説明

セルロース繊維及びその製造方法

本発明は架橋剤で処理したリヨセル系セルロース繊維に関するものであり、該架橋剤は繊維のフィブリル化を防止し、下記特性:
・繊維をpH4.0〜10.0の範囲内で(特に水分及び/又は熱の影響下で)保管すると、架橋剤により誘導されるフィブリル化防止作用が変化する;
・pH4.0〜10.0の範囲内に最適値が存在し、保管中、最適値では架橋剤により誘導されるフィブリル化防止の安定性が最も高くなる;
・最適値の周辺に適当範囲が存在し、最適値での安定性と比較して、適当範囲では安定性が最大で20%低下する;
・pH4.0〜10.0の範囲内で適当範囲が少なくとも1つの制限値によって限定され、最適値での長期安定性と比較して、制限値では安定性が20%低下し、制限値の前後で更に低下する;
・架橋剤がpH値を変える機能を有する;
を示す。
本発明の繊維は適当範囲に緩衝する物質を含有し、適当範囲内で繊維1kgあたり少なくとも12mmol、好ましくは15〜70mmolの緩衝能力であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリヨセル系(genus Lyocell)セルロース繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロース系繊維の製造方法としてビスコース法が知られているが、この方法は環境問題を有しており、そのため最近数十年間にわたってより環境に優しい代替法を得るための取り組みが鋭意行われてきた。近年現れた、特に興味深い可能性の1つとして、誘導体を形成せずにセルロースを有機溶媒に溶かし、この溶液を押し出して成形体(moulded bodies)を得る方法がある。このような溶液から紡いだ繊維にはBISFA(The International Bureau for the Standardization of Man Made Fibres)によってリヨセル(Lyocell)という一般名が与えられており、上記有機溶媒は有機薬品と水の混合物であると理解される。
【0003】
また、このような繊維は「溶剤紡糸繊維(solvent-spun fibre)」としても知られている。
【0004】
リヨセル繊維や他の成形体の製造に用いる有機溶媒としては、特に三級アミンオキシドと水の混合物が非常に適していることが明らかになっている。このアミンオキシドとしてはN−メチル−モルホリン−N−オキシド(NMMO)が主に用いられる。他の適当なアミンオキシドは特許文献1に開示されている。NMMOと水の混合物のセルロース溶液からセルロース系成形体を得る方法は、例えば特許文献2及び3に開示されている。このとき、セルロース溶液を紡績口金から押し出し、空隙中で延伸し、水性の沈殿槽内で溶液から沈殿させる。以下、この方法を「アミンオキシド法」又は「リヨセル法」と称し、また略称「NMMO」はセルロースを溶解可能な全ての三級アミンオキシドを示すものとする。紡績直後のリヨセル繊維の加工については、例えば特許文献4及び5に記載されている。アミンオキシド法で製造した繊維は、調整湿潤状態で高い繊維引っ張り強度(tenacity)を示し、高い湿潤率(wet modulus)及び引っ掛け強度(loop strength)を有するという特徴がある。
【0005】
また、リヨセル繊維はフィブリル化する傾向があることが知られている。この特性に対して多数の対策が既に提案されており、リヨセル繊維の架橋剤を用いた処理が商業的に重要なやり方になっている。
【0006】
適当な架橋剤は例えば特許文献6〜8に記載されている。特許文献9及び10に記載のもの等、他の架橋剤も知られている。
【0007】
特に好ましい架橋剤は、下記式(I):
【化1】

(式中、Xはハロゲンを表し、RはH又はイオン性部位であり、nは0又は1である)で表される化合物又はその塩である。
【0008】
このような架橋剤で処理したリヨセル繊維は、未処理のリヨセル繊維と比較して、よりフィブリル化しにくい。フィブリル化を防ぐための方策は、繊維の耐湿潤摩耗性(wet abrasion resistance、NSF)である。
【0009】
しかしながら、架橋剤で処理したリヨセル繊維においても、フィブリル化の防止が不十分なため、特に該繊維を更に糸や布に加工する際にピリング(pilling)やフィブリル化による問題が再三生じる場合がある。
【0010】
また、フィブリル化防止作用は保管中に徐々に低下することが既に知られている。この低下は架橋剤の結合がゆっくりではあるが持続的に加水分解されるため起こる場合があると推測される。従って、架橋剤の加水分解の程度、およびそれによるフィブリル化防止作用低下の程度は、セルロース繊維の保管期間及び保管気候条件に応じて大きく変化し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】EP−A553070
【特許文献2】US−PS4,246,221
【特許文献3】PCT−WO93/19230
【特許文献4】WO92/14871
【特許文献5】WO00/18991
【特許文献6】EP0538977
【特許文献7】WO97/49856
【特許文献8】WO99/19555
【特許文献9】WO94/09191
【特許文献10】WO95/28516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、架橋剤処理によるフィブリル化防止作用を従来のリヨセル繊維よりも長期間にわたって維持できるリヨセル系セルロース繊維を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的はある架橋剤で処理したリヨセル系セルロース繊維により達成される。この架橋剤は繊維のフィブリル化を防止し、下記特性:
・繊維をpH4.0〜10.0の範囲内で(特に水分及び/又は熱の影響下で)保管すると、架橋剤により誘導されるフィブリル化防止作用が変化する;
・pH4.0〜10.0の範囲内に最適値が存在し、繊維の保管中、最適値では架橋剤により誘導されるフィブリル化防止の安定性が最も高くなる;
・最適値の周辺に適当範囲が存在し、最適値での安定性と比較して、適当範囲では安定性が最大で20%低下する;
・pH4.0〜10.0の範囲内で適当範囲が少なくとも1つの制限値によって限定され、最適値での長期安定性と比較して、制限値では安定性が20%低下し、制限値の前後で更に低下する;
・架橋剤がpH値を変える機能を有する;
を示す。
【0014】
本発明の繊維は上記適当範囲に緩衝する物質を含有し、適当範囲内で少なくとも繊維1kgあたり12mmol以上、好ましくは15〜70mmolの緩衝能力を示すことを特徴とする。
【0015】
本発明の目的に関して、「フィブリル化防止」は、架橋剤で処理した繊維が未処理繊維よりもフィブリル化に対して高い抵抗性を有することを意味する。特許文献8に記載されているように、これは耐湿潤摩耗性に関する試験によって証明できる。
【0016】
「繊維をpH4.0〜10.0の範囲内で保管すると、架橋剤により誘導されるフィブリル化防止作用が変化する」とは、架橋剤で処理した繊維を保管する際、例えば熱及び水分(特に水蒸気)の影響によってフィブリル化防止作用に変化が生じることを意味する。後述するように、緩衝剤によりpH値を一定に維持しながら所定の期間にわたって繊維を保管し、その耐湿潤摩耗性の試験を行うことで、この変化を決定することができる。その際、いずれの場合にも、耐湿潤摩耗性が初期値から30%低下するまでの時間を測定する。
【0017】
「pH4.0〜10.0の範囲内に最適値が存在する」とは、架橋剤で処理した繊維を保管する際、所定のpH4.0〜10.00の範囲内でフィブリル化防止作用の低下が見られ、最適値での低下の程度が他のpH値でのそれよりも小さいことを示す。したがって、pH4.0〜10.0の範囲内に、架橋剤により誘導される保管中のフィブリル化防止の安定性が最も高くなる、すなわち耐湿潤摩耗性が初期値から30%低下するまでの時間が最も長くなるような、少なくとも1つのpH値が存在しなければならない。以下、このpH値を「最適値」と称する。フィブリル化防止の安定性の持続的な最適が、一点のみではなくあるpH範囲にわたって(例えば0.5〜1のpH単位の範囲で)観測される場合があるが、「最適値」はこのようなpH範囲も包含する。
【0018】
「最適値の周辺に適当範囲が存在する」−上記安定性が最適値でのそれよりも低下するような範囲が最適値近辺に存在しなければならない。以下、この範囲を「適当範囲」と称し、該範囲においては、安定性は最適値でのそれと比較して最大で20%低下する。
【0019】
「pH4.0〜10.0の範囲内で適当範囲が少なくとも1つの制限値によって限定される」とは、適当範囲の少なくとも一方(即ち、少なくとも酸性pH側又はアルカリ性pH側)があるpH値によって区切られており、このpH値では、耐湿潤摩耗性が30%低下するまでの時間が「最適値」での時間(最長時間)の80%まで短縮されることを意味する。以下、この値を「制限値」と称する。
【0020】
「架橋剤がpH値を変える機能を有する」という基準は、繊維の保管中に、例えば架橋剤が水分又は熱の影響を受け、且つ/或いは繊維と反応することで、繊維から分離したり未結合又は遊離の反応性基と反応し続け、架橋剤自体が繊維のpH値に影響を及ぼすことを意味する。これは各架橋剤で処理した繊維のpH値の推移を観察することによって決定できる(下記参照)。
【0021】
繊維のpH値は後述の方法に従って証明する。
【0022】
繊維の緩衝能力も同じく後述の試験によって決定する。
【0023】
本発明の目的において、「含有」という語は、繊維の表面に緩衝物質が付着している場合も包含する。
【0024】
架橋剤が上述の基準、即ち、
a)架橋剤で処理した繊維をpH4.0〜10.0の範囲内で(特に水分及び/又は熱の影響下で)保管するとフィブリル化防止作用が変化するかどうか、
b1)pH4.0〜10.0の範囲内に、繊維の保管中、架橋剤により誘導されるフィブリル化防止の安定性が最も高くなる最適値が存在するかどうか、
b2)最適値の周辺に、最適値での安定性と比較して、安定性が最大で20%低下する適当範囲が存在するかどうか、
b3)pH4.0〜10.0の範囲内で適当範囲が少なくとも1つの制限値によって限定されるかどうか、ここで最適値での長期安定性と比較して、制限値では安定性が20%低下する、および
c)架橋剤がpH値を変える機能を有するかどうか
を満たす場合は、各架橋剤固有の適当なpH範囲に緩衝する緩衝剤を添加することによって、繊維のpH値を該適当範囲に維持でき、それによって保管中のフィブリル化防止作用の低下を遅らせることができると分かった。
【0025】
多くの研究において示されたとおり、上記架橋剤の結合の開裂速度は、特に下記3つのパラメーター:
1)温度
2)水分
3)繊維pH
に依存する。
【0026】
パラメーター1)及び2)に製造者側から与える影響はあまり無いが、一方で繊維のpH値は架橋剤の加水分解速度に対し決定的な影響を与え得ることが示されている。使用する架橋剤によって、リヨセル繊維の架橋が最も安定となるようなpH範囲が存在することが分かっている。
【0027】
プロセス制御、例えば塗布する仕上げ剤(finishings)の種類によって、架橋リヨセル繊維は実際に、製造中、使用する各架橋剤に理想的な範囲内の初期pH値を示すことができる。しかしながら、プロセス制御及び用いる架橋剤の種類によっては、繊維が、部分的に反応した架橋剤分子(例えば酸形成部位(例えば塩素部位)を有する)の大半を多かれ少なかれ含む場合があることが分かった。それらの反応性部位はさらなる工程、例えば乾燥、再湿潤化、蒸気処理、さらに保管においてその反応を完了し得る。その結果繊維のpH値が変化することがある。このようにpH値が最適pH範囲から変化すると、架橋剤の加水分解が加速されてしまうだろう。
【0028】
本発明は、この以前は知られていなかった知見から出発し、各架橋剤に理想的な範囲に繊維のpH値を維持するために前記pH範囲中に緩衝する効果を有する物質を用いる。
【0029】
これにより、長期間にわたって繊維を保管する場合も、フィブリル化防止作用が維持される。
【0030】
本発明の繊維は、好ましくは適当範囲内のpH値を有する。
【0031】
また、使用する緩衝物質のうち少なくとも1つは、好ましくは適当範囲内のpKa値を有する。しかしながら、フィブリル化挙動の保存安定性が低下するようなpH値に緩衝する効果が得られるのであれば、適当範囲から若干外れたpKa値(例えば、適当範囲から「制限値」の前後にpH1単位以下だけ外れた範囲内、好ましくはpH0.5単位以下だけ外れた範囲内のpKa値)を有する物質も適している。
【0032】
上記基準a)〜c)を満たし特に好ましく用いられる架橋剤としては、式(I):
【化2】

(式中、Xはハロゲンを表し、RはH又はイオン性部位であり、nは0又は1である)で表される化合物又はその塩が挙げられる。この架橋剤をリヨセル繊維の処理に用いることは特許文献8より公知である。2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1.3.5−トリアジンのナトリウム塩が特に好ましい。
【0033】
この群の架橋剤は上記基準a)を満たすこと、即ちこの架橋剤で処理した繊維をpH4.0〜10.0の範囲内で(特に水分及び/又は熱の影響下で)保管するとフィブリル化防止作用が変化することが示されている。
【0034】
また、これらの架橋剤、特に2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1.3.5−トリアジンのナトリウム塩は、pH9〜9.5の範囲に保管中のフィブリル化防止安定性が最高となる「最適値」(或いはこの場合は最適範囲)を有する(基準b1))。加えて、これらの架橋剤、特に2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1.3.5−トリアジンのナトリウム塩は、pH8.5に(上記定義に従う)「制限値」を有する(基準b2))。繊維を保管する際、この制限値を超える範囲と比較して、該制限値未満の範囲ではフィブリル化防止作用が著しく速く低下する。即ち、上記定義に従う「適当」範囲が存在する(基準b3))。更に、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1.3.5−トリアジンのナトリウム塩は、pH10.5に更なる制限値を有し、この制限値を超える範囲ではやはり保管中のフィブリル化防止作用が著しく速く低下する。しかしながら、10.5を超えるpH値でセルロース繊維を保管することは現実的ではなく、緩衝物質をこの範囲で使用する必要はない。
【0035】
最後に、この群の架橋剤はpH値を変える機能も有する(基準c)。この機能は架橋剤中のハロゲン基が解離したり更に反応することによることが明らかである。
【0036】
従って、この架橋剤で処理した繊維は、好ましくは8.5〜10.5のpH値を有する。
【0037】
この好ましい実施態様で用いる緩衝物質は、8.0〜11.0のpKa値を有するのが有利である。
【0038】
特に、ホウ砂;アルカリ金属イオン(例えばLiイオン、Naイオン、Kイオン)、アンモニウム、又は置換アミン由来カチオン(例えばモノ、ジ、トリメチルアンモニウム、又はモノ、ジ、トリエチルアンモニウム)の炭酸塩又は重炭酸塩;アルカリ金属イオン、アンモニウム、又は置換アミン由来カチオンのリン酸塩、リン酸水素塩、又はリン酸二水素塩;アンモニア;置換アミン(例えばモノ、ジ、トリメチルアミン、又はモノ、ジ、トリエチルアミン);グアニジン又はグアニジン塩;並びにこれらの混合物、カルボン酸との混合物、及びそれらの塩からなる群から選ばれる物質が緩衝物質として適している。
【0039】
ホウ砂(Na247・10H2O)及び炭酸水素塩/炭酸塩系、これらの混合物、並びにホウ砂とリン酸緩衝液の混合物が無機緩衝系として特に好適である。炭酸塩とリン酸緩衝液の混合物も使用可能である。緩衝物質としてはホウ砂を用いるのが特に好ましい。
【0040】
ホウ砂は両pH方向に緩衝し、それによりアルカリ含有率が高い部分を中和することによって、繊維のpHが部分的に高くなりすぎるのを防ぐ。
【0041】
ホウ砂は特にpH8.8〜9.7の範囲で使用するのが理にかなっている。ホウ砂のpKa(=9.2〜9.3)から外れたpH値は、従来の酸又は苛性アルカリを添加することにより調整できる。
【0042】
しかしながら、pH値を上記pKa値の近辺に維持するのが有利である。また一方、ホウ砂を単独で用いる替わりに、ホウ砂を他の緩衝系(炭酸水素塩/炭酸塩、及び/又はリン酸塩緩衝液)と共に使用することも可能である。
【0043】
本発明によると、ホウ砂は、セルロースに対して0.05%〜1.4%、好ましくは0.3%〜0.6%の量で繊維に添加する。かかる適用は、仕上げ剤の適用と同時であってもよい。ホウ砂は固体投入器(solid dosing unit)から固体の状態で添加するのが好ましい。この場合、仕上げ剤を希釈する必要が無いからである。また、仕上げ加工中にホウ砂を水溶液の状態で添加してもよい。
【0044】
繊維中のホウ砂の濃度は、繊維1kgあたり少なくとも1525mgとするのが好ましい。この濃度は、繊維上で少なくとも173mg/kgのホウ素含量と等価である。ホウ砂の濃度は繊維1kgあたり2860mg〜14000mgとするのが特に好適である。この濃度は、繊維上で324〜1600mg/kgのホウ素含量と等価である。
【0045】
炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウム緩衝系も緩衝物質として非常に適しており、繊維1kgあたり少なくとも848mgの濃度(炭酸ナトリウム換算)で用いるのが好ましい。該濃度は繊維1kgあたり1580mg〜7420mgの範囲(炭酸ナトリウム換算)とするのが特に好ましい。
【0046】
また、本発明のセルロース繊維は8〜10%の繊維水分(fibre moisture)を有するのが好ましい。含水量が更に高い場合は、本発明による緩衝作用がより一層重要になる。
【0047】
本発明は、式(I):
【化3】

(式中、Xはハロゲンを表し、RはH又はイオン性部位であり、nは0又は1である)で表される化合物又はその塩、好ましくは2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1.3.5−トリアジンのナトリウム塩からなる架橋剤で処理したリヨセル系セルロース繊維であって、酸の作用をpH7.5〜11.0、好ましくはpH8.5〜10.5の範囲に緩衝する緩衝物質を含有し、且つ前記pH範囲内で緩衝能力が繊維1kgあたり少なくとも12mmol、好ましくは15〜70mmolであることを特徴とするセルロース繊維にも関する。
【0048】
本発明のセルロース繊維の前記実施態様は、既に具体的に説明した上記緩衝剤を上記の量で含有するのが好ましい。
【0049】
本発明の更なる態様は、本発明のリヨセル繊維を含有するセルロース繊維ベール(bale)に関する。
【0050】
リヨセル繊維やその他の人工繊維は、製造後にベール状にプレス成形され、この状態で購入者(製糸業者等)へと輸送されることが知られている。よって、製造者の場所(輸送前)と購入者の場所(更なる加工の前)の両方において、繊維はベールの形態で保管される。従って、保管中にフィブリル化防止作用を維持するために、ベールが緩衝物質の存在により安定化された本発明のリヨセル繊維を含むのが特に好適である。特に、ベールは基本的には完全に本発明の繊維からなってもよい。「基本的には」という語は、他の繊維(例えば製品の識別を容易にする標識繊維)が微量含まれていてもよいことを意味すると理解される。
【0051】
糸、織物、編物(knitted fabrics)、組物(braided fabric)、およびメリヤス(hosiery)等のような繊維製品も保管され、それによりフィブリル化防止作用が低下する場合がある。そこで本発明は、本発明のリヨセル繊維を含む糸、織物、編物、組物、メリヤス等のような繊維製品にも関する。本発明は特に湿式加工(例えば反応性染色(reactive dyeing))を施していない繊維製品に関する。従来のセルロース系繊維の湿式加工においては、繊維鎖中で、架橋剤の反応性基の大部分が完全に反応すると考えられ、この場合、その後、pHを変化させる機能が全く(又は殆んど)存在せず、従って本発明のような緩衝効果が必要となる。
【0052】
適当範囲に緩衝する物質をリヨセル系セルロース繊維に適用する工程を含む方法は、本発明の繊維を製造するのに役立つ。
【0053】
この場合、セルロース繊維の製造中、ベール状にプレス成形する前に緩衝物質を適用するのが好ましい。特に、繊維の処理を目的とする最終湿式加工の途中又は後で適用するべきである。すなわち、緩衝物質を適用した後に他の湿式工程を行うと、それらの物質が繊維から洗い流されてしまう場合がある。
【0054】
例えば、仕上げ剤と共に乾燥する前、最終加工工程中に、緩衝物質を繊維に適用してよい。
【0055】
或いは、仕上げ槽で繊維を処理する直前の被覆工程において、緩衝物質を適用してもよい。
【0056】
また、繊維をベール状にプレス成形する前、乾燥工程の直前、途中、又は最後に緩衝物質を繊維に適用することもできる。
【0057】
いずれの変形例においても、緩衝剤を液体の状態で塗布してよく、エアロゾルの状態で繊維に噴霧してもよく、接触リップ(contact lip)で塗布してもよく、また固体の状態で超微粉形態で繊維に混ぜてもよい。
【0058】
式(I)で表される架橋剤を用いた場合、研究したいかなる場合においても、ホウ砂等のようなアルカリ性緩衝系を例えば仕上げ槽に添加することによって、リヨセル繊維の架橋を安定化する優れた効果が得られた。ホウ砂を仕上げ加工時に添加することによって、部分的に反応した架橋剤の量や比率に応じて、フィブリル化防止を考慮せずに架橋リヨセル繊維を使用できる期間が、緩衝していない繊維に比べてほぼ倍になると考えられる。従って、架橋リヨセル繊維における品質の一貫性(quality consistency)は、相当に長い期間にわたって確実にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
実施例
測定方法:
繊維のpH値の測定方法:
この方法では、繊維を脱塩水(VE水)で処理し、続いてこの水のpH値を測定する。
【0060】
化学天秤上に100mlサンプル瓶を置き、これに3g(±0.01g)の乾燥(空気乾燥)繊維を量り取る。続いてこの繊維を30mlのVE水に混合し、約15分毎に十分に振とうしながら室温で1時間処理する。次に、ガラス棒を用いて抽出物から繊維を分離し、抽出物のpH値をpH計(Messrs. Knick)で測定する。
【0061】
保管中のフィブリル化防止安定性挙動、架橋剤の結合のpH依存感受性、及び架橋剤の結合の長期安定化に適したpH範囲の判定(基準a)及びb1)〜b3)):
原則:
当業者に公知の緩衝系(酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、重炭酸塩、炭酸塩、ホウ砂等)から、4.0〜10.0のpH範囲で0.5pH単位ずつ異なるpH値を有する緩衝溶液を調製する。緩衝溶液は、少なくとも0.1mol/lの緩衝物質濃度を有し、調整pH値から0.8pH単位よりも大きく逸脱することがない緩衝系のpKaを有する。
【0062】
変形例1)濃縮溶液(liquor)に浸漬
まず、試験する架橋剤で処理した出発繊維のフィブリル化防止作用を、耐湿潤摩耗性(特許文献8記載の試験)に基づいて、少なくとも3回のパラレルな測定で判定する。耐湿潤摩耗性(「NSF」)の値はx U/dtex(回転/dtex)の単位で示し、良好なフィブリル化防止のためにはxは>450の値であるべきである。
【0063】
このとき、pH4.0〜10.0の範囲内、溶液比率(liquor ratio)1:10で、繊維を上述の各緩衝系に置き、密閉容器内の該溶液中で50℃に保つ。
【0064】
25日間にわたって2日おきに各緩衝容器から繊維試料を採取する。試料をVE水で洗浄して緩衝溶液を除去し、実験用乾燥器中で慎重に60℃で5時間乾燥し、NSFを測定する。
【0065】
25日間の保管終了後、各緩衝系について得られたNSF値を時間に対してプロットする。
【0066】
このようにして得た曲線群のうち少なくとも1つが明確な下降傾向を示し、最初から終了時までで少なくとも30%の摩耗減量(a loss in the abrasion value)を示す場合は、基準a)が満たされる、すなわちその架橋系は加水分解に敏感である。
【0067】
基準a)の存在が判定された場合、異なるpH値での曲線の傾き、および特にNSFが30%低下するまでの時間を比較する。NSFが初期値から30%低下するまでの時間が最も長くなるpH値が「最適値」である(基準b1))。NSFが30%低下するまでの時間がこの最長時間と比較して20%未満だけ短くなる、最適値周辺の範囲が、「適当範囲」であり(基準b2))、本発明に従って繊維を該適当範囲内に緩衝するべきである。30%低下するまでの時間が最長時間の80%まで短縮されるpH値を「制限値」と称する(基準b3))。
【0068】
変形例2)繊維への緩衝液の含浸、その後の乾燥、及び温暖で湿気のある気候条件下での保管
この方法は、元々のNSFを測定した後、架橋剤で処理した各出発繊維に緩衝系を含浸させることを除いて、変形例1と同様である。上記と同様に、緩衝系は約0.1mol/lの各緩衝剤を含有し、0.5pH単位ずつpH値のグラデーションを有する4.0〜10.0のpH範囲である。後の絞り又は遠心処理によって、このように処理した全ての繊維が同様に高い溶液取り込み率(liquor pick-up)を示すことを確認する。その後、実験用乾燥器中で慎重に繊維を乾燥する(60℃、5時間)。
【0069】
架橋剤の加水分解安定性は以下の通り判定できる。
【0070】
2.1)温度40℃及び相対空気湿度85%での試験:
この目的では12週間の保管試験を行わなければならない。週に1度NSFを測定する。(平均湿度のベールを25℃で保管した場合と比較して、この試験の気候条件下では実質的に10倍はやくフィブリル化防止作用の変化が進行すると考えられる。)
【0071】
2.2)温度50℃及び相対空気湿度100%での簡易試験:
この場合、底部の空間に脱塩水を満たした密封可能容器を系として用い、液体上に繊維を一定距離で載置する。凝縮現象を予防するために、繊維が壁等に接触しないよう注意を払う必要がある。系1)と同様に、この簡易試験は、2日おきにNSFを測定しながら、25日間で完了する。
【0072】
変形例1)と同様に評価する。
【0073】
30%低下するまでの時間が最長時間の80%まで短縮されるpH値を「制限値」として再度測定する。
【0074】
基準c)pHを変化させる機能の判定
本発明に従うと、繊維や繊維を含有する製品(ベール、糸、織物生地等)中で架橋剤が反応性基を含み、繊維を保管中及び/又は糸/織物集合体への典型的な湿潤及び/又は熱処理プロセス中に、緩衝剤無しで適当なpH範囲が放置される(left)というような方法で該反応性基が繊維のpH値を変化させ得る場合、緩衝物質を用いることにより架橋剤がその適当なpH範囲に保持される。
【0075】
このようなpHを変化させる機能を判定するために、下記手順をとる。
【0076】
1)架橋剤で処理した繊維(以下「出発繊維」と称する)の繊維pH値を測定する(繊維は糸や織物生地の形態であってもよい)。関連する上記測定方法参照。
【0077】
2)出発繊維を脱塩水で10回洗浄し(溶液比率1:10以上、室温)、慎重に乾燥して(60℃、5時間)、水溶性物質(塩、緩衝剤、仕上げ剤)を除去する。以下、洗浄して得られた繊維を「洗浄繊維」と称する。
【0078】
水溶性物質を除去することにより、水溶性物質自体がpH値に影響しうるという、水溶性物質による下記試験の曲解が避けられる。しかしながら、繊維の洗浄及び乾燥によって架橋剤の連続的な反応が起こってしまうことがあるため、(未洗浄の)出発繊維も試験する必要がある。
【0079】
3)洗浄繊維の繊維pHを確定する。
【0080】
4)基準a)及びb)に関して上述した変形例2.1又は2.2の出発繊維及び洗浄繊維の両方を保存安定性試験に供し(ただし事前に緩衝剤を適用しない)、時間に伴うNSFの変化を測定する。
【0081】
5)出発繊維及び洗浄繊維の保管後の繊維pH値を確認する:これら2種の繊維のうち少なくとも一方の繊維pH値が初期繊維pHに比べて少なくとも1pH単位変化した場合(特に基準a)及びb)に関して決定した適当pH範囲から離れる方向に)、保管期間中にpHを変化させる機能を有する架橋剤が存在する。
【0082】
基準a)〜c)が全て満たされた場合、即ち、保管期間中にpHに依存するフィブリル化防止作用の低下が検出され、また出発繊維又は洗浄繊維のpH値の、架橋剤の安定性が低くなる方向への変化が検出された場合、本発明に従った緩衝剤の適用により安定化することができる架橋系が存在する。
【0083】
上記特性を示す架橋繊維における緩衝系の適用に関する一般的証明、及び緩衝能力の決定
所定の架橋剤の適当範囲を決定した後、緩衝系による安定化および繊維の緩衝能力の決定のために、以下の手順をとることができる:
【0084】
i)上記方法によってpH値4.0を超える「制限値」が決定され、且つ酸性pH値に対する感受性が決定された場合(即ち、制限値未満のpH値まで保存安定性が悪化する場合)、酸緩衝物質の検出が必要である。
【0085】
酸緩衝物質の検出:
ちょうど1:10の溶液比率で、脱塩水を用いて繊維(任意に糸または織物生地の形態)を室温で1時間抽出する。繊維と抽出物を分離し、この抽出物のちょうど50ml分のアリコートを、まず0.01mol/lのHClを用いて、事前に決定した「制限値」よりもちょうど1.50単位低いpH値まで滴定する。その後、溶液を0.01mol/lのNaOHを用いて、「制限値」よりもちょうど1.50単位高いpH値まで滴定する。この3.00のpH単位内における0.01mol/lNaOHの消費量を、滴定曲線から読む。5mlが、繊維1kgあたり10mmolの緩衝能力に対応する。
【0086】
ii)上記方法によってpH値10.0未満の「制限値」が決定され、且つアルカリ性pH値に対する感受性が決定された場合(即ち、制限値を超えるpH値まで保存安定性が悪化する場合)、アルカリ緩衝物質の検出が必要である。
【0087】
アルカリ緩衝物質の検出:
ちょうど1:10の溶液比率で、脱塩水を用いて繊維(糸、生地)を室温で1時間抽出する。繊維と抽出物を分離し、この抽出物のちょうど50ml分のアリコートを、まず0.01mol/lNaOHで事前に決定した「制限値」よりもちょうど1.50単位高いpH値まで滴定する。その後、溶液を0.01mol/lHClで制限値よりもちょうど1.50pH単位低いpH値まで滴定する。この3.00のpH単位内における0.01mol/lHClの消費量を、滴定曲線から読む。5mlが、繊維1kgあたり10mmolの緩衝能力に対応する。
【0088】
典型的な実施形態
実施例1:
各例において同様に、先行技術に従って製造し、上記式(I)の架橋剤(2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1.3.5−トリアジンのナトリウム塩)を用いて架橋したリヨセル繊維を、以下の通り処理した:
【0089】
例1a)(本発明に従って)−ホウ砂処理(繊維に対して0.6%)、繊維pH値=9.2
例1b)(本発明に従って)−炭酸塩緩衝剤処理(Na2CO3/NaHCO3、モル比1:1、繊維に対して0.2%)、繊維pH値=10.2
例1c)(比較例)−未処理、繊維pH値=8.5
例1d)(比較例)−弱酸性繊維仕上げ剤処理、繊維pH値=6.7
【0090】
繊維の耐湿潤摩耗性(NSF)を、例えば特許文献8に記載の方法に従って測定した。続いて、繊維を同一の高湿高温の極端な気候条件下で保管した。NSFが元の値の半分まで低下する時間、いわゆる「半減期」を測定した:
【0091】
例1a)(ホウ砂):約11週
例1b)(炭酸塩):10週
例1c)(緩衝剤無し):約7週
例1d)(酸性仕上げ剤):3週
【0092】
加えて、保管の第1週目には、例1)及び2)の繊維ではNSFの低下は見られなかったのに対し、例3)及び4)の繊維ではNSFの着実な低下が測定された。
【0093】
実施例2:
2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1.3.5−トリアジンのナトリウム塩に関して、上記方法によって、pH8.5に、それ未満のpH値ではフィブリル化防止の保存安定性が悪化する「制限値」が存在することを決定した。
【0094】
よって、同量の上記架橋剤で処理した異なるリヨセル繊維試料において、上述の方法により繊維抽出物を0.01mol/lHClでpH7.0まで滴定し、更に0.01mol/lNaOHでpH10.0まで滴定することによって、緩衝能力を決定した。
【0095】
pH7.0〜10.0の範囲での0.01mol/lNaOHの消費量を測定した。繊維の緩衝能力は、下記式を用いてこの消費量から算出できる:
NaOH消費量(ml)*0.01*1000/5=緩衝剤量(mmol)/繊維量(kg)
【0096】
以下の試料を試験した:
試料1:繊維1kgあたり2gのホウ砂で処理した繊維
試料2:繊維1kgあたり3.5gのホウ砂で処理した繊維
試料3:繊維1kgあたり12gのホウ砂で処理した繊維
試料4:繊維1kgあたり6gのホウ砂で処理した繊維
試料5:繊維1kgあたり1.5gの炭酸ナトリウムで処理した繊維
試料6:繊維1kgあたり1gの炭酸ナトリウムで処理した繊維
試料7〜11:各場合の緩衝物質で未処理の繊維の試料
【0097】
【表1】

【0098】
7〜10の範囲で緩衝効果を有する物質(ホウ砂、又は炭酸塩等)を含有する全ての試料において、繊維1kgあたりの緩衝能力が(明らかに)12mmolを超えることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架橋剤で処理したリヨセル系セルロース繊維であって、
架橋剤は繊維のフィブリル化を防止し、下記特性:
・繊維をpH4.0〜10.0の範囲内で(特に水分及び/又は熱の影響下で)保管すると、架橋剤により誘導されるフィブリル化防止作用が変化する;
・pH4.0〜10.0の範囲内に最適値が存在し、繊維の保管中、最適値では架橋剤により誘導されるフィブリル化防止の安定性が最も高くなる;
・最適値の周辺に適当範囲が存在し、最適値での安定性と比較して、適当範囲では安定性が最大で20%低下する;
・pH4.0〜10.0の範囲内で適当範囲が少なくとも1つの制限値によって限定され、最適値での長期安定性と比較して、制限値では安定性が20%低下し、前記値の前後で更に低下する;
・架橋剤がpH値を変える機能を有する;
を示し、
繊維は適当範囲に緩衝する物質を含有し、適当範囲内で繊維1kgあたり12mmol以上、好ましくは15〜70mmolの緩衝能力を示すことを特徴とするセルロース繊維。
【請求項2】
繊維が適当範囲内のpH値を示すことを特徴とする、請求項1に記載のセルロース繊維。
【請求項3】
緩衝物質又は任意に用いられる複数の緩衝物質のうち少なくとも1つが、適当範囲内又は適当範囲からpH1単位以下だけ外れた範囲内のpKa値を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のセルロース繊維。
【請求項4】
架橋剤が式(I):
【化1】

(式中、Xはハロゲンを表し、RはH又はイオン性部位であり、nは0又は1である)で表される化合物又はその塩であり、好ましくは2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1.3.5−トリアジンのナトリウム塩であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロース繊維。
【請求項5】
繊維が8.5〜10.5のpH値を示すことを特徴とする、請求項4に記載のセルロース繊維。
【請求項6】
前記緩衝物質又は任意に用いられる複数の緩衝物質のうち少なくとも1つが、8.0〜11.0のpKa値を有することを特徴とする、請求項4または5に記載のセルロース繊維。
【請求項7】
緩衝物質が、ホウ砂;アルカリ金属イオン、アンモニウム、又は置換アミン由来カチオンの炭酸塩又は重炭酸塩;アルカリ金属イオン、アンモニウム、又は置換アミン由来カチオンのリン酸塩、リン酸水素塩、又はリン酸二水素塩;アンモニア;置換アミン;グアニジン又はグアニジン塩;およびそれらの混合物、カルボン酸との混合物、ならびにそれらの塩からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項4〜6のいずれか一項に記載のセルロース繊維。
【請求項8】
緩衝物質として、ホウ砂を少なくとも繊維1kgあたり1525mgの濃度で含有することを特徴とする、請求項7に記載のセルロース繊維。
【請求項9】
緩衝物質として、ホウ砂を繊維1kgあたり2860mg〜14000mgの濃度で含有することを特徴とする、請求項8に記載のセルロース繊維。
【請求項10】
緩衝物質として、炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウム緩衝系を少なくとも繊維1kgあたり848mg以上の濃度(炭酸ナトリウム換算)で含有することを特徴とする、請求項7に記載のセルロース繊維。
【請求項11】
緩衝物質として、炭酸水素ナトリウム/炭酸ナトリウム緩衝系を前記繊維1kgあたり1580mg〜7420mgの濃度(炭酸ナトリウム換算)で含有することを特徴とする、請求項10に記載のセルロース繊維。
【請求項12】
繊維水分(fibre moisture)が8%〜10%であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載のセルロース繊維。
【請求項13】
式(I):
【化2】

(式中、Xはハロゲンを表し、RはH又はイオン性部位であり、nは0又は1である)で表される化合物又はその塩、好ましくは2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−1.3.5−トリアジンのナトリウム塩からなる架橋剤で処理したリヨセル系セルロース繊維であって、酸の作用をpH7.5〜11.0、好ましくはpH8.5〜10.5の範囲に緩衝する物質を含有し、且つ前記pH範囲内で緩衝能力は繊維1kgあたり少なくとも12mmol、好ましくは15〜70mmolであることを特徴とするセルロース繊維。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のセルロース繊維を含有する、セルロース繊維ベール。
【請求項15】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のセルロース繊維を含有する糸、織物、編物、組物、及びメリヤス。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれか一項に記載のセルロース繊維を製造する方法であって、適当なpH範囲に緩衝する物質をリヨセル系セルロース繊維に適用する工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
前記セルロース繊維の製造中、ベール状にプレス成形する前に緩衝物質を適用することを特徴とする、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2011−525571(P2011−525571A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−515014(P2011−515014)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/AT2009/000242
【国際公開番号】WO2009/155624
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(500077889)レンツィング アクチェンゲゼルシャフト (20)
【Fターム(参考)】