説明

ジョイント部材および建設機械用のキャブ

【課題】中空部材が曲げ変形しようとしたときに発生しやすい応力集中を回避して中空部材の破損を抑制できるジョイント部材を提供する。
【解決手段】ジョイント本体22に、接続相手の中空部材17,18に嵌着する差込部23を一体成形する。この差込部23は、少なくとも先端部が中空部材17,18の許容曲げ半径以上の大きな半径の円弧に沿った先細形状の外形を有する側面24を備えている。この側面24は、中空部材17,18の許容曲げ半径の円弧に沿って円弧状に成形した曲面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空部材を接続するジョイント部材およびこのジョイント部材を用いた建設機械用のキャブに関する。
【背景技術】
【0002】
骨組みを有する建設機械用のキャブにおいては、その骨組みの連結部に高応力が発生しやすいため、連結部に剛性の高いジョイント部材が使用される。例えば、そのジョイント部材に鋳物製継手が使用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、図5に示されるように従来のジョイント部材1の形状は、ジョイント本体2の一側部および他側部に差込部3が形成されているが、これらの差込部3は、接続相手となるポスト・メンバー等の中空部材4の内側面に沿ったストレート形状を有しており、キャブに過大な外力が生じて、中空部材4が曲げ変形した時に、差込部3の先端の角部3aが中空部材4の局所と極小面積で接触し、中空部材4に応力集中が発生する。
【特許文献1】特開2000−198469号公報(第3頁、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来のジョイント部材1の差込部3は、相手の中空部材4の内側形状に沿わした形状であるため、キャブに過大な外力が生じ、中空部材4が曲げ変形しようとしたときに、差込部3の先端の角部3aと接触する中空部材4の箇所に応力集中が発生し、中空部材4が破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、中空部材が曲げ変形しようとしたときに発生しやすい応力集中を回避して中空部材の破損を抑制できるジョイント部材およびこのジョイント部材を用いた建設機械用のキャブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載された発明は、ジョイント本体と、このジョイント本体に一体成形されて接続相手の中空部材に嵌着される差込部とを具備し、この差込部は、少なくとも先端部が中空部材の許容曲げ半径以上の大きな半径の円弧に沿った先細形状の外形を有するジョイント部材である。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のジョイント部材における差込部の外形が、中空部材の許容曲げ半径の円弧に沿って円弧状に成形されたものである。
【0008】
請求項3に記載された発明は、請求項1記載のジョイント部材における差込部の外形が、中空部材の許容曲げ半径の円弧に近似する直線状に成形されたものである。
【0009】
請求項4に記載された発明は、請求項1乃至3のいずれか記載のジョイント部材と、このジョイント部材を用いてフレーム状に接続された中空部材とを具備した建設機械用のキャブである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された発明によれば、ジョイント本体と一体成形の差込部に嵌着された中空部材が曲げ変形するにしたがって、少なくとも先端部が中空部材の許容曲げ半径以上の大きな半径の円弧に沿った先細形状の外形を有する差込部と中空部材との接触面積が拡大してゆくので、中空部材が曲げ変形しようとしたときに発生しやすい応力集中を回避して中空部材の破損を抑制できる。
【0011】
請求項2に記載された発明によれば、中空部材の許容曲げ半径の円弧に沿って円弧状に成形された差込部の外形は、中空部材が曲げ変形しようとしたときに発生しやすい応力集中を効果的に回避できる。
【0012】
請求項3に記載された発明によれば、中空部材の許容曲げ半径の円弧に近似する直線状に成形された差込部の外形は、その成形を容易にできる。
【0013】
請求項4に記載された発明によれば、上記のジョイント部材を用いて建設機械用キャブの中空部材を接続したので、建設機械転倒時などのキャブに荷重が作用したときに中空部材が曲げ変形するにしたがって、中空部材の許容曲げ半径の円弧に沿った先細形状の外形を有する差込部と中空部材との接触面積が拡大してゆくので、中空部材に応力集中が発生することを防止でき、応力集中による中空部材の破損を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を、図1乃至図4に示された実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
図3に示される建設機械11は、下部走行体12上に旋回軸受部13を介して上部旋回体14が旋回可能に設けられ、この上部旋回体14に作業装置15およびキャブ16が搭載された油圧ショベルである。
【0016】
図4に示されるように、前記建設機械用のキャブ16は、異形鋼管で成形された前部柱状の中空部材17と、後部柱形の中空部材18と、後部横梁状の中空部材19とが、ジョイント部材21を用いてフレーム状に接続されたものである。
【0017】
図1は、前記ジョイント部材21の一実施の形態を示し、ジョイント本体22と、このジョイント本体22に一体成形されて接続相手の中空部材17,18,19(ただし、中空部材19は図に現われないので、以下、「中空部材17,18」という)に嵌着される差込部23とを具備し、この差込部23は、中空部材17,18の許容曲げ半径(または破断曲げ半径)の円弧に沿った先細形状の外形を有する側面24を備えている。
【0018】
このジョイント部材21における差込部23の側面24は、中空部材17,18の許容曲げ半径の円弧に沿って円弧状に成形された曲面であり、中空部材17,18の差込口から奥に入るにしたがって中空部材17,18の内面から離れるように形成されている。
【0019】
ジョイント部材21と中空部材17,18は、中空部材17,18の差込口で相互に突合わされ、その差込口に沿って溶接した溶接部25により固定されている。
【0020】
図2は、前記ジョイント部材21の他の実施の形態を示し、ジョイント本体22と、このジョイント本体22に一体成形されて接続相手の中空部材17,18に嵌着される差込部23とを具備し、この差込部23は、少なくとも先端部が中空部材17,18の許容曲げ半径(または破断曲げ半径)以上の大きな半径の円弧に沿った先細形状の外形を有する側面26を備えている。
【0021】
このジョイント部材21における差込部23の側面26は、中空部材17,18の許容曲げ半径の円弧に近似する直線状に成形されたテーパ面である。
【0022】
要するに、ジョイント部材21の差込部23の軸方向断面形状は、曲線でも直線でも良いが、接続相手となる中空部材17,18の許容曲げ半径に近似する形状とし、最も効率的には中空部材17,18の許容曲げ半径の円弧に沿った円弧形状が望ましい。
【0023】
なお、異形鋼管で成形された中空部材17,18は、軸方向断面の角度によって許容曲げ半径が異なるので、ジョイント部材21における差込部23の側面24,26も、軸方向断面の角度に応じて形状が異なる。
【0024】
次に、図示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0025】
図1または図2に示されるように、中空部材に曲げ応力が作用すると、過大な外力による中空部材の変形が、局所に集中せずに広範囲にわたって起きるため、中空部材の破損を抑えることができる。
【0026】
図1または図2に示された実施の形態によれば、ジョイント本体22と一体成形の差込部23に嵌着された中空部材17,18が曲げ変形するにしたがって、少なくとも先端部が中空部材17,18の許容曲げ半径以上の大きな半径の円弧に沿った先細形状の外形を有する差込部23と中空部材17,18との接触面積が拡大してゆくので、中空部材17,18が曲げ変形しようとしたときに発生しやすい応力集中を回避して中空部材17,18の破損を抑制できる。
【0027】
特に、図1に示された実施の形態によれば、中空部材17,18の許容曲げ半径の円弧に沿って円弧状に成形された差込部23の外形は、中空部材17,18が曲げ変形しようとしたときに発生しやすい応力集中を効果的に回避できる。
【0028】
また、図2に示された実施の形態によれば、中空部材17,18の許容曲げ半径の円弧に近似する直線状に成形された差込部23の外形は、その成形を容易にできる。
【0029】
さらに、図3および図4に示されるように、上記のジョイント部材21を用いて建設機械用キャブ16の中空部材17,18,19を接続したので、図1または図2に示されるように建設機械転倒時などのキャブ16に荷重が作用したときに中空部材17,18が曲げ変形するにしたがって、中空部材17,18の許容曲げ半径の円弧に沿った先細形状の外形を有する差込部23と中空部材17,18との接触面積が拡大してゆくので、中空部材17,18に応力集中が発生することを防止でき、応力集中による中空部材17,18の破損を抑制できる。
【0030】
差込部23は、少なくとも先端部が先細形状の外形を有するものであり、根元が直線形状であって、先端のみが先細形状の外形を有するものでも良い。
【0031】
本発明は、油圧ショベル以外のキャブにも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るジョイント部材の一実施の形態を示す断面図である。
【図2】同上ジョイント部材の他の実施の形態を示す断面図である。
【図3】同上ジョイント部材を用いたキャブが搭載された建設機械の側面図である。
【図4】同上ジョイント部材を用いて構成されたキャブの斜視図である。
【図5】ジョイント部材の従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
11 建設機械
16 キャブ
17,18 中空部材
21 ジョイント部材
22 ジョイント本体
23 差込部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジョイント本体と、
このジョイント本体に一体成形されて接続相手の中空部材に嵌着される差込部とを具備し、
この差込部は、少なくとも先端部が中空部材の許容曲げ半径以上の大きな半径の円弧に沿った先細形状の外形を有する
ことを特徴とするジョイント部材。
【請求項2】
差込部の外形は、中空部材の許容曲げ半径の円弧に沿って円弧状に成形された
ことを特徴とする請求項1記載のジョイント部材。
【請求項3】
差込部の外形は、中空部材の許容曲げ半径の円弧に近似する直線状に成形された
ことを特徴とする請求項1記載のジョイント部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載のジョイント部材と、
このジョイント部材を用いてフレーム状に接続された中空部材と
を具備したことを特徴とする建設機械用のキャブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−84468(P2010−84468A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−256558(P2008−256558)
【出願日】平成20年10月1日(2008.10.1)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】