素に位置することがより好ましい。
【0069】
「複素環」なる用語及び「ヘテロシクリル」や「複素環式」等のその変形は1個以上の炭素原子と、窒素、酸素及び硫黄等の1個以上のヘテロ原子を含む芳香族、部分不飽和又は飽和環を意味するが、例えば飽和度、環の員の(即ち原子)数及び/又は環のヘテロ原子の種類と量については明細書中に必要に応じてより詳細に定義する場合がある。化合物構造における結合点は特に指定しない限り、安定な構造を形成する複素環の任意炭素又は窒素を介することができる。複素環は特に指定しない限り、安定な構造を形成する環の利用可能な任意炭素又は窒素を置換されていてもよい。
【0070】
「場合により1個以上の置換基で置換」なる用語は場合により置換された部分全体の置換基の合計数が0、1又は2以上であり得ることを意味し、所与部分の置換に利用可能な各炭素及びヘテロ原子(存在する場合)が独立して置換されていなくてもよいし、出現毎に同一又は異なり、安定な構造を形成する1個以上の置換基で一置換又は多置換されていてもよいことを意味する。「多置換」なる用語は2個以上の置換基を意味し、例えば原子価と安定性が許容する範囲で適宜二置換、三置換、四置換、五置換以上が挙げられる。
【0071】
本発明に含まれる化合物には互変異性体(例えばケト−エノール互変異性体)として存在するものもある。例えば、Rが5員の複素環であり、Rがオキソであるとき、得られる化合物は下式:
【0072】
【化36】

に例示するように互変異性化可能な場合がある。本発明の化合物が互変異性化可能な場合には、個々の全互変異性体とその混合物が本発明の範囲に含まれる。
【0073】
本明細書で「式II」の化合物と言う場合には、文脈内において化合物の構造亜群が例えば構造亜群内の所定化合物の製造方法に関する合成記述のように扱われていない限り、式I、Ia、IIa及びIIb等の各亜属記述の範囲により定義される化合物に加え、これらの亜属記述のいずれかの範囲内の個々の化合物も含む。本発明の化合物を「式II」、「式I」、「式Ia」、「式IIa」、「式IIb」又は本明細書で使用する他の任意一般構造式の化合物と言う場合には、その医薬的に許容可能な塩を含めたこれらの構造式の範囲に該当する化合物を包含する。式IIに含まれる化合物の医薬的に許容可能なエステル及び溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。「医薬的に許容可能な塩」なる用語は無機又は有機塩基と無機又は有機酸を含む医薬的に許容可能な非毒性塩基又は酸から製造される塩を意味する。無機塩基から誘導される塩としてはアルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、三価鉄、二価鉄、リチウム、マグネシウム、三価マンガン、二価マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の塩が挙げられる。アンモニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。医薬的に許容可能な非毒性有機塩基から誘導される塩としては第一、第二、及び第三アミン、置換アミン(天然置換アミンを含む)、環状アミン、並びに塩基性イオン交換樹脂(例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン等)の塩が挙げられる。本発明の化合物が塩基性である場合には、無機酸や有機酸等の医薬的に許容可能な非毒性酸から塩を製造することができる。このような酸としては酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、樟脳スルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩酸、イセチオン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、マロン酸、粘液酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、リン酸、プロピオン酸、琥珀酸、硫酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等が挙げられ、特にクエン酸、フマル酸、臭化水素酸、塩酸、トリフルオロ酢酸、マレイン酸、リン酸、硫酸及び酒石酸が挙げられる。
【0074】
本発明の化合物を「式II」、「式I」、「式Ia」、「式IIa」、「式IIb」又は本明細書に記載する他の任意実施形態の化合物と言う場合には、これらの構造式の範囲に該当する化合物に加え、可能な場合にはその医薬的に許容可能なエステルも包含する。医薬的に許容可能なエステルは場合により利用可能なカルボン酸基のエステル化又は化合物中の利用可能なヒドロキシル基におけるエステルの形成により製造することができる。このようなエステル化合物はプロドラッグとして利用することができ、特にin vivoで加水分解してその酸又はヒドロキシ形態に戻すことができるため、本発明の範囲に含まれる。医薬的に許容可能なエステルの例としては限定されないが、−C1−4アルキル及びフェニルで置換された−C1−4アルキルから成るエステルが挙げられる。
【0075】
式IIの化合物(式I、式Ia、式IIa及び式IIbの化合物を含む)は1個以上の不斉中心(例えばキラル中心)を含む場合があり、従ってラセミ化合物、ラセミ混合物(例えばエナンチオマー混合物)、単一エナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーとして存在することができる。本発明はこのような全異性体に加え、このようなラセミ化合物、混合物、エナンチオマー及びジアステレオマーの塩、エステル及び溶媒和物も含む。更に、本発明の化合物の結晶体には多形体として存在するものもあるので、このような全非晶質及び結晶体も本発明の範囲内に含むものとする。
【0076】
更に、本発明の式IIの化合物(式I、式Ia、式IIa及び式IIbの化合物を含む)には水と溶媒和物(水和物と言う)又は一般有機溶媒と溶媒和物を形成するものもある。本発明の化合物と溶媒(例えば水)から成るこのような医薬的に許容可能な溶媒和組成物も本発明の範囲に含まれる。
【0077】
構造式IIの化合物は例えば適切な溶媒(例えばDCM/ヘキサン又はEtOAc/ヘキサン)からの分別結晶法や、光学活性固定相を使用するキラルクロマトグラフィーによりその個々のジアステレオマー又はエナンチオマーに分離することができる。絶対立体化学は必要に応じて既知立体配置の立体中心を含む試薬で結晶生成物又は結晶中間体を修飾し、X線結晶構造解析により決定することができる。あるいは、キラル最終生成物となる1種以上のキラル中間体を使用して合成を実施することもできる。
【0078】
本発明の化合物はロイコトリエンの生合成を阻害することができるので、ヒト対象においてロイコトリエンにより誘発される症状を予防又は改善するために有用である。従って、本発明は哺乳動物におけるロイコトリエンの合成、作用又は放出の予防方法として、前記哺乳動物にFLAP阻害に有効な量の本発明の化合物を投与することを含む方法を提供する。このようなFLAP阻害活性は本明細書に記載するFLAPアッセイを使用して測定することができる。ロイコトリエンは強力な炎症メディエーターであるため、哺乳動物における炎症症状の治療方法として、このような治療を必要とする哺乳動物に治療有効量の本発明の化合物を投与することを含む方法も提供する。
【0079】
ロイコトリエンの哺乳動物生合成の阻害により、本発明の化合物とその医薬組成物は哺乳動物、特にヒトにおけるアテローム性動脈硬化症を治療、予防又は改善するためにも有用である。従って、式IIの化合物はアテローム性動脈硬化症の治療に使用することができ、このような治療を必要とする患者に治療有効量の式IIの化合物を投与する。本発明の別の態様はアテローム性動脈硬化症の発症の危険の予防又は低減方法として、このような処置を必要とする患者(例えばアテローム性動脈硬化症を発症する危険のある患者)に予防有効量の式IIの化合物を投与することを含む方法に関する。
【0080】
アテローム性動脈硬化症は大・中動脈壁の最下層にコレステロールと脂質を含むアテローム斑が沈着することを特徴とする。アテローム性動脈硬化症は該当医学分野に携わる医師により認識及び理解される血管疾患及び症状を包含する。血管再建術後の再狭窄を含むアテローム硬化性心血管疾患、冠状動脈性心臓病(冠動脈疾患又は虚血性心疾患とも言う)、多発梗塞性痴呆を含む脳血管疾患、及び勃起障害を含む末梢血管疾患はいずれもアテローム性動脈硬化症の臨床徴候であるため、「アテローム性動脈硬化症」及び「アテローム硬化性疾患」なる用語に含まれる。
【0081】
FLAP阻害剤は冠状動脈性心臓病(CHD)イベント、脳血管イベント及び/又は間欠性跛行の発生、又は潜在性がある場合にはその再発の危険を予防又は低減するために投与することができる。冠状動脈性心臓病イベントはCHD死、心筋梗塞(即ち心臓発作)及び冠状血管再建術を含むものとする。脳血管イベントは虚血性又は出血性脳卒中(脳血管障害とも言う)及び一過性脳虚血発作を含むものとする。間欠性跛行は末梢血管疾患の臨床徴候である。本明細書で使用する「アテローム硬化性疾患イベント」なる用語は、冠状動脈性心臓病イベント、脳血管イベント及び間欠性跛行を含むものとする。非致死性アテローム硬化性疾患イベントを過去に1回以上経験した人はこのようなイベントの再発の可能性があるとみなす。
【0082】
従って、本発明はアテローム硬化性疾患イベントの初回又は2回目以降の発生の危険を予防又は低減するための方法として、このようなイベントの危険のある患者に予防有効量のFLAP阻害剤を投与することを含む方法も提供する。患者は投与時に既にアテローム硬化性疾患をもつものでもよいし、発症する危険があるものでもよい。
【0083】
本発明の方法は特に新規アテローム硬化性病変又はプラーク形成を予防又は遅延させ、既存病変又はプラークの進行を予防又は遅延させ、更に既存病変又はプラークを退縮させるのに役立つ。従って、アテローム性動脈硬化症の治療の範囲に含まれる本発明の1態様はアテローム硬化性プラーク進行の停止又は遅延を含むアテローム性動脈硬化症進行の停止又は遅延方法として、このような治療を必要とする患者に治療有効量のFLAP阻害剤を投与することを含む方法に関する。本方法も治療開始時に存在するアテローム硬化性プラーク(即ち、「既存アテローム硬化性プラーク」)の進行の停止又は遅延と、アテローム性動脈硬化症患者における新規アテローム硬化性プラークの形成の停止又は遅延を含む。
【0084】
アテローム性動脈硬化症の治療の範囲に含まれる本発明の別の態様は治療開始時に存在するアテローム硬化性プラークの退縮を含むアテローム性動脈硬化症の退縮方法として、このような治療を必要とする患者に治療有効量のFLAP阻害剤を投与することを含む方法に関する。本発明の別の態様はアテローム硬化性プラーク破裂の危険の予防又は低減方法として、このような治療を必要とする患者に予防有効量のFLAP阻害剤を投与することを含む方法に関する。
【0085】
式IIの化合物はロイコトリエンの生合成を阻害することができるので、ヒト対象においてロイコトリエンにより誘発される症状を予防又は改善するために有用である。ロイコトリエンの哺乳動物生合成のこの阻害により、前記化合物とその医薬組成物は哺乳動物、特にヒトにおいて、1)喘息、慢性気管支炎及び関連閉塞性気道疾患等の肺疾患、2)アレルギー性鼻炎、接触性皮膚炎、アレルギー性結膜炎等のアレルギー及びアレルギー反応、3)関節炎や炎症性腸疾患等の炎症、4)疼痛、5)アトピー性湿疹等の皮膚疾患、6)狭心症、アテローム硬化性プラークの形成、心筋虚血、高血圧、血小板凝集等の心血管疾患、7)免疫的又は化学的(シクロスポリン)病因により誘発される虚血に起因する腎不全、8)偏頭痛又は群発性頭痛、9)ブドウ膜炎等の眼疾患、10)化学的、免疫的又は感染刺激に起因する肝炎、11)熱傷、内毒素血症等の外傷又はショック状態、12)同種移植拒絶反応、13)インターロイキンII及び腫瘍壊死因子等のサイトカインの治療投与に伴う副作用の予防、14)嚢胞性線維症、気管支炎及び他の小・大気道疾患等の慢性肺疾患、15)胆嚢炎、16)多発性硬化症、17)筋芽白血病細胞の増殖、18)肺線維症、19)呼吸器合胞体ウイルス、20)座瘡並びに21)睡眠時無呼吸を危険予防もしくは低減、治療又は改善するために有用である。更に、本発明の化合物は季節性アレルギー性鼻炎等のアレルギー性鼻炎の症状を緩和するために成人及び小児患者を含む患者に投与することができる。
【0086】
特に、本発明の化合物は喘息の予防及び喘息の慢性治療用として成人及び小児患者を含む患者に投与することができる。本発明の化合物は(1)軽度持続性喘息患者における低用量吸入コルチコステロイド(ICS)の代用薬として、(2)軽度持続性喘息患者における低用量吸入コルチコステロイド(ICS)の併用療法として、又は(3)吸入コルチコステロイド(ICS)もしくはICS/長時間作用型βアゴニスト(LABA)併用療法では十分に抑制されない持続性喘息患者における併用療法として、喘息治療用に成人及び小児患者を含む患者に投与することができる。化合物は限定されないが、ステロイド耐性/非応答性喘息患者、ロイコトリエン修飾薬で従来効果がなかった喘息患者、喫煙喘息患者及びアスピリン感受性喘息患者等の喘息患者の治療に使用することができる。
【0087】
化合物は(1)FEV1(Forced Expitory Vooume in one minute:1分強制呼気量)を改善するため、(2)朝晩のPEF(Peak Expitory flor:最大呼気流量)を改善するため、(3)(パフ/日により測定した)βアゴニスト使用を低減するため、(4)吸入/全身ステロイド使用を低減するため、(5)日中喘息症状を改善するため、(6)夜間覚醒回数を低減するため、(7)喘息コントロール日数を改善するため、(8)喘息増悪数[増悪とは全身ステロイド、救急外来、入院、予定外の喘息関連往診の必要、A.M.PEFの>20%減少もしくはA.M.PEF<180 l/min、基線から>70%のSABA(短時間作用型βアゴニスト)使用増加(最低2パフ増加)、又は症状スコアの>50%増加として定義される。]を低減するため、(9)(特定合計日数間に最低1回発作を生じた日数の%として測定した)喘息発作回数(ここで、発作とは全身ステロイド使用、救急外来、入院又は予定外の喘息関連往診を必要とする発作である。)を低減するため、(10)急性喘息発作回数を低減するため、(11)血液と痰の好酸球を低減するため、及び/又は(12)EIB(運動誘発性気管支収縮)を予防及び治療するために患者に投与することができる。
【0088】
従って、本発明の化合物は糜爛性胃炎;糜爛性食道炎;下痢;脳痙攣;早産;自然流産;月経困難症;虚血;肝臓、膵臓、腎臓又は心筋組織の有毒物質による損傷又は壊死;CClやD−ガラクトサミン等の肝毒性物質に起因する肝実質損傷;虚血性腎不全;疾患誘発性肝損傷;胆汁酸塩誘発性膵臓又は胃損傷;外傷又はストレス誘発性細胞損傷;及びグリセロール誘発性腎不全等の哺乳動物(特に、ヒト)疾患状態を治療又は予防するために使用することもできる。本発明の化合物は腫瘍転移の抑制剤としても作用し、細胞保護作用を示す。
【0089】
本発明のFLAP阻害剤は糸球体腎炎(Guasch A.,Zayas C.F.,Badr KF.(1999),“MK−591 acutely restores glomerular size selectivity and reduces proteinuria in human glomerulonephritis,”Kidney Int.,56:261−267参照)を予防、改善及び治療するために投与することもでき、更に糖尿病合併症に起因する腎損傷(Valdivielso JM,Montero A.,Badr KF.,Munger KA.(2003),“Inhibition of FLAP decreases proteinuria in diabetic rats,”J.Nephrol.,16(1):85−940参照)を予防、改善及び治療するために投与することもできる。
【0090】
更に、本発明の化合物は慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療に使用することもできる。S.Kilfeather,Chest,2002,vol 121,197に記載されているように、COPD患者の気道好中球増加症は炎症の要因であると考えられ、気道リモデリングに結び付けられる。好中球の存在の一因はLTBであり、COPD患者の好中球性炎症を緩和し、COPD増悪率を低下させるために本発明の化合物による治療を使用することができる。特に、本発明の化合物は慢性気管支炎や気腫等のCOPDに伴う気流閉塞の維持治療に毎日、好ましくは1日1回使用することができる。
【0091】
化合物の細胞保護活性は強力な刺激物の有毒作用(例えばアスピリン又はインドメタシンの潰瘍誘発作用)に対する胃腸粘膜の耐性の増加を確認することにより動物とヒトの両者で観察することができる。胃腸管に及ぼす非ステロイド性抗炎症薬の作用の減弱に加え、動物試験から明らかなように、細胞保護化合物は強酸、強塩基、エタノール、高張食塩水等の経口投与により誘発される胃病変を予防する。2種類のアッセイを使用して細胞保護能を測定することができる。これらのアッセイは(A)エタノール誘発病変アッセイと、(B)インドメタシン誘発潰瘍アッセイであり、EP140,684に記載されている。
【0092】
特に、本発明の化合物はシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤と低用量アスピリンの併用投与に起因する胃糜爛を軽減するために有用であると思われる。シクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤は従来の非選択的非ステロイド性抗炎症薬に比較して胃腸合併症の危険の少ない有効な抗炎症薬として広く使用されている。しかし、心臓保護のためにシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤を低用量アスピリンと併用すると、この類の化合物の胃腸安全性が低下する可能性がある。5−リポキシゲナーゼ阻害剤としてのその活性により、本発明の化合物はこの点で胃を保護すると予想される。Fiorucciら,FASEB J.17:1171−1173,2003参照。本発明で使用するシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤としては限定されないが、エトリコキシブ(ARCOXIA(登録商標))とセレコキシブ(CELEBREX(登録商標))が挙げられる。低用量アスピリン投与中の患者に本発明の化合物とシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤を単位用量形態で又は別々に併用投与することができる。あるいは、シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤を低用量アスピリンと単位用量形態で併用投与してもよく、その場合には、本発明の化合物を別に投与する。全3種の活性成分を単位用量形態で投与してもよい。慣用用量のシクロオキシゲナーゼ−2選択的阻害剤と(心臓保護用として)アスピリンを使用することができる。アスピリンは1日1回81mgを投与することができる。
【0093】
「患者」なる用語は病態の予防又は治療のために本発明の活性剤を使用する哺乳動物、特にヒトを意味する。患者への薬剤投与は自己投与と他者による患者への投与の両者を含む。患者は既存疾患又は病態の治療を必要とするものでもよいし、アテローム性動脈硬化症発症の危険を予防又は低減するために予防処置を必要とするものでもよい。
【0094】
「治療有効量」なる用語は研究者、獣医、医師又は他の臨床医により求められる組織、系、動物又はヒトに生物学的又は医学的応答を誘発する薬剤の量を意味する。「予防有効量」なる用語は研究者、獣医、医師又は他の臨床医により組織、系、動物又はヒトで予防することが求められる生物学的又は医学的イベントの発生の危険を予防又は低減する薬剤の量を意味する。当然のことながら、特定1日用量は例えば既存アテローム性動脈硬化症の進行を遅らせるための治療用としての治療有効量と、例えばアテローム硬化性疾患イベント又は新規病変形成の予防用としての予防有効量の両方を同時に表すことができる。
【0095】
一般に、FLAP阻害剤は「FLAP結合アッセイ」で1μM以下、好ましくは500nM以下、より好ましくは100nM以下、最も好ましくは25nM以下のIC50をもつ化合物とみなすことができる。
【0096】
本発明の方法におけるFLAP阻害剤の有効量は約0.01mgから約30mg/kg体重/日、好ましくは0.1mgから約15mg/kg、最も好ましくは0.5から7.5mg/kgを1回又は数回に分けて投与する。1日1回投与することが好ましいが、必ずしもそうでなくてもよい。従って、平均体重70kgの用量レベルは薬剤約1mgから約2000mg/日であり、例えば10mg、25mg、50mg、75mg、100mg、125mg、150mg、175mg、200mg、250mg又は500mg/日を1日1回もしくは1回2から4回に分けて又は徐放形態で投与することが好ましい。しかし、当然のことながら、任意特定患者の特定用量レベルは年齢、体重、一般健康状態、性別、食事、投与時間、投与方法、排泄速度、薬剤併用及び患者の症状の重篤度等の種々の因子により異なる。通常の知識をもつ臨床医であれば、症状の進行を予防、防止又は阻止するために必要な治療有効用量又は予防有効用量を決定する目的でこれらの因子を考慮することは十分に可能である。FLAP阻害剤は患者に該当する症状を治療又は予防するために適切な期間にわたって毎日慢性投与することが予想され、数カ月、数年又は患者の終生の治療期間か挙げられる。
【0097】
1種以上の他の活性剤を式IIの化合物と併用投与してもよい。「他の活性剤」なる用語は式IIの化合物以外の医薬活性剤を意味する。広義の実施形態では、1種以上の適切な他の任意活性剤(限定されないが、脂質修飾化合物等の抗アテローム硬化性薬、抗糖尿病薬及び/又は抗肥満薬、並びに代謝症候群治療薬)を式IIの化合物と単一製剤として併用投与してもよいし、活性剤の同時又は順次投与を可能にする別個の製剤として患者に投与してもよい。他の活性剤は2種類以上の医薬活性をもつものでもよく、例えば脂質修飾作用と抗糖尿病活性の両者をもつものが挙げられる。利用可能な他の活性剤の例としては限定されないが、そのラクトン化又はジヒドロキシ開環酸体のスタチンとその医薬的に許容可能な塩及びエステルを含むHMG−CoAレダクターゼ阻害剤(限定されないが、例えばロバスタチン(米国特許第4,342,767号参照)、シンバスタチン(米国特許第4,444,784号参照)、プラバスタチン、特にそのナトリウム塩(米国特許第4,346,227号参照)、フルバスタチン、特にそのナトリウム塩(米国特許第5,354,772号参照)、アトルバスタチン、特にそのカルシウム塩(米国特許第5,273,995号参照)、ピタバスタチン(別称NK−104)(PCT国際公開WO97/23200参照)及びロスバスタチン(CRESTOR(登録商標);米国特許第5,260,440号参照));5−リポキシゲナーゼ阻害剤;コレステロールエステル転送蛋白(CETP)阻害剤(例えばJTT−705やトルセトラピブ(別称CP529,414));HMG−CoAシンターゼ阻害剤;スクアレンエポキシダーゼ阻害剤;スクアレンシンテターゼ阻害剤(別称スクアレンシンターゼ阻害剤);アシル−補酵素A:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害剤(例えばACAT−1又はACAT−2の選択的阻害剤や、ACAT−1及び−2のデュアル阻害剤);ミクロソームトリグリセリド転送蛋白(MTP)阻害剤;ナイアシン;ナイアシン受容体アゴニスト(例えばアシピモックス及びアシフラン)及びナイアシン受容体部分アゴニスト;胆汁酸吸着剤;LDL(低比重リポ蛋白)受容体インデューサー;血小板凝集抑制剤(例えば糖蛋白IIb/IIIaフィブリノーゲン受容体アンタゴニスト及びアスピリン);ヒトペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)アゴニスト(例えば一般にグリタゾンと呼ばれる化合物(例えばピオグリタゾン及びロシグリタゾン)及びチアゾリジンジオンとして知られる構造分類に含まれる化合物と、チアゾリジンジオン構造分類以外のPPARγアゴニスト);PPARαアゴニスト(例えばクロフィブレート、微粉化フェノフィブレートを含むフェノフィブレート及びゲムフィブロジル);PPARデュアルα/γアゴニスト;ビタミンB(別称ピリドキシン)とその医薬的に許容可能な塩(例えばHCl塩);ビタミンB12(別称シアノコバラミン);葉酸又はその医薬的に許容可能な塩もしくはエステル(例えばナトリウム塩及びメチルグルカミン塩);抗酸化ビタミン類(例えばビタミンC及びE並びにβカロテン);β遮断薬;アンギオテンシンIIアンタゴニスト(例えばロサルタン);アンギオテンシン変換酵素阻害剤(例えばエナラプリル及びカプトプリル);カルシウムチャネル遮断薬(例えばニフェジピン及びジルチアゼム);エンドセリンアンタゴニスト;ABC1遺伝子発現を増強する物質;阻害剤とアゴニストの両者を含むFXR及びLXRリガンド;ビスホスホネート化合物(例えばアレンドロン酸ナトリウム);並びにシクロオキシゲナーゼ−2阻害剤(例えばエトリコキシブ、セレコキシブ及びバルデコキシブ)が挙げられる。
【0098】
他の有利な薬剤併用としては、本発明の化合物と抗コリン薬(例えば臭化イプラトロピウム及びチオトロピウム)、気管支拡張薬(例えばβアゴニストサルブタモール、メタプロテレノール、テルブタリン、フェノテロール、サルメテロール、フォルモテロール等)及び抗喘息薬(例えばテオフィリン、コリンテオフィリン及びエンプロフィリン、カルシウムアンタゴニストとしてニフェジピン、ジルチアゼム、ニトレンジピン、ベラパミル、ニモジピン、フェロジピン等、並びにコルチコステロイドとしてヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、デキサメタゾン、ベクロメタゾン等)の併用が挙げられる。
【0099】
特に、喘息の予防及び治療には、本発明の化合物をベクロメタゾン(例えばQVAR(登録商標)Inhalation Aerosol)、ブデソニド(例えばPulmicort Respules)、フルニソリド(例えばAEROBID(登録商標)及びAEROBID(登録商標)−M Inhaler System)、フルチカゾン(例えばFLOVENT(登録商標)DISKUS(登録商標)吸入用散剤、FLOVENT(登録商標)HFA Inhalation Aerosol)、モメタゾン(例えばASMANEX(登録商標)TWISTHALER(登録商標))及びトリアムシノロン(例えばAZMACORT(登録商標)Inhalation Aerosol)等の経口吸入コルチコステロイドと併用することができ、更にプロピオン酸フルチカゾン/サルメテロール(例えばADVAIR DISKUS(登録商標))等の吸入コルチコステロイド/LABA製剤と併用することができる。本発明の化合物はモンテルカスト(例えばSINGULAIR(登録商標))等のロイコトリエン受容体アンタゴニスト;ロフルミラスト、N−シクロプロピル−1−[3−(1−オキシド−3−ピリジニルエチニル)フェニル]−1,4−ジヒドロ[1,8]ナフチリジン−4−オン−3−カルボキサミド及びPCT公開WO2003/018579に開示の化合物等のホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬;並びに米国特許第6,229,011号に開示の化合物、特にR411(活性部分であるN−(2−クロロ−6−メチルベンソイル)−4−[(2,6−ジクロロベンゾイル)アミノ]−L−フェニルアラニンのエステルプロドラッグであるN−(2−クロロ−6−メチルベンソイル)−4−[(2,6−ジクロロベンゾイル)アミノ]−L−フェニルアラニン−2−(ジエチルアミノ)エチルエステル)及びPCT公開WO2006/023396に開示の化合物等の超後期抗原4(VLA4)阻害薬と併用することもできる。
【0100】
本発明の化合物と併用することができる更に別の型の物質はコレステロール吸収抑制剤である。コレステロール吸収抑制剤はコレステロールが腸内腔から小腸壁の腸細胞内に移動するのを妨害する。この妨害が血清コレステロール値を低下させるその主要作用モードである。これらの化合物は主にアシル補酵素Aコレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)阻害、トリグリセリド合成阻害、MTP阻害、胆汁酸吸着及び転写調節等の作用メカニズムにより血清コレステロール値を低下させる化合物(例えば核内ホルモンのアゴニスト又はアンタゴニスト)から区別される。コレステロール吸収抑制剤としては限定されないが、米国特許第5,846,966号、米国特許第5,631,365号、米国特許第5,767,115号、米国特許第6,133,001号、米国特許第5,886,171号、米国特許第5,856,473号、米国特許第5,756,470号、米国特許第5,739,321号、米国特許第5,919,672号、米国特許第6,498,156号、US2004/0082561、US2004/0067913、US2004/0063929、US2002−0137689、WO05/047248、WO05/021497、WO05/021495、WO05/000353、WO04/005247、WO00/63703、WO00/60107、WO00/38725、WO00/34240、WO00/20623、WO97/45406、WO97/16424、WO97/16455及びWO95/08532に記載されているものが挙げられる。コレステロール吸収抑制剤の1例は米国再発行特許第37721号とPhysician’s Desk Referenceに記載され、米国で商品名ZETIA(登録商標)として市販されているエゼチミブである。
【0101】
上記及び他のコレステロール吸収抑制剤は、米国再発行特許第37721号、カラム20からに記載の高脂血症ハムスターを使用する脂質低下化合物アッセイに従い、ハムスターに低コレステロール飼料を与え、試験化合物を7日間投与することにより同定することができる。血漿脂質分析を実施し、対照に対する脂質低下率百分率としてデータを報告する。
【0102】
コレステロール吸収抑制剤の治療有効量としては約0.01mg/kgから約30mg/kg体重/日、好ましくは約0.1mg/kgから約15mg/kgの用量が挙げられる。従って、平均体重70kgの用量レベルは薬剤約0.7mgから2100mg/日であり、例えば10、20、40、100又は200mg/日を1日1回もしくは1日2から6回に分けて又は徐放形態で投与することが好ましい。この用量レジメンは本発明の化合物とコレステロール吸収抑制剤の併用時に最適治療応答が得られるように調節することができる。
【0103】
本発明の治療方法では、従来の医薬的に許容可能な非毒性担体、アジュバント及びビヒクルを含有する単位用量製剤として経口、非経口又は経直腸等の適切な任意投与経路でFLAP阻害剤を投与することができる。本明細書で使用する非経口なる用語は皮下注射、静脈内、筋肉内、胸骨内注射又は輸液技術を含む。経口製剤が好ましい。
【0104】
経口用では、活性成分を含有する本発明の医薬組成物は錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液剤、分散性散剤もしくは顆粒剤、エマルション、ハードもしくはソフトカプセル、又はシロップもしくはエリキシル剤等の形態とすることができる。経口用組成物は医薬組成物の製造に当分野で公知の任意方法により製造することができ、このような組成物は医薬的にエレガントで口当たりのよい製剤にするために甘味剤、香味剤、着色剤及び防腐剤から構成される群から選択される1種以上の添加剤を添加することができる。錠剤は錠剤の製造に適した医薬的に許容可能な非毒性賦形剤と混合した活性成分を含有する。これらの賦形剤としては例えば不活性希釈剤(例えば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム);顆粒化剤及び崩壊剤(例えばコーンスターチ又はアルギン酸);結合剤(例えば澱粉、ゼラチン又はアラビアガム)及び滑沢剤(例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク)が挙げられる。
【0105】
経口即放性及び時間制御放出性剤形に加え、腸溶コーティング経口剤形を利用することができる。錠剤はコーティングしなくてもよいし、胃腸管での崩壊と吸収を遅らせて長時間持続作用を提供するために公知技術によりコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルやジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を利用することができる。時間制御放出装置の1例は米国特許第5,366,738号に記載されている。錠剤は米国特許第4,256,108号;4,166,452号;及び4,265,874号に記載の技術によりコーティングし、制御放出用浸透圧治療用錠剤を形成してもよい。
【0106】
経口用製剤は活性成分を不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン)と混合したハードゼラチンカプセルの形態でもよいし、活性成分を水もしくは水混和性溶媒(例えばプロピレングリコール、PEG及びエタノール)又は油性媒体(例えば落花生油、流動パラフィン又はオリーブ油)と混合したソトフゼラチンカプセルの形態でもよい。
【0107】
水性懸濁液剤は水性懸濁液剤の製造に適した賦形剤と混合した活性材料を含有する。このような賦形剤としては、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアラビアガム等の懸濁剤が挙げられ、更に分散剤又は湿潤剤として天然ホスファチド(例えばレシチン)又はアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)又は脂肪酸とヘキシトールから誘導される部分エステルとエチレンオキシドの縮合物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール)又は脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとエチレンオキシドの縮合物(例えばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタン)が挙げられる。水性懸濁液剤は更に、1種以上の防腐剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチル又はp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル)、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤及び1種以上の甘味剤(例えばスクロース、サッカリン又はアスパルテーム)を添加することができる。
【0108】
油性懸濁液剤は植物油(例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油又は椰子油)又は鉱油(例えば流動パラフィン)に活性成分を懸濁することにより製造することができる。油性懸濁液剤は増粘剤(例えば蜜蝋、固形パラフィン又はセチルアルコール)を添加することができる。口当たりのよい経口製剤とするために上記のような甘味剤や香味剤を添加することができる。これらの組成物はアスコルビン酸等の酸化防止剤の添加により防腐処理することができる。
【0109】
水を加えて水性懸濁液剤を調製するのに適した分散性散剤及び顆粒剤は分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1種以上の防腐剤と混合した活性成分を提供する。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤としては上記のものが例示される。例えば甘味剤、香味剤及び着色剤等の他の賦形剤も添加することができる。
【0110】
本発明の医薬組成物は水中油エマルションの形態でもよい。油相は植物油(例えばオリーブ油又は落花生油)又は鉱油(例えば流動パラフィン)又はこれらの混合物とすることができる。適切な乳化剤としては天然ホスファチド(例えば大豆レシチン)及び脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導されるエステル又は部分エステル(例えばモノオレイン酸ソルビタン)、及び前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合物(例えばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)が挙げられる。エマルションは更に甘味剤と香味剤を添加することができる。
【0111】
シロップ及びエリキシル剤は甘味剤(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロース)を添加することができる。このような製剤は更に粘膜保護剤、防腐剤、香味剤及び着色剤を添加することができる。医薬組成物は注射用滅菌水性又は油性懸濁液の形態でもよい。この懸濁液は適切な上記分散剤又は湿潤剤と懸濁剤を使用して公知技術により製造することができる。注射用滅菌製剤は非経口投与に許容可能な非毒性希釈剤又は溶剤の注射用滅菌溶液又は懸濁液(例えば1,3−ブタンジオール溶液)でもよい。利用することができる許容可能なビヒクル及び溶剤としては水、リンゲル液及び等張塩化ナトリウム溶液が挙げられる。エタノール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール等の補助溶媒も使用してもよい。更に、滅菌不揮発性油も従来通りに溶媒又は懸濁媒として利用される。この目的には、合成モノ又はジグリセリド等の任意不揮発性油を利用することができる。更に、オレイン酸等の脂肪酸も注射剤の製造に利用される。
【0112】
本発明は式IIの化合物と医薬的に許容可能な担体を配合することを含む医薬組成物の製造方法も包含する。式IIの化合物と医薬的に許容可能な担体を配合することにより製造される医薬組成物も包含する。
【0113】
本明細書に記載する用量で本明細書に記載する任意病態を治療又は予防するために有用な医薬を製造するために、治療有効量の式IIの化合物を使用することができる。例えば、アテローム硬化性疾患の発症の危険を予防又は低減するため、臨床症状が顕在化してからアテローム硬化性疾患の進行を停止又は遅延させるため、更にはアテローム硬化性疾患イベントの初回又は2回目以降の発生の危険を予防又は低減するために有用な医薬を製造するために式IIの化合物を使用することができる。更に、前記医薬は喘息、アレルギー及びアレルギー症状、炎症、COPD又は糜爛性胃炎の治療にも有用であると思われる。式IIの化合物の化合物から成る医薬は本明細書に記載するもの等の1種以上の他の活性剤と併用して製造することもできる。
【0114】
本発明の構造式IIの化合物は適当な材料を使用して下記スキーム及び実施例の手順に従って製造することができ、下記特定例により更に例示する。更に、本明細書に記載する手順を利用することにより、当業者は本明細書で請求する本発明の他の化合物も容易に製造することができる。しかし、実施例に例証する化合物が本発明とみなされる唯一の属を形成すると解釈すべきではない。特に指定しない限り、全温度は摂氏である。質量スペクトル(MS)はエレクトロスプレーイオン化質量分析法(ES−MS)により測定した。
【0115】
本発明の化合物は遊離塩基でも適当な塩誘導体(例えば上記塩誘導体)でもよいが、一般にその医薬的に許容可能な形態で単離される。単離された塩に対応する遊離アミン塩基は適切な塩基(例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム水溶液)で中和し、遊離したアミン遊離塩基を有機溶媒で抽出した後に蒸発させることにより生成することができる。こうして単離された遊離アミン塩基を有機溶媒に溶かした後に適切な酸を加え、更に蒸発、沈殿又は結晶化させることにより別の医薬的に許容可能な塩に更に変換することができる。
【0116】
本明細書で使用する所定の略語は以下の通りである。
【0117】
ABCA1はアデノシル三リン酸結合カセットファミリーAであり;Acはアセチルであり;AIBNは2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)であり;aqは水溶液であり;Arはアリールであり;Bnはベンジルであり;Bocはtert−ブチルオキシカルボニルであり;brは広幅であり;Buはブチルであり;Buはtert−ブチルであり;セライトはCelite(登録商標)珪藻土であり;cpmはカウント毎分であり;δは化学シフトであり;DCMはジクロロメタンであり;dは二重項であり;DEADはアゾジカルボン酸ジエチルであり;DIADはアゾジカルボン酸ジイソプロピルであり;DIPEAはジイソプロピルエチルアミンであり;DMAPは4−ジメチルアミノピリジンであり;DMFはN,N−ジメチルホルムアミドであり;dppfは1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンであり;DMSOはジメチルスルホキシドであり;EDCはN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩であり;EDTAはエチレンジアミン四酢酸であり;equiv.は当量であり;ES−MSはエレクトロスプレーイオン化質量分析法であり;Etはエチルであり;EtOはジエチルエーテルであり;EtOHはエタノールであり;EtOAcは酢酸エチルであり;FXRはファルネソイドX受容体であり;gはグラムであり;hは時間であり;HetAr又はAHRはヘテロアリールであり;HATUはO−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファートであり;HMG−CoAは3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル補酵素Aであり;HNMRはプロトン核磁気共鳴であり;HOAtは1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾールであり;HOBtは1−ヒドロキシベンゾトリアゾールであり;HPLCは高性能液体クロマトグラフィーであり;Hzはヘルツであり;iはイソであり;IC50は50%抑制が存在する濃度であり;Jは核間カップリング定数であり;kgはキログラムであり;LGは脱離基であり;LTBはロイコトリエンBであり;LXRは肝臓X受容体であり;mは多重項であり;Mはモルであり;Meはメチルであり;m.p.は融点であり;mgはミリグラムであり;μgはマイクログラムであり;MeCNはアセトニトリルであり;MeOHはメタノールであり;MHzはメガヘルツであり;minは分であり;mLはミリリットルであり;mmはミリメートルであり;μLはマイクロリットルであり;mMはミリモルであり;μMはマイクロモルであり;mmolはミリモルであり;Msはメタンスルホニルであり;MSは質量スペクトルであり、ES−MSにより得られた質量スペクトルは本明細書では「ES」と言う場合もあり;m/zは質量対電荷比であり;nはノルマルであり;Nは(文脈内において窒素と指定している場合を除いて)規定であり;nmはナノメートルであり;nMはナノモルであり;NMMはN−メチルモルホリンであり;NMOはN−メチルモルホリン−N−オキシドであり;NMPはN−メチルピロリジン−2−オンであり;Prはn−プロピルであり;pは五重項であり;pはパラであり;PEGはポリエチレングリコールであり;Phはフェニルであり;Phthはフタルイミドイルであり;PPARαはペルオキシソーム増殖因子活性化受容体αであり;Prはプロピルであり;i−Prはイソプロピルであり;p−TSAはパラトルエンスルホン酸であり;PyBOPはベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリスピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファートであり;qは四重項であり;rtは室温であり;sは一重項であり;secは第2級であり;tは三重項であり;BuOHはtert−ブタノールであり;tertは第3級であり;Tfはトリフルオロメタンスルホニルであり;TFAはトリフルオロ酢酸であり;THFはテトラヒドロフランであり;Tsはトシルであり;UVは紫外線であり;×gは重力倍であり;℃は摂氏である。
【0118】
下記反応スキームは構造式IIの本発明の化合物の合成に利用される方法を示す。特に指定しない限り、全略語は上記に定義した通りである。
【0119】
反応スキームAは10型化合物の好ましい合成方法を示す。この方法では、アリール基を転移させることが可能な2型有機金属試薬で1型ケトン又はアルデヒドを処理し、3型化合物を得る。この変換を実施するのに好ましい有機金属試薬としては有機リチウム(2,M=Li)及び有機マグネシウム(2,M=Mg;グリニャール)化合物が挙げられる。有機リチウム試薬を利用する場合には、ヘキサンやジエチルエーテル等の各種溶媒中で−78℃から室温にて反応を実施することができる。スキームAに示すようにグリニャール試薬を利用する場合には、THF又はジエチルエーテル又はその混合物等の適切なエーテル溶媒中で−78℃から溶媒の沸点の温度にて反応を実施するのが通例である。有機リチウム試薬及びグリニャール試薬は一般には市販品を利用するが、公知有機合成法に従って合成により製造することもできる。得られたアルコール3を芳香族求電子置換法(一般にフリーデル・クラフツアリール化反応と言う)で4型保護アミノメチルフラン誘導体により処理することができる。スキームAに示すような4のアミノ官能基に好ましい保護基はフタルイミドであるが、このような基に限定されるものではない。3のアリール化を実施するための典型的条件としては3から誘導される5型の中間体カルボカチオンを生成した後に4型の適切な芳香族カップリングパートナーでin situトラップして6型生成物を得る方法が挙げられる。適切なブロンステッド酸(例えばテトラフルオロホウ酸等)又はルイス酸(例えば三弗化ホウ素等)の存在下で反応を実施するのが通例である(J.Am.Chem.Soc.2005,127,9348−9349)。ジクロロメタンや1,2−ジクロロエタン等の各種不活性有機溶媒中で一般に−78℃から室温にて反応を実施してもよい。フタルイミド保護基の好ましい除去条件はMeOHやEtOH等の溶媒中で一般に室温から溶媒の沸点の温度にてナトリウムメトキシド又はヒドラジン又はn−ブチルアミン等の試薬で6を処理する。この反応の生成物は7型アミンであり、ホウ素やヨウ素等の適切な活性化試薬の存在下で8型化合物に変換することができる。反応はMeOHやEtOH等の溶媒を含む各種水性溶媒混合物中で室温から−20℃の温度にて実施することができる。適切なアルキル化剤で処理することにより生成物8を10型化合物に変換することができる。通常では、DMF等の極性非プロトン性溶媒中で−20℃から50℃の温度にて炭酸カリウムや炭酸セシウム等の適切な塩基の存在下に反応を実施する(Acta Chem.Scand.1956,10,1603−1605)。この反応の生成物は10であり、更に本発明の他の化合物(I)に変換することができる。
【0120】
【化37】

【0121】
反応スキームBは18型化合物の好ましい合成方法を示す。この方法では、多くの場合には有機合成分野の当業者に公知の方法を使用して夫々のカルボン酸前駆体から生成した11型酸塩化物誘導体を12型又は13型有機金属試薬で処理し、14型生成物を得る。この変換を実施するのに好ましい有機金属試薬としては有機マグネシウム(グリニャール)及び有機亜鉛化合物が挙げられる。グリニャール試薬(12)を利用する場合には、好ましい条件はスキームAに記載した条件と同様である。有機亜鉛試薬(13)を利用する場合には、一般にTHFやジエチルエーテル等の各種溶媒中で−20℃から室温にてビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)クロリドや塩化銅(I)等の適切な有機遷移金属触媒の存在下で反応を実施する(Chem.Rev.1993,93,2117−2188)。グリニャール試薬と有機亜鉛試薬は一般には市販品を利用するが、公知有機合成法に従って合成により製造することもできる。得られたケトン14をその後、スキームAに記載した条件と同様の条件下に2型有機金属試薬で処理すると、15型生成物が得られる。15のヒドロキシル基はバートン・マクコンビー脱酸素ストラテジー(J.Chem.Soc,Perkin Trans.1 1975,1574−1585)と通称される反応シーケンスで除去することができる。反応プロセスにはヒドロキシル部分の初期活性化が必要であり、これはピリジン等の適切な第3級アミン塩基の存在下にチオノクロロギ酸フェニル等の試薬でこの基をアルキル化し、16型チオ炭酸誘導体を得ることにより実施される。この型のアシル化はジクロロメタンや1,2−ジクロロエタン等の各種不活性有機溶媒中で一般に−20℃から室温にて実施することができる。あるいは、多くの場合には15を水素化ナトリウムや水素化カリウム等の塩基で処理した後に二硫化炭素を導入し、最後にヨウ化メチル等の試薬でin situアルキル化する3段階シーケンスで17型キサンテート誘導体を製造してもよい。キサンテート形成は一般にTHFやジエチルエーテル等のエーテル溶媒中で一般に−20℃から室温にて実施される。16又は17の脱酸素は多くの場合にはAIBN等のフリーラジカル開始剤の存在下で水素化トリアルキル錫等の還元剤を使用して実施することができる。この型の反応は適切に脱気しておいたベンゼン又はトルエン又はジメトキシエタン等の不活性有機溶媒中で多くの場合には溶媒の沸点に対応する温度にて実施される。反応を加速又は促進するためにヨウ化カリウムやヨウ化テトラブチルアンモニウム等の添加剤を使用すると好ましい場合がある。生成物は18型化合物であり、更に本発明の化合物(I)に変換することができる。
【0122】
【化38】

【0123】
反応スキームCは19型化合物を20型化合物に変換する好ましい方法を示す。この方法では、DMF等の不活性有機溶媒中で[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)等の適切なパラジウム触媒とトリエチルアミンやジイソプロピルエチルアミン等の第3級アミン塩基の存在下に19をMeOHで処理する。反応は通常では高温、一般に50℃から100℃で3から24時間、一酸化炭素雰囲気下に実施する(J.Org.Chem.1974,39,3318−3326)。場合により、反応を促進又は加速するために高圧一酸化炭素又は塩化リチウム等の添加剤を使用すると好ましい場合がある。この反応の生成物は20型エステルであり、更に本発明の化合物(I)に変換することができる。
【0124】
【化39】

【0125】
反応スキームDは19型化合物を21型化合物に変換する好ましい方法を示す。この方法では、適切なパラジウム触媒/リガンド試薬系の存在下にシアン化カリウムやシアン化トリメチルシリル等のシアン化物源で19を処理する。反応を加速又は促進するために銅(I)塩等の無機添加剤及び/又はトリエチルアミン等の塩基を使用すると好ましい場合がある。不活性有機溶媒中、好ましくはDMF又はNMP又はMeCN等の両性非プロトン性溶媒中で一般には50から140℃の高温にて3から24時間反応を実施するのが通例である。この反応の生成物は21型ニトリルであり、更に本発明の化合物(I)に変換することができる。
【0126】
【化40】

【0127】
反応スキームEは構造式24の化合物の好ましい合成方法を示す。この方法(通称鈴木反応)では、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)又はテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム(0)等の適切なパラジウム触媒と、炭酸ナトリウム水溶液やリン酸三ナトリウム水溶液等の塩基の存在下に19型化合物を22型又は23型のアリール又はヘテロアリールカップリングパートナーで処理することができる(Pure Appl.Chem.1991,63,419−422)。反応は通常、トルエン−EtOH混合物又はジオキサン等の不活性有機溶媒中で室温を上回る温度にて3から24時間実施する。鈴木反応の最近の進歩により、この型の変換は多くの場合に室温で実施できるようになった(例えば、J.Am.Chem.Soc.2000,122,4020−4028とその引用文献参照)。
【0128】
【化41】

【0129】
反応スキームFは構造式24の化合物の代替合成方法を示す。この方法では、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)等の適切なパラジウム触媒と酢酸カリウム等の補助求核試薬の存在下に19型化合物をビス(ピナコラート)ジボロンで処理する。反応は一般にDMSOやジオキサン等の不活性有機溶媒中で一般に70℃から100℃の高温にて1から24時間実施する(J.Org.Chem.1995,60,7508−7510)。この反応の生成物は25型中間体ボロン酸塩であり、上記鈴木反応(スキームE)等の有機遷移金属触媒交差カップリング反応で使用し、本発明の化合物(I)を得ることができる。
【0130】
【化42】

【0131】
反応スキームGは構造式30及び31の化合物の好ましい合成方法を示す。この方法では、トリエチルアミンやジイソプロピルエチルアミン等の第3級アミン塩基の存在下で化合物8をトリトルオロメタンスルホン酸無水物や2−(N,N,−ビス(トリトルオロメタンスルホニル)アミノピリジン等のトリフラート化剤と反応させ、27型の中間体化合物を得る。トリフラート化反応は一般にDCMやTHF等の非プロトン性有機溶媒中で−78℃から室温にて実施される。27型化合物をその後、有機遷移金属触媒交差カップリング法(通称薗頭反応)で28型の末端アルキンで処理することができる。この反応は適切なパラジウム触媒とヨウ化銅(I)等の銅(I)補助触媒の存在下で実施され、一般にトリエチルアミンやジエチルアミン等のアミン塩基を過剰に使用する。反応はDMF等の不活性有機溶媒中で周囲温度から100℃の温度にて3から24時間実施される。この反応の生成物は29型アルキンであり、その後、30型アルケン誘導体又は31型飽和アルカン誘導体に変換することができる。30が所望される場合には、29の部分還元を実施するのに好ましい条件は大気圧又は高圧水素下にリンドラー触媒試薬系を使用する。反応は通常、EtOH及びEtOAc又はその組み合わせ等の不活性有機溶媒中で室温にて3から15時間実施される。31が所望される場合には、その後、各種炭素担持パラジウム触媒の任意1種を使用して大気圧又は高圧水素下に29の還元を実施する。上記文献に記載の手順に従ってこの反応の生成物を脱保護し、下記スキームに示すように本発明の化合物(I)に変換することができる。
【0132】
【化43】

【0133】
反応スキームHはスキームEに上述した方法と同様の方法による構造式34の化合物の好ましい合成方法を示す。余分な官能基を含む32又は33型化合物から誘導される34型化合物を有機合成で公知の多数の方法で処理し、本発明の他の化合物(I)とすることができる。
【0134】
【化44】

【0135】
反応スキームIはスキームEに上述した方法と同様の方法による構造式34の化合物の好ましい合成方法を示す。
【0136】
【化45】

【0137】
スキームJは37型化合物の好ましい合成方法を示す。この方法では、有機合成分野の当業者に公知の各種方法を使用して20型化合物を加水分解し、37型のカルボン酸とすることができる。生成物カルボン酸37を反応スキームHに指示するように使用するか、又は有機合成で公知の各種方法で合成修飾すると、本発明の化合物(I)が得られる。
【0138】
【化46】

【0139】
反応スキームKは構造式39、40及び41の化合物の好ましい合成方法を示す。この方法では、DMFやNMP等の不活性有機溶媒中で[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)等の適切なパラジウム触媒の存在下に38をアリルトリブチルスタナン又はビニルトリブチルスタナンで処理する。この反応は通常では高温、一般に50から120℃で2から24時間実施される。場合により、反応を促進するために塩化リチウム等の添加剤を使用することが不可欠な場合もある。多くの場合には、反応をマイクロ波照射下に実施すると、反応時間を有意に短縮することができる。この反応の生成物は構造式39のアルケンであり、有機合成で公知の各種方法を使用して合成処理することができる。例えば、39を酸化開裂すると、40型アルデヒドが得られ、これを更に酸化し、構造式41のカルボン酸誘導体とすることができる。好ましい酸化開裂反応法は反応スキームIに示す2段階法である。アセトン−水等の溶媒系中で化学量論的量の再酸化剤(例えばNMO)の存在下に触媒四酸化オスミウムを使用してまずアルケン39を酸化し、ビシナルジオールとする。形成された中間体ビシナルジオールは一般に単離せず、THF−水等の適切な混合溶媒系中にて過ヨウ素酸ナトリウムで開裂し、40を得る。酸化開裂シーケンスの両段階は一般に0℃から室温で数分間から数時間で完了する。その後、緩衝亜塩素酸塩酸化系を使用してアルデヒド40を更に酸化し、41とすることができる。この方法では、2−メチル−2−ブテン等の塩素スカベンジャーの存在下に亜塩素酸ナトリウムとリン酸一ナトリウムで40を処理する。反応は一般にn−ブタノール−水等の溶媒系中で0℃から室温にて1から6時間実施される。場合により、過ヨウ素酸ナトリウム/三塩化ルテニウム試薬系を使用して40を41に直接変換することもできる。40及び41のどちらも有機合成で公知の多数の方法で処理し、本発明の他の化合物(I)とすることができる。
【0140】
【化47】

【0141】
反応スキームLは構造式43の化合物の好ましい合成方法を示す。この方法では、41を42型アミンで処理して43型アミドとする。反応スキームLに示すアミド結合カップリング反応はDMF、DCM等の適切な不活性溶媒中で実施され、HATU、EDC又はPyBOP等のアミドカップリング反応に適した各種試薬を使用して実施することができる。反応スキームMに示すアミド結合カップリング反応に好ましい条件は有機合成の当業者に公知である。このような条件としては限定されないが、トリエチルアミン、DIPEA又はNMM等の塩基性試薬の使用や、HOAtやHOBt等の添加剤の添加が挙げられる。あるいは、42を41の活性化エステル又は酸塩化物で処理しても43が得られる。反応スキームLに示すアミド結合カップリングは通常では0℃から室温、場合によっては高温で実施され、カップリング反応は一般に1から24時間実施される。
【0142】
【化48】

【0143】
反応スキームMは45型化合物の好ましい合成方法を示す。この方法では、41をクルチウス反応に付し、構造式44のN−Boc保護アミン誘導体を得る。反応はトルエン等の溶媒中でトリエチルアミンやDIPEA等の第3級アミンの存在下に41をジフェニルホスホリルアジドと反応させることにより実施される。初期生成物は一般にアシルアジドであるとみなされ、アシルカルベンのウルフ転位と同様の熱プロセスでイソシアネートに転位させる。転位は一般に溶媒の還流温度、例えば110℃で実施され、転位は通常では1から5時間で完了する。形成される中間体イソシアネートは一般に単離せず、tert−ブチルアルコール等の適切なアルコールとin situ反応させ、カルバメート44を得る。N−Boc基はEtOAc中で塩化水素で処理したり、DCM中でTFAで処理する等の適切な脱保護法により除去することができる。脱保護は一般に0℃から室温で実施され、反応は通常では0.5から3時間で完了する。有機合成で公知の各種方法を使用して構造式45の生成物アミンをカップリングパートナーとして使用すると、本発明の化合物(I)が得られる。
【0144】
【化49】

【0145】
反応スキームNは48型化合物の好ましい合成方法を示す。例えば、反応スキームLに示す一般化アミドカップリングプロトコールについて記載した試薬及び条件を使用して45を46型カルボン酸とアミド結合カップリング反応させ、構造式48のアミドを得ることができる。あるいは、45を47型の活性化エステル又は酸塩化物誘導体で処理しても48が得られる。このような変換を実施するための典型的条件としては、トリエチルアミン等の過剰の第3級アミン塩基の存在下に45を酸塩化物47で処理する方法が挙げられる。反応はDMFやDCM等の不活性有機溶媒中で0℃から溶媒の還流温度、多くの場合には室温にて1から24時間実施するのが通例である。
【0146】
【化50】

【0147】
反応スキームOに示すように、光延反応の福山変法(Fukuyama,T.;Jow,C.−K.;Cheung,M.Tetrahedron Lett.1995,36,6373−74)を使用して45を更に処理することもできる。例えば、DCM等の不活性有機溶媒中で45を塩化2−ニトロベンゼンスルホニル、塩化4−ニトロベンゼンスルホニル又は塩化2,4−ジニトロベンゼンスルホニル等の塩化アリールスルホニル及び2,4,6−コリジンや2,6−ルチジン等の第3級アミン塩基と反応させればよい。あるいは、スキームOに示すように45と塩化アリールスルホニルをアルカリ水溶液中で反応させる伝統的ショッテン・バウマン条件下で反応を実施してもよい。この反応の生成物は49型ジアルキルスルホンアミドであり、トリフェニルホスフィンとDEAD、DIAD等の活性化剤の存在下で50型アルコールと反応させることにより更に修飾することができる。反応はベンゼン、トルエン、THF又はその混合物等の適切な不活性有機溶媒中で一般に室温にて実施され、反応は一般に0.5から3時間で完了する。この反応の生成物は51型スルホンアミドであり、DCM等の溶媒中でn−プロピルアミン等の求核性アミンで処理するか又はDCM中でメルカプト酢酸とトリエチルアミンで処理することにより脱スルホニル化することができる。いずれの場合も、反応は一般に室温で5分間から1時間実施される。2−又は4−ニトロベンゼンスルホニル誘導体を利用する場合には、スルホンアミドの開裂はDMF等の溶媒中でチオフェノールと炭酸カリウムの共存下又はDMF中でメルカプト酢酸と水酸化リチウムの共存下に実施される。いずれの場合も、反応は室温で1から3時間実施される。有機合成で公知の各種方法を使用して52型第2級アミン生成物を更に修飾すると、本発明の他の化合物(I)が得られる。例えば、反応スキームOの最下部に記載する条件を使用して52を53型アルデヒド又はケトンと還元アミド化反応させると、54型化合物が得られる。
【0148】
【化51】

【0149】
スキームPは有機合成で公知の方法を使用して55型化合物を構造式56の各種複素環誘導体に変換する方法を最も一般的に示す。このような変換の特定例を下記実施例セクションに示す。
【0150】
このような変換を実施するための主要な参考文献としては、以下の文献が挙げられる。
1)Joule,J.A.;Mills,K and Smith,G.F.Heterocyclic Chemistry,Chapman & Hall,1995,3rd Edn.とその引用文献;
2)Katritzky,A.R.;Rees,C.W.(Eds),Comprehensive Heterocyclic Chemistry:The Structure,Reactions,Synthesis,and Uses of Heterocyclic Compounds,Pergamon Press,Oxford,1984,8vとその引用文献;及び
3)Comprehensive Heterocyclic Chemistry II:Review of the Literature 1982−1995:The Structure,Reactions,Synthesis and Uses of Heterocyclic Compounds,Pergamon Press,New York,2nd Edn.,1996,11vとその引用文献(Comprehensive Heterocyclic Chemistry,vol.4−6 Pergamon Press,New York,1984とその引用文献)。
4)実施例2に示す化合物については、Org.Lett.2001,3,3165−3168とその引用文献参照。
5)実施例3に示す化合物については、J.Med.Chem.1992,35,3691−3698とその引用文献参照。
【0151】
【化52】

【0152】
スキームQは星印を付けた炭素がキラル中心である構造式57のラセミ化合物の好ましい分割方法を示す。一般に、キラル固定相液体クロマトグラフィー法又は有機合成で公知の他の適切な方法を利用することにより前記化合物又はその製造中間体を分割し、58と59等の純エナンチオマー化合物とすることができる。
【0153】
【化53】

【0154】
本発明の化合物の合成に使用される中間体は以下の手順を使用して製造することができる。
【0155】
【化54】

【0156】
i−1aの製造
ステップA:2−(2−フリルメチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(i−1a)の製造
フルフリルアミン(5.70mL,61.8mmol)とフタル酸無水物(10.0g,90.9mmol)を120℃まで約45分間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、EtOHに懸濁した。得られた懸濁液を濾過し、標記化合物i−1aを得た。HNMR(500MHz,CDCl):δ 7.88(dd,2H,J=3.2,5.3Hz),7.73(dd,2H,J=3.0,5.5Hz),6.38(d,1H,J=3.2Hz),6.32(m,1H),4.88(s,2H)。
【0157】
【化55】

【0158】
i−2aの製造
ステップA:メタンスルホン酸ピリミジン−2−イルメチル(i−2a)の製造
2−ヒドロキシメチルピリミジン(6.28g,57.1mmol)とトリエチルアミン(9.50mL,68.5mmol)の0℃のDCM(250mL)溶液に撹拌下に塩化メタンスルホニル(4.40mL,57.1mmol)を加えた。約20分後に、反応混合物を水に注ぎ、有機層を分離し、水相をDCMで2回再抽出した。有機抽出相を合わせて水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮し、標記化合物i−2aを得た。HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.81(d,2H,J=4.8Hz),7.32(t,1H,J=4.9Hz),5.46(s,2H),3.24(s,3H)。
【0159】
i−2aについて記載した手順と同様の手順に従って2−ヒドロキシメチルチアゾールから中間体i−2bを製造した。
【0160】
【化56】

i−2b:HNMR(500MHz,CDCl):δ 7.88(d,1H,J=3.2Hz),7.50(d,1H,J=3.2Hz),5.55(s,2H),3.11(s,3H)。
【0161】
【化57】

【0162】
i−3g及びi−3hの製造
ステップA:2−(4−ヨードフェニル)−3−メチルブタン−2−オール(i−3a)の製造
1,4−ジヨードベンゼン(30.0g,90.9mmol)の−78℃のTHF(200mL)溶液に撹拌下にn−ブチルリチウム(2.5Mヘキサン溶液37.0mL,92.8mmol)を加えた。約20分後に、3−メチル−2−ブタノン(10.2mL,95.5mmol)を加え、得られた混合物を−78℃で約1時間撹拌した。反応混合物を1N HCl水溶液に注ぎ、ジエチルエーテルで2回抽出した。有機抽出相を合わせて水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸マグネシウム)、減圧濃縮し、標記化合物i−3aを得た。m/z(ES)273(M−OH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 7.67(d,2H,J=8.5Hz),7.20(d,2H,J=8.7Hz),2.00(m,1H,J=6.7Hz),1.52(s,3H),0.92(d,3H,J=6.7Hz),0.81(d,3H,J=6.9Hz)。
ステップB:2−({5−[1−(4−ヨードフェニル)−1,2−ジメチルプロピル]−2−フリル}メチル)−1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン(i−3b)の製造
i−3a(23.2g,80.1mmol)の−78℃のDCM(200mL)溶液に撹拌下にテトラフルオロ硼酸(54%wtジエチルエーテル溶液13.0mL,96.1mmol)を加えた。約5分後に、i−1a(19.1g,84.1mmol)を一度に加え、得られた懸濁液を−78℃で約15分間撹拌した。約2時間かけて室温まで昇温後、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液で注意深くクエンチし、有機層を分離した。水層をDCMで2回抽出し、有機抽出相を合わせてブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液5%−20% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物i−3bを得た。m/z(ES)500(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 7.88(dd,2H,J=3.0,5.5Hz),7.77(dd,2H,J=3.0,5.5Hz),7.47(dd,2H,J=2.5,9.0Hz),7.06(dd,2H,J=2.3,8.8Hz),6.24(d,1H,J=3.0Hz),6.01(d,1H,J=3.0Hz),4.85(m,2H),2.58(m,1H,J=7.0Hz),1.50(s,3H),0.82(d,3H,J=6.5Hz),0.68(d,3H,J=6.5Hz)。
ステップC:1−{5−[1−(4−ヨードフェニル)−1,2−ジメチルプロピル]−2−フリル}メチンアミン(i−3c)の製造
i−3b(18.8g,37.8mmol)のEtOH(200mL)溶液に撹拌下にヒドラジン1水和物(27.0mL,566mmol)を加えた。反応混合物を約1時間加熱還流した後、室温まで冷却し、濾過した。残留物をEtOAcで4回洗浄し、濾液を合わせて一部減圧濃縮した。得られた溶液を水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮し、標記化合物i−3cを得た。HNMR(500MHz,CDCl):δ 7.62(d,2H,J=8.5Hz),7.09(d,2H,J=8.7Hz),6.06(m,2H),3.81(s,2H),2.58(m,1H,J=6.8Hz),1.55(s,3H),0.92(d,3H,J=6.8Hz),0.74(d,3H,J=6.9Hz)。
ステップD:6−[1−(4−ヨードフェニル)−1,2−ジメチルプロピル]ピリジン−3−オール(i−3d)の製造
i−3c(13.9g,37.8mmol)をMeOH(15.0mL)と水(35.0mL)に溶かした0℃の溶液に撹拌下に均圧管付き滴下漏斗で臭素(1.0M MeOH溶液32.0mL)を滴下した。約1時間後に、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でクエンチし、EtOAcで2回抽出した。有機抽出相を合わせてブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−50% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物i−3dを得た。m/z(ES)368(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.11(m,1H),7.55(d,2H,J=8.2Hz),7.08(m,3H),7.01(m,1H),2.94(m,1H),1.62(s,3H),0.83(d,3H,J=6.7Hz),0.79(d,3H,J=6.8Hz)。
ステップE:(i−3e)及び(i−3f)の製造
分取順相キラルHPLCを使用してエナンチオマーi−3e及びi−3fを分離した。i−3dのMeOH溶液をCHIRALCEL(登録商標)OD−H(Chiral Technologies,Inc.,Exton,Pa.製品)セミ分取(250×21mm)HPLCカラム(溶離液15% MeOH/CO、カラム温度40℃、50mL/min、220nmでUV検出)に注入した。エナンチオマーを分離した処、先ずエナンチオマーi−3eが保持時間5.83分で溶出し、後からエナンチオマーi−3fが保持時間6.40分で溶出した。分離した画分を濃縮し、エナンチオマーi−3e及びi−3fを得た。
ステップF:2−[1−(4−ヨードフェニル)−1,2−ジメチルプロピル]−5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン(i−3g)の製造
炭酸セシウム(0.520g,1.60mmol)、ヨウ化カリウム(126mg,0.760mmol)及び塩化2−ピコリル塩酸塩(138mg,0.840mmol)をi−3e(280mg,0.760mmol)の室温のDMF(5.00mL)溶液に撹拌下に加えた。約18時間後に、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えることにより反応混合物をクエンチし、得られた混合物を水に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸マグネシウム)、減圧濃縮し、標記化合物i−3gを得た。m/z(ES)459(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.61(d,1H,J=4.5Hz),8.38(d,1H,J=3.0Hz),7.74(t,1H,J=7.7Hz),7.57(d,2H,J=8.2Hz),7.52(d,1H,J=7.8Hz),7.27(m,1H),7.17(dd,1H,J=2.8,8.8Hz),7.11(m,3H),5.22(s,2H),3.00(m,1H,J=6.7Hz),1.63(s,3H),0.83(d,3H,J=6.7Hz),0.77(d,3H,J=6.9Hz)。同様に、中間体i−3fをi−3hに変換することができる。
【0163】
キラル中間体i−3eを使用する中間体i−3gの製造について記載した手順と同様の手順に従い、以下の他の中間体i−3i及びi−3jを製造した。
【0164】
【化58】

i−3i:m/z(ES)460(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.81(d,2H,J=4.8Hz),8.39(d,1H,J=3.0Hz),7.57(d,2H,J=8.2Hz),7.29(m,1H),7.22(dd,1H,J=2.6,8.8Hz),7.12(m,3H),5.34(s,2H),3.00(m,1H,J=6.7Hz),1.63(s,3H),0.83(d,3H,J=6.6Hz),0.77(d,3H,J=6.9Hz)。
i−3j:m/z(ES)465(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.38(d,1H,J=2.9Hz),7.82(d,1H,J=2.2Hz),7.57(d,2H,J=8.5Hz),7.41(d,1H,J=2.4Hz),7.22(dd,1H,J=3.0,8.9Hz),7.13(d,1H,J=8.7Hz),7.11(d,2H,J=8.7Hz),5.40(s,2H),3.00(m,1H,J=6.8Hz),1.63(s,3H),0.82(d,3H,J=6.6Hz),0.77(d,3H,J=6.9Hz)。
【0165】
3−メチル−2−ブタノンの代わりにトリメチルアセトアルデヒドを使用する以外は中間体i−3dの製造について記載した手順と同様の手順に従い、以下の中間体を製造することができる。
【0166】
【化59】

【0167】
中間体i−3g、i−3i及びi−3jの製造について記載した手順と同様の手順に従い、キラル体又はラセミ体の中間体i−3nから以下の他の中間体を製造することができる。
【0168】
【化60】

【0169】
【化61】

【0170】
i−4aの製造
ステップA:4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}ベンゾニトリル(i−4a)の製造
i−3g(385mg,0.840mmol)、シアン化カリウム(109mg,1.68mmol)及びヨウ化銅(I)(16.0mg,0.0840mmol)の室温のMeCN(6.00mL)溶液に撹拌下にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(49.0mg,0.0420mmol)を加えた。得られた混合物を80℃まで約25分間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物を水で希釈し、EtOAcを溶離液として得られた2相混合物をCelite(登録商標)のショートカラムで濾過した。有機相を濾液から分離し、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−50% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物i−4aを得た。m/z(ES)358(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.63(d,1H,J=4.4Hz),8.40(d,1H,J=3.0Hz),7.76(dt,1H,J=1.7,7.7Hz),7.53(m,5H),7.28(m,1H),7.21(dd,1H,J=2.9,8.7Hz),7.15(d,1H,J=8.7Hz),5.24(s,2H),3.06(m,1H,J=6.7Hz),1.69(s,3H),0.86(d,3H,J=6.9Hz),0.76(d,3H,J=6.7Hz)。
【0171】
中間体i−4aについて記載した手順と同様の手順に従い、夫々i−3i及びi−3jから以下の他の中間体i−4b及びi−4cを製造することができる。
【0172】
【化62】

i−4b:m/z(ES)359(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.81(d,2H,J=5.0Hz),8.41(d,1H,J=3.0Hz),7.55(d,2H,J=8.5Hz),7.48(d,2H,J=8.7Hz),7.30(m,1H),7.25(dd,1H,J=2.7,8.7Hz),7.14(d,1H,J=8.9Hz),5.34(s,2H),3.05(m,1H,J=6.7Hz),1.68(s,3H),0.85(d,3H,J=6.6Hz),0.75(d,3H,J=6.9Hz)。
【0173】
中間体i−4aについて記載した手順と同様の手順に従い、夫々i−3k、i−3l及びi−3mから以下の他の中間体i−4d、i−4e及びi−4fを製造することができる。
【0174】
【化63】

【0175】
【化64】

【0176】
i−5aの製造
ステップA:3−(1−ブトキシビニル)−6−クロロピリダジン(i−5a)の製造
−78℃のtert−ブチルリチウム(1.7Mペンタン溶液150mL)にTHF(24.0mL)を迅速に滴下した。15分後に、n−ブチルビニルエーテル(14.0mL,109.4mmol)を加え、得られた混合物を−30℃まで昇温すると、この時点で弱いガス発生が観察された。ガス発生が停止したら、反応温度を−30℃に維持しながらn−ブチルビニルエーテルの2回目の添加(14.0mL,109.4mmol)を行った。ガス発生が停止したら、反応混合物を−78℃まで冷却し、塩化亜鉛(29.8g,219mmol)のTHF(250mL)溶液を迅速に滴下した。15分後に、反応混合物を−10℃まで昇温し、3,6−ジクロロピリダジン(32.6g,219mmol)と[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(16.0g,21.9mmol)の0℃のTHF(200mL)溶液に撹拌下にカニューレで移した。0℃で1時間後に、反応混合物をEtOACで希釈し、EtOAcを溶離液としてCELITE(登録商標)のショートカラムで濾過した。濾液を水とブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−15% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物i−5aを得た。HNMR(500MHz,CDCl):δ 7.80(d,1H,J=8.9Hz),7.52(d,1H,J=8.9Hz),5.76(d,1H,J=2.5Hz),4.55(d,1H,J=2.5Hz),3.97(t,2H,J=6.4Hz),1.83(m,2H),1.57(m,2H),1.02(t,3H,J=7.5Hz)。
【0177】
【化65】

【0178】
3−クロロ−6−(2,5−ジメチル−1H−ピロール−1−イル)ピリダジン(i−6a)の製造
冷却器とディーン・スターク装置を取付けた丸底フラスコでp−TSA(117mg,0.618mmol)、2,5−ヘキサンジオン(4.36mL,37.1mmol)及び3−アミノ−6−クロロピリダジン(4.00g,30.9mmol)をトルエン(150mL)に加えた混合物を140℃まで5時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、活性炭を加えた。混合物をCELITEで濾過し、減圧濃縮し、標記化合物i−6aを得た。m/z(ES)208(MH)
【0179】
【化66】

【0180】
5−ブロモ−2−(2,5−ジメチル−1H−ピロール−1−イル)ピリミジン(i−6b)の製造
上記手順に従って化合物i−6bを製造した。m/z(ES)252(MH)
【0181】
下記実施例中の表では、質量スペクトルデータをもつ化合物を合成により製造した。
【実施例1】
【0182】
【化67】

【0183】
1fの製造
ステップA:4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}安息香酸メチル(1a)の製造
i−4a(2.97g,8.31mmol)のメタノールHCl(0℃でMeOH 360mLにHClガスをバブリングすることにより得られたから3.0M溶液100mL)溶液を撹拌下に約12時間加熱還流した。室温まで冷却後、反応混合物を減圧濃縮し、1N HCl水溶液に溶かした。約1時間撹拌後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えることにより、得られた混合物を中和し、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−100% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物1aを得た。m/z(ES)391(MH)
ステップB:2−{1−[4−(1−メトキシビニル)フェニル]−1,2−ジメチルプロピル}−5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン(1b)の製造
テッベ試薬(0.5Mトルエン溶液15.2mL,7.60mmol)を1a(2.70g,6.91mmol)の室温のTHF(100mL)溶液に撹拌下に加え、得られた混合物を約16時間エージングさせた。塩基性アルミナを加えることにより反応をクエンチし、EtOAcを溶離液として得られた懸濁液を塩基性アルミナのショートカラムで濾過した。濾液を減圧濃縮し、1bを含む粗残留物をそれ以上精製せずに後続反応で使用した。
ステップC:5−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)イソオキサゾール−3−カルボン酸エチル(1c)の製造
1b(ステップBからの粗生成物;6.91mmol)とトリエチルアミン(9.60mL,69.1mmol)の室温のTHF(100mL)溶液に撹拌下に2−クロロ−2−(ヒドロキシイミノ)酢酸エチル(3.15g,20.7mmol)を加えた。約1時間後に、TFAを加えて反応混合物をpHから1まで酸性化し、得られた混合物を50℃まで加熱した。1時間後に反応混合物を減圧濃縮し、残留物をTFA(30mL)に再溶解し、得られた溶液を50℃まで更に1時間加熱した。揮発分の減圧蒸発後、粗残留物をEtOAcに溶かし、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えることにより注意深く中和した。有機層を分離し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮し、得られた粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−100% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物1cを得た。m/z(ES)472(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.61(d,1H,J=3.5Hz),8.40(d,1H,J=2.2Hz),7.77(m,1H),7.70(d,2H,J=8.5Hz),7.55(d,1H,J=7.7Hz),7.49(d,2H,J=8.4Hz),7.20(m,3H),6.87(s,1H),5.24(s,2H),4.48 (q,2H,J=7.1Hz),3.11(m,1H,J=6.6Hz),1.70(s,3H),1.46(t,3H,J=7.1Hz),0.87(d,3H,J=6.7Hz),0.80(d,3H,J=6.9Hz)。
ステップD:[5−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)イソオキサゾール−3−イル]メタノール(1d)の製造
1c(2.46g,5.22mmol)の0℃のジエチルエーテル(10.0mL)溶液に撹拌下に水素化アルミニウムリチウム(1.0M THF溶液7.80mL,7.80mmol)を加えた。約10分後に、1N NaOHを加えて反応をクエンチした後、EtOAcで希釈した。得られた混合物を乾燥し(硫酸マグネシウム)、濾過し、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−100% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物1dを得た。m/z(ES)430(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.61(d,1H,J=4.5Hz),8.40(d,1H,J=2.5Hz),7.75(m,1H),7.67(d,2H,J=8.5Hz),7.53(d,1H,J=8.0Hz),7.47(d,2H,J=8.5Hz),7.29(m,1H),7.19(m,2H),6.53(s,1H),5.23(s,2H),4.81(s,2H),3.08(m,1H),1.68(s,3H),0.87(d,3H,J=6.6Hz),0.80(d,3H,J=6.9Hz)。
ステップE:2−(1−{4−[3−(ブロモメチル)イソオキサゾール−5−イル]フェニル}−1,2−ジメチルプロピル)−5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン(1e)の製造
1d(1.49g,3.47mmol)と四臭化炭素(1.73g,5.21mmol)の室温のTHF(100mL)溶液に撹拌下にトリフェニルホスフィン(1.34g,5.21mmol)を加えた。約1.5時間後に、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて乾燥し(硫酸マグネシウム)、減圧濃縮し、粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−70% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物1eを得た。m/z(ES)494(MH)
ステップF:4−{[5−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)イソオキサゾール−3−イル]メチル}モルホリン(1f)の製造
1e(49.0mg,0.100mmol)と炭酸セシウム(130mg,0.400mmol)の室温のDMF(1.00mL)溶液に撹拌下にモルホリン(17.5μL,0.200mmol)を加えた。得られた混合物を50℃まで約1時間加熱し、室温まで冷却した後、EtOAcを溶離液としてCELITE(登録商標)のショートカラムで濾過した。濾液を減圧濃縮し、粗残留物をYMC Pack Pro C18固定相(溶離液CHCN/HO,修飾剤0.05% TFA)で分取逆相HPLCにより精製した後、精製画分を凍結乾燥し、標記化合物1fを得た。m/z(ES)499(MH)
【0184】
化合物1c、1d及び1eについて上述した手順と同様の手順に従い、以下の他の化合物を製造することができる(表1)。
【0185】
【表1】


【実施例2】
【0186】
【化68】

【0187】
2aの製造
ステップA:[5−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)イソオキサゾール−3−イル]プロパン−2−オール(2a)の製造
1c(55.0mg,0.117mmol)の0℃のTHF(1.00mL)溶液に撹拌下に臭化メチルマグネシウム(1.4Mトルエン:THF(75:25)溶液334μL,0.468mmol)を加えた。約1時間後に反応を水でクエンチし、得られた混合物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−100% EtOAc/ヘキサン)により直接精製し、標記化合物2aを得た。m/z(ES)457(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.61(d,1H,./4.6Hz),7.67(m,1H),7.67(d,2H,J=8.5Hz),7.58(d,1H,J=8.0Hz),7.36(d,2H,J=8.5Hz),7.25(m,1H),7.19(d,2H,J=8.3Hz),6.92(d,2H,J=8.9Hz),5.22(s,2H),2.72(m,1H),1.68(s,6H),1.63(s,3H),0.89(d,3H,J=6.1Hz),0.86(d,3H,J=6.1Hz)。
【0188】
化合物2aについて上述した手順と同様の手順に従い、以下の他の化合物2b及び2cを製造することができる。
【0189】
【化69】

実施例2.化合物2cの親イオンm/z(MH)データ:464。
【実施例3】
【0190】
【化70】

【0191】
3fの製造
ステップA:4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}−N’−ヒドロキシベンゼンカルボキシイミドアミド(3a)の製造
i−4a(877mg,2.45mmol)の室温のEtOH(22.0mL)溶液に撹拌下にヒドロキシルアミン(50% HO溶液483μL,7.35mmol)を加え、得られた混合物を80℃まで約3時間加熱した。室温まで冷却後に反応混合物を減圧濃縮し、粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−4% MeOH/DCM)により精製し、標記化合物3aを得た。m/z(ES)391(MH)HNMR(500MHz,CDOD):δ 8.55(d,1H,J=3.7Hz),8.26(d,1H,J=3.0Hz),7.88(dt,1H,J=1.7,7.8Hz),7.61(d,1H,J=7.5Hz),7.52(d,2H,J=8.5Hz),7.37(m,4H),7.29(d,1H,J=8.9Hz),5.22(s,2H),3.05(m,1H,J=6.8Hz),1.67(s,3H),0.84(d,3H,J=6.7Hz),0.78(d,3H,J=6.9Hz)。
ステップB:酢酸2−({[(1E)−アミノ(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)メチレン]アミノ}−2−オキソエチル(3b)の製造
アセトキシ酢酸(126mg,1.07mmol)、EDC(205mg,1.07mmol)及びHOBt(157mg,1.16mmol)の室温のDCM(7.00mL)溶液に撹拌下に化合物3a(350mg,0.896mmol)を加えた。約45分後に、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮し、標記化合物3bを得、それ以上精製せずに後続反応で使用した。m/z(ES)491(MH)
ステップC:酢酸[3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]メチル(3c)の製造
3b(0.896mmol)のキシレン(6.00mL)溶液を撹拌下に110℃まで約1時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物を減圧濃縮し、標記化合物3cを得、それ以上精製せずに後続反応で使用した。m/z(ES)473(MH)
ステップD:[3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]メタノール(3d)の製造
炭酸カリウム(743mg,5.38mmol)/水(1.00mL)を3c(0.896mmol)の室温のMeOH(3.00mL)溶液に撹拌下に加えた。約1時間後に反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−6% MeOH/DCM)により精製し、標記化合物3dを得た。m/z(ES)431(MH)HNMR(500MHz,CDOD):δ 8.55(d,1H,J=3.3Hz),8.28(d,1H,J=2.7Hz),7.94(d,2H,J=8.5Hz),7.88(dt,1H,J=1.7,7.7Hz),7.61(d,1H,J=7.8Hz),7.48(d,2H,J=8.5Hz),7.35(m,3H),5.23(s,2H),3.08(m,1H,J=6.6Hz),1.70(s,3H),0.86(d,3H,J=6.6Hz),0.80(d,3H,J=6.6Hz)。
ステップE:メタンスルホン酸[3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]メチル(3e)の製造
3d(100mg,0.232mmol)とDIPEA(101μL,0.580mmol)の0℃のDCM(2.00mL)溶液に撹拌下に塩化メタンスルホニル(27.0μL,0.348mmol)を加えた。約1.5時間後に反応混合物を水に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮し、標記化合物3eを得、それ以上精製せずに後続反応で使用した。
ステップF:4−{[3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]メチル}モルホリン(3f)の製造
3e(0.116mmol)とヨウ化テトラブチルアンモニウム(47.0mg,0.127mmol)の室温のDMF(1.00mL)溶液に撹拌下にモルホリン(101μL,1.16mmol)を加えた。約2時間後に反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−5% MeOH/DCM)により精製し、標記化合物3fとヨウ化テトラブチルアンモニウムの混合物を得た。混合物をEtOAcに溶かし、水、ブラインで数回洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮し、標記化合物3fを得た。m/z(ES)500(MH)HNMR(500MHz,CDOD):δ 8.90(d,1H,J=5.0Hz),8.60(m,2H),8.31(dd,1H,J=3.0,9.4Hz),8.18(d,1H,J=8.2Hz),8.13(m,3H),8.03(m,1H),7.55(d,2H,J=8.5Hz),5.74(s,2H),4.96(s,2H),4.00(br,4H),3.62(br,4H),3.05(m,1H,J=6.7Hz),1.88(s,3H),0.98(d,3H,J=6.6Hz),0.92(d,3H,J=6.6Hz)。
【0192】
化合物3c及び3fについて上述した手順と同様の手順に従い、以下の他の化合物を製造することができる(表3)。
【0193】
【表2】


【実施例4】
【0194】
【化71】

【0195】
4aの製造
ステップA:2−[3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]プロパン−2−アミン(4a)の製造
3Am(0.036mmol)の10℃の1,4−ジオキサン(100μL)溶液に撹拌下にHCl水溶液(水10.0μL中の4.0M 1,4−ジオキサン溶液190μL)を加え、得られた混合物を室温まで昇温した。約2時間後に反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をYMC Pack Pro C18固定相(溶離液CHCN/HO,修飾剤0.05% TFA)で分取逆相HPLCにより精製した後、精製画分を凍結乾燥し、標記化合物4aを得た。m/z(ES)458(MH)
【0196】
化合物4aについて上述した手順と同様の手順に従い、以下の他の化合物4bから4fを製造することができる。
【0197】
【化72】

各化合物の親イオンm/z(MH)データ:4c:464;4d:456;4f:462。
【実施例5】
【0198】
【化73】

【0199】
5eの製造
ステップA:2−(1,2−ジメチル−1−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]プロピル}−5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン(5a)の製造
i−3g(3.278mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(1.08g,4.26mmol)及び酢酸カリウム(960mg,9.85mmol)の室温のDMSO(10.0mL)懸濁液に撹拌下に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(120mg,0.164mmol)を加えた。得られた懸濁液を80℃まで約1.5時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAcで希釈し、EtOAcを溶離液としてCELITE(登録商標)のショートカラムで濾過した。濾液を水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液10%−50% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物5aを得た。HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.61(d,1H,J=4.6Hz),8.37(d,1H,J=2.8Hz),7.73(m,1H),7.71(d,2H,J=8.0Hz),7.52(d,1H,J=7.8Hz),7.36(d,2H,7=8.0Hz),7.26(m,1H),7.14(dd,1H,J=3.0,8.9Hz),7.09(d,1H,J=8.7Hz),5.22(s,2H),3.04(m,1H),1.33(s,12H),1.26(s,3H),0.84(d,3H,J=6.6Hz),0.78(d,3H,J=6.6Hz)。
ステップB:3−クロロ−6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン(5b)の製造
5a(1.45g,3.16mmol)、3,6−ジクロロピリダジン(660mg,4.43mmol)及び炭酸ナトリウム(2.0M水溶液3.20mL,6.32mmol)の室温のEtOH:トルエン(80:20混合物10.0mL)溶液に撹拌下に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(69.0mg,0.0950mmol)を加えた。得られた溶液を95℃まで約4時間加熱した。室温まで冷却後、EtOAcを溶離液として反応混合物をCELITE(登録商標)のショートカラムで濾過した。濾液を水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液20%−80% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物5bを得た。m/z(ES)445(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.63(d,1H,J=4.1Hz),8.41(d,1H,J=1.8Hz),7.96(d,2H,J=8.7Hz),7.80(d,1H,J=8.9Hz),7.76(dt,1H,J=1.7,7.7Hz),7.53(m,4H),7.27(dd,1H,J=5.1,7.1Hz),7.19(m,2H),5.24(s,2H),3.11(m,1H,J=6.7Hz),1.61(s,3H),0.89(d,3H,J=6.6Hz),0.83(d,3H,J=6.9Hz)。
ステップC:6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−カルボン酸メチル(5c)の製造
5b(155mg,0.349mmol)の室温のトリエチルアミン:DMF:MeOH(1:10:10混合物4.00mL)溶液に撹拌下に 酢酸パラジウム(II)(8.00mg,0.0350mmol)と1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(39.0mg,0.070mmol)を加えた。弱い一酸化炭素ガス流を反応混合物に約15分間バブリングした後、得られた混合物を一酸化炭素雰囲気(バルーン)下に約5時間70℃まで加熱した。室温まで冷却後、DCMを溶離液として反応混合物をCELITE(登録商標)のショートカラムで濾過した。濾液を一部減圧濃縮し、EtOAcで希釈した。有機相を水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液30%−100% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物5cを得た。m/z(ES)469(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.62(d,1H,J=4.8Hz),8.41(m,1H),8.22(d,1H,J=8.7Hz),8.08(d,2H,J=8.8Hz),7.96(d,1H,J=8.9Hz),7.75(dt,1H,J=1.7,7.7Hz),7.56(d,2H,J=8.7Hz),7.53(d,1H,J=7.8Hz),7.26(dd,1H,J=5.2,7.3Hz),7.19(m,2H),5.23(s,2H),4.10(s,3H),3.11(m,1H,6.6Hz),1.73(s,3H),0.89(d,3H,J=6.7Hz),0.83(d,3H,J=6.8Hz)。
ステップD:6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]メタノール(5d)の製造
5c(113mg,0.241mmol)の0℃のEtOH(2.00mL)溶液に撹拌下に水素化ホウ素ナトリウム(14.0mg,0.362mmol)を加え、得られた混合物を室温まで昇温した。約12時間後に反応混合物を0℃まで冷却し、1N HCl水溶液を加えることによりクエンチした。得られた混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせてブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液30%−100% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物5dを得た。m/z(ES)441(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.61(d,1H,J=3.2Hz),8.40(m,1H),7.97(d,2H,J=8.2Hz),7.83(d,1H,J=8.7Hz),7.75(m,1H),7.52(m,4H),7.26(m,1H),7.19(m,2H),5.23(s,2H),3.09(m,1H,J=6.6Hz),1.72(s,3H),0.88(d,3H,J=6.6Hz),0.83(d,3H,J=6.6Hz)。
【0200】
化合物3fについて記載した手順と同様の手順に従い、5dから化合物5eを製造した。
【0201】
【化74】

【0202】
実施例5に上述した手順と同様の手順に従い、以下の化合物を製造することができる(表5)。
【0203】
【表3】


ステップBではNH基の適切な保護が必要である。例えば、NH官能基を2,5−ジメチルピロール誘導体として保護した後に公知方法を使用して除去することができる。
ステップBではOH基の適切な保護が必要である。例えば、OH官能基をt−ブチルジメチルシリル等のトリアルキルシリル基で保護した後に公知方法を使用して除去することができる。
SOMe基はHeterocycles 1994,39(1),345−356に記載のMiyashitaらの方法に従い、5bとメタンスルフィン酸ナトリウムの反応により導入することができる。
【実施例6】
【0204】
【化75】

【0205】
ステップA:2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール(6a)の製造
5c(474mg,1.02mmol)の0℃のTHF(5.00mL)溶液に撹拌下に臭化メチルマグネシウム(1.4M(75:25)トルエン:THF溶液1.70mL)を加えた。約45分後に、1N HCl水溶液を加えることにより反応をクエンチし、得られた混合物を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせてブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をYMC Pack Pro C18固定相(溶離液CHCN/HO,修飾剤0.05% TFA)で分取逆相HPLCにより精製した後、精製画分を凍結乾燥し、標記化合物6aを得た。m/z(ES)469(MH)HNMR(500MHz,CDOD):δ 8.97(d,1H,J=9.1Hz),8.94(d,1H,J=5.5Hz),8.68(m,3H),8.40(dd,1H,J=3.0,9.1Hz),8.25(m,1H),8.24(d,2H,J=8.7Hz),8.20(d,1H,J=9.1Hz),8.10(m,1H),7.67(d,2H,J=8.7Hz),5.81(s,2H),3.10(m,1H,J=6.6Hz),1.92(s,3H),1.74(s,6H),1.01(d,3H,J=6.6Hz),0.96(d,3H,J=6.4Hz)。
【0206】
化合物6aについて記載した手順と同様の手順に従い、以下の他の化合物7d及び6bを製造した。
【0207】
【化76】

2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリミジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール(7d)の親イオンm/z(MH)データ:m/z(ES)470(MH)
2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(1,3−チアゾール−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール(6b)の親イオンm/z(MH)データ:m/z(ES)475(MH)
【実施例7】
【0208】
【化77】

【0209】
7dの代替製法
ステップA:2−[({6−[1−(4−ヨードフェニル)−1,2−ジメチルプロピル]ピリジン−3−イル}オキシ)メチル]ピリミジン(i−3i)の製造
炭酸セシウム(20.6g,63.1mmol)、ヨウ化カリウム(7.48g,45.1mmol)及びi−2a(9.64g,51.8mmol)をi−3e(16.5g,45.1mmol)の0℃のDMF(200mL)溶液に撹拌下に加え、得られた混合物を室温まで昇温した。約12時間後に反応混合物を水に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて水で2回とブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮し、標記化合物i−3iを得た。m/z(ES)460(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.81(d,2H,J=5.0Hz),8.39(d,1H,J=3.0Hz),7.57(d,2H,J=8.4Hz),7.22(dd,1H,J=3.0,8.9Hz),7.11(m,4H),5.34(s,2H),3.00(m,1H,J=6.7Hz),1.63(s,3H),0.83(d,3H,J=6.6Hz),0.77(d,3H,J=6.6Hz)。
ステップB:2−{[(6−{1,2−ジメチル−1−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]プロピル}ピリジン−3−イル)オキシ]メチル}ピリミジン(7a)の製造
i−3i(20.6g,45.0mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(12.0g,47.3mmol)及び酢酸カリウム(13.2g,135mmol)の室温のDMSO(200mL)懸濁液に撹拌下に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(2.30g,3.15mmol)を加えた。得られた懸濁液を脱気し、70℃まで約1.5時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAcで希釈し、EtOAcを溶離液としてCELITE(登録商標)のショートカラムで濾過した。濾液を水で2回とブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液10%−80% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物7aを得た。HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.81(d,2H,J=4.8Hz),8.39(d,1H,J=3.0Hz),7.72(d,2H,J=8.2Hz),7.36(d,2H,J=8.3Hz),7.28(m,1H),7.20(dd,1H,J=3.1,8.8Hz),7.10(d,1H,J=8.9Hz),5.34(s,2H),3.05(m,1H,J=6.7Hz),1.68(s,3H),1.35(s,12H),0.85(d,3H,J=6.6Hz),0.79(d,3H,J=6.6Hz)。
ステップC:3−(1−ブトキシビニル)−6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリミジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン(7b)の製造
7a(19.2g,41.7mmol)、i−5a(10.6g,50.1mmol)及び炭酸ナトリウム(2.0M水溶液42.0mL,84.0mmol)の室温のEtOH:トルエン(80:20混合物140mL)溶液に撹拌下に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(3.05g,4.17mmol)を加えた。得られた溶液を脱気し、95℃まで約3.5時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物を一部減圧濃縮し、EtOAcで希釈した。EtOAcを溶離液として得られた混合物をCELITE(登録商標)のショートカラムで濾過した。濾液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液10%−50% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物7bを得た。m/z(ES)510(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.82(d,2H,J=5.0Hz),8.43(d,1H,J=3.0Hz),8.04(d,2H,J=8.5Hz),7.84(m,2H),7.53(d,2H,J=8.7Hz),7.30(m,1H),7.24(dd,1H,J=2.9,8.8Hz),7.18(d,1H,J=8.9Hz),5.83(d,1H,J=2.3Hz),5.36(s,2H),4.53(d,1H,J=2.3Hz),3.99(t,2H,J=6.4Hz),3.11(p,1H,J=6.7Hz),1.86(m,2H),1.73(s,3H,1.56(m,2H),1.04(t,3H,J=7.3Hz),0.89(d,3H,J=6.6Hz),0.84(d,3H,J=6.7Hz)。
ステップD:1−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリミジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]エタノン(7c)の製造
7b(15.8g,30.9mmol)の0℃のEtOH(25.0mL)溶液に撹拌下に塩酸(1.0M EtOH溶液100mL)を加えた。約15分後に、塩酸の2回目の添加(2.0M水溶液150mL)を行い、更に15分後に、塩酸の3回目の添加(6.0M水溶液100mL)を行った。更に10分後に、反応混合物を室温まで昇温し、30分間エージングさせた。反応混合物を水で希釈し、0℃まで再冷却し、固体炭酸水素ナトリウムを加えることにより中和した。得られた混合物を固体塩化ナトリウムで飽和し、EtOAcで2回抽出した。有機抽出相を合わせてブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮し、標記化合物7cを得た。m/z(ES)454(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 8.80(d,2H,J=4.8Hz),8.42(d,1H,J=3.0Hz),8.16(d,1H,J=8.7Hz),8.08(d,2H,J=8.5Hz),7.98(d,1H,J=8.9Hz),7.56(d,2H,J=8.5Hz),7.27(m,1H),7.24(dd,1H,J=3.0,8.7Hz),7.18(d,1H,J=8.9Hz),5.34(s,2H),3.10(m,1H,J=6.7Hz),2.94(s,3H),1.73(s,3H),0.88(d,3H,J=6.7Hz),0.83(d,3H,J=6.8Hz)。
ステップE:2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリミジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール(7d)の製造
7c(14.0g,30.9mmol)を0℃のTHF(130mL)とジエチルエーテル(260mL)の混合物に溶かした溶液に撹拌下に臭化メチルマグネシウム(1.4M THF:トルエン(25:75)溶液30.9mL)を加えた。0℃で約1時間後に、飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて反応をクエンチし、得られた混合物を15分間撹拌した。有機相を分離し、水相をEtOAcで抽出した。有機抽出相を合わせてブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸マグネシウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液0%−100%アセトン/DCM)により精製し、標記化合物7dを得た。m/z(ES)470(MH)HNMR(500MHz,CDCl):δ 9.01(d,1H,J=9.1Hz),8.88(d,2H,J=5.0Hz),8.73(d,1H,J=9.2Hz),8.52(d,1H,J=2.7Hz),8.34(dd,1H,J=3.0,9.4Hz),8.25(d,2H,J=8.5Hz),8.17(d,1H,J=9.1Hz),7.65(d,2H,J=8.5Hz),7.53(t,1H,J=5.0Hz),5.62(s,2H),3.05(m,1H,J=6.7Hz),1.91(s,3H),1.75(s,6H),1.00(d,3H,J=6.6Hz),0.96(d,3H,J=6.4Hz)。
【実施例8】
【0210】
【化78】

【0211】
8e及び8gの製造
ステップA:6−{1,2−ジメチル−1−[4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)フェニル]プロピル}ピリジン−3−オール(8a)の製造
i−3gの代わりにi−3eを使用した以外は化合物5aの製造について記載した手順と同様の手順に従い、化合物8aを製造した。m/z(ES)382(MH)
ステップB:6−(1,2−ジメチル−1−{4−[6−(トリフルオロメチル)ピリダジン−3−イル]フェニル}プロピル)ピリジン−3−オール(8b)の製造
夫々化合物5aと3,6−ジクロロピリダジンの代わりに化合物8aと3−クロロ−6−トリフルオロメチルピリダジンを使用した以外は化合物5bの製造について記載した手順と同様の手順に従い、化合物8bを製造した。m/z(ES)402(MH)
ステップC:トリフルオロメタンスルホン酸6−(1,2−ジメチル−1−{4−[6−(トリフルオロメチル)ピリダジン−3−イル]フェニル}プロピル)ピリジン−3−イル(8c)の製造
8b(87.0mg,0.225mmol)、トリエチルアミン(47.0μL,0.337mmol)及びDMAP(から2mg)の室温のDCM(2.00mL)溶液に撹拌下に2−[N,N−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミノ]ピリジン(89.0mg,0.247mmol)を加えた。約1時間後に反応混合物を減圧濃縮し、粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液10%−20% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物8cを得た。m/z(ES)520(MH)
ステップD:3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−6−(トリフルオロメチル)ピリダジン(8d)の製造
8c(98.0mg,0.189mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(98.0mg,0.245mmol)及び酢酸カリウム(53.0mg,0.566mmol)の室温のDMSO(1.00mL)懸濁液に撹拌下に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(21.0mg,0.0280mmol)を加えた。得られた懸濁液を80℃まで約1.5時間加熱した。室温まで冷却後、反応混合物をEtOAcで希釈し、EtOAcを溶離液としてCELITE(登録商標)のショートカラムで濾過した。濾液を水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液10%−20% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物8dを得た。m/z(ES)416(MH−C10
ステップE:6’−(1,2−ジメチル−1−{4−[6−(トリフルオロメチル)ピリダジン−3−イル]フェニル}プロピル)−5−メトキシ−3,3’−ビピリジン(8e)の製造
8d(47.0mg,0.0950mmol)、3−ブロモ−5−メトキシピリジン(23.0mg,4.43mmol)及び炭酸ナトリウム(2.0M水溶液100μL,0.200mmol)の室温のEtOH:トルエン(80:20混合物500μL)溶液に撹拌下に[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)(14.0mg,0.0190mmol)を加えた。得られた溶液を95℃まで約5時間加熱した。室温まで冷却後、EtOAcを溶離液として反応混合物をCELITE(登録商標)のショートカラムで濾過した。濾液を水、ブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(勾配溶出;溶離液20%−50% EtOAc/ヘキサン)により精製し、標記化合物8eを得た。m/z(ES)479(MH)
【0212】
【化79】

【0213】
ステップF:3−[4−(1−{5−[2−(2,5−ジメチル−1H−ピロール−1−イル)ピリミジン−5−イル]ピリジン−2−イル}−1,2−ジメチルプロピル)フェニル]−6−(トリフルオロメチル)ピリダジン(8f)の製造
3−ブロモ−5−メトキシピリジンの代わりに5−ブロモ−2−(2,5−ジメチル−1H−ピロール−1−イル)ピリミジンを使用する以外は化合物8eについて記載した手順と同様の手順に従い、8dから化合物8fを製造することができる。
ステップG:5−[4−(1,2−ジメチル−1−{5−[6−(トリフルオロメチル)ピリダジン−3−イル]ピリジン−2−イル}プロピル)フェニル]ピリミジン−2−アミン(8g)の製造
8e(1.00当量)とトリエチルアミン(0.50当量)の室温のEtOH/水(2:1混合物0.15M)溶液に撹拌下に塩酸ヒドロキシルアミン(10.0当量)を加え、得られた混合物を80℃に加熱した。反応が完了したと判断された後に反応混合物を室温まで冷却し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液に注ぎ、EtOAcで3回抽出した。有機抽出相を合わせて水とブラインで洗浄し、乾燥し(硫酸ナトリウム)、減圧濃縮した。粗残留物をYMC Pack Pro C18固定相(溶離液CHCN/HO,修飾剤0.05% TFA)で分取逆相HPLCにより精製した後、精製画分を凍結乾燥し、標記化合物8gを得た。
【0214】
実施例5から7及び8に上述した手順と同様の手順に従い、以下の化合物を製造することができる(表8)。
【0215】
【表4】

【0216】
FLAP結合アッセイ
【0217】
【化80】

【0218】
ヒト白血球10,000×g上清(1)に由来する100,000×gペレットをFLAP源とする。100,000×gペレット膜をTris−Tweenアッセイ緩衝液(100mM Tris HCl pH7.4,140mM NaCl,2mM EDTA,0.5mMジチオスレイトール,5%グリセロール,0.05% Tween 20)に再懸濁し、最終蛋白濃度50μgから150μg/mlとした。Tris−Tweenアッセイ緩衝液100μl、化合物A30,000cpm/MeOH:アッセイ緩衝液(1:1)5μl、及びジメチルスルホキシド2μl又は競合剤(即ち試験化合物)/ジメチルスルホキシドを仕込んだ12mm×75mmポリプロピレン管に膜懸濁液のアリコート(100μl)を加えた。化合物B(終濃度10μM)を使用して非特異的結合を測定した。室温で20分間インキュベーション後、管内容物を冷0.1M Tris HCl pH 7.4,0.05% Tween 20洗浄用緩衝液4mlで希釈し、洗浄用緩衝液に予め浸しておいたGFBフィルターで膜を濾取した。管とフィルターを冷洗浄用緩衝液の4mlアリコートで2回リンスした。γシンチレーション計数により放射能を測定するためにフィルターを12mm×3.5mmポリスチレン管に移した。
【0219】
特異的結合量は総結合量から非特異的結合量を引いた値として定義される。総結合量は競合剤の不在下で膜と結合した化合物Aとし、非特異的結合量は10uM化合物Bの存在下で結合した化合物Aとした。化合物Aの製造については下記文献1に記載されている。IC50値は実験データのコンピューター分析(下記文献2参照)により取得した。試験した本発明の代表的化合物はFLAP結合アッセイでIC50が500nM未満であった。試験した好ましい代表的化合物はIC50が100nM以下であり、試験した化合物のうちでIC50が25nM以下のものがより好ましい。
【0220】
参考文献:
1.Charleson,S.,Prasti,P.,Leger,S.,Gillard,J.W,Vickers,P.J.,Mancini,J.A.,Charleson,P.,Guay,J.,Ford−Hutchinson,A.W.,and Evans,J.F.(1992)Characterization of a 5−lipoxygenase−activating protein binding assay:correlation of affinity for 5−lipoxygenase−activating protein with leukotriene synthesis inhibition.Mol Pharmacol 41:873−879.
2.Kinetic,EBDA,Ligand,Lowry:A collection of Radioligand Binding Analysis Programs by G.A.McPherson.Elsevier−BIOSOFT.
【0221】
以上、所定の特定実施形態について本発明を記載したが、本明細書に記載する教示から多数の代替実施形態が当業者に想到されよう。請求の範囲にはキラル配置を指定せずに特定化合物(即ち種)を記載するが、1個以上の不斉中心の存在により化合物のラセミ化合物、ラセミ混合物、個々のエナンチオマー、ジアステレオマー混合物及び個々のジアステレオマーを形成することが可能な場合には、これらの異性体も含むものとする。本明細書に引用する全特許、特許出願及び公開はその開示内容全体を参照により本明細書に組込む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式II:
【化1】

{式中、
qは0及び1から選択される整数であり;

(a)N、S及びOから選択される2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環;
(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環;
(c)1個の硫黄と2から4個の窒素から選択される3から5個のヘテロ原子を含み、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換された8員の芳香族又は部分不飽和オルト縮合二環系;並びに
(d)3から4個の窒素原子を含み、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換された9員の芳香族又は部分不飽和オルト縮合二環系;
(e)−C1−6アルキル、−C2−6アルケニル及び−C2−6アルキニル(前記アルキル、アルケニル及びアルキニルは場合によりR12で置換され、及び場合によりR13で置換されている。);
(f)フルオロ、−NH、−OH及び場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−3アルキルから構成される群から選択される1から3個の置換基で場合により置換された−C3−6シクロアルキル;
(g)−O−R6a;並びに
(h)−H、−OH、−CN、−CO、−C(O)NR、−NR、−NRSO、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−S(O)及び−S(O)NR
から構成される群から選択され;
pは0、1及び2から選択される整数であり;
は(a)場合により−OH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基(例えば1から3個のフルオロ)で置換された−C1−6アルキル、(b)場合により1から3個のフルオロで置換された−C3−6シクロアルキル、並びに
【化2】

から構成される群から選択され;
nは0、1、2及び3から選択される整数であり;
は−H、−F、−OH及び場合により1から5個のフルオロで置換された−C1−3アルキル(例えば−CF)から構成される群から選択されるか;あるいは
とRは一緒になって炭素原子数3から8の単環又は二環系を表し、前記系は場合によりC1−3アルキル、OC1−3アルキル、F、OH、モノ、ジ又はトリフルオロC1−3アルキル並びにモノ、ジ及びトリフルオロC1−3アルコキシから選択される1から2個の基で置換されており;
Xは−O−、−S−及び−C(R14−から構成される群から選択され;
は−H、−C1−6アルキル及び−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択され;
は−H、−F及び−CHから構成される群から選択され;
は(a)場合により−OH、−NH、−CN、−O−C1−4アルキル及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基(例えば1から3個のフルオロ)で置換された−C1−6アルキル、(b)−C1−6アルキル−R10、(c)場合により−OH、−NH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−OC1−6アルキル、(d)場合によりメチル、−OH、−NH、−CF及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、(e)−NR、(f)−SO1−3アルキル、(g)−CO−R、(h)−OH、(i)=O(オキソ)、(j)−SH、(k)=S、(l)−SMe、(m)−Cl、(n)−CF、(o)−CN並びに(p)R10から構成される群から選択され;
6aは(1)場合によりR12及びR13から構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(2)−C1−6アルキル−R10、並びに(c)場合によりR12及びR13から構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択され;
は(a)−H、(b)場合により−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(c)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、(d)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−COC1−6アルキル、(e)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−COC3−6シクロアルキル、並びに(f)1個のNを含み、環の炭素原子を介して−NRの窒素と結合しており、場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された4から6員の飽和複素環から構成される群から選択され;
は(a)−H、(b)場合により−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、並びに(c)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択されるか;あるいは
とRは一緒になって−(CH3−5−を表し、RとRが結合している窒素と結合して4から6員の環を形成し、前記環は場合により−CH、−CF、−F及び−OHから構成される群から選択される置換基で置換されており;
は−H、−OH、−C1−3アルキル及び−Fから構成される群から選択され;
10は(a)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたアゼチジニル、(b)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたピロリジニル、(c)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたピペリジニル、並びに(d)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたモルホリニルから構成される群から選択される複素環であり;
Yは(a)1から4個のNと0から1個のSから選択される1から4個のヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、(b)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、(c)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された9員の二環式芳香族又は部分不飽和複素環、及び(d)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された10員の二環式芳香族又は部分不飽和複素環から構成される群から選択され;並びに
11は−F、−NH、−OH、−OC3−4シクロアルキル、場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−3アルキル、及び場合によりフェニル又は1から3個のフルオロで置換された−OC1−3アルキルから構成される群から選択され;
12は−CO、−C(O)NR、−N(R、−NRSO、−NRC(O)R、−NRC(O)NR、−S(O)NR、−S(O)、−F、−CF、フェニル、Hetcy及びZから構成される群から選択され;
13は−OH、−NH及び−Fから構成される群から選択され;
14は−H及び場合により1から3個のフルオロ基で置換された−C1−4アルキルから構成される群から選択され;
各R
a)−H、
b)各々場合により−OH、−OC1−4アルキル、−CN、−NH、−NHC1−4アルキル、及び−N(C1−4アルキル)及び−CFから構成される群から選択される1から2個の置換基で置換されており、並びに場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−4アルキル、−C2−4アルケニル及び−C2−4アルキニル、
c)Hetcy及びHetcy−C1−4アルキル−[Hetcy部分は場合により−F、−OH、−COH、−C1−4アルキル、−CO1−4アルキル、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)、−NHC(O)C1−4アルキル、オキソ、−C(O)NHC1−4アルキル及び−C(O)N(C1−4アルキル)から構成される群から選択される1から2個の置換基で炭素上で置換されており、並びに窒素が、存在する場合、場合により−C1−4アルキル及び−C1−4アシルから選択される基により窒素上で置換されており、並びにHetcy−C1−4アルキル−のアルキル部分は場合により−OH、−CN、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)及び1から3個のフルオロから構成される群から選択されるメンバーで置換されている。]、
d)Z及びZ−C1−4アルキル−[Z−C1−4アルキル−のアルキル部分は場合により−OH、−CN、−OC1−4アルキル、−NH、−NHC1−4アルキル、−N(C1−4アルキル)及び1から3個のフルオロから構成される群から選択される置換基で置換されている。]
から構成される群から独立して選択され;
各Rは−H並びに、場合によりNH、−OH、−F、−CN及び−CFから構成される群から選択される1から2個のメンバーで置換された−C1−3アルキルから構成される群から独立して選択され;
、R及びRは−H、−F、−Cl、−OH、−CN、場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−4アルキル、及び場合により1から3個のフルオロで置換された−OC1−4アルキルから各々独立して選択され;
Hetcyはアゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、テトラヒドロフラニル、及びβ−ラクタミル、δ−ラクタミル、γ−ラクタミル及びテトラヒドロピラニルから構成される群から選択され;

a)Z
b)1個の硫黄と2から4個の窒素から選択される3から5個のヘテロ原子を含み、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換されたC1−4アルキルから選択される基で置換された8員の芳香族又は部分不飽和オルト縮合二環系、並びに
c)3から4個の窒素原子を含み、環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換された9員の芳香族又は部分不飽和オルト縮合二環系
から構成される群から選択され;

a)2から4個の窒素原子を含み、環の1個の窒素が場合により−C1−4アルキル並びに、−NH、−OH、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換されており、並びに環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、
b)1個の酸素又は1個の硫黄と1から2個の窒素から選択される2から3個のヘテロ原子を含み、環の1個の窒素が場合により−C1−4アルキル並びに、−NH、−OH、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換されており、並びに環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換されたC1−4アルキルから選択される基で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、並びに
c)1から2個の窒素原子を含み、環の1個の窒素が場合により−C1−4アルキル並びに、−NH、−OH、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換されており、並びに環の1個の炭素が場合により=O、=S、−SMe、−NH、−CF、−Cl、−C1−4アルキル、並びに−NH、−OH、−OC1−4アルキル、−CN及び1から3個のフルオロから選択される基で置換された−C1−4アルキルから選択される基で置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環
から構成される群から選択される。}
により表される化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項2】
構造式I:
【化3】

[式中、
は(a)N、S及びOから選択される2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、並びに(c)−O−R6aから構成される群から選択され;
は(a)場合により−OH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(b)場合により1から3個のフルオロで置換された−C3−6シクロアルキル、並びに
【化4】

から構成される群から選択され;
nは0、1、2及び3から選択される整数であり;
は−H、−F、−OH及び場合により1から5個のフルオロで置換された−C1−3アルキル(例えば−CF)から構成される群から選択され;
は−H、−C1−4アルキル及び−C3−4シクロアルキルから構成される群から選択され;
は−H及び−CHから構成される群から選択され;並びに
は(a)場合により−OH、−NH及び1から3個のフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(b)−C1−3アルキル−R10、(c)場合により−OH、−NH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−OC1−6アルキル、(d)場合によりメチル、−OH、−NH、−CF及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、(e)−NR、(f)−SO1−3アルキル、(g)−CO−R、(h)オキソ並びに(i)−CNから構成される群から選択され;
6aは(a)場合により−OH、−NH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(b)−C1−3アルキル−R10、並びに(c)場合により−OH、−NH及びフルオロから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択され;
は(a)−H、(b)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、(c)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキル、(d)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−COC1−6アルキル、(e)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−COC3−6シクロアルキル、並びに(f)1個のNを含み、環の炭素原子を介して−NRの窒素と結合しており、並びに場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された4から6員の飽和複素環から構成される群から選択され;
は(a)−H、(b)場合により−F及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C1−6アルキル、並びに(c)場合によりメチル、−CF、−F、−NH及び−OHから構成される群から選択される1個以上の置換基で置換された−C3−6シクロアルキルから構成される群から選択され;
は−H、−C1−3アルキル及び−Fから構成される群から選択され;
10は(a)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたアゼチジニル、(b)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたピロリジニル、(c)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたピペリジニル、並びに(d)場合によりメチル、−F及び−OHの1個以上で置換されたモルホリニルから構成される群から選択され;並びに
Yは(a)1から4個のNと0から1個のSから選択される1から4個のヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、(b)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、及び(c)1から4個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された10員の二環式芳香族又は部分不飽和複素環から構成される群から選択され;並びに
11は−F、−NH、−OH、−OC3−4シクロアルキル、場合により1から3個のフルオロで置換された−C1−3アルキル、及び場合によりフェニル又は1から3個のフルオロで置換された−OC1−3アルキルから構成される群から選択される。]
により表される請求項1の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項3】
がi−プロピル、t−ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、
【化5】

から構成される群から選択される請求項1の化合物。
【請求項4】
が−H及び−CHから構成される群から選択される請求項3の化合物。
【請求項5】
が−H、−CH及び−CHCHから構成される群から選択され、並びにRが−Hである請求項4の化合物。
【請求項6】
Yが(a)1から2個のNと0から1個のSから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、及び(b)1から2個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環から選択される請求項5の化合物。
【請求項7】
11が−F又は不在である請求項6の化合物。
【請求項8】
Yが
【化6】

から選択される請求項7の化合物。
【請求項9】
が(a)2から4個のN、0から1個のO及び0から1個のSから選択される合計2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、並びに(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環から選択される請求項8の化合物。
【請求項10】
が、存在する場合、(a)−CR(Rは−H、−C1−3アルキル及び−Fから選択され、Rは−H、−C1−3アルキル及び−Fから選択され、並びにRは−H、−C1−3アルキル、−F、−NH及び−OHから選択されるか、あるいはRとRは一緒になってそれらが結合している炭素と共にシクロプロピル環を形成する。)、(b)−CH−R10、(c)場合により1から3個のフルオロで置換された−OCH、(d)−NR、(e)−SOCH及び(f)オキソから構成される群から選択される請求項9の化合物。
【請求項11】
が−C(CHOH、
【化7】

−CH、−CF及び−CH−R10から構成される群から選択される請求項10の化合物。
【請求項12】
10
【化8】

から選択され、Rは−F及び−OHから選択され、並びにRは−H、−F及び−OHから選択される請求項11の化合物。
【請求項13】
構造式Ia:
【化9】

をもつ請求項1の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項14】
が、
(a)2から4個のN、0から1個のO及び0から1個のSから選択される合計2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、及び場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、(c)場合によりR12で置換され、及び場合によりR13で置換された−C1−4アルキル、(d)−CO1−6アルキル、(e)−C(O)NR、(f)−CN、並びに(g)場合によりR12で置換され、及び場合によりR13で置換された−C3−6シクロアルキル
から構成される群から選択され;並びに
Yが(a)1から2個のNと0から1個のSから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、及び(b)1から2個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環から選択される
請求項13の化合物。
【請求項15】
構造式IIa:
【化10】

をもつ請求項1の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項16】
が、
(a)2から4個のN、0から1個のO及び0から1個のSから選択される合計2から4個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された5員の芳香族又は部分不飽和複素環、(b)N及びOから選択される1から2個のヘテロ原子を含み、場合によりRで置換された6員の芳香族又は部分不飽和複素環、(c)場合によりR12で置換され、及び場合によりR13で置換された−C1−4アルキル、(d)−OR6a(R6aは場合によりR13で置換された−C1−4アルキルである。)、(e)−CO1−6アルキル、(f)−C(O)NR、(g)−CN、並びに(h)場合によりR12で置換され、及び場合によりR13で置換された−C3−6シクロアルキル
から構成される群から選択され;並びに
Yが1から2個のNヘテロ原子を含み、場合によりR11で置換された6員の芳香族複素環である
請求項15の化合物。
【請求項17】
4−{[5−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)イソオキサゾール−3−イル]メチル}モルホリン;
2−[5−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)イソオキサゾール−3−イル]プロパン−2−オール;
4−{[3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]メチル}モルホリン;
2−[3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]プロパン−2−アミン;
[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]メタノール;
2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール;
2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリミジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール;及び
2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(1,3−チアゾール−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール
から構成される群から選択される請求項1の化合物及びその医薬的に許容可能な塩。
【請求項18】
(S)−4−{[5−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)イソオキサゾール−3−イル]メチル}モルホリン
である請求項17の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項19】
(S)−2−[5−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)イソオキサゾール−3−イル]プロパン−2−オール
である請求項17の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項20】
(S)−4−{[3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]メチル}モルホリン
である請求項17の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項21】
(S)−2−[3−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)−1,2,4−オキサジアゾール−5−イル]プロパン−2−アミン
である請求項17の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項22】
(S)−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]メタノール
である請求項17の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項23】
(S)−2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール
である請求項17の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項24】
(S)−2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(ピリジン−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール
である請求項17の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項25】
(S)−2−[6−(4−{1,2−ジメチル−1−[5−(1,3−チアゾール−2−イルメトキシ)ピリジン−2−イル]プロピル}フェニル)ピリダジン−3−イル]プロパン−2−オール
である請求項17の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項26】
治療有効量の請求項1の化合物と医薬的に許容可能な担体から成る医薬組成物。
【請求項27】
抗アテローム硬化性剤である他の活性剤を更に含有する請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
アテローム性動脈硬化症の治療方法であって、該治療を必要とする患者に治療有効量の請求項1の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項29】
アテローム硬化性疾患イベントの危険の予防又は低減方法であって、アテローム硬化性疾患イベントを発症する危険のある患者に予防有効量の請求項1の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項30】
喘息の治療方法であって、該治療を必要とする患者に治療有効量の請求項1の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項31】
喘息の予防方法であって、該処置を必要とする患者に予防有効量の請求項1の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項32】
COPDの治療方法であって、該治療を必要とする患者に治療有効量の請求項1の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項33】
哺乳動物におけるロイコトリエンの合成、作用又は放出の予防方法であって、前記哺乳動物に有効量の請求項1の化合物を投与することを含む前記方法。
【請求項34】
哺乳動物におけるロイコトリエンの合成、作用又は放出の予防用医薬の製造における請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項35】
前記哺乳動物がヒトである請求項34の使用。
【請求項36】
炎症症状の治療を必要とする哺乳動物における炎症症状の治療用医薬の製造における請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項37】
アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする患者におけるアテローム性動脈硬化症の治療用医薬の製造における請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項38】
アテローム硬化性疾患イベントを発症する危険のある患者におけるアテローム硬化性疾患イベントの危険の予防又は低減用医薬の製造における請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項39】
喘息の治療を必要とする患者における喘息の予防又は治療用医薬の製造における請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項40】
アレルギー性鼻炎の治療を必要とする患者におけるアレルギー性鼻炎の治療用医薬の製造における請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項41】
COPDの治療を必要とする患者におけるCOPDの治療用医薬の製造における請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩の使用。
【請求項42】
哺乳動物におけるロイコトリエンの合成、作用もしくは放出の予防、炎症症状の治療を必要とする哺乳動物における炎症症状の治療、アテローム性動脈硬化症の治療を必要とする患者におけるアテローム性動脈硬化症の治療、アテローム硬化性疾患イベントを発症する危険のある患者におけるアテローム硬化性疾患イベントの危険の予防もしくは低減、喘息の治療を必要とする患者における喘息の予防もしくは治療、アレルギー性鼻炎の治療を必要とする患者におけるアレルギー性鼻炎の治療、又はCOPDの治療を必要とする患者におけるCOPDの治療における使用のための請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【請求項43】
治療有効量の請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩と医薬的に許容可能な担体から成る医薬組成物。
【請求項44】
治療有効量の請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩と、少なくとも1種の他の治療活性剤と、医薬的に許容可能な担体から成る医薬組成物。
【請求項45】
哺乳動物におけるロイコトリエンの合成、作用又は放出の予防用医薬組成物であって、治療有効量の請求項1から25のいずれか一項に定義される式Iの化合物又はその医薬的に許容可能な塩と医薬的に許容可能な担体を含有する前記医薬組成物。

【公表番号】特表2009−533435(P2009−533435A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505400(P2009−505400)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/008583
【国際公開番号】WO2007/120574
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】