説明

ジェット式染織機械

【課題】従来のジェット式染織機械の両端間に生じる温度差及び温度勾配温度差を減じ、染織機械の全体間により均一で一定の温度プロフィールを維持すること。
【解決手段】ジェット式染織機械は、走行チューブと、無端布帛ロープのための無端走行路を形成するべく該走行チューブの両端部と連絡している貯留チャンバと、染液の噴流を前記無端布帛ロープ上に方向付けることにより前記無端走行路を周るよう無端布帛ロープを推進すべく作動可能なノズルと、前記貯留チャンバ及び走行チューブの双方を囲む外側容器とを備えている。該外側容器は貯留チャンバを画成しており、走行チューブが該外側容器内に配置されている。走行チューブ及び/又は貯留チャンバは、細長くてよく、水平に対して例えば3〜5°である数度の角度の傾斜に沿って配置されている。第2の走行チューブ及びノズルは外側容器を共用していて、第2の無端布帛ロープに対して第2の無端走行路を与えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェット式染織機械に関し、特にその改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ジェット式染織機械は、連続ロープ形態で置かれた織物及び布地もしくは布帛素材の湿式処理(染色)のために使用されるものであり、該布帛がジェットノズルによる染液と接触状態で染織機械の周りを循環し、このジェットノズルにより、高速で染液を布帛上に向けると共に該布帛を走行方向に沿って進行させる。
【0003】
従来、かかる染織機械は、走行のために布帛が通過するノズルと、該ノズルの出口に接続された走行チューブであって、布帛が該走行チューブに沿って走行すると共に該走行チューブ内で染液に浸漬される前記走行チューブと、該走行チューブからの布帛が通って入る主貯留チャンバであって、布帛が過剰の染液をそこから排出しながら該主貯留チャンバ内に集積する、前記主貯留チャンバと、染織機械を通る次のサイクルのために、該主貯留チャンバからノズルの入口へと布帛を前方に送るローラとを備えている。走行チューブ及び貯留チャンバは実質的に水平に配置されており、ノズルは布帛を下方に方向付け、そしてノズル及び走行チューブは一緒にL形構造を形成している。
【0004】
類似の染織機械は、米国特許第4,019,351号明細書及び特開平6−272152号公報に記載されている。
【0005】
この形式の細長い染織機械は、長い長さの布帛が集積するのを可能とすることにより単一染織機械で処理できる布帛の量を最大にする。
【0006】
織物、特に、ポリエステル及びマイクロファイバー布帛のように軽量素材であり且つしわ跡にデリケートな織物については、染色温度と染液及び布帛間の交流とは染色過程の結果及び質に対して重大である。しかしながら、細長い染織機械は長いスパンを占めるので、染織機械の一端における温度が他端における温度とは相当に異なる可能性がある。また、布帛の長さが長いことは、容認可能な時間間隔内に染液と布帛との間の所望の交流を実現することを難しくし、その場合、不適切な布帛及び染液の交流によりしわの量が増してくる。布帛は、2分半未満の一巡時間を与えるよう高速度で通常循環される。
【発明の開示】
【0007】
本発明の第1の形態は、走行チューブと、無端布帛ロープのための無端走行路を形成するべく該走行チューブの両端部と連絡している貯留チャンバと、染液の噴流を前記無端布帛ロープ上に方向付けることにより前記無端走行路を周るよう無端布帛ロープを推進すべく作動可能なノズルと、前記貯留チャンバ及び前記走行チューブの双方を囲む外側容器とを備える布帛染織機械に向けられている。
【0008】
多くのパラメータが染色プロセスの質に影響を与えるが、その一つは温度である。染色は、通常、例えば布帛に利用される染液を加熱することにより、高い温度で行われる。従来のジェット式染織機械は、むき出しの走行チューブ及び貯留チャンバを有しており、これは、温度差及び温度勾配が染織機械の両端間に生じるのを可能とし、そしてかなりの長さのある細長いものであることが一般的である。この不均一な温度は染色品質に対して有害である。本発明は、この問題を、同じ外側容器内に走行チューブ及び貯留チャンバの双方を収容することにより、解決することを提案しており、このようにすることは、温度差を減じると共に染織機械の全体間により均一で一定の温度プロフィールを維持する役目を果たしている。
【0009】
特定の実施形態によると、外側容器は貯留チャンバを画成しており、走行チューブを該外側容器内に配置せしめている。この構造は、貯留チャンバ自体を外側容器として使用すると共に従来の外側位置の代わりに走行チューブをその内側に配置することにより、追加の外側容器の必要性が排除されるので、本発明を実行するための特に簡単な方法である。
【0010】
かかる構造において、走行チューブは外側容器の下方部分内に配置することができる。これは、外側容器がノズルへの再循環のため貯留チャンバ/外側容器の底部に集まる染液のある量に取って代わるので、必要とされる染液の総容積が低下し浴比をより小さくすることができる点で有利である。
【0011】
染織機械は、走行チューブの上方に配置された複数の棒の配列体を更に備えることができ、該配列体が貯留チャンバの下方境界を画定する。該棒は、外側容器の底部にある走行チューブから貯留チャンバを区分すると共に、貯留チャンバ内の布帛から分かれた過剰の染液が集合及びノズルへの再循環のために外側容器の底部に通って流れるのを可能にしている。
【0012】
該棒は低摩擦材料の被覆を備えている。この被覆は、該棒と布帛との間の摩擦を減少させて、布帛が無端走行路に沿って通過するのを容易にすると共に、棒との接触によりさもなければ生じるかも可能性のある布帛に関する磨耗及び裂け傷も減少させる。
【0013】
特定の実施形態によると、走行チューブの端部は、ノズルの出口に接続されていると共に、ノズルから下向きに傾斜している。これは、重力が布帛ロープの推進に寄与することを可能とし、この寄与は、ノズルにより与えられる染液噴流の出力を増大せしめることなく布帛の走行速度が増加させる。
【0014】
走行チューブは、水平に対して少なくとも3°の角度で下方に傾斜していてよい。例えば、走行チューブは、水平に対して3〜5°の角度で下方に傾斜している。この角度範囲は、大きな傾斜を有することによる重力の有効な寄与を最大化することと、布帛を浸漬するために走行チューブ内に染液の十分な深さ及び量を提供することとの間の妥協の結果である。
【0015】
貯留チャンバは、該貯留チャンバを通る無端布帛ロープの走行の方向に関して上向きに傾斜していてよい。上向きに傾斜する貯留チャンバは、該貯留チャンバにある布帛からの染液の分離を向上させると共に、分離された染液が貯留チャンバの下端部に流れるのでその集合を向上させる。例えば、貯留チャンバは水平に対して3〜5°の角度で上向きに傾斜していてよい。
【0016】
傾斜している構成要素をもつ実施形態において、走行チューブ及び貯留チャンバは実質的に平行であってよい。これは、染織機械の総体積を減じると共に、外側容器の容積を最小にする。
【0017】
染織機械は、出入ドアを更に備えていて、該ドアを介して染織機械の内部に出入り可能であり、該ドアは、外側容器の端壁に配置されていると共に実質的に垂直の面に配置されている。ドアが配置されている外側容器の端壁は高くなっている。外側容器は、ドアの垂直の面に対して実質的に直交していない端壁の領域にある非水平の長手方向軸線を有していてよい。このようにして配置されたドアは、染織機械の内部への容易且つ安全な出入りを可能にする。特に、走行チューブ及び貯留チャンバが傾斜している染織機械の場合、出入ドアは地上からかなり上方の高さにあるので、角度を付けることは出入りや使用の簡易性を向上させる。
【0018】
更なる実施形態において、染織機械は、第2の走行チューブを備えていて、貯留チャンバは該第2の走行チューブの両端と連絡して無端走行チューブのための第2の無端走行路を形成しており、染織機械は、更に、無端布帛ロープ上に染液の噴流を向けることにより第2の無端走行路を周って無端布帛ロープを推進させるよう作動可能な第2のノズルを備えており、外側容器は第2の走行チューブも囲んでいる。第1の走行チューブ及びノズルと同じ貯留チャンバを共用する第2の走行チューブ及びノズルは、染織機械の大きさを増すことなくその容量を2倍にすると共に、2つの別個の染織機械を有する場合よりもコストがかからず、また、必要とする構成要素が少ない。また、浴比は、容量が2倍の染織機械については、それぞれが1本の布帛ロープを染色する2つの別個の染織機械の場合よりも小さくすることができる。
【0019】
単一走行路をもつ染織機械に関しては、外側容器は、貯留チャンバを画成しており、走行チューブ及び第2の走行チューブの双方が外側容器内に収容される。前記走行チューブ及び第2の走行チューブは前記外側容器の下方部分内に配置されていてよい。
【0020】
布帛染織機械は、更に、貯留チャンバを2つの部分に分ける仕切板を備えており、該部分の1つは無端走行路内に含まれており、該部分の1つは第2の無端走行路内に含まれている。これは、2本の布帛ロープが貯留チャンバ内で縺れないようにする。
【0021】
走行チューブ又は各走行チューブの少なくとも一部は矩形横断面を有している。ノズル内の染液の噴流の利用により、布帛が捩れてそして旋回する傾向があり、これは望ましくない。矩形の走行チューブは、従来の円形横断面の走行チューブと比較してこの作用を軽減する。特に、走行チューブ又は各走行チューブが矩形横断面を有しており、該矩形横断面のところで該走行チューブ又は各走行チューブがその関連ノズルの出口に接続されることができる。これは、そのソースに近い捩れ及び螺旋作用に耐えるので、それはもっと効果的に軽減される。
【0022】
本発明をもっと良く理解するため且つ本発明がどのようにして実施されるのかを示すため、次に、添付図面を一例として参照し説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、従来の高速ジェット式染織機械の外部側面図を示しており、無端ロープ状の布帛はノズルにより該布帛上に向けられる染液のジェットもしくは噴流によってこの染織機械を通り循環される。染液は染織機械内で再循環されるので、布帛に当てられ、次いでそこから切られた染液はノズルに戻され供給される。
【0024】
染織機械1は、水平に配設された大径パイプもしくは筒形容器の形態である主貯留チャンバ11を備えている。該貯留チャンバの一端部は、上向きに傾斜していると共に、管状ノズル12の入口に結合する出口を有している。ノズル12は、その直径が貯留チャンバの直径よりも小さいが同様に筒形であると共に、実質的に下方向に向けられている。布帛は複数のノズルすき間もしくは噴射孔を備えたノズル12を通り抜けることができ、該ノズルすき間もしくは噴射孔から高速噴流の染液がノズル内部の布帛上に下向き下方に向けられ、かくして布帛が前方循環方向にノズルを通り推進される。
【0025】
ノズル12は、その出口で、貯留チャンバ11の下に実質的に水平に配設された走行チューブ13に接続されており、該走行チューブは貯留チャンバよりも小さな直径を有している。ノズル12から遠くにある走行チューブ13の端部は、上向きに転向して、ノズル12から遠くにある貯留チャンバ11の端部に接続されている。従って、主貯留チャンバ11、ノズル12及び走行チューブ13は一緒になって、直径が変化する連続的な細長い管状リングの形態の容器を形成する。これにより該容器を通る無端走行路が形成され、連続ロープの布帛は該無端走行路に沿って染色のため循環することができる。
【0026】
ノズル12に最も近い貯留チャンバ11の端部にはドア10が設けられていて、布帛を挿入したり除去したりできるように染織機械1の内部への出入りを認めている。染織機械1は更に、貯留チャンバ11の内部においてノズル12への入口の若干上流側にある位置14に配置された回転ローラを含んでいる。このローラの回転軸心は、布帛ロープの通路の面に対して直交しているので、布帛ロープは、ローラの外側を通り越すと共に該ローラにより引っ張られて、貯留チャンバ11からノズル12内に供給される。
【0027】
また、染織機械10は、布帛から排水される染液を集めてそれを該布帛上に噴射すべくノズル12に供給する染液循環系もまた含んでいる。布帛が走行チューブを通るときに染液に浸漬できるように、所定量の染液が走行チューブ13内に入っている。次いで、染液は、それが貯留チャンバ11内にある間に布帛から排水されて、貯留チャンバの底部から集められポンプでノズル12に戻される。
【0028】
布帛の走行速度は、布帛についての所要染色サイクル時間と共に、染織機械内を循環できる布帛の最高長さを律則する。従って、特に軽量布帛については、容量は比較的に低くすることができる。走行速度は、染織機械の総出力容量を増すことを目的として増大することができる。走行速度を増すために、ノズルは、図1のように、ほぼ垂直に位置付けられていて、布帛を下方に推進する。
【0029】
しかしながら、高速度の場合には、布帛と染液との間の液置換のために十分な時間を認める必要があるであろう。これは、主として、布帛が貯留容器11へと移される前に約4〜5秒浸漬される走行チューブ13内で起こる。走行チューブは、その全長の上に染液の容器を維持するために水平に配置されている。垂直のノズル12および水平の走行チューブ13の組合せは長いL形構造を構成する。
【0030】
布帛を走行チューブ13内に浸漬した後、布帛は上方に走行して主貯留チャンバ11内に入る。浴比として知られている、布帛の重量当たりの水消費量を減じるために、染液は、貯留チャンバ11内で折り重なって集積される布帛から排出されることにより、貯留チャンバ11内で布帛から分離される。分離された染液は、循環パイプ部分に入り、ポンプによりノズル12に戻される。集積された布帛が貯留チャンバ11の前端に向かい一旦前送りされると、該布帛は、ローラにより引き取られ、別の染液置換サイクルのためノズル12に送り込まれる。
【0031】
布帛上への染液の噴流は、通常、毎分200〜300mの範囲にある搬送速度を結果的にもたらす。これは、循環時間、浴比及び布帛の円滑走行のバランスを保つために、図1の染織機械のようなもので常軌的に達成される最も高い適切な速度である。染色プロセスが行われる温度もまた重要であり、染液は、例えば染液循環パイプ系に組み込まれている熱交換器を通ることにより、しばしば加熱される。
【0032】
図2は、本発明の実施形態に基づいたジェット式染織機械の断面側面図を示している。この染織機械3は、図1に示した従来の染織機械のように順番に配列された主貯留チャンバ36、ローラ32、ノズル38及び走行チューブ39を備えている。無端の布帛ロープの染色は、上述した従来の方法で行われ、布帛の走行方向は矢印で示す通りである。しかしながら、この染織機械3は、染色プロセスの改善を狙って多数の追加的な特徴を含んでいる。
【0033】
第1に、一方が他方の上になって配設された細長い貯留チャンバ36及び走行チューブ39は、これら構成要素(並びに、この実施例ではノズル38及びローラ32)を囲む共通の外側容器内に収容されている。この構造は、図1における染織機械のように貯留チャンバ及び走行チューブ等が外部に別々にある染織機械において、貯留チャンバ及び走行チューブの間に並びにそれらの異なる端部の間に発生しうる温度差の問題の解決を扱っている。温度差を減じるか又は無くすことにより染色プロセスの質が改善され、染色結果は温度に左右されるのでより一様な染色布帛がもたらされる。
【0034】
図2の実施形態において、外側容器35及び貯留チャンバ36は同一の管状壁により画定されており、また、走行チューブ39はその管状壁の内側に配置されている。外側容器35及び貯留チャンバ36のために共通の壁を使用することにより、染織機械3を製作するのに要する材料を少なくして簡単な構造が提供される。しかしながら、貯留チャンバ36及び走行チューブ39の双方は、代案として、貯留チャンバ36又は走行チューブ39のどちらの一部も形成しない別個の外側容器35の内側に配置される別々の構造とすることができる。このような構図は、貯留チャンバ36及び走行チューブ39の双方における染液が2つの壁により外部環境から隔てられるので、温度の均一性を改善することができる。
【0035】
外側容器が貯留チャンバを画成すると共に走行チューブ39が外側容器の下方部分内に配置される前者の構造の更なる利点は、走行チューブが貯留チャンバ/外側容器の底部に集まる染液を移動させるので、もっと少ない量の染液を使用することを可能とし、それにより染織機械の浴比を減じることである。浴比が低いことは、少ない染液を用いて同じ重量の布帛を染色できることなので、費用効率が高い。
【0036】
温度差を減じるのはもちろんのこと、従来の染織機械において可能であるよりも高い布帛循環速度を実現することが望ましい。そのために、ノズルからの染液噴流により発生される推進力の増大を用いることができるが、増大により浴比が変わり、これは望ましくない。また、より高い圧力の染液噴流は、布帛と染液との間に、布帛の表面組織及び構成を損傷させうる大きな摩擦を生じさせる。
【0037】
その結果、本発明は、従来の水平走行チューブに代わって、ノズル38の出口から下向き傾斜に沿って走行チューブ39を配設することにより、この問題を解決することを提案している。
【0038】
走行チューブ39の下向き傾斜は、重力が走行チューブ39に沿う布帛ロープ34の移動を助成すのを許容し、そのためノズル38により与えられる染液噴流の圧力を増すことなく布帛走行速度を上昇させる。しかしながら、下向き傾斜の角度は、重力により与えられる利点を、布帛での染液の置換のために十分な量の染液を走行チューブ39内に維持する必要性と釣り合わせるよう、注意深く選択されねばならない。
【0039】
水平に対して3°以上の角度が特に有利であり、走行チューブ39の下向き傾斜の水平に対する最適の角度は専ら3〜5°の範囲内にあることが分かった。
【0040】
貯留チャンバ36もまた水平に対して小さな角度で配置されることが有効であるが、布帛ロープ34の走行方向に関して上向きに傾斜している、即ち、ローラ32及びノズル38に至るまで傾斜している。3〜5°の範囲が何度も言うが有利である。また、貯留チャンバ36は走行チューブ39と平行に配置することができる。この配置は、外側容器35の容積を最小化すると共に、染織機械により全体として占められる総スペースを最小化する。貯留チャンバ36についての上向き傾斜は、染液が布帛から分離することを容易にすると共に、切頭円錐体が貯留チャンバ36の後端部37に集まることも容易にする。従って、染液の分離は、一層効果的になると共により早く起こり、そして分離された染液は循環パイプ部分内に一層容易に集まることができる。しかしながら、傾斜があまり急峻であってはならず、その理由は、布帛が貯留チャンバ36を通り上向きに走行することを要するので、急峻な角度ではそれが難しいからである。
【0041】
図3は、図2の染織機械3の外部側面図を示しており、外側容器35が全構成要素をどのようにして囲むかを示している。細長い外側容器35は、端部近くで脚部22上に支持されており、該脚部はノズルに最も近い端部のところで長くなっていて、走行チューブ及び貯留チャンバに所望の傾斜を与えている。染織機械はまた外側容器35にドア21を備えている。このドア21は、染織機械の内部への出入りを認めると共に、染色のために布帛が染織機械3内に挿入され、そして染色後に取り出されることを可能にしている。ドア21は、ノズルが配置される染織機械の端部の最も近くで外側容器35の端壁に設けられている。図1の染織機械のような従来の染織機械において、出入ドアは貯留チャンバの端壁に同様に配置されているが、その場合、端壁は貯留チャンバの長手方向軸心に対してその端部で実質的に直交している。しかしながら、かかる構成が本発明の実施形態に基づく傾斜構造を有する染織機械で採用されると、ドア21は、傾斜に起因する染織機械のノズル端の高さのためにアクセスするのが難しいであろう。従って、本発明の実施形態においては、ドアをノズル近くで染織機械に保持するが、端壁/ドアを外側容器の端部分の長手方向軸線に直交する面に対してある角度で配置することを提案しているので、ドアはそうではない場合よりも垂直により近いであろう。これは、出入りがもっと容易で操作し易いドアを提供する。特定の実施形態によると、ドア21は垂直面内に配置されている。
【0042】
更なる実施形態において、染織機械を2本の無端布帛ロープの同時処理が可能に構成することにより染織機械の容量を増すことが提案されている。これは、貯留チャンバの下方に並んで配設される2つの走行チューブ及び2つのノズルを設けることにより実現可能である。ノズル及び走行チューブの各アセンブリは別個の布帛ロープに対応している。しかしながら、ノズル及び走行チューブの2つのアセンブリは共通の貯留チャンバを共用している。垂直の長手方向仕切板は、貯留チャンバを部分的に分けるために設けられることができる。これは、2本の循環ロープを隔てると共に、それらが貯留チャンバ内にありながら互いに縺れるのを防止している。
【0043】
図4は、この実施形態による染織機械を、外側容器に沿った中間点で、横断面図で示している。この図は、2つの走行チューブ39が外側容器35の底部分において互いに隣接して配置されることを示しており、外側容器35の上方部分は2つの走行チューブにより共用される貯留チャンバ36を画成している。貯留チャンバ36の中心に沿って配置された垂直仕切板もしくは分離板42は、貯留チャンバを左側部分41Aと右側部分41Bとに分けて、各走行チューブ39について貯留チャンバ部分をもたらしている。貯留チャンバ部分41A及び41Bの下方境界は、離間した金属棒43の配列体又は格子に並んでいる。これらの金属棒は、布帛を磨耗もしくは損傷させるかもしれない該金属棒と布帛との間の摩擦を減じるために、テフロン(RTM)或いは類似の非膠着性又は低摩擦材料で被覆されていることが好ましい。こうして金属棒43は貯留チャンバ36と走行チューブ39との間に位置している。金属棒43は、染液循環系(図示せず)による集積及び再循環のため布帛から分かれた染液が滴下して外側容器の下方部分に入るのを許容しながら、循環する布帛を貯留チャンバ内に留めておく。この染液循環系は、染液を2つのノズルに供給するのに単一のポンプを使用していて、染色パラメータが各布帛ロープについて同じに維持されることを確実にする。これは、共通の量の染液が双方の布帛ロープについて使用されるのを可能にする共用の貯留チャンバにより向上させられる。従って、双方の布帛ロープについて同じ染色効果が得られると共に、容量を倍にしながら布帛ロープ間の質が維持される。
【0044】
被覆された金属棒43は、ちょうど1つのノズル及び走行チューブのアセンブリを備えた染織機械においても採用されうる。
【0045】
図5は、平行なノズル及び走行チューブのアセンブリの一部の斜視図を示している。この実施形態において、2つのノズル38は単一のノズル要素50内に画成されている。しかしながら、別個の要素が使用されうる。これらのノズルは、布帛が通過する円形の開口である。各開口の壁に画成された隙間は染液の噴流を布帛ロープ上に向けて、該布帛ロープを推進して関連の走行チューブ39内に入れる。走行チューブ39は、関連のノズル38の出口に接続されたパイプもしくはチューブである。該パイプは、それらの全長(図示せず)に沿って円形横断面を有していてよい。
【0046】
しかしながら、布帛を推進する染液噴流、即ち、高走行速度を使用することは若干の捩りを布帛に与える傾向がある。長期的に見ると、問題を生じさせうる。従って、捩りを最小にすることが望ましい。
【0047】
本発明の実施形態は、従来の円形横断面のパイプの代わりに矩形横断面(この場合、矩形は正方形を含む)をもつ走行チューブの使用を提案することによってこの問題の処理に努めている。矩形走行チューブは、染液噴流により招来される布帛ロープの螺旋運動を減じ、従って、効果的に走行布帛の捩りを減少させる。図5は、2つの平行ノズル38の出口に接続された矩形横断面の2本の平行走行チューブ39を示している。この矩形横断面は、走行チューブ39の全部又は一部51にわたり延びることができ、該全部又は一部は次いで染織機械の他の部分との容易な接続(貯留チャンバ36への接続)のために円形パイプ52に結合されうる。
【0048】
また、矩形横断面は、1つだけの走行チューブ及びノズルを有する染織機械において使用することもできる。
【0049】
同様に、上に述べた布帛染織機械の他の特徴は、諸特徴のその他なしに採用されることができる。例えば、傾斜走行チューブ及び/又は傾斜貯留チャンバは、これら構成要素を収容する外側容器を含まない染織機械において使用されることができる。走行チューブ及び貯留チャンバのうちの一方のみが傾斜していてもよい。染織機械の概略的な長手方向軸線に対して角度が付いた出入ドア、又は垂直にほぼ向かい角度が付いたドアを使用することにより、さもなければドアに手が届くのが難しいどんな染織機械の内部にも出入りする容易性を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の高速ジェット式布帛染織機械の外部側面図を示している。
【図2】本発明の実施形態によるジェット式布帛染織機械の断面側面図を示している。
【図3】図2のジェット式布帛染織機械の外部側面図を示している。
【図4】本発明の更なる実施形態によるジェット式布帛染織機械の横断面を示している。
【図5】本発明の実施形態による二連式ノズルアセンブリの斜視図を示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行チューブ(39)と、
無端布帛ロープ(34)のための無端走行路を形成するべく該走行チューブの両端部と連絡している貯留チャンバ(36)と、
染液の噴流を前記無端布帛ロープ上に方向付けることにより前記無端走行路を周るよう無端布帛ロープを推進すべく作動可能なノズル(38)と、
前記貯留チャンバ及び前記走行チューブの双方を囲む外側容器(35)と、
を備える布帛染織機械(3)。
【請求項2】
前記外側容器が前記貯留チャンバを画成しており、前記走行チューブが該外側容器内に配置されている、請求項1に記載の布帛染織機械。
【請求項3】
前記走行チューブは前記外側容器の下方部分内に配置されている、請求項2に記載の布帛染織機械。
【請求項4】
前記走行チューブの上方に配置された複数の棒(43)の配列体を更に備えており、該配列体が前記貯留チャンバの下方境界を画定している、請求項3に記載の布帛染織機械。
【請求項5】
前記棒は低摩擦材料の被覆を備えている、請求項4に記載の布帛染織機械。
【請求項6】
前記走行チューブの端部は、前記ノズルの出口に接続されていると共に、前記ノズルから下向きに傾斜している、請求項1〜5のいずれか1項に記載の布帛染織機械。
【請求項7】
前記走行チューブは水平に対して少なくとも3°の角度で下方に傾斜している、請求項6に記載の布帛染織機械。
【請求項8】
前記走行チューブは水平に対して3〜5°の角度で下方に傾斜している、請求項6に記載の布帛染織機械。
【請求項9】
前記貯留チャンバは、該貯留チャンバを通る無端布帛ロープの走行の方向に関して上向きに傾斜している、請求項1〜8のいずれか1項に記載の布帛染織機械。
【請求項10】
前記貯留チャンバは水平に対して3〜5°の角度で上向き傾斜している、請求項9に記載の布帛染織機械。
【請求項11】
前記走行チューブ及び前記貯留チャンバは実質的に平行である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の布帛染織機械。
【請求項12】
出入ドア(21)を更に備えていて、該ドアを介して前記染織機械の内部に出入り可能であり、該ドアは、前記外側容器の端壁に配置されていると共に実質的に垂直の面に配置されている、請求項1〜11のいずれか1項に記載の布帛染織機械。
【請求項13】
前記ドアが配置されている前記外側容器の前記端壁は高くなっている、請求項12に記載の布帛染織機械。
【請求項14】
前記外側容器は、前記ドアの垂直の面に対して実質的に直交していない前記端壁の領域にある非水平の長手方向軸線を有している、請求項12又は13に記載の布帛染織機械。
【請求項15】
更に、第2の走行チューブ(39)を備えていて、前記貯留チャンバは該第2の走行チューブの両端と連絡して無端走行チューブのための第2の無端走行路を形成しており、
前記無端布帛ロープ上に染液の噴流を向けることにより前記第2の無端走行路を周って無端布帛ロープを推進させるよう作動可能な第2のノズル(38)を備えており、
前記外側容器は前記第2の走行チューブも囲んでいる、請求項1〜14のいずれか1項に記載の布帛染織機械。
【請求項16】
前記外側容器は、前記貯留チャンバを画成しており、前記走行チューブ及び前記第2の走行チューブの双方は、前記外側容器内に収容されている、請求項15に記載の布帛染織機械。
【請求項17】
前記走行チューブ及び前記第2の走行チューブは前記外側容器の下方部分内に配置されている、請求項16に記載の布帛染織機械。
【請求項18】
前記貯留チャンバを2つの部分(41A,41B)に分ける仕切板(42)を更に備えており、該部分の1つは前記無端走行路内に含まれており、該部分の1つは前記第2の無端走行路内に含まれている、請求項15〜17のいずれか1項に記載の布帛染織機械。
【請求項19】
前記走行チューブ又は各走行チューブの少なくとも一部は矩形横断面を有している、請求項1〜18のいずれか1項に記載の布帛染織機械。
【請求項20】
前記走行チューブ又は各走行チューブは矩形横断面を有しており、該矩形横断面のところで該前記走行チューブ又は各走行チューブはそれが関連したノズルの出口に接続されている、請求項19に記載の布帛染織機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−266826(P2008−266826A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−110564(P2007−110564)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(506003668)ファルマー・インヴェストメンツ・リミテッド (5)
【Fターム(参考)】