説明

スラッジ脱水装置

【課題】特殊な容器を必要としない簡易な構造でありながら液混じりのスラッジから液を効率よく脱水できるスラッジ脱水装置を提供する。
【解決手段】落下した液混じりのスラッジ22をメッシュ状仕切体21により受けるスラッジ槽部23の下側に、メッシュ状仕切体21を透して落下した液24を受ける液槽部25を設ける。この液槽部25の下部に、液24を排出する排液管26を接続する。この排液管26により液24を排出することで維持する液槽部25内の液24の上限設定レベルより上側であって濾材21より下側の空間28に、吸気管29の一端を開口し、この吸気管29の他端に真空ポンプ31を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液混じりのスラッジから液を脱水するスラッジ脱水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
研削盤などの工作機械で用いられるクーラント液中に含まれるスラッジは、クーラント液とともにコンベアタンク内に貯留され、このコンベアタンク内からコンベヤにより掻き出される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
コンベアタンク内からコンベヤにより掻き出されたスラッジはクーラント液を含んでいる。
【0004】
このようなスラッジを産業廃棄物として産廃業者に出すと、単位重量当りで金額が決められているため、クーラント液を含んでいる分、スラッジの重量が重くなり、産廃業者での処理工程が増えることで、脱水したスラッジに比べて産廃費用が高くなる。
【0005】
これを解決するためにスラッジからクーラント液を脱水する必要がある。
【0006】
そのスラッジ脱水方法としては、スラッジを天日干しなどにより自然乾燥させる自然乾燥方式が最も原始的である。
【0007】
さらに、機械的にスラッジを回転させてクーラント液を遠心分離方式で脱水させる遠心分離機(例えば、特許文献2参照)や、圧縮空気を利用してスラッジを加圧することでクーラント液を搾り出す加圧脱水機(例えば、特許文献3参照)がある。
【0008】
また、メッシュの仕切りによって上下2槽に分かれたチップバケットにより、重力を利用して下の槽に液を滴下させ、溜まった液をタンクへ戻す構造の重力式脱水装置(例えば、特許文献4参照)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−23947号公報(第1頁、図1)
【特許文献2】特開2004−298855号公報(第1頁、図1)
【特許文献3】特開2005−144287号公報(第1頁、図4)
【特許文献4】特開2005−47005号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
自然乾燥方式は、時間がかかるという問題がある。
【0011】
遠心分離機や加圧脱水機は、構造が複雑であるとともに、特殊な容器が必要となる。すなわち、遠心分離機は、ブレーキ機構やドラムの回転機構があるため構造的に複雑になっているとともに、脱水した液が飛び散らないようにするため、また高速回転するドラムの破損時に対処するため、頑丈な容器が必要となる。さらに、圧縮空気を利用した加圧脱水機は、密閉容器内で圧縮空気により液混じりのスラッジから水分を押し出すため、空気漏れがないように密閉容器、密閉構造が必要になる。また、これらの遠心分離機や加圧脱水機は、スラッジを専用の容器へ移し換える必要もあり、手間がかかる。
【0012】
重力式脱水装置は、研削加工によって排出されるスラッジは細かくスラッジ内部に液を含みやすく、液を効率よく重力脱水することは難しい。
【0013】
また、いずれの脱水方式であっても、上記コンベアタンクのコンベアでスラッジを掻き揚げる際のクーラント液の持出しによりタンク内のクーラント液が減ってしまうので脱水により持ち出した液を戻す必要がある。
【0014】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、特殊な容器を必要としない簡易な構造でありながら液混じりのスラッジから液を効率よく脱水できるスラッジ脱水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
請求項1に記載された発明は、落下された液混じりのスラッジを濾材により受けるスラッジ槽部と、上記スラッジ槽部の下側に設けられ、上記濾材を透して落下した液を受ける液槽部と、上記液槽部の下部に接続されて液を排出する排液管と、上記排液管により上記液が排出されることで維持される上記液槽部内の液の上限設定レベルより上側であって上記濾材より下側の空間に開口された吸気管と、上記吸気管に接続された真空源とを具備したスラッジ脱水装置である。
【0016】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のスラッジ脱水装置における上記濾材が、工作機械で用いられたクーラント液を含む液混じりのスラッジを受け、上記排液管は、上記濾材を透して落下した液を、クーラント液として工作機械側に戻すものである。
【0017】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のスラッジ脱水装置における上記吸気管が、水平方向または水平方向より下方へ向かって開口された開口部を具備したものである。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、スラッジ槽部に落下された液混じりのスラッジが濾材を塞ぐため、排液管により液が排出されることで維持される液槽部内の液の上限設定レベルと濾材との間の空間を、この空間に開口されるとともに真空源に接続された吸気管により真空引きすることで、濾材を通して液混じりのスラッジに真空吸引力が作用し、この真空吸引力により、液は強制吸引されて下側の液槽部に落ち、スラッジは濾材上に残るので、スラッジと液とを効率よく個液分離でき、特殊な容器を必要としない簡易な構造でありながら液混じりのスラッジから液を効率よく脱水できる。
【0019】
請求項2記載の発明によれば、液混じりのスラッジから脱水された液を無駄に廃棄することなく、再びクーラント液として有効利用できる。
【0020】
請求項3記載の発明によれば、上記吸気管の開口部を、水平方向または水平方向より下方へ向かって開口することで、上記濾材を透して落下する液が上記吸気管内に浸入するおそれを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るスラッジ脱水装置の一実施の形態を示す概要図である。
【図2】同上脱水装置のチップバケットを示す断面図である。
【図3】本発明に係るスラッジ脱水装置の他の実施の形態を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、図1および図2に示された一実施の形態、図3に示された他の実施の形態に基いて詳細に説明する。
【0023】
図1は、本スラッジ脱水装置11の全体を示し、キャスタ12により移動可能な置き台13上に、脱水槽本体としてのチップバケット14が設置されている。図2は、そのチップバケット14の詳細を示す。
【0024】
上記チップバケット14は、濾材としてのメッシュ状仕切体21によって、落下された液混じりのスラッジ22を上記メッシュ状仕切体21により受けるスラッジ槽部23と、上記スラッジ槽部23の下側に設けられ、上記メッシュ状仕切体21を透して落下した液24を受ける液槽部25とに区画形成されている。
【0025】
濾材としては、濾紙または多孔質板などを用いてもよいが、耐久性などを考慮するとメッシュ状仕切体21が望ましい。このメッシュ状仕切体21は、図2に示されるようにチップバケット14の内壁面に溶接などで固定されるフレーム21aの内空部に、スラッジの粒より細かいメッシュのネット21bが張設されたものである。
【0026】
上記液槽部25の下部には、図2に示されるように排液口部25aが設けられ、この排液口部25aに、図1に示されるように液槽部25内の液24を排出する排液管26が接続されている。
【0027】
上記排液管26中には、手動式または電磁式の開閉弁27が設けられている。この開閉弁27は、液槽部25内の液面が上限設定レベルまで上昇した場合は、その液面レベルを監視する液面センサ(図示せず)からの信号を受けた報知手段(ブザー、警告灯など)の注意喚起作動により作業員が手動で開閉弁27を開くか、または上記液面センサからの信号により電磁式の開閉弁27を自動的に開いて、液槽部25内の液面が上限設定レベル以上に上昇することを防止する。
【0028】
上記メッシュ状仕切体21により、工作機械(図示せず)で用いられたクーラント液を含む液混じりのスラッジ22を受けた場合は、上記排液管26により、上記メッシュ状仕切体21を透して落下した液24を、クーラント液として工作機械側に戻すことが望ましい。一方、汚泥処理などにおけるスラッジ脱水では、脱水後の液を元に戻す必要はない。
【0029】
図2に示されるように、上記排液管26により液24が排出されることで維持される上記液槽部25内の液24の上限設定レベルより上側であって上記メッシュ状仕切体21より下側の空間28には、吸気管29の一端に設けられた開口部29aが開口されている。
【0030】
この吸気管29は、脱水して上記液槽部25内に溜った液が真空源へ行かないように配管を立ち上げ、かつメッシュ状仕切体21から滴下する液が吸気管29内に入らないように、先端部に90°エルボ管継手29eを接続することにより、このエルボ管継手29eの一方の開口部が水平方向へ向かって開口された上記開口部29aとなっている。
【0031】
図1に示されるように、上記吸気管29の他端には真空源としての真空ポンプ31が接続されている。
【0032】
一方、図3は、上記吸気管29に真空源としての水またはガス式のエジェクタ32が接続されたもので、駆動流体ポンプまたはコンプレッサから、水または空気などのガスを駆動流体としてエジェクタ32の入口側から出口側に供給されると、エジェクタ32内の絞り33により増速された駆動流体の周囲に負圧が発生するので、この負圧を利用して真空引きを行なうようにする。
【0033】
次に、図1および図2に示された一実施の形態、および図3に示された他の実施の形態の作用を、まとめて説明する。
【0034】
チップバケット14はメッシュ状仕切体21によって上下2層に分かれており、上のスラッジ槽部23には、工作機械に付属するコンベアタンク内からコンベアにより掻き上げられてきた液混じりのスラッジ22が溜まり、最初は、スラッジ22の固形分から重力分離された液24が下の液槽部25に溜まる。
【0035】
メッシュ状仕切体21によって仕切られた下の液槽部25は、液面の上限設定レベルにより、常に気液分離された状態にある。液24の液面が上限設定レベルを超えようとする場合は、開閉弁27を開いて液24を外部へ排出するが、通常の開閉弁27は閉じた状態にある。
【0036】
上のスラッジ槽部23内では、上記コンベアにより掻き出されたスラッジを、人手により、またはスラッジ槽部23内で水平運動される図示しないスクレーパなどを自動運転して、均一に敷き均すことが、後の均一な真空引き効果を得る上で望ましい。
【0037】
これは、液混じりのスラッジ22を、下側の空間28を真空引きする際の蓋として機能させるためである。
【0038】
よって、液混じりのスラッジ22の蓄積が所定の厚みまで進んだ状態で、開閉弁27が閉じた状態を確認して、図1に示された真空ポンプ31または図3に示されたエジェクタ32を駆動し、下の液槽部25内に確保された空間28を真空引きすることで、スラッジ21内の液が真空側に引かれて、下の液槽部25内に落ち、スラッジ22はメッシュ状仕切体21の上に残り、個液分離がなされる。
【0039】
このように、脱水方式として、メッシュ状仕切体21により脱水ができる構造のチップバケット14と、図1に示された真空ポンプ31または図3に示された水またはガス式のエジェクタ32による真空引き技術とを組み合わせて利用し、コンベアタンクから掻き出されたクーラント液混じりのスラッジ22から液24を分離し、スラッジを脱水する。
【0040】
脱水によって出た液24は、真空引きをしないときに、開閉弁27を開いて、排液管26により再び工作機械に付随するクーラントタンクへ戻し、一方、スラッジの固形分は廃棄処理する。
【0041】
次に、本スラッジ脱水装置11の効果を、他の脱水方式との比較により説明する。
【0042】
従来の遠心分離機は、構造的に複雑で、かつ頑丈な容器が必要となるが、本脱水装置は、チップバケット14がメッシュ状仕切体21により2槽に分かれているだけで、他は真空ポンプ31や水またはガス式のエジェクタ32などの真空源があれば構成できるので、シンプルな構造となる。
【0043】
また、従来の圧縮空気を利用した加圧脱水機は、空気漏れがないように密閉容器が必要になるが、本脱水装置は、液を含んだスラッジ22でメッシュ状仕切体21を覆うことで蓋の代わりとなり、密閉容器にしなくても水分を真空側へ引き抜くことができる。
【0044】
すなわち、本スラッジ脱水装置11は、スラッジ槽部23に落下された液混じりのスラッジ22がメッシュ状仕切体21を塞ぐため、排液管26により外部へ排出されることで維持される液槽部25内の液24の上限設定レベルとメッシュ状仕切体21との間の空間28を、この空間28に開口されるとともに真空源に接続された吸気管29により真空引きすることで、メッシュ状仕切体21を通して液混じりのスラッジ22に真空吸引力が作用し、この真空吸引力により、液24は強制吸引されて下側の液槽部25に落ち、スラッジ22はメッシュ状仕切体21上に残るので、スラッジ22と液24とを効率よく個液分離でき、特殊な容器を必要としない簡易な構造でありながら液混じりのスラッジ22から液24を効率よく脱水できる。
【0045】
また、液混じりのスラッジ22からメッシュ状仕切体21を透して落下した液24を、クーラント液として工作機械側に戻す場合は、脱水された液24を無駄に廃棄することなく、再びクーラント液として有効利用できる。
【0046】
さらに、90°エルボ継手管29eなどを利用して吸気管29の開口部29aを水平方向へ向かって開口し、上方へ開口しないようにすることで、メッシュ状仕切体21を透して落下する液が吸気管29内に浸入するおそれを防止できる。
【0047】
なお、上記吸気管29の開口部29aは、水平方向より下方へ向けてもよい。例えば、上記90°エルボ継手管29eにさらに同様の90°エルボ管継手または45°エルボ管継手を接続して、吸気管29の開口部を真下または斜め下方へ向けてもよい。あるいは上記エルボ継手管29eに替えて、吸気管29の直上の開口部に傘状のカバーを設置してもよい。
【0048】
このように、吸気管29の開口部29aを、水平方向より下方へ向かって開口した場合は、メッシュ状仕切体21を透して落下する液が吸気管29内に浸入するおそれを、より確実に防止できる。
【実施例】
【0049】
図2に示された脱水ができる構造のチップバケット14と、図1に示された真空ポンプ31とを用いたスラッジ脱水装置11により、クーラント液を含むスラッジ22から、脱水時間7分で含水率7%の脱水が確認された。なお、その含水率とは、脱水後の湿潤スラッジ重量(kg)に対する(脱水後の湿潤スラッジ重量(kg)−乾燥後のスラッジ重量(kg))の割合である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、工作機械、汚泥処理設備などから発生する液混じりのスラッジから液を脱水するスラッジ脱水装置を製造する製造業、販売する販売業などにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0051】
11 スラッジ脱水装置
21 濾材としてのメッシュ状仕切体
22 スラッジ
23 スラッジ槽部
24 液
25 液槽部
26 排液管
28 空間
29 吸気管
29a 開口部
31 真空源としての真空ポンプ
32 真空源としてのエジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落下された液混じりのスラッジを濾材により受けるスラッジ槽部と、
上記スラッジ槽部の下側に設けられ、上記濾材を透して落下した液を受ける液槽部と、
上記液槽部の下部に接続されて液を排出する排液管と、
上記排液管により上記液が排出されることで維持される上記液槽部内の液の上限設定レベルより上側であって上記濾材より下側の空間に開口された吸気管と、
上記吸気管に接続された真空源と
を具備したことを特徴とするスラッジ脱水装置。
【請求項2】
上記濾材は、工作機械で用いられたクーラント液を含む液混じりのスラッジを受け、
上記排液管は、上記濾材を透して落下した液を、クーラント液として工作機械側に戻す
ことを特徴とする請求項1記載のスラッジ脱水装置。
【請求項3】
上記吸気管は、
水平方向または水平方向より下方へ向かって開口された開口部
を具備したことを特徴とする請求項1または2記載のスラッジ脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−148367(P2012−148367A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8489(P2011−8489)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(000226002)株式会社ニクニ (25)
【Fターム(参考)】