説明

スライド式携帯無線機、及びアンテナ装置

【課題】簡単な構成であって、スライド時のロッドアンテナの飛び出しを抑えたまま引き出しにくさを解消すると共に、バイブレータの振動時にロッドアンテナのエレメント同士の接触により発生する金属音を抑えたスライド式携帯無線機及びアンテナ装置を提供する。
【解決手段】アンテナロッドアンテナ5は、その先端部に切欠部、切欠部を有して回転自在に構成されたキャップ9を備えている。また、下部筐体22は切欠部を通過できるように形成された突起部16、16を備えている。これにより、ロッドアンテナ5が下部筐体22の内部に収納される過程において、キャップ9が任意の方向へ回転したとき、切欠部、切欠部が突起部16、16を通過し、突起部16、16とキャップ9における第2の大円部9cの端面とが当接することにより、ロッドアンテナ5は下部筐体22の内部の所定位置に安定的に収納される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上部筐体と下部筐体とをスライドさせる携帯電話機などのスライド式携帯無線機、及びスライド式携帯無線機に用いられるアンテナ装置に関し、特に、伸縮自在なロッドアンテナを用いたスライド式携帯無線機、及びスライド式携帯無線機に用いられるアンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機は、通話機能だけではなく、地上デジタルテレビ放送の受信サービスなどが受けられるワンセグや、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)機能や、複数の機器間で短距離無線通信が可能なBluetoothなど、多くの通信機能が搭載されていて、それぞれの使用周波数に合わせた長さのアンテナが実装されている。その中でも、ワンセグの使用周波数は比較的低い周波数であるので長さの長いアンテナが必要となる。そのため、ワンセグを視聴しないときにはアンテナを縮めて携帯電話機に収納し、ワンセグを視聴するときにはアンテナを伸ばして所望の長さとなるロッドアンテナとするような使用方法が主流となっている。なお、以下の説明では、スライド式携帯無線機を単に携帯無線機と呼ぶことにする。
【0003】
図5は、ロッドアンテナを備えた一般的なの携帯無線機の概略的な構成図であり、(a)は携帯無線機の開状態、(b)は携帯無線機の閉状態を示している。この携帯無線機101は、上部筐体と下部筐体とを相対的にスライドさせるスライド式になっていて、同図(a)に示すような開状態、及び同図(b)に示すような閉状態にすることができる。この携帯無線機101は、上部基板102、下部基板103、上部基板102と下部基板103とを導通させるためのフレキシブルケーブル104、及び下部基板103に取り付けられたロッドアンテナ105を備えて構成されている。
【0004】
上部基板102及び下部基板103は、それぞれ、上部筐体121及び下部筐体122の内部に収容されており、スライド構造(図示せず)によって、上部基板102を収納した上部筐体121と下部基板103を収納した下部筐体122とが開閉可能に接続されている。
【0005】
上部基板102には、液晶ディスプレイ(図示せず)が搭載されており、下部基板103には、カメラ(図示せず)、給電部106、整合回路107、無線回路108、電池(図示せず)、キーボタン(図示せず)、及びバイブレータ(図示せず)などが搭載されている。なお、開状態とは、図5(a)に示すように、上部基板102の液晶ディスプレイ側から見たときに、下部基板103のキーボタンが見えて上部筐体121と下部筐体122とが重ならない状態である。また、閉状態とは、図5(b)に示すように、上部基板102の液晶ディスプレイ側から見たときに下部基板103のキーボタンが見えず、上部筐体121と下部筐体122とが重なっている状態である。
【0006】
上部基板102と下部基板103とを導通させるためのフレキシブルケーブル104は、上部基板102の回路(図示せず)と下部基板103の回路(図示せず)とを電気的に接続している。このフレキシブルケーブル104は、上部基板102と下部基板103とが図5(a)、(b)のように繰り返し開/閉されても断線しないように、柔軟性のある平型多心ケーブルで構成されている。
【0007】
また、ロッドアンテナ105は、凹み部付キャップ118、第1のエレメント110、第2のエレメント111、及びサポート金具112を備えて構成されている。このサポート金具112は、下部基板103上に形成された給電部106に接続され、整合回路107を介して無線回路108に接続されている。また、第1のエレメント110の先端部には凹み部付キャップ118が設けられている。この凹み部付キャップ118の一般的なキャップ形状は、ロッドアンテナ105を収納状態から伸張させるためにユーザが指を掛けるための凹み部(図示せず)を備えている。
【0008】
次に、図5に示すロッドアンテナ105の詳細な構造について説明する。図6は、図5に示すロッドアンテナの詳細な構造を示す図であり、(a)はロッドアンテナの伸張時、(b)はロッドアンテナの収納時を示している。図6に示すように、第2のエレメント111の内部は空洞となっていて、第1のエレメント110を収納できる構造となっている。また、第1のエレメント110は、該第1のエレメント110の下端に形成された第1のスプリング114により第2のエレメント111の内部と接続されて保持された状態となっている。また、第2のエレメント111は、サポート金具112上に形成された第2のスプリング115によってサポート金具112と接続して保持された状態となっている。
【0009】
例えば、ロッドアンテナ105の伸張時の場合は、図6(a)に示すように、第1のスプリング114は第2のエレメント111の上端部で保持され、第2のスプリング115は第2のエレメント111の下端部で保持される。また、ロッドアンテナ105の収納時の場合は、図6(b)に示すように、第1のスプリング114は第2のエレメント111の下端部付近で保持され、第2のスプリング115は第2のエレメント111の上端部で保持される。これによって、ロッドアンテナ105を伸張したり収納したりする操作を容易に行うことができる。
【0010】
なお、関連技術として、携帯電話機のアンテナを突出する方向に付勢するコイルバネと、そのアンテナを収納したときに、コイルバネの付勢力に抗してアンテナを収納できる係脱可能な係合手段とを設けることにより、ワンタッチでアンテナを伸張したり収納したりすることができるアンテナ収納構造の技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この技術によれば、アンテナをわずかに回転させながら収納することにより、該アンテナ部分に形成された係合部と筐体部分に形成された被係合部とが係合し、コイルバネの蓄積エネルギーによって、係合部と被係合部とからなる係合手段がアンテナを安定した状態で筐体内に収納・保持させている。係合手段としては、例えば、アンテナ部分に形成された係合部が雄ネジであり、筐体部分に形成された被係合部が雌ネジであれば、アンテナをわずかに回転させながら収納することによりネジ部の螺合によってアンテナを収納・保持させることができる。
【0011】
また、他の関連技術として、携帯電話機のアンテナを収納したときは、筐体側に設けたストッパ手段がアンテナの係合部を係合させてアンテナを収納・保持させ、ストッパ手段を解除したときにアンテナの下部に取り付けられたバネの付勢力によってアンテナを突出伸張させる技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。この技術によれば、アンテナのストッパ手段に対して直角方向に設けられたストッパ解除用の押しボタンを操作することにより、ストッパ手段を解除することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】実用新案登録第3051507号公報
【特許文献2】実用新案登録第3059321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、ロッドアンテナ105が図5、図6に示すような構成になっていると図7に示すような種々の不具合が発生する。図7は、図5に示す構成の携帯無線機を開閉したときにロッドアンテナに不具合が発生する状態を示す説明図であり、(a)は携帯無線機の開状態、(b)は携帯無線機のスライド時、(c)は携帯無線機の閉状態を示している。なお、図7は、携帯無線機の収納過程において筐体側面方向から見た上部筐体と下部筐体との位置関係を示している。
【0014】
図7(a)に示す筐体の開状態から、図7(c)に示す筐体の閉状態へスライドした場合について説明する。この携帯無線機101は、スライド構造により上部筐体121が下部筐体122と重なる位置までスライドし、スライド構造のストッパ(図示せず)によって動きが重なった位置でストップする。このとき、下部筐体122側へスライドした上部筐体121の衝撃により、図7(b)に示すように、下部筐体122にも上部筐体121のスライドと同方向に力が働く。すなわち、下部筐体122側へスライドした上部筐体121に矢印aの力が働くと、下部筐体122にも同方向の矢印bの力が働く。
【0015】
一方、下部筐体122に収納されたロッドアンテナ105は、慣性の法則によって衝撃の発生する直前の位置に留まろうとする。したがって、下部筐体122から見ると、相対的にロッドアンテナ105を引き出す方向に力が働くことになる。そのため、ロッドアンテナ105の第1のエレメント110及び第2のエレメント111の保持力が、スライドの衝撃によって働く力に対して小さい場合は、図7(c)に示すように、ロッドアンテナ105は下部筐体122の収納位置から飛び出してしまうおそれがある。
【0016】
そこで、このような問題の改善策として、ロッドアンテナ105の伸張方向を上部筐体121のスライド方向と直角にする方法が考えられるが、近年の携帯無線機は小型かつ薄型化の観点から高密度実装が進んでいるので、実装レイアウトの大規模な変更が必要になるため、ロッドアンテナ105の構造変更は極めて難しい。
【0017】
また、図6に示す第1のエレメント110及び第2のエレメント111の保持力を大きくする方法が考えられるが、その場合、ユーザがロッドアンテナ105を引き出す際に大きな力が必要となり、ロッドアンテナ105を引き出しにくくなってしまうというデメリットがある。
【0018】
そこで、ロッドアンテナ105の引き出しにくさを改善するために、指や爪を引っ掛けるための凹み部付キャップ118(図5参照)の凹み部分を大きくし、ユーザの力をかけやすくするという策はあるものの、デザイン重視の携帯無線機では大きな凹み部の追加は容易ではなく、ロッドアンテナ105の多少の引き出しにくさを解消しないまま使用せざるを得ないという問題点もある。
【0019】
さらに、第1のエレメント110の保持力が小さい場合、携帯無線機の下部筐体122内に搭載されているバイブレータ(図示せず)の振動により、携帯無線機の収納状態において第1のエレメント110の上端が振動し、第2のエレメント11の上端と接触することによって金属音が発生するおそれがある。
【0020】
また、前記特許文献1に開示された技術は、係合手段の構造として、アンテナ部分の係合部と筐体部分の被係合部とが互いに爪部分で係合されていて、バネの付勢エネルギーで爪部分の係合力を保持している構成となっている。したがって、携帯電話機に振動を与えたりバイブレータの振動などによって、係合部と被係合部の爪部分の係合が外れてしまってアンテナが突出してしまうおそれがある。また、前記特許文献2に開示された技術は、アンテナのストッパ手段に対して直角方向にストッパ解除用の押しボタンを設けているため、携帯無線機を小型かつ薄型化する観点から、押しボタンの配置が好ましくないレイアウトとなってしまう。
【0021】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成であって、スライド時のロッドアンテナの飛び出しを抑えたまま引き出しにくさを解消すると共に、バイブレータの振動時にロッドアンテナのエレメント同士の接触により発生する金属音を抑えたスライド式携帯無線機、及びスライド式携帯無線機に用いられるアンテナ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、上部筐体、該上部筐体に対して相対的にスライド移動可能な下部筐体、及び前記上部筐体または前記下部筐体の一方の筐体に設けられ、伸縮可能なロッドアンテナを備えたスライド式携帯無線機であって、
前記ロッドアンテナは、先端部に、切欠部を有して回転自在に構成されたキャップを備え、前記一方の筐体は、前記切欠部を通過可能に形成された突起部を備え、前記ロッドアンテナが前記一方の筐体の内部に収納される過程において、前記キャップが任意方向へ回転したとき、前記切欠部が前記突起部を通過し、該突起部と前記キャップの端面とが当接することにより、該ロッドアンテナは所定の位置に収納されることを特徴とするスライド式携帯無線機を提供する。
【0023】
また、本発明は、上部筐体、及び該上部筐体に対して相対的にスライド移動可能な下部筐体を備えたスライド式携帯無線機の前記上部筐体または前記下部筐体の一方の筐体に設けられ、伸縮可能なロッドアンテナを備えたアンテナ装置であって、前記ロッドアンテナは、先端部に、切欠部を有して回転自在に構成されたキャップを備え、該ロッドアンテナが前記一方の筐体の内部に収納される過程において、前記キャップが任意方向へ回転したとき、前記切欠部が前記一方の筐体に形成された突起部を通過し、該突起部と前記キャップの端面とが当接することにより、該ロッドアンテナが所定の位置に収納されることを特徴とするアンテナ装置を提供する。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、携帯無線機のデザイン性に影響を与えることなく、振動などによるロッドアンテナの飛び出しを抑え、かつ、ユーザによるロッドアンテナの引き出しにくさを解消することができる。また、バイブレータの振動によってロッドアンテナのエレメント同士の接触で発生する金属音を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置を含む携帯無線機の概略的な構成図である。
【図2】図1に示すロッドアンテナのキャップ部分の詳細形状を示す図であり、(a)は側面図、(b)は(a)における切断線A−Aでの断面図、(c)は(a)における切断線B−Bでの断面図、(d)は(a)における切断線C−Cでの断面図である。
【図3】図2に示すロッドアンテナの収納状態における筐体側面から見たキャップと筐体ケースとの位置関係を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る携帯無線機において、ロッドアンテナを伸縮させる状態を示す説明図であり、(a)は収納状態、(b)は伸縮経過状態、(c)は伸張状態を示す。
【図5】ロッドアンテナを備えた一般的な携帯無線機の概略的な構成図であり、(a)は携帯無線機の開状態、(b)は携帯無線機の閉状態を示す。
【図6】図5に示すロッドアンテナの詳細な構造を示す図であり、(a)はロッドアンテナの伸張時、(b)はロッドアンテナの収納時を示す。
【図7】図5に示す構成の携帯無線機を開閉したときにロッドアンテナに不具合が発生する状態を示す説明図であり、(a)は携帯無線機の開状態、(b)は携帯無線機のスライド時、(c)は携帯無線機の閉状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態に係る携帯無線機(スライド式携帯無線機)は、ロッドアンテナが、先端部に、切欠部を有していて回転自在に構成されたキャップを備えている。また、下部筐体が、切欠部を通過できるように形成された突起部を備えている。このような構成により、ロッドアンテナが下部筐体の内部に収納される過程において、キャップが任意の方向へ回転したとき、切欠部が突起部を通過して突起部とキャップの端面とが当接すると、ロッドアンテナは下部筐体内の所定の位置に安定的に収納される。以下、本発明に係る携帯無線機(スライド式携帯無線機)とその携帯無線機に用いられるアンテナ装置の好適な実施形態の幾つかについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
《第1実施形態》
図1には、本発明の第1実施形態に係るアンテナ装置を含む携帯無線機の概略的な構成図である。図1に示すように、携帯無線機1は、上部基板2、下部基板3、上部基板2と下部基板3とを導通させるためのフレキシブルケーブル4、及びロッドアンテナ5を備えて構成されている。
【0028】
上部基板2及び下部基板3は、それぞれ、上部筐体21及び下部筐体22の内部に収容されていて、スライド構造(図示せず)によって上部筐体21と下部筐体22が開閉可能に接続されている。
【0029】
上部基板2には、液晶ディスプレイ(図示せず)が搭載されており、下部基板3には、カメラ(図示せず)、給電部6、整合回路7、無線回路8、電池(図示せず)、キーボタン(図示せず)、バイブレータ(図示せず)などが搭載されている。なお、携帯無線機1の開状態とは、上部基板2の液晶ディスプレイ側から見たときに、下部基板3のキーボタンが見える状態である。また、携帯無線機1の開状態は前述の図5(b)と同様の状態であるので図1では図示されていないが、閉状態とは、上部基板2の液晶ディスプレイ側から見たときに下部基板3のキーボタンが見えず、上部筐体21と下部筐体22とが重なっている状態である。
【0030】
上部基板2と下部基板3とを導通させるためのフレキシブルケーブル4は、上部基板2の回路(図示せず)と下部基板3の回路(図示せず)とを電気的に接続している。また、ロッドアンテナ5は、キャップ9、第1のエレメント10、第2のエレメント11、サポート金具12、及びバネ13を備えて構成されている。このサポート金具12は、下部基板3上に形成された給電部7に接続され、整合回路8を介して無線回路9に接続されている。
【0031】
第1のエレメント10の先端部には、下部筐体22(下部基板3)からロッドアンテナ5を伸張/収納する際に使用するキャップ9が設けられている。また、第2のエレメント10の底面にはバネ13が接続されている。なお、フレキシブルケーブル4は、上部基板2と下部基板3とが繰り返し開閉されても断線しないように、柔軟性のある平型多心ケーブルで構成されている。
【0032】
次に、本実施形態におけるアンテナ装置のキャップ9と携帯無線機1の下部筐体22の詳細形状について説明する。図2は、図1に示すロッドアンテナ5のキャップ9部分の詳細形状を示す図であり、(a)は側面図であり、(b)、(c)及び(d)は各部断面図である。
【0033】
図2(a)に示すように、キャップ9を側面から見た形状は、第1の大円部9aと小円部9bと第2の大円部9cとによって段差を有した形状となっている。すなわち、キャップ9を天面から見ると、同図(b)の切断線A−Aにおける断面形状で示すような第1の大円部9aになっていて、円の中心を軸として回転可能な構造を有している。また、第1の大円部9aの下部のくびれ部分は、同図(c)の切断線B−Bにおける断面形状で示すような小円部9bとなっている。さらに、小円部9bの下部は、同図(d)の切断線C−Cにおける断面形状で示すように、大きい円に切欠部14、14が設けられた第2の大円部9cとなっている。
【0034】
図3は、図2に示すロッドアンテナの収納状態における下部筐体22側面から見たキャップ9と下部筐体22との位置関係を示す図である。図3に示すように、下部筐体22には突起部16、16が設けてあり、ロッドアンテナ5が図の上方から下方へ収納されたときに、下部筐体22の突起部16、16がキャップ9の切欠部14、14を通過できる形状となっている。
【0035】
ロッドアンテナ5のキャップ9をこのような形状にすることにより、ユーザがロッドアンテナ5を下方へ収納してキャップ9を回転操作すると、キャップ9の下部にある第2の大円部9c(図2における切断線C−Cでの断面を構成する部分)と下部筐体22に付設された突起部16、16との天面から見た際の重なり位置を変化させることができる。
【0036】
すなわち、図3に示すように、ロッドアンテナ5を下部筐体22に収納したときにキャップ9を回転させることにより、下部筐体22の突起部16、16とキャップ9の切欠部14、14の位置が一致するので、突起部16、16はキャップ9の切欠部14、14を通過させることができる。そして、突起部16、16に対してキャップ9の切欠部14、14が通過して、キャップ9のくびれ部分の小円部9b(図2における切断線B−Bでの断面を構成する部分)が該突起部16、16の位置にきたときにキャップ9をさらに回転させる。これによって、下部筐体22の突起部16、16は、キャップ9の切欠部14、14とは異なる位置で第2の大円部9c(図2における切断線C−Cでの断面を構成する部分)の上端面で当接するので、ロッドアンテナ5は、下部に設けられたバネ13(図1参照)の付勢によって上方へ突出することなく安定した状態で下部筐体22の内部に収納される。
【0037】
ロッドアンテナ5の具体的な伸張/収納方法についてさらに詳しく説明する。図4は、本発明の第1実施形態に係る携帯無線機において、ロッドアンテナを伸縮させる状態を示す説明図であり、(a)は収納状態、(b)は伸縮経過状態、(c)は伸張状態を示している。すなわち、この図は、ロッドアンテナ5の収納状態/伸縮経過状態/伸張状態の各条件において、携帯無線機を筐体側面からみたときのロッドアンテナ5の伸縮状態を示したものである。
【0038】
図4(a)は、ロッドアンテナ5の収納状態において、キャップ9の上端部が下部筐体22の上端面に一致している状態を示している。また、図4(b)は、ロッドアンテナ5が伸張する経過状態において、キャップ9の下端部が下部筐体22の上端面から突出した状態を示している。さらに、図4(c)は、ロッドアンテナ5が所定の長さまで伸張した状態を示している。
【0039】
ロッドアンテナ5の収納状態においては、図4(a)に示すように、第2のエレメント11の底面に接続されたバネ13が、下部筐体22に固定された台座17によって圧縮された状態となっている。すなわち、収納状態のロッドアンテナ5は、バネ13の反発力によって、常に引き出し方向に力が加わる構成となっている。
【0040】
例えば、ロッドアンテナ5を伸張する場合は、ユーザの操作によってキャップ9を回転させ、図3に示すように、下部筐体22の突起部16、16がキャップ9の第2の大円部9cの切欠部14、14の位置に重なるようにする。これにより、図4(a)に示すように、下部筐体22に固定された台座17によるバネ13の反発力によって、ロッドアンテナ5は引き出し方向に力が働く。
【0041】
これによって、図4(b)に示すように、ロッドアンテナ5のキャップ9が少し飛び出した状態となる。次に、ユーザが少し飛び出したキャップ8を持ってロッドアンテナ5を所定の長さまで引き出すことにより、ロッドアンテナ5は、図4(c)に示すような伸張状態となる。したがって、図5で示したような、従来のロッドアンテナで示した凹み部付キャップ118の凹み部分がなくても、本実施形態のロッドアンテナ5を容易に引き出すことができる。
【0042】
一方、ロッドアンテナ5を収納する場合は、前述のような伸張動作とは逆の動作となる。すなわち、図4(c)のように伸張状態にあるロッドアンテナ5を任意の回転位置のまま押し下げ、キャップ9の下端部である第2の大円部9cが下部筐体22の突起部16、16に当接した位置でキャップ9を回転させる。そして、図3に示すように、キャップ9の第2の大円部9cの切欠部14、14が下部筐体22の突起部16、16に一致した位置でさらにキャップ9を押し下げる。
【0043】
これによって、下部筐体22の突起部16、16はキャップ9の切欠部14、14を通過することができるので、図3の示すように、突起部16、16はキャップ9のくびれ部分である小円部9bの位置に収納される。このとき、キャップ9を任意の方向へ少し回転させれば、下部筐体22の突起部16、16は、キャップ9のくびれ部分において第2の大円部9cの上端部で当接される。したがって、キャップ9は下部筐体22の内部に安定的に収納され、ロッドアンテナ5の飛び出しを抑えることができる。
【0044】
さらに、ロッドアンテナ5の収納状態においては、バネ13の反発力により、下部筐体22の突起部16、16がキャップ9のくびれ部分において第2の大円部9cの上端部で当接している状態を付勢することによって、キャップ9の飛び出しが抑えられる構造になっている。そのため、下部筐体に収納されたバイブレータが振動したときでも、第1のエレメント10の上端部付近における振動が抑えられるので、第1のエレメント10の下端部と第2のエレメント11の上端部との接触による金属音を抑えることができる。
【0045】
《第2実施形態》
前記第1実施形態ではキャップに切欠部14,14を設けているが、例えば、切欠部14,14の代わりに、ネジ等に用いられている螺旋状の凹みを施すことによっても第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。さらに、前記第1実施形態では第2のエレメント11の下端部にバネ13を接続しているが、例えば、第2のエレメント11の下端部にバネ13を接続する代わりに、下部筐体22に設けた台座17(図4参照)にバネ13を接続しても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0046】
また、前記第1実施形態では第1のエレメント10と第2のエレメント11とで構成されるロッドアンテナ5について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、さらにエレメント数を増加し、第三のエレメントや第四のエレメントを設けた場合でも第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。さらに、前記第1実施形態では、携帯無線機1としてスライド式の携帯電話機を想定したが、このような携帯電話機に限定されるものではなく、例えば、無線通信機能を備えたPDAや無線通信機能を備えたゲーム機など、携帯電話機以外の携帯無線機にも適用することができる。
【0047】
さらに、前記第1実施形態では下部筐体22に突起部16、16を設けた構成としたが、下部筐体22に突起部16,16を設けるのではなく、下部筐体22から独立したアンテナ構造部に突起部を設けても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、前記第1実施形態では下部筐体22に2個の突起部16,16を設けた構成としたが、例えば、1個の突起部を設けても、あるいは3個以上の突起部を設けても、キャップ9側に対応する個数の切欠部が設けてあれば、第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
また、上記実施形態では、アンテナ装置は下部筐体22に設けられているものとしたが、上部筐体21に設けられるものとしても良い。
【0048】
以上、本発明に係るアンテナ装置の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、本発明の具体的に構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもそれらは本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0049】
1 携帯無線機
5 ロッドアンテナ
9 キャップ
12 サポート金具
13 バネ
14 切欠部
16 突起部
17 台座
21 上部筐体
22 下部筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部筐体、該上部筐体に対して相対的にスライド移動可能な下部筐体、及び前記上部筐体または前記下部筐体の一方の筐体に設けられ、伸縮可能なロッドアンテナを備えたスライド式携帯無線機であって、
前記ロッドアンテナは、先端部に、切欠部を有して回転自在に構成されたキャップを備え、
前記一方の筐体は、前記切欠部を通過可能に形成された突起部を備え、
前記ロッドアンテナが前記一方の筐体の内部に収納される過程において、前記キャップが任意方向へ回転したとき、前記切欠部が前記突起部を通過し、該突起部と前記キャップの端面とが当接することにより、該ロッドアンテナは所定の位置に収納されることを特徴とするスライド式携帯無線機。
【請求項2】
前記ロッドアンテナの下端部にはバネが設けられ、該ロッドアンテナが所定の位置に収納されたとき、前記バネは、前記突起部と前記キャップの端面との当接状態を付勢することを特徴とする請求項1に記載のスライド式携帯無線機。
【請求項3】
前記突起部は前記一方の筐体に1個設けられ、前記切欠部は前記キャップに1個設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスライド式携帯無線機。
【請求項4】
前記突起部は前記一方の筐体に複数個設けられ、前記切欠部は、前記突起部のそれぞれと対応するように複数個設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のスライド式携帯無線機。
【請求項5】
前記ロッドアンテナの収納方向は、前記上部筐体と前記下部筐体の相対的なスライド方向と同方向であることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のスライド式携帯無線機。
【請求項6】
前記ロッドアンテナが所定の位置に収納されている状態において、前記キャップを回転させて前記切欠部の位置と前記突起部の位置とを一致させたとき、該ロッドアンテナは、前記バネの付勢力により、前記キャップの下端面が前記一方の筐体の上端面より上部になるように突出することを特徴とする請求項2乃至5の何れかに記載のスライド式携帯無線機。
【請求項7】
上部筐体、及び該上部筐体に対して相対的にスライド移動可能な下部筐体を備えたスライド式携帯無線機の前記上部筐体または前記下部筐体の一方の筐体に設けられ、伸縮可能なロッドアンテナを備えたアンテナ装置であって、
前記ロッドアンテナは、先端部に、切欠部を有して回転自在に構成されたキャップを備え、
該ロッドアンテナが前記一方の筐体の内部に収納される過程において、前記キャップが任意方向へ回転したとき、前記切欠部が前記一方の筐体に形成された突起部を通過し、該突起部と前記キャップの端面とが当接することにより、該ロッドアンテナが所定の位置に収納されることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項8】
前記ロッドアンテナの下端部にはバネが設けられ、該ロッドアンテナが所定の位置に収納されたとき、前記バネは、前記突起部と前記キャップの端面との当接状態を付勢することを特徴とする請求項7に記載のアンテナ装置。
【請求項9】
前記ロッドアンテナが所定の位置に収納されている状態において、前記キャップを回転させて前記切欠部の位置と前記突起部の位置とを一致させたとき、該ロッドアンテナは、前記バネの付勢力により、前記キャップの下端面が前記一方の筐体の上端面より上部になるように突出することを特徴とする請求項8に記載のアンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−178791(P2012−178791A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41747(P2011−41747)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】