説明

セルラーゼ酵素及びその製法

【課題】ヤマトシロアリ、オオシロアリ、コウシュンシロアリ、ムカシシロアリ及びキゴキブリのいずれかの昆虫の腸内共生原生生物群由来のセルラーゼ酵素及びそれをコードするDNAを提供する。
【解決手段】特定の塩基配列又は該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を含むセルラーゼ酵素又はその処理物、該酵素をコードするDNA及び発現系、並びに、該酵素の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のセルラーゼ酵素及びその製法に関する。この酵素は、主にシロアリ科昆虫の腸内共生原生生物群に由来する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、グルコースがβ−1,4−グルコシド結合で連結した高分子多糖である。したがって、これを加水分解すればグルコースが得られ、グルコースの供給源として有効に利用することができる。このセルロースを効率よく分解し、そこからエネルギーを取り出すための一連の反応を司るのがセルラーゼである。
【0003】
多数のセルラーゼが菌類や細菌などから単離されているが、セルロースは難分解性の物質であり、セルラーゼによるセルロース系バイオマスの分解及びその利用は実用化までに多くの問題を抱えている。したがって、この酵素の特性を解明すること及びこの酵素を効率よく生産することは、セルラーゼ資源の有効活用に関わる重要なテーマである。
【0004】
シロアリの腸内共生原生生物系は、セルロース分解効率が非常に高いことが知られていた。しかし、その共生原生生物群の難培養性のために解析が進んでいなかったが、近年でさえ、共生原生生物系及びそのセルラーゼに関する研究がわずかに行われているにすぎない。
【0005】
例えば、特許文献1及び非特許文献1には、シロアリ共生原生生物系由来ではないが、2種のシロアリ(ヤマトシロアリ、タカサゴシロアリ)が産生するセルラーゼが開示されており、そのセルラーゼは、分子量40,000〜50,000、熱安定性60℃以下、至適pH5.0〜6.0、及びカルボキシセルロースに対する比活性70〜1300ユニット/mgからなる特徴を有するものである。ここで、1ユニット(unit)は、1分あたり1μmolのグルコース相当の還元糖を生成する酵素量を意味し、以下同様に定義する。
【0006】
特許文献2には、イエシロアリの共生原生動物(Spirotrichonympha leidyi)由来のセルラーゼ活性を有する蛋白質が開示されており、分子量約36kDa、至適pH6.0、Vmax148.2ユニット/mg、Km1.9mg/mlからなる特徴を有するものである。
【0007】
さらにまた、本発明者らは、シロアリの原生生物について、共生細菌の検出、転写制御メカニズム、共生生物Oxymondasの分子進化、EST解析を中心とした網羅的手法によるリグノセルロース分解系の進化に関する報告をした(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−46764号公報
【特許文献2】特開2003−70475
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Watanabe,H.,Noda,H.,Tokuda,G.及びLo.,N.(1998)Nature394:330−331
【非特許文献2】極限環境微生物学会誌(日本)4巻2号、O−13、P−12〜P−15、2005年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
木材を唯一の栄養源とするシロアリの共生原生生物群は、セルロース系バイオマスを高効率に分解することから、効率のよいセルラーゼ遺伝子をもつと推測されるが、これまで、その取得例は非常に少なかった。
【0011】
このような状況のなかで、本発明は、特定のシロアリ及びゴキブリ由来の共生原生生物群からの新規のセルラーゼ及びそれをコードするDNAを提供することを目的とする。
【0012】
本発明はまた、上記セルラーゼをコードするDNAを発現するための発現系、並びに該発現系を利用した上記セルラーゼの製造方法、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の概要:
本発明は、要約すると、以下の特徴を含む。
本発明は、第1の態様において、配列番号79に示される塩基配列又は該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を含むセルラーゼ酵素又はその処理物を提供する。
【0014】
本発明の実施形態によれば、上記処理物は、酵素の抽出物、凍結乾燥物、部分もしくは完全精製物、又は固定化物である。
本発明の別の実施形態によれば、上記セルラーゼ酵素は、エンドグルカナーゼである。
本発明は、第2の態様において、上記定義のセルラーゼ酵素をコードするDNAを提供する。
【0015】
本発明の実施形態によれば、上記DNAは、配列番号79に示される塩基配列又は該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むDNAである。
本発明は、第3の態様において、上記定義の1つ又は複数のDNAを含むベクターを提供する。
本発明の実施形態によれば、上記ベクターは、上記DNAの発現を制御するプロモーターをさらに含む。
【0016】
本発明は、第4の態様において、上記定義のベクターを含む形質転換細胞を提供する。
本発明の実施形態によれば、上記形質転換細胞は、麹菌である。
本発明の別の実施形態によれば、上記麹菌はアスペルギルス・オリゼである。
【0017】
本発明は、第5の態様において、上記定義の形質転換細胞を培地にて培養し、該細胞又は該培地から、上記定義の1つ又は複数のセルラーゼ酵素蛋白質を単一又は混合物形態で回収することを含む、セルラーゼ酵素の製造方法を提供する。
【0018】
定義:
本明細書中で使用する、本発明に関わる用語は、以下の意味を包含する。
本明細書中で使用する「腸内共生原生生物」なる用語は、ヤマトシロアリ、オオシロアリ、コウシュンシロアリ、ムカシシロアリ又はキゴキブリの腸管内に共生する原生動物を指す。
【0019】
本明細書中で使用する「同一性」なる用語は、異なる2つのアミノ酸配列又は塩基配列間で、ギャップを導入するか又はギャップを導入しないで配列を整列比較したときの2つの配列の一致度を表わし、一般に全アミノ酸数(又は全塩基数)に対する同一アミノ酸数(又は同一塩基数)の割合(%)である。通常、同一性のある配列の検索は、BLAST(例えばBLASTX、BLASTNなど)、FASTA、FASTX、TFASTAなどの公知のプログラムを利用して行うことができる(例えば、高木利久・金久實編,ゲノムネットのデータベース利用法,共立出版(東京、日本),1998年)。
【0020】
本明細書中で使用する「処理物」なる用語は、本発明の酵素の精製又は加工のための処理工程で得られる任意の形態の酵素を指し、処理物には、精製工程の間の、酵素源からの酵素抽出物、部分又は完全精製の酵素、酵素の凍結乾燥物などの形態の酵素、或いは、加工処理、例えば支持体に酵素を固定化して得られる固定化酵素、などが含まれる。
【0021】
本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2007-53122号の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この図は、分子系統樹に基づいた、本発明酵素GHF7の新規性の検証を示す。
【図2】この図は、GHF7エンドグルカナーゼ(Rs2038B−11)の精製について示す。1ユニットは、1分あたり1mmolの還元糖(グルコース等価物)を生成する酵素量である。
【図3】この図は、精製セルラーゼの至適pH及び温度のプロフィールを示す。
【図4】この図は、精製セルラーゼ(Host:Reticulitermes speratus)の比活性、至適pH及び温度、Km及びVmaxを、既知のセルラーゼと対比した結果を示す。
【図5】この図は、精製セルラーゼによるセロオリゴ糖の分解産物を示すTLCの結果を示す。反応は、37℃で2時間行った。図中、G1〜G6はそれぞれグルコース・セロビオース・セロトリオース・セロテトラオース・セロペンタオース・セロヘキソースを表し、また、G2+E、G3+E、G4+E、G5+E、G6+Eはそれぞれの基質に酵素を加えたものであることを表す。
【図6】この図は、実施例5で作製されたセルラーゼ生産麹菌株の培養上清からのHiTrapPhenyl sepharose FFによるセルラーゼ精製のセルラーゼ活性分画プロフィールを示す。図中、菱形はセルラーゼ活性を示し、四角は280nmでの吸光度(A280)を示し、三角は硫安濃度勾配を示す。
【図7】この図は、実施例5で分画された硫安0.35M付近の画分の顕著なセルラーゼ活性のあるタンパク質画分(図6)について、セロオリゴ糖(G2〜G6(図5参照))を37℃、2時間加水分解したときの分解産物のTLC結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1.セルラーゼ遺伝子のクローニング及び配列決定
本発明のセルラーゼの供給源として使用された昆虫は、下等シロアリであるヤマトシロアリ、オオシロアリ、コウシュンシロアリ及びムカシシロアリ、並びにそれらの祖先にあたるキゴキブリである。これらの昆虫は、腐朽した倒木、枯れ枝などの木質を食べるが、共生する原生生物群がもつセルラーゼ分解活性のために木質は糖化され栄養源となる。原生生物群がもつ加水分解酵素の大部分が糖質加水分解酵素(glycosyl hydrolase)であるために、該生物群から得られる酵素は木質バイオマスの糖化に有用であることが大いに期待できる。
【0024】
セルラーゼ遺伝子のクローニング及び配列決定は、以下のようにして行うことができる。
先ず、上記の各昆虫の腸管を取り出し、破砕し、100×g程度の低速遠心で原生生物画分を得る。得られた画分から全RNAを定法に従い単離し、オリゴdT結合カラムを用いてmRNAを得、ついでmRNAから、オリゴdTプライマー及び逆転写酵素を用いてRNA−DNAハイブリッド分子を合成したのち、RNaseによりRNA鎖にニックを導入し、DNAポリメラーゼによりニックを開始点としてDNA合成を行い、RNA断片をDNA断片に置き換え、DNAリガーゼでニックを塞いで二本鎖cDNAを合成する。このようにして得られたcDNA分子はついで、ターミナルトランスフェラーゼで末端伸長するか、或いはcDNA分子の末端に制限酵素部位を結合したのち、プラスミド、ファージなどのベクターに挿入し、大腸菌などの細菌に形質転換によりベクターを導入して増幅し、これによってcDNAライブラリーを得る。
【0025】
ライブリーからのクローンの選択は、例えばファージプラークの形成後にニトセルロースフィルターに転写してレプリカフィルターを得たのち、目的DNAに相補的な配列を含む放射性ラベル、蛍光性ラベルなどのラベルを有するプローブを用いるハイブリダイゼーションにより、或いは発現ベクターを用いてライブラリーを作製したときにはβ−ガラクトシダーゼなどのリポーター蛋白質との融合体に翻訳し、これをリポーター蛋白質や目的蛋白質に対する抗体を用いて免疫学的手法により、検出することによって目的クローンを選択することができる。この方法は、目的蛋白質の部分アミノ酸配列又はそれと相同性の高い配列が予め判っている場合に有効である。目的クローンを選択したのち、DNA断片を適当なクローニングベクターに挿入し増幅し、制限酵素、エキソヌクレアーゼで切断し、リガーゼで再び環化し、ユニバーサルシークエンシングプライマー(USP)を用いて配列決定し、重複した配列をつなぎ合わせて完全な配列を決定することができる。或いは、USPプライマーを用いて一本鎖DNAをPCRで部分的に増幅し、さらに増幅産物と重複する配列部分に対する第2のプライマーを用いて同様に部分的に増幅し、さらに増幅産物と重複する配列部分に対する第3のプライマーを用いて増幅し、さらに必要ならば第4、第5等のプライマーによるPCR増幅を行ったのち、それぞれの増幅産物を配列決定し、重複した配列をつなぎ合わせて完全な配列を決定することができる。
【0026】
或いは、代替的な配列決定法として、シングルパス配列決定法(single pass sequencing)を用いて目的蛋白質の配列を決定することができる。上記のように作製したcDNAライブラリーからランダムにコロニーを選択し、細菌用選択培地(例えばカナマイシンなどの抗生物質を含むLB培地)で培養し、市販のプラスミド精製システムを利用してプラスミドを単離したのち、5’末端又は3’末端のシングルパス配列を決定し、得られた配列を、FASTA、BLASTなどの相同性検索用プログラムを利用してNCBI(米国;GenBank、UniGeneなど)などの公共データベースにアクセスして既知の配列に対するホモロジー解析及びアノテーションを行い、セルラーゼに相当すると推定される配列を選択する。さらに、上記のように選択されたセルラーゼ遺伝子ホモログの中から糖質加水分解酵素ファミリー7(GHF7)のエンドグルカナーゼに相当するものを選択し、部分配列の系統解析によって共通祖先を共有すると考えられる配列(アミノ酸配列で80%以上の相同性)を選択する。
【0027】
上記の手法により、4種のシロアリ及び1種のゴキブリの共生原生生物群由来の140種の新規セルラーゼ遺伝子を見出した。具体的には、糖質加水分解酵素ファミリー5(GHF5)について43クローン(配列番号1〜43)、GHF7のセロビオヒドロラーゼ(CBH)について34クローン(配列番号44〜77)、GHF7エンドグルカナーゼ(EG)について38クローン(配列番号78〜115)、GHF45について25クローン(配列番号116〜140)を新規のセルラーゼ遺伝子として見出した。
【0028】
したがって、本発明は、配列番号1〜140に示される塩基配列を含むセルラーゼ酵素をコードするDNAを包含する。
【0029】
さらに、本発明の範囲には、配列番号1〜140に示される各塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列を含むセルラーゼ酵素をコードするDNAも包含する。このような高相同性のセルラーゼ酵素をコードするDNAは、例えば突然変異や選択的スプライシングなどの自然の変異によって又は人為的な変異によって得ることができるし、或いは該DNAは、上記のシロアリ又はゴキブリと異なる科又は種又は株に由来する異なる配列をもつセルラーゼ遺伝子ホモログとして得てもよい。変異は、ヌクレオチドの置換、欠失、挿入、付加、又はそれらの組み合わせからなり、配列番号1〜140の各塩基配列と80%以上、85%以上又は90%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の配列同一性を有し、かつ変異遺伝子の発現によって得られる各蛋白質はセルラーゼ活性を有しているべきである。
【0030】
上記の変異体は、配列番号1〜140の各々に示される塩基配列、その相補的配列、又はその断片からなるDNAをプローブ(例えば約20塩基以上、好ましくは30塩基以上、より好ましくは50塩基以上、例えば50〜100塩基)として用いるストリンジェント条件下でのハイブリダイゼーションによって分離又は単離することができる。ここで、ストリンジェント条件は、例えば、約45℃でハイブリダイゼーションを行い、ついで0.2×SSC、0.1%SDS中、50〜65℃1回又は複数回の洗浄を行うか、或いは、6×SSC中、42℃でハイブリダイゼーションを行ったのち、0.1×SSC、0.1%SDS中、55℃で洗浄する、などの条件をあげることができる。また、バッファにはホルムアミドを添加することも可能である。ハイブリダイゼーション条件は、例えばAusubelら,(1990) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley &Sons, Inc.(米国)にも記載されている。
【0031】
或いは、変異体を含むと予想される生物サンプルからのcDNAライブラリーについて、配列番号1〜140に示される塩基配列に基づいて作製したセンス及びアンチセンスプライマー(通常15〜30塩基)を用いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を行うことによって、目的の変異体DNAを増幅することができ、さらにアガロースゲル電気泳動又はポリアクリルアミドゲル電気泳動などの技法を用いてDNAを精製することができる。
【0032】
さらにまた、人為的に変異を導入する方法には、部位特異的突然変異誘発法、変異を含むプライマーを作製し、配列番号1〜140に示される塩基配列の各々を含むベクターを鋳型にしてPCRを行う方法、などによって、突然変異を該配列に導入することができる。
【0033】
さらにまた、本発明の範囲には、配列番号1〜140に示される塩基配列及び該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列からなる群から選択される塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を含むセルラーゼ酵素も包含される。配列番号1〜140によって表わされる塩基配列はいずれも、開始コドンに始まり終止コドンで終わるセルラーゼ遺伝子配列を表わしており、遺伝暗号表の遺伝暗号にしたがって各塩基を対応アミノ酸に置き換えると、各配列番号に示される塩基配列に対応するアミノ酸配列となる。すなわち、本発明のセルラーゼ酵素は、セルロース分解活性を有する酵素であり、配列番号1〜140に示される塩基配列に対応するアミノ酸配列を含む。
【0034】
さらにまた、実施形態により、セルラーゼ酵素は、エンドグルカナーゼ(EG)又はセロビオヒドロラーゼ(CBH)のいずれかである。
エンドグルカナーゼ(EC 3.2.1.4)は、セルロース等のβ−1,4-グルコシド結合をエンド型で、すなわち分子内部から切断する加水分解酵素である。
【0035】
セロビオヒドロラーゼ(EC 3.2.1.91)は、セルロース等のβ−1,4-グルコシド結合を還元末端又は非還元末端のいずれかから切断しセロビオースを生成する加水分解酵素である。
配列番号1〜140のうち、CBH活性をコードする配列は、配列番号44〜77であり、その他の配列は、EG活性をコードしている。
【0036】
本発明のセルラーゼ酵素に包含される上記変異を含む酵素は、配列番号1〜140に示される塩基配列によってコードされるアミノ酸配列において、該アミノ酸配列と80%以上、又は85%以上、好ましくは90%以上、好ましくは93%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の配列同一性を有し、かつセルラーゼ活性を有するものである。
【0037】
このような変異は、1又は複数、好ましくは1もしくは数個、のアミノ酸の欠失、置換、挿入、付加、又はこれらの組み合わせを含むものである。とりわけ、アミノ酸の置換は、保存的置換が好ましいが、セルラーゼ活性を損なわないならば非保存的置換も許容される。保存的置換は、アミノ酸の構造又は電荷又は極性(もしくは疎水性)などの性質が類似したアミノ酸間の置換である。例えばArg、Lys及びHisの塩基性アミノ酸間、Asp及びGluの酸性アミノ酸間、Trp、Phe及びTyrの芳香族アミノ酸間、Leu、Ile、Val、Ala、Met、Proなどの疎水性アミノ酸間、或いは、Ser、Thr、Gly、Asn、Glnなどの極性アミノ酸間でのアミノ酸置換を挙げることができる。
【0038】
2.セルラーゼ発現系
上記1に記載の方法でクローニングされかつ配列決定された、配列番号1〜140によって表わされる塩基配列を含むセルラーゼ酵素をコードするDNA、或いは該塩基配列の各々と80%以上、又は85%以上、好ましくは90%以上の配列同一性を有する塩基配列を含むセルラーゼ酵素をコードするDNAは、発現用ベクターに挿入し、これを用いて、コンピテント細胞に形質転換又はトランスフェクションすることによって、形質転換細胞を得ることができる。
【0039】
上記DNAは、異なる配列のセルラーゼ遺伝子を1種類又は複数、例えば2種類以上、3種類以上、4種類以上、或いは5種類以上を例えばタンデムにベクターに、それぞれ発現可能なように連結したものであってもよい。このようなDNAを含む発現系は、複数のセルラーゼを一度に生成することを可能にする。
【0040】
発現ベクターは、プロモーター、エンハンサー、複製開始点、リボソーム結合部位又はSD配列、ターミネーターなどの制御配列、抗生物質耐性遺伝子配列、栄養要求性相補配列などの選択マーカー配列、などを含むことができる。このようなベクターは、形質転換する宿主細胞に応じてその種類を通常変えることができるが、該ベクターには、例えば大腸菌、枯草菌、シュードモナスなどの原核生物用のベクター、酵母、菌類(例えば糸状菌、担子菌など)、動物細胞(例えば昆虫細胞、哺乳類細胞など)などの真核生物用のベクターなどを含み、例えばプラスミド、ファージ、ウイルスなどのベクターである。
【0041】
これらのベクターは、市販されているのでそれらを使用することができる。例えば、細菌用ベクターの例は、pET3、pET11(Stratagene社製)、pMAL(New England Biolabs社)などが挙げられる。また、例えばtrpプロモーター、lacプロモーター、PLプロモーター、PRプロモーターなどのプロモーターを調節配列として使用できる。また、酵母用ベクターの例はpYEUra3、YEp13、YCp50などが挙げられる。また、例えばGAL1プロモーター、GAL10プロモーター、解糖系酵素プロモーターなどのプロモーターを調節配列として使用できる。さらにまた、アスペルギルスなどの真菌用ベクターの例は、pNAN8142などが挙げられる。また、例えばアミラーゼ遺伝子プロモーターamyB、グルコアミラーゼ遺伝子glaAなどのプロモーターを調節配列として使用できる。
【0042】
宿主細胞としては、大腸菌、シュードモナス、ストレプトミセス、枯草菌、ストレプトコッカス、スタフィロコッカスなどの細菌細胞、酵母細胞、アスペルギルスなどの真菌細胞、ドロソフィラS2、スポドプテラSf9などの昆虫細胞、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、C127細胞、3T3細胞(ジヒドロ葉酸レダクターゼやチミジンキナーゼなどを欠損した変異株を含む)、BHK21細胞、HEK293細胞、などの動物細胞などを使用できる。宿主は、必要に応じて、目的DNAの発現、蛋白質生産を妨げる内因性遺伝子を破壊したものを使用することができる。遺伝子破壊は、例えば公知のアンチセンスRNA法(標的遺伝子のmRNAに対して相補的なRNAをコードするDNAを細胞のゲノムに相同組換え法によって導入する方法)などを用いて行うことができる(例えばC.Helene and J.J.Toulme,Biochem.Biophys.Acta(1990)1049:99−125)。アンチセンス分子はmRNAと塩基対を形成し、mRNAから蛋白質の翻訳を妨げる。本発明の好適実施形態によれば、好ましい宿主は、麹菌(例えば、アスペルギルス・オリゼなど)、麹菌のプロテアーゼ破壊株などである。
【0043】
形質転換又はトランスフェクションは、例えばリン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、マイクロインジェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、スフェロプラスト法、感染(ウイルス、ファージなど)などを含む。
【0044】
後述の実施例で例示として使用した発現プラスミドは、Gatewayシステム(インビトロジェン社)を用いた組み換え反応により、エントリーベクターpDESTR3−R4上に、α−アミラーゼプロモーターamyBおよび構造遺伝子と、α−アミラーゼ遺伝子のターミネーターT−amyB配列に挟まれた形で該DNAを挿入し、これを用いて麹菌を形質転換することによってその都度構築した。なお、構造遺伝子配列と該DNAの間にKRGGG配列を加えることによって、アミラーゼから該タンパク質が切断されるように発現プラスミドを構築した。
【0045】
3.セルラーゼの製造
本発明のセルラーゼをコードするDNAを発現可能にしたベクターで形質転換された宿主細胞は、適当な培養培地中で培養され、該DNAを発現しセルラーゼを産生することができる。
【0046】
培地については、宿主に応じて適する培地が選択され、天然培地、合成培地として市販されている培地を使用することができるし、或いは、文献等の記載にしたがって炭素源、窒素源、無機塩類、血清、サイトカイン類、ビタミン類、などを含む培地を作製してもよい。培地には、必要に応じて、テトラサイクリン、アンピシリンなどの抗生物質、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)などの誘導物質などを添加することができる。
【0047】
培養は、好気的又は嫌気的条件で、攪拌、振とう、静置などの条件下で、通常室温〜40℃の温度で行うことができる。
麹菌を宿主とする培養では、例えば、500mlのエルレンマイヤーフラスコに100mlのマルトースまたはデキストリンの入った栄養培地を加え、ここへ構築した麹菌株を植菌する。これを30℃で4日間培養することによって発現タンパク質を誘導し培地中に放出させることができる。
【0048】
本発明のセルラーゼ蛋白質は、培養形質転換細胞又は培地から回収することができる。真核細胞を宿主とするときには、本発明のDNAにシグナル配列をコードするDNAを連結した融合DNAを作製し、これによって細胞を形質転換することによって、細胞外、すなわち培地中に目的蛋白質を分泌させることができる。一方、原核細胞を宿主とするときには、通常、細胞内に目的蛋白質が蓄積されるので、浸透圧を変化させる手法、機械的手法(超音波法など)などによって細胞を破壊し、抽出液から目的蛋白質を回収することができる。
【0049】
本発明のセルラーゼ蛋白質の精製は、公知の技法を用いて行うことができる。そのような技法には、例えば、硫酸アンモニウム又はエタノールによる沈殿又は分画、酸又は有機溶媒による抽出、アニオン又はカチオン交換クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、逆相高速液体クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー、ポリアクリルアミドゲル電気泳動、などを単独で、或いは適宜組み合わせて行うことができる。
【0050】
セルラーゼ酵素の活性測定(アッセイ)は、次のようにして行うことができる。
エンドグルカナーゼについては、以下の方法で測定を行うことができる。タンパク標品10μlに1%カルボキシメチルセルロース(0.1M酢酸NaバッファpH6.0に溶解)250μlを加え、室温で1時間反応を行なう。生成した還元糖を測定するために、反応液260μl中100μlにテトラゾリウムブルー試薬1mlを加え、沸騰水中で10分反応させた後、冷却して分光光度計(O.D.660)で吸光値を測定する(Jue,C.K. and Lipke,P.N. "Determination of reducing sugars in the nanomole range with tetrazolium blue", J Biochem Biophys Methods, 11, 109−115(1985))。
【0051】
セロビオヒドロラーゼについては、基質としてカルボキシメチルセルロースの代わりにAvicellを用い、同じ方法を用いることによって測定することができる。
【0052】
本発明のセルラーゼ酵素はまた、種々の処理物の形態をとることができる。このような処理物には、例えば酵素の抽出物、凍結乾燥物、部分又は完全精製物、固定化物などが含まれる。すなわち、精製工程の間の、酵素源からの酵素抽出物、部分又は完全精製の酵素、酵素の凍結乾燥物などの形態の酵素、或いは、加工処理、例えば支持体に酵素を固定化して得られる固定化酵素、などが含まれる。
【0053】
酵素の固定化は、担体結合法、すなわち水不溶性の担体に酵素を共有結合又は非共有結合によって結合させる方法、包括法、すなわち高分子ゲルの微細な格子の中に酵素を包み込む方法、などを含む(例えば、福井三郎編、酵素工学、東京化学同人(東京、日本)、1981年)。担体は、多孔性ポリマー、イオン交換樹脂、ガラス、鉱物、金属(例えば酸化鉄など)などを含む。また、高分子ゲルは、多糖類(例えばカラギーナンなど)、光硬化性樹脂などを含む。これらの担体や高分子ゲルに固定化された酵素は、カラムなどに充填して、連続的セルロース分解などに使用することができる。
【0054】
本発明のセルラーゼは、その多数のセルラーゼの中から、使用目的に応じて適するセルラーゼを選択し、単独で又は、酵素混合物として組み合わせて、木質バイオマスの高度糖化、アルコール生産、バイオポリマーの製造などの酵素源として、或いは洗剤・繊維加工用製剤、飼料添加剤、消化剤、バイオポリマーのなどの主成分又は補助成分として、利用することができる。組み合わせ方は、特に限定されないが、2種類以上、好ましくは5種類以上、さらに好ましくは10種類以上などである。
【実施例】
【0055】
以下の実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はそれらの実施例によって制限されないものとする。
<実施例1>mRNAの単離
ヤマトシロアリ・オオシロアリ・コウシュンシロアリ・ムカシシロアリ・キゴキブリ腸管を摘出し、それぞれSolution U(Trager 1934,Biological Bulletin,Vol66:182−190)中で破砕し、100ミクロンナイロンメッシュで濾過した。得られた懸濁液を100×g、3分間ゆるやかに遠心することによって原生生物画分を得た。更にSolution Uで3回洗浄し、RNA抽出のための原生生物画分を得た。mRNAの単離はOligo−dT30<SuperTM>(日本ロシュ)を用いて指示書通りに行い、各宿主シロアリ由来の原生生物群よりmRNAを得た。
【0056】
<実施例2>cDNAライブラリーの構築
各シロアリ共生原生生物群より調製したmRNAを2〜3μg用いて、cDNAライブラリーの構築を行った。ライブラリー構築はヤマトシロアリに関してはPieroらの方法によって行い(Carninci,P & Hayashizaki,Y 1999,Methods Enzymol 303:19−44)、その他のシロアリ由来のものに関しては菅野らの方法によって行った(Maruyama,K.and S.Sugano 1994,Gene138(1−2):171−174)。ヤマトシロアリのcDNAライブラリーに関してはSOLR株大腸菌とExAssistヘルパーファージ(Novagen)を用いて指示書通りにプラスミドへのサブクローニングを行った。
【0057】
<実施例3>配列の解析
得られた大腸菌クローンはLB培地中で培養し、マルチスクリーンFB(日本ミリポア)を用いて指示書通りに精製した。精製したプラスミドDNAを用いて、ヤマトシロアリ、オオシロアリ、コウシュンシロアリ、ムカシシロアリ、キゴキブリそれぞれの共生原生生物群由来のライブラリークローンをそれぞれ917、920、1056、1023、921クローンずつ、Big dye terminator cycle sequencing kitv3.1および自動シーケンサABI3700、3100または3130(Applied Biosystems)を用いて定法通りに配列決定した。配列決定にはM4プライマー(配列番号141:5’−GTT TTC CCA GTC ACG AC−3’)を用いて、5’末端のsingle pass sequenceを決定した。得られた配列はFASTXにより公共データベースに蓄積されている既知配列に対するホモロジー解析を行い(DNA database Japan)、アノテーションを行った。得られたアノテーションの中からセルラーゼに相当するものを選択した。
【0058】
<実施例4>セルラーゼ配列の解析
得られたセルラーゼ遺伝子ホモログのうち、糖質加水分解酵素ファミリー7のエンドグルカナーゼに相当するものを選択し、部分配列の系統解析によって共通祖先を共有すると考えられる配列(相同性=アミノ酸配列で80%程度以上)について、GHF5については全43クローン(配列番号1〜43)、GHF7CBHについては全34クローン(配列番号44〜77)、GHF7EGについては全38クローン(配列番号78〜115)、GHF45については全25クローン(配列番号116〜140)の全長配列を決定した。
【0059】
得られた配列を用いて最尤−距離行列法で系統関係を解析したところ、これらのシロアリ共生原生生物由来の配列は独立した系統群を形成し、GHF7(図1)、GHF45においては既知の同等酵素遺伝子とはサブファミリーレベルで異なる新規の酵素であることが示された。この結果はまた、これらの遺伝子が単一の祖先配列に由来する同族遺伝子であることを示していたので、この内のGHF7EGの1クローン(Rs2038B−11)を代表として用いて麹菌(アスペルギルス・オリゼ)における発現プラスミドを構築した。
【0060】
<実施例5>セルラーゼの麹菌での発現と精製
セルラーゼ遺伝子を含むプラスミドから、N末端シグナル配列をコードする領域を除いた部分をPCRにより増幅し、α-アミラーゼプロモーターおよび構造遺伝子の下流にin−frameになるように連結した。その際、連結部分には融合タンパク質切断のためのKRGGG配列を挿入した。作製したプラスミドを麹菌プロテアーゼ二重破壊株NS−tApE(niaD− sC− ΔtppA ΔpepE)(根本 崇、渡辺 泰祐、丸山 潤一、有岡 学、北本 勝ひこ、「麹菌のプロテアーゼ遺伝子2重破壊株によるキモシンの生産」日本生物工学会講演要旨集(日本)、p131、(2006))に形質転換し、セルラーゼ生産株を取得した。得られた麹菌の培養上清を硫安沈殿法(80%飽和硫安)により濃縮後、HiTrapDesaltingおよびHiTrapDEAE(GE health care)を指示書に従って用いて精製した。HiTrapDEAEによる精製には50mM Tris−HCl(pH8.0)バッファを用い、NaClによって0mMから500mMまでのグラジエントをかけることによってタンパク質の分離を試みたところ、130mM付近のフラクションにSDS−PAGE上で分子量約45kDaの単一バンドとして観測されるセルラーゼ活性のある精製タンパクを得た(図2)。エドマン分解法によるアミノ末端配列の解析の結果、精製された酵素は麹菌に導入した発現プラスミドに由来することが確かめられた。
【0061】
このタンパク質についてカルボキシメチルセルロースを基質としてセルラーゼ活性を測定(反応条件:クエン酸−リン酸バッファ、pH6.5、反応時間5分で活性測定;温度安定性は30分間の処理後37℃、5分で活性測定)したところ、至適pHは6.5(図3A)、至適温度は45℃(図3B)、温度安定性40℃以下(図3C)、Kmは1.97mg/ml、Vmaxは769.6 unit/mgタンパク(図4)であった。また、セロオリゴ糖を37℃、2時間加水分解したとき、最終生産物としてグルコースとセロビオースを主要な反応性生物として生成し、および少量のセロトリオースを生成し、セロビオースを分解する活性はほとんどなかった(図5)。ここで、1 unit(ユニット;U)は、1分あたり1μmolのグルコース相当の還元糖を生成する酵素量として定義する。
【0062】
図4から、本発明の酵素は、そのVmaxが他の酵素と比較して高く、反応性はより高いこと、Kmはシロアリ自身が合成するセルラーゼとほぼ同等で比較的低い値を示すこと、さらにKmは既知タイプの酵素に近い値で親和性が高い酵素であること、などが判る。
【0063】
さらにまた、種々の基質、すなわちカルボキシメチルセルロース(CMC)、アビセル(Avicel)、カードラン(Curdlan)、3種のキシラン(Xylan))に対するセルラーゼ活性を測定し、その結果を表1に示した。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から、精製した酵素は、CMCを基質として認識すること、結晶性セルロースには単体では作用せず、エンドグルカナーゼ活性が高いこと、キシランに対する酵素活性も低く、セルロースに対する基質特異性が高いこと、などの性質をもつ。
【0066】
<実施例6>セルラーゼの麹菌での発現と精製
実施例5とは異なるセルラーゼ遺伝子を含むプラスミドから、N末端シグナル配列をコードする領域を除いた部分をPCRにより増幅し、α-アミラーゼプロモーターおよび構造遺伝子の下流にin−frameになるように連結した。その際、連結部分には融合タンパク質切断のためのKRGGG配列を挿入した。作製したプラスミドを麹菌プロテアーゼ二重破壊株NS−tApE(niaD sC ΔtppA ΔpepE)(根本 崇、渡辺 泰祐、丸山 潤一、有岡 学、北本 勝ひこ、「麹菌のプロテアーゼ遺伝子2重破壊株によるキモシンの生産」日本生物工学会講演要旨集(日本)、p131、(2006))に形質転換し、セルラーゼ生産株を取得した。得られた麹菌の培養上清を硫安沈殿法(80%飽和硫安)により濃縮後、HiTrapDesaltingおよびHiTrap Phenyl sepharose FF(GE health care)を指示書に従って用いて精製した。HiTrapPhenyl sepharose FFによる精製には50mM 酢酸ナトリウム(pH6.0)バッファを用い、硫安によって1.7Mから0Mまでのグラジエント(濃度勾配)をかけることによってタンパク質の分離を試みたところ、0.35M付近の画分に顕著なセルラーゼ活性のあるタンパク質画分を得た(図6)。このタンパク質についてセロオリゴ糖を37℃、2時間加水分解したとき、最終生産物としてグルコースとセロビオースを主要な反応生成物として生成し、セロビオースをさらに分解する活性はほとんどなかった(図7)。
【0067】
一般的にエンドグルカナーゼは、4又は5連続の糖鎖程度までしか分解能がないが、図5および図7から本発明の酵素は、エンドグルカナーゼであっても、一般的性質として最終生産物がセロビオース・グルコース単位である可能性が強く示唆され、糖化における効率が非常に高く工程の省力化が計れることなどが判る。
【0068】
上記実施例に示されるように、本発明者らは、セルロース系バイオマスを高効率に分解する4種類のシロアリ科昆虫及び1種類のゴキブリ昆虫の共生原生生物群が保有する140種類の新規セルロースを見出したことにより、それらのセルロースを単独又は組み合わせることによって、セルロースを高効率的に分解することが可能になったし、また、発現系として麹菌発現系を使用することによってセルラーゼの高発現が可能になった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、多数のセルラーゼの中から、使用目的に応じて適するセルラーゼを選択し、単独で又は組み合わせて、木質バイオマスの高度糖化、アルコール生産、バイオポリマーの製造などの酵素源として、或いは洗剤・繊維加工用製剤、飼料添加剤、消化剤、バイオポリマーのなどの主成分又は補助成分として、利用することができる。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号79に示される塩基配列又は該塩基配列と90%以上の同一性を有する塩基配列によってコードされるアミノ酸配列を含むセルラーゼ酵素又はその処理物。
【請求項2】
処理物が、酵素の抽出物、凍結乾燥物、部分もしくは完全精製物、又は固定化物である、請求項1に記載の酵素又はその処理物。
【請求項3】
セルラーゼ酵素がエンドグルカナーゼである、請求項1に記載の酵素又はその処理物。
【請求項4】
請求項1に記載のセルラーゼ酵素をコードするDNA。
【請求項5】
請求項4に記載のDNAを含むベクター。
【請求項6】
DNAの発現を制御するプロモーターをさらに含む、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のベクターを含む形質転換細胞。
【請求項8】
麹菌である、請求項7に記載の形質転換細胞。
【請求項9】
麹菌がアスペルギルス・オリゼである、請求項8に記載の形質転換細胞。
【請求項10】
請求項7〜9のいずれか1項に記載の形質転換細胞を培地にて培養し、該細胞又は該培地から請求項1に記載のセルラーゼ酵素蛋白質を単一又は混合物形態で回収することを含む、セルラーゼ酵素の製造方法。


【図3】
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【図4】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−78328(P2013−78328A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−264706(P2012−264706)
【出願日】平成24年12月3日(2012.12.3)
【分割の表示】特願2009−502478(P2009−502478)の分割
【原出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 電子通信回線での刊行物投稿論文発表 刊行物名:FEMS MICROBIOLOGY ECOLOGY 巻数: Vol 59,Issue 3(2007) 電気通信回線掲載日:2007年1月18日 掲載アドレス:http://www.blackwell−synergy.com/toc/fem/59/3
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度、新エネルギー・産業技術総合開発機構バイオマスエネルギー高効率転換技術開発/バイオマスエネルギー先導技術研究開発/シロアリ共生系セルラーゼ遺伝子群の麹菌による大量発現系の構築とそれを用いた木質バイオマスの高度糖化・利用技術の開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】