説明

セグメント

【課題】簡単な構造であって、せん断力に対して大きな耐力を確保することが可能なセグメントを提供する。
【解決手段】複数を組み合わせることによってトンネルの外殻を形成するセグメント1である。そして、トンネルの外周面を形成するスキンプレート2と、トンネルの軸方向に間隔を置いてスキンプレートの両側縁に対となって立設されるリング間継手部3と、トンネルの周方向に間隔を置いてスキンプレートの両端縁に対となって立設されるセグメント間継手部とを備え、リング間継手部に、隣接して設置される他のセグメントと接合した際に、継手方向に略直交する凸面31aとウエブ面32aの面接触が生成される凹凸嵌合構造が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールドトンネルの覆工(外殻)に使用されるセグメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の円弧板状のセグメントを周方向に接合していくことで円筒状のトンネルの覆工を組み立てる工法が知られている(特許文献1−4など参照)。
【0003】
これらの特許文献に記載されたセグメントは、地山側に配置されてトンネルの外周面を形成する薄肉鋼板製のスキンプレートと、そのスキンプレートの周囲を囲む鋼製枠材と、スキンプレートと鋼製枠材とによって箱型に成形された内空に充填されるコンクリートとによって構成される。
【0004】
一方、セグメント同士の継手構造は、大地震などによってトンネルの覆工に大きなせん断力が作用した場合でも、隣接するセグメント同士にずれが生じないようになっていなければ、トンネルの内部に漏水が生じたり、覆工が損壊したりするおそれがある。
【0005】
そして、特許文献1−4には、トンネルの周方向の継手(セグメント間継手)又はトンネルの軸方向の継手(リング間継手)において、鋼製枠材のフランジを特殊な形状に成形し、突き合わされたフランジ間に形成された直方体状の空隙にモルタルなどの固化材を注入する継手構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2566495号公報
【特許文献2】特許第3302925号公報
【特許文献3】特許第3343090号公報
【特許文献4】特許第3373110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の特許文献1−4に開示された継手構造では、特殊な形状に加工された鋼材をセグメントの端部に使用する必要があるため、製作コストが高くなるおそれがある。
【0008】
また、セグメントの端面間に固化材を注入する工程が必要になるうえに、固化材による結合は所定時間の経過後でなければ発現されず、所定の強度を確保するために待ち時間が発生する場合もある。
【0009】
さらに、特許文献1には、板状のフランジの端面同士を突合せただけではずれによるせん断力が発生してコンクリートの亀裂の原因になるため、フランジに突条と凹部を設けて嵌め合わせる構造とした発明が開示されているが、依然として板状のフランジの板厚の範囲での接触にすぎない。
【0010】
そこで、本発明は、簡単な構造であって、せん断力に対して大きな耐力を確保することが可能なセグメントを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために、本発明のセグメントは、複数を組み合わせることによってトンネルの外殻を形成するセグメントであって、トンネルの外周面を形成するスキンプレートと、前記トンネルの軸方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両側縁に対となって立設されるリング間継手部と、前記トンネルの周方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両端縁に対となって立設されるセグメント間継手部とを備え、前記リング間継手部又は前記セグメント間継手部の少なくとも一方に、隣接して設置される他のセグメントと接合した際に、継手方向に略直交する面同士の面接触が生成される凹凸嵌合構造が形成されることを特徴とする。
【0012】
ここで、前記凹凸嵌合構造は、前記トンネルの外周面より内周面側に段差を介して形成される凸外面とその凸外面に略直交する凸面と前記トンネルの内周面より外周面側に段差を介して形成される凸内面を有する凸部と、前記凸外面と接触させる外フランジ面と前記凸面と接触させるウエブ面と前記凸内面と接触させる内フランジ面を有する凹部とによって形成されるのが好ましい。
【0013】
また、前記凸部は断面視略コ字形の鋼材によって形成され、前記凹部は断面視略I字形又は断面視略H字形の鋼材によって形成されるものであってもよい。さらに、前記外フランジ面の継手方向への突出長さよりも前記内フランジ面の継手方向への突出長さを長くすることができる。
【0014】
また、前記面接触が生成される面間にシール材を介在させるのが好ましい。さらに、前記凹凸嵌合構造が形成された継手部に引き抜き抵抗となる引張継手を設けることができる。
【発明の効果】
【0015】
このように構成された本発明のセグメントは、リング間継手部とセグメント間継手部の少なくとも一方が、継手方向に略直交する面同士の面接触が生成される凹凸嵌合構造となっている。
【0016】
このため、隣接させたセグメント同士の対となる凹凸を嵌め合わせるだけで、簡単に継手をおこなうことができる。また、板状部材の板厚の範囲での突合せなどではなく、面同士が面接触する凹凸嵌合構造であるため、せん断力に対して大きな耐力を確保することができる。
【0017】
さらに、セグメントの厚さから両側の段差分を引いた幅の凸面と、外フランジ面と内フランジ面との間のウエブ面とが面接触する凹凸嵌合構造であれば、接触面積が広く安定した継手構造になるとともに、せん断力に対する耐力を高めることができる。また、凹凸嵌合によって位置決めがされるので、精度よく継手をおこなうことができる。
【0018】
さらに、凸部を断面視コ字形の鋼材によって形成し、凹部を断面視略I字形又は略H字形の鋼材によって形成するのであれば、汎用されている鋼材が利用でき、安価に製作することができる。
【0019】
また、内フランジ面の突出長さを長くすることで、地下調整池や下水管などのように内水圧が作用するトンネルであっても、所望されるせん断力に対する耐力をセグメントの厚さを過大にすることなく確保することができる。
【0020】
さらに、面接触が生成される面間にシール材を介在させることによって、高い止水性能を確保することができる。
【0021】
また、凹凸嵌合構造に加えて引張継手を設けることによって、例えば地震時にトンネルの覆工に引張力が発生しても、隣接するセグメントの間が離隔することがなく、漏水の発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態のセグメントの継手構造の構成を説明する断面図である。
【図2】セグメントの構成を説明するために一部破断してトンネルの内周面側から見た斜視図である。
【図3】セグメントをトンネルの外周面側から見た斜視図である。
【図4】トンネルの周方向からセグメント間継手部側を見たセグメントの側面図である。
【図5】図4のA−A矢視方向で見たコンクリートが充填されていない状態のセグメントの平面図である。
【図6】図5のB−B矢視方向で見たコンクリートが充填されていない状態のセグメントの断面図である。
【図7】実施例1のセグメントの構成を説明する図であって、(a)は断面図、(b)はリング間継手部周辺の構成を説明する拡大断面図である。
【図8】実施例2のセグメントの構成を説明する図であって、(a)は断面図、(b)はリング間継手部周辺の構成を説明する拡大断面図である。
【図9】実施例3のセグメントの構成を説明する図であって、(a)は断面図、(b)はリング間継手部周辺の構成を説明する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1−3は、本実施の形態のセグメント1(1A,1B)の構成を説明する断面図と斜視図である。このセグメント1は円弧板状の部材で、複数のセグメント1,・・・を組み合わせることによってトンネルの円筒状の覆工(外殻)が形成される。
【0025】
以下、トンネルが延伸される方向をトンネルの軸方向といい、円筒状のトンネルの円弧方向をトンネルの周方向といい、覆工の地山側をトンネルの外周面といい、覆工の内空側をトンネルの内周面という。
【0026】
このセグメント1は、トンネルの外周面の一部を形成するスキンプレート2と、スキンプレート2の両側縁に対となって立設されるリング間継手部3と、スキンプレート2の両端縁に対となって立設されるセグメント間継手部5と、スキンプレート2の面上でセグメント間継手部5に並行に延設される複数のリブ部21,・・・と、内空に充填されるコンクリート部4とを主に備えた合成セグメントである。
【0027】
このスキンプレート2は、薄肉の矩形の鋼板を側面視円弧状に曲げ加工することによって成形される。このスキンプレート2は、長辺がトンネルの周方向となり、短辺がトンネルの軸方向となる。
【0028】
また、スキンプレート2の長辺側となる側縁に沿って円弧状のリング間継手部3が立設される。このリング間継手部3は、図1に示すように、凸部31と凹部32とが対となって凹凸嵌合構造を形成している。すなわち、凸部31と凹部32は、トンネルの軸方向に間隔をおいて並行に立設される。
【0029】
この凸部31は、図1の左端に示すように、断面視略コ字形の鋼材によって外形が形成される。すなわち、凸部31は、トンネルの軸方向となる継手方向に略直交する凸面31aと、その凸面31aの上縁及び下縁において凸面31aに対して略直交する凸外面31b及び凸内面31cとを有している。
【0030】
この凸外面31bは、トンネルの外周面より内周面側に一段下がってスキンプレート2と略平行に形成される。また、凸内面31cは、トンネルの内周面より外周面側に一段上がって凸外面31bと略平行に形成される。
【0031】
一方、凹部32は、図1の右端に示すように、セグメント1の外部側への突出長さの方が内部側に埋設される長さより長くなる非対称の断面視略I字形の鋼材によって外形が形成される。
【0032】
この凹部32は、トンネルの軸方向となる継手方向に略直交するウエブ面32aと、そのウエブ面32aの上縁及び下縁においてウエブ面32aに対して略直交する外フランジ面32b及び内フランジ面32cとを有している。
【0033】
このような凸部31と凹部32は、複数の帯状の鋼板を溶接などで接合して製作することができる。また、断面視コ字形、I字形、H字形又はL字形などの鋼材を利用して製作することもできる。
【0034】
そして、図1に示すように、トンネルの軸方向に隣接するセグメント1A,1B間のリング間継手部3では、凸部31の三面(凸面31a,凸外面31b,凸内面31c)と凹部32の三面(ウエブ面32a,外フランジ面32b,内フランジ面32c)とがそれぞれ接触することになる。
【0035】
また、図1の中央に示すように、凸面31aとウエブ面32aとの間には、シール材34を介在させる。このシール材34には、ゴムパッキング、水膨張性シール材などが使用できる。
【0036】
さらに、リング間継手部3には、引張継手33が設けられる。この引張継手33は、引張力によってセグメント1A,1B間が離間するのを防ぐために設けられる。
【0037】
この引張継手33は、一方のセグメント1A側に設けられる圧入金物33bと、他方のセグメント1B側に設けられる圧入受け金物33aとによって構成される。
【0038】
そして、圧入金物33bを圧入受け金物33aに差し込むだけで、ワンタッチ式にセグメント1A,1B同士を連結させることができる。なお、引張継手33は、ボルトとナット部によって連結をおこなう構成であってもよい。
【0039】
また、圧入金物33bが鋼棒などによって成形されていれば、トンネルの軸方向の引張力に加えて、それに直交する例えばトンネル径方向(トンネル内外方向)のせん断力に抵抗させることができる。
【0040】
他方、セグメント間継手部5は、図2−4に示すように、凸部31と凹部32の端部間を繋ぐように、スキンプレート2の短辺側となる端縁に沿って立設される。
【0041】
このセグメント間継手部5は、図4に示すように、継手面を形成する継手板55と、挿入金具51と、隣接して配置されるセグメント1の対峙する位置の挿入金具51を受け入れる受け金具52と、継手板55の継手面に固着されるせん断突起部53と、シール材54とによって主に構成される。
【0042】
この継手板55は、例えば矩形の鋼板によって形成され、凸部31と凹部32の端部に溶接などによって接合される。また、せん断突起部53は、継手板55にトンネルの軸方向に溝を設け、その溝に丸鋼、角鋼又は鉄筋などを固着させることによって形成する。さらに、図4に示すように、平行に設けられた2本のせん断突起部53,53のトンネル外周面側とトンネル内周面側には、ゴムパッキングなどのシール材54,54がそれぞれ取り付けられる。
【0043】
また、挿入金具51と受け金具52は、例えば継手板55にそれぞれ一つずつ取り付けられ、周方向に連結させる別のセグメント1の継手板55には、この挿入金具51に対峙する位置に受け金具52が取り付けられ、この受け金具52に対峙する位置には挿入金具51が取り付けられる。そして、挿入金具51を受け金具52にそれぞれ嵌入させることによって、2つのセグメント1,1間の周方向の連結が行われる。
【0044】
この挿入金具51は、図5,6に示すように、継手板55よりもセグメント1の外側に突出される挿入部51bと、挿入部51bに一体に設けられてセグメント1の内部に延設される定着板部51aとを備えている。
【0045】
また、受け金具52は、図5,6に示すように、継手板55にセグメント1の外側に向けて開口される収容部52bと、収容部52bに一体に設けられてセグメント1の内部に延設される定着板部52aとを備えている。
【0046】
これらの挿入金具51と受け金具52とは、鋼材を溶接で接合することによって製作することができる。また、鋳物として一体に成形してもよい。
【0047】
また、図4,5に示すように、継手板55には受け金具52の収容部52bに連通する挿入口52cが設けられており、この挿入口52cに連結させるセグメント1の挿入金具51の挿入部51bを差し込んで、セグメント1をトンネルの軸方向に移動させると、挿入金具51が受け金具52に嵌入される。
【0048】
さらに、リブ部21は、図5,6に示すように、継手板55に並行に凸部31と凹部32との間に差し渡される。このリブ部21は、トンネルの周方向に間隔を置いて複数、立設される。
【0049】
このリブ部21は、図1,5に示すように、矩形の鋼板によって形成されており、門形になるように中央付近の上半が切り取られてスキンプレート2との間に連通孔21aが形成される。この連通孔21aによって、リブ部21に遮断されることなくコンクリートを充填することができる。
【0050】
さらに、リブ部21には、トンネルの内周面側に突出されるスペーサ42が取り付けられる。このスペーサ42は、鉄筋をL字形やU字形に成形することによって製作できる。また、スペーサ42は、その脚部をリブ部21の側面に溶接することによって固定される。
【0051】
そして、このスペーサ42の上には、図2に示すように補強鉄筋41が格子状に配筋される。この補強鉄筋41のセグメント1の覆工厚方向における配置位置は、スペーサ42のトンネル内周面側への突出量によって調整される。例えば、補強鉄筋41をひび割れ防止鉄筋として配筋する場合と、トンネル内周面側の引張補強鉄筋として配筋する場合とでは、セグメント1の覆工厚方向の配置位置が異なることになるが、スペーサ42の突出量を調整することで、正確な位置に補強鉄筋41を配置して機能させることができる。
【0052】
また、図6に示すように、セグメント1の中央には円筒状の把持金物11を立設させる。この把持金物11は、セグメント1を運搬、設置する際にエレクタ装置などに把持させる把持部として利用される。
【0053】
さらに、コンクリート部4は、スキンプレート2とその縁部に立設される凸部31と凹部32及び継手板55,55とによって形成される箱型の空間、及び補強鉄筋41が埋没する位置までコンクリートを充填することによって形成される。
【0054】
また、コンクリート部4は、ポリプロピレン繊維又はビニロン繊維などの合成樹脂系繊維が混入された耐火性能の高いコンクリートによって成形することができる。
【0055】
さらに、コンクリートを充填するに際しては、剛性の高い型枠装置(図示省略)によってセグメント1の外周を囲み、コンクリートの充填圧などによってひずみや変形が生じないようする。また、この型枠装置に振動機を装備させることによって、コンクリートの充填性能が向上し、密実なコンクリート部4を成形することができる。
【0056】
次に、本実施の形態のセグメント1の作用について説明する。
【0057】
このように構成された本実施の形態のセグメント1は、スキンプレート2と、その縁部に立設される凸部31、凹部32及び継手板55,55と、スキンプレート2面上に延設されるリブ部21と、これらによって形成された空間に充填されるコンクリート部4とによって合成セグメントとして製作される。このような合成セグメントは、鋼材断面を最適化させる設計が容易におこなえるため、セグメント1の製造コストを低減することができる。
【0058】
そして、セグメント1のリング間継手部3は、継手方向に略直交する凸面31aと、同じく継手方向に略直交するウエブ面32aとが面接触する凹凸嵌合構造となっている。
【0059】
このため、隣接させたセグメント1A,1B同士の対となる凸部31と凹部32とを嵌め合わせるだけで、正確な位置で簡単に継手をおこなうことができる。また、この凹凸嵌合構造は、板状部材の板厚の範囲での突合せなどではなく、継手面の大半を占める凸面31aとウエブ面32aとが面接触する凹凸嵌合構造であるため、せん断抵抗力に対して高耐力を確保することができる。
【0060】
すなわち、セグメント1の厚さから両側の段差分を引いた幅の凸面31aと、外フランジ面32bと内フランジ面32cとの間のウエブ面32aとが面接触する凹凸嵌合構造であれば、接触面積が広く安定した継手構造となるとともに、せん断力に対する耐力を高めることができる。
【0061】
また、凸外面31bと外フランジ面32b、及び凸内面31cと内フランジ面32cの面接触が加わることによって、さらに安定度が増すとともに、せん断耐力を増加させることができる。
【0062】
また、凸部31を断面視コ字形に鋼材によって形成し、凹部32を断面視略I字形に鋼材によって形成するのであれば、汎用されている鋼材が利用でき、安価に製作することができる。
【0063】
さらに、水みちになるおそれがある継手面が凹凸嵌合構造によって曲折して長くなれば止水性能が向上するうえに、凸面31aとウエブ面32aとの間にシール材34を介在させることによって、より高い止水性能を確保することができる。
【0064】
また、凹凸嵌合構造に加えて引張継手33を設けることによって、例えば地震時にトンネルの覆工に引張力が発生しても、隣接するセグメント1,1の間が離隔することがなく、漏水の発生を防ぐことができる。
【実施例1】
【0065】
以下、前記した実施の形態とは別の形態の実施例1について、図7を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0066】
この実施例1で説明するセグメント7では、トンネルの軸方向の継手部になるリング間継手部73に凹凸嵌合構造が形成される。すなわち、図7(a)に示すように、セグメント7のトンネル軸方向の両側縁には、対となる凸部731と凹部732が形成され、図7(b)に示すように隣接するセグメント7A,7B間で凸部731と凹部732とが嵌合して凹凸嵌合構造となる。
【0067】
この凸部731は、図7(a)の左側に示すように、スキンプレート72の内周面側に取り付けられる帯状の鋼板によって形成される外板731dと、その外板731dに平行となるように配置されセグメント7の内周面を形成する内板731eとの間に鋼板を差し渡すことによって形成される。
【0068】
すなわち、外板731dと内板731eに対して略直交し、かつそれらの端面よりも外側に突出する凸面731aが形成されるように鋼板を取り付けることによって凸部731が形成される。そして、トンネルの外周面側で凸面731aに略直交する面が凸外面731bとなり、トンネルの内周面側で凸面731aに略直交する面が凸内面731cとなる。
【0069】
この凸外面731bは、トンネルの外周面より内周面側に一段下がってスキンプレート72と略平行に形成されている。また、凸内面731cは、トンネルの内周面より外周面側に一段上がって凸外面731bと略平行に形成されている。
【0070】
一方、凹部732は、図7(a)の右側に示すように、スキンプレート72の内周面側に取り付けられる帯状の鋼板によって形成される外板732dと、その外板732dに平行となるように配置されセグメント7の内周面を形成する内板732eとの間に鋼板を差し渡すことによって形成される。
【0071】
すなわち、外板732dと内板732eに対して略直交し、かつそれらの端面よりも内側に窪んだウエブ面732aが形成されるように鋼板を取り付けることによって凹部732が形成される。そして、トンネルの外周面側でウエブ面732aよりも外側に突出する外板732dの下面が外フランジ面732bとなり、トンネルの内周面側でウエブ面732aよりも外側に突出する内板732eの上面が内フランジ面732cとなる。
【0072】
このように構成された凸部731と凹部732を嵌め合わせると、図7(b)に示すように、トンネル軸方向に隣接するセグメント7A,7B間のリング間継手部73では、凸部731の三面(凸面731a,凸外面731b,凸内面731c)と凹部732の三面(ウエブ面732a,外フランジ面732b,内フランジ面732c)とがそれぞれ接触することになる。
【0073】
また、凸面731aとウエブ面732aのそれぞれにトンネルの周方向に延設される窪みを設け、その窪みに図7(b)に示すようにシール材34を介在させる。
【0074】
さらに、実施例1では、凹凸嵌合のトンネル外周面側では外板731dの端面と外板732dの端面とが突き合わされる。また、凹凸嵌合のトンネル内周面側では内板731eの端面と内板732eの端面とが突き合わされる。
【0075】
このように構成された実施例1のセグメント7は、凹凸嵌合構造の上下においても面接触が発生するため、接触面積が広く安定した継手構造となるとともに、せん断力に対する耐力を高めることができる。
【0076】
また、凸部731の突出量が凸面731aを形成する鋼板の板厚よりも少ない少量であるため、凹部732に対して嵌め込みやすく、迅速に連結作業をおこなうことができる。
【0077】
さらに、凸面731aとウエブ面732aとの間に複数のシール材34,34を介在させることによって、高い止水性能を確保することができる。
【0078】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0079】
以下、前記した実施の形態及び実施例1とは別の形態の実施例2について、図8を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0080】
この実施例2で説明するセグメント8では、トンネルの軸方向の継手部になるリング間継手部83に凹凸嵌合構造が形成される。すなわち、図8(a)に示すように、セグメント8のトンネル軸方向の両側縁には、対となる凸部831と凹部832が形成され、図8(b)に示すように隣接するセグメント8A,8B間で凸部831と凹部832とが嵌合して凹凸嵌合構造となる。
【0081】
この凸部831は、図8(a)の左側に示すように、スキンプレート82の内周面側に取り付けられる帯状の鋼板によって形成される外板831dの下面から、外板831dに略直交するように鋼板を垂下させることによって形成される。
【0082】
すなわち、外板831dの端面よりも外側に突出する凸面831aが形成されるように鋼板を取り付けることによって凸部831が形成される。そして、トンネルの外周面側で凸面831aに略直交する面が凸外面831bとなり、トンネルの内周面側で凸面831aに略直交する面が凸内面831cとなる。また、凸内面831cと面一になるように、セグメント8の内側に向けて切欠部831eが設けられる。
【0083】
この凸外面831bは、トンネルの外周面より内周面側に一段下がってスキンプレート82と略平行に形成されている。また、凸内面831cは、トンネルの内周面より外周面側に一段上がって凸外面831bと略平行に形成されている。
【0084】
一方、凹部832は、図8(a)の右側に示すように、スキンプレート82の内周面側に取り付けられる帯状の鋼板によって形成される外板832dと、その外板832dに平行となるように配置されセグメント8の内周面を形成する内板832eとの間に鋼板を差し渡すことによって形成される。
【0085】
すなわち、外板832dと内板832eに対して略直交し、かつそれらの端面よりも内側に窪んだウエブ面832aが形成されるように鋼板を取り付けることによって凹部832が形成される。
【0086】
そして、トンネルの外周面側でウエブ面832aよりも外側に突出する外板832dの下面が外フランジ面832bとなり、トンネルの内周面側でウエブ面832aよりも外側に突出する内板832eの上面が内フランジ面832cとなる。また、この内フランジ面832cの継手方向(トンネル軸方向)への突出長さは、外フランジ面832bの継手方向への突出長さよりも長くなっている。
【0087】
このように構成された凸部831と凹部832を嵌め合わせると、図8(b)に示すように、トンネル軸方向に隣接するセグメント8A,8B間のリング間継手部83では、凸部831の三面(凸面831a,凸外面831b,凸内面831c)と凹部832の三面(ウエブ面832a,外フランジ面832b,内フランジ面832c)とがそれぞれ接触することになる。
【0088】
また、凸面831aとウエブ面832aのそれぞれにトンネルの周方向に延設される窪みを設け、その窪みに図8(b)に示すようにシール材34を介在させる。
【0089】
さらに、実施例2では、凹凸嵌合のトンネル外周面側では外板831dの端面と外板832dの端面とが突き合わされる。また、凹凸嵌合のトンネル内周面側では内板832eの突出部が切欠部831eに差し込まれる。
【0090】
このように構成された実施例2のセグメント8は、凹凸嵌合構造の上下においても面接触が発生するため、接触面積が広く安定した継手構造となるとともに、せん断力に対する耐力を高めることができる。
【0091】
また、内フランジ面832cの突出長さを外フランジ面832bの突出長さよりも長くすることで、地下調整池や下水管などのように内水圧が作用するトンネルであっても、所望されるせん断力に対する耐力をセグメント8の厚さを過大にすることなく確保することができる。
【0092】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0093】
以下、前記した実施の形態及び他の実施例とは別の形態の実施例3について、図9を参照しながら説明する。なお、前記実施の形態又は他の実施例で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0094】
この実施例3で説明するセグメント9では、トンネルの軸方向の継手部になるリング間継手部93に凹凸嵌合構造が形成される。すなわち、図9(a)に示すように、セグメント9のトンネル軸方向の両側縁には、対となる凸部931と凹部932が形成され、図9(b)に示すように隣接するセグメント9A,9B間で凸部931と凹部932とが嵌合して凹凸嵌合構造となる。
【0095】
この凸部931は、図9(a)の左側に示すように、スキンプレート92の内周面側に取り付けられる帯状の鋼板によって形成される外板931dと、その外板931dに平行となるようにセグメント9の内周面の切欠部931fに配置された内板931eとの間に鋼板を差し渡すことによって形成される。
【0096】
すなわち、外板931dと内板931eに対して略直交し、かつそれらの端面よりも外側に突出する凸面931aが形成されるように鋼板を取り付けることによって凸部931が形成される。
【0097】
そして、トンネルの外周面側で凸面931aに略直交する面が凸外面931bとなり、トンネルの内周面側で凸面931aに略直交する面が凸内面931cとなる。この凸外面931bは、トンネルの外周面より内周面側に一段下がってスキンプレート92と略平行に形成されている。また、凸内面931cは、トンネルの内周面より外周面側に一段上がって凸外面931bと略平行に形成されている。
【0098】
一方、凹部932は、図9(a)の右側に示すように、スキンプレート92の内周面側に取り付けられる帯状の鋼板によって形成される外板932dと、その外板932dに平行となるように配置されセグメント9の内周面を形成する内板932eとの間に鋼板を差し渡すことによって形成される。
【0099】
すなわち、外板932dと内板932eに対して略直交し、かつそれらの端面よりも内側に窪んだウエブ面932aが形成されるように鋼板を取り付けることによって凹部932が形成される。
【0100】
そして、トンネルの外周面側でウエブ面932aよりも外側に突出する外板932dの下面が外フランジ面932bとなり、トンネルの内周面側でウエブ面932aよりも外側に突出する内板932eの上面が内フランジ面932cとなる。また、この内フランジ面932cの継手方向への突出長さは、外フランジ面932bの継手方向への突出長さよりも長くなっている。
【0101】
このように構成された凸部931と凹部932を嵌め合わせると、図9(b)に示すように、トンネル軸方向に隣接するセグメント9A,9B間のリング間継手部93では、凸部931の三面(凸面931a,凸外面931b,凸内面931c)と凹部932の三面(ウエブ面932a,外フランジ面932b,内フランジ面932c)とがそれぞれ接触することになる。
【0102】
また、凸面931aとウエブ面932aのそれぞれにトンネルの周方向に延設される窪みを設け、その窪みに図9(b)に示すようにシール材34を介在させる。
【0103】
さらに、実施例3では、凹凸嵌合のトンネル外周面側では外板931dの端面と外板932dの端面とが突き合わされる。また、凹凸嵌合のトンネル内周面側では内板932eの突出部が切欠部931fに差し込まれ、内板931eの下面に内フランジ面932cが当接される。ここで、切欠部931fと内板932eとの間には隙間が発生する。
【0104】
このように構成された実施例3のセグメント9は、凹凸嵌合構造の上下においても面接触が発生するため、接触面積が広く安定した継手構造となるとともに、せん断力に対する耐力を高めることができる。
【0105】
また、内フランジ面932cの突出長さを外フランジ面932bの突出長さよりも長くすることで、地下調整池や下水管などのように内水圧が作用するトンネルであっても、所望されるせん断力に対する耐力をセグメント9の厚さを過大にすることなく確保することができる。
【0106】
さらに、切欠部931fに内板931eを配置し、差し込まれた内板932eとの間に隙間が開く構造にすることで、セグメント9Bのコンクリート部4と内板932eとの接触が起きず、コンクリート部4が損傷することを防ぐことができる。
【0107】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0108】
以上、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0109】
例えば、前記実施の形態及び実施例では、リング間継手部3,73,83,93が凹凸嵌合構造になる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、セグメント間継手部が本発明の凹凸嵌合構造となってもよい
また、前記実施の形態及び実施例では、トンネル内周面側に鋼材が露出するセグメント1,7,8,9について説明したが、これに限定されるものではなく、トンネル内周面側の鋼材が50mm〜70mmの耐火代で覆われるようにコンクリート部4を形成してもよい。
【0110】
さらに、前記実施の形態及び実施例では、内空にコンクリート部4を設ける場合について説明したが、これに限定されるものではなく、鋼材のみの鋼製セグメントであってもよい。また、鋼製セグメントを円筒状に組み立てた後に、内側にコンクリートを打設する場合にも、本発明を適用することができる。
【0111】
また、前記実施の形態では、継手板55にせん断突起部53,53を設ける構成について説明したが、これに限定されるものではなく、必要に応じて設ければよい。
【符号の説明】
【0112】
1,1A,1B セグメント
2 スキンプレート
3 リング間継手部
31 凸部
31a 凸面
31b 凸外面
31c 凸内面
32 凹部
32a ウエブ面
32b 外フランジ面
32c 内フランジ面
33 引張継手
34 シール材
4 コンクリート部
5 セグメント間継手部
7,7A,7B セグメント
72 スキンプレート
73 リング間継手部
731 凸部
731a 凸面
731b 凸外面
731c 凸内面
732 凹部
732a ウエブ面
732b 外フランジ面
732c 内フランジ面
8,8A,8B セグメント
82 スキンプレート
83 リング間継手部
831 凸部
831a 凸面
831b 凸外面
831c 凸内面
832 凹部
832a ウエブ面
832b 外フランジ面
832c 内フランジ面
9,9A,9B セグメント
92 スキンプレート
93 リング間継手部
931 凸部
931a 凸面
931b 凸外面
931c 凸内面
932 凹部
932a ウエブ面
932b 外フランジ面
932c 内フランジ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数を組み合わせることによってトンネルの外殻を形成するセグメントであって、
トンネルの外周面を形成するスキンプレートと、
前記トンネルの軸方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両側縁に対となって立設されるリング間継手部と、
前記トンネルの周方向に間隔を置いて前記スキンプレートの両端縁に対となって立設されるセグメント間継手部とを備え、
前記リング間継手部又は前記セグメント間継手部の少なくとも一方に、隣接して設置される他のセグメントと接合した際に、継手方向に略直交する面同士の面接触が生成される凹凸嵌合構造が形成されることを特徴とするセグメント。
【請求項2】
前記凹凸嵌合構造は、前記トンネルの外周面より内周面側に段差を介して形成される凸外面とその凸外面に略直交する凸面と前記トンネルの内周面より外周面側に段差を介して形成される凸内面を有する凸部と、前記凸外面と接触させる外フランジ面と前記凸面と接触させるウエブ面と前記凸内面と接触させる内フランジ面を有する凹部とによって形成されることを特徴とする請求項1に記載のセグメント。
【請求項3】
前記凸部は断面視略コ字形の鋼材によって形成され、前記凹部は断面視略I字形又は断面視略H字形の鋼材によって形成されることを特徴とする請求項2に記載のセグメント。
【請求項4】
前記外フランジ面の継手方向への突出長さよりも前記内フランジ面の継手方向への突出長さを長くしたことを特徴とする請求項2又は3に記載のセグメント。
【請求項5】
前記面接触が生成される面間にシール材を介在させたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のセグメント。
【請求項6】
前記凹凸嵌合構造が形成された継手部に引き抜き抵抗となる引張継手を設けたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のセグメント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−162987(P2011−162987A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26074(P2010−26074)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】