説明

セキュリティ媒体及びそれを用いた真贋判定方法

【課題】組み合わせによって真贋判定可能なセキュリティ媒体、並びに、それを用いた真贋判定方法を提供する。
【解決手段】本発明のセキュリティ媒体は、複数の3次元微細構造物が第1のピッチで配列された3次元微細構造物アレイを有し、複数のマイクロレンズが前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列されたマイクロレンズアレイを有する判定シートを前記3次元微細構造物アレイに重ねることで、前記マイクロレンズの略焦点位置に前記3次元微細構造物を位置させ、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真贋判定を可能とするセキュリティ媒体、特に、直接目視することでは判別不可能な3次元微細構造物を有するセキュリティ媒体、並びに、その真贋判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金券やID証など、偽造防止を必要とされている媒体において、特殊な装置を必要とすることなく簡易に真贋判定出来ることが求められている一方で、複製が困難なハイセキュリティ性が求められている。
【0003】
従来、パールインキやホログラムなど容易に目視判断出来る偽造防止画像形成物や、印刷物の中に2次元の潜像図柄を組込みマイクロレンズによって潜像を発現させて真贋判定可能な偽造防止画像形成物が知られている。また3次元形状を持つ構造物のシートの上にマイクロレンズシートを接着層で接着し、モアレの効果で拡大像を発現させるものも知られている。
【0004】
特許文献1には、回折構造からなる表示パターンの上側にブレーズド型もしくはバイナリ型のホログラムレンズを重ね合わせることで生じるモアレ効果によって合成像を表示する表示体が開示されている。
【0005】
特許文献2には、マイクロレンズと顕微鏡レベル構造体を組み合わせ、顕微鏡レベル構造体をモアレ効果で拡大させて見るセキュリティ媒体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−186544号公報
【特許文献2】特表2008−529851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、特許文献2に開示されるセキュリティ媒体は、それ自体で真贋判定を行うことのできる、いわゆるオバートなセキュリティ媒体である。このようなオバートなセキュリティ媒体では、セキュリティ媒体自体のみを用い、それに提示される像が所定の像であるか否かを観察することで真贋判定が行うことが可能とされている。
【0008】
真贋判定には、このようなオバートな判定方法のみならず、ルーペ等の簡易な判別具を使用して判定を行うコバートな判定方法、さらには、分析装置などを利用してさらに複雑な判定を行うフォレンジックな判定方法が知られている。コバートな判定方法によれば、判定のための判別具を所有する鑑定者のみが真贋判定を行うことが可能となり、真贋判定における秘匿性のみならず、セキュリティ媒体の偽造や模造を抑制することも可能となる。
【0009】
本発明の目的の1つは、このようなコバートな真贋判定を利用する新たなセキュリティ媒体、並びに、セキュリティ媒体を利用した真贋判定方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そのため本発明に係るセキュリティ媒体は、
複数の3次元微細構造物が第1のピッチで配列された3次元微細構造物アレイを有し、
複数のマイクロレンズが前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列されたマイクロレンズアレイを有する判定シートを前記3次元微細構造物アレイに重ねることで、前記マイクロレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物を位置させ、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする。
【0011】
また本発明に係るセキュリティ媒体は、
第1の領域に3次元微細構造物アレイが形成され、第2の領域にマイクロレンズアレイが形成された可撓性を有するシートを備え、
前記3次元微細構造物アレイは、複数の3次元微細構造物が第1のピッチで配列され、
前記マイクロレンズアレイは、複数のマイクロレンズが前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列され、
前記シートを曲げ、前記マイクロレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物を位置させることで、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする。
【0012】
また本発明に係るセキュリティ媒体は、
複数の3次元微細構造物が第1のピッチで配列された3次元微細構造物アレイを有する第1のシートと、
複数のマイクロレンズが前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列されたマイクロレンズアレイを有する第2のシートと、
前記第1のシートと前記第2のシートは開閉可能に綴じられると共に、閉じた状態において、前記マイクロレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物が位置するように前記第1のシートに前記第2のシートが重なることで、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする。
【0013】
また本発明に係るセキュリティ媒体は、
複数のマイクロミラーレンズが第1のピッチで配列されたマイクロミラーレンズアレイを有し、
複数の3次元微細構造物が前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列された3次元微細構造物アレイを有する判定シートを前記マイクロミラーレンズアレイに重ねることで、前記マイクロミラーレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物を位置させ、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする。
【0014】
また本発明に係るセキュリティ媒体は、
第1の領域に3次元微細構造物アレイが形成され、第2の領域にマイクロミラーレンズアレイが形成された可撓性を有するシートを備え、
前記マイクロミラーレンズアレイは、複数のマイクロミラーレンズが第1のピッチで配列され、
前記3次元微細構造物アレイは、複数の3次元微細構造物が前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列され、
前記シートを曲げ、前記マイクロミラーレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物を位置させることで、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする。
【0015】
また本発明に係るセキュリティ媒体は、
複数のマイクロミラーレンズが第1のピッチで配列されたマイクロミラーレンズアレイを有する第1のシートと、
複数の3次元微細構造物が前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列された3次元微細構造物アレイを有する第2のシートと、
前記第1のシートと前記第2のシートは開閉可能に綴じられると共に、閉じた状態において、前記マイクロミラーレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物が位置するように、
前記第1のシートに前記第2のシートが重なることで、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする。
【0016】
また本発明に係る真贋判定方法は、前述した何れか1つのセキュリティ媒体を用いて真贋判定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、3次元微細構造物アレイを有するセキュリティ媒体を提供するものであって、特に、マイクロレンズアレイが形成された判定シートを重ねることで、セキュリティ媒体に形成された3次元微細構造物アレイを拡大して観察することを可能としている。判定シートは真贋鑑定者によって所有されるものであって、いわば判定シートを鍵として使用するコバートな判定を可能とするセキュリティ媒体を提供することを可能としている。
【0018】
さらに本発明は、1枚のシートの第1の領域に3次元微細構造物を、第2の領域にマイクロレンズアレイを形成したセキュリティ媒体を提供することとしている。このような構成の場合には、3次元微細構造物に対するマイクロレンズアレイの重ね方を判定方法として真贋判定を行うことが可能となる。そのため、3次元微細構造物、マイクロレンズアレイの形成箇所、判定時における重ね方を鍵として真贋判定を行うことが可能となる。さらには、3次元微細構造物アレイ、マイクロレンズアレイを個別に観察することで真贋判定を行うことも可能となる。
【0019】
さらに本発明は、開閉可能に綴じられた第1のシート、第2のシートのそれぞれに3次元微細構造物アレイ、マイクロレンズアレイを形成したセキュリティ媒体を提供することとしている。このような構成の場合には、ページを閉じて3次元微細構造物アレイ上にマイクレンズアレイを重ね、拡大された3次元微細構造物を観察することによる真贋判定を行うことが可能となる。さらには、ページを開いて3次元微細構造物、マイクロレンズアレイを個別に観察することによる真贋判定も可能とされる。
【0020】
以上、3次元微細構造物アレイ、マイクロレンズアレイを用いた場合の効果について言及したが、3次元微細構造物アレイ、マイクロミラーレンズアレイを用いた場合においても同様の効果を奏することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体の利用形態を示す斜視図(分離時)
【図2】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体の利用形態を示す斜視図(重畳時)
【図3】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプA)の観察時の様子を示す模式図
【図4】本発明の実施形態に係る3次元微細構造物、マイクロレンズの配列を示す図
【図5】本発明の他の実施形態に係る3次元微細構造物、マイクロレンズの配列を示す図
【図6】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプA)の実像表示原理を示す図
【図7】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプA)の虚像表示原理を示す図
【図8】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプB)の観察時の形態を示す模式図
【図9】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプB)の実像表示原理を示す図
【図10】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプB)の虚像表示原理を示す図
【図11】実像表示時における3次元微細構造物のピッチとピッチ差の関係を示す図
【図12】虚像表示時における3次元微細構造物のピッチとピッチ差の関係を示す図
【図13】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(実施例1:タイプA)の断面を示す図
【図14】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(実施例2:タイプB)の断面を示す図
【図15】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(実施例3:タイプA)の形態を示す図
【図16】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(実施例3:タイプA)の断面を示す図
【図17】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(実施例4:タイプA)の断面を示す図
【図18】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(実施例5:タイプB)の断面を示す図
【図19】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(実施例6:タイプA)の形態を示す図
【図20】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(実施例6:タイプA)の断面を示す図
【図21】本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(実施例7:タイプA)の断面を示す図
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係るセキュリティ媒体の実施形態について図を用いて詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体を有するセキュリティカードを示す斜視図である。セキュリティ媒体は、クレジットカードやID証、紙幣、金券、有価証券など真贋判定が必要とされる各種カード、紙類などに形成される媒体であって、容易に複製を作製することができないことが必要とされる。
【0023】
図1に示すセキュリティ媒体5は、クレジットカードのようなセキュリティカード4に設けられた例となっている。本実施形態のセキュリティ媒体5は、3次元微細構造物が配列された3次元微細構造物アレイ6を有して構成されている。真贋判定を行う際は、図2に示されるように、このセキュリティカード4に設けられたセキュリティ媒体5に判定シート9を重ねることで実行される。本実施形態の判定シート9には、マイクロレンズアレイ7が設けられいる。真贋判定を行う際は、セキュリティ媒体5に判定シート9を重ねた状態において、マイクロレンズアレイ7を介して観察される像(拡大された3次元微細構造物)が所定の像であることをもって真のセキュリティカード4であることを確認可能としている。以後の説明では、図2に示すように、セキュリティカード4の板面をXY平面にとり、XY平面に垂直かつ使用者が観察する方向をZ軸の正の方向にとって説明する。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプA)の観察時、すなわち、図2のようにセキュリティ媒体5に対して判定シート9(マイクロレンズアレイ7)が重ねられた状態を示す模式図であって、その状態の一部を拡大した斜視図となっている。本実施形態のセキュリティ媒体5は、複数の3次元微細構造物1がXY平面と平行な面上に配列された3次元微細構造物アレイ6を有して構成されている。一方、判定シート9側には、複数のマイクロレンズ2がXY平面と平行な面上に配列されたマイクロレンズアレイ7を有して構成されている。このマイクロレンズアレイ7によって、拡大された3次元微細構造物1の実像もしくは虚像を観察者に観察させる。これは隣接する3次元微細構造物1間の間隔(ピッチw)と隣接するマイクロレンズ2の間隔(ピッチp)の間にわずかな
ピッチ差を設け、ピッチ差によって発生するモアレ効果を利用したものとなっている。
【0025】
図4には、図3に記載する3次元微細構造物1のXY平面と平行な面における配列(3次元微細構造物アレイ6)、マイクロレンズ2のXY平面と平行な面における配列(マイクロレンズアレイ7)が、それぞれ図3(a)、(b)に示されている。本実施形態の3次元微細構造物1、マイクロレンズ2の配列は、どちらも格子状に配列されたものとなっている。図3(a)に示されるように隣接する3次元微細構造物1はX軸方向にピッチw、Y軸方向にピッチzを有して配列されている。ピッチwとピッチzを等距離としてもよい。3次元微細構造物1の形状は、任意な形状とすることができるが、後ほど説明する拡大率の関係を分かりやすくするため、直径hで円形の外形を有するものとしている。
【0026】
一方、図4(b)に示されるようにマイクロレンズ2は、3次元微細構造物1と同様に格子状に配列されている。そして隣接するマイクロレンズ2は、X軸方向にピッチp、Y軸方向にピッチqを有して配列されている。ただし、このピッチpは3次元微細構造物1のピッチwに対して僅かな差(ピッチ差)を有したものとなっている。このピッチpとピッチqも等距離としてもよい。なお、マイクロレンズ2のピッチqについても、3次元微細構造物1のピッチzと僅かな差(ピッチ差)を有して配列されている。
【0027】
マイクロレンズ2の大きさは、数十〜数百μm程度の大きさに形成される。一方、マイクロレンズ2によって拡大される3次元微細構造物1は、マイクロレンズ2の大きさよりも小さく形成されることとなる。3次元微細構造物1は、秘匿性の都合上、直接目視したときに視認できない程度の大きさとすることが好ましい。
【0028】
3次元微細構造物1とマイクロレンズ2の配列は、図4のような格子状配列に限らず、例えば、図5のような配列であってもよい。図5の例は、3次元微細構造物1、マイクロレンズ2が亀甲状に配列された例である。図5(a)に示されるように、X軸方向に隣接する3次元微細構造物1は、ピッチwを有して配列される。そして、斜め方向に隣接する3次元微細構造物1も同様にピッチwを有して配列されている。マイクロレンズ2も同様であって、図5(b)に示されるようにX軸方向、斜め方向に隣接するマイクロレンズ2間はピッチpを有して配列されている。本実施形態のセキュリティ媒体は、モアレ効果を利用することで複数の3次元微細構造物1の拡大表示像を重ねて観察者に提示することとしている。そのため、単位面積あたりに配置された3次元微細構造物1やマイクロレンズ2が多いほど、表示像を鮮明なものとすることが可能となる。
【0029】
では、図3に示した構成のセキュリティ媒体(タイプA)について、その表示原理を図6を用いて説明する。ここではX軸方向に隣接する3次元微細構造物1による表示原理を説明するが、Y軸方向、あるいは、斜め方向に隣接する3次元微細構造物1に対しても同様の表示原理を利用することで、表示像をより鮮明なものとすることが可能となる。
【0030】
タイプAのセキュリティ媒体は、真贋判定を行う際、観察者側に近い側にマイクロレンズ2のレンズ面が配置され、観察者から遠い側に3次元微細構造物1が配置されたレイアウトとなる。図6には、マイクロレンズ2によって形成されるレンズ面と、3次元微細構造物1、並びに観察される実像が模式的に示されている。
【0031】
真贋判定を行う際、3次元微細構造物1は、Z軸方向すなわち観察者の観察方向において、マイクロレンズ1の略焦点位置に位置することとなる。略焦点位置とは、観察者が拡大された3次元微細構造物1を視認できる範囲の位置を意味するものであって、正確な焦点距離に対し約30%範囲以内の位置のことをいう。隣接するマイクロレンズ2間のピッチをp、隣接する3次元微細構造物1間のピッチをw、3次元微細構造物1の直径をh、マイクロレンズ2の曲率半径の中心位置から3次元微細構造物1までの距離をd、3次元
微細構造物1の実像とマイクロレンズ2の曲率半径の中心位置までの距離をLとする。なお、図はZX平面内での主光線の様子を示したものとなっているが、拡大の様子を分かりやすくするため、3次元微細構造物1とその実像についてはXY平面と平行な面の様子を示したものとしている。図2で説明したように、観察者は、Z軸の正方向を観察方向としてセキュリティ媒体の観察することで、拡大された3次元微細構造物1の像を観察することが可能とされる。
【0032】
図6のセキュリティ媒体の構成は、マイクロレンズ2のピッチpよりも3次元微細構造物1のピッチwが大きい場合(w>p)の構成となっている。この場合、3次元微細構造物1は、マイクロレンズ2によって拡大像を形成する。所定の距離Lの位置では、ピッチ差(w−p)を起因として、隣接する拡大像が同じ位置あるいは略同じ位置に重なり合うことで実像を形成、すなわち、セキュリティ媒体に対して観察者側に像が形成される。これはいわゆるモアレ効果を利用したものであって、観察者は拡大された3次元微細構造物1を浮いた状態で観察することが可能となる。
【0033】
このように拡大して観察される3次元微細構造物1の拡大率について検証しておく。図5において幾何学上の相似関係から(1−1)式を導くことができる。
w(L+d)=p/L ・・・(1−1)
(1−1)式を変形すると、
L=dp/(w−p) ・・・(1−2)
【0034】
同様に、幾何学上の相似関係から(1−3)式を導くことができる。
H=Lh/d ・・・(1−3)
(1−3)式を変形すると、
L=Hd/h ・・・(1−4)
【0035】
(1−2)式と(1−4)式から、観察される3次元微細構造物1の拡大率αは(1−5)式にて表すことができる。
α=H/h=p/(w−p)・・・(1−5)
【0036】
以下に、図6のセキュリティ媒体について、拡大率αと観察される像の大きさCの数値実施例を記載しておく。何れの場合も3次元微細構造物1の大きさh(直径)を90μm、3次元微細構造物のピッチwを98.9μmに固定している。
【0037】
【表1】

【0038】
表1から分かるようにピッチ差が小さくなるほど、拡大率α、観察像の大きさは共に大きくなることが分かる。また、1μmのピッチ差が拡大率αに大きく影響を及ぼすこともみてとれる。3次元微細構造物1とマイクロレンズ2とのピッチ差を精密に異ならせて製造することは難しいため、その複製を困難な状態とし、容易に偽造や模造を行うことを防止することが可能となる。
【0039】
図7は、図6と同様、観察者側にマイクロレンズ2が配置されているセキュリティ媒体(タイプA)であって、3次元微細構造物1のピッチwよりもマイクロレンズ2のピッチpが大きい場合(p>w)の構成となっている。図7には、マイクロレンズ2によって形成されるレンズ面と、3次元微細構造物1、並びに観察される虚像が模式的に示されている。
【0040】
真贋判定時、3次元微細構造物1は、Z軸方向すなわち観察者の観察方向において、マイクロレンズ1の略焦点位置に位置する。略焦点位置とは、観察者が拡大された3次元微細構造物1を視認できる範囲の位置を意味するものであって、正確な焦点距離に対し約30%範囲以内の位置のことをいう。隣接するマイクロレンズ2間のピッチをp、隣接する3次元微細構造物1間のピッチをw、3次元微細構造物1の直径をh、マイクロレンズ2の曲率半径の中心位置から3次元微細構造物1までの距離をd、3次元微細構造物1から実像までの距離をLとする。図2で説明したように、観察者は、Z軸の正方向を観察方向としてセキュリティ媒体の観察することで、拡大された3次元微細構造物1の像を観察することが可能とされる。
【0041】
この場合、3次元微細構造物1は、マイクロレンズ2によって拡大像を形成する。このとき所定の距離Lの位置では、ピッチ差(p−w)を起因として、隣接する拡大像が同じ位置あるいは略同じ位置に重なり合うことで虚像を形成する。すなわち、セキュリティ媒体に対して観察者と反対側に像を形成する。観察者は拡大された3次元微細構造物1を沈んだ状態で観察することが可能となる。
【0042】
このように拡大して観察される3次元微細構造物1の拡大率について検証しておく。図7において幾何学上の相似関係から(2−1)式を導くことができる。
w/L=p/(L+d) ・・・(2−1)
(2−1)式を変形すると、
L=dw/(p−w) ・・・(2−2)
【0043】
同様に、幾何学上の相似関係から(2−3)式を導くことができる。
d/h=(d+L)/H ・・・(2−3)
(2−3)式を変形すると、
L=d(H/h−1) ・・・(2−4)
【0044】
(2−2)式と(2−4)式から、観察される3次元微細構造物1の拡大率αは(2−5)式にて表すことができる。
α=H/h=p/(p−w)・・・(2−5)
【0045】
図3に示されるようなタイプAのセキュリティ媒体では、観察者側に配列されたマイクロレンズ2を介して、観察側に対して反対側(観察者側からみて遠い側)に配列された3次元微細構造物の実像あるいは虚像を拡大観察することが可能とされている。本実施形態のセキュリティ媒体は、このような構成(タイプA)のみならず、次のような構成(タイプB)を採用することもできる。
【0046】
図8は、本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプB)の観察時の様子を示す
模式図である。本実施形態のセキュリティ媒体は、複数のマイクロミラーレンズ3が配列されたマイクロミラーレンズアレイ8を有して構成されている。一方、判定シート9には、3次元微細構造物アレイ6を有して構成される。真贋判定は、セキュリティ媒体側のマイクロミラーレンズアレイ8に3次元微細構造物アレイ6を重ねた状態とし、マイクロミラーレンズアレイ8で反射した光によって形成される3次元微細構造物1の拡大像を観察することで実行される。
【0047】
3次元微細構造物1の配列(3次元微細構造物アレイ6)、マイクロミラーレンズ3の配列(マイクロミラーレンズアレイ8)は、図8、図4に示すように格子状あるいは図5で説明したように亀甲状にて配置される。本実施形態の3次元微細構造物1並びにそれが配置されたシートは透明部材によって構成されている。一方、マイクロミラーレンズ3は、Z軸正の方向に凸面形状を向けた反射面を有し、観察方向(Z軸負側から正側に向かう方向)から入射する光を反射させる。マイクロミラーレンズ3で反射された光は、3次元微細構造物1を透過し、観察者に対して3次元微細構造物1の実像もしくは虚像を拡大表示する。
【0048】
図9は、観察者側に3次元微細構造物1を位置させることで真贋判定を実行するセキュリティ媒体(タイプB)であって、3次元微細構造物1のピッチwよりもマイクロミラーレンズ3のピッチpが大きい場合(p>w)の構成となっている。図9には、マイクロミラーレンズ3によって形成されるミラー面と、3次元微細構造物1、並びに観察される実像が模式的に示されている。
【0049】
真贋判定時、3次元微細構造物1は、Z軸上すなわち観察者の観察方向において、マイクロミラーレンズ3の略焦点位置に位置させることとなる。略焦点位置とは、観察者が拡大された3次元微細構造物1を視認できる範囲の位置を意味するものであって、正確な焦点距離に対し約30%範囲以内の位置のことをいう。隣接するマイクロミラーレンズ3間のピッチをp、隣接する3次元微細構造物1間のピッチをw、3次元微細構造物1の直径をh、マイクロミラーレンズ3の曲率半径の中心位置から3次元微細構造物1までの距離をd、3次元微細構造物1からその実像までの距離をLとする。
【0050】
この場合、マイクロミラーレンズ3から射出される反射光は、3次元微細構造物1を透過して拡大像を形成する。このとき所定の距離Lの位置では、ピッチ差(p−w)を起因として、隣接する拡大像が同じ位置あるいは略同じ位置に重なり合うことで実像を形成する。これもタイプAのセキュリティ媒体と同様、モアレ効果を利用したものであって、観察者は、拡大された3次元微細構造物1を浮いた状態で観察することが可能となる。
【0051】
このように拡大して観察される3次元微細構造物1の拡大率について検証しておく。図9において幾何学上の相似関係から(3−1)式を導くことができる。
w/L=p/(L+d) ・・・(3−1)
(2−1)式を変形すると、
L=dw/(p−w) ・・・(3−2)
【0052】
同様に、幾何学上の相似関係から(3−3)式を導くことができる。
d/h=(d+L)/H ・・・(3−3)
(2−3)式を変形すると、
L=d(H/h−1) ・・・(3−4)
【0053】
(3−2)式と(3−4)式から、観察される3次元微細構造物1の拡大率αは(3−5)式にて表すことができる。
α=H/h=p/(p−w)・・・(3−5)
【0054】
一方、図10は、図9と同様、観察者側に3次元微細構造物1を位置させることで真贋判定を行うセキュリティ媒体(タイプB)であって、マイクロミラーレンズ3のピッチpよりも3次元微細構造物1のピッチwが大きい場合(w>p)の構成となっている。図10には、マイクロミラーレンズ3によって形成されるミラー面と、3次元微細構造物1、並びに観察される虚像が模式的に示されている。
【0055】
3次元微細構造物1は、Z軸上すなわち観察者の観察方向において、マイクロミラーレンズ3の略焦点位置に配置される。略焦点位置とは、観察者が拡大された3次元微細構造物1を視認できる範囲の位置を意味するものであって、正確な焦点距離に対し約30%範囲以内の位置のことをいう。隣接するマイクロミラーレンズミラー3間のピッチをp、隣接する3次元微細構造物1間のピッチをw、3次元微細構造物1の直径をh、マイクロミラーレンズミラー3の曲率半径の中心位置から3次元微細構造物1までの距離をd、3次元微細構造物1からその虚像までの距離をLとする。
【0056】
この場合、マイクロミラーレンズ3から射出された反射光は、3次元微細構造物1を透過して拡大像を形成する。所定の距離Lの位置では、ピッチ差(w−p)を起因として、隣接する拡大像が同じ位置あるいは略同じ位置に重なり合うことで虚像を形成する。観察者は拡大された3次元微細構造物1を沈んだ状態で観察することが可能となる。
【0057】
このように拡大して観察される3次元微細構造物1の拡大率について検証しておく。図10において幾何学上の相似関係から(4−1)式を導くことができる。
w/L=p/(L−d) ・・・(4−1)
(1−1)式を変形すると、
L=dw(w−p) ・・・(4−2)
【0058】
同様に、幾何学上の相似関係から(4−3)式を導くことができる。
h/d=H/(L−d) ・・・(4−3)
(4−3)式を変形すると、
L=d(H/h+1) ・・・(4−4)
【0059】
(4−2)式と(4−4)式から、観察される3次元微細構造物1の拡大率αは(4−5)式にて表すことができる。
α=H/h=p/(p−w) ・・・(4−5)
【0060】
タイプA、タイプBのセキュリティ媒体それぞれについて、w>pの場合と、w<pの場合の拡大率について検討したが、次にw>pの場合(ケース1)、w<pの場合(ケース2)のそれぞれについて、3次元微細構造物のピッチwの好適とされる範囲について検討する。ここではマイクロレンズ2を使用したタイプAについて検討するが、マイクロミラーレンズ3を用いたタイプBについても同様である。
【0061】
まず、w>pの場合(ケース1)について3次元微細構造物1のピッチwの上限、下限について説明する。
3次元微細構造物1に対するピッチ差(w−p)の比率をA[%]とすると、
3次元微細構造物1に対するマイクロレンズ2のピッチ差は、
w−p=w×A/100 ・・・(5−1)
で表すことができる。このピッチ差を用いてマイクロレンズ2のピッチpは、
p=w(1−A/100) ・・・(5−2)
と表すことができる。
【0062】
ケース1の場合、拡大率αは(1−5)式で表すことができる。ピッチw内に位置する3次元微細構造物1は、ピッチwと拡大率αの積となる大きさβを上限として観察されることとなる。
β=w×α=w(p/w−p) ・・・(5−3)
【0063】
観察時における大きさβを2000[μm](2[mm])以上の大きさに設定することを考えると(5−3)式から
β=w(p/w−p)≧2000 ・・・(5−3)’
の関係が必要となる。(5−3)’式に(5−2)式を代入すると、
100w/(2000+w)≧A ・・・(5−3)’’
なる関係が得られ、3次元微細構造物1に対するピッチ差(w−p)の比率Aは、3次元微細構造物1のピッチwに依存することが分かる。
【0064】
図11は、(5−3)’’をグラフ化した図であって、w>pの場合(ケース1)における3次元微細構造物のピッチwと、ピッチwに対するピッチ差(w−p)の比率Aを示した図である。実線は(5−3)’’において、大きさβがちょうど2000[μm]となる値を示している。この実線よりも下方、図ではドットが付された領域内では大きさβは2000[μm]よりも大きい値となる。
【0065】
3次元微細構造物1のピッチwの上限は300[μm]以下に設定することが好ましい。3次元微細構造物1のピッチwを300[μm]以上とすると、レンズ等の拡大手段を用いなくてもピッチw内に配置される3次元微細構造物1を目視で容易に観察可能となる。したがって、偽造や模造を防止する上では目視で観察できない大きさにピッチwを設けることが好ましい。さらに好ましくは、ピッチwの上限を100[μm]に設定することとする。目視での観察をより困難な状態とし、偽造、模造をさらに抑制することが可能となる。
【0066】
一方、マイクロレンズ2のピッチpは、3次元微細構造物1のピッチwと同様に300[μm]以下とすることが好ましく、100[μm]以下の大きさに設定することがさらに好ましい。観察される実像または虚像は1個のマイクロレンズ2を1画素として観察される。ピッチpが300[μm]以上になると画素が粗くなり解像度の低い観察像となってしまう。一方、ピッチpが100[μm]以下では画素が目視でほとんど見えなくなり解像度の高い像を提供することが可能となる。
【0067】
また3次元微細構造物1のピッチwの下限は10[μm]とすることが好ましい。これは、ピッチ差(w−p)の比率Aを理由とするものである。本実施形態ではモアレ効果を利用して像を拡大する関係上、3次元微細構造物1とマイクロレンズ2のピッチ差が重要である。しかしながら、ピッチ差の比率Aは0.5[%]以上の精度で合わせ込むことは困難である。したがって、3次元微細構造物1のピッチwの下限は、β=2000[μm]におけるピッチ差の比率A=0.5[%]としたときの値である10[μm]に設定することが好ましい。
【0068】
次に、w<pの場合(ケース2)について3次元微細構造物1のピッチwの上限、下限について説明する。
3次元微細構造物1に対するピッチ差(w−p)の比率をA[%]とすると、
3次元微細構造物1に対するマイクロレンズ2のピッチ差は、
p−w=w×A/100 ・・・(6−1)
で表すことができる。このピッチ差を用いてマイクロレンズ2のピッチpは、
p=w(1+A/100) ・・・(6−2)
と表すことができる。
【0069】
ケース2の場合、拡大率αは(2−5)式で表すことができる。ピッチw内に位置する3次元微細構造物1は、ピッチwと拡大率αの積となる大きさβを上限として観察されることとなる。
β=w×α=w(p/p−w) ・・・(6−3)
【0070】
観察時における大きさβを2000[μm](2[mm])以上の大きさに設定することを考えると(6−3)式から
β=w(p/p−w)≧2000 ・・・(6−3)’
の関係が必要となる。(6−3)’式に(6−2)式を代入すると、
100w/(2000−w)≧A ・・・(6−3)’’
なる関係が得られ、3次元微細構造物1に対するピッチ差(p−w)の比率Aは、ケース1の場合と同様、3次元微細構造物1のピッチwに依存することが分かる。
【0071】
図12は、(6−3)’’をグラフ化した図であって、w<pの場合(ケース2)における3次元微細構造物のピッチwと、ピッチwに対するピッチ差(p−w)の比率Aを示した図である。実線は(6−3)’’において、大きさβがちょうど2000[μm]となる値を示している。この実線よりも下方、図ではドットが付された領域内では大きさβは2000[μm]よりも大きい値となる。
【0072】
ケース1の場合と同様、3次元微細構造物1のピッチwの上限は、偽造や模造抑制の観点から300[μm]以下に設定することが好ましい。さらには100[μm]に設定することが好ましい。
【0073】
また、ケース1の場合と同様、マイクロレンズ2のピッチpについては、300[μm]以下の大きさに設定することが好ましく、100[μm]以下の大きさに設定することがさらに好ましい。
【0074】
また、ケース2の場合、3次元微細構造物1のピッチwの下限は10[μm]とすることが好ましい。これはケース1の場合と同様、ピッチ差の比率Aを0.5[%]以上に合わせ込むことが困難であることを理由としている。したがって、3次元微細構造物1のピッチwの下限は、β=2000[μm]におけるピッチ差の比率A=0.5[%]としたときの値である10[μm]に設定することが好ましい。
【0075】
では、本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体の構成について説明する。本実施形態のセキュリティ媒体は、3次元微細構造物アレイの上にマイクロレンズアレイを重ねて観察するタイプ(タイプA)、あるいは、マイクロミラーレンズアレイの上に3次元微細構造物アレイを重ねて観察するタイプ(タイプB)に分けられる。
【0076】
(実施例1)
図13には、セキュリティ媒体(タイプA)を備えたセキュリティカード4と判定シート9の組からなる真贋判定具の断面図が示されている。この実施例1は、図1、図2で説明したセキュリティカード4と判定シート9の形態に相当したものであって、図13(a)は分離した状態であって図1の状態に相当し、図13(b)は、重畳した状態であって図2の状態に相当している。また各断面は、図2に示すA−A’間のZX平面での断面図)である。
【0077】
本実施形態のセキュリティ媒体は、3次元微細構造物シート10として構成され、紙幣や有価証券などのシート類あるいはクレジットカードなどのカード類にラベルとして貼着する形態となっている。以下に3次元微細構造物シート10の製造過程を説明する。
【0078】
工程1:Si基板の上にポジレジスト(東京応化工業社製PMER P−LA900PM)を20μmの膜厚で塗布し、フォトマスクを介して、ステッパ露光、現像処理、Alスパッタを施し、1つ90μmの大きさ(高さ5μm)の3次元微細構造物1を有する凹凸パターンを20mm×20mmのエリア内にX方向99μm、Y方向99μmピッチで配列したレジスト原版を作製する。
【0079】
工程2:工程1で作製したレジスト原版の上にUV硬化樹脂12を滴下し、PETなどを材料とする基材11を被せた後、365nmのUV(紫外線)を照射して硬化させ、レジスト原版から剥離することで表面に3次元微細構造物1が形成された複製版を作製する。なお、基材11、UV硬化樹脂12は、使用時において光を透過できるよう透明な材質が選定される。
【0080】
工程3:工程2の複製版の3次元微細構造物1の表面に反射層13を形成する。本実施形態では、Al(アルミニウム)を約30nmスパッタすることで3次元微細構造物1の表面に反射層13を形成している。反射層13は、このようにAlなどの金属層を設けることなどで完全反射型とする構成以外に、高屈折率層、薄い金属層、あるいは多層膜を設けることで半透過型とすることとしてもよい。
【0081】
さらにこのような3次元微細構造物1の裏面、すなわち、観察側とは反対側に反射層13が設けられた構成によれば、マイクロレンズ2から入射する光は、レジスト原版でUV硬化樹脂12に賦形された3次元微細構造物1の表面で直接反射して、観察者に拡大像を提示する。観察者は、賦形時における3次元微細構造物1の形を観察することとなり、エッジなまり等を抑えた先鋭な形状を観察することが可能となる。
【0082】
工程4:抜き刃を用いて、工程3で反射層13が形成された複製版を15mm×15mmに打ち抜き、3次元微細構造物シート10が作製される。
【0083】
本実施形態では、このように3次元微細構造物1の形成にあたり、UV硬化樹脂(光硬化性樹脂)を用いることとしたが、このほか、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を用いて形成することとしてもよい。
【0084】
このような工程で作製された3次元微細構造物シート10は、ヒートシール61等を介してシート31などの被着体に貼着される。
【0085】
一方、判定シート9には、プラスチックシートなど透明な基材の片面に、金型加工(熱プレスなど)により賦形されたマイクロレンズ2が形成される。真贋判定は図13(A)の矢印に示されるように3次元微細構造物シート10が貼着されたシート31に、マイクロレンズ2が形成された判定シート9を重ねることで行われる。図13(B)には、重ねた状態が示されている。なお、図は模式的に示したものであって、実際には3次元微細構造物シート10の厚さはごく薄く形成されるため、3次元微細構造物シート10が介在した状態であっても判定シート9とシート31は略接触した状態となる。
【0086】
なお、本実施形態では、判定シート9におけるマイクロレンズ2の形成には、UV硬化樹脂を用いた賦形方法を用いることとしてもよい。
【0087】
この状態では、マイクロレンズ2の略焦点位置に3次元微細構造物1が位置することで拡大された3次元微細構造物1を観察することが可能とされる。重ねたときにマイクロレンズ2の略焦点位置に3次元微細構造物1を位置させるため、判定シート9の厚さ、並びに3次元微細構造物シート10の厚さは、マイクロレンズ2の焦点距離を考慮して設定さ
れたものとなる。
【0088】
(実施例2)
図14には、セキュリティ媒体(タイプB)を備えたセキュリティカード4と判定シート9の組からなる真贋判定具の断面図が示されている。図の形態は実施例1と同様であるが、マイクロミラーレンズ3からの反射光にて3次元微細構造物1を拡大して観察する点において異なっている。図14(a)は、分離した状態の判定シート7と、マイクロミラーレンズシート20が貼付されたシート31が、図14(b)は、重ねた状態の判定シート20とシート31の構成が示されている。以下にマイクロミラーレンズシート20の製造過程を説明する。
【0089】
工程1:Si基板の上にポジレジスト(東京応化工業社製PMER P−LA900PM)を20μmの膜厚で塗布し、フォトマスクを介して、ステッパ露光、現像処理、Alスパッタを施し、20mm×20mmのエリア内に、X方向100μm、Y方向100μmピッチで多数配列したマイクロミラーレンズアレイの原版を作製する。
【0090】
工程2:工程1で作製したのマイクロミラーレンズアレイの原版の上にUV硬化樹脂22を滴下し、PETなどを材料とする基材21を被せた後、365nmのUV(紫外線)を照射して硬化させ、レジスト原版から剥離することで表面にマイクロミラーレンズ3の原型を有する複製版を作製する。
【0091】
工程3:工程2の複製版のマイクロミラーレンズ3の表面に反射層23を形成する。本実施形態では、Al(アルミニウム)を約30nmスパッタすることで3次元微細構造物1の表面に反射層13を形成している。前述した実施例と同様、反射層13には、完全反射型、半透過型、どちらを採用することとしてもよい。
【0092】
工程4:抜き刃を用いて、工程3で反射層13が形成された複製版を15mm×15mmに打ち抜き、マイクロミラーレンズシート20が作製される。
【0093】
このような工程で作製されたマイクロミラーレンズシート20は、ヒートシール61等を介してシート31などの被着体に貼着される。
【0094】
一方、判定シート9には、3次元微細構造物1が賦形されているが、この形成はシートに滴下したUV硬化樹脂上に3次元微細構造物1の原版となる複製版を重ねた状態で、UV光を照射してUV硬化樹脂を硬化させ、複製版を剥離することで形成される。あるいは、シートを用いることなくUV硬化樹脂のみで形成することとしてもよい。3次元微細構造物1の形成方法には、金型を用いた熱プレスを採用することも可能である。
【0095】
このように作製されたマイクロミラーレンズシート20に判定シート9を重ねることで、マイクロミラーレンズ3からの反射光にて拡大された3次元微細構造物1を観察することができた。
【0096】
以上、実施例1、実施例2では、3次元微細構造物シート10あるいはマイクロミラーレンズシート20で構成されるセキュリティ媒体、セキュリティ媒体とは別体の判定シート9を用いることで、いわば判定シート9を鍵としてセキュリティ媒体の真贋判定を行うことを可能としている。
【0097】
以降説明する実施例では1つの媒体上に3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7もしくはマイクロミラーレンズアレイが設けられ、3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7(もしくは3次元微細構造物アレイ6とマイクロミラーレンズアレ
イ)とを分離した状態、ならびに重畳した状態で観察可能としている。このような実施例では、分離した状態においても3次元微細構造物6とマイクロレンズアレイ7を観察することが可能となる。3次元微細構造物アレイ6、マイクロレンズアレイ7が分離された状態において、判定対象となる3次元微細構造物アレイ6(マイクロレンズアレイ7あるいはマイクロミラーレンズアレイ)を真の3次元微細構造物アレイ6と対比し、色調などを比較することで、真の3次元微細構造物アレイ6(マイクロレンズアレイ7あるいはマイクロミラーレンズアレイ)であるかを判定することが可能となる。このように重畳した状態に加えて分離した状態においても真贋判定を行うことが可能となるため、真贋判定の精度向上を図ることが可能とされる。
【0098】
(実施例3)
図15は、本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプA)の形態を示す図である。本実施形態は紙幣など可撓性を有するシート32の一面に3次元微細構造物アレイ6が形成され、他面にマイクロレンズアレイ7が形成された構成となっている。図15(a)には紙幣15の上面図が示されている。本実施例では紙幣15の右側表面の一部領域(本発明でいう「第1の領域」)に3次元微細構造物アレイ6が、紙幣15の左側裏面の一部領域にマイクロレンズアレイ7(本発明でいう「第2の領域」)が形成された構成となっている。
【0099】
拡大された像を観察することによる真贋判定は、図15(b)のようにシート32を曲げて、3次元微細構造物アレイ6上にマイクロレンズアレイ7を重ねることで実行される。重ねた状態で所定の像、すなわち拡大された3次元微細構造物1が観察されることで真の紙幣15であることが判定される。
【0100】
図16には、図15で説明した実施例3について、その断面の様子が示されている。図16(a)は、図15(a)のようにシート32を曲げていない状態での断面、図16(b)は、シート32を曲げ3次元微細構造物シート10の上にシート32を重ねた状態での断面を示している。なお、3次元微細構造物シート10の製造方法、並びに、マイクロレンズ2の形成方法は、図13で説明した実施例1と同様の方法で行うことができる。
【0101】
図16(a)に示されるように、3次元微細構造物シート10はシート32の一面に貼着されるのに対し、マイクロレンズ2は他面に形成されている。図16(b)のように可撓性を有するシート32を曲げることで、マイクロレンズ2が形成されたシート32の部分を、3次元微細構造物シート10に重ね、マイクロレンズ2側から観察することで、3次元微細構造物1を拡大して観察することが可能となる。
【0102】
この実施例3では、3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7が同じシート32に形成され、それらを重ねることで真贋判定を行うことが可能となるものであるが、3次元微細構造物アレイ6、マイクロレンズアレイ7の形成位置、並びに、形成される面を知らない者に対しては真贋判定を行うことができない。いわば、重ね方自体が鍵となる真贋判定が可能となる。図15の形態では、左右略対称に3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7を設け、シート32の中央付近で折り曲げることで真贋判定を行うこととしているが、3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7を設ける領域や位置などを変則的なものとしてもよい。
【0103】
なお、本形態では3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7をシート32の異なる面に形成しているが、3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7をシート32の同じ面に形成することとしてもよい。その場合、シートの曲げ方を変更することで、本形態のような3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7の重畳関係を形成し、拡大された3次元微細構造物1の観察を行うことが可能となる。
【0104】
(実施例4)
実施例3では、紙幣など可撓性を有するシートに3次元微細構造物1を設けるため、3次元微細構造物シート10を貼着する構成としたが、図17のように3次元微細構造物1は、マイクロレンズ2と同様、シート32に一体化させる構成としてもよい。このような構成においても、シート32を曲げて3次元微細構造物1上にマイクロレンズ2を位置させて、拡大された3次元微細構造物1を観察することが可能となる。
【0105】
(実施例5)
実施例3あるいは実施例4の構成は、タイプB、すなわち、マイクロミラーレンズ3に3次元微細構造物1を重ねて観察する形態においても利用することが可能である。図18は、本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプB)の断面を示す図であって、図16と同様の断面が示されている。シート32上にはマイクロミラーレンズシート20がヒートシール61で貼着されているが、このマイクロミラーレンズシート20の製造方法、並びに、3次元微細構造物1の形成方法は、図14で説明した実施例2と同様の方法で行うことができる。
【0106】
図18(a)に示されるように、マイクロミラーレンズシート20がシート32の一面の所定領域(本発明における「第2の領域」)に貼着され、3次元微細構造物1は他面の所定領域(本発明における「第1の領域」)に形成される。図18(b)のように可撓性を有するシート32を曲げることで、3次元微細構造物1が形成されたシート32の領域を、マイクロミラーレンズシート20が形成される領域に重ね、3次元微細構造物1側から観察することで、反射光により3次元微細構造物1を拡大して観察することが可能となる。
【0107】
なお、この実施例5においても実施例4と同様、マイクロミラーレンズシート20をシート32に一体化させる構成としてもよい。また、3次元微細構造物アレイとマイクロミラーレンズアレイは、シート32の同じ面に設けることとしてもよい。
【0108】
(実施例6)
図19は、本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプA)の形態を示す図である。本実施形態は冊子や本などにおいて隣接するシート(ページ)に3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7が設けられたセキュリティ媒体となっている。図に示す実施例は冊子16に適用した例であって隣り合うページとなる第1のシート33と第2のシート34が綴じて構成されている。第1のシート33には3次元微細構造物アレイ6が設けられ、第2のシート34にはマイクロレンズアレイ7が形成されている。冊子16を閉じた状態とすることで、3次元微細構造物アレイ6上にマイクロレンズアレイ7が重なった状態となり、3次元微細構造物1を拡大観察することが可能となる。
【0109】
本実施形態では、第1のシート33と第2のシート34が綴じられたことで、3次元微細構造物アレイ6とマイクロレンズアレイ7の重なり位置は限定されたものとなってしまうが、3次元微細構造物アレイ6、マイクロレンズアレイ7を個別に観察することも可能となるため、重なった状態で拡大像を観察する真贋判定の他、個別観察による真贋判定を行うことも可能となる。
【0110】
図20には、図19で説明した実施例6について、その断面の様子が示されている。図20(a)は、表紙ページとなる第2のシート34を閉じかけた状態での断面が、図20(b)は、第2のシート34を閉じて、3次元微細構造物シート10の上にシート32を重ねた状態での断面を示している。なお、3次元微細構造物シート10の製造方法、並びに、マイクロレンズ2の形成方法は、図13で説明した実施例1と同様の方法で行うこと
ができる。
【0111】
図20(a)に示されるように、3次元微細構造物シート10は第1のシート33に貼着され、マイクロレンズ2は、第1のシートと隣合ったページとなる第2のシート34に形成される。図20(b)のように第1のシート33に第2のシート34を重ねる、すなわち、第1のシート33を閉じることで、マイクロレンズ2が形成された第2のシート34の部分を、3次元微細構造物シート10に重ね、マイクロレンズ2側から観察することで、3次元微細構造物1を拡大して観察することが可能となる。
【0112】
(実施例7)
実施例6の構成は、タイプB、すなわち、マイクロミラーレンズ3に3次元微細構造物1を重ねて観察する形態においても利用することが可能である。図21は、本発明の実施形態に係るセキュリティ媒体(タイプB)の断面を示す図であって、図20と同様の断面が示されている。第1のシート33上にはマイクロミラーレンズシート20がヒートシール61で貼着されているが、このマイクロミラーレンズシート20の製造方法、並びに、3次元微細構造物1の形成方法は、図14で説明した実施例2と同様の方法で行うことができる。
【0113】
図21(a)に示されるように、マイクロミラーレンズシート20が第1のシート33上に貼着されるのに対し、3次元微細構造物1は第1のシートと隣合ったページとなる第2のシート34に形成される。図21(b)のように第1のシート33に第2のシート34を重ねる、すなわち、第1のシート33を閉じることで、3次元微細構造物1が形成された第2のシート34の部分を、マイクロミラーレンズシート20に重ね、3次元微細構造物1側から観察することで、反射光により3次元微細構造物1を拡大して観察することが可能となる。
【0114】
なお、本発明はこれらの実施形態のみに限られるものではなく、それぞれの実施形態の構成を適宜組み合わせて構成した実施形態も本発明の範疇となるものである。
【符号の説明】
【0115】
1…3次元微細構造物
2…マイクロレンズ
3…マイクロミラーレンズ
4…セキュリティカード
5…セキュリティ媒体
6…3次元微細構造物アレイ
7…マイクロレンズアレイ
8…マイクロミラーレンズアレイ
9…判定シート
10…3次元微細構造物シート
11…基材
12…UV硬化樹脂
13…反射層
15…紙幣
16…冊子
20…マイクロミラーレンズシート
21…基材
22…UV硬化樹脂
23…反射層
31、32…シート
33…第1のシート
34…第2のシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の3次元微細構造物が第1のピッチで配列された3次元微細構造物アレイを有し、
複数のマイクロレンズが前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列されたマイクロレンズアレイを有する判定シートを前記3次元微細構造物アレイに重ねることで、前記マイクロレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物を位置させ、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする
セキュリティ媒体。
【請求項2】
第1の領域に3次元微細構造物アレイが形成され、第2の領域にマイクロレンズアレイが形成された可撓性を有するシートを備え、
前記3次元微細構造物アレイは、複数の3次元微細構造物が第1のピッチで配列され、
前記マイクロレンズアレイは、複数のマイクロレンズが前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列され、
前記シートを曲げ、前記マイクロレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物を位置させることで、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする
セキュリティ媒体。
【請求項3】
複数の3次元微細構造物が第1のピッチで配列された3次元微細構造物アレイを有する第1のシートと、
複数のマイクロレンズが前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列されたマイクロレンズアレイを有する第2のシートと、
前記第1のシートと前記第2のシートは開閉可能に綴じられると共に、閉じた状態において、前記マイクロレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物が位置するように前記第1のシートに前記第2のシートが重なることで、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする
セキュリティ媒体。
【請求項4】
複数のマイクロミラーレンズが第1のピッチで配列されたマイクロミラーレンズアレイを有し、
複数の3次元微細構造物が前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列された3次元微細構造物アレイを有する判定シートを前記マイクロミラーレンズアレイに重ねることで、前記マイクロミラーレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物を位置させ、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする
セキュリティ媒体。
【請求項5】
第1の領域に3次元微細構造物アレイが形成され、第2の領域にマイクロミラーレンズアレイが形成された可撓性を有するシートを備え、
前記マイクロミラーレンズアレイは、複数のマイクロミラーレンズが第1のピッチで配列され、
前記3次元微細構造物アレイは、複数の3次元微細構造物が前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列され、
前記シートを曲げ、前記マイクロミラーレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物を位置させることで、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする
セキュリティ媒体。
【請求項6】
複数のマイクロミラーレンズが第1のピッチで配列されたマイクロミラーレンズアレイを有する第1のシートと、
複数の3次元微細構造物が前記第1のピッチとは異なる第2のピッチで配列された3次元微細構造物アレイを有する第2のシートと、
前記第1のシートと前記第2のシートは開閉可能に綴じられると共に、閉じた状態において、前記マイクロミラーレンズの焦点位置に前記3次元微細構造物が位置するように、前記第1のシートに前記第2のシートが重なることで、拡大された前記3次元微細構造物が観察可能となることを特徴とする
セキュリティ媒体。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のセキュリティ媒体を用いて真贋判定を行うことを特徴とする
真贋判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−95032(P2013−95032A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239100(P2011−239100)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】