説明

セグメントリングを連結する継手

【課題】セグメントリングを連結する継手を経済的に製作できるようにすること。
【解決手段】シールドトンネルの軸線方向に対して垂直な端面12を有する第1セグメントリング14と、該端面12と向き合うとともに該軸線方向に対して垂直な端面16を有する第2セグメントリング18とを連結する継手20であって、該第1セグメントリング14の該端面12が開放され、該端面12から該軸線方向に内方へ伸びる穴22を有し、該継手20は、該第2セグメントリング18の該端面16に固定されかつ該端面16から該軸線方向に外方へ伸びる棒状部材26であって該第1セグメントリング14と該第2セグメントリング18との連結時に該穴22に挿入される棒状部材26と、該棒状部材26に固定され、該穴22に挿入された該棒状部材26が該穴22から抜けることを防ぐ板状部材34からなる抜け防止手段28とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントリングを連結する継手に関する。
【背景技術】
【0002】
シールドトンネルの施工時、前記シールドトンネルの軸線方向に対して垂直な端面を有する第1セグメントリングと、該第1セグメントリングの前記端面と向き合う、前記軸線方向に対して垂直な端面を有する第2セグメントリングとを継手を用いて連結する。従来、前記継手には、前記第1セグメントリングの内部に固定され、該第1セグメントリングの前記端面において開放された穴を形成する雌金具と、前記第2セグメントリングの内部に固定され、該第2セグメントリングの前記端面から前記軸線方向に外方へ伸びる雄金具とを備えるものがある。前記雄金具は前記第1セグメントリングと前記第2セグメントリングとの連結時に前記穴に挿入される(特許文献1参照)。
【0003】
前記雌金具は、前記穴の周りの周壁と、該周壁に前記穴の径方向に移動可能に取り付けられた爪と、該爪に前記穴の中心に向けての弾性力を加えるスプリングとを有する。前記スプリングにより前記弾性力を加えられた前記爪は、前記穴に挿入された前記雄金具と係合する。これにより、前記雄金具が前記穴から抜けることを防ぐことができる。このため、前記第2セグメントリングがその周囲の地盤から土圧及び水圧を受けることにより又は前記第2セグメントリングの自重により前記第2セグメントリングが前記第1セグメントリングから離れようとしたときに前記第1セグメントリングと前記第2セグメントリングとの間に隙間が生じることがないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−248898
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記継手の構造は比較的複雑であり、前記継手の製作時に前記周壁に前記爪を取り付けるために多くの手間と費用とを要する。このため、前記継手は高価である。
【0006】
本発明の目的は、セグメントリングを連結する継手を経済的に製作できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1セグメントリングと第2セグメントリングとの連結時に前記第1セグメントリングの穴に挿入される棒状部材に、前記穴に挿入された前記棒状部材が前記穴から抜けることを防ぐ抜け防止手段が固定されている。これにより、穴の周りの周壁に取り付けられた爪が、前記穴に挿入された雄金具と係合する従来の場合のように前記周壁に取り付けられた前記爪を用いることなく、前記穴からの前記棒状部材の抜けを防止できるようにし、前記周壁に前記爪を取り付けるために多くの手間と費用とをかけることなく、第1セグメントリングと第2セグメントリングとを連結する継手を経済的に製作できるようにする。
【0008】
本発明に係る継手は、シールドトンネルの軸線方向に対して垂直な端面を有する第1セグメントリングと、該第1セグメントリングの前記端面と向き合う、前記軸線方向に対して垂直な端面を有する第2セグメントリングとを連結する継手であり、前記第1セグメントリングは、該第1セグメントリングの前記端面において開放され、該端面から前記軸線方向に内方へ伸びる穴を有し、前記継手は、前記第2セグメントリングの前記端面に固定されかつ該端面から前記軸線方向に外方へ伸びる棒状部材であって前記第1セグメントリングと前記第2セグメントリングとの連結時に前記穴に挿入される棒状部材と、該棒状部材に固定され、前記穴に挿入された前記棒状部材が前記穴から抜けることを防ぐ抜け防止手段とを含む。
【0009】
前記抜け防止手段が前記棒状部材に固定されているため、前記穴の周壁に抜け防止手段を取り付けることを要しない。このため、穴の周りの周壁に取り付けられた爪が、前記穴に挿入された雄金具と係合する従来の場合のように前記周壁に取り付けられた前記爪を用いることなく、前記穴からの前記棒状部材の抜けを防止することができる。これにより、前記周壁に前記爪を取り付けるために多くの手間と費用とをかけることなく、前記第1セグメントリングと前記第2セグメントリングとを連結する継手を経済的に製作することができる。
【0010】
前記抜け防止手段は、前記棒状部材の先端部の前記軸線方向の外方に配置されかつ前記棒状部材に該棒状部材に対して垂直に取り付けられた板状部材であって前記穴の直径より長い直径を有する板状部材からなるものとすることができる。前記板状部材の周縁部は、前記棒状部材が前記穴に挿入されている間に前記第1セグメントリングの前記端面における前記穴の周囲の領域に当たって曲げ変形しつつ前記穴の内周面に密着する。
【0011】
前記第2セグメントリングがその周囲の地盤から土圧及び水圧を受けることにより又は前記第2セグメントリングの自重により前記第2セグメントリングが前記第1セグメントリングから離れようとしたとき、前記棒状部材は前記穴から抜けようとし、前記板状部材の前記周縁部は前記穴の前記内周面に対して動こうとする。このとき、前記板状部材の前記周縁部が前記穴の前記内周面に密着しているため、前記板状部材の前記周縁部と前記穴の内周面との間に摩擦力が作用し、前記穴の内周面に対する前記板状部材の前記周縁部の動きは阻止される。このため、前記棒状部材が前記穴から抜けることを防ぐことができ、前記第2セグメントリングが前記第1セグメントリングから離れて前記第1セグメントリングと前記第2セグメントリングとの間に隙間が生じることを防止することができる。
【0012】
前記抜け防止手段は、前記棒状部材の先端部の前記軸線方向の外方に該軸線方向に間隔を置いて配置され、それぞれが前記棒状部材に該棒状部材に対して垂直に取り付けられた複数の板状部材であってそれぞれが前記穴の直径より長い直径を有する複数の板状部材と、該板状部材の隣接する2つの間に該隣接する2つのそれぞれに平行に配置されたスペーサーであって前記棒状部材の直径とほぼ等しい長さの直径を有するスペーサーとからなるものとすることができる。各板状部材の周縁部は、前記棒状部材が前記穴に挿入されている間に前記第1セグメントリングの前記端面における前記穴の周囲の領域に当たって曲げ変形しつつ前記穴の内周面に密着する。
【0013】
前記板状部材は、該板状部材の前記周縁部に間隔を置いて形成され、それぞれが径方向の外方へ開放された複数の切欠きを有するものとすることができる。前記スペーサーは、前記軸線方向に間隔を置かれた、相対する2つの金属製のプレートと、該プレートの間にある弾性体とからなるものとすることができる。
【0014】
前記スペーサーが前記弾性体を有するため、前記棒状部材が前記第1セグメントリングの前記穴に挿入されている間、前記スペーサーは前記板状部材の前記周縁部の曲げ変形に伴って弾性変形する。このため、前記スペーサーは前記板状部材の前記周縁部の曲げ変形を妨げ難く、前記板状部材の前記周縁部は曲げ変形し易い。これにより、前記板状部材の前記周縁部を前記穴の前記内周面に確実に密着させることができ、前記第2セグメントリングが前記第1セグメントリングから離れようとしたときに前記板状部材の前記周縁部と前記穴の前記内周面との間に生じる前記摩擦力を大きくすることができ、前記棒状部材が前記穴から抜けることをより確実に防止することができる。
【0015】
仮に、前記スペーサーが、前記弾性体のみからなり、前記プレートを有しない場合、前記板状部材の前記周縁部が曲げ変形することにより、前記板状部材の前記周縁部は前記弾性体に押し付けられ、前記板状部材が前記切欠きを有する場合に前記切欠きは前記弾性体に損傷を与えることがあり、前記スペーサーは前記板状部材の隣接する2つの間の間隔を維持できなくなる恐れがある。これに対して、前記スペーサーが、相対する2つの金属製の前記プレートと、該プレートの間にある前記弾性体とからなる場合、前記板状部材の前記周縁部が曲げ変形したとき、前記板状部材の前記周縁部は前記プレートに押し付けられ、前記板状部材の前記切欠きが前記弾性体に損傷を与えることはなく、前記スペーサーは前記板状部材の隣接する2つの間の間隔を確実に維持することができる。
【0016】
前記板状部材は第1貫通穴を有し、前記スペーサーは第2貫通穴を有し、前記板状部材は、前記複数の板状部材のうち最外側の板状部材の前記軸線方向の外方から前記第1貫通穴と前記第2貫通穴とを経て前記棒状部材の内部へ伸び、該棒状部材に螺合されたボルトにより前記棒状部材に取り付けられている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、第1セグメントリングと第2セグメントリングとの連結時に前記第1セグメントリングの穴に挿入される棒状部材に、前記穴に挿入された前記棒状部材が前記穴から抜けることを防ぐ抜け防止手段が固定されているため、前記穴の周壁に抜け防止手段を取り付けることを要しない。このため、前記穴の周壁に抜け防止手段を取り付けるために多くの手間と費用とをかけることなく、前記第1セグメントリングと前記第2セグメントリングとを連結する継手を経済的に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施例に係る継手により連結された第1セグメントリング及び第2セグメントリングの斜視図。
【図2】図1の線2における継手の側面図。
【図3】図2の線3における継手の正面図。
【図4】本発明の第2実施例に係る継手の正面図。
【図5】図3の線5における継手の縦断面図。
【図6】本発明の第1実施例に係る、棒状部材が第1セグメントリングの穴に挿入された後の継手の縦断面図。
【図7】本発明の第3実施例に係る継手の側面図。
【図8】本発明の第3実施例に係る、棒状部材が第1セグメントリングの穴に挿入された後の継手の縦断面図。
【図9】本発明の第4実施例に係る継手の側面図。
【図10】本発明の第4実施例に係る継手の縦断面図。
【図11】本発明の第4実施例に係る、棒状部材が第1セグメントリングの穴に挿入された後の継手の縦断面図。
【図12】本発明の第5実施例に係る継手の側面図。
【図13】本発明の第5実施例に係る、棒状部材が第1セグメントリングの穴に挿入された後の継手の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1に示すように、シールドトンネル10の軸線方向に対して垂直な端面12を有する第1セグメントリング14と、該第1セグメントリングの端面12と向き合う、前記軸線方向に対して垂直な端面16を有する第2セグメントリング18とが連結されている。図2に示すように、前記連結は、シールドトンネル10の施工時、継手20によりなされる。
【0020】
第1セグメントリング14は、端面12において開放され、該端面から前記軸線方向に内方へ伸びる穴22を有する。第1セグメントリング14は鉄筋コンクリート製であり、穴22は、第1セグメントリング14の内部に固定された金具24により形成されている。
【0021】
継手20は、第2セグメントリング18の端面16に固定されかつ該端面から前記軸線方向に外方(図2における左方)へ伸びる棒状部材26を含む。棒状部材26は第1セグメントリング14と第2セグメントリング18との連結時に穴22に挿入される。継手20は、棒状部材26に固定され、穴22に挿入された棒状部材26が穴22から抜けることを防ぐ抜け防止手段28を含む。
【0022】
第2セグメントリング18は鉄筋コンクリート製であり、棒状部材26は金属製である。第2セグメントリング18の内部に、該第2セグメントリングの端面16において露出する端部を有する金具30が固定されており、棒状部材26は金具30に取り付けられている。金具30は、該金具の前記端部において開放されたねじ穴32を有し、棒状部材26は、その外面に雄ねじを有し、ねじ穴32に螺合されている。
【0023】
抜け防止手段28は、棒状部材26の先端部26aの前記軸線方向の外方に配置されかつ棒状部材26に該棒状部材に対して垂直に取り付けられた板状部材34からなる。板状部材34は、第1セグメントリング14の穴22の直径より長い直径を有する。板状部材34は金属製である。
【0024】
板状部材34は貫通穴36を有し、ボルト38が板状部材34の前記軸線方向の外方から貫通穴36を経て棒状部材26の内部へ伸びかつ該棒状部材に螺合されている。棒状部材26は、該棒状部材の先端部26aにおいて開放されたねじ穴40を有し、ボルト38はねじ穴40に螺合されている。板状部材34はボルト38により棒状部材26に取り付けられている。
【0025】
板状部材34は、図3に示す例では、板状部材34の周縁部42の形状が滑らかであり、該周縁部に切欠きを有しないが、これに代え、図4に示すように、板状部材34の周縁部42に間隔を置いて形成された複数の切欠き44を有するものとすることができる。各切欠き44は径方向の外方へ開放されている。切欠き44の形状は、図4に示した例では、コ字状であるが、V字状、U字状又は弧状のような他の形状とすることができる。
【0026】
図5、6に示すように、板状部材34の周縁部42は、棒状部材26が第1セグメントリング14の穴22に挿入されている間に第1セグメントリング14の端面12における穴22の周囲の領域12aに当たって曲げ変形しつつ穴22の内周面22aに密着する。
【0027】
第2セグメントリング18が該第2セグメントリングの周囲の地盤から土圧及び水圧を受けて第1セグメントリング14から離れようとしたとき、棒状部材26は穴22から抜けようとし、板状部材34の周縁部42は穴22の内周面22aに対して動こうとする。このとき、板状部材34の周縁部42が穴22の内周面22aに密着しているため、板状部材34の周縁部42と穴22の内周面22aとの間に摩擦力が作用し、穴22の内周面22aに対する板状部材34の周縁部42の動きは阻止される。このため、棒状部材26が穴22から抜けることを防ぐことができ、第2セグメントリング18が第1セグメントリング14から離れて第1セグメントリング14と第2セグメントリング18との間に隙間が生じることを防止することができる。
【0028】
抜け防止手段28が棒状部材26に固定されているため、穴22の周壁に抜け防止手段を取り付けることを要しない。このため、穴22の周壁に抜け防止手段を取り付けるために多くの手間と費用とをかけることなく、第1セグメントリングと第2セグメントリングとを連結する継手を経済的に製作することができる。
【0029】
板状部材34は、ボルト38により棒状部材26に取り付けられている図2に示した例に代え、接着剤(図示せず)により棒状部材26に接着されていてもよいし、棒状部材26に溶接されていてもよいし、棒状部材26に一体に形成されていてもよい。板状部材34は、図2に示した例では、ワッシャーである。
【0030】
板状部材34は、棒状部材26の先端部26aの前記軸線方向の外方に配置されている図2に示した例に代え、図7に示すように、棒状部材26を受け入れる貫通穴46を有するものとすることができる。この場合においても、図2に示した例と同様に、板状部材34は、棒状部材26に該棒状部材に対して垂直に取り付けられており、第1セグメントリング14の穴22の直径より長い直径を有する。また、図8に示すように、板状部材34の周縁部42は、棒状部材26が第1セグメントリング14の穴22に挿入されている間に第1セグメントリング14の端面12における穴22の周囲の領域12aに当たって曲げ変形しつつ穴22の内周面22aに密着する。
【0031】
第1セグメントリング14及び第2セグメントリング18のそれぞれは、鉄筋コンクリート製である上記の例に代え、金属製でもよい。第2セグメントリング18は、第1セグメントリング14の切羽側にあってもよいし、第1セグメントリング14の坑口側にあってもよい。
【0032】
棒状部材26は、金具30に予め取り付けられていてもよいし、第1セグメントリング14と第2セグメントリング18との連結時に金具30に取り付けられてもよい。第2セグメントリング18の内部に複数の金具30が固定されている場合、棒状部材26は、金具30の全てに取り付けられていてもよいし、金具30のいくつかに取り付けられていてもよいし、金具30の1つに取り付けられていてもよい。
【0033】
図9に示す例では、棒状部材26に1枚の板状部材34が取り付けられている図2に示した例に代え、棒状部材26に複数の板状部材34、34’が取り付けられている。この場合、板状部材34、34’は棒状部材26の先端部26aの前記軸線方向の外方に該軸線方向に間隔を置いて配置されており、各板状部材34、34’は棒状部材26に該棒状部材に対して垂直に取り付けられている。抜け防止手段28は、板状部材34、34’と、該板状部材の隣接する2つの間に該隣接する2つのそれぞれに平行に配置されたスペーサー48とからなる。板状部材34、34’は、第1セグメントリング14の穴22の直径より長い直径を有し、スペーサー48は、棒状部材26の直径とほぼ等しい長さの直径を有する。
【0034】
板状部材34、34’は第1貫通穴36を有し、スペーサー48は第2貫通穴50を有し、ボルト38が板状部材34、34’のうち最外側の板状部材34’の前記軸線方向の外方から第1貫通穴36と第2貫通穴50とを経て棒状部材26の内部へ伸びかつ該棒状部材に螺合されている。板状部材34、34’ 及びスペーサー48のそれぞれはボルト38により棒状部材26に取り付けられている。
【0035】
スペーサー48は、前記軸線方向に間隔を置かれた、相対する2つの金属製のプレート52と、該プレートの間にある弾性体54とからなる。弾性体54は、ゴム、合成樹脂等からなる。プレート52は、図9に示した例では、ワッシャーである。板状部材34、34’は、図4に示したように、板状部材34、34’の周縁部42に間隔を置いて形成され、それぞれが径方向の外方へ開放された複数の切欠き44を有する。
【0036】
図10、11に示すように、板状部材34、34’の周縁部42は、棒状部材26が第1セグメントリング14の穴22に挿入されている間に第1セグメントリング14の端面12における穴22の周囲の領域12aに当たって曲げ変形しつつ穴22の内周面22aに密着する。前記密着は最外側の板状部材34’から最内側の板状部材34へ順になされる。
【0037】
第2セグメントリング18が該第2セグメントリングの周囲の地盤から土圧及び水圧を受けて第2セグメントリング18に第1セグメントリング14から離れる方向の外力が作用したとき、棒状部材26は穴22から抜けようとし、板状部材34、34’の周縁部42は穴22の内周面22aに対して動こうとする。このとき、板状部材34、34’の周縁部42が穴22の内周面22aに密着しているため、板状部材34、34’の周縁部42と穴22の内周面22aとの間に摩擦力が作用し、穴22の内周面22aに対する板状部材34、34’の周縁部42の動きは阻止される。このため、穴22に挿入された棒状部材26が穴22から抜けることを防ぐことができ、第2セグメントリング18が第1セグメントリング14から離れて第1セグメントリング14と第2セグメントリング18との間に隙間が生じることを防止することができる。
【0038】
スペーサー48が弾性体54を有するため、棒状部材26が第1セグメントリング14の穴22に挿入されている間、スペーサー48は板状部材34、34’の周縁部42の曲げ変形に伴って弾性変形する。このため、スペーサー48は板状部材34、34’の周縁部42の曲げ変形を妨げ難く、板状部材34、34’の周縁部42が確実に曲げ変形するようにすることができる。これにより、板状部材34、34’の周縁部42を穴22の内周面22aに確実に密着させることができ、第2セグメントリング18に前記外力が作用したときに板状部材34、34’の周縁部42と穴22の内周面22aとの間に生じる前記摩擦力を大きくすることができ、棒状部材26が穴22から抜けることをより確実に防止することができる。
【0039】
仮に、スペーサー48が、弾性体54のみからなり、プレート52を有しない場合、棒状部材26が第1セグメントリング14の穴22に挿入されている間に板状部材34、34’の周縁部42が曲げ変形することにより、板状部材34、34’の周縁部42は弾性体54に押し付けられ、板状部材34、34’の切欠き44は弾性体54に損傷を与えることがある。このため、スペーサー48は板状部材34、34’の隣接する2つの間の間隔を維持できなくなる恐れがある。これに対して、スペーサー48が、相対する2つの金属製のプレート52と、該プレートの間にある弾性体54とからなる場合、板状部材34、34’の周縁部42が曲げ変形したとき、板状部材34、34’の周縁部42はプレート52に押し付けられ、板状部材34、34’の切欠き44が弾性体54に損傷を与えることはない。このため、スペーサー48は板状部材34、34’の隣接する2つの間の間隔を確実に維持することができる。
【0040】
板状部材34、34’は、複数の切欠き44を有する上記の例に代え、図3に示したように、切欠きを有せず、板状部材34、34’の周縁部42の形状が滑らかなものとすることができる。スペーサー48は、相対する2つの金属製のプレート52と、該プレートの間にある弾性体54とからなる図9に示した例に代え、プレート52を有せず、弾性体54のみからなるものとすることができ、また、弾性体54を有せず、プレート52のみからなるものとすることができる。
【0041】
板状部材34、34’は、棒状部材26の先端部26aの前記軸線方向の外方に配置されている図9に示した例に代え、図12に示すように、棒状部材26を受け入れる貫通穴46を有するものとすることができる。この場合においても、図9に示した例と同様に、板状部材34、34’は前記軸線方向に間隔を置かれており、各板状部材34、34’は、棒状部材26に該棒状部材に対して垂直に取り付けられており、第1セグメントリング14の穴22の直径より長い直径を有する。板状部材34、34’は、接着剤(図示せず)により棒状部材26に接着されていてもよいし、棒状部材26に溶接されていてもよいし、棒状部材26に一体に形成されていてもよい。板状部材34、34’の周縁部42は、図13に示すように、棒状部材26が第1セグメントリング14の穴22に挿入されている間に第1セグメントリング14の端面12における穴22の周囲の領域12aに当たって曲げ変形しつつ穴22の内周面22aに密着する。
【符号の説明】
【0042】
10 シールドトンネル
12 第1セグメントリングの端面
12a 領域
14 第1セグメントリング
16 第2セグメントリングの端面
18 第2セグメントリング
20 継手
22 穴
22a 内周面
26 棒状部材
26a 先端部
28 抜け防止手段
34 板状部材
36 貫通穴(第1貫通穴)
38 ボルト
42 周縁部
44 切欠き
48 スペーサー
50 第2貫通穴
52 プレート
54 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールドトンネルの軸線方向に対して垂直な端面を有する第1セグメントリングと、該第1セグメントリングの前記端面と向き合う、前記軸線方向に対して垂直な端面を有する第2セグメントリングとを連結する継手であって、
前記第1セグメントリングは、該第1セグメントリングの前記端面において開放され、該端面から前記軸線方向に内方へ伸びる穴を有し、
前記継手は、前記第2セグメントリングの前記端面に固定されかつ該端面から前記軸線方向に外方へ伸びる棒状部材であって前記第1セグメントリングと前記第2セグメントリングとの連結時に前記穴に挿入される棒状部材と、
前記棒状部材に固定され、前記穴に挿入された前記棒状部材が前記穴から抜けることを防ぐ抜け防止手段とを含む、継手。
【請求項2】
前記抜け防止手段は、前記棒状部材の先端部の前記軸線方向の外方に配置されかつ前記棒状部材に該棒状部材に対して垂直に取り付けられた板状部材であって前記穴の直径より長い直径を有する板状部材からなり、
前記板状部材の周縁部は、前記棒状部材が前記穴に挿入されている間に前記第1セグメントリングの前記端面における前記穴の周囲の領域に当たって曲げ変形しつつ前記穴の内周面に密着する、請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記抜け防止手段は、前記棒状部材の先端部の前記軸線方向の外方に該軸線方向に間隔を置いて配置され、それぞれが前記棒状部材に該棒状部材に対して垂直に取り付けられた複数の板状部材であってそれぞれが前記穴の直径より長い直径を有する複数の板状部材と、
前記板状部材の隣接する2つの間に該隣接する2つのそれぞれに平行に配置されたスペーサーであって前記棒状部材の直径とほぼ等しい長さの直径を有するスペーサーとからなり、
各板状部材の周縁部は、前記棒状部材が前記穴に挿入されている間に前記第1セグメントリングの前記端面における前記穴の周囲の領域に当たって曲げ変形しつつ前記穴の内周面に密着する、請求項1に記載の継手。
【請求項4】
前記板状部材は、該板状部材の前記周縁部に間隔を置いて形成され、それぞれが径方向の外方へ開放された複数の切欠きを有する、請求項3に記載の継手。
【請求項5】
前記スペーサーは、前記軸線方向に間隔を置かれた、相対する2つの金属製のプレートと、該プレートの間にある弾性体とからなる、請求項3又は4に記載の継手。
【請求項6】
前記板状部材は第1貫通穴を有し、前記スペーサーは第2貫通穴を有し、
前記板状部材は、前記複数の板状部材のうち最外側の板状部材の前記軸線方向の外方から前記第1貫通穴と前記第2貫通穴とを経て前記棒状部材の内部へ伸び、該棒状部材に螺合されたボルトにより前記棒状部材に取り付けられている、請求項3ないし5に記載の継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−177272(P2012−177272A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−41389(P2011−41389)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【出願人】(000252207)六菱ゴム株式会社 (41)
【出願人】(000230010)ジオスター株式会社 (77)
【Fターム(参考)】