説明

スノータイヤトレッド用のゴム組成物

本発明は、天然ゴムおよび/またはポリブタジエンのような少なくとも1種のジエンエラストマー、40phrよりも多い液体可塑剤、50〜150phrのシリカおよび/またはカーボンブラックのような補強用充填剤、2〜50phrの硫酸マグネシウムのような水溶性金属塩微粒子および2〜50phrの少なくとも1種のアルミノケイ酸塩のような金属酸化物の中空微粒子を含む、特に融氷上での改良されたグリップ性を有するスノータイヤ用のトレッドとして有用なゴム組成物に関する。また、本発明は、トレッドがそのような組成物を含むスノータイヤにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1. 発明の分野
本発明は、車両タイヤ用、特に、スタッドを装着することなしに氷または薄氷(black ice)で覆われた地面上を回転することのできる “冬季”タイヤ(スタッドレスタイヤとしても知られる)用のトレッドとして使用し得るゴム組成物に関する。
本発明は、さらに詳細には、典型的に−5℃と0℃の間の温度範囲内において直面する“融氷”条件下で回転するのに特に適する冬季タイヤ用のトレッドに関する。特に、そのような範囲内では、車両の通過中のタイヤの圧力によって氷の表面融解が生じ、氷は、これらのタイヤのグリップ性に有害な水の薄膜によって覆われることを思い起すべきである。
【背景技術】
【0002】
2. 当該技術の状況
スタッドの有害な作用、特に、地面自体の表面舗装に対するスタッドの強力な摩耗作用および有意に劣化する乾燥地面上での道路挙動を回避するために、タイヤ製造業者等は、タイヤトレッドを構成するゴム組成物の配合を改変することからなる種々の解決策を提供している。
そのように、先ず第1に、例えば、炭化ケイ素のような高硬度を有する固形粒子を混入するという提案がなされており(例えば、US 3 878 147号参照)、これら固形粒子の相当数は、トレッドが磨耗するにつれてトレッド表面に達し、ひいては氷と接触する。そのような粒子は、周知の“クロー(claw)”作用によって硬質な氷上でマイクロスタッドとして実際に作用し得、地面に対して比較的侵略的な状態にある;そのような粒子は、融氷上での回転条件には良好に適するものではない。
【0003】
従って、特にトレッドの構成組成物中に水溶性粉末(即ち、水中で溶解可能である)を混入することからなる他の解決法が提案されている。そのような粉末は、雪または融氷との接触時に多かれ少なかれ溶解し、一方では、トレッドの地面表面へのグリップ性を改良し得る多孔のタイヤトレッド表面での形成を、他方では、タイヤと地面表面間に形成された液体膜を排出する通路として作用する溝の形成を可能にする。水溶性粉末の例としては、例えば、セルロース粉末、PVA(ビニルアルコール)粉末または澱粉粉末、或いはグアーガム粉末またはキサンタンガム粉末の使用を挙げることができる(例えば、特許出願JP 3‐159803号、JP 2002‐211203号、EP 940 435号、WO 2008/080750号およびWO 2008/080751号を参照されたい)。
【0004】
これらの実施例の全てにおいて、使用する粉末の極めて低温で且つ極めて短時間での溶解性が、トレッドの満足し得る作動における本質的な要因である。上記粉末がタイヤの使用条件下で溶解しない場合、上述した機能(微細多孔および水の排出通路の形成)は発揮されず、グリップ性は改良されない。
【発明の概要】
【0005】
3. 本発明の簡単な説明
研究の継続中に、本出願法人は、有効な表面微細粗さを生じさせることができ且つこれら微粒子を含むトレッドおよびタイヤの融氷条件下における氷上でのグリップ性を高度に改良することを可能にするが、補強およびヒステリシス特性に対しては不利益にならない新規なゴム組成物を見出した。
従って、本発明は、特に冬季タイヤ用のトレッドとして有用であって、少なくとも、ジエンエラストマー、40phrよりも多い液体可塑剤および50phrと150phrの間の量の補強用充填剤を含むゴム組成物であって、2phrと50phrの間の量の水溶性金属塩微粒子および2phrと50phrの間の量の少なくとも1種の金属酸化物の中空微粒子をさらに含むことを特徴とするゴム組成物に関する。
初めに、これらの各種微粒子は、トレッド表面で突出しており、路面として使用するアスファルトに対して極めて研磨性であるという不利益なしで、上述したクロー機能を果す。その後、引続いて、一方では上記水溶性微粒子の少なくとも部分的な水溶化によって、他方では上記金属酸化物微粒子の中空構造の破壊によって、ゴムマトリックスから漸次退出した後に、これら全ての微粒子は、貯蔵容積としておよび氷表面の水膜を排出する通路として機能する微細空洞を解放する;これらの条件下においては、トレッドの表面と氷との接触はもはや潤滑ではなく、従って、摩擦係数が改良される。
【0006】
また、本発明は、トレッドが、少なくともタイヤが走行するときに道路と接触することを意図するトレッドの部分(従って、パターン化されている)に関しては、本発明に従う組成物を含むところのタイヤに関する。
【0007】
本発明のタイヤは、特に、4×4 (四輪駆動)車およびSUV車(スポーツ用多目的車)のような乗用車;二輪車(特にオートバイ);さらにまた、バン類および重量車両(即ち、地下鉄、バス、重量道路輸送車(トラック、トラクターのような))から選ばれる産業用車両に装着することを意図する。
本発明およびその利点は、以下の説明および典型的な実施態様に照らして容易に理解し得るであろう。
【発明を実施するための形態】
【0008】
4. 本発明の詳細な説明
本説明においては、他に明確に断らない限り、示す百分率(%)は、全て質量%である。略称“phr”は、エラストマー(数種のエラストマーが存在する場合はエラストマーの総量)の100質量部当りの質量部を意味する。
さらにまた、“aとbの間”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、“a”よりも大きく“b”よりも小さい値の範囲を示し(即ち、限界値aとbを除く)、一方、“a〜b”なる表現によって示される値の間隔は、いずれも、“a”から“b”に及ぶ値の範囲を意味する(即ち、厳格な限定値aおよびbを含む)。
本発明のゴム組成物は、少なくとも1種のジエンエラストマー、可塑化系、補強用充填剤、水溶性金属塩微粒子および金属酸化物中空微粒子をベースとする;これらの成分を、以下で詳細に説明する。
【0009】
4‐1 ジエンエラストマー
“ジエン”のタイプのエラストマー(またはゴム、2つの用語は同義である)は、ジエンモノマー(共役型であり得るまたはあり得ない2個の炭素‐炭素二重結合を担持するモノマー)に少なくとも一部由来するエラストマー(即ち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味するものと理解すべきであることを思い起すべきである。
【0010】
上記ジエンエラストマーは、知られている通り、2つのカテゴリー、即ち、“本質的に不飽和”のエラストマーまたは“本質的に飽和”のエラストマーに分類し得る。例えば、EPDMタイプのジエンとα‐オレフィンとのコポリマーのようなブチルゴムは、低いまたは極めて低い常に15%(モル%)未満であるジエン起原単位含有量を有する本質的に飽和のジエンエラストマーのカテゴリーに属する。対照的に、本質的に不飽和のジエンエラストマーは、15%(モル%)よりも多いジエン起源(共役ジエン類)の単位含有量を有する共役ジエンモノマーに少なくとも一部由来するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。“本質的に不飽和”のジエンエラストマーのカテゴリーにおいては、“高不飽和”ジエンエラストマーは、特に50%よりも多いジエン起源(共役ジエン類)の単位含有量を有するジエンエラストマーを意味するものと理解されたい。
【0011】
好ましくは、高不飽和タイプの少なくとも1種のジエンエラストマー、特に、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれるジエンエラストマーを使用する。そのようなコポリマーは、さらに好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、およびそのようなコポリマーの混合物からなる群から選ばれる。
【0012】
上記エラストマーは、例えば、ブロック、ランダム、序列または微細序列エラストマーであり得、分散液中または溶液中で調製し得る;これらのエラストマーは、カップリング剤および/または星型枝分れ化剤(star‐branching agent)或いは官能化剤によってカップリングしおよび/または星型枝分れ化し或いは官能化し得る。カーボンブラックとカップリングさせるには、例えば、C‐Sn結合を含む官能基または、例えば、ベンゾフェノンのようなアミノ化官能基を挙げることができ;シリカのような補強用無機充填剤とカップリングさせるには、例えば、シラノール官能基またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、US 6 013 718号に記載されているような)、アルコキシシラン基(例えば、US 5 977 238号に記載されているような)、カルボキシル基(例えば、US 6 815 473号またはUS 2006/0089445号に記載されているような)、或いはポリエーテル基(例えば、US 6 503 973号に記載されているような)を挙げることができる。また、他の官能化エラストマーの例としては、エポキシ化タイプのエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRのような)も挙げることができる。
【0013】
以下は、好ましく適している:ポリブタジエン、特に、4%と80%の間の1,2‐単位含有量を有するポリブタジエンまたは80%よりも多いシス‐1,4‐単位含有量を有するポリブタジエン;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のスチレン含有量、4%と65%の間のブタジエン成分1,2‐結合含有量および20%と80%の間のトランス‐1,4‐結合含有量を有するコポリマー;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特に、5質量%と90質量%の間のイソプレン含有量および−40℃〜−80℃のガラス転移温度(“Tg”、ASTM D3418‐82に従って測定)を有するコポリマー;または、イソプレン/スチレンコポリマー、特に、5質量%と50質量%の間のスチレン含有量および−25℃と−50℃の間のTgを有するコポリマー。
【0014】
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合は、5質量%と50質量%の間、特に10質量%と40質量%の間のスチレン含有量、15質量%と60質量%の間、特に20質量%と50質量%の間のイソプレン含有量、5質量%と50質量%の間、特に20質量%と40質量%の間のブタジエン含有量、4%と85%の間のブタジエン成分1,2‐単位含有量、6%と80%の間のブタジエン成分トランス‐1,4‐単位含有量、5%と70%の間のイソプレン成分1,2‐+3,4‐単位含有量および10%と50%の間のイソプレン成分トランス‐1,4‐単位含有量を有するコポリマー、さらに一般的には、−20℃と−70℃の間のTgを有する任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが、特に適している。
【0015】
本発明の特定の好ましい実施態様によれば、上記ジエンエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、90%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量を有するポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマーおよびこれらエラストマーの混合物からなる群から選ばれる。
さらに具体的で且つ好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、50〜100phrの天然ゴムまたは合成ポリイソプレンを含み、上記天然ゴムまたは合成ポリイソプレンは、特に、多くとも50phrの、90%よりも多いシス‐1,4‐結合含有量を有するポリブタジエンとのブレンド(混合物)として使用し得る。
もう1つの特定的で且つ好ましい実施態様によれば、上記ゴム組成物は、50〜100phrの90%よりも多い、シス‐1,4‐結合含有量を有するポリブタジエンを含み、該ポリブタジエンは、特に、多くとも50phrの天然ゴムまたは合成ポリイソプレンとのブレンドとして使用し得る。
上記ジエンエラストマー以外の合成エラストマーを、実際にはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーでさえも、本発明に従うトレッドのジエンエラストマーと少量で組合せ得る。
【0016】
4‐2. 可塑化系
本発明のゴム組成物は、他の本質的な特徴として、少なくとも40phrの、液体(20℃において)である可塑剤を含むという特徴を有し、この可塑剤の役割は、上記エラストマーと補強用充填剤を希釈することによって、マトリックスを軟質化させることである;そのTgは、定義によれば、−20℃よりも低く、好ましくは−40℃よりも低い。
【0017】
芳香族性または非芳香族性いずれかの任意の増量剤オイル、即ち、ジエンエラストマーに対するその可塑化特性について知られている任意の液体可塑剤を使用し得る。周囲温度(20℃)で、これらの可塑剤またはこれらのオイル類は、多かれ少なかれ粘稠であり、特に本質的に室温で固体である可塑化用炭化水素系樹脂と対比して液体(即ち、注釈すれば、最終的にその容器の形に適合する能力を有する物質)である。
【0018】
ナフテン系オイル (低または高粘度、特に水素化されているまたは水素化されていない)、パラフィン系オイル、MES (中度抽出溶媒和物(medium extracted solvate))オイル、TDAE(処理留出物芳香族系抽出物(treated distillate aromatic extract))オイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤およびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる液体可塑剤が、特に適している。
【0019】
ホスフェート可塑剤としては、例えば、12個と30個の間の炭素原子を含有するリン酸可塑剤、例えば、リン酸トリオクチルが挙げられる。エステル可塑剤の例としては、特に、トリメリテート、ピロメリテート、フタレート、1,2‐シクロヘキサンジカルボキシレート、アジペート、アゼレート、セバケート、グリセリントリエステルおよびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる化合物を挙げることができる。上記トリエステルの中では、好ましくは、特に不飽和C18脂肪酸、即ち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびこれらの酸の混合物からなる群から選ばれる不飽和脂肪酸から主として(50質量%よりも多く、より好ましくは80質量%よりも多くにおいて)なるグリセリントリエステルを挙げることができる。さらに好ましくは、合成起原または天然起原(この場合は、例えば、ヒマワリまたはナタネ植物油)のいずれであれ、使用する脂肪酸は、50質量%よりも多くの、さらにより好ましくは80質量%よりも多くのオレイン酸を含む。高含有量のオレイン酸を含むそのようなトリエステル(トリオレアート)は周知である;例えば、そのようなトリエステルは、特許出願WO 02/088238号に、タイヤ用のトレッド中の可塑化剤として記載されている。
【0020】
本発明の組成物中の液体可塑剤の含有量は、好ましくは、50〜100phrの範囲内に包含される。
【0021】
また、もう1つの好ましい実施態様によれば、本発明の組成物は、固形(20℃において)である可塑剤として、例えば出願WO 2005/087859号、WO 2006/061064号およびWO 2007/017060号に記載されているような、+20℃よりも高い、好ましくは+30℃よりも高いTgを示す炭化水素樹脂も含み得る。
【0022】
炭化水素樹脂は、当業者にとって周知のポリマーであり、本質的に炭素と水素をベースとし、従って、“可塑化用”であるとして付加的に説明される場合、ジエンエラストマー組成物中に本来混和性である。炭化水素樹脂は、例えば、R. Mildenberg、M. ZanderおよびG. Collin (New York, VCH, 1997, ISBN 3‐527‐28617‐9)による“Hydrocarbon Resins”と題した著作物に記載されており、その第5章は、炭化水素樹脂の特にタイヤゴム分野の用途に充てられている(5.5. “Rubber Tires and Mechanical Goods”)。炭化水素樹脂は、脂肪族または芳香族或いは脂肪族/芳香族タイプでもあり得る、即ち、脂肪族および/または芳香族モノマーをベースとし得る。炭化水素樹脂は、天然または合成であり得、石油系であっても或いはなくてもよい(その場合、石油樹脂の名称でも知られている)。炭化水素樹脂は、好ましくは、専ら炭化水素である、即ち、炭化水素樹脂は、炭素および水素原子のみを含む。
【0023】
好ましくは、可塑化用炭化水素樹脂は、下記の特徴の少なくとも1つ、より好ましくは全部を示す:
・20℃よりの高い(より好ましくは40℃と100℃の間の)Tg;
・400g/モルと2000g/モルの間(より好ましくは500g/モルと1500g/モルの間)の数平均分子量(Mn);
・3よりも低い、より好ましくは2よりも低い多分散性指数(PI) (注:PI = Mw/Mn;Mwは質量平均分子量)。
【0024】
Tgは、規格ASTM D3418 (1999年)に従い、DSC (示唆走査熱量測定法)により既知の方法で測定する。上記炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、MnおよびPI)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定する:溶媒 テトラヒドロフラン;温度 35℃;濃度 1g/l;流量 1ml/分;注入前に0.45μmの有孔度を有するフィルターにより濾過した溶液;ポリスチレン標準によるムーア(Moore)較正;直列の3本“Waters”カラムセット(“Styragel”HR4E、HR1およびHR0.5);示差屈折計(“Waters 2410”)およびその関連操作ソフトウェア(“Waters Empower”)による検出。
【0025】
特に好ましい実施態様によれば、上記可塑化用炭化水素樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと略記する)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPDと略記する)ホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれる。さらに好ましくは、上記のコポリマー樹脂のうちでは、(D)CPD/ビニル芳香族コポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンコポリマー樹脂、(D)CPD/C5留分コポリマー樹脂、(D)CPD/C9留分コポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族コポリマー樹脂、テルペン/フェノールコポリマー樹脂、C5留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、C9留分/ビニル芳香族コポリマー樹脂、およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選ばれるコポリマー樹脂を使用する。
【0026】
用語“テルペン”は、この場合、知られている通り、α‐ピネンモノマー、β‐ピネンモノマーおよびリモネンモノマーを包含する;好ましくは、リモネンモノマーを使用する;この化合物は、知られている通り、3種の可能性ある異性体の形で存在する:L‐リモネン(左旋性鏡像体)、D‐リモネン(右旋性鏡像体)或いはジペンテン、即ち、右旋性鏡像体および左旋性鏡像体のラセミ体。スチレン;α‐メチルスチレン;オルソ‐、メタ‐またはパラ‐メチルスチレン;ビニルトルエン;パラ‐(tert‐ブチル)スチレン;メトキシスチレン類;クロロスチレン類;ヒドロキシスチレン類;ビニルメシチレン;ジビニルベンゼン;ビニルナフタレン;またはC9留分(または、より一般的にはC8〜C10留分)に由来する任意のビニル芳香族モノマーは、例えば、ビニル芳香族モノマーとして適切である。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、スチレンまたはC9留分(または、より一般的にはC8〜C10留分)に由来するビニル芳香族モノマーである。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、当該コポリマー中では、モル画分として表して少量モノマーである。
【0027】
炭化水素樹脂の含有量は、好ましくは、3phrと60phrの間、より好ましくは3phrと40phrの間、特に5phrと30phrの間の量である。
総可塑剤(即ち、液体可塑剤+必要に応じての固形炭化水素樹脂)の含有量は、好ましくは40phrと100phrの間の量であり、より好ましくは50〜80phrの範囲内に包含される。
【0028】
4‐3 充填剤
タイヤの製造において使用することのできるゴム組成物を補強するその能力について知られている任意のタイプの補強用充填剤、例えば、カーボンブラックのような有機充填剤、またはシリカのような、カップリング剤を既知の方法で組合せる補強用無機充填剤を使用し得る。
そのような補強用充填剤は、典型的にはナノ粒子からなり、その平均粒度(質量による)は、500nmよりも低く、一般に20nmと200nmの間、特にまた好ましくは20nmと150nmの間である。
【0029】
全てのカーボンブラック類、特に、タイヤまたはタイヤ用のトレッドにおいて通常使用するブラック類(“タイヤ級”ブラック類)が、カーボンブラックとして適している。さらに詳細には、後者のうちでは、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347およびN375ブラック類のような、100、200または300シリーズの補強用カーボンブラック類(ASTM級)が挙げられる。カーボンブラックは、例えば、マスターバッチの形で、イソプレンエラストマー中に既に混入させていてもよい(例えば、出願 WO 97/36724号またはWO 99/16600号を参照されたい)。
【0030】
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、出願 WO 2006/069792号、WO 2006/069793号、WO 2008/003434号およびWO 2008/003435号に記載されているような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
【0031】
用語“補強用無機充填剤”は、この場合、カーボンブラックに対比して“白色充填剤”、“透明充填剤”として、または“非黒色充填剤”としてさえも知られており、それ自体で、中間カップリング剤以外の手段によることなく、タイヤの製造を意図するゴム組成物を補強し得る、換言すれば、通常のタイヤ級カーボンブラックとその補強役割において置換わり得る、その色合およびその起源(天然または合成)の如何にかかわらない任意の無機または鉱質充填剤を意味するものと理解すべきである;そのような充填剤は、一般に、知られている通り、その表面でのヒドロキシル(‐OH)基の存在に特徴を有する。
【0032】
シリカ質タイプの鉱質充填剤、特に、シリカ(SiO2)、またはアルミナ質タイプの鉱質充填剤、特に、アルミナ(Al2O3)は、補強用無機充填剤として特に適している。使用するシリカは、当業者にとって既知の任意の補強用シリカ、特に、共に450m2/g未満、好ましくは30〜400m2/g、特に60m2/gと300m2/gの間にあるBET表面積とCTAB比表面積を示す任意の沈降または焼成シリカであり得る。高分散性(“HD沈降シリカ”)としては、例えば、Degussa社からのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ類;Rhodia社からのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ類;PPG社からのHi‐Sil EZ150Gシリカ;Huber社からのZeopol 8715、8745または8755シリカ類が挙げられる。補強用アルミナ類の例としては、Baikowski社からの“Baikalox A125”または“Baikalox CR125”アルミナ類、Condea社からの“APA‐100RDX”アルミナ、Degussa社からの“Aluminoxid C”アルミナまたはSumitomo Chemicals社からの“AKP‐G015”アルミナが挙げられる。
【0033】
好ましくは、総補強用充填剤(カーボンブラックおよび/または補強用無機充填剤)の含有量は、60phrと120phrの間、特に70phrと100phrの間の量である。
特定の実施態様によれば、上記充填剤は、シリカ、カーボンブラックまたはカーボンブラックとシリカの混合物を含む。
もう1つの特定の実施態様によれば、補強用充填剤は、主として、カーボンブラックを含む;そのような場合、カーボンブラックは、少量のシリカのような補強用無機充填剤と組合せてまたは組合せないで、好ましくは60phrよりも多い含有量で存在する。
もう1つの特定の実施態様によれば、補強用充填剤は、主として、無機充填剤、特にシリカを含む;そのような場合、無機充填剤、特にシリカは、少量のカーボンブラックと組合せてまたは組合せないで、好ましくは70phrよりも多い含有量で存在する;カーボンブラックは、存在する場合、好ましくは20phrよりも少ない、より好ましくは10phrよりも少ない(例えば、0.1phrと10phrの間の)含有量で使用する。
【0034】
本発明の第1の局面、即ち、融氷上でのグリップ性の最適化の研究とは切り離して、シリカのような補強用無機充填剤の主要量での使用は、降雨または積雪地面上のグリップ性の点からも有益である。
本発明のもう1つの可能性ある実施態様によれば、補強用充填剤は、カーボンブラックとシリカのような補強用無機充填剤との同様な量でのブレンドを含む;そのような場合、無機充填剤、特にシリカの含有量とカーボンブラックの含有量は、好ましくは、各々25phrと75phrの間、特に各々30phrと50phrの間の量である。
【0035】
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるためには、周知のとおり、無機充填剤(その粒子表面)とジエンエラストマー間に化学および/または物理的性質の満足し得る結合を付与することを意図する少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)を使用する。特に、二官能性オルガノシランまたはポリオルガノシロキサン類を使用する。
特に、例えば、出願 WO 03/002648号(またはUS 2005/016651号)およびWO 03/002649号(またはUS 2005/016650号)に記載されているような、その特定の構造によって“対称形”または“非対称形”と称されるシランポリスルフィドを使用する。
【0036】
下記の一般式(I)に相応する“対称形”シランポリスルフィドは、以下の定義に限定されることなく、特に適している:
(I) Z‐A‐Sx‐A‐Z
[式中、xは、2〜8 (好ましくは2〜5)の整数であり;
Aは、2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C18アルキレン基またはC6〜C12アリーレン基、特にC1〜C10、特にC1〜C4アルキレン基、特にプロピレン)であり;
Zは、下記の式の1つに相応する:
【化1】


(式中、R1基は、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルキル、C5〜C18シクロアルキルまたはC6〜C18アリール基(好ましくはC1〜C6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、特にC1〜C4アルキル基、特にメチルおよび/またはエチル)を示し;
R2基は、置換されていないかまたは置換されており、互いに同一かまたは異なるものであって、C1〜C18アルコキシルまたはC5〜C18シクロアルコキシル基(好ましくは、C1〜C8アルコキシルおよびC5〜C8シクロアルコキシル基から選ばれた基、より好ましくはC1〜C4アルコキシル基、特にメトキシルおよびエトキシルから選ばれた基)を示す)]。
【0037】
さらに詳細には、シランポリスルフィドの例としては、ビス(3‐トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド類が挙げられる。特に、これらの化合物のうちでは、TESPTと略称されるビス(3‐トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、またはTESPDと略称されるビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用する。また、好ましい例としては、特許出願WO 02/083782号(または、US 2004/132880号)に記載されているような、ビス(モノ(C1〜C4)アルコキシルジ(C1〜C4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド類(特に、ジスルフィド類、トリスルフィド類またはテトラスルフィド類)、特に、ビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドも挙げられる。
【0038】
アルコキシシランポリスルフィド類以外のカップリング剤としては、特に、特許出願WO 02/30939号(またはUS 6 774 255号)およびWO 02/31041号(またはUS 2004/051210号)に記載されているような、二官能性POS (ポリオルガノシロキサン)類またはヒドロキシシランポリスルフィド(上記式(I)において、R2 = OH)、または、例えば、特許出願WO 2006/125532号、WO 2006/125533号およびWO 2006/125534号に記載されているような、アゾジカルボニル官能基を担持するシランまたはPOS類が挙げられる。
本発明に従うゴム組成物においては、カップリング剤の含有量は、好ましくは4phrと12phrの間、より好ましくは3phrと8phrの間である。
【0039】
当業者であれば、もう1つの性質、特に有機性を有する補強用充填剤を、この補強用充填剤がシリカのような無機層によって被覆されているか或いはその表面に、官能部位、特にヒドロキシルを含み、該充填剤と上記エラストマー間の結合を形成させるためのカップリング剤の使用を必要とすることを条件として、この項で説明する補強用無機充填剤と等価の充填剤として使用し得ることを理解されたい。
【0040】
4‐4 水溶性微粒子および金属酸化物中空微粒子
本発明のゴム組成物は、2phrと50phrの間の量の水溶性金属塩微粒子および2phrと50phrの間の量の少なくとも1種の金属酸化物の中空微粒子 (または微小球)を含むという本質的な特徴を有する;酸化物なる用語は、勿論、水酸化物も包含する。
これらの微粒子は、例えば、粉末、マイクロビーズ、顆粒、ビーズまたは任意の他の適切な濃密形で提供し得る。粉末形での提供が、上記2つのタイプの微粒子においては好ましい。
【0041】
微粒子は、定義によれば、また、一般的には、マイクロメートルサイズ(即ち、異方性粒子の場合の最大寸法)を有する、即ち、平均粒度または中央値粒度(双方とも質量による)が、1μmと1mmの間である粒子を意味するものと理解されたい;好ましくは、上記中央値粒度は、2μmと800μmの間であり、より好ましくは、5〜200μmの範囲内に包含される。
【0042】
上記の最低値よりも低いと、目標とする技術的効果(即ち、適切な微細粗さの形成)が不適切であるリスクが存在し、一方、上記最高値よりも高いと、種々の不利益が、特に上記ゴム組成物をトレッドとして使用する場合に出現する:可能性ある審美性の低下(トレッド表面上で目立ち過ぎる粒子)および比較的大きなトレッドパターン要素の回転中の固着力喪失のリスクは別として、融氷上のグリップ性能を損ない得ることが判明している。
【0043】
これらの全ての理由により、上記微粒子は、2μmと500μmの間の、さらにより好ましくは5〜200μmの範囲内に包含される中央値粒度を有するのが好ましい。この特に好ましい粒度範囲は、一方の所望の表面粗さと、他方のゴム組成物と氷間の良好な接触と間の最適化した妥協点に相応しているようである。
さらにまた、上記の理由と同じ理由により、各タイプの微粒子(一方の水溶性微粒子と他方の中空金属酸化物微粒子)の含有量は、好ましくは5phrと40phrの間、より好ましくは10phrと35phrの間の量である。
【0044】
好ましい実施態様によれば、上記水溶性微粒子の塩は、塩化物、炭酸塩(特に、ヒドロキシ炭酸塩、重炭酸塩のような)、硫酸塩およびそのような塩の混合物からなる群から選ばれる。さらにより好ましくは、選定する塩は硫酸塩である。
【0045】
特に上記の実施態様と組合せることができるもう1つの好ましい実施態様によれば、上記金属塩の金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属である。ここで単純に、アルカリ金属族は、周期表の第1欄に位置する一価の化学元素の属であるが、水素(H)は含まないことを思い起こされたい;原子番号順位が上るにつれ、アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムおよびフランシウムである。アルカリ土類金属族は、周期表の第2族 (またはIIa族)の化学元素族である;原子番号順位が上るにつれ、アルカリ土類金属は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムおよびラジウムである。
【0046】
好ましくは、上記水溶性金属塩の金属は、Na (ナトリウム)、K (カリウム)、Mg (マグネシウム)、Ca (カルシウム)およびそのような金属の混合物からなる群から選ばれる。さらにより好ましくは、上記金属はマグネシウムである。
好ましい実施態様によれば、上記金属酸化物の金属は、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、遷移金属およびそのような金属の混合物からなる群から選ばれる。遷移金属は、さらに詳細には、スカンジウムから亜鉛までの範囲の第4周期の金属、好ましくはチタンおよび亜鉛を意味するものと理解されたい。アルミニウム、ケイ素、チタン、ジルコニウムおよび亜鉛は、さらにより好ましく適している。
【0047】
さらに好ましい実施態様によれば、上記金属酸化物は、酸化および/または水酸化アルミニウム、酸化および/または水酸化ケイ素、アルミニウムとケイ素の酸化物および/または水酸化物、並びにそのような酸化物および/または水酸化物の混合物からなる群から選ばれる。さらにより好ましくは、使用する金属酸化物は、アルミノケイ酸塩である。
【0048】
粒度分析および微粒子の中央値粒度(または実質的に球形であると想定した微粒子における中央値直径)の算出のための、例えば、レーザー回析による種々の既知の方法が応用可能である(例えば、規格ISO‐8130‐13または規格JIS K5600‐9‐3を参照されたい)。
【0049】
また、機械的篩分けによる粒度分析も、単純に且つ好ましく使用し得る;その操作は、規定量のサンプル(例えば、200g)を、振動テーブル上で、種々の篩直径により(例えば、1.26に等しい累進比に従い、1000、800、630、500、400、…100、80および63μmのメッシュにより)30分間篩分けすることからなる;各篩において集めた超過サイズを精密天秤で秤量する;物質の総質量に対する各メッシュ直径における超過サイズの%を、その秤量から推定する;最後に、中央値粒度(または中央値直径)または平均粒度(または平均直径)を、粒度分布のヒストグラムから既知の方法で算出する。
【0050】
4‐5 各種添加剤
また、本発明のゴム組成物は、例えば、オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤のような保護剤;補強用樹脂;メチレン受容体(例えば、フェノールノボラック樹脂)またはメチレン供与体(例えば、HMTまたはH3M);イオウまたはイオウ供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースとする架橋系;加硫促進剤または加硫活性化剤のような、タイヤ用、特に冬季タイヤ用のトレッドの製造を意図するエラストマー組成物において一般的に使用する通常の添加剤の全部または1部も含む。
【0051】
また、これらの組成物は、カップリング剤を使用する場合のカップリング活性化剤、無機充填剤の被覆用の薬剤、またはゴムマトリックス中での充填剤の分散性を改善し且つ組成物の粘度を低下させることによって、知られている通り、生状態における組成物の加工特性を改善することのできるより一般的な加工助剤も含有し得る;これらの薬剤は、例えば、アルキルアルコキシシランのような加水分解性シラン類;ポリオール類;ポリエーテル類;アミン類;または、ヒドロキシル化または加水分解性ポリオルガノシロキサン類である。
【0052】
4‐6 ゴム組成物およびトレッドの製造
本発明のゴム組成物は、適切なミキサー内で、当業者にとって周知の一般的手順に従う2つの連続する製造段階、即ち、130℃と200℃の間、好ましくは145℃と185℃の間の最高温度までの高温で熱機械的に加工または混練する第1段階(“非生産”段階とも称する)、並びに、その後の典型的には120℃よりも低い、例えば、60℃と100℃の間の低めの温度で機械加工する第2段階(“生産”段階とも称する)を使用して製造し、この仕上げ段階において架橋または加硫系を混入する。
【0053】
そのような組成物の製造に使用し得る方法は、例えば、好ましくは、下記の工程を含む:
・ミキサー内で、ジエンエラストマー中に、40phrよりも多い液体可塑剤、50phrと150phrの間の量の補強用充填剤、2phrと50phrの間の量の水溶性金属塩微粒子および2phrと50phrの間の量の少なくとも1種の金属酸化物の中空微粒子を混入し、全てを、1回以上、130℃と200℃の間の最高温度に達するまで熱機械的に混練する工程;
・混ぜ合せた混合物を100℃よりも低い温度に冷却する工程;
・その後、架橋系を混入する工程;
・全てを120℃よりも低い最高温度まで混練する工程;
・そのようにして得られたゴム組成物を、特にタイヤトレッドの形に押出またはカレンダー加工する工程。
【0054】
例えば、第1(非生産)段階は、1回の熱機械段階で実施し、その間に、全ての必須成分、任意構成成分としてのさらなる被覆剤または加工助剤および架橋系を除いた各種他の添加剤を、通常の密閉ミキサーのような適切なミキサー内に導入する。第1の非生産段階においてそのようにして得られた混合物を冷却した後、架橋系を、一般的には開放ミルのような開放ミキサー内に低温で導入する;その後、全てを、数分間、例えば、5分と15分の間の時間混合する(生産段階)。
【0055】
適切な架橋系は、好ましくは、イオウおよび一次加硫促進剤、特にスルフェンアミドタイプの促進剤をベースとする。この加硫系に、各種既知の二次促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(特にジフェニルグアニジン)等を添加し、上記第1非生産段階中および/または上記生産段階中に混入する。イオウ含有量は、好ましくは0.5phrと3.0phrの間であり、また、一次促進剤の含有量は、好ましくは0.5phrと5.0phrの間である。
【0056】
促進剤(一次または二次)としては、イオウの存在下にジエンエラストマーの加硫促進剤として作用し得る任意の化合物、特に、チアゾールタイプおよびその誘導体の促進剤、チウラムタイプの促進剤、またはジチオカルバミン酸亜鉛を使用することができる。これらの促進剤は、さらに好ましくは、2‐メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(“MBTS”と略記する)、N‐シクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“CBS”と略記する)、N,N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“DCBS”)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド(“TBBS”)、N‐tert‐ブチル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンイミド(“TBSI”)、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛(“ZBEC”)およびこれらの化合物の混合物からなる群から選ばれる。
【0057】
その後、そのようにして得られた最終組成物を、例えば、特に実験室での特性決定のためのシートまたはプラークの形にカレンダー加工するか、或いは、例えば、冬季タイヤトレッドとして直接使用することのできるゴム形状要素の形に押出加工する。
加硫(即ち硬化)は、既知の方法で、一般的には130℃と200℃の間の温度で、特に硬化温度、使用する加硫系および当該組成物の加硫速度に応じて、例えば、5分と90分の間で変動し得る十分な時間で実施する。
【0058】
異なる配合を有する数種のゴム組成物から製造した複合材タイプのトレッドの場合、上述した本発明に従うゴム組成物は、少なくともタイヤが走行するときに道路と接触することを意図するトレッドの部分(従って、パターン化されている)における、本発明に従うタイヤのトレッドのほんの一部を構成し得る。
本発明は、生状態(即ち、硬化前)および硬化状態(即ち、架橋または加硫後)双方の上述したゴム組成物およびタイヤに関する。
【実施例】
【0059】
5. 本発明の実施例
5‐1 ゴム組成物の製造
これらの試験においては、ジエンエラストマー (NRと95%よりも多いシス‐1,4 結合含有量を有するBRとのブレンド)をベースとし、シリカとカーボンブラックとのブレンドで補強し、必要に応じて、一方の15phrの硫酸マグネシウム微粒子粉末および他方の15phrの中空アルミノケイ酸塩微粒子粉末を混合した2通りの組成物(C‐1およびC‐2で示す)間の比較を行った。下記の表1は、上記2つの組成物の配合(phrで表した各種成分の含有量)を示す。
【0060】
これらの組成物を製造するために、上記方法を以下に示方法で実施した:補強用充填剤(カーボンブラック、シリカおよびその関連カップリング剤)、液体可塑剤、硫酸マグネシウム微粒子、中空アルミノケイ酸塩部量子、ジエンエラストマー(またはジエンエラストマーのブレンド)および加硫系を除いた各種他の成分を、約60℃の初期容器温度を有する密閉ミキサーに連続して導入する;そのようにして、ミキサーをおよそ70%(容量%)満たす。その後、熱機械的加工(非生産段階)を1工程で実施する;この段階は、165℃の最高“落下”温度に達するまで合計で約3〜4分間続く。そのようにして得られた混合物を回収し、冷却し、その後、イオウおよびスルフェンアミドタイプの促進剤を30℃の開放ミキサー(ホモ・フィニッシャー)において混入し、全てを適切な時間(例えば、5分と12分の間の時間)混合する(生産段階)。
【0061】
5‐2 氷上の摩擦試験
これらの2つの組成物を、氷上でのこれら組成物の摩擦係数を測定することからなる実験室試験に供する。
その原理は、氷進路上を負荷荷重(例えば、3kg/cm2に等しい)によって所定速度(例えば、5km/時)で摺動するゴム組成物のブロックに基づく。試験の前に、試験すべきブロックの表面を、0.5mmの幅に亘って平削り(loaning-down)することによって、次いで、実乾燥地面表面(アスファルト)上で上記の負荷荷重(例えば、3kg/cm2)下に繰返し摺動させることによる一連の摩擦作用によってならし処理する。ブロックの進行方向に発生した力(Fx)と走行に対して垂直に発生した力(Fz)を測定する。Fx/Fzの比は、氷上での試験標本の摩擦係数を決定する。測定中の温度は、−2℃に設定する。
【0062】
この試験、即ち、当業者にとって周知のこの試験の原理(例えば、特許出願EP 1 052 270号およびEP 1 505 112号を参照されたい)は、典型的な条件下において、トレッドが上記の同じ各ゴム組成物からなるタイヤを装着した車両における走行試験後に得られるであろう融氷上でのグリップ性を評価することを可能にする。
【0063】
結果は、下記の表2に示している。任意に100に設定した対照(組成物C‐1)の値よりも高い値が、改良された結果、即ち、より短い制動距離能力を示す。本発明の組成物C‐2は、対照組成物C‐1と対比して、氷上での摩擦係数の有意の改良(10%の利得)を有していることが観察されている。
結論として、本発明に従う組成物は、上記タイヤおよびそのトレッドに、改良されている融氷上でのグリップ性能を付与している。
【0064】
表1

(1) 0.3%の1,2‐、2.7%のトランス、97%のシス‐1,4‐を含むBR (Tg = −104℃);
(2) 天然ゴム(解凝固化物)
(3) Rhodia社からのシリカ“Zeosil 1115MP”、“HDS”タイプ (BETおよびCTAB:約120 m2/g);
(4) カップリング剤 TESPT (Degussa社からの“Si69”);
(5) ASTM級N234 (Cabot社);
(6) 硫酸マグネシウム粉末 (Aldrich社;粒子の中央値粒度:約100μm);
(7) アルミノケイ酸塩粉末 (Japan Fillite社からの“Fillite 200/7”;粒子の中央値粒度:約90μm);
(8) MESオイル (Shell社からの“Catenex SNR”);
(9) ジフェニルグアニジン (Flexsys社からのPerkacit DPG);
(10) N‐(1,3‐ジメチルブチル)‐N‐フェニル‐パラ‐フェニレンジアミン (Flexsys社からの“Santoflex 6‐PPD”);
(11) N‐ジシクロヘキシル‐2‐ベンゾチアゾールスルフェンアミド (Flexsys社からの“Santocure CBS”)。
【0065】
表2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に冬季タイヤ用のトレッドとして有用であり、少なくとも、ジエンエラストマー、40phrよりも多い液体可塑剤、50phrと150phrの間の量の補強用充填剤を含むゴム組成物であって、2phrと50phrの間の量の水溶性金属塩微粒子および2phrと50phrの間の量の少なくとも1種の金属酸化物の中空微粒子をさらに含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項2】
前記ジエンエラストマーが、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマーおよびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選ばれる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
50〜100phrの天然ゴムまたは合成ポリイソプレンを含む、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記天然ゴムまたは合成ポリイソプレンを、多くとも50phrの、90%よりも多いシス‐1,4 結合含有量を有するポリブタジエンとのブレンドとして使用する、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
50〜100phrの、90%よりも多いシス‐1,4 結合含有量を有するポリブタジエンを含む、請求項2記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリブタジエンを、多くとも50phrの天然ゴムまたは合成ポリイソプレンとのブレンドとして使用する、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記液体可塑剤の含有量を、50〜100phrの範囲内で含ませる、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項8】
前記液体可塑剤が、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、MESオイル、TDAEオイル、鉱油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤およびこれら化合物の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜7のいずれか1項記載の組成物。
【請求項9】
前記補強用充填剤が、主としてカーボンブラックを含み、カーボンブラックの含有量が、好ましくは60phrよりも多い、請求項1〜8のいずれか1項記載の組成物。
【請求項10】
前記補強用充填剤が、主として補強用無機充填剤を含み、補強用無機充填剤の含有量が、好ましくは70phrよりも多い、請求項1〜6のいずれか1項記載の組成物。
【請求項11】
補強用充填剤全体の含有量が、60phrと120phrの間、好ましくは70phrと100phrの間の量である、請求項1〜10のいずれか1項記載の組成物。
【請求項12】
補強用充填剤全体の含有量が、70phrと100phrの間の量である、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
前記水溶性金属塩が、塩化物、炭酸塩、硫酸塩およびそのような塩の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜12のいずれか1項記載の組成物。
【請求項14】
前記金属塩の金属が、好ましくはNa、K、Mg、Caおよびそのような金属の混合物から選ばれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属である、請求項1〜13のいずれか1項記載の組成物。
【請求項15】
前記水溶性金属塩が、硫酸マグネシウムである、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
前記水溶性金属塩微粒子が、2μmと500μmの間の中央値粒度(質量による)を有する、請求項1〜15のいずれか1項記載の組成物。
【請求項17】
前記金属酸化物の金属が、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、遷移金属およびそのような金属の混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜16のいずれか1項記載の組成物。
【請求項18】
前記金属酸化物が、酸化および/または水酸化アルミニウム、酸化および/または水酸化ケイ素、アルミニウムとケイ素の酸化物および/または水酸化物、並びにそのような酸化物および/または水酸化物の混合物からなる群から選ばれる、請求項17記載の組成物。
【請求項19】
前記金属酸化物が、アルミノケイ酸塩である、請求項1〜18のいずれか1項記載の組成物。
【請求項20】
前記中空金属酸化物微粒子が、2μmと500μmの間の中央値粒度(質量による)を有する、請求項1〜19のいずれか1項記載の組成物。
【請求項21】
トレッドが請求項1〜20のいずれか1項記載のゴム組成物を含む冬季タイヤ。

【公表番号】特表2013−517356(P2013−517356A)
【公表日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549302(P2012−549302)
【出願日】平成23年1月11日(2011.1.11)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050268
【国際公開番号】WO2011/086061
【国際公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)
【Fターム(参考)】