説明

スラリー乾燥機

【課題】厚さが略均一な良質のスラリー乾燥物を製造し易くする。
【解決手段】複数の円板3をその軸芯方向に間隔を隔てて同芯状に固定してある回転体4と、回転体を駆動回転自在な駆動装置11と、円板の板面5に原料スラリーを塗布可能なスラリー塗布装置6と、板面に塗布された原料スラリーを加熱乾燥可能な加熱装置13と、板面に付着しているスラリー乾燥物を掻き取り可能なスクレーパ9とを備え、スクレーパは、板面毎に各別に対応させて機枠45側に支持してあるとともに、その板面に対して弾性的に圧接させてあるスラリー乾燥機であって、軸芯方向で互いに対向する板面毎に対応させて支持してある一対のスクレーパの双方を板面に向けて弾性的に押圧可能な押圧具32を、一方のスクレーパに対する押圧力Pの反力を他方のスクレーパに対する押圧力として伝達可能に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の円板をその軸芯方向に間隔を隔てて同芯状に固定してある回転体と、前記回転体を駆動回転自在な駆動装置と、前記円板の板面に原料スラリーを塗布可能なスラリー塗布装置と、前記板面に塗布された原料スラリーを加熱乾燥可能な加熱装置と、前記板面に付着しているスラリー乾燥物を掻き取り可能なスクレーパとを備え、前記スクレーパは、前記板面毎に各別に対応させて機枠側に支持してあるとともに、その板面に対して弾性的に圧接させてあるスラリー乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記スラリー乾燥機は、回転体を駆動回転させながら、複数の円板の板面に原料スラリーを塗布し、かつ、塗布済みの原料スラリーを加熱乾燥させて、出来上がったスラリー乾燥物をスクレーパで板面から掻き取ることができるので、大量のスラリー乾燥物を連続的に製造できる。
【0003】
上記スラリー乾燥機は、板面に塗布された原料スラリーを加熱乾燥させるに伴って回転体の温度が上昇するので、その回転軸部材の長さが熱膨張で長くなるが、従来、図8(a)に示すように、円板3の板面5毎に各別に対応するスクレーパ9(9a,9b)を板面5に対して弾性的に圧接させるために、スクレーパ9自体を弾性変形可能な材料で形成して、そのスクレーパ9を板面5に押し当てて強制的に弾性変形させた状態で機枠45側に支持しておくことにより、その弾性復元力Fで板面5に対して弾性的に圧接させてある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−220371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスラリー乾燥機は、回転体の温度が上昇してその回転軸部材の長さが熱膨張により長くなると、図8(b)に示すように、軸芯方向で隣り合う円板3の互いに対向する二つの板面5の組み合わせと、それらの板面5毎に各別に対応させて機枠45側に支持してある二つスクレーパ9a,9bの組み合わせとの相対位置が変化するので、板面5との相対位置が近接する一方のスクレーパ9aにおいては弾性変形量が増大して板面5に対する圧接力Faも増大し、板面5との相対位置が離間する他方のスクレーパ9bにおいては弾性変形量が減少して板面5に対する圧接力Fbも減少する。
このため、厚さが略均一な良質のスラリー乾燥物を製造できるようにするべく、各スクレーパの板面に対する圧接力の調整に熟練を要すると共に、手間も掛かり、厚さが略均一な良質のスラリー乾燥物を製造し難い欠点がある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、厚さが略均一な良質のスラリー乾燥物を製造し易くすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1特徴構成は、複数の円板をその軸芯方向に間隔を隔てて同芯状に固定してある回転体と、前記回転体を駆動回転自在な駆動装置と、前記円板の板面に原料スラリーを塗布可能なスラリー塗布装置と、前記板面に塗布された原料スラリーを加熱乾燥可能な加熱装置と、前記板面に付着しているスラリー乾燥物を掻き取り可能なスクレーパとを備え、前記スクレーパは、前記板面毎に各別に対応させて機枠側に支持してあるとともに、その板面に対して弾性的に圧接させてあるスラリー乾燥機であって、
前記軸芯方向で互いに対向する板面毎に対応させて支持してある一対のスクレーパの双方を前記板面に向けて弾性的に押圧可能な押圧具を、一方のスクレーパに対する押圧力の反力を他方のスクレーパに対する押圧力として伝達可能に設けてある点にある。
【0007】
〔作用及び効果〕
軸芯方向で互いに対向する板面毎に対応させて支持してある一対のスクレーパの双方を板面に向けて弾性的に押圧可能な押圧具を設けてあるので、押圧具によるスクレーパに対する押圧力が、スクレーパの板面に対する圧接力として作用する。
そして、この押圧具を、一方のスクレーパに対する押圧力の反力を他方のスクレーパに対する押圧力として伝達可能に設けてあるので、回転体の温度が上昇してその回転軸部材の長さが熱膨張により長くなり、その結果、軸芯方向で隣り合う円板の互いに対向する二つの板面の組み合わせと、それらの板面毎に各別に対応させて機枠側に支持してある二つスクレーパの組み合わせとの相対位置が変化しても、板面との相対位置が近接する一方のスクレーパも、板面との相対位置が離間する他方のスクレーパも、略同じ押圧力で板面に向けて弾性的に押圧することができる。
従って、回転体の温度が上昇してその回転軸部材の長さが長くなっても、各スクレーパの板面に対する圧接力を特に調整することなく、二つスクレーパの板面に対する圧接力の大きさを略同じ大きさに維持し易くなり、厚さが略均一な良質のスラリー乾燥物を製造し易い。
【0008】
本発明の第2特徴構成は、前記押圧具は、前記一対のスクレーパの双方を共通の弾性部材の弾性力で前記板面に向けて弾性的に押圧可能に設けてある点にある。
【0009】
〔作用及び効果〕
押圧具は、一対のスクレーパの双方を共通の弾性部材の弾性力で板面に向けて弾性的に押圧可能に設けてあるので、構造の簡略化を図り易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、ウイスキー製造の際に生じる酵母が懸濁した原料スラリーを加熱乾燥させて、スラリー乾燥物としての乾燥酵母を製造するための本発明によるスラリー乾燥機を示している。
【0011】
前記スラリー乾燥機は、揺動開閉自在なカバー板1a,1b,1cを備えたケーシング2の内側に複数の円板3をその軸芯方向に間隔を隔てて同芯状に固定してある金属製回転体4を設けてある乾燥機本体Aと、図外のスラリー貯留槽からポンプを用いて供給された原料スラリーを乾燥機本体Aの下側で貯留するスラリータンクBとを設置してあり、ケーシング2の下部に形成したスラリーホッパーCをスラリータンクBの底部近くに連通してある。
【0012】
前記乾燥機本体Aには、各円板3の表裏の板面5毎に、板面5に原料スラリーを吹き付け塗布可能なスラリー塗布装置としてのスラリー吹き付け具6と、板面5に塗布された原料スラリーに接触させてその塗布厚さを均す均し面7を備えた鋼製丸棒で構成してある均し具8と、板面5に付着しているスラリー乾燥物をフレーク状に掻き取る鋼(硬質金属)製のスクレーパ9(9a,9b)とを、円板3の図中の矢印で示す回転方向に間隔を隔てて順に配設してある。
【0013】
前記均し具8は、図3に示すように、円板3の板面5との間に隙間ができるように配設してあると共に、隣り合う円板3の間に位置するものどうしを、バネ44を内部に装着してあって弾性的に伸縮可能な接続部材43で互いに接続してある。
【0014】
前記回転体4は、複数の円板3を、略一定間隔を隔てて、回転軸部材10で同芯状に一体に連結して構成してあって、駆動装置としての電動モータ11で横軸芯X周りで駆動回転自在に支持してあり、各円板3をその内部に円形中空部を同芯状に形成してある中空円板で構成するとともに、回転軸部材10を各円板3の中空部に連通する中空部12を同芯状に形成してある中空軸で構成してある。
【0015】
そして、回転軸部材10の端部の夫々に給気ダクト14aと排気ダクト14bとを連設して、ボイラーから供給された高温の水蒸気を、給気ダクト14aから回転軸部材10の中空部12に通して、各円板3の中空部に供給することにより、各円板3を加熱して、それらの円板3の板面5に塗布してある原料スラリーを加熱乾燥可能な加熱装置13を設けてある。
【0016】
前記スラリー吹き付け具6の夫々は、多数の吹き出し孔を管壁に備えた筒状に形成してヘッダ15に接続してあり、スラリータンクBから循環ポンプ16でヘッダ15に供給された原料スラリーを各円板3の板面5に吹き付けることができるように設けてある。
尚、板面5に吹き付けた原料スラリーのうちの余剰スラリーは、スラリーホッパーCを介して、スラリータンクBに回収できるように構成してある。
【0017】
また、各円板3の板面5に洗浄水(温水)を吹き付けてその板面5を洗浄する円板洗浄用ノズル17と、各均し具8に洗浄水(温水)を吹き付けてその均し面7を洗浄可能な洗浄具としての均し具洗浄用ノズル18とを設けてあり、板面5に吹き付けた洗浄水と均し具8に吹き付けた洗浄水とを、スラリーホッパーCを介して、スラリータンクBに回収する洗浄水回収装置19を構成してある。
【0018】
前記スクレーパ9a,9bは、図3,図4に示すように、一側縁に沿って刃部20を形成してある帯板材で構成してあり、横軸芯X方向で互いに対向する板面5毎に各別に対応させて、回転軸部材10側ほど高くなる傾斜姿勢で板面5に沿って配設してあるとともに、隣り合う円板3間に配設してある一対のスクレーパ9a,9bの双方を板面5に向けて押圧可能な押圧具32を設けて、この押圧具32による押圧力Pで各スクレーパ9a,9bの刃部20を円板3の板面5に対して弾性的に圧接させてある。
【0019】
前記スクレーパ9(9a,9b)の支持構造を説明すると、スクレーパ9の基部側を、互いにボルト固定してある補強用の一対の板状金具21a,21bで挟み込むとともに、スクレーパ支持部22をケーシング2側に設けて、隣り合う円板3間に配設してある一対のスクレーパ9a,9bを、板状金具21a,21bを介して、共通のスクレーパ支持部22で機枠45に支持してある。
【0020】
前記スクレーパ支持部22は、図5にも示すように、V字状の受け面23を夫々形成してある一対の支持レール24を、受け面23を上に向けて、機枠45側に固定してある固定アーム25の左右両側にスペーサ26を挟んで互いに平行に、かつ、回転軸部材10側ほど高くなる傾斜姿勢でボルト固定するとともに、二つの凹溝27を一側面側に形成してあるスクレーパ係止板28a,28bを、各凹溝27を受け面23側に対向させた姿勢で、一対の支持レール24に亘って、その両端部の夫々にボルト固定して構成してある。
【0021】
そして、図6に示すように、各スクレーパ9a,9bを挟み込んでいる板状金具21a,21bのうちの、円板3側から挟み込んでいる板状金具21aの長手方向両端部に側面視で湾曲形状の切欠き29,30を形成するとともに、回転軸部材10側に配設する一端側の切欠き29の深さを、他端側の切欠き30の深さよりも深くして、各スクレーパ9a,9bを支持レール24の受け面23に支持させる際に、図6(a)に示すように、一端側の深い切欠き29に回転軸部材10側の高い位置のスクレーパ係止板28aの凹溝27部分を深く入り込ませた後、他端側の浅い切欠き30を他方のスクレーパ係止板28bの凹溝27部分に臨ませた姿勢で受け面23に沿って移動させて、図6(b)に示すように、そのスクレーパ係止板28bの凹溝27部分を浅い切欠き30に入り込ませることにより、板状金具21aの下向き角部31を受け面23に載置して、各スクレーパ9a,9bをスクレーパ支持部22に支持してある。
【0022】
前記押圧具32は、一対のスクレーパ9a,9bの双方を背面側から押さえて、各刃部20を円板3の板面5に対して押し付けるための押え板33を、固定アーム25に立設してある軸部材34に挿通すると共に、その押え板33をスクレーパ9a,9bの背面側に押圧する圧縮コイルバネ35を軸部材34に挿通し、蝶ナット36でワッシャ38を介して圧縮力を調節自在に抜け止めして、各スクレーパ9a,9bの刃部20を共通の圧縮コイルバネ35の弾性力で円板3の板面5に向けて弾性的に押圧可能に設けてある。
【0023】
そして、押え板33とその押え板33に挿通してある軸部材34とが、横軸芯X方向に相対変位できるように、軸部材挿通孔37を横軸芯X方向に長い長孔に形成して、回転体4の温度が上昇してその回転軸部材10の長さが熱膨張により長くなり、その結果、図4(b)に示すように、横軸芯X方向で隣り合う円板3の互いに対向する二つの板面5の組み合わせと、それらの板面5毎に各別に対応させて機枠45側に支持してある二つスクレーパ9a,9bの組み合わせとの相対位置が変化しても、押え板33と軸部材34との横軸芯X方向に沿う相対変位で、一方のスクレーパ9a(9b)に対する押圧力Pの反力を他方のスクレーパ9b(9a)に対する押圧力Pとして伝達可能に設けてある。
【0024】
前記スクレーパ9の夫々で掻き取ったスラリー乾燥物は、ケーシング2の下部に形成した乾燥物ホッパー39からスクリュー搬送装置40に落下させて、機外に連続的に搬出できるように構成してある。
【0025】
〔第2実施形態〕
図7は、本発明によるスラリー乾燥機の別実施形態を示し、筒体41を横軸芯X方向に沿わせて固定アーム25に固定し、筒体41の内側に一対の押圧部材42を筒軸芯方向に沿って移動自在に装着するとともに、その一対の押圧部材42の間に圧縮コイルバネ35を装着して、軸芯方向で互いに対向する板面5毎に対応させて支持してある一対のスクレーパ9a,9bの双方を一対の押圧部材42で板面6に向けて弾性的に押圧可能な押圧具32を、一方のスクレーパ9a(9b)に対する押圧力Pの反力を他方のスクレーパ9b(9a)に対する押圧力Pとして伝達可能に設けてある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0026】
〔その他の実施形態〕
1.本発明によるスラリー乾燥機は、回転体を縦軸周りで駆動回転自在に設けてあっても良い。
2.本発明によるスラリー乾燥機は、円板に塗布した原料スラリーを円板の外側から加熱して乾燥可能な加熱装置を設けてあっても良い。
3.本発明によるスラリー乾燥機は、磁石の斥力を利用して、軸芯方向で互いに対向する板面毎に対応させて支持してある一対のスクレーパの双方を一対の押圧部材で板面に向けて弾性的に押圧可能な押圧具を、一方のスクレーパに対する押圧力の反力を他方のスクレーパに対する押圧力として伝達可能に設けてあっても良い。
4.本発明によるスラリー乾燥機は、各種食品の残滓が懸濁した原料スラリーや汚泥が懸濁した原料スラリーを乾燥するものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】スラリー乾燥機の内部を示す正面図
【図2】スラリー乾燥機の内部を示す側面図
【図3】要部の平面図
【図4】要部の一部断面図
【図5】要部の斜視図
【図6】スクレーパ支持方法の説明図
【図7】第2実施形態の説明図
【図8】従来技術の説明図
【符号の説明】
【0028】
3 円板
4 回転体
5 板面
6 スラリー塗布装置
9 スクレーパ
11 駆動装置
13 加熱装置
32 押圧具
35 弾性部材
45 機枠
P 押圧力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の円板をその軸芯方向に間隔を隔てて同芯状に固定してある回転体と、前記回転体を駆動回転自在な駆動装置と、前記円板の板面に原料スラリーを塗布可能なスラリー塗布装置と、前記板面に塗布された原料スラリーを加熱乾燥可能な加熱装置と、前記板面に付着しているスラリー乾燥物を掻き取り可能なスクレーパとを備え、
前記スクレーパは、前記板面毎に各別に対応させて機枠側に支持してあるとともに、その板面に対して弾性的に圧接させてあるスラリー乾燥機であって、
前記軸芯方向で互いに対向する板面毎に対応させて支持してある一対のスクレーパの双方を前記板面に向けて弾性的に押圧可能な押圧具を、一方のスクレーパに対する押圧力の反力を他方のスクレーパに対する押圧力として伝達可能に設けてあるスラリー乾燥機。
【請求項2】
前記押圧具は、前記一対のスクレーパの双方を共通の弾性部材の弾性力で前記板面に向けて弾性的に押圧可能に設けてある請求項1記載のスラリー乾燥機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−241235(P2008−241235A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2007−280421(P2007−280421)
【出願日】平成19年10月29日(2007.10.29)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】