説明

セルロース繊維から構成される濾材

【課題】セルロース本来の特長である高い耐熱性、耐薬品性、及び優れた吸着性能を保有するとともに、高い捕集効率、物性安定性、及び優れた取り扱い性を併せ持つセルロース不織布から構成される実用可能な高性能濾材の提供。
【解決手段】最大繊維径2500nm以下のセルロース繊維から構成されるセルロース不織布からなる濾材であって、下記(1)〜(6)の要件:
(1)上記セルロース繊維の重合度(DP)は500以上である、
(2)上記濾材における上記セルロース繊維の重量比率は10重量%以上である、
(3)上記濾材の目付は6g/m2以上150g/m2以下である、
(4)上記濾材の透気抵抗度は10s/100ml以上2000s/100ml以下である、
(5)上記濾材の吸光度の標準偏差は350以下である、
(6)上記濾材の目付10g/m2相当の引張強度は6N/15mm以上である、
の全てを満足する前記濾材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細な繊維径を有するセルロース繊維から構成される濾材に関する。より詳しくは、本発明は、半導体製造工業、医薬品製造工業、食品工業、病院などの分野で使用されるクリーンルーム用エアフィルター、オフィスの空調用や家庭用エアコンなどのフィルターとして使用される、また、エンジンオイル、燃料、水処理、放電加工機、薬品、半導体などの製造工程、食品製造工程での微生物、微粒子除去等の液体濾過、医療分野における血液濾過や医薬品製造工程において使用される濾材に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維径が1μm以下のいわゆるナノファイバーから構成される不織布は、ナノファイバーが形成する網目構造によって微細な空隙が多数形成されるため、気体中又は液体中に含まれる微粒子を低い圧力損失で濾別できる濾材としての利用が期待されている。
特にバクテリアセルロース(以下、BCともいう。)やパルプ等の天然セルロースを原料として得られる微小繊維状セルロース(マイクロフィブリレーテッドセルロース、以下、MFCともいう。)等、いわゆるセルロースミクロフィブリルからなる不織布は、耐熱性、耐薬品性、さらには表面活性の高さ等の、高吸着性能等濾材としての高い特性を有しており、高温環境下や有機溶剤環境下での濾材としての活用が大いに期待されている。
【0003】
以下の特許文献1には、セルロースミクロフィブリルから構成される不織布として、平均繊維径0.1μm以下の植物の柔細胞から得られた繊維(柔細胞繊維)を含有する濾材が提案されている。特許文献1には、柔細胞繊維は、無機繊維や有機繊維とバインダーなしで良好に絡み合い、加工性が良好であることやフィルム状になりにくいために(空隙を完全に埋めてしまわない)低圧力損失や高い捕集効率を有することが開示されている。
しかしながら、特許文献1に記載された方法によって調製された柔細胞繊維は、最大繊維径が2μmを超えるものが多く含まれる。その結果、当該柔細胞繊維で調製した濾材は、部分的に孔径2μmを越える粗大ピンホールが存在する等、不織布の均一性が悪く、測定部位によって捕集効率が低下したり、透気抵抗度や物性が大きく変動するという物性の安定性に問題がある。
【0004】
また、以下の特許文献2に、本発明者らは、最大繊維径1500nm以下の繊維径を有するセルロース繊維から構成され、高空孔率で微細なネットワーク構造を有する不織布を提案している。特許文献2に記載されたセルロース不織布は、測定部位による物性のばらつきが少ない、膜質均一性に優れたものである。
しかしながら、特許文献2に記載されたセルロース不織布は、濾材として利用する場合、取扱性や実用性に問題がある。すなわち、一般的に不織布を濾材として利用する場合、濾過面積を大きくするため(濾過効率を高めるため)、プリーツ加工(ひだ折加工)が施されるが、特許文献2に記載されたセルロース不織布はプリーツ加工中に破れたり、プリーツ加工できたとしても濾過中に濾過抵抗で破れたりするため、取扱性や実用性に問題がある。
以上のとおり、セルロースミクロフィブリルから構成される不織布で濾材として実用可能なものは、未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−652号公報
【特許文献2】国際公開第2006−004012号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】A. F. Turbak, F. W. Snyder and K. R. Sandberg, "Microfibrilated Cellulose, A New Cellulose Product: Properties, Uses, and Commercial Potential” J. Appl. Polym. Sci.: Appl. Polym. Symp., 37, 815 (1983)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、セルロース本来の特長である高い耐熱性、耐薬品性、優れた吸着性能を保有するとともに、高い捕集効率、物性安定性、及び優れた取扱性を併せ持つセルロース不織布から構成される実用可能な高性能濾材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく、鋭意検討し実験を重ねた結果、物性安定性と取扱性は、不織布を構成する微細セルロース繊維の重合度、繊維径に、また目付け、透気抵抗度に、そして膜質均一性の指標となるシート全体の吸光度の標準偏差に、強く影響されることを発見した。さらに、下層として有機繊維からなる別の層を設けることで取り扱い性がより優れたものとなることも発見した。また、本発明の物性安定性と取扱性に優れる濾材は、セルロース不織布の原料となるセルロース繊維と分散媒との分散体(スラリー)の組成を制御することで得られることも発見した。これらの発見に基づき、本発明者らは、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりものである。
[1]最大繊維径2500nm以下のセルロース繊維から構成されるセルロース不織布からなる濾材であって、下記(1)〜(6)の要件:
(1)上記セルロース繊維の重合度(DP)は500以上である、
(2)上記濾材における上記セルロース繊維の重量比率は10重量%以上である、
(3)上記濾材の目付は6g/m2以上150g/m2以下である、
(4)上記濾材の透気抵抗度は10s/100ml以上2000s/100ml以下である、
(5)上記濾材の吸光度の標準偏差は350以下である、
(6)上記濾材の目付10g/m2相当の引張強度は6N/15mm以上である、
の全てを満足する前記濾材。
【0010】
[2]前記セルロース不織布を構成するセルロース繊維の数平均繊維径が500nm以下である、前記[1]に記載の濾材。
【0011】
[3]糖、多価アルコール、アルコール誘導体、及び水溶性高分子からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性化合物を0.01重量%以上20重量%以下で含有する、前記[1]又は[2]に記載の濾材。
【0012】
[4]数平均繊維径1μm以上30μm以下である有機繊維からなる層が、前記濾材の重量に対して1重量%以上90重量%以下の重量比率で配された、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の濾材。
【0013】
[5]前記有機繊維からなる層の表層部から内部への前記セルロース繊維の入り込み深さが、当該有機繊維からなる層の厚みに対して、1%以上である、前記[4]に記載の濾材。
【0014】
[6]プリーツ加工されてなる、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の濾材。
【0015】
本発明の濾材は、最大繊維径2500nm以下の微細セルロース繊維からなるセルロース不織布から構成される。
本明細書中、「微細セルロース繊維の最大繊維径」とは、不織布濾材の表面に関して、無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行った時に、得られた全てのSEM画像中に繊維径が2500nmを超える繊維が平均2本未満であることをいう。
【0016】
セルロース繊維の最大繊維径が2500nm以下であることで、物性安定性に優れた不織布が得られる。セルロース繊維の最大繊維径は、好ましくは1800nm以下、より好ましくは1500nm以下である。
また、本発明の濾材を構成するセルロース繊維の数平均繊維径は500nm以下であることが好ましい。セルロース繊維の数平均繊維径が500nm以下であると、微細かつ均一なネットワーク構造を有する不織布を形成できる。数平均繊維径が500nmよりも大きな場合には、微細なネットワーク構造に基づく微小かつ均一な孔径の不織布となり難く、本発明の濾材で期待できる効果が現れ難くなるため、好ましくない。微小かつ均一な孔径形成の観点からセルロース繊維の数平均繊維径は、より好ましくは10nm以上350nm以下、更に好ましくは30nm以上300nm以下である。
尚、本発明の濾材におけるセルロース不織布を構成する最大繊維径2500nm以下のセルロース繊維は、短繊維状(ステープル状)の微細繊維であって、エンドレスの長繊維状(フィラメント状)のものは含まない。
【0017】
本発明の濾材は、重合度(DP)500以上の微細セルロース繊維からなるセルロース不織布で構成される。重合度とは、セルロース分子鎖を形成するグルコース環の繰返し数である。セルロース繊維の重合度が500以上であることで、繊維自体の引張強度や弾性率が向上し、その結果、濾材の強度が向上し、ひいては濾布の取扱性が格段に向上することで、プリーツ加工時の破れや濾過工程での濾膜の破裂等が抑制され、取扱性が向上する。また セルロース繊維の重合度が500以上であることで、濾材としての耐熱性や耐溶剤性を発揮できる。セルロース繊維の重合度に特に上限はないが、実質的に12,000を超える重合度のセルロースは入手が困難であり、工業的に利用できない。取扱性及び工業的実施の観点からセルロース繊維の重合度は、600〜8,000が好ましく、より好ましくは800〜6,000である。
【0018】
本発明の濾材における、最大繊維径2500nm以下の繊維径を有する微細セルロース繊維の重量比率は、濾材としての捕集効率、耐熱性、耐溶剤性の観点から、10重量%以上である。濾材における当該セルロース繊維の重量比率が10重量%未満であると、均一な微細孔径の形成が困難であるので、粗大ピンホールが多数形成されたり、また濾材の比表面積が低下することから、セルロース繊維特有の高い吸着性能を十分に発揮できなかったりするという理由で、濾材としての捕集効率が大幅に低下する。また微細セルロース繊維の重量比率が10重量%未満であると、セルロース本来の耐熱性や耐溶剤性が発揮できない。一方、本発明における微細セルロース繊維の重量比率の上限値を特に設定する必要はないが、取り扱い性の観点から99重量%以下であることが好ましい。したがって、濾材としての捕集効率、耐熱性、耐溶剤性と取扱性の観点から、濾材における上記セルロース繊維の重量比率は、好ましくは20重量%以上99重量%以下であり、より好ましくは30重量%以上90重量%以下である。
【0019】
本発明の濾材を構成する微細セルロース繊維は、化学修飾されていてもよい。例えば、微細セルロース繊維(セルロースミクロフィブリル)の表面に存在する一部又は大部分の水酸基が酢酸エステル、硝酸エステル、硫酸エステルを含むエステル化されたもの、メチルエーテルを代表とするアルキルエーテル、カルボキシメチルエーテルを代表とするカルボキシエーテル、シアノエチルエーテルを含むエーテル化されたもの、TEMPO酸化触媒によって6位の水酸基が酸化され、カルボキシル基(酸型、塩型を含む)となったものを、含むことができる。また、タンパク除去フィルターとして利用する場合は、これらの化学修飾されたセルロース繊維に抗体を固定化してもよいし、セルロース表面にポリエチレングリコール等のアルキルエーテル類をグラフトさせてもよく、これらは、要求する特性に従って適宜選択することができる。
【0020】
また、本発明の濾材を構成する微細セルロース繊維は、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ブロック型ポリイソシアネート等のジイソシアネート類やエピクロルヒドリン等のエポキシ類等で架橋されていてもよい。セルロースは多くの水酸基を有し親水性であるために、水で膨潤するという性質を有する。そのため、水系の液体濾過フィルターとして利用するためには耐水性の改善が必須であり、上記架橋を施すことで耐水性を改善することができる。
【0021】
本発明の濾材が好適に機能するためには、セルロース不織布が微細な網目構造を有し、かつ一定の通気性を有することが重要であって、目付が6g/m2以上150g/m2以下、かつ透気抵抗度が10s/100ml以上2000s/100ml以下のバランスで制御されていることが必要である。
目付が6g/m2よりも小さなシートは、薄過ぎて取扱性が著しく悪くなり、一方、目付が150g/m2よりも大きくなると、空孔率が小さくなり、濾過時の圧力損失が大きくなり、捕集効率が低下する。
【0022】
透気抵抗度とは、気体や液体等流体の流れやすさの指標であって、透気抵抗度の数値が低い程、流体が流れやすく、逆に数値が大きいと流体の流れにくさを表す。本発明における透気抵抗度は、25cm角の濾材を10等分にエリア分けし、当該10区画についてガーレー式デンソメーター((株)東洋精機製、型式G−B2C)を用いて、100mlの空気の透過時間を測定した値の平均値であるが、1箇所でも10s/100mlを下回る部分、又は2000s/100mlを超える部分がある場合、本発明に規定する透気抵抗度からは除外される。これは、膜質均一性の悪さを示唆するものであるからである。透気抵抗度が10s/100ml未満であると捕集効率が著しく低下する。一方、透気抵抗度は、2000s/100mlを超えると濾過速度が著しく低下するとともに、濾過工程において、圧力損失が大きく、濾過膜の破裂を引き起こす。本発明の濾材の透気抵抗度は、捕集効率と濾過時の濾膜破損防止の観点から好ましくは20s/100ml以上1000s/100ml以下の範囲であり、また、本発明の濾材の目付は、8g/m2以上120g/m2以下であることが取扱性と低圧力損失という観点から、好ましく、より好ましくは10g/m2以上100g/m2以下である。
【0023】
本発明の濾材は、25cm×18cmサイズの濾材に光源ランプから光を垂直に照射した時の吸光度の標準偏差が350以下であることが必要である。吸光度の標準偏差は、シート全体の吸光度のばらつきを表すものであり、広い面積範囲の膜質均一性を表す指標である。一般的に紙や不織布の膜質均一性は、地合い指数で表されるが、これは膜厚や目付けに左右されるので、濾材のような設計によって膜厚や目付を変更するシートの膜質均一性を表す指標としては適当ではない。濾材の吸光度の標準偏差を350以下に制御することによって、広い面積範囲に及ぶ膜質均一性が確保され、測定部位によって捕集効率が低下したり、また透気抵抗度や強度物性が大きく変動するという品質上の問題が解消される。
【0024】
濾材の高品質確保の観点からは、本発明における濾材の吸光度の標準偏差は、300以下が好ましく、より好ましくは250以下である。ここでシートの吸光度の標準偏差は、フォーメーション テスター(野村商事株式会社製 FMT−MIII)を用いて、25cm×18cm(320×230画素)の濾材に光源ランプから光を垂直に照射した時の各画素で測定した透過率(T)を換算して求めれられる吸光度(E=2−logT)の標準偏差である。
【0025】
本発明の濾材は、目付10g/m2相当の引張強度が6N/15mm以上である。濾材の引張強度はその目付に影響されるが、目付10g/m2相当の引張強度が6N/15mm未満であると、濾材の耐久性が著しく低下し、濾過時の破損につながり、また取り扱いも困難である。目付10g/m2相当の引張強度は、好ましくは7N/15mm以上、より好ましくは8N/15mm以上である。
【0026】
また、本発明の濾材の引張伸度は、5%以上であることが濾材のタフネス観点から好ましい。すなわち、濾材の引張伸度が5%以上であることによって濾材の耐久性が増し、濾過時の破損等使用上・取扱上の問題が発生しにくい。尚、本発明の濾材の引張伸度の上限値は特にないが、伸度(ひずみ)が大きい過ぎると捕集効率が低下するので、20%以下が好ましい。
【0027】
本発明の濾材の比表面積は、1m2/g以上200m2/g以下であることが好ましい。濾材の比表面積が1m2/g以上であると、濾材を構成するセルロース不織布の吸着性能が十分に発揮され、捕集効率が向上する。一方、濾材の比表面積が200m2/gを超えると捕集効率は向上するが、繊維が細くなりすぎ、濾材としての使用に耐えない。より好ましい濾材の比表面積は5m2/g以上100m2/g以下、さらに好ましくは10m2/g以上60m2/g以下である。
【0028】
本発明の濾材における微細セルロース繊維からなるセルロース不織布は、糖、多価アルコール、アルコール誘導体、及び水溶性高分子からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性化合物を含有していることが好ましい。
ここで、糖としては、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、トレハロース、セロビオース、及びマルトース、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、アルコール誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、水溶性多糖、水溶性多糖誘導体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0029】
ここで、水溶性多糖とは、水溶性の多糖を意味し、天然物としても多種の化合物が存在する。例えば、でんぷんや可溶化でんぷん、アミロース、プルランに代表されるα−1,4−グルカン、デキストランに代表されるα−1,6−グルカン、カードラン、レンチナンに代表されるβ−1,3−グルカン、アミロペクチン、グリコーゲンに代表される分岐糖、キシラン、ガラクタン、マンナン、グルコマンナン、グルコマンノグリカン、ガラクトグルコマンノグリカン、グアランに代表されるヘテログリカンを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
また、水溶性多糖誘導体とは、上述した水溶性多糖の誘導体、例えばアルキル化物、ヒドロキシアルキル化物、アセチル化物であって、水溶性のものが含まれる。あるいは、誘導体化する前の多糖がセルロース、スターチなどの様に水に不溶性であっても、誘導体化、例えば、ヒドロキシアルキル化やアルキル化、カルボキシアルキル化によって、水溶性化されたものも該水溶性多糖誘導体に含まれる。具体的には、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのヒドロキシアルキルセルロース、ヒドロキシエチルスターチ、ヒドロキシプロピルスターチなどのヒドロキシアルキルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、さらには、ヒドロキシエチルメチルセルロースやヒドロキシプロピルメチルセルロースのように、2種類以上の官能基で誘導体化された水溶性多糖誘導体も含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
上述した水溶性化合物のうち、水溶性高分子である水溶性多糖や水溶性多糖誘導体は耐熱性の高いものが多く、セルロース不織布の強度を向上させる効果も大きいので、そのような性質の水溶性多糖や水溶性多糖誘導体を使用すれば、得られるセルロース不織布は、セルロースが元来有する耐熱性を損なわない高強度のものとなるので、特に好ましい。
【0032】
濾材に上記水溶性化合物が含まれることによって、当該水溶性化合物が微細なセルロー繊維間の接触点強度を補強するバインダーとして機能し、濾材の取扱性や使用耐久性が向上する。水溶性化合物の含有量としては、濾材重量に対して0.01重量%以上20重量%以下が好ましい。水溶性化合物の含有量が濾材重量に対して0.01重量%未満では、バインダーとしての機能を発揮できず、20重量%を超えると空孔をふさぎ、空孔率が低下(濾過効率が低下)する。したがって、水溶性化合物の含有量は、濾材重量に対して、より好ましくは0.05重量%以上15重量%以下、さらに好ましくは0.01重量%以上10重量%以下である。
【0033】
尚、上述した水溶性化合物は、2%水溶液の溶液粘度(B型粘度計)が、500〜6,000mPa・sであることが、上記バインダー効果発現のためには好ましく、また後述する濾材の製造工程におけるエマルジョン系の抄紙用分散液の分散安定性のためにも水溶性化合物の溶液粘度がこの範囲にあることが好ましい。
【0034】
また、本発明の濾材は、濾材重量に対して10重量%未満、かつ上記バインダーの効果を阻害しない範囲内で、ポリプロピレンの短繊維、ポリプロピレン(芯)とポリエチレン(鞘)の複合繊維、ポリプロピレン(芯)とエチレンビニルアルコール(鞘)の複合繊維、高融点ポリエステル(芯)と低融点ポリエステル(鞘)の複合繊維等のバインダー繊維を含有することができる。
【0035】
本発明の濾材は、数平均繊維径1μm以上30μm以下の有機繊維からなる層を、濾材重量に対して1重量%以上90重量%以下の重量比率で配することができる。有機繊維から成る層と本発明で特定するセルロース繊維からなる不織布とを組み合わせることで、濾材としての取扱性が改善されると同時に、有機繊維層を液層に配すると濾過効率が改善される場合がある。これは、大きな粒径のものを有機繊維層で濾別するためと思われる。
有機繊維の数平均繊維径は数平均繊維径1μm以上30μm以下であることが、濾材の強度改善と柔軟性維持のために好ましい。また有機繊維の数平均繊維径がこの範囲にあることで有機繊維層が数μm〜数十μmの空孔を形成し、粗大粒子の濾材としても作用する。また有機繊維の濾材に対する重量比率は、1重量%以上90重量%以下であることが好ましく、1重量%以上であることで濾材の強度が改善される。有機繊維の重量比率が90重量%を超えるとセルロースミクロフィブリルの濾材としての特長(比表面積の高さによる高吸着性能)が阻害される。好ましい有機繊維の繊維径は1.5μm以上25μm以下、より好ましくは2μm以上20μm以下であり、そして好ましい有機繊維層の重量比率は5重量%以上80重量%以下、より好ましくは10重量%以上70重量%以下である。
【0036】
ここで有機繊維とは、6−ナイロンや6,6−ナイロン等のポリアミド繊維、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、木材パルプやコットンリンター等の天然セルロース繊維、ビスコースレーヨンや銅アンモニアレーヨン等の再生セルロース繊維及びリヨセルやテンセル等の精製セルロース繊維の群から選ばれる少なくとも1種である。
前記有機繊維からなる層は短繊維不織布、長繊維不織布いずれでもよいが、取扱性向上、使用時の当該繊維の滑落防止の観点から長繊維不織布が好ましい。また有機繊維からなる層は、2層以上の構造を持つ積層型、あるいは2種以上の有機繊維の複合体であってもよい。2層以上の構造を持つ積層型の有機繊維の場合、それぞれの層が同一の有機繊維から構成されていてもよく、異なる有機繊維から構成されていてもよい。
【0037】
前記有機繊維からなる層に対して微細セルロース繊維(セルロースミクロフィブリル)が、該層の厚み方向に入り込み、更に当該有機繊維からなる層の表層部から内部への入り込み深さが、該層の厚みに対して、1%以上であることが好ましい。微細セルロース繊維が有機繊維層に1%以上入り込んでいることで、濾材のプリーツ加工時の微細セルロース繊維不織布層と有機繊維層との剥離が防止され、また微細セルロース繊維の濾材からの滑落が防止される。更には、有機繊維層の表層部から深層部にかけて濾材の孔径サイズ分布が形成され、粗大粒子から微粒子まで広い粒径分布の粒子を効率的に濾過分別できる高性能濾材として機能することができる。有機繊維層に対する微細セルロース繊維の入り込み深さは、より好ましくは3%以上、最も好ましくは5%以上である。
【0038】
微細セルロース繊維不織布と有機繊維層からなる濾材の構造は、有機繊維層の支持体上に微細セルロース繊維が積層化された2層構造であっても、有機繊維層の表裏両面に該セルロース不織布を配した3層構造をもつものでもよい。また有機繊維からなる多層化不織布の片面或いは表裏両面に微細セルロース繊維不織布を配してもよく、これら多層構造の濾材の片面或いは表裏両面に更に有機繊維層を配してもよいが、この場合微細セルロース繊維の有機繊維層への入り込み深さは、異なる有機繊維からなる多層化不織布に対する入り込み深さで判断すべきであり、有機繊維層の濾材重量に対する重量比率は、使用された有機繊維層全ての重量で判断する。
【0039】
本発明の濾材は、プリーツ加工を施し、濾過面積を増すことで濾材を構成するセルロース不織布の有する高い捕集効率を更に向上させることができる。
【0040】
以下、本発明の濾材の製造方法について詳細に説明する。
本発明で使用するセルロース不織布は、まず、微細セルロース繊維(セルロースミクロフィブリル)の水分散液を調製し、該分散液を用いて以下に記載する方法により製膜して得る。
セルロースミクロフィブリルは、ミクロフィブリルと呼ばれる2nm〜200nmの繊維径のセルロース繊維又はその集束体を意味する。より具体的には、バクテリアセルロースと呼ばれる、酢酸菌やバクテリア類の産生するセルロース、又はミクロフィブリル化セルロースと呼ばれるパルプ等の植物由来ホヤセルロースのような動物由来のセルロースを、高圧ホモジナイザーや超高圧ホモジナイザー、グラインダー等の高度にせん断力の加わる装置で微細化処理することにより得られる、繊維表面から引き剥がれた独立したミクロフィブリル又はそれらが収束した微細繊維を意味する(前記非特許文献1参照)。本発明においては、コストや品質管理の面からミクロフィブリル化セルロースを原料として使用することが好ましい。
【0041】
ミクロフィブリル化セルロースを使用する際の原料としては、針葉樹パルプや広葉樹パルプ等のいわゆる木材パルプと非木材パルプを使用することができる。非木材パルプとしては、コットンリンターパルプを含むコットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、ワラ由来パルプ等が挙げられる。コットン由来パルプ、麻由来パルプ、バガス由来パルプ、ケナフ由来パルプ、竹由来パルプ、ワラ由来パルプとは、各々、コットンリントやコットンリンター、麻系のアバカ(例えば、エクアドル産やフィリピン産のものが多い)、ザイサルや、バガス、ケナフ、竹、ワラ等の原料から、蒸解処理による脱リグニン等の精製工程や漂白工程を経て得られる精製パルプを意味する。また、海藻由来のセルロースやホヤセルロースの精製物もミクロフィブリル化セルロースの原料として使用することができる。更に、ビスコースレーヨンや銅アンモニアレーヨン等の再生セルロース繊維及びリヨセルやテンセル等の精製セルロース繊維も本発明で特定する重合度に係わる要件を満たす限りにおいて利用することができる。コストや強度発現の観点からは、木材パルプやコットンリンターパルプを含むコットン由来パルプ、麻由来パルプを用いることが好ましい。
【0042】
次に、セルロース繊維のミクロフィブリル化の方法について記載する。
セルロース繊維のミクロフィブリル化は、前処理工程、叩解処理工程及び微細化工程を経ることが好ましい。
前処理工程においては、100〜150℃の温度での水中含浸下でのオートクレーブ処理、酵素処理等又はこれらの組み合わせによって、原料パルプを微細化し易い状態にしておくことが有効である。これらの前処理は、微細化処理の負荷を軽減するだけでなく、セルロース繊維を構成するミクロフィブリルの表面や間隙に存在するリグニンやヘミセルロースなどの不純物成分を水相へ排出し、その結果、微細化された繊維のα−セルロース純度を高める効果もあるため、セルロース不織布の耐熱性の向上に大変有効でありうる。
【0043】
叩解処理工程においては、原料パルプを0.5重量%以上4重量%以下、好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、さらに好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下の固形分濃度となるように水に分散させ、ビーターやディスクレファイナー(ダブルディスクレファイナー)のような叩解装置でフィブリル化を高度に促進させる。ディスクレファイナーを用いる場合には、ディスク間のクリアランスを極力狭く(例えば、0.1mm以下)設定して、処理を行うと、極めて高度な叩解(フィブリル化)が進行するので、高圧ホモジナイザー等による微細化処理の条件を緩和でき、有効な場合がある。
【0044】
好ましい叩解処理の程度は以下のように定められる。
我々の検討において、叩解処理を行うにつれCSF値(セルロースの叩解の程度を示す。JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法で評価)が経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると再び増大していく傾向が確認された。したがって、水系分散液を調整するに当たって使用するミクロフィブリル化セルロースは、CSF値が一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けCSF値が増加している状態まで叩解することが好ましいことが判明した。本発明では、未叩解からCSF値が減少する過程でのCSF値を***↓、ゼロとなった後に増大する傾向におけるCSF値を***↑と表現する。該叩解処理においては、CSF値は少なくともゼロが好ましく、より好ましくはCSF30↑である。このような叩解度に調製した水分散体(以下「スラリー」ともいう。)ではフィブリル化が高度に進行し、最大繊維径2500nmを超える粗大セルロース繊維を含まない濾材を提供できると同時に、当該スラリーから得られたセルロース不織布からなる濾材は、セルロースミクロフィブリル同士の接着点の増加からか、引張強度が向上する傾向がある。またCSF値が少なくともゼロに又はその後増大する***↑の値をもつ高度に叩解されたスラリーは、均一性が増大し、その後の高圧ホモジナイザー等による微細化処理での詰まりを軽減できるという製造効率上の利点がある。尚、過度に叩解を進めると強度低下の傾向が現れる。したがって、CNF値の上限はCNF700↓であり、好ましくはCNF500↓である。
【0045】
ミクロフィブリル化セルロースの製造には、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、グラインダー等を用いることができる。この際の水分散体中の固形分濃度は、上述した叩解処理に準じ、0.5重量%以上4重量%以下、好ましくは0.8重量%以上3重量%以下、より好ましくは1.0重量%以上2.5重量%以下の固形分濃度とすると詰まりが発生せず、しかも効率的な微細化処理が達成できる。
使用する高圧ホモジナイザーとしては、例えば、ニロ・ソアビ社(伊)のNS型高圧ホモジナイザー、(株)エスエムテーのラニエタイプ(Rモデル)圧力式ホモジナイザー、三和機械(株)の高圧式ホモゲナイザーなどを挙げることができ、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。超高圧ホモジナイザーとしては、みづほ工業(株)のマイクロフルイダイザー、吉田機械興業(株)ナノマイザー、(株)スギノマシーンのアルティマイザーなどの高圧衝突型の微細化処理機を意味し、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。グラインダー型微細化装置としては、(株)栗田機械製作所のピュアファインミル、増幸産業(株)のスーパーマスコロイダーに代表される石臼式摩砕型を挙げることができるが、これらの装置とほぼ同様の機構で微細化を実施する装置であれば、これら以外の装置であっても構わない。
【0046】
最大繊維径が2500nm以下になるように、更に好ましくは数平均繊維径が500nm以下になるように、機種の選定やこれらの装置の条件(操作圧力やパス回数)を絞り込み選択すればよい。
【0047】
次に、本発明で使用するセルロース不織布の製造方法について記載する。製膜方法としては、以下に記載する抄紙方法によって、本発明で使用するセルロースシートを製造することが好ましい。
すなわち、(1)セルロースミクロフィブリル0.05重量%以上0.5重量%以下、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下の油性化合物0.5重量%以上10重量%以下、及び水85重量%以上99.5重量%以下を含む水系分散液であって、該油性化合物が水相に分散したエマルジョンである水系分散液を調整する調製工程、(2)セルロースミクロフィブリルの濃度(固形分濃度)および油性化合物の濃度を特定範囲に濃縮制御し、濃縮組成物を得る抄紙工程、(3)濃縮組成物を加熱することによって、該濃縮組成物から油性化合物および水を蒸発させて除去する乾燥工程、の3つの工程を含むセルロースシートの製造方法である。
【0048】
以下(1)〜(3)の工程別に詳細に説明する。
(1)水系分散液の調製工程
調製工程で使用する水系分散液は、セルロースミクロフィブリル0.05重量%以上0.5重量%以下、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下の油性化合物0.5重量%以上10重量%以下、及び水85重量%以上99.5重量%以下を含む水系分散液であることが好ましい。
エマルジョン抄紙法用の水系分散液中のセルロースミクロフィブリルの濃度は、0.05重量%以上0.5重量%以下、より好ましくは0.08重量%以上0.35重量%以下であると好適に安定な抄紙を実施することができる。該水系分散液中のセルロースミクロフィブリル濃度が0.05重量%よりも低いと濾水時間が非常に長くなり生産性が著しく低くなると同時に膜質均一性も著しく悪くなるため好ましくない。また、セルロースミクロフィブリル濃度が0.5重量%よりも高いと、分散液の粘度が上がり過ぎてしまうため、均一に製膜することが困難になり、やはり好ましくない。
【0049】
次に、調製工程で調製する水系分散液中には、0.15重量%以上10重量%以下の、大気圧下での沸点範囲が50℃以上200℃以下である油性化合物がエマルジョンとして、85重量%以上99.5重量%以下の水から成る水相に分散していることが好ましい。
油性化合物の抄紙用水系分散液中の濃度は0.15重量%以上10重量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3重量%以上5重量%以下、さらに好ましくは0.5重量%以上3重量%以下である。油性化合物の濃度が10重量%を超えても本発明のセルロースシートを得ることはできるが、製造プロセスとして使用する油性化合物の量が多くなり、それに伴う、安全上の対策の必要性やコスト上の制約が発生するため好ましくない。また、油性化合物の濃度が0.15重量%よりも小さくなると所定の透気抵抗度範囲よりも高い透気抵抗度のシートしか得られなくなるため、やはり好ましくない。エマルジョン抄紙法においては、上述した条件下で形成されるエマルジョンにおいて、水と比較して油性化合物が、抄紙機における濾過を意味する抄紙工程により濾液側に移動せずに、セルロースミクロフィブリルの近傍に効率的に残存し、実質的に油性化合物の濃縮化が進行することを特徴とする。すなわち、乾燥工程に到る際に、セルロースミクロフィブリルが水に比べ表面張力の低い油性化合物に取り囲まれることは、乾燥時にミクロフィブリル間の膠着を防御し、通気性を有するセルロースシートを形成する原動力となる(先述した有機溶剤による置換法と原理的には同じ)。
【0050】
乾燥時に上記油性化合物が除去されないと通気性を有するシートとなり得ないため、用いる油性化合物は、乾燥工程で除去可能なことが必要である。したがって、本発明において、水系分散液にエマルジョンとして含まれる油性化合物は、一定の沸点範囲にあることが必要であり、具体的には大気圧下での沸点が50℃以上200℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは、60℃以上190℃以下であれば、工業的生産プロセスとして水系分散液を操作し易く、また、比較的効率的に加熱除去することが可能となる。油性化合物の大気圧下での沸点が50℃未満であると水系分散液を安定に扱うために低温制御下で扱うことが必要となり、効率上好ましくなく、さらに油性化合物の大気圧下での沸点が200℃を超えると、乾燥工程で油性化合物を加熱除去するのに多大なエネルギーが必要となるため、やはり好ましくない。
【0051】
さらに、上記油性化合物の25℃での水への溶解度は5重量%以下、好ましくは2重量%以下、さらに好ましくは1重量%以下であることが油性化合物の必要な構造の形成への効率的な寄与という観点で望ましい。以下に油性化合物の具体例を示す。
例えば、炭素数6〜炭素数14の範囲の炭化水素、具体的には、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカン、n−ウンデカンやそれらの異性体(例えば、イソヘキサン、イソオクタン、イソデカン)に代表される鎖状飽和炭化水素類、シクロヘキサン、シクロヘキセンのような環状炭化水素類、ジイソブチレンやシクロヘキセンのような鎖状または環状の不飽和炭化水素類、及びベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類、次に、炭素数5〜炭素数9の範囲であり一価かつ一級のアルコール、具体的には、n−ペンタノール、n−ヘキサノール、n−ヘプタノール、n−オクタノール、イソヘキサノール、イソヘプタノール、(Z)−3−ヘキセン−1−オール、2−メチル−1−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、4−メチル−1−ペンタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、(2E,4E)−2,4−ヘキサジエン−1−オール、2−メチル−2−ヘキサノール、イソヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、イソオクタノール、1,3−ベンゾジオキソール−5−メタノール等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。一級のアルコールではないが、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2−メチル−2−ヘキサノール、2−ヘプタノール、シクロヘプタノール、4−ヘプタノール、1−メチルシクロヘキサノール、1−エチニルシクロペンタノール、2−オクタノール、(S)−2−オクタノール、シクロオクタノール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、1−オクチン−3−オール等の炭素数5〜炭素数9の範囲である一価のアルコールも油性化合物として好適に使用できる。
【0052】
上述した油性化合物のうち、特に、油性化合物が炭素数5〜炭素数9の範囲であり一価かつ一級のアルコールの中から選ばれる少なくとも一つの化合物、さらに好ましくは、該アルコールの中の、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノールの中から選ばれる少なくとも一つの化合物を用いると特に好適に本発明のセルロースシートを製造することができる。これらの油性化合物を用いることで、油滴径を2μm以下、好適には1.5μm以下、より好適には1μm以下の微小なエマルジョンを形成することができる。その結果、高空孔率かつ微細な多孔質構造を有するシートを製造することができる。ここで、油滴径は、光散乱法の粒度分布測定装置にて測定される最頻値の粒径をいう。
【0053】
これらの油性化合物は単体として配合してもよいし、複数の混合物を配合してもよい。
上述した油性化合物は、調製工程における水系分散液中にエマルジョンとして分散していることが重要である。この場合、油滴が水相に分散しているO/W型のエマルジョンである。油滴サイズに該当した網目構造が乾燥後の構造体に反映されるため、油滴は小さく(油滴径として2.0μm以下)安定に分散していることが好ましいので、エマルジョン抄紙用の水系分散液中には、前述した特定の水溶性化合物が水相中に溶解していることが好ましい。これらの水溶性高分子は、油滴粒子の表面近傍に局在し、スラリーの安定化に寄与するとともにエマルジョン抄紙の機構、すなわち、セルロースミクロフィブリルの作る緩やかな会合体中に油滴ごと取り込まれ、抄紙の過程で湿紙中に残存するため、高い残存率で湿紙中に残存することになるので、均一で微細な孔を高い比率で形成させることができる。ただし、この際の特定の水溶性化合物の混合量は、油性化合物に対し25重量%以下であることが好ましい。これ以上の添加量とすると油性化合物のエマルジョンの形成能が低下するため、好ましくない。
【0054】
エマルジョン抄紙用の水系分散液中には、前述した特定の水溶性化合物が水相中に溶解していることが好ましい。該特定の水溶性高分子の濃度は、0.003重量%以上0.3重量%以下、より好ましくは、0.005重量%以上0.08重量%以下、さらに好ましくは、0.006重量%以上0.07重量%以下の量であり、この範囲であると、本発明で使用するセルロースシートが得られ易いと同時に、水系分散液の状態が安定化することが多いので好ましい。該濃度が0.003重量%よりも小さいと、上記特定の水溶性化合物の添加効果が現れ難いので好ましくなく、また、該濃度が0.3重量%を超えると泡立ち等の添加量増大に伴う負の効果が現れ易くなるため好ましくない。エマルジョンを安定化させる目的で、水系分散液中に上記特定の水溶性化合物以外に界面活性剤が、上記特定の水溶性高分子との合計量が上記濃度範囲で含まれていても構わない。
【0055】
この場合の界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムなどのカチオン界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、アルキルポリオキシエチレンエーテルや脂肪酸グリセロールエステル等のノニオン性界面活性剤を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
この他、水系分散液中には、目的に応じて種々の添加物が添加されていても構わない。例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子、炭酸カルシウム粒子のような無機系粒子状化合物、樹脂微粒子、各種塩類、エマルジョンの安定性を阻害しない程度の有機溶剤等、本発明の高空孔率構造体の製造に悪影響を及ぼさない範囲(種類の選択や組成の選択)で添加することができる。
【0057】
水系分散液中では水以外の成分は、85重量%以上99.5重量%以下、好ましくは90重量%以上99.4重量%以下、さらに好ましくは92重量%以上99.2%以下の組成の水中に分散または溶解していることが好ましい。水系分散液中の水の組成が85重量%より低くなると、粘度が増大するケースが多く、エマルジョンを分散液中に均一に分散し難くなり、均一な構造の通気性を有するセルロースシートが得られ難くなるため好ましくない。また、水系分散液中の水の組成が99.5重量%を超えると、配合組成としてエマルジョンの含有量が低減され、濃縮組成物中の油性化合物濃度が低くなってしまい、通気性の構造体が得られ難くなるため、やはり好ましくない。
エマルジョンを含む抄紙用水系分散液(スラリー)中の微細セルロース繊維の分散平均径は、1μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0058】
抄紙用水系分散液中の微細セルロース繊維の分散平均径(以降、Rvとする)は、水の透過性、抄紙の効率の点から1μm以上、シートの均一性の点から300μm以下が好ましい。ここで言う分散平均径(Rv)とは、抄紙用分散液をレーザ散乱式粒度分布測定装置((株)堀場製作所製、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920、下限検出値は0.02μm)を用い、室温で測定して求められる体積平均の算術平均径のことを意味する。また、本測定ではMieの散乱理論(M.Kerker,“The Scattering of Light”,U.S.A.,Academic Press,New York,N.Y.,1969,Cap.5.)により体積分布に関する算術平均径を使用するが、その際に使用するセルロースの水の屈折率に対する相対屈折率は1.20とする。
水系分散液(スラリー)のRvは、より好ましくは3μm以上200μm以下、より好ましくは5μm以上100μm以下の範囲にあると、より均一性に優れたシートを提供することができる。尚、本発明者らによる特許文献2においても、抄紙用分散液中(完全水系:エマルジョンなし)の微細セルロース繊維の分散平均径を1μm以上300μm以下にすることが膜質均一性を向上させるために有効である旨記載されているが、上述した化合物郡からなるエマルジョン組成物である本発明の水系分散液(スラリー)は、理由は明らかではないが、完全水系の特許文献1に記載された抄紙用分散液と比較して、分散平均径分布が狭い(均一性が高い)ので、膜質均一性がより向上するとともに、分散安定性が高い(経時的な分散径の変化が起こりにくい)ので、シートの生産性向上にも寄与する。
【0059】
調製工程で調製する水系分散液は、上述した化合物群から成るエマルジョン組成物であるが、エマルジョンの形成においては、乳化方法のあらゆる方法を採用することができる。すなわち、機械的乳化、転相乳化、液晶乳化、転相温度乳化、D相乳化、可溶化領域を利用した超微細乳化(マイクロエマルジョン乳化)等の方法によりO/W型エマルジョンを調製する。
水系分散液の調製は、添加物を水中へ混入し、適当な乳化方法により水系エマルジョン分散液とするか、あるいは予め油性化合物と乳化剤からなる水系エマルジョンを上述したような適当な乳化方法で調製しておき、別途調製したセルロースミクロフィブリルおよびその他の添加物からなる水系分散液と混合して水系分散液とすればよいが、その際分散平均径が1μm以上300μm以下になるように、またエマルジョンの油滴径が2μm以下になるようにブレンダーのようなカッティング機能をもつ羽根を高速回転させるタイプの分散機や高圧ホモジナイザーで制御して調整することが粗大ピンホールをなくし、孔径の均一なシートを製造する上で好ましい。
【0060】
(2)抄紙工程
エマルジョン抄紙法の第二の工程は、(1)の工程で調製した水系分散液を抄紙し、抄紙機上での減圧(サクション)及びプレス機によりセルロースミクロフィブリルの濃度(固形分濃度)および油性化合物の濃度を特定範囲に濃縮制御し、濃縮組成物を得る抄紙工程である。
抄紙機としては、傾斜ワイヤー式抄紙機、長網式抄紙機、円網式抄紙機のような装置を用いると好適に欠陥の少ないシート状のセルロースシートを得ることができる。抄紙機は連続式であってもバッチ式であっても目的に応じて使い分ければよい。
【0061】
セルロースミクロフィブリルを使用して調製した水系分散液を抄紙する方法は、基本的には、本発明者らによる特許文献2に記載されている技術に準じる。特許文献2と本発明におけるエマルジョン抄紙法との差異は、抄紙用の水系分散液中に油性化合物と水から成るエマルジョンが含まれている点であるが、水系分散液中においてセルロースミクロフィブリルの会合体(軟凝集体)の分散平均径が1〜300μmになるように調製されていること、また特許文献2に開示されている要件を満足する濾布は、後述する固形分濃度及び油性化合物濃度を特定範囲に脱水・濃縮するに適していることにより、特許文献2で開示されている抄紙の条件、特に濾布の条件(セルロースミクロフィブリルの歩留まり割合、水の透過量)により良好に抄紙を実施できる。
【0062】
抄紙工程では、油性化合物の濃縮化と同時に高固形分化を進行させ、固形分濃度を6重量%以上25重量%以下、油性化合物濃度を7重量%以上35重量%以下の範囲に制御した湿紙を調整することが必要である。湿紙の固形分率が6重量%よりも低いと湿紙としての自立性がなく、工程上問題が生じ易くなる。一方、湿紙の固形分率が25重量%を超える濃度まで脱水すると水相だけでなく、濃縮したエマルジョンが系外に排出されてしまい、セルロースミクロフィブリル近傍の水層の存在によって、却って油性化合物の濃度が低下してしまうため、有効に通気性のあるセルロースシートを形成できなくなり、相応しくない。また、油性化合物濃度が7重量%未満であるとセルロースフィブリル間に十分な油滴が存在できなくなり、乾燥時に水の表面張力でフィブリル間の膠着が生じ、シートの緻密化、あるいは膜質の不均一化を引き起こす。一方、油性化合物濃度が35重量%を超えると表面に油が浮いた状態になり、深さ方向で構造変化が起こる(膜質の不均一化に繋がる)。湿紙の固形分濃度の好ましい範囲としては、6重量%以上25重量%以下、さらに好ましくは8重量%以上20重量%以下である。また湿紙の油性化合物濃度の好ましい範囲としては、10重量%以上32重量%以下であり、更に好ましくは12重量%以上30重量%以下である。
【0063】
湿紙の固形分濃度及び油性化合物濃度を上記範囲に制御するために、抄紙機上におけるサクション圧及びプレス圧と時間により調整することができる。この場合、抄紙上におけるサクション圧(減圧度)は、大気圧に対して1kPa以上15kPa以下の範囲で減圧することが好ましい。大気圧に対する減圧度が1kPa以下であると、濾水に長時間要し生産性が低下する。一方、大気圧に対する減圧度が15kPaを超えると、脱水と同時に油性化合物の逸脱が起こり、湿紙への油性化合物の残存率が低下し(水溶性高分子を添加する場合は湿紙への水溶性高分子の残存率も低下する)、シートの緻密化や膜質の不均一化に繋がる。また抄紙機上におけるサクション圧を上記範囲で制御し、かつ0.01MPa以上0.3MPa以下の圧力で湿紙をプレスすることが好ましい。プレス圧が0.01MPa未満であると、シート表面から裏面(濾布側)にかけて油性化合物の残存率の分布が生じ、粗大ピンホールの形成や孔径の不均一化に繋がる。一方、プレス圧が0.3MPaを超えると湿紙の油性化合物の残存率が6重量%を下回り、シートの緻密化や膜質の不均一化に繋がり、ひどい場合は粗大ピンホールが形成される。
【0064】
尚、有機繊維層である支持体を用いる場合、ワイヤーあるいは濾布をセットした抄紙機に当該支持体をのせて、水系分散液を構成する水の一部を該支持体上で脱水(抄紙)を行い、該支持体上にセルロースミクロフィブリルからなるセルロースシートの湿紙を積層化させ、一体化させることにより、少なくとも2層以上の多層構造体からなる多層化シートを製造することができる。3層以上の多層化シートを製造するためには、2層以上の多層構造を有する支持体を使用すればよい。また支持体上で2層以上の本発明のセルロースシートの多段抄紙を行って3層以上の多層シートとしてもよい。
【0065】
(3)乾燥工程
抄紙工程で得た湿紙は、加熱による乾燥工程で油性化合物及び水の一部を蒸発させることによって、セルロースシートとなる。乾燥工程は、ドラムドライヤーのような幅を定長とした状態で、水と油性化合物(以下、水と油性化合物を合わせて「分散媒」という。)を乾燥し得るタイプの定長乾燥型の乾燥機を使用すると、より透気抵抗度の低いセルロースシートを安定に得ることができるため、好ましい。乾燥温度は、条件に応じて適宜選択すればよいが、好ましくは、45℃以上180℃以下、さらに好ましくは、60℃以上150℃以下の範囲とすれば、好適に通気性のあるセルロースシートを製造することができる。乾燥温度が45℃未満では、多くの場合に分散媒の揮発速度が遅いため、生産性が確保できないため好ましくなく、180℃より高い乾燥温度とすると、構造体を構成する親水性高分子が熱変性を起こしてしまうケースがあり、また、コストに影響するエネルギー効率も低減するため、やはり好ましくない。場合によっては、100℃以下の低温乾燥で組成調製を行い、次段で100℃以上の温度で乾燥する多段乾燥を実施することも、均一性の高いセルロースシートを得るうえでは有効であることもある。
【0066】
上述した乾燥工程で得られたセルロースシートにカレンダー装置によって平滑化処理を施す平滑化工程を設けてもよい。該平滑化工程を経ることにより表面が平滑化され、薄膜化された本発明のセルロースシートを得ることもできる。すなわち、乾燥後のセルロースシートに対し、さらにカレンダー装置による平滑化処理を施す工程を含むことにより、薄膜化が可能となり、広範囲の、膜厚/通気度/強度の組み合わせの本発明のセルロースシートを提供することができる。例えば、10g/m2以下の目付の設定下で20μm以下(下限は3μm程度)の膜厚のセルロースシートを容易に製造することが可能である。カレンダー装置としては単一プレスロールによる通常のカレンダー装置の他に、これらが多段式に設置された構造をもつスーパーカレンダー装置を用いてもよい。これらの装置、およびカレンダー処理時におけるロール両側それぞれの材質(材質硬度)や線圧を目的に応じて選定することにより多種の物性バランスをもつセルロースシートを得ることができる。
以上の条件を満たすことにより、耐熱性、耐候性、耐溶剤性等に優れ、微細なネットワーク構造を有し、通気性かつ高強度の微多孔性のセルロース不織布を製造することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、物性の主な測定値は、以下の方法で得た。
(1)微細セルロース繊維の最大繊維径(nm)
微細セルロース繊維の最大繊維径が2500nm以下であることは、SEM画像によって確認する。
微細セルロース繊維からなる不織布濾材の表面に関して、無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行った時に、得られた全てのSEM画像中の繊維径2500nmを越える繊維の数をカウントし、その平均値を採る。但し、画像において、数本の微細繊維が多束化して2500nm以上の繊維径となっていることが明確に確認できる場合には、2500nm以上の最大繊維径の繊維とは見なさないものとする。
【0068】
(2)微細セルロース繊維の数平均繊維径(nm)
微細セルロース繊維からなる不織布濾材の表面に関して、無作為に3箇所、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を10000倍相当の倍率で行う。得られたSEM画像に対し、画面に対し水平方向と垂直方向にラインを引き、ラインに交差する繊維の繊維径を拡大画像から実測し、交差する繊維の個数と各繊維の繊維径を数える。こうして一つの画像につき縦横2系列の測定結果を用いて数平均繊維径を算出する。さらに抽出した他の2つのSEM画像についても同じように数平均繊維径を算出し、合計3画像分の結果を平均化し、対象とする試料の数平均繊維径とする。
【0069】
(3)重合度(DP)の測定
微細セルロース繊維の重合度(DP)は、下記手順に従って銅エチレンジアミン法で測定する。
【0070】
(分析試料の調整)
セルロース1gに純水20mlを加え30分間攪拌した後、銅エチレンジアミン溶液(1M銅、2Mエチレンジアミン)20ml加え、30分間攪拌して、分析試料とした(木材化学, ユニ出版, p.40, (1983)参照)。
【0071】
(液の流下速度の測定及び重合度の算出)
LAUDA社製の動粘度測定装置(PROLINE PVL24)を用いて液の流下速度を測定した。
以下の式(2)により、セルロースを溶解させた銅エチレンジアミン溶液の流下時間(t(秒))と無添加同溶液の流下時間(t0(秒))から、相対粘度ηrを求める:
ηr = t/t0 式(2)
次に、それぞれの濃度における比粘度ηspを、以下の式(3)により求める:
ηspr−1 式(3)
比粘度を、以下の式(4)に挿入して、固有粘度[η]を求める:
[η]=ηsp/100×c×(1+0.28×ηsp) (c:試料濃度) 式(4)
以下の式(5)により、粘度平均重合度DPを求める:
DP = 175×[η] 式(5)
尚、微細セルロース繊維と有機繊維層からなる濾材の場合、下記(4)に記載する方法により採取された微細セルロース繊維の重合度を測定する。
【0072】
(4)濾材における微細セルロース繊維の重量比率(P,wt%)
予め濾材を105℃の電気乾燥機内で6時間乾燥し、デシケータ中で30分間冷却した後濾材重量を求める(W1)。
濾材を、濾材重量に対して10倍量の水で攪拌し(30分間)、濾過し(孔径2mmの篩)、そして洗浄し、その後20倍量の水で同様の操作を2回繰返し、微細セルロース繊維が混入した洗浄液をナスフラスコ(容器重量:W2)に移し、エバポレータ(70℃)で乾固させる。見かけ上水分がなくなった後、105℃の電気乾燥機内で6時間乾燥し、デシケータ中で30分間冷却した後、重量を求める(容器と微細セルロース繊維の総量;W3)。微細セルロース繊維の重量比率(P)は、下記式(6)により求める:
微細セルロース繊維の重量比率(P)=(W3−W2)/W1×100 式(6)
【0073】
(5)目付(g/m2
濾材の目付はJIS P−8124に準じて算出する。
【0074】
(6)透気抵抗度(sec/100ml)
25cm角の濾材を10等分にエリア分けし、当該10区画についてガーレー式デンソメーター((株)東洋精機製、型式G−B2C)を用いて、100mlの空気の透過時間を測定し、10点の平均値をとる。ここで、1箇所でも10s/100mlを下回る部分、又は2000s/100mlを超える部分がある場合、本発明に規定する透気抵抗度からは除外される。
【0075】
(7)吸光度の標準偏差
フォーメーション テスター(野村商事株式会社製 FMT−MIII)を用いて、25cm×18cm(320×230画素)の濾材に光源ランプから光を垂直に照射した時の各画素で測定した透過率(T)を換算して得られた吸光度(E=2−logT)の標準偏差を測定する。
【0076】
(8)引張強伸度(N/15mm)
引張強度の評価は、JIS P 8113にて定義される方法に従い、熊谷理機工業(株)の卓上型横型引張試験機(No.2000)を用い、幅15mmのサンプル10点について測定し、その平均値を引張強伸度とした。目付けの違いを考慮して、強度は10g/m2目付け相当の値で評価した。
【0077】
(9)水溶性高分子付着量(wt%)
不織布1gを、500gの冷水(5℃以下のイオン交換水を使用)に分散させ、家庭用ミキサーで5分間分散させる。次に分散液の温度を5℃以下に保持しながら、30分間放置し、繊維に付着している水溶性高分子を完全に水相へ溶解させる(この間、10分間に1回の割合で手で軽く揺する)。この後、得られた繊維の分散液をガラスフィルター等で濾過・洗浄し、濾液を回収し、さらにエバポレーターにて該濾液の濃縮を行い、得られた濃縮液を、内部標準を加えた重水中に適量溶かし、1H−NMRのピーク強度により溶解している各成分の濃度を評価する。
重水へ濃縮液の溶解量、先に行った濃縮工程の濃縮度等を考慮し、1H−NMRによる溶解成分の濃度から、セルロース不織布中の溶解成分の含有率を算出する。仮に、水溶性多糖でもなく水溶性多糖誘導体でもない水溶性成分が該濃縮液中に含有され、しかも該水溶性成分の1H−NMRにおけるピーク位置が水溶性多糖又は水溶性多糖誘導体のピーク位置と重なる場合には、適当な濃度条件で、液体クロマトグラフ又はゲルパーミエーションクロマトグラフの手法により各成分を分離したうえで1H−NMRによる分析を行うものとする。
【0078】
(10)有機繊維の重量比率(X,wt%)
予め濾材を105℃の電気乾燥機内で6時間乾燥し、デシケータ中で30分間冷却した後濾材重量を求める(Wa)。
濾材を濾材重量に対して10倍量の水で攪拌し(30分間)、濾過し(孔径2mmの篩)、そして洗浄し、その後20倍量の水で同様の操作を2回繰返し、微細セルロース繊維他を洗い流す。篩上に残った有機繊維を105℃の電気乾燥機内で6時間乾燥し、デシケータ中で30分間冷却した後有機繊維の重量を求める(Wb)。有機繊維の重量比率(X)は、次式(7)により求める:
有機繊維の重量比率(X)=(Wb)/Wa×100 式(7)
【0079】
(11)有機繊維層への微細セルロース繊維の入り込み深さ(Y,%)
ゼラチンカプセル(リリー社製)に試料(約4×20mm)とエタノールを入れ、蓋をかぶせる。このカプセルを横に倒し、試料がエタノールに浸っていることを確認し、十分に冷却された凍結割断器にカプセルを横に倒してセットし、試料を冷却する。試料が凍結したことを確認し、予め液体窒素で冷却しておいた割断専用ナイフを用い、カプセルに刃を当て、上から専用小槌で叩いて割り、割ったカプセル毎凍結乾燥させる。凍結乾燥後のサンプルの断面をSEMで観察し、画像から有機繊維層に対する微細セルロース繊維の入り込み深さ(Y)を次式(8)により算出する:
Y=L2/L1×100 式(8)
{式中、L1は、有機繊維層の厚みであり、そしてL2は、微細セルロース繊維が入り込んだ有機繊維層表層部からの長さである。}
【0080】
(12)捕集効率(%)
集塵性能である捕集効率(%)は、平均粒径0.3μmのジオクチルフタレート粒子を含有する空気を流速5.3cm/秒で濾材を通気(濾過)させ、濾材の前後で空気をサンプリングし、それぞれの粒子数をパーティクルカウンター(リオン(株)製、形式KM-27)で測定し、次式(9)により算出する。
捕集効率={(濾過前の粒子数−濾過後の粒子数)/濾過前の粒子数}×100 式(9)
【0081】
(13)プリーツ加工性評価
濾材をひだ状に加工し、加工性の非常に良いものを◎、良いものを○、悪いものを×の3段階で評価した。
【0082】
[実施例1]
重合度(DP)1750のコットンリンター原綿を、10重量%となるように水に浸液させ、オートクレーブ内で130℃、4時間の熱処理を行い、得られた膨潤パルプを、何度も水洗し、水を含浸した状態の膨潤パルプを得た。
該膨潤パルプを固形分1.5重量%となるように水中に分散させて水分散体(400L)とし、ディスクレファイナー装置として相川鉄工(株)製SDR14型ラボリファイナー(加圧型DISK式)を用い、ディスク間のクリアランスを1mmとして400Lの該水分散体に対して、20分間叩解処理を進めた後、引き続いてクリアランスをほとんどゼロに近いレベルにまで低減させた条件下で、叩解処理を続けた。経時的にサンプリングを行い、サンプリングスラリーに対して、JIS P 8121で定義されるパルプのカナダ標準ろ水度試験方法(以下、CSF法という。)のCSF値を評価したところ、CSF値は経時的に減少していき、一旦、ゼロ近くとなった後、さらに叩解処理を続けると、増大していく傾向が確認された。クリアランスをゼロ近くとしてから10分間、上記条件で叩解処理を続け、CSF値で73ml↑の叩解スラリーを得た。得られた叩解スラリーを、そのまま高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で5回の微細化処理を実施し、ミクロフィブリル化セルロースの水系分散液M1(固形分濃度:1.5重量%)を得た。
【0083】
次に、得られたM1、及び油性化合物を、以下の表1に示すとおりに添加し、家庭用ミキサーで4分間乳化、分散を行った。この水系分散液の分散平均径Rvは168μmであった。
PET/ナイロン混紡製の平織物(敷島カンバス社製、NT20・・・大気下25℃での水透過量:0.03ml/cm2・s、ミクロフィブリル化セルロースを大気圧下25℃における濾過で99%以上濾別する能力あり)をセットしたバッチ式抄紙機(熊谷理機工業社製、自動角型シートマシーン 25cm×25cm、80メッシュ)に目付10g/m2のセルロース不織布を目安に、上記調整した水系分散液312.5gを投入し、その後大気圧に対する減圧度を4KPaとして抄紙(脱水)を実施した。
得られた濾布上に載った湿潤状態の濃縮組成物からなる湿紙を、ワイヤー上から剥がし、1kg/cm2の圧力で1分間プレスした後、湿紙面をドラム面に接触させるようにして、湿紙/濾布の2層の状態で表面温度が130℃に設定されたドラムドライヤーにやはり湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させ、得られた乾燥した2層体からセルロースのシート状構造物から濾布を剥離させて、白色の均一な微細セルロース繊維から構成される濾材S1を得た。
【0084】
S1の表面を10000倍の倍率でSEM画像解析を行ったところ、S1の表面における微細セルロース繊維で2500nmを超えるものは認められず、数平均繊維径は162nmであった。また得られたS1は、透気抵抗度及び強度に関して以下の表2に示すとおり、本発明に規定する範囲にあり、濾材に適する物性をもつものであった。更にS1の吸光度の標準偏差は259であり、透気抵抗度、強度のバラツキの少ない膜質均一性に優れたものであった。
【0085】
[実施例2]
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学工業(株)製 60SH−4000)を以下の表1に示す組成で水系分散液に添加する以外は、実施例1と同様に微細化、スラリー調製、抄紙及び乾燥を行い、濾材S2を得た。濾材S2は以下の表2に示すとおり、本発明に規定する物性範囲にあり、濾材として適性に使用できるものであった。
【0086】
[実施例3及び4]
以下の表1に示す原料セルロースを用いる以外は、実施例2と同様に濾材S3及びS4を得た。濾材S3及びS4は以下の表2に示すとおり、本発明に規定する物性範囲にあり、濾材として適性に使用できるものであった。
【0087】
[実施例5〜実施例8]
以下の表1に示す組成で水系分散液を調製した以外は、実施例2と同様に濾材S5〜S8を得た。濾材S5〜S8はいずれも以下の表2に示すとおり、本発明に規定する物性範囲にあり、濾材として適性に使用できるものであった。
【0088】
[実施例9及び10]
目付7g/m2、30g/m2のセルロース不織布を目安に、水系分散液を、それぞれ、218.8g、937.5g投入する以外は、実施例2と同様に濾材S9及びS10を得た。濾材S9及びS10はいずれも以下の表2に示すとおり、本発明に規定する物性範囲にあり、濾材として適性に使用できるものであった。
【0089】
[比較例1]
サトウキビの絞り粕であるバガスパルプ(重合度1240)1.5kgを10Lオートクレーブに投入し(水:6kg)、対絶乾バガスパルプ量あたりの有効アルカリ添加率が15wt%になるように、水酸化ナトリウムを混合し、120℃で30分間処理した。濾過、洗浄後、固形分濃度8wt%とした後、セルロース重量に対して有効塩素濃度2wt%となるように次亜塩素酸ナトリウムを加えて攪拌し、室温で8時間漂白した後、濾過により洗浄した。更に、1質量%のスラリーとし、回転式ホモジナイザーを用いて、1Lのスラリーを10,000rpmで1分間処理して分散させた。
当該微細セルロース繊維の分散液と数平均繊維径0.65μmのマイクロガラス繊維(繊維長5mm)、繊度1.7dtexのポリエチレンテレフタレート繊維(繊維長5mm)を固形分濃度が0.2wt%で、かつそれぞれ固形分の重量比率が10:15:75になるように、水系分散液を調製した。
上記水系分散液を用いる以外は、実施例1と同様に抄紙、乾燥を行い、濾材C1を得た。C1は吸光度の標準偏差が453と膜質均一性の劣るものであった。またC1の透気抵抗度は、n=10の測定のうち、2点が10s/100ml以下であり、粗大ピンホールの存在を示唆していた。
【0090】
[比較例2及び3]
油性化合物及び水溶性高分子を加えない以外は、実施例2と同様に微細化、スラリー調製、抄紙及び乾燥を行って、濾材C2を得た(比較例2)。
また、比較例2と同様に微細化、スラリー調製、抄紙を行った後、シート中の水分をイソブタノールで置換し、130℃に設定されたドラムドライヤーにやはり湿紙がドラム面に接触するようにして約120秒間乾燥させ、濾材C3を得た(比較例3)。
濾材C2は、以下の表2に示すとおり膜質均一性、強度は高いものの、透気抵抗度が3089s/100mlと極めて高いものであった。
一方、濾材C3は、以下の表2に示すとおり膜質均一性や透気抵抗度は本発明の範囲にあるものの、強度が劣るものであった。
【0091】
[比較例4]
重合度(DP)460のケナフを原料セルロースに用いる以外は、実施例2と同様に濾材C4を得た。濾材C4は以下の表2に示すとおり、膜質均一性や透気抵抗度は本発明の範囲にあるものの、強度が劣るものであった。
【0092】
[比較例5]
叩解処理工程において、CSF値で50ml↓の叩解スラリーを調製し、当該スラリーを高圧ホモジナイザー(ニロ・ソアビ社(伊)製NS015H)を用いて操作圧力100MPa下で2回の微細化処理を実施した以外は、実施例2と同様にして濾材C5を得た。濾材C5は以下の表2に示すとおり、最大繊維径が2500nmを超えるものであった。また、濾材C5は吸光度の標準偏差は306と本発明に規定する範囲にあるものの、透気抵抗度がn=10の測定のうち、1点が10s/100ml以下であり、粗大ピンホールの存在を示唆していた。
【0093】
[比較例6]
目付5g/m2のセルロース不織布を目安にした以外は、実施例2と同様に濾材C6を得た。濾材C6は以下の表2に示すとおり、吸光度の標準偏差が356と膜質均一性に劣り、また透気抵抗度、強度ともに本発明の範囲から外れるものであった。
【0094】
[比較例7]
水系分散液の分散平均径が300を超えるように乳化、分散処理を行った以外は、実施例2と同様に濾材C7を得た。濾材C7は以下の表2に示すとおり、吸光度の標準偏差が350を超え、その結果、透気抵抗度及び強度ともにバラツキが発生し、本発明に規定する範囲を外れるサンプルがあった。
【0095】
[実施例11〜14]
以下の表3に示す有機繊維層(いずれも長繊維不織布)を支持体として、微細セルロース繊維重量比率40wt%(実施例11)及び60wt%(実施例12〜14)目安に実施例2に記載の水系分散液を投入する以外は、実施例2と同様に濾材S11〜S14を得た。
濾材S11〜S14のいずれも支持体の補強効果により強度が向上した。
【0096】
[比較例8]
以下の表3に示す再生セルロース長繊維不織布を支持体として、微細セルロース繊維の重量比率5wt%を目安に濾材C8を得たが、微細セルロース繊維の重量比率が少ないために、膜質均一性に劣り、透気抵抗度にバラツキがあった。
【0097】
[比較例9]
大気圧に対する減圧度を0.5KPaとして抄紙(脱水)を実施した以外は、実施例14と同様に濾材C9を得た。微細セルロース繊維の入り込み深さが0.3%と浅いためにプレス加工時に微細セルロース繊維層と有機繊維層が剥離した。
【0098】
[実施例15〜19、及び比較例10〜13]
以下の表4に示す濾材の捕集効率及びプリーツ加工性を評価した。本発明の濾材はいずれも高い捕集効率とプリーツ加工性を示した。一方、強度の弱い濾材C3は捕集効率の評価はできたものの、プリーツ加工で破れが発生した(比較例10)。最大繊維径が2500nmを超えるセルロース繊維を含む濾材C5は、捕集効率が68.1%と低い値しか示さず、粗大ピンホールの存在を示唆するものであった(比較例11)。また、微細セルロース繊維不織布の目付の小さい濾材C6は、捕集効率評価過程で破れが発生し、評価ができなかった(比較例12)。更に再生セルロース繊維長繊維不織布と積層し濾材C8は、微細セルロース繊維の重量比率が小さく、捕集効率が悪いばかりか、プリーツ加工時に支持体との剥がれが生じ、取扱性に問題があった(比較例13)。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明の濾材は、気体系では家庭用や業務用の掃除機用フィルター、換気扇用フィルター、脱臭フィルター、エアコン用フィルター、各種の空気清浄器用フィルター等、水系ではコーヒーフィルターやティーバッグ用フィルター等に、油系では家庭用・業務用の油こし紙、自動車用オイルフィルター、自動車用フュエルフィルター、その他各種の濾紙等の各種濾材、各種機能紙に利用でき、また、生産工程において液体中に含まれている微粒子を除去することを目的とした工業用の液体フィルターにも好適に使用できる。
また、本発明の濾材は、例えば、飲料(ビール、清酒、ワイン、清涼飲料)、食品(食用油、酢、醤油、蜂蜜)、化粧品(液体整髪料、オーデコロン、香水)、医薬品(注射薬、目薬、その他の液状医薬品)、水(原料水、仕込水、洗浄水、半導体用純水)、化学薬品(樹脂、塗料、ワニス)等の各種液体の最終濾過(清澄、除菌)としても利用可能である。
さらに、本発明の濾材は、電荷修飾による花粉吸着フィルターや空気中浮遊ウイルス等微生物の補足フィルター、抗体固定化修飾による血液成分の特定物質補足フィルターやウイルス等微生物の除去フィルター、コラーゲン等細胞接着物質固定化修飾による細胞や微生物の培養フィルター、抗菌処理をした被覆創傷用フィルター等にも利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大繊維径2500nm以下のセルロース繊維から構成されるセルロース不織布からなる濾材であって、下記(1)〜(6)の要件:
(1)上記セルロース繊維の重合度(DP)は500以上である、
(2)上記濾材における上記セルロース繊維の重量比率は10重量%以上である、
(3)上記濾材の目付は6g/m2以上150g/m2以下である、
(4)上記濾材の透気抵抗度は10s/100ml以上2000s/100ml以下である、
(5)上記濾材の吸光度の標準偏差は350以下である、
(6)上記濾材の目付10g/m2相当の引張強度は6N/15mm以上である、
の全てを満足する前記濾材。
【請求項2】
前記セルロース不織布を構成するセルロース繊維の数平均繊維径が500nm以下である、請求項1に記載の濾材。
【請求項3】
糖、多価アルコール、アルコール誘導体、及び水溶性高分子からなる群から選択される少なくとも1種の水溶性化合物を0.01重量%以上20重量%以下で含有する、請求項1又は2に記載の濾材。
【請求項4】
数平均繊維径1μm以上30μm以下である有機繊維からなる層が、前記濾材の重量に対して1重量%以上90重量%以下の重量比率で配された、請求項1〜3のいずれか1項に記載の濾材。
【請求項5】
前記有機繊維からなる層の表層部から内部への前記セルロース繊維の入り込み深さが、当該有機繊維からなる層の厚みに対して、1%以上である、請求項4に記載の濾材。
【請求項6】
プリーツ加工されてなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の濾材。

【公開番号】特開2012−550(P2012−550A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136068(P2010−136068)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】